JP2009298843A - 樹脂組成物、これを用いた成形品、及び樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、これを用いた成形品、及び樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】流動性及びヒンジ特性の双方に優れ、成形加工時にシルバーストリークス等の外観不良が発生せず、各種部品へ利用可能な耐熱性と機械的特性とを併せ持った樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、及び前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤を含有する樹脂組成物であって、ISO294−1に規定されている多目的試験片とし、ISO527−1に準拠して引張特性の測定を行ったとき、引張破壊応力に対する引張降伏応力の比が1.00〜1.12の範囲内であり、ISO15512(B法)に準拠して水分率の測定を行ったとき、水分率が500〜1500質量ppmの範囲内である樹脂組成物を提供する。
【選択図】図2

Description

本発明は、成形流動性とヒンジ特性とのバランスに優れ、かつ成形品の外観も良好な樹脂組成物、これを用いた成形品、及び樹脂組成物の製造方法に関する。
従来から、ポリフェニレンエーテルは、機械特性、電気的特性、寸法安定性、耐熱性に優れていることから広い分野で実用的に用いられてきた。
しかしポリフェニレンエーテル単独では、成形加工時における流動性や、耐薬品性が悪いため、ポリアミドを配合することによりこれらの特性の改良を図っていた。
上記のようなポリフェニレンエーテル/ポリアミド組成物は、電気・電子部品用途や自動車部品用途等の各種部品、特に自動車電装部品等のリレーブロックやコネクタ等として利用されてきた。
特に近年においては、自動車の電装化が進行し、かつエンジンルーム内が高密度化していることから、各種電装部品を小型化することが要求されてきている。
また更に、リレーブロックやコネクタのように微細で複雑な構造を有する部品を成形するためには、材料が優れた流動性を有していることが必要である。
上述したポリフェニレンエーテル/ポリアミド組成物の流動性を高める手法としては、例えば、ポリアミドとしてポリアミド6,6とポリアミド6との混合物を用い、ポリアミドを低粘度域のものとすることにより流動性が高める技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
他の手法としては、例えば、ポリフェニレンエーテルとポリアミドとの相溶化剤の量を低減化する方法が挙げられる。
また他の手法としては、ポリアミドに対して水分が可塑化効果を有していることを利用し、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド組成物を吸水させ、流動性を向上させるという技術がある。
しかしながら、吸水したペレットをそのまま成形に使用した場合、シルバーストリークス(流動方向に現れる銀白色の条痕)という外観不良が発生するという問題がある。
このため、成形工程前には、ペレットを予備乾燥し水分率を500質量ppm以下程度にまで低減化させておくことが必要とされていた。
一方において、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド組成物が利用されている電気・電子部品用途や自動車部品用途等の各種部品は、構造が複雑化で多くがヒンジ構造を有していることから、成形時に良好な流動性を有しているとともに、繰り返し折り曲げても耐破断性に優れているという高いヒンジ特性も要求される。
ヒンジ特性を向上させる手法としては、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの界面強度を向上させるため、相溶化剤の量を増やす方法が有効である。
特開2004−77967号公報
しかしながら、上述したように、相溶化剤の量を増加させると、樹脂組成物の加工時における流動性が悪化するという問題がある。
上述したように、高い流動性を確保しつつ、優れたヒンジ特性を有するものにするという、いわば相反する特性を同時に満足し、かつ機械物性や耐熱性にも優れ、外観特性にも優れたポリフェニレンエーテル/ポリアミド組成物の開発が待望されていた。
そこで本発明においては、流動性及びヒンジ特性の双方に優れ、成形加工時にシルバーストリークス等の外観不良が発生せず、特に自動車用部品へ利用可能な耐熱性と機械的特性とを併せ持った樹脂組成物を提供することとした。
請求項1の発明においては、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、及び前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤を含有する樹脂組成物であって、ISO294−1に規定されている多目的試験片とし、ISO527−1に準拠して引張特性の測定を行ったとき、引張破壊応力に対する引張降伏応力の比が1.00〜1.12の範囲内であり、ISO15512(B法)に準拠して水分率の測定を行ったとき、水分率が500〜1500質量ppmの範囲内である樹脂組成物を提供する。
請求項2の発明においては、前記相溶化剤が、無水マレイン酸、マレイン酸及びこれらの誘導体より選択される1種以上であって、当該相溶化剤が、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.03〜0.3質量部含有されている請求項1に記載の樹脂組成物を提供する。
請求項3の発明においては、前記相溶化剤が、クエン酸、フマル酸及びこれらの誘導体より選択される1種以上であって、当該相溶化剤が、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.5〜4.0質量部含有されている請求項1に記載の樹脂組成物を提供する。
請求項4の発明においては、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量を100質量%としたとき、ポリアミドを40〜90質量%、ポリフェニレンエーテルを60〜10質量%含有している請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する。
請求項5の発明においては、前記ポリアミド相中に、前記ポリフェニレンエーテルが分散しており、当該ポリアミド相中に分散するポリフェニレンエーテルの数平均粒子径が1.3〜5.0μmである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する。
請求項6の発明においては、前記ポリアミドが、少なくともポリアミド6,6と、ポリアミド6とを含有している請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する。
請求項7の発明においては、全ポリアミドを100質量%としたとき、ポリアミド6,6を70〜99質量%、ポリアミド6を30〜1質量%含有している請求項6に記載の樹脂組成物を提供する。
請求項8の発明においては、前記衝撃改良剤が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなる芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体及び/又は水素添加されたブロック共重合体である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する。
請求項9の発明においては、有機過酸化物を含有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する。
請求項10の発明においては、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる成形品を提供する。
請求項11の発明においては、ヒンジ構造を有するリレーブロックである請求項10に記載の成形品を提供する。
請求項12の発明においては、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、及び前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤を溶融混練する工程を経て得られる樹脂組成物の製造方法であって、ISO294−1に規定されている多目的試験片とし、ISO527−1に準拠して引張特性の測定を行ったときに、引張破壊応力に対する引張降伏応力の比が1.00〜1.12の範囲内であり、ISO15512(B法)に準拠して水分率の測定を行ったときに、当該水分率が500〜1500質量ppmの範囲内となる樹脂組成物の製造方法を提供する。
本発明によれば、流動性とヒンジ特性とのバランスに優れ、かつ良好な外観を有する樹脂組成物が得られる。
また、本発明によれば、複雑で微細な構造を有する各種部品にも対応可能な成形品が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態における樹脂組成物は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、及び前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤を含有するものであり、ISO294−1に規定されている多目的試験片とし、ISO527−1に準拠して引張特性の測定を行ったとき、引張破壊応力に対する引張降伏応力の比が1.00〜1.12の範囲内であり、ISO15512(B法)に準拠して水分率の測定を行ったとき、水分率が500〜1500質量ppmの範囲内である樹脂組成物である。
本実施の形態における樹脂組成物の構成成分について説明する。
(ポリアミド)
ポリアミドとしては、ポリマーの繰り返し単位構造中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、いずれも使用できる。
ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、ラクタム類の開環重合、アミノカルボン酸の重縮合等により得られるが、本実施の形態においては、これらに限定されるものではない。
前記ジアミンとしては、大別して、脂肪族、脂環式及び芳香族ジアミンが挙げられる。ジアミンの具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルナノメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等が挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、大別して、脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
前記ラクタム類としては、具体的には、εカプロラクタム、エナントラクタム、ωラウロラクタム等が挙げられる。
また、前記アミノカルボン酸としては、具体的には、εアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノナノン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸等が挙げられる。
上述したラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸は、いずれも単独で用いてもよく、2種以上を混合し、あるいは重縮合を行って共重合ポリアミド類として使用してもよい。
また、上述したラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、押出機等内で高分子量化したものも使用できる。
ポリアミドの具体例を下記に挙げる。
例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミド6,MXD(m−キシリレンジアミン)、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド 6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,I、ポリアミド9,T等が挙げられる。これらのうちの任意の複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミド類も使用できる。
上記の中でも、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6/6,6、及びこれらの混合物が好ましく、ポリアミド6,6単独又はポリアミド6,6とポリアミド6との混合物がより好ましい。
ポリアミドとして、ポリアミド6,6とポリアミド6との混合物を用いる場合、全ポリアミド量を100質量%としたとき、ポリアミド6,6の量は、70〜99質量%とすることが好ましく、85〜5質量%とすることがより好ましい。
ポリアミドの粘度数については、ISO307:1994に準拠し96%硫酸で測定した粘度数が100〜130ml/gであることが好ましく、110〜128ml/gがより好ましい。
粘度数が上述範囲内のポリアミドを使用することにより、目的とする樹脂組成物の流動性と機械的特性のバランスが良好なものとなる。
本実施の形態における樹脂組成物を形成するポリアミドは、粘度数の異なる複数のポリアミドの混合物であってもよい。複数のポリアミドを使用した場合においても、そのポリアミド混合物の粘度数は、上述した範囲内にあることが好ましい。
ポリアミド混合物が上記粘度数の範囲内にあることを確認するためには、所望の混合比で混合したポリアミド混合物の粘度数を実測することで容易に確かめることができる。れら粘度数は、混合する質量比で混合したポリアミド混合物を96%硫酸に溶解して、ISO307に従い測定することで確認できる。
ポリアミドの末端基は、後述するポリフェニレンエーテルとの反応に関与するものである。
ポリアミドは一般に、末端基としてアミノ基、又はカルボキシル基を有しているが、カルボキシル基濃度が高くなると、耐衝撃性が低下し、流動性が向上し、逆にアミノ基濃度が高くなると耐衝撃性が向上し、流動性が低下する。
ポリアミドの末端基の比は、アミノ基/カルボキシル基濃度比で、9/1〜1/9であることが好ましく、6/4〜1/9がより好ましく、5/5〜1/9がさらに好ましい。
また、末端のアミノ基濃度は50μmol/g以下であることが好ましく、40μmol/g以下であることがより好ましく、35μmol/g以下であることがさらに好ましい。
ポリアミド末端のアミノ基濃度の下限は特に制限されるものではないが、10μmol/g以上であることが好ましい。
ポリアミド末端のアミノ基濃度を50μmol/g以下とすることにより、目的とする樹脂組成物の成形時における流動性の低下が抑制でき、かつ成形品の加熱後の変形の増大や成形片へのシワ模様(湯ジワ)の発生を効果的に防止できる。
ポリアミドの末端基は、従来公知の方法により調整できる。例えば、ポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物等から選定される1種以上を添加する方法が挙げられる。
(ポリフェニレンエーテル)
ポリフェニレンエーテルとしては、下記式の構造単位からなる、ホモ重合体及び/又は共重合体を適用できる。
Figure 2009298843
但し、上記式中、Oは酸素原子であり、Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、ハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている。)を表わす。
ポリフェニレンエーテルの具体例を示す。
例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されてあるような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体等)、すなわちポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
ポリフェニレンエーテルとして特に好ましいものは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、又はこれらの混合物である。
ポリフェニレンエーテルは公知の方法により作製できる。
例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルの還元粘度(0.5g/dlクロロホルム溶液、30℃、ウベローデ型粘度管で測定)は、0.40〜0.55dl/gの範囲が好ましく、0.40dl/g〜0.45dl/gの範囲がより好ましく、0.41dl/g〜0.45dl/gの範囲がさらに好ましい。
ポリフェニレンエーテルは、2種以上の還元粘度の異なるものを混合して用いてもよい。例えば、還元粘度0.45dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルとの混合物、還元粘度0.40dl/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリフェニレンエーテル中には、重合溶媒として使用された有機溶剤が、5質量%未満の量で残存していてもよい。
重合溶媒として使用された後に残存している有機溶剤は、重合後の乾燥工程で完全に除去することは困難であり、通常、数百質量ppm〜数質量%の範囲で残存するからである。
なお、ポリフェニレンエーテルの重合溶媒のための有機溶媒としては、トルエン、キシレンの各異性体、エチルベンゼン、炭素数1〜5のアルコール類、クロロホルム、ジクロルメタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等が挙げられる。
また、本実施の形態における樹脂組成物を形成するポリフェニレンエーテルは、全部又は一部が変性されたポリフェニレンエーテルであってもよい。
ここで、変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個の、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルであるものとする。
変性されたポリフェニレンエーテルの製造方法としては、ラジカル開始剤の存在下又は不存在下で、(1)100℃以上、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の範囲の温度でポリフェニレンエーテルを溶融させることなく変性化合物と反応させる方法、(2)ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上360℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(3)ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度で、ポリフェニレンエーテルと変性化合物を溶液中で反応させる方法等が挙げられる。特に、(1)又は(2)の方法が好ましい。
次に、ポリフェニレンエーテルを変性する、上記分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個の、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物について具体的に説明する。
分子構造内に、炭素−炭素二重結合、及びカルボン酸基又は酸無水物基を同時に有する変性化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの酸無水物等が挙げられる。特にフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、フマル酸、無水マレイン酸がより好ましい。また、これら不飽和ジカルボン酸の2個のカルボキシル基のうちの1個又は2個がエステルになっていてもよい。
分子構造内に、炭素−炭素二重結合、及びグリシジル基を同時に有する変性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、エポキシ化天然油脂等が挙げられる。特にグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートが好ましい。
分子構造内に、炭素−炭素二重結合及び水酸基を同時に有する変性化合物としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オール等の、一般式Cn2n−3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式Cn2n−5OH、Cn2n−7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコール等が挙げられる。
上述した変性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の変性化合物の添加量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましい。
前記ラジカル開始剤の量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.001〜1質量部が好ましい。
また、変性されたポリフェニレンエーテルへの変性化合物の付加率は、変性されたポリフェニレンエーテルを100質量%としたとき、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
この変性されたポリフェニレンエーテル中には、未反応の変性化合物及び/又は変性化合物の重合体が、1質量%未満の量であれば残存していてもよい。
また、本実施の形態における樹脂組成物には、スチレン系熱可塑性樹脂をポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計100質量部に対し、50質量部未満の量で含有していてもよい。
スチレン系熱可塑性樹脂としては、例えば、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテル及びこの変性体には、各種安定剤を配合してもよい。
安定剤の具体例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤が挙げられる。
安定剤の配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部未満が好ましい。
更に、ポリフェニレンエーテル及びこの変性体には、従来公知の各種添加剤を配合してもよい。配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量が好ましい。
本実施の形態における樹脂組成物において、上述したポリアミドとポリフェニレンエーテルとの割合は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量を100質量%としたとき、ポリアミド40〜90質量%、ポリフェニレンエーテル60〜10質量%が好ましく、ポリアミド50〜85質量%、ポリフェニレンエーテル50〜15質量%がより好ましく、ポリアミド60〜80質量%、ポリフェニレンエーテル40〜20質量%がさらに好ましい。
本実施の形態における樹脂組成物の良好な流動性を確保する観点からは、ポリフェニレンエーテルの割合は60質量%以下とすることが好ましい。
また、高温環境下における剛性の低下を防止する観点からは、ポリフェニレンエーテルの割合を10質量部以上とすることが好ましい。
本実施の形態における樹脂組成物は、ポリアミドが連続相を形成し、ポリフェニレンエーテルが分散相を形成している分散形態となっていることが好ましい。
この場合、ポリフェニレンエーテル分散相の数平均粒子径は、1.3〜5.0μmであることが好ましく、1.3〜3.0μmであることがより好ましく、1.5〜2.5μmであることがさらに好ましい。
ここで数平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡写真を撮影し、得られた画像の400μm2中に観察される分散粒子すべての、粒子径(長軸方向と単軸方向の直径を測定し、両者の平均値から算出)の数平均粒子径をいう。
本実施の形態における樹脂組成物を、例えばリレーブロック等のように、成形加工の際に高い流動性が要求される部品に適用することを考慮して高い流動性を得るようにするためには、ポリフェニレンエーテル分散相の数平均粒子径を1.3μm以上とすることが好ましい。
また、振動疲労特性等の長期使用条件下における特性低下を抑制するためには、ポリフェニレンエーテル分散相の平均粒子径を5μm以下とすることが好ましい。
(ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤)
ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤としては、国際公開明細書WO01/81473号明細書中に記載されているものが用いられる。
具体的には、マレイン酸、フマル酸、クエン酸及びこれらの混合物から選ばれる1種以上が挙げられる。特に、マレイン酸及び/又はその無水物が好ましい。
相溶化剤としてマレイン酸及び/又はその無水物を選択することにより、樹脂組成物のウェルド強度といった付加的な特性を向上させることができる。
相溶化剤の量は、相溶化剤としてマレイン酸及び/又はその無水物を選択した場合、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、0.03〜0.3質量部の範囲が好ましく、0.07〜0.3質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部がさらに好ましい。
樹脂組成物の良好な流動性を確保する観点から、相溶化剤の量は、0.3質量部以下とすることが好ましく、振動疲労特性等の長期使用条件下における特性低下を抑制する観点から、相溶化剤の量は0.03質量部以上とすることが好ましい。
相溶化剤として、フマル酸、クエン酸及びこれらの誘導体から選ばれる一種以上を選択した場合、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、0.5〜4.0質量部の範囲が好ましく、1.0〜3.0質量部の範囲がより好ましく、1.5〜2.5質量部の範囲がさらに好ましい。
上記好適な範囲を超過した場合の物性への影響は、相溶化剤としてマレイン酸及び/又はその無水物を選択した場合と同様である。
(衝撃改良剤)
また、本実施の形態における樹脂組成物には、耐衝撃性を向上させる目的で、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5〜70質量部の量の衝撃改良剤を添加してもよい。
添加量は、10〜30質量部がより好ましく、10〜20質量部がさらに好ましい。
衝撃改良剤としては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体及びその水素添加物、及びエチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
なお、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該重合体ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であることを意味し、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上が芳香族ビニル化合物であるものとする。
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを意味するものとし、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上が共役ジエン化合物であるものとする。
この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物若しくは他の化合物が結合されている場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物から形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、特にスチレンが好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、特に、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
衝撃改良剤を構成するブロック共重合体の、共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造については、1,2−ビニル含量、又は1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量との合計量が、5〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがさらに好ましく、15〜40%であることがさらにより好ましい。
通常、共役ジエン化合物の結合形態として、1,2−ビニル結合、3,4−ビニル結合、1,4−ビニル結合があるが、ここで言うビニル結合量とは、重合時の共役ジエン化合物の結合形態の割合を示すものである。
例えば、1,2−ビニル結合量とは、上記3種の結合形態中の1,2−ビニル結合の割合を意味するものであり、赤外分光光度計、核磁気共鳴装置等によって容易に測定できる。
衝撃改良剤を構成するブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]とが、A−B型、A−B−A型、又はA−B−A−B型から選ばれる結合形式となっているブロック共重合体であることが好ましく、これらの混合物であってもよい。これらの中でもA−B−A型、A−B−A−B型、又はこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型が最も好ましい。
衝撃改良剤を構成するブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体を水素添加したものを使用することもできる。
この水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体中の脂肪族二重結合を水素添加処理することにより、0を越えて100%までの範囲内の二重結合に対する水素添加処理割合において制御したものをいう。
水素添加されたブロック共重合体における水素添加率は50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
衝撃改良剤を構成する、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物は、数平均分子量が150,000以上であることが好ましい。
ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて、紫外分光検出器で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量であるものとする。
測定の際、重合時の触媒失活に起因した低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は、分子量計算に低分子量成分は含めないものとする。通常、計算された正しい分子量分布(質量平均分子量/数平均分子量)は1.0〜1.1の範囲内である。
上記芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量は、30,000以上であることが好ましい。
芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量を30,000以上とすることにより、ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物ブロックが、ポリフェニレンエーテルと相溶化しやすくなる。
芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量は、上述したブロック共重合体の数平均分子量を用いて、下式により求めることができる。
Mn(a)={Mn×a/(a+b)}/N
上記式において、Mn(a)は芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mnは少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体の数平均分子量、aはブロック共重合体中のすべての芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、bはブロック共重合体中のすべての共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、Nはブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数を示す。
衝撃改良剤を構成するブロック共重合体は、適宜、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの、水素添加率の異なるもの等を用いることができ、各々について2種以上を混合して用いてもよい。
また、衝撃改良剤を構成するブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたブロック共重合体であってもよい。
ここで、変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体であるものとする。
上記変性されたブロック共重合体の製造方法としては、ラジカル開始剤の存在下又は不存在下で、(1)ブロック共重合体の軟化点温度以上250℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(2)ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられる。特に(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
ここで、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物としては、上記変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同様のものを適用できる。
本実施の形態における樹脂組成物には、所定のオイルを含有させてもよい。
ここでオイルとは、30℃において液状の無機又は有機の油脂であるものとし、合成油、鉱物油、動物油、植物油等いずれであってもよい。
好ましいオイルとしては、大豆油・アマニ油等の植物油、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、芳香族系オイル、ベンジルトルエン等に代表される熱媒用オイルが挙げられる。特に、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、芳香族系オイルが好ましい。
前記オイルは、一般に芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の三成分が組み合わさった混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系オイル、芳香族炭素数が30%より多いものが芳香族系オイルと呼ばれる。これらの中で特に好ましいオイルは、ナフテン系オイル又はパラフィン系オイルであり、パラフィン系オイルがより好ましい。
ここでいうパラフィン系オイルは、芳香環含有化合物、ナフテン環含有化合物及びパラフィン系化合物の三者が組み合わさった数平均分子量100〜10000の範囲の炭化水素系化合物の混合物であり、パラフィン系化合物の含有量が50質量%以上のものである。
より詳細には、パラフィン系化合物が50〜90質量%、ナフテン環含有化合物が10〜40質量%、芳香環含有化合物が5質量%以下の量で組み合わさった数平均分子量は100〜2000の間のものであり、更に好ましくは200〜1500の間のものである。
パラフィン系オイルで市販されているものの具体例としては、ダイアナプロセスオイルPW−380(出光石油化学(株)製)[動粘度381.6cst(40℃)、平均分子量746、ナフテン環炭素数=27%,パラフィン環炭素数73%]等が挙げられる。
前記オイルの添加方法については、特に限定されるものではない。
例えば、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの溶融混練工程において、液体状態で添加してもよいし、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、及び、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体から選ばれる1種以上にあらかじめ配合しておいてもよい。
特に、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体にオイルをあらかじめ混合させておく方法が好ましい。
上述したオイルを、予め上記ブロック共重合体中に混合しておくことにより、目的とする樹脂組成物において、シワ状の凹凸が発生や、成形品の加熱時の変形の抑制が図られる。
上述したオイルを、予め上記ブロック共重合体中に混合する際のオイルの量は、ブロック共重合体100質量部に対して70質量部未満が好ましく、60質量部未満がより好ましい。
(樹脂組成物の力学特性)
本実施の形態における樹脂組成物は、ISO294−1に規定されている多目的試験片を用いて、ISO527−1に準拠して引張特性を測定した際に、引張破壊応力(σb)に対する引張降伏応力(σy)の比(σy/σb)が、1.00〜1.12であるものとし、好ましくは1.00〜1.08の範囲、更に好ましくは1.01〜1.05の範囲であるものとする。
前記引張降伏応力(σy)とは、ISO527−1に定義されている応力の増加を伴わずにひずみが増加する最初の応力を意味する。
前記引張破壊応力(σb)とは、試験片破壊時の引張応力を意味する。
引張破壊応力(σb)に対する引張降伏応力(σy)の比(σy/σb)を説明するために、図1に、公知の脆くない材料の応力−ひずみ曲線を示す。
脆くない材料の場合は、応力−ひずみ曲線は、図1中の破線a、b又はcのパターンを有している。
ここで、曲線a、bを描く材料としては、一般的な脆くない熱可塑性樹脂が挙げられ、曲線cを描く材料の例としてはエラストマーのような柔軟な材料が挙げられる。
本実施の形態における樹脂組成物は、図1中の実線で示すような応力−ひずみ曲線をとり、一般的な脆くない熱可塑性樹脂の挙動とは異なっている。
引張破壊応力(σb)に対する引張降伏応力(σy)の比(σy/σb)が、1.00〜1.12であるということは、応力−ひずみ曲線において、明確な降伏点を有さないか、有しても極めてかなり小さな降伏点しか有さないことを意味する。
上記(σy/σb)が1.00を下回るということは、図1において、曲線aの応力−ひずみ曲線に対応するが、1.00を下回ると、樹脂の靭性が高すぎるようになるため、ヒンジを有する部材に応用した際に、折り曲げ容易性に劣るようになる。
また、上記(σy/σb)が1.12を上回るということは、図1において、曲線bの応力−ひずみ曲線に対応するが、1.12を上回るポリアミド/ポリフェニレンエーテル組成物は流動性が不足するようになり、例えばリレーブロック等の複雑な形状を有する部品として不適用なものとなる。
引張破壊応力(σb)に対する引張降伏応力(σy)の比(σy/σb)を1.00〜1.12の範囲内に制御する方法としては、例えば、相溶化剤の量を制御する方法、ポリアミド中にポリアミド6、ポリアミド12といった比較的柔軟なポリアミドを添加する方法、衝撃改良剤にパラフィンオイル等を予め配合したのち、ポリフェニレンエーテルと溶融混練する方法、ポリフェニレンエーテルに対して可塑化効果を有する化合物を含有させる方法が挙げられる。
(樹脂組成物の水分率)
本実施の形態における樹脂組成物は、水分率が、500〜1500質量ppmの範囲内であるものとする。水分率は800〜1500質量ppmであることが好ましく、1100〜1500質量ppmであることがより好ましい。
水分率が1500質量ppmを上回ると、成形時においてシルバーストリークスが発生し、成形品の外観が著しく悪化する。
一方、水分率が500質量ppmを下回ると、ヒンジ特性が悪化する。
ここで樹脂組成物の水分率とは、ISO15512(B法)に準拠し、水分気化装置とカールフィッシャー電量測定装置を有した水分含有率測定システムを用いて得られる、樹脂組成物のペレットの水分率であるものとする。
測定において使用するオーブンの設定温度は185℃とする。詳細な水分計算方法は、ISO15512に従う。
本実施の形態における樹脂組成物の水分率を調整する方法としては、特に限定されるものではない。
例えば、1500質量ppmを超える吸水率に吸湿したものを、真空乾燥機、除湿乾燥機、熱風乾燥機等で、再乾燥して調整する方法や、水分500質量ppmを下回る吸水率のものを、再吸水させて調整する方法が挙げられる。
(その他の成分と添加剤)
本実施の形態における樹脂組成物の耐熱安定性の向上を図る目的で、樹脂組成物中に、遷移金属及び/又はハロゲンを存在させてもよい。
遷移金属の種類に関しては特に制限はないが、銅、セリウム、ニッケル、コバルトが好ましく、特に銅が好ましい。又、ハロゲンの中でも、臭素又はヨウ素が好ましい。
遷移金属の使用量は、樹脂組成物中に10質量ppm以上200質量ppm未満が好ましく、10質量ppm以上100質量ppm未満がより好ましい。
ハロゲンの使用量は、500質量ppm以上1500質量ppm未満が好ましく、700質量ppm以上1200質量ppm未満がより好ましい。
上述した遷移金属やハロゲンの樹脂組成物への添加方法としては、例えば、ポリアミド /ポリフェニレンエーテル組成物を溶融混練する工程において、粉体の状態で添加する方法、ポリアミドの重合時に添加する方法、ポリアミドに高濃度で添加したマスターペレットを作製した後、このマスターペレットを用いて目的とする樹脂組成物を得る方法等が挙げられるが、ポリアミドの重合時に添加する方法が好ましい。
また、本実施の形態における樹脂組成物には、公知の有機安定剤を含有させてもよい。
有機安定剤としては、例えば、イルガノックス1098(チバスペシャリティーケミカルズ製)等に代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガフォス168(チバスペシャリティーケミカルズ製)等に代表されるリン系加工熱安定剤、HP−136(チバスペシャリティーケミカルズ製)に代表されるラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
上記有機安定剤の中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤が好ましく、これらを併用することがより好ましい。
上記有機安定剤の配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部が好ましい。
本実施の形態における樹脂組成物には、その他公知の各種添加剤を配合してもよい。
添加量は、ポリアミド100質量部に対して10質量部未満が好ましい。例えば、難燃剤を含有することができる。
難燃剤としては、実質的にハロゲンを含まない無機又は有機の難燃剤が好ましい。
実質的にハロゲンを含まないとは、難燃剤を含む樹脂組成物中のハロゲン濃度が2質量%未満であればよく、1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましい。
難燃剤の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等に代表される公知の無機難燃剤、メラミン、シアヌル酸やこれらの塩に代表される含窒素環状化合物、トリフェニルフォスフェートや水酸化トリフェニルフォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等に代表される有機リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウムやポリリン酸メラミン等に代表されるリン酸系含窒素化合物、特開平11−181429号公報に記載されているようなホスファゼン系化合物、ホウ酸亜鉛等にホウ酸化合物、シリコーンオイル類、赤燐、ホスフィン酸塩類やその他公知の難燃剤が挙げられる。
これらの中で、メラミン、シアヌル酸やこれらの塩に代表される含窒素環状化合物、トリフェニルフォスフェートや水酸化トリフェニルフォスフェート及びビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等に代表される有機リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウムやポリリン酸メラミン等に代表されるリン酸系含窒素化合物、特開平11−181429号公報に記載されてあるようなホスファゼン系化合物、ホウ酸亜鉛等にホウ酸化合物、シリコーンオイル類、国際公開特許WO2007/055147号公報に記載されてあるホスフィン酸塩類から選定される1種以上が、好ましく使用できる。
更には、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)及びその誘導体である有機リン酸エステル類、ホスフィン酸塩類、またはこれら混合物がより好ましい。
ここで、ホスフィン酸塩類は、下記式(I)に示すホスフィン酸塩、下記式(II)に示すジホスフィン酸塩、及びこれらの縮合物の中から選ばれる少なくとも1種を含有しているものとする。
Figure 2009298843
上記式(I)、(II)中、R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C6−アルキル及び/又はアリールもしくはフェニルであり、R3は、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C10−アルキレン、C6〜C10−アリーレン、C6〜C10−アルキルアリーレン又はC6〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは2又は3であり、nは1〜3であり、xは1又は2である。
上述した難燃剤の添加量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び衝撃改良剤の合計100質量部に対して、5〜25質量部が好ましい。
難燃剤の添加形態としては、本実施の形態における樹脂組成物中の、分散相樹脂と連続相樹脂とに、それぞれ配合する形態が挙げられる。
具体的には、リン酸エステル類、含窒素環状化合物、リン酸系含窒素化合物、ホスファゼン系化合物、ホウ酸化合物、シリコーンオイル、ホスフィン酸塩類から選ばれる1種以上の難燃剤を各々の相に配合する方法が挙げられる。
更には、分散相樹脂と連続相樹脂とに、異なる難燃剤を配合することがより好ましい。
具体的には、分散相にリン酸エステル類、リン酸系含窒素化合物、ホスファゼン系化合物、シリコーンオイルから選ばれる1種以上を配合し、連続相に含窒素環状化合物、リン酸系含窒素化合物、ホウ酸化合物、ホスフィン酸塩類から選ばれる1種以上を配合することが好ましい。
また、本実施の形態における樹脂組成物には、滴下防止剤として知られるテトラフルオロエチレン等に代表されるフッ素系ポリマーも、樹脂組成物中のハロゲン濃度が2質量%未満の量であれば、難燃剤として使用してもよい。
本実施の形態における樹脂組成物には、特性を損なわない範囲で必要に応じてその他の付加的成分を添加しても構わない。
具体的には、ポリエステル、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂、無機充填材(タルク、カオリン、ゾノトライト、ワラストナイト、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭素繊維、ガラス繊維等)、無機充填材と樹脂との親和性を高めるための公知のシランカップリング剤、可塑剤(低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、カーボンブラック等の着色剤、カーボンファイバー、導電性カーボンブラック、カーボンフィブリル等の導電性付与材、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
前記各種付加的成分の添加量は、樹脂組成物中の50質量%以下が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
本実施の形態における樹脂組成物は、公知の加工機械により作製できる。
例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等を用いることができるが、二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機がより好ましい。
樹脂組成物の作製工程における溶融混練温度は、目的とする樹脂組成物の混練状態等を考慮して通常240〜360℃の範囲で選定する。
本実施の形態における樹脂組成物は、公知の方法、例えば、射出成形法により各種部品の成形品として利用できる。
目的とする成形品の種類、用途、形状等に応じて、一般に用いられている種々の成形方法や成形装置が使用する。
例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロ−成形、カレンダ−成形、流延成形等を適用でき、これらの成形方法を組み合わせて行ってもよい。
更に、本実施の形態における樹脂組成物と従来公知の材料、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、布帛、金属、木材、セラミックス等とを組み合わせて複合成形体とすることもできる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔樹脂組成物の原料〕
(a)ポリフェニレンエーテル (PPE)
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度=0.42dl/g(0.5g/dlクロロホルム溶液、30℃、ウベロ ーデ型粘度管で測定)
(b)ポリアミド(PA)
ポリ(ヘキサメチレンアジパミド) (PA66):
粘度数=120ml/g
末端アミノ基濃度=30μmol/g
末端カルボキシル基濃度=110μmol/g
PA66の重合時に、ヨウ化銅と、ヨウ化カリウム共存下で重合し、PA66中に、銅元素を100質量ppm、ヨウ素を4000質量ppm含む。
ポリ(ε−カプロラクタム) (PA6)
粘度数=120ml/g
末端アミノ基濃度=50μmol/g
末端カルボキシル基濃度=65μmol/g
該ポリアミド中に銅元素を900質量ppm、ヨウ素を18000質量ppm含むマスターペレット
(c)耐衝撃剤(SEBS)
ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンの各ブロックからなる共重合体
数平均分子量=170000
ポリスチレンブロック1個あたりの数平均分子量=29800
スチレン成分合計含有量=35質量%
1,2−ビニル結合量=38%
ポリブタジエン部の水素添加率=98%以上
パラフィン系オイルを35質量%含有
(d)相溶化剤(MAH)
商品名:無水マレイン酸(三菱化学社製)
(e)過酸化物(Peroxide)
商品名:パーヘキサ25B−40(日本油脂社製)
〔評価試験〕
後述する実施例、比較例において作製した各試験用ペレットに対する評価試験項目について下記に示す。
<メルトボリュームレート(MVR)>
ISO1133のB法に従い、試験温度280℃、荷重5.0kgで測定した。
測定した3点の加算平均をもってMVR値とした。
<水分率の調整>
水分率の調整は、室内において吸湿させることにより行った。
下記の試験用ペレットを、23℃/50RH%の雰囲気中でステンレスバットに2cmの厚さで均一に載置し、所定時間放置して水分率を調整した。
調整を行った後、以降の水分率の変化を抑制するため、アルミニウムコートされた防湿袋に入れて保存した。
<水分率>
水分率は、ISO15512:1999のB法に準拠して測定した(オーブン設定温度:185℃)。
<引張降伏応力(σy)及び引張破壊応力(σb)>
射出成形機(住友重機械工業(株)製:SH80M シリンダー温度290℃、金型温度90℃)を用いて、ISO294−1に準拠し、厚さ4mmの多目的試験片を成形した。
この多目的試験片を用いて、ISO527−1に準拠し、測定を行った。
<ヒンジ特性評価>
射出成形機(日精樹脂工業(株)製:PS40E シリンダー温度290℃、金型温度50℃)を用いて、図2に示すヒンジ成形品を作製した。
図2(a)は、ヒンジ成形品の概略上面図を示し、図2(b)は、ヒンジ成形品の概略断面図を示す。
この成形品を、23℃、50%RH雰囲気下で自動繰り返しヒンジ試験機(東洋精機製作所(株)製)を用いて、ヒンジ部を略180°まで折り曲げ、元の位置(0°)の位置に戻す動作を33回/分の速度で繰り返し行い、何回折り曲げた段階で折れて破壊するかを測定した。ヒンジ特性は600〜700回程度確保されていれば実用上良好である。
<成形片外観>
上記のようにして作製したヒンジ成形品のゲート部分近傍に、シルバーストリークスが現れていないかを目視で観察した。
試験用樹脂組成物のペレットを下記の条件により作製した。
〔例1:比較例1〕
上流側に1カ所、押出機中央部に1カ所の供給口を具備する二軸押出機[ZSK−70:ウェルナー&フライデラー社製(ドイツ)]を用い、上流側供給口(以下メイン−Fと略記)から押出機中央部供給口(以下サイド−Fと略記)までのシリンダー温度を320℃、サイド−Fからダイまでの温度を270℃に、それぞれ設定した。
下記表1に示す割合に従い、メイン−FよりPPE(ポリフェニレンエーテル)、SEBS(ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンの各ブロックからなる共重合体)、及び相溶化剤としてMAH(無水マレイン酸)、過酸化物をそれぞれ均一混合したものを供給した。
サイド−Fより、下記表1に示す割合の量のPA(ポリアミド)を供給し、溶融混練して押出し、ストランドバス(全長5m)に約2mの距離で浸漬し冷却し、ストランドをペレタイザーでカットし、ペレットを得た。
得られたペレットを直ちにアルミニウムコートが施された防湿袋に入れ、吸湿を防止した。
なお、溶融混練の際のスクリュー回転数は645回転/分とし、吐出量は1t/hとした。
また、サイド−Fのあるバレルの直前のバレルと、ダイ直前のバレルとにそれぞれ開口部を設け、真空吸引することにより残存揮発分及び残存オリゴマーの除去を行った。この時の真空度は−700mmHgであった。
ペレットの水分率を測定したところ、313質量ppmであった。
ペレットを用いて、MVR(メルトボリュームレート)、ヒンジ特性、成形片外観についての測定及び評価を行った。その結果を下記表1に示す。
〔例2(比較例2)、例3(実施例1)、例4(実施例2)、例5(比較例3)〕
上述した〔例1〕で作製したペレットの水分率を調整し、480質量ppm、850質量ppm、1261質量ppm、1580質量ppmの水分率を有するペレットを得た。
これらについて、上述した例1(比較例1)と同様に、MVR(メルトボリュームレート)、ヒンジ特性、成形片外観についての測定及び評価を行った。その結果を下記表1に示す。
〔例6(実施例3)〕
相溶化剤であるMAH(無水マレイン酸)の添加量を変更し、更には、ストランドバスへの浸漬長を5mに変更した。
その他の条件は上述した例1(比較例1)と同様としてペレットを作製した。得られたペレットの水分率は1270質量ppmであった。
このペレットについて上述した例1(比較例1)と同様に、MVR(メルトボリュームレート)、ヒンジ特性、成形片外観についての測定及び評価を行った。その結果を下記表1に示す。
〔例7(比較例4)〕
上記例6で得られたペレットの水分率を調整し、1750質量ppmの水分率を有するペレットとした。
このペレットについて、上述した例1(比較例1)と同様に、MVR(メルトボリュームレート)、ヒンジ特性、成形片外観についての測定及び評価を行った。その結果を下記表1に示す。
〔例8(比較例5)〕
相溶化剤であるMAH(無水マレイン酸)の添加量を変更した。
その他の条件は上述した例1(比較例1)と同様としてペレットを作製した。得られたペレットの水分率は333質量ppmであった。
このペレットについて上述した例1(比較例1)と同様に、MVR(メルトボリュームレート)、ヒンジ特性、成形片外観についての測定及び評価を行った。その結果を下記表1に示す。
〔例9(比較例6)〕
上記例8で得られたペレットの水分率を調整し、1220質量ppmの水分率を有するペレットとした。
このペレットについて、上述した例1(比較例1)と同様に、MVR(メルトボリュームレート)、ヒンジ特性、成形片外観についての測定及び評価を行った。その結果を下記表1に示す。
Figure 2009298843
図3に、例1〜例9の、MVR(メルトボリュームレート)及びヒンジ特性を示す。
表1、及び図3に示すように、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、及び前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤(無水マレイン酸)を含有しており、引張破壊応力に対する引張降伏応力の比(σy/σb)が1.00〜1.12の範囲内であり、水分率が500〜1500質量ppmの範囲内である例3(実施例1)、例4(実施例2)、例6(実施例3)においては、いずれも、成形片外観の悪化を起こすことなく、流動性とヒンジ特性とのバランスが良好であった。
引張破壊応力に対する引張降伏応力の比(σy/σb)が1.12を超えている例8(比較例5)、例9(比較例6)においては、ヒンジ特性及び成形片外観は良好であったが、流動性が悪く、複雑な形状の成形品の材料として利用することはできなかった。
本発明の樹脂組成物は、自動車部品、工業材料、産業資材、電気電子部品、機械部品、事務機器用部品、家庭用品、シート、フィルム、繊維、その他の任意の形状及び用途の各種成形品の製造に有効に使用することができ、電気電子部品や自動車用電気電子部品、特に、自動車用電気電子部品の一つであるリレーブロック材として産業上の利用可能性がある。
応力−ひずみ曲線を示す。 (a)ヒンジ成形品の概略上面図を示す。(b)ヒンジ成形品の概略断面図を示す。 例1〜例9のMVR(メルトボリュームレート)及びヒンジ特性を示す。

Claims (12)

  1. ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、及び前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤を含有する樹脂組成物であって、
    ISO294−1に規定されている多目的試験片とし、ISO527−1に準拠して引張特性の測定を行ったとき、引張破壊応力に対する引張降伏応力の比が1.00〜1.12の範囲内であり、
    ISO15512(B法)に準拠して水分率の測定を行ったとき、水分率が500〜1500質量ppmの範囲内である樹脂組成物。
  2. 前記相溶化剤が、無水マレイン酸、マレイン酸及びこれらの誘導体より選択される1種以上であって、当該相溶化剤が、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.03〜0.3質量部含有されている請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記相溶化剤が、クエン酸、フマル酸及びこれらの誘導体より選択される1種以上であって、当該相溶化剤が、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.5〜4.0質量部含有されている請求項1に記載の樹脂組成物。
  4. ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量を100質量%としたとき、ポリアミドを40〜90質量%、ポリフェニレンエーテルを60〜10質量%含有している請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記ポリアミド相中に、前記ポリフェニレンエーテルが分散しており、
    当該ポリアミド相中に分散するポリフェニレンエーテルの数平均粒子径が1.3〜5.0μmである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミドが、少なくともポリアミド6,6とポリアミド6とを含有している請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 全ポリアミドを100質量%としたとき、ポリアミド6,6を70〜99質量%、ポリアミド6を30〜1質量%含有している請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. 前記衝撃改良剤が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなる芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体及び/又は水素添加されたブロック共重合体である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  9. 有機過酸化物を含有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる成形品。
  11. ヒンジ構造を有するリレーブロックである請求項10に記載の成形品。
  12. ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良剤、及び前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤を溶融混練する工程を経て得られる樹脂組成物の製造方法であって、
    ISO294−1に規定されている多目的試験片とし、ISO527−1に準拠して引張特性の測定を行ったときに、引張破壊応力に対する引張降伏応力の比が1.00〜1.12の範囲内であり、
    ISO15512(B法)に準拠して水分率の測定を行ったときに、当該水分率が500〜1500質量ppmの範囲内となる樹脂組成物の製造方法。
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