JP6175339B2 - 樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Description
(a)ポリプロピレン系樹脂、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(c)水添ブロ
ック共重合体系樹脂、及び(d)ブロック共重合体系樹脂を含み、
前記(c)成分が、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック
Aと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロ
ック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体及び/又は該水添ブロック共重合
体の変性物であり、
前記(d)成分が、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック
Aと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロ
ック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の変性物であり、
前記(c)成分中の共役ジエン化合物単位の全結合において、1,2−ビニル結合及び
3,4−ビニル結合の合計割合が45〜90%であり、
前記(d)成分が、ビニル芳香族化合物単位を10〜40質量%含み、
前記(d)成分の数平均分子量(Mnd)が、150,000以下であり、
前記(d)成分を形成する重合体ブロックAの数平均分子量(MndA)が、21,0
00以下であり、
前記(a)及び(b)成分の質量比率((a):(b))が、25:75〜40:60である、樹脂組成物。
[2]
前記(c)成分を形成する重合体ブロックAの数平均分子量(MncA)が、8,00
0以上である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記(c)成分が、ビニル芳香族化合物単位を30〜50質量%含む、[1]又は[2
]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記(c)成分において、前記ブロック共重合体のエチレン性二重結合(共役ジエン化
合物単位における二重結合)に対する水素添加率が50〜100%である、[1]〜[3
]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記(a)及び(b)成分の合計含有量100質量部に対して、前記(c)及び(d)
成分の合計含有量が1〜50質量部であり、
前記(c)及び(d)成分の質量比率((c):(d))が、1:99〜99:1であ
る、[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記(c)成分の数平均分子量(Mnc)が、100,000以下である、[1]〜[
5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記(d)成分を形成する重合体ブロックAの数平均分子量(MndA)が、18,0
00以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
前記(d)成分中の共役ジエン化合物単位の全結合において、1,2−ビニル結合及び
3,4−ビニル結合の合計割合が20%以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の
樹脂組成物。
[9]
前記(a)成分が、ホモポリプロピレン及び/又はブロックポリプロピレンであり、
前記(a)成分のメルトフローレート(MFR:JIS K7210に準拠し、230
℃、2.16kgの荷重で測定)が0.1〜100g/10分である、[1]〜[8]の
いずれかに記載の樹脂組成物。
[10]
前記(a)成分を含むマトリックス相と、前記(b)成分を含む分散相とを有する、[
1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]
下記測定方法により得られる−45℃の損失正接(−45℃tanδ)と、0℃の損失
正接(0℃tanδ)との比(−45℃tanδ/0℃tanδ)が0.41以上である
、[1]〜[10]のいずれかに記載の樹脂組成物;
<損失正接(tanδ)の測定>
樹脂組成物から得られるISO試験片について、粘弾性測定機を用いて、引張りモード、
振動周波数:10Hz、静的負荷歪み:0.2%、動的負荷歪み:0.1%、接触荷重:
0.5N、昇温速度:3℃/分、温度範囲:−100℃〜160℃の温度掃引モードにお
いて測定した際の−45℃及び0℃における損失正接(tanδ)。
[12]
[1]〜[11]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形体。
本実施の形態の樹脂組成物は、
(a)ポリプロピレン系樹脂、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(c)水添ブロック共重合体系樹脂、及び(d)ブロック共重合体系樹脂を含み、
前記(c)成分が、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体及び/又は該水添ブロック共重合体の変性物であり、
前記(d)成分が、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の変性物であり、
前記(c)成分中の共役ジエン化合物単位の全結合において、1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の合計割合が45〜90%であり、
前記(d)成分が、ビニル芳香族化合物単位を10〜40質量%含み、
前記(d)成分の数平均分子量(Mnd)が、150,000以下であり、
前記(d)成分を形成する重合体ブロックAの数平均分子量(MndA)が、21,000以下である。
本実施の形態に用いる(a)ポリプロピレン系樹脂(以下、「(a)成分」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、後述する(a1)ポリプロピレン樹脂と(a2)変性ポリプロピレン樹脂とが挙げられる。
(a1)ポリプロピレン樹脂とは、構成する単量体の50モル%以上がプロピレンである重合体をいい、それ以外は特に限定されない。例えば、結晶性プロピレンホモポリマー;重合の第一工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と、重合の第二工程以降でプロピレン、エチレン及び/又は少なくとも1つの他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ヘキセン−1等)を共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体部分とを有する、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体等の結晶性プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。(a1)ポリプロピレン樹脂を構成する単量体においてプロピレンが占める割合は70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。これらの(a1)ポリプロピレン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の例としては、特に限定されないが、例えば、結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体との混合物が挙げられる。(a1)ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン及び/又はブロックポリプロピレンであることが好ましい。
(a2)変性ポリプロピレン樹脂とは、例えば、前記(a1)ポリプロピレン樹脂と、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体とを、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下に、溶融状態或いは溶液状態で30〜350℃で反応させることによって得られる樹脂をいう。(a2)変性ポリプロピレン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前記(a1)ポリプロピレン樹脂に、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜10質量%グラフト化又は付加した変性ポリプロピレン樹脂が挙げられる。前記α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の例としては、特に限定されないが、例えば、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミドが挙げられる。
本実施の形態に用いる(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、単に「(b)成分」又は「PPE」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、後述する(b1)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b2)変性ポリフェニレンエーテル樹脂とが挙げられる。
(b1)ポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記式(1)で表される繰返し単位構造を含むホモ重合体及び/又は共重合体である。(b1)ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度(0.5g/dLのクロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜2.50の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.30〜2.00、さらに好ましくは0.35〜2.00の範囲である。
(b2)変性ポリフェニレンエーテル樹脂とは、例えば、前記(b1)ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系モノマー及び/又はα,β−不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(例えば、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのビニル化合物等が挙げられる。)とを、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下に、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で80〜350℃で反応させることによって得られる樹脂をいう。(b2)変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前記(b1)ポリフェニレンエーテル樹脂に、スチレン系モノマー又はその誘導体が0.01〜10質量%グラフト化又は付加した変性ポリフェニレンエーテル樹脂が挙げられる。ここで、スチレン系モノマーとは、スチレン、又はスチレンの水素分子の単数若しくは複数個を、ハロゲン原子、炭素数1〜7の第1級若しくは第2級のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基又は少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される置換基で置換した化合物をいう。
本実施の形態に用いる(c)水添ブロック共重合体系樹脂(以下、「(c)成分」ともいう。)は、後述する(c1)水添ブロック共重合体及び/又は(c2)変性水添ブロック共重合体である。
(c1)水添ブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体である。
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロック、又はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。重合体ブロックAにおいて「ビニル芳香族化合物を主体とする」とは、重合体ブロックA中にビニル芳香族化合物単位を50質量%を超えて含有することを言い、ビニル芳香族化合物単位を70質量%以上含有することが好ましい。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロック、又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックである。重合体ブロックBにおいて「共役ジエン化合物を主体とする」とは、重合体ブロックB中に共役ジエン化合物単位を50質量%を超えて含有することを言い、共役ジエン化合物単位を70質量%以上含有することが好ましい。
ブロック共重合体としては、前記重合体ブロックAを「A」とし、前記重合体ブロックBを「B」とすると、例えばA−B−A型、A−B−A−B型、B−A−B−A型、(A−B−)n−X型(ここでnは1以上の整数、Xは四塩化ケイ素、四塩化スズなどの多官能カップリング剤の反応残基又は多官能性有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。)、A−B−A−B−A型等のブロック単位が結合した構造を有するビニル芳香族−共役ジエン化合物ブロック共重合体が好ましい。中でもA−B−A−B型、B−A−B−A型の構造を有するブロック共重合体は、A−B−A型の構造を有するブロック共重合体と比べ、(c)成分としての流動性に優れるためより好ましい。
また、(c1)水添ブロック共重合体において、前記ブロック共重合体のエチレン性二重結合(共役ジエン化合物単位における二重結合)に対する水素添加率としては、50〜100%であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。該水素添加率が上記範囲内であると、良好な耐熱性及び耐候性を有する樹脂組成物を得る観点から好ましい。
(c1)水添ブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。公知の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、特開昭47−11486号公報、特開昭49−66743号公報、特開昭50−75651号公報、特開昭54−126255号公報、特開昭56−10542号公報、特開昭56−62847号公報、特開昭56−100840号公報、特開平2−300218号公報、英国特許第1130770号明細書、米国特許第3281383号明細書、米国特許第3639517号明細書、英国特許第1020720号明細書、米国特許第3333024号明細書及び米国特許第4501857号明細書に記載の方法が挙げられる。
また、(c2)変性水添ブロック共重合体は、例えば、前記の(c1)水添ブロック共重合体と、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(エステル化合物や酸無水物化合物)とをラジカル発生剤の存在下又は非存在下に、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80〜350℃で反応させることによって得られる変性水添ブロック共重合体をいう。この場合、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜10質量%の割合で前記(c1)水添ブロック共重合体にグラフト化又は付加していることが好ましい。
(c)成分の数平均分子量(Mnc)は、好ましくは5,000〜1,000,000であり、より好ましくは100,000以下である。Mncを1,000,000以下とすると、樹脂組成物における(c)水添ブロック共重合体系樹脂の役割があくまでも、ポリマー(ポリプロピレン)−ポリマー(ポリフェニレンエーテル)間の乳化分散剤(混和剤)としての役割となる傾向にある。すなわち、粘度が高いポリマー(ポリプロピレン)−ポリマー(ポリフェニレンエーテル)の溶融バルク状態での乳化の際に、乳化分散剤(混和剤)としての(c)水添ブロック共重合体系樹脂を、溶融混合系内で好ましく拡散させるため、(c)水添ブロック共重合体の溶融粘度を考慮して、(c)成分の数平均分子量(Mnc)は、5,000〜1,000,000であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましい。
また、(c)成分中におけるビニル芳香族化合物単位(ビニル芳香族化合物由来の水添ブロック共重合体構成単位)の含有量は、30〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜48質量%、さらに好ましくは35〜45質量%である。該ビニル芳香族化合物単位の含有量が30質量%以上であると、樹脂組成物の機械的強度が向上する傾向にあり、該ビニル芳香族化合物単位の含有量が50質量%以下であると、耐熱性と耐衝撃性とのバランスに優れる樹脂組成物が得られる傾向にある。なお、本実施の形態において、ビニル芳香族化合物単位の含有量の測定は、紫外分光光度計(UV)によって行うことができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
本実施の形態の樹脂組成物は、耐衝撃性改良の観点から、少なくとも1種の(d)ブロック共重合体系樹脂(以下、「(d)成分」ともいう。)をさらに含む。本実施の形態に用いる(d)成分は、後述する(d1)ブロック共重合体及び/又は(d2)変性ブロック共重合体である。
(d1)ブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体であって、ビニル芳香族化合物単位(ビニル芳香族化合物由来のブロック共重合体構成単位)を10〜40質量%含み、数平均分子量(Mnd)が150,000以下である。また、前記重合体ブロックAの数平均分子量(MndA)は、21,000以下である。
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロック、又はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合体ブロックである。重合体ブロックAにおいて「ビニル芳香族化合物を主体とする」とは、重合体ブロックA中にビニル芳香族化合物を50質量%を超えて含有することを言い、ビニル芳香族化合物を70質量%以上含有することが好ましい。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロック又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックである。重合体ブロックBにおいて「共役ジエン化合物を主体とする」とは、重合体ブロックB中に共役ジエン化合物を50質量%を超えて含有することを言い、共役ジエン化合物を70質量%以上含有することが好ましい。
(d1)ブロック共重合体としては、前記重合体ブロックAを「A」とし、前記重合体ブロックBを「B」とすると、例えばA−B−A型、A−B−A−B型、B−A−B−A型、(A−B−)n−X型(ここでnは1以上の整数、Xは四塩化ケイ素、四塩化スズなどの多官能カップリング剤の反応残基又は多官能性有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。)、A−B−A−B−A型等のブロック単位が結合した構造を有するビニル芳香族−共役ジエン化合物のブロック共重合体が挙げられる。中でもA−B−A型ブロック共重合体が好ましい。
また、(d2)変性ブロック共重合体は、例えば、前記の(d1)ブロック共重合体と、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体とをラジカル発生剤の存在下、非存在下で溶融状態、溶液状態、スラリー状態で80〜350℃の温度下で反応させることによって得られる変性ブロック共重合体をいう。この場合、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜10質量%の割合で前記(d1)ブロック共重合体にグラフト化又は付加していることが好ましい。
また、(d)成分中に結合したビニル芳香族化合物単位(ビニル芳香族化合物由来のブロック共重合体構成単位)の含有量は、10〜40質量%であり、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜33質量%である。当該ビニル芳香族化合物単位の含有量が10質量%以上であると、樹脂組成物の機械的強度が向上し、40質量%以下であると、耐熱性と耐衝撃性とのバランスに優れる樹脂組成物が得られる。なお、本実施の形態において、ビニル芳香族化合物単位の含有量の測定は、紫外分光光度計(UV)によって行うことができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
(d)成分の数平均分子量(Mnd)は、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー System21を用いて以下の条件で測定することができる。カラムとして、昭和電工(株)製K−Gを1本、K−800RLを1本さらにK−800Rを1本の順番で直列につないだカラムを用い、カラム温度を40℃とし、溶媒をクロロホルムとし、溶媒流量を10mL/分とし、サンプル濃度をブロック共重合体1g/クロロホルム溶液1リットルとする。また、標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000,52000、30200、13800,3360、1300,550)を用いて検量線を作成する。検出部のUV(紫外線)の波長は、標準ポリスチレン及びブロック共重合体共に254nmに設定して測定する。また、(d)成分を形成する重合体ブロックAの数平均分子量(MndA)は、例えば、(d)成分がA−B−A型構造の場合、(d)成分の数平均分子量(Mnd)を基に、(d)成分の分子量分布が1、さらにビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAの2つが同一分子量として存在することを前提とし、(MndA)=(Mnd)×結合ビニル芳香族化合物量の割合÷2の計算式で求めることができる。なお、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体を合成する段階で、上記したブロック構造A及びブロック構造Bのシーケンスが明確になっている場合は、上記計算式に依存せずに、測定した(d)成分の数平均分子量(Mnd)をベースにブロック構造Aの割合から算出しても構わない。
本実施の形態の樹脂組成物において、(c)水添ブロック共重合体系樹脂と併用可能な上記の(d)ブロック共重合体系樹脂との質量比率((c):(d))は、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂が(a)ポリプロピレン系樹脂を含むマトリックス相中に安定した乳化分散状態となったポリマーアロイを得る観点から、好ましくは1:99〜99:1であり、より好ましくは10:90〜90:10であり、さらに好ましくは20:80〜80:20であり、特に好ましくは30:70〜70:30である。
本実施の形態の樹脂組成物は、(a)成分を含むマトリックス相と、(b)成分を含む分散相とを有することが好ましい。このようなモルフォロジーは、透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
本実施の形態の樹脂組成物においては、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂と、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン及びハイインパクトポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種との混合物も好適に用いることができる。
本実施の形態に係わる樹脂組成物は、下記測定方法により得られる−45℃の損失正接(−45℃tanδ)と、0℃の損失正接(0℃tanδ)との比(−45℃tanδ/0℃tanδ)が、好ましくは0.41以上、より好ましくは0.45以上、さらに好ましくは0.47以上である。
<損失正接(tanδ)の測定>
樹脂組成物から得られるISO試験片について、粘弾性測定機を用いて、引張りモード、振動周波数:10Hz、静的負荷歪み:0.2%、動的負荷歪み:0.1%、接触荷重:0.5N、昇温速度:3℃/min、温度範囲:−100℃〜160℃の温度掃引モードにおいて測定した際の−45℃及び0℃における損失正接(tanδ)。
本実施の形態の樹脂組成物は、例えば、上述した(a)〜(d)成分を含む原料を溶融混練して得られる。溶融混練機は、特に限定されず、公知の混練機を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられる。上記の中でも、二軸押出機が好ましい。具体的には、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等を用いることができる。
(1−2):(1−1)工程で得られた混練物に対して、(a)成分、(c)成分及び(d)成分からなる群より選択される少なくとも一成分の残量を溶融混練する工程。
(2−2):(2−1)工程で得られた混練物に対して、(a)成分及び(c)成分からなる群より選択される少なくとも一成分の残量と、(d)成分の一部又は全量を添加し、溶融混練する工程。
(2−3):(2−2)工程で得られた混練物に対して、(d)成分の残量を添加し、溶融混練する工程(ただし、(2−2)工程でd)成分の全量を添加した場合を除く。)。
(3−2):(3−1)工程で得られた混練物に対して、(a)成分及び(c)成分からなる群より選択される少なくとも一成分の残量を添加し、溶融混練する工程。
(3―3):(3−2)工程で得られた混練物に対して、(d)成分の全量を添加し、溶融混練する工程。
本実施の形態の成形体は、上述した樹脂組成物を含む。
各成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(移動相:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)により測定した。具体的には、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー System21を用いて以下の条件で測定した。該測定において、カラムとして、昭和電工(株)製K−Gを1本、K−800RLを1本さらにK−800Rを1本の順番で直列につないだカラムを用い、カラム温度を40℃とし、溶媒をクロロホルムとし、溶媒流量を10mL/分とし、サンプル濃度を、水添ブロック共重合体1g/クロロホルム溶液1リットルとした。また、標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000,52000、30200、13800,3360、1300,550)を用いて検量線を作成した。さらに、検出部のUV(紫外線)の波長は、標準ポリスチレン及び水添ブロック共重合体共に254nmに設定して測定した。
水添ブロック共重合体系樹脂における結合スチレン量(ビニル芳香族化合物単位の含有量)は、当該水添ブロック共重合体系樹脂を紫外線分光光度計(島津製作所製、UV−2450)により測定した。
水添ブロック共重合体系樹脂中の共役ジエン化合物単位における全ビニル結合量(全結合に対する1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の合計割合)は、当該水添ブロック共重合体系樹脂の水添前のブロック共重合体を赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−230)により測定し、ハンプトン法で算出した。
ブロック共重合体のエチレン性二重結合(共役ジエン化合物単位における二重結合)に対する水素添加率は、当該水添ブロック共重合体系樹脂を核磁気共鳴(NMR)(装置名:DPX−400 BRUKER社製)により測定した。
各成分の融点は、示差走査熱量計により測定した。
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
ポリフェニレンエーテル系樹脂の還元粘度は、0.5g/dLのクロロホルム溶液、30℃の条件で測定した。
1.(a)成分(ポリプロピレン系樹脂)
下記(a−1)及び(a−2)成分を(a)成分として用いた。
(a−1)プロピレンホモポリマー(融点:167℃、MFR:0.4g/10分)
(a−2)プロピレンホモポリマー(融点:165℃、MFR:6.0g/10分)
2,6−キシレノールを酸化重合してポリフェニレンエーテルホモポリマーを得た。得られたポリフェニレンエーテルホモポリマーを(b)成分として用いた。該ポリフェニレンエーテルホモポリマーの還元粘度は0.42であった。
水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン(1)−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン(2)のB−A−B−A型の構造を有する水添ブロック共重合体を常法によって合成した。合成した水添ブロック共重合体を(c)成分として用いた。該水添ブロック共重合体系樹脂の特性を以下に示す。
結合スチレン量:43質量%
水添ブロック共重合体中のポリブタジエン単位における全ビニル結合量(全結合に対する1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の合計割合):75%
数平均分子量(Mnc):98,000
ポリスチレンブロック(1)の数平均分子量(MncA):20,000
ポリスチレンブロック(2)の数平均分子量(MncA):22,000
ブロック共重合体のエチレン性二重結合(ポリブタジエン単位における二重結合)に対する水素添加率:99.9%
下記(d−1)〜(d−4)成分を(d)成分等として用いた。
ポリスチレン(1)−ポリブタジエン−ポリスチレン(2)のA−B−A型の構造を有するブロック共重合体を常法によって合成した。該ブロック共重合体(d−1)の特性を以下に示す。
結合スチレン量:30質量%
ポリブタジエン単位における全ビニル結合量(全結合に対する1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の合計割合):12%
数平均分子量(Mnd):91,000
ポリスチレンブロック(1)の数平均分子量(MndA):13,300
ポリスチレンブロック(2)の数平均分子量(MndA):14,000
ポリスチレン(1)−ポリブタジエン−ポリスチレン(2)のA−B−A型の構造を有するブロック共重合体を常法によって合成した。該ブロック共重合体(d−2)の特性を以下に示す。
結合スチレン量:30%
ポリブタジエン単位における全ビニル結合量(全結合に対する1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の合計割合):11%
数平均分子量(Mnd):136,000
ポリスチレンブロック(1)の数平均分子量(MndA):20,800
ポリスチレンブロック(2)の数平均分子量(MndA):20,000
ポリスチレン(1)−ポリブタジエン−ポリスチレン(2)のA−B−A型の構造を有するブロック共重合体を常法によって合成した。該ブロック共重合体(d−3)の特性を以下に示す。
結合スチレン量:42%
ポリブタジエン単位における全ビニル結合量(全結合に対する1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の合計割合):9%
数平均分子量(Mnd):110,000
ポリスチレンブロック(1)の数平均分子量(MndA):22,000
ポリスチレンブロック(2)の数平均分子量(MndA):24,000
ポリスチレン(1)−ポリブタジエン−ポリスチレン(2)のA−B−A型の構造を有するブロック共重合体を常法によって合成した。該ブロック共重合体(d−4)の特性を以下に示す。
結合スチレン量:26%
ポリブタジエン単位における全ビニル結合量(全結合に対する1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の合計割合):14%
数平均分子量(Mnd):173,000
ポリスチレンブロック(1)の数平均分子量(MndA):22,000
ポリスチレンブロック(2)の数平均分子量(MndA):23,000
第一原料供給口、第二原料供給口(押出機のほぼ中央に位置する)及び第三原料供給口
を有する二軸押出機(コペリオン社製 ZSK−25)を用い、上記(a)〜(d)の各
成分を、表1に示した組成で、押出機の第一〜第三原料供給口に供給して溶融混練し、樹
脂組成物をペレットとして得た。なお、前記二軸押出機は、バレル温度270〜320℃
、スクリュー回転数300rpmに設定した。得られた樹脂組成物の各物性の評価を以下
のとおりに行った。測定結果を表1に示す。
実施例及び比較例で得た樹脂組成物のペレットを、240〜280℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件で射出成形することにより、引伸び度測定用試験片を作成した。作成した試験片を、ギアオーブンを用い80℃の環境下に24時間静置し熱履歴処理を行った。熱履歴処理を行った試験片について、ISO527に準じて引張伸びを測定した。このとき、試験片10本の引張伸びの値から標準偏差を計算した。
実施例及び比較例で得た樹脂組成物のペレットを、240〜280℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件で射出成形することにより、シャルピー衝撃強度測定用テストピースを得た。得られたテストピースを、ギアオーブンを用い80℃の環境下に24時間静置し熱履歴処理を行った。熱履歴処理後のテストピースについて、23℃及び−40℃環境下にてISO179に準じてシャルピー衝撃強度を測定した。
実施例及び比較例で得た樹脂組成物のペレットを、240〜280℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件で射出成形することにより、DTUL測定用テストピースを得た。得られたテストピースを、ギアオーブンを用い80℃の環境下に24時間静置し熱履歴処理を行った。熱履歴処理後のテストピースを用いて、ISO75に準拠し、1.8MPa荷重及び0.45MPa荷重での荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
実施例及び比較例で得た樹脂組成物ペレットを、240〜280℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件で射出成形することにより、ISO試験片を作製した。当該試験片を粘弾性測定機「EPLEXOR500N(GABO社製)」に装着し、引張りモード、振動周波数が10Hz、静的負荷歪みを0.2%、動的負荷歪みを0.1%、接触荷重を0.5N、昇温速度が3℃/分、温度範囲が−100℃〜160℃の温度掃引モードにおいて測定し、−45℃及び0℃における読み取ったtanδ値からtanδ比(−45℃tanδ/0℃tanδ)を算出した。
Claims (12)
- (a)ポリプロピレン系樹脂、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(c)水添ブロ
ック共重合体系樹脂、及び(d)ブロック共重合体系樹脂を含み、
前記(c)成分が、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック
Aと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロ
ック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体及び/又は該水添ブロック共重合
体の変性物であり、
前記(d)成分が、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック
Aと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロ
ック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の変性物であり、
前記(c)成分中の共役ジエン化合物単位の全結合において、1,2−ビニル結合及び
3,4−ビニル結合の合計割合が45〜90%であり、
前記(d)成分が、ビニル芳香族化合物単位を10〜40質量%含み、
前記(d)成分の数平均分子量(Mnd)が、150,000以下であり、
前記(d)成分を形成する重合体ブロックAの数平均分子量(MndA)が、21,0
00以下であり、
前記(a)及び(b)成分の質量比率((a):(b))が、25:75〜40:60である、樹脂組成物。 - 前記(c)成分を形成する重合体ブロックAの数平均分子量(MncA)が、8,00
0以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。 - 前記(c)成分が、ビニル芳香族化合物単位を30〜50質量%含む、請求項1又は2
に記載の樹脂組成物。 - 前記(c)成分において、前記ブロック共重合体のエチレン性二重結合(共役ジエン化
合物単位における二重結合)に対する水素添加率が50〜100%である、請求項1〜3
のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 前記(a)及び(b)成分の合計含有量100質量部に対して、前記(c)及び(d)
成分の合計含有量が1〜50質量部であり、
前記(c)及び(d)成分の質量比率((c):(d))が、1:99〜99:1であ
る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 前記(c)成分の数平均分子量(Mnc)が、100,000以下である、請求項1〜
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 前記(d)成分を形成する重合体ブロックAの数平均分子量(MndA)が、18,0
00以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 前記(d)成分中の共役ジエン化合物単位の全結合において、1,2−ビニル結合及び
3,4−ビニル結合の合計割合が20%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載
の樹脂組成物。 - 前記(a)成分が、ホモポリプロピレン及び/又はブロックポリプロピレンであり、
前記(a)成分のメルトフローレート(MFR:JIS K7210に準拠し、230
℃、2.16kgの荷重で測定)が0.1〜100g/10分である、請求項1〜8のい
ずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 前記(a)成分を含むマトリックス相と、前記(b)成分を含む分散相とを有する、請
求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。 - 下記測定方法により得られる−45℃の損失正接(−45℃tanδ)と、0℃の損失
正接(0℃tanδ)との比(−45℃tanδ/0℃tanδ)が0.41以上である
、請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物;
<損失正接(tanδ)の測定>
樹脂組成物から得られるISO試験片について、粘弾性測定機を用いて、引張りモード、
振動周波数:10Hz、静的負荷歪み:0.2%、動的負荷歪み:0.1%、接触荷重:
0.5N、昇温速度:3℃/分、温度範囲:−100℃〜160℃の温度掃引モードにお
いて測定した際の−45℃及び0℃における損失正接(tanδ)。 - 請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
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