JP2009280514A - 抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 副作用が弱く、優れた抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を提供する。また、この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】 副作用が弱く、優れた抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体とはルテオリン1分子にシステイン、フェニルアラニン、チロシンからなるトリペプチドの2分子及び有機酸としてカフェオイルキナ酸の2分子がエステル結合している。その製造方法は、キク花の粉砕物、金の粉末、大豆粉末に、紅麹菌を添加し、発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とし、主たる工程としては発酵工程及び還元工程である。発酵工程においては、紅麹菌による酵素反応及び金による触媒作用によりトリペプチドとルテオリンが結合し、アルカリ還元することにより結合が安定し、抗酸化作用が持続される。
【選択図】 なし
【解決手段】 副作用が弱く、優れた抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体とはルテオリン1分子にシステイン、フェニルアラニン、チロシンからなるトリペプチドの2分子及び有機酸としてカフェオイルキナ酸の2分子がエステル結合している。その製造方法は、キク花の粉砕物、金の粉末、大豆粉末に、紅麹菌を添加し、発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とし、主たる工程としては発酵工程及び還元工程である。発酵工程においては、紅麹菌による酵素反応及び金による触媒作用によりトリペプチドとルテオリンが結合し、アルカリ還元することにより結合が安定し、抗酸化作用が持続される。
【選択図】 なし
Description
この発明は、抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体及びその製造方法に関するものである。
癌は、日本人の死因の第一であり、1年間に約30万人が癌により死亡し、また、医療費負担の原因となっている。このため、医師、製薬業界をはじめ厚生労働省や健康保健業界などが癌を解決すべく、様々な対策と研究開発を実施し、特に、抗酸化作用を呈する物質の探索と開発が待たれている。
さらに、癌に対する薬物治療としては、種々の抗癌剤が開発され、癌細胞の増殖を抑制する作用、癌を分化させる作用、免疫力を回復させる作用、血管新生の抑制作用を持つ医薬品などが開発され、病院などの医療現場でも利用されている。
このうち、癌細胞に特有に働く作用を持つ物質は副作用の少ない点から望まれている。化学合成した抗癌剤の多くが増殖する正常細胞にも作用することにより、重篤な副作用が発症することが問題となっている。たとえば、シスプラチンや5−FUは抗癌作用が強いものの、その副作用も重篤で、嘔吐、貧血、免疫低下、感染症などの副作用が発現する結果、抗癌剤の使用量と使用期間が制限されている。
一方、発癌過程の多くは酸化により発生することが判明しており、この酸化を防止する作用、つまり、抗酸化作用を示す物質が発癌や癌そのものの治療に有効であると考えられている。
加えて、抗酸化作用を呈する物質は、肌に対する酸化物質からの防御としいう点でも、産業上の利用価値は高い。
抗酸化作用を呈する物質にも、化学的に合成されたビタミンC誘導体があるものの、それらは分解性が悪く、生体への蓄積性などの問題点が認められる。そこで、安全性が高く、有効性が高い天然物由来の抗酸化作用が望まれている。
食用にも利用されているキク花には、ルテオリンなどの種々のポリフェノールやタンニンが含有されており、その利用について、いくつかの発明がなされており、発明の一つとして、菊花含有健康食品が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
食品としての利用分野では、菊花含有ドリンク剤の発明があり、菊花またはその抽出物を含有することを特徴としている(例えば、特許文献2参照)。
化粧料としては、菊花(キッカ)の生薬抽出物を配合したことを特徴とする美白化粧料の発明があり、ここでは菊花の抽出物が低濃度で優れたメラニン生成抑制作用を示すことが報告されている(例えば、特許文献3参照)。
また、菊花由来の炎症サイトカイン抑制作用に関して、テルペノイド誘導体の発明が認められ、その製造方法として菊花を魚類とともに納豆菌により発酵させている(例えば、特許文献4参照)。
優れた抗酸化作用を示すフラボノイドとしてルテオリンがあるが、ルテオリンに関する発明としては、新規フラボノイド化合物及びその製造方法並びにそれを有効成分とする抗酸化剤の発明がある(例えば、特許文献5参照)。
また、ルテオリンに関する製造方法において発酵を利用したものとしては、リポキシゲナーゼ阻害剤の例があり、ここでは、ニガナを乳酸菌、酵母、枯草菌と発酵させている(例えば、特許文献6参照)。
しかし、上記の発明に関わる成分について、特に、抗酸化作用を示す物質の同定には至らず、その作用も軽度であるという課題がある。
そこで、今回、抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を発明し、さらに、この物質を製造するために、キク花を原料とし、触媒として金を利用した発酵技術を特徴とする製造方法を発明したので、以下に説明する。
特開平9−37737
特開平8−322526
特開2002−68958
特開2007−176816
特開2006−265249
特開2005−89385
前記したように化学合成されたシスプラチンや5−FUなどの抗癌剤には重篤な副作用が存在し、患者のQOLを低下させ、使用量と使用期間を限定させているという問題がある。
また、化学的に合成されたビタミンC誘導体やポリフェノール誘導体は生体の蓄積性や副作用が課題となり、使用に制限が認められる。
一方、天然由来の抗酸化作用を呈する物質についてその安全性は高いものの、抗酸化作用が軽度であるという問題がある。そこで、副作用が弱く、抗酸化作用の優れた天然物由来物質が望まれている。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体に関するものである。
請求項2に記載の発明は、キク花の粉砕物、金の粉末及び大豆粉末に紅麹菌を添加して発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とする抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の製造方法に関するものである。
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体によれば、副作用が弱く、優れた抗酸化作用が発揮される。
請求項2に記載の製造方法によれば、有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を効率良く製造することができる。
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、下記の式(1)で示される抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体について説明する。
ここでいう有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体とは、1分子のルテオリンに2分子のトリペプチド分子がエステル結合している。トリペプチドは、N末からチロシン、フェニルアラニン、システインの順であり、C末はシステインである。いずれも、ペプチド結合している。
さらに、C末のシステインのカルボキシル基はルテオリンの水酸基とエステル結合している。
さらに、有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の有機酸は、2分子のカフェオイルキナ酸であり、カフェオイルキナ酸のカルボキシル基がルテオリンの水酸基とエステル結合している。
すなわち、ルテオリン1分子にトリペプチド2分子及びカフェオイルキナ酸2分子がエステル結合している。
これらのトリペプチドを形成しているアミノ酸はすべてL型である。
この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、2つのトリペプチドのシステイン部分のSH基が還元状態を維持することから、強い抗酸化作用が維持される。ルテオリンとこの2つのトリペプチド部位がエステル結合していることにより、ルテオリンの構造が維持される。
また、トリペプチドのチロシン残基の水酸基が酸化物質を還元する性質を有する。
ルテオリンに結合したカフェオイルキナ酸はカフェオイル基の水酸基が抗酸化作用を示し、特に、キナ酸及びカフェ酸の水酸基がイオン化し、酸化物質の求核分子と反応し、酸化物質を還元する。
さらに、キナ酸とカフェ酸部分がルテオリンのベンゼン環との間で二重結合の電子を共有し、電子雲が安定されることから、広範囲で持続性の高い抗酸化作用が発揮される。
この抗酸化作用により、癌細胞の細胞膜が安定に維持され、癌細胞に必要な成長因子の受容体、例えば、上皮性成長因子(EGF)受容体や血小板由来成長因子(PDGF)受容体の働きを抑制することから、癌細胞の増殖を抑制する。
この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、その抗酸化力により癌細胞の血管新生に必要な血管平滑筋細胞を抑制し、新生血管の形成を抑制する。
この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体のペプチドには、システイン残基とチロシン残基がペアで存在することにより、キレート作用を発揮し、ベンツピレン、ダイオキシンなどの有害な化学物質やディーゼル粒子、アスベストのような微小な粒子を包みこむことにより、有害性を無毒化することができる特徴を有する。
さらに、ヒ素、鉛、水銀、カドミウムなどの有害金属に対しては、2つのSH基がキレート作用を発現し、有害金属を捕捉して、かつ、ペプチドが折りたたむように、有害金属を包む込み、有害作用を消失させる。
また、この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、過剰に摂取した場合、消化管、肺、血中や臓器内エステラーゼにより分解されてトリペプチドとルテオリンと有機酸に分解される。
構成するトリペプチドはアミノ酸に分解され、さらに、二酸化イオウと炭酸ガスに分解されて腎臓から***されることから、安全性が高く、より好ましい。また、ルテオリンと有機酸は分解された後、肝臓や腎臓で代謝され、分解されて腎臓を経由して尿として体外に***される。
さらに、この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、インターロイキン(IL)−1や腫瘍壊死因子(TNF)アルファなどの炎症性サイトカイン産生やコラゲナーゼを抑制することから、様々な炎症を抑制する。
また、この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、皮膚細胞の角質細胞に対して皮膚からの剥離を促進することにより、肌の再生力を高め、さらに、抗炎症作用を介して有害物質によるアトピーや接触性アレルギーを改善することから好ましい。
さらに、この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、ペプチドのSH基が還元作用を呈しビタミンCの働きを補助して酸化生成物であるメラニンを分解し、シミの原因物質を消去し、コラーゲン産生を促進する。
有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、植物と大豆や米糠を原料として発酵させ、還元させることにより生成される。発酵工程を促進するために、金や銀などの触媒作用を有する金属が利用される。
すなわち、この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の製造過程において、電子を供与する物質が必要であり、この反応には安定した触媒には金の原子が最も適している。つまり、ペプチドとルテオリンの結合を触媒し、かつ、水酸基を維持して還元力を保つために、必要である。
ルテオリンの供給源としては含有量の高いキク花やマリーゴールドの花が優れ、また、加工しやすいことから好ましい。キク花は、食用としても、日本では山形や秋田で栽培され、利用されており、食経験も豊富であることから好ましい。
この製造工程において触媒として利用する金の粉末は、溶媒中で金原子とになり、陽イオン化することによって金原子の電子をルテオリン誘導体に供与し、ペプチド結合を維持させる。金原子は、触媒としてのみ働き、ルテオリン誘導体には取り込まれず、製造過程では除外される。
また、この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、金の粉末と植物細胞、動物細胞、酵母や微生物による発酵で得られ、生合成させて、得ることができる。金の粉末は、回収されて電気的に還元され、再生されることから、その一部は繰り返して利用できる。
この有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、液体または粉末して得られる。これは、医薬品製剤として、抗癌剤、癌抑制剤や抗炎症剤として利用できる。
医薬品素材として利用する場合、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を分離して精製することは、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
医薬品として、注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤は、抗酸化作用に基づき、癌の予防を目的として原料加工や食品製造の原材料として利用される。また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、ペットの癌や酸化を抑制する目的として、飼料やサプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、油溶性クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
得られた化粧料は、抗酸化作用及び抗炎症作用を介してアトピー患者の角質改善と皮膚再生を促進する。また、抗酸化作用を介して美白作用を呈することから、美白用化粧料や医薬部外品としても利用される。
さらに、抗酸化作用を応用した土壌改善剤として田や畑の有害物質除去の目的で農場に利用される。また、化学工場では周辺の土壌汚染や作業環境を改善する目的として利用される。
次に、キク花の粉砕物、金の粉末及び大豆粉末に紅麹菌を添加して発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程を特徴とする請求項1に記載の抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の製造方法について説明する。
ここでいう抗酸化作用を示す有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体とは、前記の有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体である。
原料として用いるキク花とは、学名Chrysanthemum morifoliumで代表される甘菊花、カンキッカ又はイエギクの花であり、その他のキク属Chrysanthemumに属する菊の花であり、杭菊花、貢菊花又はコウキッカである。キク花の色は、白色、黄色、紫色、橙色などのいずれでも良い。
ここでいうキク花は、日本産、中国産、アメリカ産、アフリカ産のキクの花のいずれも用いられる。
このうち、食用として利用される山形や秋田などの東北地方のキク花は、好ましい。また、日本や中国産のものは、農薬の使用履歴が追跡でき、品質が安定し、安価であることから、好ましい。
キク花は露地栽培、ハウス栽培、水耕栽培、照明栽培のいずれの栽培で得られたものでも良い。
キク花は新鮮なもの、乾燥されたもののいずれでも良い。
採取されたキク花は水道水で洗浄されることは好ましい。
キク花は粉砕される。粉砕は、粉砕機として株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20などが用いられる。
原料として用いる金の粉末は、純金の塊、金地金や砂金、金箔などを粉砕して得られる。特に、純度99%以上の純金は、不純物が少ないことから原料として好ましい。金塊は粗く削られた後に、石臼や粉砕機により粉末とされる。3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。米常商事株式会社より購入した三菱マテリアル製の金地金は純度が高く、反応性が高いことから、好ましい。
また、米糠を原料として追加しても良い。米糠を追加することにより、発酵が促進され、目的とする化合物の生成量が増加することから好ましい。
ここで用いる米糠は、いずれの産地でも利用できるものの、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。このうち、有機栽培された米や無農薬で栽培された米から得られる米糠が有害な農薬や金属を含有しないことから、好ましい。
原料となる大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆が有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕されることにより、発酵が効率的に進行しやすいことから好ましい。
さらに、キク花、金の粉末と大豆は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
用いる紅麹菌は、有用な食用菌であり、ここでは沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。このうち、紅麹本舗の製造である中国原産で学名Monascaceaeである紅麹菌が高い反応性を呈することから好ましい。
この紅麹菌は金の原子の存在下で、大豆とキク花を同時に発酵させ、プロテアーゼ、エステルを結合させる抱合酵素、エステル結合酵素を生成する。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は、キク花の粉砕物1重量に対し、金の粉末は0.0001〜0.01重量、大豆粉末は0.5〜3重量及び紅麹菌は0.001〜0.02重量が好ましい。
紅麹菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発を促進させ、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は、30〜53℃に加温され、発酵は、2日間から14日間行われる。発酵の工程管理は、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体をHPLCやTLCにより定量すること、ならびに、菌体の増殖性を確認することにより、実施する。
この発酵の工程によって、ルテオリンが金の原子を触媒としてトリペプチドに結合するものの、その結合は不安定でエステラーゼなどの酵素により分解されやすい。これを解決するため、以下の示すアルカリ還元を実施することが必要である。
前記の発酵により生成された発酵物は20%から80%のエタノールを含有する含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。
得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に効率良く実施できることから好ましい。
この発酵物はアルカリ還元される。アルカリ還元は、アルカリ還元装置やアルカリ還元整水器により実施されることが好ましい。たとえば、ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」、エヌアイシー製のアルカリ還元水製造装置「テクノスーパー502」、マルタカ製「ミネリア・CE−212」、クレッセント製「アキュラブルー」、株式会社日本鉱泉研究所製「ミネラル還元整水器「元気の水」」などの装置を用いることがさらに好ましい。
アルカリ還元を実施する際の溶媒としては、アルカリ還元を効率的に実施させることから、20%から80%のエタノールを含有する含水エタノール溶液が好ましい。
この還元の工程により、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の結合が安定化される。
前記の還元反応物から、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜30倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜35℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
このようにして得られた有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は、液体または粉末として得られる。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは例であり、素材、原料や検体の違いにより常識の範囲内で条件を変更させることにより、実産業に利用される。
日本の山形県で無農薬により栽培された甘菊花9kgを採取し、水道水により十分に洗浄し、乾燥機により乾燥させた。
この甘菊花2kgを粉砕機(三力製作所製、三力式万能粉砕機)に供し、粉砕してキク花の粉砕物とした。
米常商事株式会社より購入した金地金100gを粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕して、粒子サイズが3〜4マイクロメーターの金の粉砕物90gを得た。
北海道産の大豆をミキサー(クイジナート)に供し、大豆の粉砕物1kgを得た。さらに、前記のキク花の粉砕物、大豆の粉砕物及び金の粉末をオートクレーブに供し、121℃20分間、滅菌した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水10kgを添加し、攪拌した。
粉末紅麹菌(紅麹本舗製)10gを滅菌した大豆粉末50g及び精製水1Lとともに40℃で1日間、前培養させた培養液を用意し、これを紅麹菌の前培養液とした。
前記の前培養した紅麹菌の溶液を前記のキク花の粉砕物、金の粉末、大豆の粉砕物を入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、40〜45℃の温度範囲内で加温し、発酵させた。
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、サンプリングを行い、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の生成物を測定した。
その方法は、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)に発酵液を供して分析し、目的とする物質の生成を確認した。
その結果、発酵8日後に、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体が十分量生成されたため、発酵を終了させた。発酵を停止後、発酵液に30℃のエタノール5kgを添加し、攪拌した。
珪藻土を敷いたろ過器にこの発酵液を供してろ過した。得られたろ過液をセルラキッス(株式会社ゼノン製)に供した。
得られたろ液をアルカリ還元装置(ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」)に供してアルカリ還元化させた。
こうして得られたアルカリ還元物を日本エフディ製の凍結乾燥機に供し、さらに、紫外線滅菌機に供して低温にて滅菌し、目的とする有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を粉末として139g得た。これを検体1として以下の試験に供した。
以下に、有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
(試験例1)
上記のように得られた検体1を抽出媒体に溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製、AC−250)で解析した。構造解析の結果、N末からチロシン、フェニルアラニン、チロシンからなるトリペプチド、ルテオリン及びカフェオイルキナ酸を結合した目的とする結合体を同定した。
このルテオリンの2つの水酸基と前記のトリペプチドはエステル結合していた。また、ルテオリンの側鎖に、有機酸としてカフェオイルキナ酸がエステル結合していることが判明した。
以下に、前記の有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体の酸化還元電位試験について述べる。
(試験例2)
(試験例2)
前記の検体1の0.1gを水道水(東京都)の100mlに溶解した。これを酸化還元電位計(佐藤商事製、OPRプロ)にて酸化還元電位を測定し、抗酸化作用を調べた。
その結果、溶解後1分後の検体1の酸化還元電位はマイナス329mVであり、溶解後24時間まで、マイナス電位を維持した。一方、水道水の酸化還元電位はプラス435mVであった。以上の結果、検体1は抗酸化作用を呈すると結論された。
以下に、抗酸化作用の確認試験について述べる。
(試験例3)
(試験例3)
DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)ラジカル消去活性及びスーパーオキシド消去活性を指標として抗酸化作用を測定した。DPPHラジカル消去活性は篠原らの方法に準じて測定した。用いたDPPHラジカル消去活性及びスーパーオキシド消去活性は、抗酸化作用を調べる方法として確立されており、試験成績が豊富である。
DPPH(50%エタノール)の0.1M溶液に検体1または対照物質としたビタミンC(Sigma製)を溶解した溶液と混合し、DPPHラジカルの消去活性を520nmの吸光度を測定した。トロックス(Sigma製)を標準物質として1マイクロモルに対する活性を1DPPH単位とした。
スーパーオキシド消去活性は、ヒポキサンチン/キサンチンオキシダーゼ(SOD)系でスーパーオキシドを発生させて、検体1または対照物質としたビタミンCの溶液を添加して電子スピン共鳴(ESR)で測定した。スーパーオキシド消去酵素(SOD)を標準として活性を測定した。
その結果、DPPHラジカル消去活性について、検体1の活性は、26,000単位/gであった。一方、ビタミンCの活性は、6,000単位/gとなり、検体1はビタミンCより4倍以上の強い活性を示した。
また、スーパーオキシド消去活性について、検体1の活性は、240万SOD単位/gとなり、ビタミンCは40万単位/gとなった。検体1はビタミンCに比して6倍の強い活性を示した。
以下に、ヒト癌細胞を用いた抗癌試験について述べる。
(試験例4)
(試験例4)
ATCCより購入したヒト由来子宮癌細胞であるHeLa細胞を用いた。培養液として、5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した、10000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに、前記の実施例1で得られた検体1及び対照の抗癌医薬品としてシスプラチンをそれぞれ0.01mg/ml及び0.1mg/mlの最終濃度で添加してさらに、48時間培養した。
さらに、癌細胞のアポトーシスについても観察した。つまり、癌細胞を剥離後、細胞数を計数し、ヘキスト33352で蛍光染色した。これを蛍光顕微鏡し、核が***したアポトーシスの細胞数を計数した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。その結果、検体1の0.01mg/mlの添加では、細胞数が対照群に比して平均値として23%にまで、癌細胞数が減少し、また、アポトーシスの出現率は45%であった。
また、検体1の0.1mg/mlの添加では、細胞数が対照群に比して15%にまで癌細胞数が減少し、また、アポトーシスの出現率は67%であった。
その結果、対照薬のシスプラチンの0.01mg/mlの添加では、癌細胞数は対照群の値に比して90%となり、アポトーシスの出現率は10%であった。
また、対照薬のシスプラチンの0.1mg/mlの添加では、細胞数が対照群の値に比して81%となり、アポトーシスの出現率は13%であった。
以上の結果から、検体1にはアポトーシスによる癌細胞の破壊作用が観察された。その強さは対照とした抗癌医薬品であるシスプラチンの10倍以上であった。
正常なヒト由来皮膚線維芽細胞で同様に試験した結果では、検体1の添加によっても、細胞数に変化はなく、正常細胞に対する安全性が確認された。しかし、対照薬であるシスプラチンでは、正常細胞の破壊が観察され、強い毒性が認められた。
以下に、マウス由来メラノーマ細胞S−100を用いたマウス癌移植試験について述べる。
(試験例5)
(試験例5)
ATCCより購入したマウス由来メラノーマ細胞S−100を用いた。この細胞を5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)にて培養し、この100000個の細胞をICRマウスの背部皮下に、注入した。
このマウスに、前記の実施例1で得られた検体1を0.1mg/kg及び1mg/kgの投与量とし、28日間毎日、1回ずつ経口投与した。なお、1群あたり10匹の動物を用い、対照として蒸留水を投与した。
なお、対照薬としてシスプラチンを0.1mg/kg及び1mg/kgの投与量で腹腔内投与した。
蒸留水を投与した動物の腫瘍重量の平均値は、10.56gであった。これに対して、検体1の0.1mg/kg投与の腫瘍重量の平均値は、3.35gであった。さらに、検体1の1mg/kg投与の腫瘍重量の平均値は、1.03gであった。
対照として、0.1mg/kgのシスプラチンを投与した動物の腫瘍重量は、平均値として8.21gであった。さらに、1mg/kgのシスプラチンを投与した動物の腫瘍重量は、平均値として6.19gであった。
これらの結果、検体1の投与によって、腫瘍の縮小と重量の低下が認められ、検体1には腫瘍縮小作用が確認された。その縮小作用は、抗癌医薬品であるシスプラチンの10倍以上であった。
また、検体1を投与した動物には、死亡例や副作用は全く認められなかった。一方、シスプラチンの投与により10例中3例が死亡し、かつ、全例で血尿、腎臓障害及び貧血が観察され、副作用が確認された。
以下に、有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体からなる化粧料の実施例について説明する。
化粧料用混合機にモノステアリン酸ポリエチレングリコール1g、親油型モノステアリン酸グリセリン1g、馬油エステル2g及びオレイン酸2gを加熱し、溶解した。
得られた溶液に、実施例1で得られた検体1を30g添加し、さらに、α−トコフェロール0.1g及び精製水60gを添加した。これらを攪拌混合し、懸濁した後、冷却して化粧料として乳液を得た。これを実施例2の検体2とした。試験対照の化粧料として実施例1で得られた検体1の粉末のみを除外した乳液を調製した。
以下に、前記の化粧料の効果及び副作用を評価した試験について示す。
(試験例6)
(試験例6)
33〜69才の健常女性の10人に、実施例2で得られた乳液10mLを顔面右半分に、14日間塗布した。顔面左半分には検体1のみを除外した乳液を塗布した。
塗布前及び塗布14日に、顔面左右それぞれの水分保持力(インテグラル製、CM825)及び皮膚弾性力(インテグラル製、衝撃波測定装置、RVM600)を測定した。
その結果、顔面左半分に比し、実施例2の化粧料を塗布した顔面右半分の水分保持力及び皮膚弾性力は、それぞれ136%及161%となり、いずれの値も改善された。皮膚弾性力は皮膚の角質剥離と皮膚の再生を表すことから、有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体を含む化粧料は美容に効果的であると考えられた。
これらの結果、実施例2の化粧料は水分保持力と弾性力が向上されることが確認された。なお、この化粧料の塗布による副作用や異常な使用感は認められなかった。
本発明で得られる有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は抗酸化作用を呈し、さらに、癌細胞を破壊する作用を有することから、癌に対して効果を呈し、かつ、副作用が少ないことから、癌患者や癌発症を予防する観点から国民のQOLを改善し、健康な労働人口を向上させ、かつ、医療費削減にも貢献できる。
本発明で得られる有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は肌細胞を改善する作用を有することから、アトピーや肌トラブルに悩む方に貢献し、化粧品業界の発展に寄与する。
本発明で得られる有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は食品としても利用できることから、抗酸化作用を利用した食品業界の発展に寄与する。
本発明で得られる有機酸ペプチド結合ルテオリン誘導体は医薬品製剤として用いられ、医薬品業界の発展に寄与する。
本製造方法は、高度な発酵技術を利用するものであり、新しい発酵技術の向上と発酵産業の進展に貢献するものである。
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