以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
(光ヘッド装置の第一の実施の形態)図1に本発明の光ヘッド装置の第一の実施の形態を示す。光学系1aおよび光学系1bは、半導体レーザと、ディスクからの反射光を受光する光検出器を備えている。光学系1a内の半導体レーザの波長は405nm、光学系1b内の半導体レーザの波長は650nmである。
干渉フィルタ2aは、波長405nmの光を透過させ、波長650nmの光を反射させる働きをする。光学系1a内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2a、および波長選択フィルタ3aを透過し、平行光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ0.1mmの次世代規格のディスク5a上に集光される。ディスク5aからの反射光は、対物レンズ4a、波長選択フィルタ3a、および干渉フィルタ2aを逆向きに透過し、光学系1a内の光検出器で受光される。
また、光学系1b内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2aで反射され、波長選択フィルタ3aを透過し、発散光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ0.6mmのDVD規格のディスク5b上に集光される。ディスク5bからの反射光は、対物レンズ4a、波長選択フィルタ3aを逆向きに透過し、干渉フィルタ2aで反射され、光学系1b内の光検出器で受光される。
対物レンズ4aは、対物レンズ4aに平行光として入射した波長405nmの光が厚さ0.1mmの基板を透過する際に生じる球面収差を打ち消す球面収差を有する。波長405nmの光は、対物レンズ4aに平行光として入射するため、波長405nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は0である。
これに対し、対物レンズ4aに平行光として入射した波長650nmの光が厚さ0.6mmの基板を透過する際には球面収差が残留する。対物レンズ4aに発散光として波長650nmの光を入射させると、対物レンズ4aの倍率変化に伴う新たな球面収差が生じ、これが残留する球面収差を低減する方向に働く。波長650nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は、0.076に設定される。
ここで、物点から対物レンズ4aの所定の高さrに向かう近軸光線が対物レンズ4aの光軸となす角をθo、対物レンズ4aの所定の高さrから像点に向かう近軸光線が対物レンズ4aの光軸となす角をθiとすると、対物レンズ4aの倍率は、tanθo/tanθiで与えられる。
物点から対物レンズ4aの物体側主点までの距離をlo、対物レンズ4aの像側主点から像点までの距離をliとすると、tanθo=r/lo、tanθi=r/liとなる。波長405nmの光は、対物レンズ4aに平行光として入射するためθo=0、lo=∞であり、対物レンズ4aの倍率は0となる。波長650nmの光は、対物レンズ4aに発散光として入射するためθo≠0、loは有限である。このときのloの値すなわち物点の位置は、対物レンズ4aの倍率が0.076となるように定められる。
図2(a)は、波長選択フィルタ3aの一方の面から見た平面図である。図2(b)は、波長選択フィルタ3aの他方の面から見た平面図である。図2(c)は、波長選択フィルタ3aの断面図である。波長選択フィルタ3aには、ガラス基板8a上に同心円状の位相フィルタパタン6aが形成されている。また、ガラス基板8b上に誘電体多層膜7a、7bが形成されている。波長選択フィルタ3aは、ガラス基板8aの位相フィルタパタン6aが形成されていない面と、ガラス基板8bの誘電体多層膜7a、7bが形成されていない面とが接着剤により貼り合わされた構成である。
図中に点線で示す対物レンズ4aの有効径を2aとしたとき、位相フィルタパタン6aは、これより小さい直径2bの円形の領域内にのみ形成されている。位相フィルタパタン6aの断面は、図2(c)のような4レベルの階段状である。位相フィルタパタン6aの各段の高さは、各段におけるパタンのある部分とない部分とを通る光の位相差が波長405nmに対して2π(0と等価)となるように設定されている。このとき、この位相差は、波長650nmに対しては1.25π(−0.75πと等価)となる。
従って、位相フィルタパタン6aは、波長405nmの光に対しては位相分布を変化させず、波長650nmの光に対しては位相分布を変化させる。波長選択フィルタ3aを用いない場合、対物レンズ4aの倍率を0.076に設定することにより、対物レンズ4aに平行光として入射した波長650nmの光が厚さ0.6mmの基板を透過する際に残留する球面収差が低減される。位相フィルタパタン6aは、波長650nmの光に対する位相分布の変化が対物レンズ4aの倍率0.076におけるこの低減後の球面収差をさらに低減するように設計されている。
一方、誘電体多層膜7aは、直径2bの円形の領域内にのみ形成されており、誘電体多層膜7bは、直径2bの円形の領域外にのみ形成されている。誘電体多層膜7aは、波長405nmの光、波長650nmの光を全て透過させる働きをし、誘電体多層膜7bは、波長405nmの光を全て透過させ、波長650nmの光を全て反射させる働きをする。
また、波長405nmに対し、誘電体多層膜7aを透過する光と誘電体多層膜7bを透過する光との位相差は2πの整数倍に調整されている。すなわち、波長選択フィルタ3aにおいて、波長405nmの光は全て透過し、波長650nmの光は直径2bの円形の領域内では全て透過し、直径2bの円形の領域外では全て反射される。従って、対物レンズ4aの焦点距離をfaとすると、波長405nm、650nmの光に対する実効的な開口数はそれぞれa/fa、b/faで与えられる。例えばa/fa=0.7、b/fa=0.6に設定される。
図3(a)に光学系1aの構成を示す。波長405nmの半導体レーザ9aからの出射光は、コリメータレンズ10aで平行光化される。平行光化された出射光は、偏光ビームスプリッタ11にP偏光として入射してほぼ100%が透過し、1/4波長板12を透過して直線偏光から円偏光に変換されてディスク5aに向かう。
ディスク5aからの反射光は、1/4波長板12を透過して円偏光から往路と偏光方向が直交した直線偏光に変換される。変換された反射光は、偏光ビームスプリッタ11にS偏光として入射してほぼ100%が反射され、円筒レンズ13a、レンズ14aを透過して光検出器15aで受光される。光検出器15aは、円筒レンズ13a、レンズ14aの2つの焦線の中間に設置されている。
図3(b)に光検出器15aの構成を示す。ディスク5aからの反射光は、4分割された受光部17a〜17d上に光スポット16aを形成する。受光部17a〜17dからの出力をそれぞれV17a〜V17dで表わすと、フォーカス誤差信号は、公知の非点収差法により(V17a+V17d)−(V17b+V17c)の演算から得られる。トラック誤差信号は、公知のプッシュプル法により(V17a+V17b)−(V17c+V17d)の演算から得られる。ディスク5aからのRF信号は、V17a+V17b+V17c+V17dの演算から得られる。
図4(a)に光学系1bの構成を示す。波長650nmの半導体レーザ9bからの出射光は、コリメータレンズ10bで平行光化され、ハーフミラー18aを約50%が透過し、凹レンズ19aを透過して平行光から発散光に変換されてディスク5bに向かう。
ディスク5bからの反射光は、凹レンズ19aを透過して収束光から平行光に変換され、ハーフミラー18aで約50%が反射され、円筒レンズ13b、レンズ14bを透過して光検出器15bで受光される。光検出器15bは、円筒レンズ13b、レンズ14bの2つの焦線の中間に設置されている。
図4(b)に光検出器15bの構成を示す。ディスク5bからの反射光は、4分割された受光部17e〜17h上に光スポット16bを形成する。受光部17e〜17hからの出力をそれぞれV17e〜V17hで表わすと、フォーカス誤差信号は、公知の非点収差法により(V17e+V17h)−(V17f+V17g)の演算から得られる。トラック誤差信号は、公知の位相差法によりV17e+V17h、V17f+V17gの位相差から得られる。ディスク5bからのRF信号は、V17e+V17f+V17g+V17hの演算から得られる。
図5に波長選択フィルタ3aにおける位相フィルタパタン6aの設計結果を示す。左側の列は、対物レンズ4aの焦点距離で規格化した対物レンズ4aへの入射光の高さである。右側の列は、対応する位相フィルタパタン6aの段数である。
図6に、波長650nmの光に対する波面収差の標準偏差が最小になる最良像面の位置における波面収差の計算結果を示す。図6(a)は、対物レンズ4aの倍率変化を用いて波長選択フィルタ3aを用いない場合である。図6(b)は、対物レンズ4aの倍率変化を用いてさらに波長選択フィルタ3aを用いた場合である。図中の横軸は波面収差、縦軸は対物レンズ4aの焦点距離で規格化した対物レンズ4aへの入射光の高さである。
波面収差の標準偏差は、対物レンズ4aの倍率変化を用いてさらに波長選択フィルタ3aを用いることにより0.047λに低減される。この値は、マレシャルの規範として知られている波面収差の標準偏差の許容値である0.07λを下回っている。また、図5に示すように、位相フィルタパタン6aを構成する同心円状の領域の数が5と少ないため各領域の幅が広くなる。対物レンズ4aの焦点距離を例えば2.57mmとすると、最も外側の領域の幅は、約59.1μmになる。従って、上記のような各領域の幅が広い位相フィルタパタン6aを有する波長選択フィルタ3aを所望の精度で作製することは極めて容易である。
波長選択フィルタ3aにおける誘電体多層膜7a、7bは、いずれも例えば二酸化チタンを材質とする高屈折率層と、例えば二酸化シリコンを材質とする低屈折率層とを交互に積層した構成である。図7(a)に誘電体多層膜7a、7bに対する透過率の波長依存性の設計結果、図7(b)に誘電体多層膜7a、7bに対する透過光の位相の波長依存性の設計結果を示す。
図中の点線、一点鎖線はそれぞれ誘電体多層膜7a、7bに対する設計結果である。図7(a)より、誘電体多層膜7aは、波長405nmの光、波長650nmの光を全て透過させ、誘電体多層膜7bは、波長405nmの光を全て透過させ、波長650nmの光を全て反射させることがわかる。
また、図7(b)より、波長405nmに対し、誘電体多層膜7a、7bの透過光の位相が一致していることから、透過光の位相差が2πの整数倍に調整されていることがわかる。誘電体多層膜の各層の厚さを厚くすると、図7(a)に示す透過率の波長依存性の曲線、図7(b)に示す透過光の位相の波長依存性の曲線は、共に右側にシフトする。
また、各層の厚さを薄くすると、図7(a)に示す透過率の波長依存性の曲線、図7(b)に示す透過光の位相の波長依存性の曲線は、共に左側にシフトする。従って、誘電体多層膜7aに関しては波長405nm、650nmにおける透過率がほぼ100%となる範囲内で各層の厚さを変化させる。誘電体多層膜7bに関しては波長405nmにおける透過率がほぼ100%、波長650nmにおける透過率がほぼ0%となる範囲内で各層の厚さを変化させる。波長405nmにおける誘電体多層膜7a、7bの透過光の位相が一致するように調整する。
これらにより、上記の設計が実現できる。波長405nmにおいては一つの誘電体多層膜の透過光の位相を基準にして残り一つの誘電体多層膜の透過光の位相を調整すれば良いので、誘電体多層膜の各層の厚さという一つの自由度があればこの調整は可能である。
(光ヘッド装置の第二の実施の形態)図8に本発明の光ヘッド装置の第二の実施の形態を示す。光学系1a、光学系1bおよび光学系1cは、半導体レーザと、ディスクからの反射光を受光する光検出器を備えている。光学系1a内の半導体レーザの波長は405nm、光学系1b内の半導体レーザの波長は650nm、光学系1c内の半導体レーザの波長は780nmである。
干渉フィルタ2aは、波長405nmの光を透過させ、波長650nmの光を反射させる働きをする。また、干渉フィルタ2bは、波長405nm、650nmの光を透過させ、波長780nmの光を反射させる働きをする。光学系1a内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2a、干渉フィルタ2b、および波長選択フィルタ3bを透過し、平行光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ0.1mmの次世代規格のディスク5a上に集光される。
ディスク5aからの反射光は、対物レンズ4a、波長選択フィルタ3b、干渉フィルタ2b、および干渉フィルタ2aを逆向きに透過し、光学系1a内の光検出器で受光される。
また、光学系1b内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2aで反射され、干渉フィルタ2b、波長選択フィルタ3bを透過し、発散光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ0.6mmのDVD規格のディスク5b上に集光される。ディスク5bからの反射光は、対物レンズ4a、波長選択フィルタ3b、および干渉フィルタ2bを逆向きに透過し、干渉フィルタ2aで反射され、光学系1b内の光検出器で受光される。
さらに、光学系1c内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2bで反射され、波長選択フィルタ3bを透過し、発散光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ1.2mmのCD規格のディスク5c上に集光される。ディスク5cからの反射光は、対物レンズ4a、波長選択フィルタ3bを逆向きに透過し、干渉フィルタ2bで反射され、光学系1c内の光検出器で受光される。
対物レンズ4aは、対物レンズ4aに平行光として入射した波長405nmの光が厚さ0.1mmの基板を透過する際に生じる球面収差を打ち消す球面収差を有する。
波長405nmの光は、対物レンズ4aに平行光として入射するため、波長405nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は0である。これに対し、対物レンズ4aに平行光として入射した波長650nmの光が厚さ0.6mmの基板を透過する際には球面収差が残留する。対物レンズ4aに発散光として波長650nmの光を入射させると、対物レンズ4aの倍率変化に伴う新たな球面収差が生じ、これが残留する球面収差を低減する方向に働く。波長650nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は0.076に設定される。
また、対物レンズ4aに平行光として入射した波長780nmの光が厚さ1.2mmの基板を透過する際には球面収差が残留する。対物レンズ4aに発散光として波長780nmの光を入射させると、対物レンズ4aの倍率変化に伴う新たな球面収差が生じ、これが残留する球面収差を低減する方向に働く。波長780nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は、0.096に設定される。
ここで、物点から対物レンズ4aの所定の高さrに向かう近軸光線が対物レンズ4aの光軸となす角をθo、対物レンズ4aの所定の高さrから像点に向かう近軸光線が対物レンズ4aの光軸となす角をθiとすると、対物レンズ4aの倍率は、tanθo/tanθiで与えられる。
物点から対物レンズ4aの物体側主点までの距離をlo、対物レンズ4aの像側主点から像点までの距離をliとすると、tanθo=r/lo、tanθi=r/liとなる。波長405nmの光は、対物レンズ4aに平行光として入射するためθo=0、lo=∞であり、対物レンズ4aの倍率は0となる。
波長650nmの光は、対物レンズ4aに発散光として入射するためθo≠0、loは有限である。このときのloの値すなわち物点の位置は、対物レンズ4aの倍率が0.076となるように定められる。波長780nmの光は、対物レンズ4aに発散光として入射するためθo≠0、loは有限である。このときのloの値すなわち物点の位置は、対物レンズ4aの倍率が0.096となるように定められる。
図9(a)は、波長選択フィルタ3bの一方の面から見た平面図である。図9(b)は、波長選択フィルタ3bの他方の面から見た平面図である。図9(c)は、波長選択フィルタ3bの断面図である。波長選択フィルタ3bには、ガラス基板8a上に同心円状の位相フィルタパタン6aが形成されている。また、ガラス基板8b上に誘電体多層膜7c、7d、7eが形成されている。波長選択フィルタ3bは、ガラス基板8aの位相フィルタパタン6aが形成されていない面と、ガラス基板8bの誘電体多層膜7c、7d、7eが形成されていない面とが接着剤により貼り合わされた構成である。
図中に点線で示す対物レンズ4aの有効径を2aとしたとき、位相フィルタパタン6aは、これより小さい直径2bの円形の領域内にのみ形成されている。位相フィルタパタン6aの断面は、図9(c)のような4レベルの階段状である。位相フィルタパタン6aの各段の高さは、各段におけるパタンのある部分とない部分とを通る光の位相差が波長405nmに対して2π(0と等価)となるように設定されている。このとき、この位相差は、波長650nm、780nmに対してはそれぞれ1.25π(−0.75πと等価)、1.04π(−0.96πと等価)となる。
従って、位相フィルタパタン6aは、波長405nmの光に対しては位相分布を変化させず、波長650nm、780nmの光に対しては位相分布を変化させる。波長選択フィルタ3bを用いない場合、対物レンズ4aの倍率を0.076に設定することにより、対物レンズ4aに平行光として入射した波長650nmの光が厚さ0.6mmの基板を透過する際に残留する球面収差が低減される。位相フィルタパタン6aは、波長650nmの光に対する位相分布の変化が対物レンズ4aの倍率0.076におけるこの低減後の球面収差をさらに低減するように設計されている。
一方、誘電体多層膜7cは、直径2bよりさらに小さい直径2cの円形の領域内にのみ形成されている。誘電体多層膜7dは、直径2cの円形の領域外かつ直径2bの円形の領域内にのみ形成されている。誘電体多層膜7eは、直径2bの円形の領域外にのみ形成されている。誘電体多層膜7cは、波長405nmの光、波長650nmの光、波長780nmの光を全て透過させる働きをする。誘電体多層膜7dは、波長405nmの光、波長650nmの光を全て透過させ、波長780nmの光を全て反射させる働きをする。誘電体多層膜7eは、波長405nmの光を全て透過させ、波長650nmの光、波長780nmの光を全て反射させる働きをする。
また、波長405nmに対し、誘電体多層膜7cを透過する光と誘電体多層膜7dを透過する光と誘電体多層膜7eを透過する光の位相差は2πの整数倍に調整されている。波長650nmに対し、誘電体多層膜7cを透過する光と誘電体多層膜7dを透過する光の位相差は2πの整数倍に調整されている。すなわち、波長選択フィルタ3bにおいて、波長405nmの光は全て透過し、波長650nmの光は直径2bの円形の領域内では全て透過し、直径2bの円形の領域外では全て反射される。波長780nmの光は、直径2cの円形の領域内では全て透過し、直径2cの円形の領域外では全て反射される。
従って、対物レンズ4aの焦点距離をfaとすると、波長405nm、650nm、780nmの光に対する実効的な開口数はそれぞれa/fa、b/fa、c/faで与えられる。例えばa/fa=0.7、b/fa=0.6、c/fa=0.45に設定される。
光学系1aの構成は、図3(a)に示す通りである。光学系1aに備えられた光検出器15aの構成は、図3(b)に示す通りである。また、光学系1bの構成は、図4(a)に示す通りである。光学系1bに備えられた光検出器15bの構成は、図4(b)に示す通りである。
図10(a)に光学系1cの構成を示す。波長780nmの半導体レーザ9cからの出射光は、回折光学素子20により0次光、±1次回折光の3つの光に分割される。これらの光は、コリメータレンズ10cで平行光化され、ハーフミラー18bを約50%が透過し、凹レンズ19bを透過して平行光から発散光に変換されてディスク5cに向かう。ディスク5cからの3つの反射光は、凹レンズ19bを透過して収束光から平行光に変換され、ハーフミラー18bで約50%が反射され、円筒レンズ13c、レンズ14cを透過して光検出器15cで受光される。光検出器15cは、円筒レンズ13c、レンズ14cの2つの焦線の中間に設置されている。
図10(b)に光検出器15cの構成を示す。ディスク5cからの3つの反射光のうち回折光学素子20からの0次光は、4分割された受光部17i〜17l上に光スポット16cを形成する。回折光学素子20からの+1次回折光は、受光部17m上に光スポット16dを形成する。回折光学素子20からの−1次回折光は受光部17n上に光スポット16eを形成する。
受光部17i〜17nからの出力をそれぞれV17i〜V17nで表わすと、フォーカス誤差信号は、公知の非点収差法により(V17i+V17l)−(V17j+V17k)の演算から得られる。トラック誤差信号は、公知の3ビーム法によりV17m−V17nの演算から得られる。ディスク5cからのRF信号は、V17i+V17j+V17k+V17lの演算から得られる。
波長選択フィルタ3bにおける位相フィルタパタン6aの設計結果は、図5に示す通りである。また、波長650nmの光に対する波面収差の標準偏差が最小になる最良像面の位置における波面収差の計算結果は、図6に示す通りである。
図11に、波長780nmの光に対する波面収差の標準偏差が最小になる最良像面の位置における波面収差の計算結果を示す。図11(a)は、対物レンズ4aの倍率変化を用いて波長選択フィルタ3bを用いない場合である。図11(b)は、対物レンズ4aの倍率変化を用いてさらに波長選択フィルタ3bを用いた場合である。図中の横軸は波面収差、縦軸は対物レンズ4aの焦点距離で規格化した対物レンズ4aへの入射光の高さである。
波面収差の標準偏差は、対物レンズ4aの倍率変化を用いてさらに波長選択フィルタ3bを用いることにより0.021λに低減される。この値は、マレシャルの規範として知られている波面収差の標準偏差の許容値である0.07λを下回っている。また、図5に示すように、位相フィルタパタン6aを構成する同心円状の領域の数が5と少ないため各領域の幅が広くなる。対物レンズ4aの焦点距離を例えば2.57mmとすると、最も外側の領域の幅は約59.1μmになる。従って、上記のような各領域の幅が広い位相フィルタパタン6aを有する波長選択フィルタ3bを所望の精度で作製することは極めて容易である。
波長選択フィルタ3bにおける誘電体多層膜7c、7d、7eは、いずれも例えば二酸化チタンを材質とする高屈折率層と、例えば二酸化シリコンを材質とする低屈折率層とを交互に積層した構成である。図7(a)に誘電体多層膜7c、7d、7eに対する透過率の波長依存性の設計結果、図7(b)に誘電体多層膜7c、7d、7eに対する透過光の位相の波長依存性の設計結果を示す。図中の実線、点線、一点鎖線は、それぞれ誘電体多層膜7c、7d、7eに対する設計結果である。
図7(a)より、誘電体多層膜7cは、波長405nmの光、波長650nmの光、波長780nmの光を全て透過させる。誘電体多層膜7dは、波長405nmの光、波長650nmの光を全て透過させ、波長780nmの光を全て反射させる。誘電体多層膜7eは、波長405nmの光を全て透過させ、波長650nmの光、波長780nmの光を全て反射させることがわかる。
また、図7(b)より、波長405nmに対し、誘電体多層膜7c、7d、7eの透過光の位相が一致していることから、透過光の位相差が2πの整数倍に調整されていることがわかる。また、波長650nmに対し、誘電体多層膜7c、7dの透過光の位相が一致していることから、透過光の位相差が2πの整数倍に調整されていることがわかる。
誘電体多層膜の各層の厚さを厚くすると、図7(a)に示す透過率の波長依存性の曲線、図7(b)に示す透過光の位相の波長依存性の曲線は、共に右側にシフトする。これに対して、各層の厚さを薄くすると、図7(a)に示す透過率の波長依存性の曲線、図7(b)に示す透過光の位相の波長依存性の曲線は、共に左側にシフトする。
また、誘電体多層膜の層数を増やすと、図7(a)に示す透過率の波長依存性の曲線、図7(b)に示す透過光の位相の波長依存性の曲線は、共に傾きが急になる。これに対し、層数を減らすと、図7(a)に示す透過率の波長依存性の曲線、図7(b)に示す透過光の位相の波長依存性の曲線は、共に傾きが緩やかになる。
従って、誘電体多層膜7cに関しては、波長405nm、650nm、780nmにおける透過率がほぼ100%となる範囲内で各層の厚さおよび層数を変化させる。誘電体多層膜7dに関しては、波長405nm、650nmにおける透過率がほぼ100%、波長780nmにおける透過率がほぼ0%となる範囲内で各層の厚さおよび層数を変化させる。誘電体多層膜7eに関しては、波長405nmにおける透過率がほぼ100%、波長650nm、780nmにおける透過率がほぼ0%となる範囲内で各層の厚さおよび層数を変化させる。波長405nmにおける誘電体多層膜7c、7d、7eの透過光の位相が一致し、波長650nmにおける誘電体多層膜7c、7dの透過光の位相が一致するように調整する。
これらの条件を満足することにより、上記の設計が実現できる。波長405nmにおいては一つの誘電体多層膜の透過光の位相を基準にして残り二つの誘電体多層膜の透過光の位相を調整すれば良い。従って、誘電体多層膜の各層の厚さおよび層数という二つの自由度があればこの調整は可能である。また、波長650nmにおいては一つの誘電体多層膜の透過光の位相を基準にして残り一つの誘電体多層膜の透過光の位相を調整すれば良い。従って、誘電体多層膜の各層の厚さという一つの自由度があればこの調整は可能である。
図1、図8に示す実施の形態においては、波長選択フィルタ3a、3bは、対物レンズ4aと共にアクチュエータによりフォーカシング方向、トラッキング方向に駆動される。対物レンズ4aのみがアクチュエータによりフォーカシング方向、トラッキング方向に駆動される場合、波長選択フィルタ3a、3bにおける位相フィルタパタン6aの中心と対物レンズ4aの中心がフォーカシング方向、トラッキング方向にずれる。よって、対物レンズ4aに発散光として入射し位相フィルタパタン6aで位相分布の変化を受ける光に収差が生じることになる。しかしながら、波長選択フィルタ3a、3bが対物レンズ4aと共にアクチュエータによりフォーカシング方向、トラッキング方向に駆動される場合、このような収差は生じない。
図1、図8に示す実施の形態においては、波長選択フィルタ3a、3bの法線は、対物レンズ4aの光軸に対して僅かに傾いている。波長選択フィルタ3a、3bの法線が対物レンズ4aの光軸に対して平行な場合、波長選択フィルタ3a、3bで反射された迷光が光学系1a、1b、1cに備えられた光検出器15a、15b、15cに入射し、フォーカス誤差信号、トラック誤差信号にオフセットが生じる。しかしながら、波長選択フィルタ3a、3bの法線が対物レンズ4aの光軸に対して僅かに傾いている場合、このようなオフセットは生じない。
図2に示す波長選択フィルタ3a、図9に示す波長選択フィルタ3bは、ガラス基板8a上に位相フィルタパタン6aが形成され、ガラス基板8b上に誘電体多層膜7a、7b、7c、7d、7eが形成された構成である。これに対し、位相フィルタパタンがガラスまたはプラスチックの成形により基板と一体で形成された構成も可能である。また、位相フィルタパタンまたは誘電体多層膜が対物レンズ上に形成された構成も可能である。
(光ヘッド装置の第三の実施の形態)図12に本発明の光ヘッド装置の第三の実施の形態を示す。光学系1aおよび光学系1dは、半導体レーザと、ディスクからの反射光を受光する光検出器とを備えている。光学系1a内の半導体レーザの波長は405nm、光学系1d内の半導体レーザの波長は650nmである。干渉フィルタ2aは、波長405nmの光を透過させ、波長650nmの光を反射させる働きをする。
光学系1a内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2a、開口制御素子21aを透過し、平行光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ0.1mmの次世代規格のディスク5a上に集光される。ディスク5aからの反射光は、対物レンズ4a、開口制御素子21a、干渉フィルタ2aを逆向きに透過し、光学系1a内の光検出器で受光される。
また、光学系1d内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2aで反射され、開口制御素子21aを透過し、発散光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ0.6mmのDVD規格のディスク5b上に集光される。ディスク5bからの反射光は、対物レンズ4a、開口制御素子21aを逆向きに透過し、干渉フィルタ2aで反射され、光学系1d内の光検出器で受光される。対物レンズ4aは、対物レンズ4aに平行光として入射した波長405nmの光が厚さ0.1mmの基板を透過する際に生じる球面収差を打ち消す球面収差を有する。
波長405nmの光は、対物レンズ4aに平行光として入射するため、波長405nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は0である。これに対し、対物レンズ4aに平行光として入射した波長650nmの光が厚さ0.6mmの基板を透過する際には球面収差が残留する。対物レンズ4aに発散光として波長650nmの光を入射させると、対物レンズ4aの倍率変化に伴う新たな球面収差が生じ、これが残留する球面収差を低減する方向に働く。
波長650nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は、0.076に設定される。ここで、物点から対物レンズ4aの所定の高さrに向かう近軸光線が対物レンズ4aの光軸となす角をθo、対物レンズ4aの所定の高さrから像点に向かう近軸光線が対物レンズ4aの光軸となす角をθiとすると、対物レンズ4aの倍率は、tanθo/tanθiで与えられる。物点から対物レンズ4aの物体側主点までの距離をlo、対物レンズ4aの像側主点から像点までの距離をliとすると、tanθo=r/lo、tanθi=r/liとなる。
波長405nmの光は、対物レンズ4aに平行光として入射するためθo=0、lo=∞であり、対物レンズ4aの倍率は、0となる。波長650nmの光は、対物レンズ4aに発散光として入射するためθo≠0、loは有限であり、このときのloの値すなわち物点の位置は、対物レンズ4aの倍率が0.076となるように定められる。
図13(a)は、開口制御素子21aの平面図、図13(b)は、開口制御素子21aの断面図である。開口制御素子21aは、ガラス基板8b上に誘電体多層膜7a、7bが形成された構成である。図中に点線で示す対物レンズ4aの有効径を2aとしたとき、誘電体多層膜7aは、これより小さい直径2bの円形の領域内にのみ形成されている。誘電体多層膜7bは、直径2bの円形の領域外にのみ形成されている。
誘電体多層膜7aは、波長405nmの光、波長650nmの光を全て透過させる働きをする。誘電体多層膜7bは、波長405nmの光を全て透過させ、波長650nmの光を全て反射させる働きをする。また、波長405nmに対し、誘電体多層膜7aを透過する光と誘電体多層膜7bを透過する光との位相差は、2πの整数倍に調整されている。すなわち、開口制御素子21aにおいて、波長405nmの光は全て透過し、波長650nmの光は直径2bの円形の領域内では全て透過し、直径2bの円形の領域外では全て反射される。従って、対物レンズ4aの焦点距離をfaとすると、波長405nm、650nmの光に対する実効的な開口数はそれぞれa/fa、b/faで与えられる。例えばa/fa=0.7、b/fa=0.6に設定される。
光学系1aの構成は、図3(a)に示す通りであり、光学系1aに備えられた光検出器15aの構成は、図3(b)に示す通りである。
図14に光学系1dの構成を示す。波長650nmの半導体レーザ9bからの出射光は、コリメータレンズ10bで平行光化され、ハーフミラー18aを約50%が透過し、球面収差補正素子22a、凹レンズ19aを透過して平行光から発散光に変換されてディスク5bに向かう。ディスク5bからの反射光は、凹レンズ19a、球面収差補正素子22aを透過して収束光から平行光に変換され、ハーフミラー18aで約50%が反射され、円筒レンズ13b、レンズ14bを透過して光検出器15bで受光される。光検出器15bは、円筒レンズ13b、レンズ14bの2つの焦線の中間に設置されている。光学系1dに備えられた光検出器15bの構成は、図4(b)に示す通りである。
球面収差補正素子22aの一方の面は平面、他方の面は非球面である。球面収差補正素子22aは、波長650nmの光に対して位相分布を変化させる。球面収差補正素子22aを用いない場合、対物レンズ4aの倍率を0.076に設定することにより、対物レンズ4aに平行光として入射した波長650nmの光が厚さ0.6mmの基板を透過する際に残留する球面収差が低減される。球面収差補正素子22aは、波長650nmの光に対する位相分布の変化が対物レンズ4aの倍率0.076におけるこの低減後の球面収差をほぼ完全に補正するように設計されている。なお、球面収差補正素子22aは、凹レンズ19aと一体化することも可能である。
開口制御素子21aにおける誘電体多層膜7a、7bは、いずれも例えば二酸化チタンを材質とする高屈折率層と、例えば二酸化シリコンを材質とする低屈折率層とを交互に積層した構成である。誘電体多層膜7a、7bに対する透過率の波長依存性の設計結果は、図7(a)に示す通りである。誘電体多層膜7a、7bに対する透過光の位相の波長依存性の設計結果は、図7(b)に示す通りである。
(光ヘッド装置の第四の実施の形態)図15に本発明の光ヘッド装置の第四の実施の形態を示す。光学系1a、光学系1dおよび光学系1eは、半導体レーザと、ディスクからの反射光を受光する光検出器とを備えている。光学系1a内の半導体レーザの波長は405nm、光学系1d内の半導体レーザの波長は650nm、光学系1e内の半導体レーザの波長は780nmである。干渉フィルタ2aは、波長405nmの光を透過させ、波長650nmの光を反射させる働きをする。また、干渉フィルタ2bは、波長405nm、650nmの光を透過させ、波長780nmの光を反射させる働きをする。
光学系1a内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2a、干渉フィルタ2b、開口制御素子21bを透過し、平行光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ0.1mmの次世代規格のディスク5a上に集光される。ディスク5aからの反射光は、対物レンズ4a、開口制御素子21b、干渉フィルタ2b、干渉フィルタ2aを逆向きに透過し、光学系1a内の光検出器で受光される。
また、光学系1d内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2aで反射され、干渉フィルタ2b、開口制御素子21bを透過し、発散光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ0.6mmのDVD規格のディスク5b上に集光される。ディスク5bからの反射光は、対物レンズ4a、開口制御素子21b、干渉フィルタ2bを逆向きに透過し、干渉フィルタ2aで反射され、光学系1d内の光検出器で受光される。
さらに、光学系1e内の半導体レーザからの出射光は、干渉フィルタ2bで反射され、開口制御素子21bを透過し、発散光として対物レンズ4aに入射し、基板厚さ1.2mmのCD規格のディスク5c上に集光される。ディスク5cからの反射光は、対物レンズ4a、開口制御素子21bを逆向きに透過し、干渉フィルタ2bで反射され、光学系1e内の光検出器で受光される。対物レンズ4aは、対物レンズ4aに平行光として入射した波長405nmの光が厚さ0.1mmの基板を透過する際に生じる球面収差を打ち消す球面収差を有する。
波長405nmの光は、対物レンズ4aに平行光として入射するため、波長405nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は、0である。これに対し、対物レンズ4aに平行光として入射した波長650nmの光が厚さ0.6mmの基板を透過する際には球面収差が残留する。対物レンズ4aに発散光として波長650nmの光を入射させると、対物レンズ4aの倍率変化に伴う新たな球面収差が生じ、これが残留する球面収差を低減する方向に働く。波長650nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は0.076に設定される。
また、対物レンズ4aに平行光として入射した波長780nmの光が厚さ1.2mmの基板を透過する際には球面収差が残留する。対物レンズ4aに発散光として波長780nmの光を入射させると、対物レンズ4aの倍率変化に伴う新たな球面収差が生じ、これが残留する球面収差を低減する方向に働く。波長780nmの光に対する対物レンズ4aの倍率は0.096に設定される。
ここで、物点から対物レンズ4aの所定の高さrに向かう近軸光線が対物レンズ4aの光軸となす角をθo、対物レンズ4aの所定の高さrから像点に向かう近軸光線が対物レンズ4aの光軸となす角をθiとすると、対物レンズ4aの倍率はtanθo/tanθiで与えられる。物点から対物レンズ4aの物体側主点までの距離をlo、対物レンズ4aの像側主点から像点までの距離をliとすると、tanθo=r/lo、tanθi=r/liとなる。波長405nmの光は対物レンズ4aに平行光として入射するためθo=0、lo=∞であり、対物レンズ4aの倍率は、0となる。
波長650nmの光は、対物レンズ4aに発散光として入射するためθo≠0、loは有限であり、このときのloの値すなわち物点の位置は、対物レンズ4aの倍率が0.076となるように定められる。波長780nmの光は、対物レンズ4aに発散光として入射するためθo≠0、loは有限であり、このときのloの値すなわち物点の位置は、対物レンズ4aの倍率が0.096となるように定められる。
図16(a)は、開口制御素子21bの平面図である。図16(b)は、開口制御素子21bの断面図である。開口制御素子21bは、ガラス基板8b上に誘電体多層膜7c、7d、7eが形成された構成である。図中に点線で示す対物レンズ4aの有効径を2aとしたとき、誘電体多層膜7cは、これより小さい直径2bよりさらに小さい直径2cの円形の領域内にのみ形成されている。誘電体多層膜7dは、直径2cの円形の領域外かつ直径2bの円形の領域内にのみ形成されている。誘電体多層膜7eは、直径2bの円形の領域外にのみ形成されている。
誘電体多層膜7cは、波長405nmの光、波長650nmの光、波長780nmの光を全て透過させる働きをする。誘電体多層膜7dは、波長405nmの光、波長650nmの光を全て透過させ、波長780nmの光を全て反射させる働きをする。誘電体多層膜7eは、波長405nmの光を全て透過させ、波長650nmの光、波長780nmの光を全て反射させる働きをする。また、波長405nmに対し、誘電体多層膜7cを透過する光と誘電体多層膜7dを透過する光と誘電体多層膜7eを透過する光との位相差は2πの整数倍に調整されている。波長650nmに対し、誘電体多層膜7cを透過する光と誘電体多層膜7dを透過する光との位相差は2πの整数倍に調整されている。
すなわち、開口制御素子21bにおいて、波長405nmの光は全て透過し、波長650nmの光は直径2bの円形の領域内では全て透過し、直径2bの円形の領域外では全て反射される。波長780nmの光は直径2cの円形の領域内では全て透過し、直径2cの円形の領域外では全て反射される。従って、対物レンズ4aの焦点距離をfaとすると、波長405nm、650nm、780nmの光に対する実効的な開口数はそれぞれa/fa、b/fa、c/faで与えられる。例えばa/fa=0.7、b/fa=0.6、c/fa=0.45に設定される。
光学系1aの構成は、図3(a)に示す通りであり、光学系1aに備えられた光検出器15aの構成は、図3(b)に示す通りである。また、光学系1dの構成は、図14に示す通りであり、光学系1dに備えられた光検出器15bの構成は、図4(b)に示す通りである。
図17に光学系1eの構成を示す。波長780nmの半導体レーザ9cからの出射光は、回折光学素子20により0次光、±1次回折光の3つの光に分割される。これらの光は、コリメータレンズ10cで平行光化され、ハーフミラー18bを約50%が透過し、球面収差補正素子22b、凹レンズ19bを透過して平行光から発散光に変換されてディスク5cに向かう。ディスク5cからの3つの反射光は、凹レンズ19b、球面収差補正素子22bを透過して収束光から平行光に変換され、ハーフミラー18bで約50%が反射され、円筒レンズ13c、レンズ14cを透過して光検出器15cで受光される。光検出器15cは、円筒レンズ13c、レンズ14cの2つの焦線の中間に設置されている。光学系1eに備えられた光検出器15cの構成は、図10(b)に示す通りである。
球面収差補正素子22bの一方の面は平面、他方の面は非球面である。球面収差補正素子22bは、波長780nmの光に対して位相分布を変化させる。球面収差補正素子22bを用いない場合、対物レンズ4aの倍率を0.096に設定することにより、対物レンズ4aに平行光として入射した波長780nmの光が厚さ1.2mmの基板を透過する際に残留する球面収差が低減される。球面収差補正素子22bは、波長780nmの光に対する位相分布の変化が対物レンズ4aの倍率0.096におけるこの低減後の球面収差をほぼ完全に補正するように設計されている。なお、球面収差補正素子22bは凹レンズ19bと一体化することも可能である。
開口制御素子21bにおける誘電体多層膜7c、7d、7eは、いずれも例えば二酸化チタンを材質とする高屈折率層と例えば二酸化シリコンを材質とする低屈折率層とを交互に積層した構成である。誘電体多層膜7c、7d、7eに対する透過率の波長依存性の設計結果は、図7(a)に示す通りであり、誘電体多層膜7c、7d、7eに対する透過光の位相の波長依存性の設計結果は、図7(b)に示す通りである。
図12、図15に示す実施の形態においては、対物レンズ4aがアクチュエータによりトラッキング方向に駆動されると、球面収差補正素子22a、22bの中心と対物レンズ4aの中心がトラッキング方向にずれるため、球面収差補正素子22a、22bで位相分布の変化を受け、対物レンズ4aに発散光として入射する光にコマ収差が生じる。
しかしながら、このコマ収差は、対物レンズ4aを図示しないアクチュエータによりディスク5a、5b、5cのラジアル方向に傾けることで補正することができる。対物レンズ4aをディスク5a、5b、5cのラジアル方向に傾けるとコマ収差が生じる。そこで、対物レンズ4aのラジアル方向の傾きを調整して対物レンズ4aと球面収差補正素子22a、22bの中心ずれに起因するコマ収差を相殺するコマ収差を対物レンズ4aで発生させることにより、対物レンズ4aと球面収差補正素子22a、22bの中心ずれに起因するコマ収差が補正される。
(光ヘッド装置の第五、六の実施の形態)図18に本発明の光ヘッド装置の第五の実施の形態を示す。本実施の形態は、図12に示す実施の形態における干渉フィルタ2aと開口制御素子21aとの間に、リレーレンズ23a、23bが設けられた構成である。また、図19に本発明の光ヘッド装置の第六の実施の形態を示す。本実施の形態は、図15に示す実施の形態における干渉フィルタ2bと開口制御素子21bとの間に、リレーレンズ23a、23bが設けられた構成である。
一般に、ディスクの基板の厚さが設計値からずれると、基板厚ずれに起因する球面収差により集光スポットの形状が乱れ、記録再生特性が悪化する。この球面収差は、光源の波長に反比例し、対物レンズの開口数の4乗に比例するため、光源の波長が短く対物レンズの開口数が高いほど記録再生特性に対するディスクの基板厚ずれのマージンは狭くなる。光源である半導体レーザ9aの波長が405nm、対物レンズ4aの開口数が0.7の場合、このマージンは十分ではないため、ディスク5aの基板厚ずれを補正することが必要である。
リレーレンズ23a、23bのどちらか一方を図示しないアクチュエータにより光軸方向に移動させると、対物レンズ4aにおける倍率が変化し、球面収差が変化する。そこで、リレーレンズ23a、23bのどちらか一方の光軸方向の位置を調整してディスク5aの基板厚ずれに起因する球面収差を相殺する球面収差を対物レンズ4aで発生させることにより、ディスク5aの基板厚ずれが補正され、記録再生特性に対する悪影響がなくなる。
図18、図19に示す実施の形態においては、対物レンズ4aがアクチュエータによりトラッキング方向に駆動されると、球面収差補正素子22a、22bの中心と対物レンズ4aの中心がトラッキング方向にずれるため、球面収差補正素子22a、22bで位相分布の変化を受け対物レンズ4aに発散光として入射する光にコマ収差が生じる。
しかしながら、このコマ収差は、リレーレンズ23a、23bのどちらか一方を図示しないアクチュエータによりディスク5a、5b、5cのラジアル方向に傾けるか移動させることで補正することができる。この場合、リレーレンズ23a、23bのどちらか一方は、正弦条件を満たさないように設計される。リレーレンズ23a、23bの両方が正弦条件を満たす場合、これをディスク5a、5b、5cのラジアル方向に傾けるか移動させてもコマ収差は生じない。これに対し、リレーレンズ23a、23bのどちらか一方が正弦条件を満たさない場合、これをディスク5a、5b、5cのラジアル方向に傾けるか移動させるとコマ収差が生じる。
そこで、リレーレンズ23a、23bのどちらか一方のラジアル方向の傾きまたは位置を調整して対物レンズ4aと球面収差補正素子22a、22bとの中心ずれに起因するコマ収差を相殺するコマ収差をリレーレンズ23a、23bのどちらか一方で発生させることにより、対物レンズ4aと球面収差補正素子22a、22bとの中心ずれに起因するコマ収差が補正される。
図12、図15、図18、図19に示す実施の形態においては、開口制御素子21a、21bは、対物レンズ4aと共にアクチュエータによりトラッキング方向に駆動される。対物レンズ4aのみがアクチュエータによりトラッキング方向に駆動される場合、開口制御素子21a、21bにおける誘電体多層膜7a、7b、7c、7d、7eの中心と対物レンズ4aの中心とがトラッキング方向にずれる。従って、往路において開口制御素子21a、21bを透過した波長650nm、780nmの光は、復路において開口制御素子21a、21bで一部反射され、波長650nm、780nmの光に対する実効的な開口数が低下する。
しかしながら、開口制御素子21a、21bが対物レンズ4aと共にアクチュエータによりトラッキング方向に駆動される場合、このような開口数の低下は生じない。
図12、図15、図18、図19に示す実施の形態においては、開口制御素子21a、21bの法線は、対物レンズ4aの光軸に対して僅かに傾いている。開口制御素子21a、21bの法線が対物レンズ4aの光軸に対して平行な場合、開口制御素子21a、21bで反射された迷光が光学系1a、1d、1eに備えられた光検出器15a、15b、15cに入射し、フォーカス誤差信号、トラック誤差信号にオフセットが生じる。しかしながら、開口制御素子21a、21bの法線が対物レンズ4aの光軸に対して僅かに傾いている場合、このようなオフセットは生じない。
図13に示す開口制御素子21a、図16に示す開口制御素子21bは、ガラス基板8b上に誘電体多層膜7a、7b、7c、7d、7eが形成された構成である。これに対し、誘電体多層膜が対物レンズ上に形成された構成も可能である。
(光学式情報記録または再生装置の第一の実施の形態)図20に本発明の光学式情報記録または再生装置の第一の実施の形態を示す。本実施の形態は、図1に示す本発明の光ヘッド装置の第一の実施の形態に記録再生回路26a、26b、切換回路25a、制御回路24aを付加したものである。記録再生回路26aは、ディスク5aへの記録信号に基づいて光学系1aに備えられた半導体レーザ9aへの入力信号を生成すると共に、光学系1aに備えられた光検出器15aからの出力信号に基づいてディスク5aからの再生信号を生成する。
記録再生回路26bは、ディスク5bへの記録信号に基づいて光学系1bに備えられた半導体レーザ9bへの入力信号を生成すると共に、光学系1bに備えられた光検出器15bからの出力信号に基づいてディスク5bからの再生信号を生成する。切換回路25aは、記録再生回路26aから半導体レーザ9aへの入力信号の伝達経路、記録再生回路26bから半導体レーザ9bへの入力信号の伝達経路を切り換える。制御回路24aは、ディスク5aが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26aから半導体レーザ9aへ伝達され、ディスク5bが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26bから半導体レーザ9bへ伝達されるように切換回路25aの動作を制御する。
(光学式情報記録または再生装置の第二の実施の形態)図21に本発明の光学式情報記録または再生装置の第二の実施の形態を示す。本実施の形態は、図1に示す本発明の光ヘッド装置の第一の実施の形態に記録再生回路26c、切換回路25b、制御回路24bを付加したものである。記録再生回路26cは、ディスク5a、5bへの記録信号に基づいて光学系1aに備えられた半導体レーザ9a、光学系1bに備えられた半導体レーザ9bへの入力信号をそれぞれ生成すると共に、光学系1aに備えられた光検出器15a、光学系1bに備えられた光検出器15bからの出力信号に基づいてディスク5a、5bからの再生信号をそれぞれ生成する。
切換回路25bは、記録再生回路26cから半導体レーザ9a、9bへの入力信号の伝達経路を切り換える。制御回路24bは、ディスク5aが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26cから半導体レーザ9aへ伝達され、ディスク5bが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26cから半導体レーザ9bへ伝達されるように切換回路25bの動作を制御する。
(光学式情報記録または再生装置の第三の実施の形態)図22に本発明の光学式情報記録または再生装置の第三の実施の形態を示す。本実施の形態は、図8に示す本発明の光ヘッド装置の第二の実施の形態に記録再生回路26d、26e、26f、切換回路25c、制御回路24cを付加したものである。記録再生回路26dは、ディスク5aへの記録信号に基づいて光学系1aに備えられた半導体レーザ9aへの入力信号を生成すると共に、光学系1aに備えられた光検出器15aからの出力信号に基づいてディスク5aからの再生信号を生成する。
記録再生回路26eは、ディスク5bへの記録信号に基づいて光学系1bに備えられた半導体レーザ9bへの入力信号を生成すると共に、光学系1bに備えられた光検出器15bからの出力信号に基づいてディスク5bからの再生信号を生成する。記録再生回路26fは、ディスク5cへの記録信号に基づいて光学系1cに備えられた半導体レーザ9cへの入力信号を生成すると共に、光学系1cに備えられた光検出器15cからの出力信号に基づいてディスク5cからの再生信号を生成する。
切換回路25cは、記録再生回路26dから半導体レーザ9aへの入力信号の伝達経路、記録再生回路26eから半導体レーザ9bへの入力信号の伝達経路、記録再生回路26fから半導体レーザ9cへの入力信号の伝達経路を切り換える。制御回路24cは、ディスク5aが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26dから半導体レーザ9aへ伝達され、ディスク5bが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26eから半導体レーザ9bへ伝達され、ディスク5cが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26fから半導体レーザ9cへ伝達されるように切換回路25cの動作を制御する。
(光学式情報記録または再生装置の第四の実施の形態)図23に本発明の光学式情報記録または再生装置の第四の実施の形態を示す。本実施の形態は、図8に示す本発明の光ヘッド装置の第二の実施の形態に記録再生回路26g、切換回路25d、制御回路24dを付加したものである。記録再生回路26gは、ディスク5a、5b、5cへの記録信号に基づいて光学系1aに備えられた半導体レーザ9a、光学系1bに備えられた半導体レーザ9b、光学系1cに備えられた半導体レーザ9cへの入力信号をそれぞれ生成すると共に、光学系1aに備えられた光検出器15a、光学系1bに備えられた光検出器15b、光学系1cに備えられた光検出器15cからの出力信号に基づいてディスク5a、5b、5cからの再生信号をそれぞれ生成する。
切換回路25dは、記録再生回路26gから半導体レーザ9a、9b、9cへの入力信号の伝達経路を切り換える。制御回路24dは、ディスク5aが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26gから半導体レーザ9aへ伝達され、ディスク5bが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26gから半導体レーザ9bへ伝達され、ディスク5cが挿入された場合は入力信号が記録再生回路26gから半導体レーザ9cへ伝達されるように切換回路25dの動作を制御する。
本発明の光学式情報記録または再生装置の実施の形態としては、本発明の光ヘッド装置の第三〜第六の実施の形態に記録再生回路、切換回路、制御回路を付加した形態も考えられる。
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。