以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態の参考例における光記録媒体に記録または再生、消去できる光ピックアップの構成を示す模式図である。図1に示すように、固定光学系10からの光ビームを対物レンズ107により光記録媒体108上に集光させ、その光記録媒体108からの反射光を固定光学系10内に配置されている検出系(図示せず)からの信号に基づいて情報の記録,再生が行われる。また、固定光学系10とは別に、対物レンズ107をチルトさせる駆動手段のアクチュエータ部20と、光記録媒体108のチルトを検出するチルト検出手段30が設置されており、チルト検出手段30から検出のチルト量に応じて、アクチュエータ部20はチルトが制御されて、常に、対物レンズ107の光軸が光記録媒体108の面に対して直交するように維持される。以下に、固定光学系10,アクチュエータ部20,チルト検出手段30の構成と動作について説明する。
図2は光記録媒体に記録または再生、消去できる固定光学系とアクチュエータ部の概略構成を示す図である。図2に示す光学系の要部は、半導体レーザ101、コリメートレンズ102、偏光ビームスプリッタ103、偏向ミラー104、位相補正素子105、1/4波長板106、対物レンズ107、検出レンズ109、円筒レンズ110、受光素子111より構成される。
半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103を透過し、偏向ミラー104で光路を90度偏向され、位相補正素子105で後述するように非点収差の成分が補正され、1/4波長板106を通過して円偏光とされ、対物レンズ107に入射して、光記録媒体108上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。
さらに、光記録媒体108から反射した光ビームは、往路とは反対回りの円偏光となり、再び略平行光とされ、1/4波長板106を通過して往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ109、円筒レンズ110で集光され受光素子111に至る。
図3はアクチュエータ部の概略構成を示す斜視図である。対物レンズ107と、この対物レンズ107を保持する対物レンズ保持体201とを備えている。また、対物レンズ保持体201を支持するベース部202と、このベース部202と対物レンズ保持体201との間に介在される弾性支持機構203,204とを備えている。弾性支持機構203,204は、対物レンズ保持体201をフォーカス方向,トラッキング方向,ラジアルチルト方向の計3方向に動けるよう、ベース部202に対して弾性的に支持している。
ここで、フォーカス方向とは図3のZ軸方向(対物レンズ107の光軸方向)をいい、トラッキング方向とは図3のX軸方向(光記録媒体108の半径方向)をいう。また、ラジアルチルト方向とは図3のY軸回りのチルト方向(光記録媒体108の半径方向に対するチルトの方向)をいう。また、図3には示されない駆動手段を備えており、この駆動手段は、例えば対物レンズ保持体201に設けられた永久磁石と、ベース部202に対して相対的に固定された駆動コイルとからなるいわゆるボイスコイルモータによって構成されている。
そして、この駆動手段は、駆動コイルへの入力電流に応じて、対物レンズ保持体201を前記3方向に駆動するようになっている。駆動手段の駆動コイルへの入力電流を制御して、光記録媒体108の情報記録面における記録トラック上に所定の光ビームスポットを追従させるフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うとともに、光ビームの入射方向(すなわち対物レンズ107の光軸)が光記録媒体108の情報記録面に垂直となるようなチルトサーボを行うように構成されている。
また、図4はチルト検出手段の概略構成を示す図である。図4に示すチルト検出手段30の要部は、半導体レーザ301、コリメートレンズ302、ハーフミラー303、1/4波長板106、偏光ビームスプリッタ304、第1の受光素子305、第2の受光素子306より構成される。半導体レーザ301から出射した直線偏光の発散光は、ハーフミラー303で光路を90度偏向されコリメートレンズ302で略平行光とされる。
続く、1/4波長板106の光源側の面には、所定のコートがされており、ハーフミラー303からの光ビームの一部は反射され、残りの成分は透過させる。1/4波長板106を透過した光は、1/4波長板106を通過することにより円偏光とされ、光記録媒体108で反射される。光記録媒体108からの反射光は、往路とは反対回りの円偏光となり、1/4波長板106を再度通過して往路と直交した直線偏光になる。
すなわち、1/4波長板106表面で反射した光と、1/4波長板106を通過して光記録媒体108で反射した光は、偏光方向が直交した状態で、コリメートレンズ302に反射光として入射する。そして各反射光はほぼ同一光路をたどり、ハーフミラー303を通過し偏光ビームスプリッタ304に入射する。ここで、1/4波長板106表面からの反射光と光記録媒体108からの反射光は偏光ビームスプリッタ304により光路が分離される。光記録媒体108からの反射光は偏光ビームスプリッタ304で反射され第1の受光素子305に、1/4波長板106からの反射光は偏光ビームスプリッタ304を透過し第2の受光素子306に至る。
前述の図1の構成では固定光学系10からの光ビームとチルト検出手段30の光ビームは、ともに共通の1/4波長板106を通過している。そして各光学系からの光をともに直線偏光から円偏光、あるいは円偏光から直線偏光に変換できる1/4波長板106を具備している。このとき、1/4波長板106として、ある厚さtにおいて常光線(屈折率no)と異常光線(屈折率ne)の位相差が、固定光学系10の波長λ1とチルト検出手段30の波長λ2の1/4となるような結晶から構成した1/4波長板を採用すればよい。すなわち、以下の(数2),(数3)を満たす結晶である。
このような特性を持つ1/4波長板106を配置することにより、固定光学系10に対しては偏光ビームスプリッタ103と1/4波長板106が組合された偏光分離光学系が実現されており、十分な光量を得られる。また、チルト検出手段30についても、1つの光源からの光ビームでアクチュエータ部20と光記録媒体108の双方のチルトを検出可能となる。
むろん、固定光学系10の光ビームの波長λ1と、チルト検出手段30の光ビームの波長λ2は同一であってもよい。なお、波長板の材料は結晶に限られず、有機材料などを用いてもよい。また、図1では固定光学系10からの光ビームとチルト検出手段30からの光ビームがともに同一の1/4波長板106を通過する構成であったが、別々の1/4波長板を用いてもよい。
本参考例では、1/4波長板106の表面には所定のコートがされており、1/4波長板106、すなわちアクチュエータ部20を介して一体可動する対物レンズ107のチルト量を観測している。このときコートの条件としては、第1,第2の受光素子305,306への入射光量が概ね一致していることが望ましく、チルト検出手段30の波長λ2について、コートの反射率は光記録媒体108の反射率の約1/2とすればよい。なお、コートは固定光学系10の光ビームが対物レンズ107を通過する領域の外部に形成されることが望ましい。
また、図5は図4示すチルト検出手段の第1,第2の受光素子から検出したチルト信号の演算手段を示すブロック図である。前述の図4,図5を参照しながら、第1,第2の受光素子305,306からの出力値の演算手段の構成について詳細に説明する。光記録媒体108のチルト量を検出するために、光記録媒体108からの反射光を検出する第1の受光素子305は一対の受光部305a,305bからなる。一対の受光部305a,305bは、光記録媒体108の半径方向に沿って配置されている。したがって、光記録媒体108がラジアルチルト方向にチルトすると、その方向に応じて一対の受光部305a,305bの一方からの検出信号のレベルがその他方に比べて大きくなる。一対の受光部305a,305bは、それぞれ、プリアンプ311,312に接続されており、さらに、プリアンプ311,312からの出力信号の差を差出力信号として出力する差分回路313に接続されている。差分回路313からの差出力信号を演算することにより光記録媒体108のチルト(傾き)量が求められる。光記録媒体108の反射率が変動され、あるいは、半導体レーザ301から発光される光ビームの光強度が時間とともに変動され、その結果、プリアンプ311,312からの検出信号の特性が変化されるが、この特性の変化は、後段の回路で補正される。すなわち、プリアンプ311,312からの信号が加算回路314で加算され、加算出力が割算回路315に入力される。割算回路315では、加算出力を基準として差分回路313からの差出力が規格化され、差出力に含まれる変動成分が除去されてこの割算回路315からは、光記録媒体108のチルト信号が出力される。
また、対物レンズ107及び1/4波長板106を搭載したアクチュエータ部20のチルト量を検出するために、アクチュエータ部20に設置されている1/4波長板106から反射された光線を検出する第2の受光素子306は一対の受光部306a,306bからなる。対物レンズ107がチルトされると、そのチルト方向に応じてこの一対の受光部306a,306bの一方から発生される検出信号のレベルが他方から発生される信号レベルに比して大きくなる。この一対の受光部306a,306bは、それぞれ、プリアンプ316,317に接続されており、さらに、プリアンプ316,317からの出力信号の差を差出力信号として出力する差分回路318に接続されている。差分回路318からの差出力信号を演算することによりアクチュエータ部20、すなわち、対物レンズ107のチルト量が求められる。半導体レーザ301から発光される光ビームの光強度が時間とともに変動されてプリアンプ316,317からの検出信号の特性が変化するが、この特性の変化は、後段の回路で補正される。すなわち、プリアンプ316,317からの信号が同様に加算回路319で加算され、加算出力が割算回路320に入力される。割算回路320では、加算出力を基準として差分回路318からの差出力が規格化され、差出力に含まれる変動成分が除去されてこの割算回路320からは、対物レンズ107のチルト信号が出力される。
光記録媒体108及び対物レンズ107のチルト量に相当するチルト信号を出力する割算回路315,320は、差分回路322に接続され、そのチルト信号の差がこの差分回路322から発生される。この差分回路322からの差出力は、光記録媒体108に対する対物レンズ107の相対チルト量に相当している。また、差分回路322の前段にはスイッチ321が設置されており、後述するように制御手順に応じて対物レンズチルト信号と相対チルト信号を選択してチルトの制御を行う。
以上のチルト補正に関わる手段を用いて、光記録媒体のチルトによって発生するコマ収差が抑制される様子を図6(a)〜(c)、図7−1,2を用いて説明する。
図6(a)は、一般的な対物レンズにおける光記録媒体のチルトにより発生する収差特性、図6(b)は対物レンズのチルトにより発生する収差特性、図6(c)はチルト補正後の収差特性を示す図である。さらに、図7−1は光記録媒体のチルト,対物レンズのチルト,光記録媒体のチルトと対物レンズのチルトを相殺させたチルト補正後の残留収差の波面形状を示す図である。図7−2は図7−1の波面形状のうちラジアル方向とタンジェンシャル方向の断面図である。図7−2中の「rad」がラジアル方向の成分で、「tan」がタンジェンシャル方向の成分を表す。
本参考例では図6(a)に示す光記録媒体のチルトにより発生するコマ収差の成分を、図6(b)に示す対物レンズのチルトにより発生するコマ収差の成分で打ち消す方法を用いる。すなわち、図6(a)のコマ収差の成分と図6(b)のコマ収差の成分は同じチルト量に対して発生する収差量が同等であり、かつ図7−2からわかるとおりその極性は反対であるため、光記録媒体と対物レンズが平行になるようにすればコマ収差の成分を相殺させることができる。本参考例においては相対チルトを検出しているため、相対チルト量がゼロとなるように制御してやればよい。
しかしながら、図6(c)、図7−1あるいは図7−2から明らかなとおり補正後の収差は、ゼロにならず残留収差を持ってしまっている。この点について説明する。図6(b)のように対物レンズをチルトさせたときにはコマ収差以外に非点収差も発生する。このためチルト補正により光記録媒体のチルトによって発生するコマ収差の成分は打ち消せるが、反対に対物レンズのチルトにより発生する非点収差の成分が上乗せされてしまう。
図8(a)は、図6(c)に示す補正後においての光記録媒体のチルト「1°」の非点収差による収差分布であり、非点収差の発生領域を表している。図8(b)は、図8(a)に示すR−G−Rのラジアル方向すなわち対物レンズのチルト方向における収差分布の断面図である。波面の収差分布が瞳面の中心で小さく、周辺部に行くに従って正方向に大きくなっていることがわかる。また、図8(c)は、図8(a)に示すB−G−Bのタンジェンシャル方向における収差分布の断面図であり、瞳面の中心で小さく、周辺部に行くに従って波面収差が負方向に大きくなっていることがわかる。このように非点収差を主とする収差分布は馬鞍型をなしており、ラジアル方向の軸、タンジェンシャル方向の軸に対して対称となっている。なお、コマ収差は線形に増加するのに対し、非点収差は非線形に増加するため、光記録媒体のチルトが大きいところほど、この非点収差の成分が無視できなくなる。
本参考例では、この非点収差量と逆極性の非点収差量を付与する位相補正素子を具備して、その位相補正素子はラジアル方向に非点収差を発生するように配置している。図9は前述した図2における位相補正素子の断面図であり、図10は位相補正素子の電極パターンを示す図である。図9,図10を参照しながら位相補正素子の構成及び動作原理を説明する。
まず、位相補正素子の構成について、図9を参照しながら説明する。図9に示す位相補正素子105は、特許文献1,特許文献2などで公知の構成である。ガラス基板51a,51bが、導電性スペーサ52により接着され液晶セルを形成している。ガラス基板51aの内側表面には、内側表面から透明な電極54a、絶縁膜55、配向膜56の順に、また、ガラス基板51bの内側表面には、内側表面から透明な電極54b、絶縁膜55、配向膜56の順に被膜されている。電極54aには電極引出部57において接続線により制御回路と接続できるようパターン配線されている。
また、電極54bは導電性スペーサ52を介してガラス基板51a上に形成された電極54aと電気的に接続されている。したがって、電極54bは電極引出部57において接続線により制御回路と接続できる。液晶セル内部には液晶53が充填されている。この液晶53は、いわゆる複屈折効果を有し、液晶分子の光学軸方向とこれに垂直な方向とで屈折率が異なっている。そして、電極54aと電極54bの間に印加する電圧を変化させることにより、液晶分子の向きを水平方向から垂直方向まで自在に変えることができる。電極54a,54bへの印加電圧は、図示しない制御回路により設定され、電極54a,54bの各分割領域に印加する電圧を調整することにより、分割した電極により形成される領域ごとに異なる位相差を付与するものである。
次に、図10は、位相補正素子105の電極54aを、ラジアル方向あるいはタンジェンシャル方向に対する非点収差を打ち消すことができるように分割した状態を示す電極パターン図である。電極54aは、図10に示すように5つのパターン電極58a〜58eに分割されている。
図10において、光線通過範囲の中心部分に対応して円形のパターン電極58aが形成されている。また、その外周部分は放射状に分割された4つのパターン電極58b〜58eが形成されており、光線通過範囲の中心から角度を概ね等間隔に分けるように対称的に配置されている。そして、パターン電極58bとパターン電極58c、パターン電極58dとパターン電極58eがそれぞれ向かい合って中心対称に配置され、対物レンズのチルトによって発生する非点収差の成分を補正できる方向となっている。
対物レンズのチルトによるコマ収差補正後に残留する非点収差のラジアル方向成分が図11(a)に示す上側部分の実線のようなものであったとする。このような波面収差に対して、対物レンズに光源側から入射する光束に、図11(a)の下側部分の破線に示すような位相差が与えられるように、位相補正素子の電極パターンにより付与される位相差を調整すると、透過する光束の各部での波面の遅れにより前記「波面収差」を打ち消すことができる。図11(b)は、図11(a)における実線(波面収差)と破線(位相補正素子による波面の遅れ)の和、すなわち補正後の波面収差を示す。もとの波面収差(図11(a)の上側部分の実線)よりも格段に小さくなる。
同様に、コマ収差補正後に残留する非点収差のタンジェンシャル方向成分が図11(c)に示す下側部分の実線のようなものであったとする。このような波面収差に対して、対物レンズに光源側から入射する光束に、図11(c)の上側部分の破線に示すような位相差が与えられるように、位相補正素子の電極パターンにより付与される位相差を調整すると、透過する光束の各部での波面の進みにより前記「波面収差」を打ち消すことができる。図11(d)は、図11(c)における実線(波面収差)と破線(位相補正素子による波面の進み)の和、すなわち補正後の波面収差を示す。もとの波面収差(図11(c)の下側部分に実線)よりも格段に小さくなる。
図12は位相補正素子に対する駆動電圧と光ビームに付与される位相差の関係を示す図である。いま、基準電圧をV0としたとき、V0に対応する駆動信号が印加されることにより、図12に示すように光ビームに基準位相φcが与えられる。ここで、位相補正素子105の全ての分割領域で光ビームにこの基準位相φcが与えられる場合には、通過する光ビームの波面は変化せず、位相補正素子105は単なるガラス板と同じになる。
図12に示すように、「V>V0」の関係を満たす電圧Vに対応する駆動信号が印加された場合は、光ビームに基準位相φcよりも進んだ位相であるφaが与えられる。よって、電圧Vに対応する駆動信号が印加された領域を通過した光ビームは、位相が基準からφa−φcだけ進むことになる。すなわち、光ビームには、正の位相差φa−φcが生じることになる。
また、「V<V0」の関係を満たす電圧Vに対応する駆動信号が印加された場合は、光ビームに基準位相φcよりも遅れた位相であるφbが与えられる。よって、電圧Vに対応する駆動信号が印加された領域を通過した光ビームは、位相が基準からφc−φbだけ遅れることになる。すなわち、光ビームには、負の位相差φb−φcが生じることになる。
ここで、図12からわかるように、電圧変化に対して光ビームに与えられる位相差は概ね直線的に変化する。例えば、本参考例のように正負が対称的となる収差分布の補正を行うためには、負の位相差φb−φcと正の位相差φa−φcは絶対値が等しく符号が異なる関係にすればよい。
次に、光ピックアップを搭載して光記録媒体上に情報の記録あるいは再生を行うための光情報処理装置の制御動作を、図3,図4,図5を参照しながら図13に示すフローチャートに沿って説明する。
まず、対物レンズチルト信号を選んだ状態にしておき、サーチ信号を流してアクチュエータ部20をラジアルチルト方向に一定振幅でチルトさせる。そして、対物レンズチルト信号が零となる時点をチルトサーボ引き込み回路(図示せず)が検出してレンズチルトサーボが開始される(S1)。
その後順次、フォーカスサーボをかけ(S2)、トラッキングサーボをかける(S3)。以上の各サーボが安定した後に、相対チルト信号が零となる時点で相対チルト信号へ切り替わり、ラジアルチルト方向について、前記レンズチルトサーボに代えて相対チルトサーボが開始される(S4)。そして、相対チルトサーボ後のレンズチルト量に応じた非点収差が付与される。
すなわち、図6(c)に示す対物レンズのチルト量と付与するべき非点収差量の関係を予めメモリしておき、対物レンズのチルトの可動量に応じて位相補正素子の印加電圧を選択してやればよい。
なお、前記のように相対チルトサーボを直接引き込もうとするのではなく、一旦、レンズチルトサーボを行って相対チルト角度の値が所定範囲内になってから相対チルトサーボを開始することにより、光記録媒体自体の動的なチルトや外乱の影響をほとんど受けずに、迅速で確実な相対チルトサーボの引き込みを行うことができる。
また、本参考例における他の例として、アクチュエータ部あるいは位相補正素子の駆動信号を、チルト検出手段の出力値でなく、光記録媒体からのサーボ信号あるいはRF信号を用いてもよい。コマ収差や非点収差があると、トラッキングエラー信号やRF信号の振幅量が減衰することが知られている。よって、アクチュエータ部の可動量や位相補正素子の印加電圧値を適当な範囲で振ってやり、トラッキングエラー信号やRF信号が最大となるところをサーチしてもよい。この方法によれば、チルト検出手段を具備する必要がないため、光ピックアップの小型化及び組付工数の削減が実現できる。
また、アクチュエータ部のチルト方向はラジアル方向のみならず、タンジェンシャル方向にチルトする4軸ものであってもよい。このときのアクチュエータ部の構成を図14に示す。前記タンジェンシャルチルト方向とはX軸回りのチルト方向(光記録媒体108の接線方向に対するチルトの方向)をいう。このときのチルト検出手段としては、図15に示すように、前述した図5における2分割された受光部を持つ受光素子に代えて、受光部305c〜f、受光部306c〜fからなる4分割の受光素子を第1,第2の受光素子305,306として用いればよい。この構成によって、光記録媒体のラジアル方向のみならずタンジェンシャル方向についてもチルト補正ができるようになり、各種マージンに余裕がもて、安定した記録,再生動作が実現可能となる。
図16は本発明の実施の形態1における光記録媒体に記録あるいは再生、消去できる固定光学系とアクチュエータ部の概略構成を示す図である。前述の参考例と異なる点はビーム整形手段としてビーム整形プリズム112を用いた点と、それに応じた位相補正素子105aを用いた点であり、それ以外の構成は同じである。
図16に示す光学系の要部は、半導体レーザ101、コリメートレンズ102、ビーム整形プリズム112、偏光ビームスプリッタ103、偏向ミラー104、位相補正素子105a、1/4波長板106、対物レンズ107、検出レンズ109、円筒レンズ110、受光素子111より構成される。半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、ビーム整形プリズム112により楕円形状の光ビームは略円形状の光ビームに変換され、偏光ビームスプリッタ103を透過し、偏向ミラー104で光路を90度偏向され、位相補正素子105aで後述するように非点収差の成分が補正され、1/4波長板106を通過し円偏光とされ、対物レンズ107に入射して、光記録媒体108上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。
光記録媒体108から反射した光は、往路とは反対回りの円偏光となり、再び略平行光とされ、1/4波長板106を通過して往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ109、円筒レンズ110で集光され受光素子111に至る。
半導体レーザはその活性層に平行な軸と垂直な軸によって広がり角が異なる光ビームを出射する。したがって、コリメートレンズによって平行にされた光束の光軸に垂直な断面における強度分布は楕円形状となり、多くの半導体レーザから出射された光ビームにおいては、その比が1:2以上である。この楕円形状の強度分布を略円形に整形するための手段として、ビーム整形プリズムが知られている。図17にビーム整形プリズムの一例を示す。図17中に示すようにラジアル方向とタンジェンシャル方向を定義した場合、ビーム整形プリズム112のラジアル方向に傾いた面112aに対して、ラジアル方向が短い楕円形状のビームを入射させ、この面112aで屈折させることによりラジアル方向を広げている。
面112aにおける屈折では、タンジェンシャル方向の光ビームの幅は変わらないので、楕円形状の光ビームの強度分布は整形され、略円形の強度分布を得ることができる。強度分布が略円形となった光ビームは、対物レンズによって集光される。この構成においては、略円形に整形された光ビームを光記録媒体に照射できるので、スポット径を小さくでき、かつ、より円形のスポットが得られるので、高記録密度の光記録媒体の記録,再生に適した光ピックアップを実現できる。
このようなビーム整形プリズムを用いた光学系においては、ビーム整形プリズムに入射する光ビームの発散度合いを変えることで対物レンズに入射する光ビームの非点収差が変化することが知られている。このため、光ピックアップの組付工程においては、コリメートレンズと半導体レーザの間隔を変えて、ビーム整形プリズムに入射する光の発散度合いを振りながら非点収差が最小となる間隔で固定する。
一方、光学系においてはその使用する部品自体が非点収差を持っている。前記のコリメートレンズ調整を用いれば、光路中に配置された部品自体が持っている非点収差も抑制できる。しかしながら、このとき抑制できる非点収差の成分はビーム整形方向の成分に限定されることを確認した。以下に図18を用いて説明する。図18に示す右欄は、非点収差量はいずれも0.045λrmsであり、その発生方向が異なる場合の波面分布である。図18のスケールに示すようにGからRが正方向、GからBが負方向を示しそれぞれの方向への濃淡が収差変化の大きさを表している。図18中の波面分布図の下に非点収差量と非点収差の方向を記している。図18の右欄の各状態に対して、ラジアル方向にビーム整形するように配置された光学系において非点収差が最小となるように調整した状態を左欄に示している。
図18からわかるとおり、補正前の非点収差がラジアル軸からずれるほど補正効果が低くなる。図19はその様子をグラフにしたものである。また、補正後に残留する非点収差はビーム整形方向であるラジアル方向から45°回転した方向の非点収差の成分であることがわかる。
以上の結果から、ビーム整形プリズムを備えた系においてコリメートレンズを調整した場合に残留する非点収差は特定の方向であり、その方向はビーム整形方向から45°回転した方向にあるといえる。そこで、本実施の形態1の位相補正素子はラジアル方向及びラジアル軸に対し45°の方向に非点収差を発生するようにした。これにより、前記対物レンズのチルト補正後の非点収差に加え、コリメートレンズ調整後の非点収差量と逆極性の非点収差量を付与することができる。
図20を用いて逆極性の非点収差量を付与する位相補正素子の電極パターンについて説明する。図20には、ラジアル方向及びラジアル軸から45°の方向に対する非点収差を打ち消すことができるように分割した状態を示す電極パターン図である。図20に示すように、9つのパターン電極58a〜58iに分割されている。
図20において、光線通過範囲の中心部分に対応して円形のパターン電極58aが形成されている。また、その外周部分は放射状に分割された8つのパターン電極58b〜58iが形成されており、光線通過範囲の中心から角度を概ね等間隔に分けるように対称的に配置されている。そして、パターン電極58bとパターン電極58c、パターン電極58dとパターン電極58e、パターン電極58fとパターン電極58g、パターン電極58hとパターン電極58iがそれぞれ向かい合って中心対称に配置され、パターン電極58b〜58eを用いて対物レンズチルトによって発生する非点収差の成分を補正でき、パターン電極58f〜58iを用いてビーム整形プリズムに対する半導体レーザとコリメートレンズの間隔調整によって残留する非点収差の成分を補正できる。補正原理は参考例の図12で説明したものと同様である。
また、図20のように位相補正素子を1つの電極パターンで、対物レンズチルトによる非点収差の成分と、コリメートレンズ調整後の残留非点収差を補正する構成に限られるものでなく、各非点収差の補正を個別の電極パターンにより補正してもよい。すなわち、図21に示すように位相補正素子105aの対向する電極54a,54bの各面にラジアル方向の非点収差を補正するパターン(図21の上側電極54bのパターン)と、ラジアル方向から45°回転した方向の非点収差を補正するパターン(図21の下側電極54aのパターン)を設けた構成であってもよい。
また、ビーム整形方向はラジアル方向に限定されるものでなく、タンジェンシャル方向であってもよい。すなわち、図16のビーム整形プリズム112と半導体レーザ101の活性層を光軸中心に90°回転させた場合である。この場合は、図20,図21と同一のパターンを用いればよい。
また、ラジアル方向あるいはタンジェンシャル方向からずれた方向にビーム整形してもよく、その場合は図22のように図21のコリメートレンズ調整に対応の電極パターンをビーム整形方向に45°回転した方向にあわせてやればよい(図22の下側電極57aのパターン)。この場合は、図16のビーム整形プリズム112と半導体レーザ101を光軸中心に任意の角度回転させた場合に相当する。
さらに、図23に示すように、ビーム整形方向が、ラジアル方向から45°回転した方向にあるのが望ましい。この場合、対物レンズのチルトによるコマ収差の補正後に発生する非点収差と、コリメートレンズ調整後に発生する非点収差が一致するため、電極パターンとしては参考例の図10に示したものと同一の5つのパターンからなるものでよく、電極パターンの簡素化、駆動方法の容易化が図れる。
また、ビーム整形手段としては、プリズムを用いた方法に限定されるものでなく、レンズを用いた方法であってもよい。すなわち、光軸垂直面内の直交する方向においてレンズパワーが異なるようなトロイダルレンズやアナモフィックレンズを用いればよい。
本発明の実施の形態2における位相補正素子として、前述した参考例、実施の形態1において説明した非点収差を補正する電極パターン以外に、球面収差を補正する電極パターンを設けることも可能である。一般に光記録媒体の基板厚誤差によるばらつきは球面収差を発生させることが知られており、例えば「青色波長、開口数:NA0.85のBlu−ray規格」においては、球面収差の補正素子を設置した製品などが発売されている。この球面収差を補正する機能を、部品点数を増加させることなく本実施の形態2の位相補正素子として併せて備えることが可能である。
以下にその場合の電極パターンについて図24を参照しながら説明する。図24に示すとおり、位相補正素子105bの対向する電極54b,54cの各面にチルト補正後の残留非点収差を補正する電極パターンと、球面収差を補正する電極パターンを設けた構成であればよい。
図24の上側電極54bのパターンは、ラジアル方向あるいはタンジェンシャル方向に対する非点収差を打ち消すことができるように分割した状態を示す電極パターン図である。5つのパターン電極58a〜58eに分割されている。光線通過範囲の中心部分に対応して円形のパターン電極58aが形成されている。また、その外周部分は放射状に分割された4つのパターン電極58b〜58cが形成されており、光線通過範囲の中心から角度を概ね等間隔に分けるように対称的に配置されている。そして、パターン電極58bとパターン電極58c、パターン電極58dとパターン電極58eがそれぞれ向かい合って中心対称に配置され、対物レンズチルトによって発生する非点収差の成分を補正できる構成となっている。
また、図24の下側電極54cのパターンは、球面収差を打ち消すことができるように分割した状態を示す電極パターン図である。3つのパターン電極59a,59b,59cに分割されている。光線通過範囲の中心部分から同心円状に分割されており、光記録媒体の基板厚み誤差によって発生する球面収差の成分を補正できる構成となっている。
いま、光記録媒体の基板厚みによる球面収差の成分が図25(a)に示す上側部分の実線のようなものであったとする。このような波面収差に対して、対物レンズに光源側から入射する光束に、図25(a)の下側部分の破線に示すような位相差が与えられるように、位相補正素子の電極パターンにより付与される位相差を調整すると、透過する光束の各部での波面の遅れにより前記「波面収差」を打ち消すことができる。図25(b)は、図25(a)における実線(波面収差)と破線(位相補正素子による波面の遅れ)の和、すなわち補正後の波面収差を示す。もとの波面収差(図25(a)の上側部分の実線)よりも格段に小さくなる。
また、位相補正素子を固定光学系に配置した場合、対物レンズのトラッキング動作に伴う光軸ずれによりコマ収差が発生する。図26(a),(b)はその概略を説明する図である。図26(a)は対物レンズの光軸と固定光学系の光軸が一致している場合を示す図であり、光記録媒体の基板厚誤差によって発生する球面収差と逆極性の球面収差を位相補正素子によって発生させることにより打ち消している。一方、図26(b)は対物レンズと固定光学系の光軸がずれた場合を示す図であり、光記録媒体の基板厚誤差によって発生する球面収差と位相補正素子の球面収差のずれ分でコマ収差が発生する。なお、実際には図11(a)〜(d)や図25(a),(b)で説明したように位相補正素子から付加される位相差はステップ状であるが、ここでは簡単のために連続的な波面で説明した。
図26(b)に示すような光軸ずれによるコマ収差に対して、本実施の形態2においては対物レンズのチルトによってコマ収差を発生できるため、これを打ち消すことが可能である。例えば、アクチュエータ部に対物レンズの位置を検出できるセンサを設けておき、このセンサの出力に基づいて対物レンズの固定光学系からの光軸ずれ量に応じて対物レンズをチルトさせてやればよい。
また、前述した課題を逆手にとれば、位相補正素子をアクチュエータ部に設けてやれば、光軸ずれに伴うコマ収差は発生しないで済むことがわかる。
図27は本発明の実施の形態3における光記録媒体に記録または再生、消去できる光ピックアップの概略構成を示す図である。
前述の参考例、実施の形態1,2において説明した対物レンズチルト補正後の残留非点収差、あるいはコリメートレンズ調整後の残留非点収差を補正する系は、使用波長,基板厚あるいは開口数などが異なる複数の光記録媒体に記録あるいは再生を行う光ピックアップに適用してもよい。この場合、位相補正素子としては複数波長の共通光路中に配置すればよく、本実施の形態3において、図27に示す光ピックアップの構成とした。
図27に示すような光ピックアップを参照しながら具体的な例を持って説明する。すなわち、図27は「使用波長405nm,NA0.65,光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体」と「使用波長660nm,NA0.65,光照射側基板厚0.6mmのDVD系光記録媒体」をともに記録または再生、消去できる光ピックアップを例として説明する。
図27に示す光ピックアップの要部は、波長405nmの半導体レーザ101、コリメートレンズ102、偏光ビームスプリッタ103、ダイクロイックプリズム123、偏向ミラー104、位相補正素子105、1/4波長板106、対物レンズ107、検出レンズ109、光束分割手段110a、受光素子111から構成される波長405nmの光ビームが通過する無限系の青色光学系と、ホログラムユニット121、カップリングレンズ122、ダイクロイックプリズム123、偏向ミラー104、位相補正素子105、1/4波長板106、対物レンズ107から構成される波長660nmの光ビームが通過する有限系のDVD光学系から構成されている。
前記構成のうちダイクロイックプリズム123、偏向ミラー104、位相補正素子105、1/4波長板106、対物レンズ107は2つの光学系の共通部品である。ここで、対物レンズ107は、「使用波長405nm,NA0.65,光照射側基板厚0.6mmの青色光記録媒体」に対し、無限系で波面収差が最小になるように設計されている。これは、一般に対物レンズは高NA,短波長になるほど公差が厳しくなるので、青色NA0.65での望ましい特性を出す方が難しくなるためである。
光記録媒体108a,108bはそれぞれ基板厚さあるいは使用波長が異なる光記録媒体であって、光記録媒体108aは基板厚さが0.6mmの青色系光記録媒体であり、光記録媒体108bは基板厚さが0.6mmのDVD系光記録媒体である。記録あるいは再生時にはいずれかの光記録媒体のみが図示しない回転機構にセットされて高速回転される。
まず、「使用波長405nm,NA0.65,光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体」を記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103、ダイクロイックプリズム123を透過し、偏向ミラー104で光路を90度偏向され、位相補正素子105で非点収差の成分が補正され、1/4波長板106を通過して円偏光とされ、対物レンズ107に入射し、光記録媒体108a上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の再生、記録あるいは消去が行われる。
光記録媒体108aから反射した光は、往路とは反対回りの円偏光となり、再び略平行光とされ、1/4波長板106を通過して往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ109で収束光とされ、光束分割手段110aにより複数の光路に偏向分割され受光素子111に至る。受光素子111からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
次に、「使用波長660nm,NA0.65,光照射側基板厚0.6mmのDVD系光記録媒体」を記録または再生、消去する場合について説明する。近年、DVDのピックアップには受発光素子を1つのキャンの中に設置し、ホログラムを用いて光束の分離を行うホログラムユニットが一般的に用いられるようになってきた。図27において、121は、レーザチップの半導体レーザ121a、ホログラム121b及び受光素子121cを一体化して構成されたホログラムユニットを示す。このホログラムユニット121の半導体レーザ121aから出射された660nmの光ビームは、ホログラム121bを透過し、カップリングレンズ122で所定の有限光とされ、青色波長帯域の光ビームは透過し、赤色波長帯域の光ビームは反射させるダイクロイックプリズム123で偏向ミラー104の方向に反射され、偏向ミラー104によって光路が90度偏向され、位相補正素子105で後述するように非点収差の成分が補正され、1/4波長板106を通過し略円偏光とされ、対物レンズ107に入射し、光記録媒体108b上に微小スポットとして集光される。このスポットにより情報の再生、記録あるいは消去が行われる。
光記録媒体108bから反射した光ビームは、偏向ミラー104、ダイクロイックプリズム123で反射され、カップリングレンズ122で収束光とされ、ホログラム121bにより半導体レーザ121aと同一キャン内にある受光素子121c方向に回折されて受光素子121cに受光される。受光素子121cからは情報信号,サーボ信号が検出される。
光記録媒体のチルトによって発生するコマ収差を対物レンズのチルトによって補正する点、チルト補正後に残留する非点収差の成分については位相補正素子により、発生する非点収差と略逆極性の非点収差の成分を付与して打ち消す点は参考例、実施形態1,2と同じである。そして、位相補正素子は共通光路中に配置されて構成されているため、前述の補正方法を本実施の形態3では、青色、DVD各光学系の光路について行うことが可能である。ただし、発生する収差量は各光路について異なるため、光記録媒体の種類に応じて対物レンズ駆動量あるいは位相補正素子の駆動電圧をコントロールしてやる必要がある。
次に、発生収差が異なる事例について説明する。まず、青色光記録媒体として参考例の図6(a),(b),(c)で説明したような特性を持つ対物レンズで、DVD光学系を有限系の光路にして使用した場合の波面分布を図28(a),(b)に示す。図6(a),(b),(c)の青色光学系の光路においては、光記録媒体のチルトにより発生するコマ収差量と、対物レンズのチルトにより発生するコマ収差量とが、同じチルト量に対しては同等であった。このため、対物レンズと光記録媒体を平行(相対チルト量がゼロ)になるように制御すればよい旨を説明した。
しかしながら、図28(a),(b)に示す収差特性と比較した場合、対物レンズのチルトによるコマ収差の成分が光記録媒体チルトによって発生するコマ収差の1/5程度ある。この場合、光記録媒体のチルトによって発生するコマ収差を対物レンズのチルトによるコマ収差で打ち消すためには、図28(d)に示すとおり光記録媒体のチルトに対して対物レンズを5倍程度のチルト量で駆動する必要がある。しかしながら、図28(b)においては対物レンズをチルトさせたときには非点収差はコマ収差よりも大きく変化しており、コマ収差を補正した場合、図28(c)に示すとおり非点収差が大きく残留してしまう。
本実施の形態3においては、位相補正素子105を備えているため、参考例、実施の形態1,2で説明した方法により、これを抑制することが可能である。
なお、使用波長や光記録媒体の厚みが変わると球面収差が発生する。本実施形態においては青色用対物レンズで、DVDへ集光させて使用するためDVD系光記録媒体において球面収差が発生する。これに対して、本実施の形態3はDVD光学系の光路を有限系で配置することによって、この課題を解決している。
この有限系とすること、すなわち対物レンズへ入射する光ビームの発散度合いを変化させることは、球面収差を変化させることと等価であるため打ち消すことが可能となっている。
また、実施の形態2と同様に、この場合にも対物レンズのシフトによってコマ収差を発生することになるが、このコマ収差についても対物レンズのチルトによって打ち消せばよい。
図29は本発明の実施の形態4における光情報処理装置の構成を略示する透過斜視図である。図29に示すように、光情報処理装置40は光記録媒体45に対して、光ピックアップ41を用いて情報の記録,再生,消去の1以上を行う装置である。本実施の形態4において、光記録媒体45はディスク状であって、保護ケース46内に格納されている。光記録媒体45は保護ケース46ごと、挿入口42から光情報処理装置40に矢印「入」方向へ挿入セットされ、スピンドルモータ43により回転され、キャリッジ44によって移動する光ピックアップ41により情報の記録、再生あるいは消去が行われる。なお、光記録媒体45は保護ケース46に入れられている必要はなく裸の状態であってもよい。この光情報処理装置40に用いる光ピックアップ41として、前述の各実施の形態において説明した光ピックアップを適宜用いることができる。