JP2009256762A - スパッタリングターゲットおよびその製造方法 - Google Patents

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晃一 古山
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Abstract

【課題】 太陽電池の発電効率を高めるために光吸収膜の上にスパッタリング法で製膜される透明導電膜の近赤外波長域に至るまでの光透過率を高めることが可能なスパッタリングターゲットを提供すること。
【解決手段】 亜鉛に対して0.1at%から20at%の正三価以上の元素の一種または二種以上を加えて第一の焼結をした酸化物100重量部に対して5〜20重量部の金属亜鉛を加えて、700〜1100℃の温度範囲で第二の焼結を行い、所定の加工を施してスパッタリングターゲットを得る。該スパッタリングターゲットは金属亜鉛が酸化物相に固溶していない混晶組織からなり、該スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングすることにより単一酸化物相の透明導電膜が得られ、600nm以上の波長域で光透過率を高めることが可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は太陽電池や薄型ディスプレイ等に用いられる透明電極をスパッタリング法で作成するためのスパッタリングターゲットに関し、さらに詳しくは近赤外波長域での光透過率を高める透明導電膜を得るために好適なスパッタリングターゲットに関するものである。
太陽電池や薄型ディスプレイの透明電極材料あるいは帯電防止用のコーティング透明材料として透明導電膜が重要な材料として広く用いられている。この透明導電膜としてはインジウム錫酸化物が代表的なものであるが、インジウムは採取可能な量に限りがあり資源上の問題を抱えている。これに対して酸化亜鉛系の材料、例えば酸化亜鉛に酸化アルミニウムを添加した材料をスパッタリングで形成した膜がインジウム錫酸化物膜並に低抵抗で透明性に優れた透明導電膜になることが非特許文献1に報告されている。酸化亜鉛は資源上の問題も無く化学的にも安定で、透明性、導電性にも優れていることからインジウム錫酸化物に代替可能な材料として研究開発が進められている。該材料はスパッタリングで作成され通常1μm未満の薄い膜としてデバイスに適用される。例えば太陽電池においてはCIGS(Cu−In−Ga−Se)を光吸収材として、該光吸収膜の上(太陽光入射面)にZnO:Alからなる電極膜をスパッタリング法で設けた電池の構成が特開2002−64062号公報の図1に記されている。そこでスパッタリングを行うためのスパッタリングターゲットとして例えば特開平4−104937号公報には亜鉛に対して1.5モル%のアルミニウムを含む酸化物焼結体が開示されている。さらに特開2005−330158号公報には酸化アルミニウムをアルミニウム換算で2〜7%含む酸化亜鉛のスパッタリングターゲットについて、直流スパッタリングを可能にするためのスパッタリングターゲットの低抵抗化の技術が開示されている。
酸化亜鉛に添加する元素は酸化アルミニウムに限定されず、特開平10−297963号公報にはガリウムが酸化亜鉛相に固溶した酸化亜鉛系スパッタリングターゲットが開示されている。さらには特開平2−149459号公報に正三価以上の元素を含有する酸化亜鉛スパッタリングターゲットの詳細が述べられており、低抵抗の導電膜を得るためのスパッタリングターゲットとして酸化亜鉛に対して正三価以上の元素として周期率表IIIA族のSc、Y、同IIIB族のB、Al、Ga、In、Tl、同IVA族のTi、Zr、Hf、Th、同IVB族のC、Si、Ge、Sn、Pb、同VA族のV、Nb、Ta、Pa、同VB族のAs、Sb、Bi、同VIA族のCr、Mo、W、U、同VIB族のSe、Te、Po、同VIIA族のMn、Tc、Re、同VIII族のFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt及びランタノイド、アクチノイド系列の元素を加えることが有用であることを記載している。またこれらの導電活性元素の使用量は亜鉛に対して0.1at%から20at%の範囲が選択できるとしている。このようにアルミニウムの他にガリウム、インジウム、チタン、錫等多くの元素が有用であることが述べられている。
上記のスパッタリングターゲットの改良は主に低抵抗のものにすることやスパッタリング中のスプラッシュやパーティクルと称されるスパッタリング中の異常放電に伴う膜の欠陥部分を無くすことを主眼として進められてきた経緯がある。特開平2−149459号公報では酸化亜鉛に正三価の元素を添加し、かつ焼結密度を高めて一層の低抵抗値を得るために1300℃、好ましくは1400℃以上で焼結することで、スパッタ速度が速い直流スパッタリングが可能になるスパッタリングターゲットの製造方法が記載されている。また特開2005−330158号公報では酸化アルミニウムを添加した酸化亜鉛を1400℃以上の高温で、かつ20%以上、望ましくは90%以上の酸素濃度で焼結することで高密度になり、ひいては低抵抗のスパッタリングターゲットが得られることから低電圧での放電が可能となりパーティクルの発生が抑制されると述べている。
酸化亜鉛系スパッタリングターゲットを低抵抗にするには上記特開2005−330158号公報のように高酸素濃度の焼結ではなくて、逆に低酸素濃度の還元雰囲気で焼結する技術が開示されている。例えば特開平2−149459号公報では空気よりも低酸素濃度の雰囲気で焼結することが記載されている。
スパッタリングターゲットの低抵抗化に関して酸化亜鉛系に限らずに開示された技術を考察すると酸化物スパッタリングターゲットに対して金属を添加することで低抵抗を得ようとする技術があることが判る。例えば特開平7−166340号公報ではセラミックスターゲットの原料としてその一部を酸化物や炭酸化物ではなくて金属粉体を使用して還元雰囲気で焼結することで直流スパッタリングが可能な低抵抗値が得られると述べている。また単なる金属添加ではないが、ZnSやSiO表面を銅、銀等からなる合金でコーティングした粉末を焼結して低抵抗スパッタリングターゲットを得ることが特開2001−295034号公報に記されている。また特開2007−31786号公報には酸化亜鉛や酸化錫等の酸化物に金属を分散させたスパッタリングターゲットが低抵抗のスパッタリングターゲットになることが記されている。以上述べたように酸化亜鉛系スパッタリングターゲットでは正三価以上の元素を含ませることで透明性と導電性を両立させ、かつ還元雰囲気で焼結するか、あるいは金属粉体を加えて焼結することで一層の低抵抗を得ようとする試みがなされてきたことが判る。
特開2002−64062号公報 特開平4−104937号公報 特開2005−330158号公報 特開平2−149459号公報 特開平7−166340号公報 特開2001−295034号公報 特開2007−31786号公報 J.Appl.Phys.55(4),15February1988p1029
以上に記したように酸化亜鉛系のスパッタリングターゲットは低抵抗化や膜の欠陥防止の検討はなされてきたものの、光の透過性能に関しては詳しい検討はなされてこなかった。特に透過光のスペクトルについての報告は見当たらない。酸化亜鉛系の電極膜をデバイスに適用する場合にはその光のスペクトルに合致した透過スペクトルを有する電極膜が得られるスパッタリングターゲットとすることが重要である。特に太陽電池に適用する電極膜について考察すると以下の点が課題である。太陽光のスペクトルは波長がおよそ450nmで強度が最大であり、それ以上の波長では強度は斬減するが波長1200nmでも最大強度の1/4程度の強度を保っている。電池材料がシリコンの場合は、その光吸収波長域が400〜700nmにあるため、該狭い波長域の光を透過する電極材であれば大きな問題は無い。そのため従来の酸化亜鉛系導電膜を採用することが可能である。しかしシリコンよりも発電効率が高いCIGS(Cu−In−Ga−Se)ではさらに高い波長域まで透過率の高い電極材であることが望ましい。該CIGSを用いた太陽電池の構成では一例として特開2002−64062号公報の図1に示されているようにZnO:Alからなる透明導電膜が用いられる。CIGSではシリコンの場合よりも高い波長すなわち1200nmに至る波長域まで光を吸収するので、該CIGSの上に製膜される導電膜の光透過率は1200nmの近赤外波長まで高い方が発電効率の向上につながるので望ましい。しかしながら従来の単に正三価以上の元素を加えただけの酸化亜鉛系スパッタリングターゲットを用いたスパッタリング導電膜では700nm以上の波長域では光透過率が高くなく、1200nmまで光透過率を高く出来るスパッタリング導電膜が得られるスパッタリングターゲットが待ち望まれていた。
一般的に考察すると酸化物のスパッタリングターゲットに金属粉を添加すること自体は特開平7−166340号公報に記された内容から推して公知の方法に類似しているが、該公報ではその目的は直流スパッタリングが出来るように充分に低抵抗のスパッタリングターゲットとすることにある。従って目的が本発明とは異なる。本発明のスパッタリングターゲットを用いれば直流スパッタリングのみならず、高周波スパッタリングであっても近赤外域で光透過率の高い導電膜が得られる。また上記公報ではスパッタリングターゲットの比抵抗について触れているが、スパッタ膜の光透過率に関しては何ら触れられていない。さらに付け加えると特開2007−31786号公報には酸化亜鉛に金属亜鉛を分散させスパッタリングターゲットの酸素量を少なくし、ひいては酸素不足の導電膜にすることで低抵抗が得られると述べている。しかしながらこれらの公報においては光透過率に関しては何ら触れられていなく、近赤外に至るまでの波長域における光透過率を高める可能性について何らの示唆もなかった。
上記課題の解決すなわち1200nmの波長まで光透過率を高めることが可能な導電膜が得られるスパッタリングターゲットを得るために、本発明においてはまず亜鉛化合物と正三価以上の元素からなる酸化物スパッタリングターゲットに対して金属亜鉛を含むことを特徴とする。得られたスパッタリングターゲットは亜鉛と正三価以上の元素とが酸化物結晶相を構成し、金属亜鉛が該酸化物結晶相に固溶しない独立相で存在している。また本発明のスパッタリングターゲットの製造方法はまず亜鉛化合物と正三価の元素化合物を混合し第一の焼結を施した後に、該焼結体を粉砕して、次いで該粉砕粉に金属亜鉛粉末を混合し700〜1100℃の温度範囲で第二の焼結を行うことを特徴とする。最初から亜鉛化合物と正三価の元素化合物および金属亜鉛を混合して焼結したのではスパッタ膜の近赤外域の光透過率を高められるスパッタリングターゲットとなりえない。酸化亜鉛系のスパッタリングターゲットに関する公知の製造方法は必要な元素の化合物を全て混合して1300℃以上の高温で焼結して得るものである。本発明では一旦上記第一の比較的低温度の焼結を行い酸化物を形成した後に金属粉末を加えて、公知の方法のような高温度の焼結採用せずに700〜1100℃の温度範囲で第二の焼結を施す点に特徴がある。以下に詳細を述べる。
本発明のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングして得られる導電膜は近赤外域である1200nmの波長に至るまで、従来の酸化亜鉛系の導電膜よりの大きな光透過率を示す。従って導電膜を透過する光の積算エネルギーが大きい。特にCIGS太陽電池の電極膜に適用することにより電池の発電効率を高められると言う著しい効果を発揮する。
本発明の1200nmの波長域まで光透過率の高いスパッタリングターゲットを得るには先ず亜鉛化合物に正三価の元素の化合物の一種または二種以上を加え、一旦焼結を施す。原料として用いる亜鉛化合物や正三価の元素の化合物としては酸化物であるZnO粉末ならびに、正三価化合物として例えばGa、Al、Inのような酸化物粉末を用いるのが好ましいが、酸化物原料の他に炭酸塩であっても構わない。これら原料粉末の製造方法も既に知られている例えば塩化物を沈殿させて焙焼させた酸化物や共沈反応により作成した酸化物粉末であっても構わない。これら原料粉末の粒度は特に限定されないが粉末冶金法による焼結を施すので、通常用いられる平均0.1〜10μmの粒度が適している。
亜鉛と正三価の元素の化合物の比率はスパッタ膜の光透過率や低抵抗を満足するために従来検討されてきた組成を適用出来る。その結果によれば低抵抗を満足するために、亜鉛に対して加える正三価の元素は0.1at%から20at%の範囲にあれば良い。公知の技術すなわち亜鉛と正三価の元素の一種または二種以上とのみからなる酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗は1300℃焼結で数十Ω・cmであり、低抵抗にするために焼結温度を1500℃以上に高めたり、あるいは焼成雰囲気を還元雰囲気にすることで10−2〜10−3Ω・cmの範囲の比抵抗値を得ている。一方本発明のスパッタリングターゲットは金属亜鉛を混合して第二の焼結を行うので、正三価の元素比率が上記範囲内であれば焼結温度が低く、かつ還元雰囲気でなくても容易に10−3Ω・cm以下の比抵抗値が得られる。亜鉛化合物と正三価の元素の一種または二種以上の化合物を秤量後、混合を行う。混合装置はボールミル等一般に知られている混合方法が採用される。混合時間は2時間程度で良く、さらに混合度を上げたいときには8時間程度に延長しても良い。混合は媒体を加えない乾式混合でも良いが、混合時の粉末同士の摩擦を避けて混合度を高める観点から水を媒体として行う混合が一層適している。混合の後に脱水、乾燥を行い、一旦600〜1100℃の温度範囲で第一の焼結を行う。本発明の場合、次に金属亜鉛の粉末を加えて再度混合を行うために第一の焼結を終えた塊を粉砕する必要がある。その平均粉砕粒度は0.1〜20μmの範囲が好ましいので、公知の方法のような1300℃以上の高温で第一の焼結を行うと該塊の硬度が高くなりすぎて粉砕が困難となる。従って第一の焼結温度は粉砕がしやすいように600〜1100℃の範囲に留めておくことが望ましい。第一の焼結の雰囲気は大気中で充分である。スパッタリングターゲットの比抵抗をさらに小さくする目的で第一の焼結の雰囲気を還元性雰囲気にしても良いが、第二の焼結で金属亜鉛を含むことが比抵抗を小さくすることに寄与しているので、第一の焼結はことさら還元雰囲気の焼結でなくても差し支えない。上記温度範囲の第一の焼結で混合物中の揮発成分が除去されると同時に六方晶の結晶構造を有する単一構造の酸化物多結晶体に変換される。該第一の焼結を施した後の試料はやや緑色を帯びた色を呈している。
第一の焼結の後の粉砕は既知のボールミル、振動ミル、アトライター等の装置を使用して行われる。その平均粉砕粒度は次に混合する金属亜鉛粉末の粒度とあまりかけ離れない範囲に選択すれば良い。第二の焼結の前に添加混合する金属亜鉛粉末の平均粒度は10μm以下が好ましいので、上記粉砕粒度も10μm以下であれば良い。重要なのは添加する金属亜鉛の粒度であり上記平均粒度よりも大きいと最終的に得られるスパッタリングターゲットに大きな金属単独相の塊が生成され、スパッタ中のスプラッシュ発生につながるので好ましくない。
第一の焼結を行った粉砕粉に対して加える金属亜鉛粉末の割合は第一の焼結粉100重量部に対して5〜20重量部が好ましい。これより少ない量ではスパッタ膜の近赤外域での光透過率を高める効果が薄い。また逆に多すぎるとスパッタ膜の黒色化現象が始まり光透過率そのものが波長の如何に関わらず低下し始めるので好ましくない。第一の焼結粉と金属粉との混合は前記と同様にボールミル等の公知の装置を用いて、2時間、さらに必要に応じて6時間程度の混合を行えば良い。この混合は水等の媒体は使用する必要はない。仮に使用しても酸化物粉と金属粉との比重差から金属粉の沈殿を生じやすく、結果としてスパッタリングターゲット中に金属相の偏析を生じやすいという欠点がある。
上記混合の後第二の焼結が施される。第二の焼結に先立ちスパッタリングターゲットの形状に応じて成形を行っても良い。その場合には粉末をキャビティに投入して脱気を行ってから成形をするほうが成形体に空気が残留せず、焼結体の密度を高めるために好都合である。あるいは前もって成形を行わずとも、次に述べるようなホットプレス焼結法を採用すると脱気と焼結が一つの装置内で行えるので好ましい。第二の焼結は700〜1100℃の温度範囲で行われる。この理由は1100℃以下の温度とすることにより結晶組織が酸化亜鉛と正三価の元素の酸化物相と金属亜鉛の相との混晶にするためである。1100℃を超える温度で第二の焼結を行うと金属亜鉛は酸化物相に拡散してしまい、結果として単一酸化物の結晶組織を形成するようになる。このような単一酸化物相のスパッタリングターゲットとしたのではスパッタ導電膜の近赤外域での光透過率を高める効果が無い。また第二の焼結温度が上記範囲よりも低いと焼結密度が低くなり好ましくない。
上記のように第二の焼結温度は高くは無いので、焼結密度を高める観点から第二の焼結を一方向加圧ホットプレスあるいは等方性加圧ホットプレスHIPで行うのが望ましい。これらホットプレスは炭素からなるキャビティに粉末を投入して焼結を行うものであり昇温、加圧の前に装置内で脱気を行うことが出来る。従って粉末中の空気を除去してから焼結を行うので焼結密度が高い。例えば金属亜鉛を10重量部添加して700℃で2時間ホットプレスを行えば空孔率を30%以下に低減でき取り扱いに問題の無い程度にまでスパッタリングターゲットの密度を向上出来る。ホットプレスの昇温速度や保持時間には特に制約は無い。一方向性加圧あるいはHIPの場合共に50〜200℃/時間、最高温度に到達後30分ないし2時間程度の時間保持するのが一般的なホットプレスであり本発明でもこの従来からの条件が採用できる。ホットプレスの前に脱気を行い、次いで所定のガスを導入して昇温する。雰囲気は大気でも良いが焼結密度を高める観点からはアルゴン、ついで窒素が望ましい。第二の焼結を終えた後の焼結体は灰色がかった色を呈している。ミクロに顕微鏡観察するとやや緑色を帯びた酸化物と思われる相と顕微鏡光を反射する相とが観察され、該光反射相は酸化物中に固溶しない金属相であることがX線回折の結果明らかとなった。
第二の焼結を終えた焼結体はセラミックの加工に用いられるダイヤモンド砥石で問題なく加工が可能である。スパッタ面を平滑に加工し、必要に応じてディスク状に外形加工を施してスパッタリングターゲットが完成する。
該スパッタリングターゲットを使用した製膜は直流スパッタリングあるいは高周波スパッタリングのいずれも可能である。スパッタリングターゲットの抵抗値は主に添加する金属亜鉛の量により決定される。金属亜鉛の添加量が第一の焼結を終えた酸化物100重量部に対して20重量部の場合、第二の焼結を終えたスパッタリングターゲットの比抵抗値は0.1〜1mΩ・cmであり、添加金属量が増して30重量部になると該比抵抗値は0.01〜0.1mΩ・cmへと低下する。いずれの添加量においても直流スパッタリングが可能な程度の抵抗値であるが、スパッタされた導電膜の光吸収スペクトルは直流スパッタリングあるいは高周波スパッタリングいずれにおいても大きな変化は無く、金属亜鉛を添加しない場合に比べて1200nmの近赤外域における波長帯域まで光透過率が大きいと言う特徴を有する。
本発明のスパッタリングターゲットを用いた導電膜の700〜1200nmにおける光透過率が増大する理由については明らかではないが、スパッタされた導電膜中の亜鉛量が過剰な酸化物膜になっているためではないかと推測される。特開2007−31786号公報ではスパッタリングターゲットの酸素量を少なくすることで酸素不足の導電膜にしているが、発明者が種々検討した結果では酸化亜鉛系に導電膜を酸素不足にすると確かに抵抗値は下がるものの、膜中に金属亜鉛の析出を生じやすく光透過の観点からは好ましくない。光透過率の観点からで導電膜の酸素を不足にすることではなくて、酸化物として単一相を保ちつつ、かつ亜鉛過剰な状態を示すことが有用と推測される。但しこのような状態を保つには加える金属亜鉛量に上限があり、酸化物100重量部に対して20重量部を超える亜鉛を加えると金属亜鉛の析出が始まり、光透過率が低下するという好ましくない結果となる。
以下に実施例を示す。
▲1▼酸化亜鉛と正三価の元素化合物の混合。
正三価の元素化合物としての場合を記す。純度が99.6%で平均粒度2μmの酸化亜鉛粉末に対して純度99.5%平均粒度粒度0.8〜1.5μmの酸化アルミニウムまたは酸化ガリウムを各々単独でその金属元素の割合が5at%となるように秤量し混合した。混合は粉末合計1kgに対してイオン交換水を700cc加え、高硬度クロム材のボールを用いたボールミルで6時間混合した。混合後脱水し熱風乾燥機で乾燥して次の第一の焼結に供した。
▲2▼第一の焼結。
第一の焼結の後に粉砕を行う関係で、第一の焼結に際しては上記乾燥粉を成形することなく乾燥粉のまま第一の焼結を行った。該第一の焼結は大気中、速度150℃/時間で昇温し700℃で2時間保持した。第一の焼結後の試料は粉末がやや固まった状態であったが軽く叩くだけで解砕出来、次に混合時に用いたボールミルで4時間の粉砕を行うことで平均1.5〜3μmの粉末が得られた。
▲3▼金属粉の添加。
金属粉として平均粒径2.5μmの金属亜鉛粉を上記第二の焼結を終えた粉砕粉に対して所定量を加えて混合した。混合は水を使用せずに上記ボールミルで2時間行った。
▲4▼第二の焼結と加工。
上記金属亜鉛粉を混合した混合粉を内径が2.5インチのグラファイト製の型内に充填してホットプレスを行った。該ホットプレスは昇温に先立ち真空ポンプで充填粉末中の空気を脱気して窒素雰囲気、保持温度800℃で2時間保持した。この後、粒度#2000のダイヤモンド砥石を用いて両面を加工して直径2.5インチのスパッタリングターゲットを得た。
▲5▼製膜および評価。
上記スパッタリングターゲットを用いて直流スパッタ装置でアルゴン90%、酸素10%の混合気体圧5mmTorr、ターゲットと基板間距離50mm、投入電力0.8kWで10分間製膜を行った。製膜用の基板としては20mm角で厚さが0.3mmのソーダガラスを用いた。膜厚を段差計で測定したところおよそ0.8μmであった。該スパッタ膜を分光光度計を用いて光透過率のスペクトル測定を行った。
(実施例1)酸化亜鉛95at%、酸化アルミニウム5at%となるように秤量し上記▲1▼に記載した方法で第一の焼結と粉砕を行った。次いで該粉砕粉100重量部に対して10重量部の金属亜鉛を加え上記混合と第二の焼結を行い、上記加工を施してスパッタリングターゲットを得た。該スパッタリングターゲットの相構成をX線回折で調べたところ酸化物相と金属亜鉛相の混晶であることが確認された。該スパッタリングターゲットを用いて上記ソーダガラス基板上に上記スパッタリングを行い、透明導電膜を得た。該透明導電膜を顕微鏡観察した結果では金属光沢状の相は認められず、全体が単一の相で形成されていた。このことから、スパッタリングターゲット自体は酸化物相と金属亜鉛相で構成されているものの、スパッタリングの際には金属亜鉛は酸化されて全体的に亜鉛が過剰な単一酸化物相を形成するものと考えられる。該透明導電膜の比抵抗を四端子法で測定したところ0.8mΩ・cmであった。次いで400〜1200nmの波長範囲で光透過率を測定した。その結果図1に示すように600nm以上の波長範囲でも光透過率は著しくは低下せず、1200nmでも光透過率88%と大きな値を示した。
(実施例2)
酸化亜鉛95at%、酸化ガリウム5at%となるように秤量し実施例1と同じ混合と第一の焼結を行った。次いで粉砕粉100重量部に対して20重量部の実施例1と同じ金属亜鉛粉末を加えて、以降は実施例1と同じ方法でスパッタリングターゲットを得た。該スパッタリングターゲットもX線回折の結果酸化物相と金属亜鉛相の混晶であることが判った。該スパッタリングターゲットを用いて実施例1と同一条件で製膜して透明導電膜を得た。該透明導電膜の比抵抗は0.2mΩ・cmであった。光透過率を測定したところ図1に示すように1200nmで80%であった。
(比較例1)
酸化亜鉛95at%、酸化アルミニウム5at%となるように秤量し700℃で一旦焼結し、その後平均粒度が3μm程度になるように粉砕し、金属亜鉛を加えずに成形し、大気中1500℃で4時間の焼結を行い、スパッタリングターゲットを得た。該スパッタリングターゲットはX線回折の結果では酸化物の単独相であった。また該スパッタリングターゲットの比抵抗は0.3m・Ωcmであり、実施例1と同一条件でのスパッタリングが可能であった。実施例1と同一条件でのスパッタリングで得られた透明導電膜の比抵抗は0.1mΩ・cmであったが、光透過率は図1に示すように波長600nm未満では実施例1とほぼ同じ光透過率であるものの、600nmを超えると光透過率が著しく低下していくことが判った。
(比較例2)
実施例1と同じ組成で第一の焼結を行い、実施例1と同一条件で粉砕した粉砕粉100重量部に対して23重量部の金属亜鉛粉末を加えて実施例1と同じ混合、第二の焼結を行ってスパッタリングターゲットを得た。該スパッタリングターゲットを用いて実施例1と同条件でスパッタリングして導電膜を得た。該導電膜の比抵抗は0.3m・Ωcmと実施例1より小さかったが、光透過率を測定したところ図1に示すようにその波長依存性は実施例1で得た導電膜と類似しているものの、全ての波長域で全体的に光透過率が大きく低下していた。該導電膜を顕微鏡観察したところ金属相と思われる光を反射する相が多数認められた。
従って以上の実施例および比較例の結果を総合して考察すると本発明のスパッタリングターゲットは酸化物相とこれに固溶しない金属亜鉛相とからなり、スパッタリング中に金属亜鉛が酸化されてスパッタリング導電膜は亜鉛が過剰な単一酸化物相の膜になることが判る。このことが近赤外域波長での光透過率を高めることに寄与しているものと推測される。該効果は金属亜鉛が5重量部以上で認められるが、20重量部を超えると、スパッタリング膜は単一相を形成できなくなり、光を透過しない金属亜鉛相が混在するようになる。このため光透過率が全体的に低下する。
はスパッタリング導電膜の光透過率の波長依存性を示す図。1は実施例1、2は実施例2、3は比較例1、4は比較例2の結果を示す。

Claims (5)

  1. スパッタ導電膜の700〜1200nmの波長域における光透過率を高めるためのスパッタリングターゲットであって、亜鉛に対して0.1at%から20at%の正三価以上の元素の一種または二種以上を加えて焼結した酸化物100重量部に対して5〜20重量部の金属亜鉛を含むことを特徴とする透明導電膜形成用スパッタリングターゲット。
  2. スパッタ導電膜の700〜1200nmの波長域における光透過率を高めるためのスパッタリングターゲットであって、亜鉛と正三価以上の元素とが酸化物結晶相を構成し、金属亜鉛が該酸化物結晶相に固溶しない独立相で存在していることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  3. スパッタ導電膜の700〜1200nmの波長域における光透過率を高めるためのスパッタリングターゲットの製造方法であって、含有金属の組成が、亜鉛が80at%から99.9at%、正三価以上の元素が0.1at%から20at%となるように配合した化合物原料に第一の焼結を行った後に、該第一の焼結粉100重量部に対して5〜20重量部の金属亜鉛粉末を添加して第二の焼結を施すことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 上記第一の焼結温度が600〜1100℃であると共に、第二の焼結温度が700〜1100℃であることを特徴とする請求項3に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  5. 前記請求項3および請求項4に記載の製造方法により得られたスパッタリングターゲット。
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