JP2009248217A - 硬質被覆層が高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】工具基体表面に、下部層と中間層と上部層とからなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、下部層はTi化合物層、中間層は(0001)面配向率が高いα−Al2O3層、上部層は、α−Al2O3相とZrO2相の混合組織を有し、上部層の中間層側(工具基体側)よりも上部層の表面側においてより多くの酸化ジルコニウムを含有する混合組織層であって、さらに、該混合組織層の各結晶面のうちの相互に隣接する結晶粒の界面で、1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が35〜70%である。
【選択図】図5
Description
(a)下部層は、炭化チタン層、窒化チタン層、炭窒化チタン層、酸化チタン層、炭酸化チタン層、窒酸化チタン層、炭窒酸化チタン層等のTi化合物層、
(b)上部層は、その下部層側をα型酸化アルミニウムで構成し、一方、その表面側は、α型酸化アルミニウム相の素地に酸化ジルコニウム相が分散分布した混合組織層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具(以下、これを従来被覆工具という)が知られており、この従来被覆工具が、断続重切削加工においてすぐれた耐チッピング性を示すことが知られている。
(a)下部層は、炭化チタン層、窒化チタン層、炭窒化チタン層、酸化チタン層、炭酸化チタン層、窒酸化チタン層、炭窒酸化チタン層等のTi化合物層、
(b)上部層は、α型の結晶構造を有するAl−Zr複合酸化物層であって、しかも、該Al−Zr複合酸化物層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にAl、Zr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60〜80%である構成原子共有格子点分布グラフを示すΣ3対応粒界の分布割合が高いAl−Zr複合酸化物層、
上記(a)、(b)からなる下部層、上部層を蒸着形成することにより、高速断続切削加工における表面被覆切削工具の耐チッピング性の向上を図ることも知られている。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3 :1〜10%、CO2 :3〜10%、H2 S:0.02〜2%、HCl:0.5〜5%、H2 :残り、
反応雰囲気温度:1000〜1050℃、
反応雰囲気圧力:5.3〜53kPa、
の条件(以下、通常条件という)でまず従来α型Al2O3層を形成した後、
引き続き、上記の反応ガスにZrCl4 を加えて、反応ガス組成を、例えば、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3 :1〜10%、CO2 :3〜10%、H2 S:0.02〜2%、HCl:0.5〜5%、ZrCl4 :0.05〜3%、H2 :残り、
として、反応雰囲気温度および反応雰囲気圧力については同条件で化学蒸着を行うことにより、下部層側は従来α型Al2O3層からなり、一方、表面側は、従来α型(Al,Zr)O層からなる硬質被覆層が形成されていた。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:3〜10%、CO2:0.5〜3%、C2H4:0.01〜0.3%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の低温条件で、Al2O3核を形成し、この場合、前記Al2O3核は20〜200nmの平均層厚を有するAl2O3核薄膜であるのが望ましく、引き続いて、反応雰囲気を圧力:3〜13kPaの水素雰囲気に変え、反応雰囲気温度を1100〜1200℃に昇温した条件で前記Al2O3核薄膜に加熱処理を施した状態で、α型Al2O3層を通常の条件で形成すると、この結果の前記加熱処理Al2O3核薄膜上に蒸着形成されたα型Al2O3層は、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a)、(b)に概略説明図で示されるとおり、断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有するα型Al2O3結晶粒個々に電子線を照射して、基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記加熱処理Al2O3核薄膜上に蒸着形成されたα型Al2O3層は、図3に例示されるとおり、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、このシャープな最高ピークの位置は、前記Al2O3核薄膜の平均層厚を変化させることによりグラフ横軸の傾斜角区分に現れる位置が変わる。
つまり、前記加熱処理Al2O3核薄膜上に蒸着形成されたα型Al2O3層は、(0001)面配向率が高いα型Al2O3層(以下、改質α型Al2O3層という)であることがわかる。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6〜10%、ZrCl4:0.6〜1.6%、CO2:4〜8%、HCl:6〜10%、H2S:0.25〜0.6%、H2:残り、
反応雰囲気温度:980〜1060℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件、かつ、少なくとも蒸着反応終了前に反応ガス中のZrCl4の含有割合を増加させて上部層を蒸着形成すると、該上部層として、α型酸化アルミニウム相の素地に酸化ジルコニウム相が分散分布し、しかも、上部層の中間層側(工具基体側)よりも上部層の表面側においてより多くの酸化ジルコニウムが含有されている混合組織層(以下、改質α型(Al,Zr)O層ともいう)が形成される。
また、反応ガス中に所定割合のZrCl4を含有させて蒸着を開始してから一定時間経過後に、反応ガス中のZrCl4含有割合を増加させて蒸着を継続すると、上部層の中間層側(工具基体側)には、酸化ジルコニウム含有量が少ない層(以下、上部内面層という)が形成され、一方、上部層の表面側には、酸化ジルコニウム含有量が多い層(以下、上部外面層という)が形成され、その結果、酸化ジルコニウム含有量が上部内面層と上部外面層という異なる層の積層構造からなる混合組織層(以下、積層構造混合組織層という)が形成される。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と中間層と上部層とからなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
(a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)中間層は、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、かつ、1〜3μmの平均層厚を有するα型酸化アルミニウム層であって、
該中間層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すα型酸化アルミニウム層、
(c)上部層は、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、2〜14μmの平均層厚を有し、かつ、α型酸化アルミニウム相の素地に酸化ジルコニウム相が分散分布する組織を有し、さらに、上部層の中間層側(工具基体側)よりも上部層の表面側においてより多くの酸化ジルコニウムが含有されている混合組織層であり、
該層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10−10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が35〜70%である構成原子共有格子点分布グラフを示すα型酸化アルミニウム相と酸化ジルコニウム相の混合組織層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具。
(2) 混合組織層は、上部層の中間層側(工具基体側)から上部層の表面側に向かって、酸化ジルコニウム含有量が連続的に増加している混合組織層であることを特徴とする前記(1)1記載の表面被覆切削工具。
(3) 混合組織層は、上部層の中間層側(工具基体側)に形成された酸化ジルコニウム含有量が少ない上部内面層と、上部層の表面側に形成された酸化ジルコニウム含有量が多い上部外面層との積層構造として構成された混合組織層であることを特徴とする前記(1)記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
Ti化合物層は、改質α型Al2O3層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と改質α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高負荷が作用する高速重切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
中間層を構成する改質α型Al2O3層は、通常の化学蒸着装置にて、Ti化合物層からなる下部層の表面に、例えば、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:3〜10%、CO2:0.5〜3%、C2H4:0.01〜0.3%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の低温条件で、Al2O3核を形成し、この場合、前記Al2O3核は20〜200nmの平均層厚を有するAl2O3核薄膜であるのが望ましく、引き続いて、反応雰囲気を圧力:3〜13kPaの水素雰囲気に変え、反応雰囲気温度を1100〜1200℃に昇温した条件で前記Al2O3核薄膜に加熱処理を施した状態で、α型Al2O3層を通常の条件で蒸着することにより形成することができる。
中間層の改質α型Al2O3層はすぐれた高温硬さを備え、耐摩耗性の向上に寄与するばかりか、下部層のTi化合物層および上部層の改質(Al,Zr)O層のいずれにも強固に密着し、硬質被覆層全体としての剥離強度を向上させる。
そして、このような(0001)面配向率が高い改質α型Al2O3層の上に、上部層としての改質α型(Al,Zr)O層を蒸着形成することによって、該改質α型(Al,Zr)O層にはZr成分が含有されているにもかかわらず、Σ3対応粒界が高い割合で形成されて粒界強度が向上し、その結果として、改質α型(Al,Zr)O層が、すぐれた耐熱塑性変形性とともにすぐれた高温強度を備えるようになる。
すなわち、中間層の改質α型Al2O3層は、配向性のない従来α型Al2O3層を中間層として設けた場合に比して、上部層の改質α型(Al,Zr)O層のΣ3対応粒界の分布割合を高めるという大きな役割を担っている。
ただ、上記改質α型Al2O3層についての傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%未満の場合には、上部層におけるΣ3対応粒界の割合の増加を期待できないことから、改質α型Al2O3層の(0001)面配向率を45%以上と定めた。
また、改質α型Al2O3層からなる中間層の平均層厚が1μm未満では、(0001)面配向率が45%未満であり、一方、平均層厚が3μmを超える場合には、上部層である改質α型(Al,Zr)O層との付着強度が低下するため、その平均層厚は1〜3μmと定めた。
上部層を構成する改質α型(Al,Zr)O層は、通常の化学蒸着装置にて、改質α型Al2O3層からなる中間層の表面に、例えば、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6〜10%、ZrCl4:0.6〜1.6%、CO2:4〜8%、HCl:6〜10%、H2S:0.25〜0.6%、H2:残り、
反応雰囲気温度:980〜1060℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件、かつ、少なくとも蒸着反応終了前に反応ガス中のZrCl4の含有割合を増加させて上部層を蒸着ことにより形成することができる。
上部層の改質α型(Al,Zr)O層は、α型酸化アルミニウム相の素地に酸化ジルコニウム相が分散分布した混合組織を示し、特に、素地を構成するα型酸化アルミニウム相は層の高温硬さおよび耐熱性を向上させ、また、素地中に分散分布する酸化ジルコニウム相は高温強度と耐熱塑性変形性を向上させる。
Zr成分を含有するα型Al2O3では、通常、Σ3対応粒界が形成される割合は比較的小さいが、中間層として(0001)面配向率が高い改質α型Al2O3層を設けることにより、酸化ジルコニウム相を含有するα型Al2O3相においてもΣ3対応粒界の分布割合を高めることができ、粒界強度が高められため、その結果として、改質α型(Al,Zr)O層は高温強度、耐熱塑性変形性が一段とすぐれたものとなり、耐チッピング性、耐欠損性が向上する。
これにより、本発明の被覆工具を高速重切削加工に供した場合でも、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を充分かつ同時に発揮することができる。
例えば、上部層を、傾斜組成混合組織層で構成すると、酸化ジルコニウム含有量が少ない中間層側(工具基体側)の領域(即ち、中間層との界面)では、Σ3対応粒界の分布割合が相対的に高くなるため粒界強度が向上しすぐれた高温強度を示すようになり、また、酸化ジルコニウム含有量が多い上部層の表面側の領域では、Zr成分の含有量が高いため相対的に耐熱塑性変形性が向上するようになり、上部層全体としては、耐チッピング性が向上するとともに、偏摩耗等の発生が抑えられ耐摩耗性が向上するようになる。
なお、Σ3対応粒界の分布割合を高め、同時に、耐熱塑性変形性の向上を図るためには、Zr含有率(Al成分との合量に占めるZr成分の含有割合(但し、原子比))は、0.002〜0.2とすることが望ましく、0.002未満では、耐熱塑性変形性の改善効果が少なく、また、0.2を超えるとΣ3対応粒界が減少し、耐チッピング性が低下する。より好ましいZr含有率は0.004〜0.1である。
また、例えば、上部層を、積層構造混合組織層で構成すると、酸化ジルコニウム含有量が少ない中間層側(工具基体側)の上部内面層は、Σ3対応粒界の分布割合が相対的に高くなるため粒界強度が向上しすぐれた高温強度を示し、また、酸化ジルコニウム含有量が多い上部層の表面側の上部外面層は、Zr成分の含有量が相対的に高いため耐熱塑性変形性が向上し、前記傾斜組成混合組織層の場合と同様に、上部層全体として、耐チッピング性が向上し耐摩耗性が向上するようになる。
なお、Σ3対応粒界の分布割合を高め、同時に、耐熱塑性変形性の向上を図るためには、上部内面層におけるZr含有率は、0.002〜0.05とすることが望ましく、0.002未満では、耐熱塑性変形性の改善効果が期待できず、一方、0.05を超えるとΣ3対応粒界が減少し、高温強度が低下傾向を示すようになる。また、上部外面層におけるZr含有率は、0.05〜0.2とすることが望ましく、0.05未満では、耐熱塑性変形性の改善効果が少なく、一方、0.2を超えるとΣ3対応粒界の急激な減少により、上部層全体としての耐チッピング性の低下を招くことになる。好ましいZr含有率は、上部内面層において、0.002〜0.05であり、上部外面層においては、0.05〜0.2である。
また、改質α型Al2O3層からなる中間層と改質α型(Al,Zr)O層からなる上部層との合計平均層厚は、チッピング発生防止等の観点から、3〜15μmとすることが望ましい。
また、表6に示される条件で、表8に示される組み合わせおよびそれぞれの目標層厚で、積層構造混合組織層からなる改質α型(Al,Zr)O層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆工具11〜20をそれぞれ製造した。
すなわち、工具基体表面と垂直な面をそれぞれ断面研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記断面研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
なお、図3は、本発明被覆工具3の改質α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図4は、従来被覆工具4の従来α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
すなわち、上記構成原子共有格子点分布グラフは、上記の改質α型(Al,Zr)O層および従来α型(Al,Zr)O層の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、図2に示されるように、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を求めることにより作成した。
なお、本発明の傾斜組成混合組織層については、該層の層厚方向に沿った中間位置におけるΣ3の分布割合の値を、表7に、「Σ3の分布割合の平均値」として示した。また、本発明の積層構造混合組織層については、「上部内面層のΣ3の分布割合」および「上部外面層のΣ3の分布割合」のそれぞれの値を表8に示した。
なお、図5は、本発明被覆工具3の改質α型(Al,Zr)2O3層の構成原子共有格子点分布グラフ、図6は、従来被覆工具4の従来α型(Al,Zr)O層の構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ示すものである。
被削材:JIS・S20Cの丸棒、
切削速度:450 m/min、
切り込み:2.7 mm、
送り:0.9 mm/rev、
切削時間:10 分、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の乾式高速高送り切削試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、350m/min、0.3mm/rev)、
被削材:JIS・SCM420の丸棒、
切削速度:315 m/min、
切り込み:2 mm、
送り:0.37 mm/rev、
切削時間:5 分、
の条件(切削条件Bという)での合金鋼の乾式高速高切込み切削試験(通常の切削速度および切込みは、それぞれ、250m/min、1.5mm)、
被削材:JIS・FC300の丸棒、
切削速度:545 m/min、
切り込み:5.7 mm、
送り:0.4 mm/rev、
切削時間:5 分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の湿式高速高切込み切削試験(通常の切削速度および切込みは、それぞれ、400m/min、4mm)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表10に示した。
Claims (3)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と中間層と上部層とからなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
(a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)中間層は、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、かつ、1〜3μmの平均層厚を有するα型酸化アルミニウム層であって、
該中間層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフで現した場合、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すα型酸化アルミニウム層、
(c)上部層は、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、2〜14μmの平均層厚を有し、かつ、α型酸化アルミニウム相の素地に酸化ジルコニウム相が分散分布する組織を有し、さらに、上部層の中間層側(工具基体側)よりも上部層の表面側においてより多くの酸化ジルコニウムが含有されている混合組織層であり、
該層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、断面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10−10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で表した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が35〜70%である構成原子共有格子点分布グラフを示すα型酸化アルミニウム相と酸化ジルコニウム相の混合組織層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具。 - 混合組織層は、上部層の中間層側(工具基体側)から上部層の表面側に向かって、酸化ジルコニウム含有量が連続的に増加している混合組織層であることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
- 混合組織層は、上部層の中間層側(工具基体側)に形成された酸化ジルコニウム含有量が少ない上部内面層と、上部層の表面側に形成された酸化ジルコニウム含有量が多い上部外面層との積層構造として構成された混合組織層であることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
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JP2008096930A JP5286891B2 (ja) | 2008-04-03 | 2008-04-03 | 硬質被覆層が高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 |
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