JP2009243574A - 一方向クラッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】ケーシング内に嵌まり合う外輪の内周面に設けた所要数のポケットにローラを挿入し、そのポケットのカム面と軸との間で形成されたくさび角の狭小方向に軸が回転した場合、ローラがロックしてトルクを伝達し、逆方向に回転した場合、空転してトルクの伝達を遮断するようにした一方向クラッチにおいて、ロック時におけるローラによる軸の磨耗を抑えることにある。
【解決手段】弾性を有する合成樹脂から形成したケーシング１１の円筒部１２内に外輪２１が嵌め合わされる。ロック時、カム面２６の外径部が径方向外向きへ変位する際、ケーシング１１の内周部が径方向外向きに弾性変形して、ローラの押し付け力が吸収され、軸２０の外周面を押し付ける力が軽減することで、軸２０の外周面の磨耗が抑制される。
【選択図】図１

Description

この発明は、プリンタ、複写機の紙送り部等の駆動部に使用される一方向クラッチに関するものである。
従来から、プリンタ、複写機等の事務機に使用される一方向クラッチとしては、外輪の内周面に周方向に間隔をおいて複数のポケットが設けられ、そのポケットにローラが挿入され、前記ポケットの底面に軸との間で回転の一方向を向いたクサビ角を形成するカム面が設けられ、前記ローラをカム面の狭小方向に付勢するばねが収納され、外輪を一端閉塞・他端開放の円筒状のケーシング内にガタツキなく嵌め合わせ、蓋によってケーシングの開放端が閉塞されたものが知られている（特許文献１参照）。
特許第３２７０６６７号公報
この一方向クラッチは、前記蓋、外輪及びケーシングの閉塞端に貫通した軸を外輪内周面において支持し、前記軸がクサビ角の狭小方向に回転した場合に、ローラがポケットの狭小部分に噛み込んでロックし、軸と外輪及びケーシングが一体に回転してトルクを伝達し、前記と反対方向に回転すると、ローラが拡大方向に移動するため軸が空転してトルクの伝達を遮断する、という作用を行う。
前記一方向クラッチは、前記軸がクサビ角の狭小方向に回転し、ローラがポケットのカム面と軸の外周面との間に噛み込むとき（ロック時）、ポケットのカム面と軸の外周面に突き当たる。このとき、ローラによりカム面と軸の外周面に対して衝撃に伴う押し付け力が発生する。この押し付け力は、外輪のカム面の径方向外側に対応する部分（以下、カム面の外径部という）を径方向外向きに変位させようとするとともに、軸の外周面を径方向内向きに押し付ける。
しかし、前記一方向クラッチのケーシングは、通常、剛性を確保するために、その内部に外輪をすき間なく嵌め合わせている。このため、その嵌め合い面では、ロック時、外輪のカム面の外径部を径方向外向きに変位させて、ローラによる衝撃に伴う押し付け力を軽減（吸収）させることが難しい。
このため、前記押し付け力がそのまま軸の外周面に作用する。この事務機用の軸は、コスト面から硬度が低い非焼き入れ軸が一般に使用されており、ローラによって軸の外周面に圧痕やフレッチング摩耗が生じる。軸の外周面の磨耗が進むと、ロック時に、ローラと軸の外周面との間にすき間が生じ、ロック状態を維持することができなくなるという問題がある。
そこで、この発明の課題は、ロック時において、ローラによる軸の磨耗を抑えることにある。
前記の課題を解決するために、この発明は、円筒状のケーシング内に嵌まり合う外輪の内周面に周方向に間隔をおいて複数のポケットが設けられ、そのポケットにローラが挿入され、前記ポケットの底面に軸との間で回転の一方向を向いたくさび角を形成するカム面が設けられ、前記ローラを前記カム面の狭小方向に付勢するばねが前記各ポケットに収納されてなる一方向クラッチにおいて、前記ケーシングが合成樹脂で形成され、前記ケーシングは、前記軸と前記外輪が一方向に相対回転し前記ローラが前記ポケットのカム面と前記軸の外周面との間に噛み込むときに発生する衝撃を吸収する衝撃吸収機構を有する構成としたのである。
前記ケーシングが前記衝撃吸収機構を有する構成を採用する場合、前記ケーシングは、少なくともその内周部が弾性を有しており、前記ケーシングの内周部が前記衝撃吸収機構とされる構成を採用することができる。
このようにすると、合成樹脂により形成されたケーシングの内周部は、弾性を有するので、径方向外向きに弾性変形可能となる。このため、軸と外輪が一方向に相対回転し、ローラが外輪のポケットのカム面と軸の外周面との間に噛み込むとき（ロック時）、ローラのカム面への押し付け力により、カム面の外径部が径方向外向きに変位した際、ケーシングの内周部が径方向外向きに弾性変形する。この弾性変形により、ローラの押し付け力が吸収されるとともに、ローラによる軸の外周面を押し付ける力が軽減して、軸の外周面の磨耗が抑制される。
前記構成において、前記ケーシング内に一体に嵌め合わされた円筒体が、弾性を有する合成樹脂により形成され、前記円筒体が前記ケーシングの内周部を形成した構成を採用することができる。
このようにすると、ケーシングの内周部を形成する円筒体は、弾性を有する合成樹脂により形成されるので、その内周部が径方向外向きに弾性変形可能となる。このため、ロック時、ローラのカム面への押し付け力により、カム面の外径部が径方向外向きに変位した際、円筒体の内周部が径方向外向きに弾性変形する。この弾性変形により、ローラの押し付ける力を吸収することができ、ケーシングを剛性、耐衝撃性に優れた合成樹脂により形成可能となり、ケーシングの長寿命を図ることができる。
また、前記ケーシングは、同心状に間隔をおいて配置された外側円筒部と内側円筒部と、その両円筒部の間に一体に設けられた複数の径方向のリブとから形成され、前記内側円筒部がケーシングの内周部を形成した構成を採用することができる。
このようにすると、ケーシングの外側円筒部と内側円筒部との間にすき間が形成されるので、ケーシングの内周部を形成する内側円筒部が径方向外向きに弾性変形可能となる。さらに、外側円筒部と内側円筒部との間に径方向のリブが一体に複数形成されているので、ケーシングの径方向の強度が確保される。このため、ケーシングの素材として採用できる合成樹脂の剛性、耐衝撃性などの制限が緩和される。
この発明の一方向クラッチは、ケーシングが衝撃吸収機構を有するので、ロック時にローラにより押し付けられるカム面の径方向外側に対応する部分を、径方向外向きに変位させることが可能となり、ローラによる軸の外周面への押し付け力が軽減し、軸の外周面の圧痕やフレッチンング磨耗の発生が抑えられて、長寿命を図ることができる。
また、使用時の温度条件によらず、外輪のカム面の外径部を径方向外向きに変位させることが可能となるので、常温での使用においても、ローラによる軸の外周面への圧痕やフレッチング摩耗の発生を抑えることができる。
以下、この発明の第一実施形態を図１〜図２に示す。この実施形態の一方向クラッチは、ケーシング１１と外輪２１とローラ２２とばね２３と蓋２４とから構成される。
ケーシング１１は、一端が閉塞し、他端が開放した円筒状をなし、弾性を有する合成樹脂により形成されている。ケーシング１１の円筒部１２の内周面に軸方向の突条１３が周方向５等分位置にそれぞれ形成されている。また、ケーシング１１の他端には、図２に示すように、周溝１４が形成され、一端には軸穴１５が設けられる。
ケーシング１１の素材としては、ナイロンにガラス繊維を含有させた、ガラス繊維強化ナイロン樹脂を採用することができ、例えば、デュポン（株）製の「ザイテル（商標登録）８０Ｇ３３ＨＳ１Ｌ」が商業的に入手されるものとして挙げられる。
ケーシング１１内の外輪２１は、焼結合金製の円筒体であり、その外周面に軸方向の凹所１６が周方向５等分位置に形成されている。この外輪２１は、凹所１６がケーシング１１の突条１３に嵌り合うように、ケーシング１１内にすき間なく嵌め合わされる。この嵌め合いにより、外輪２１とケーシング１１との相対回転が防止される。
外輪２１の内周面には、図１に示すように、周方向の５等分位置にポケット２５が両端面間にわたって形成されている。ポケット２５の底面（径方向外面）に、軸２０との間で回転の一方向を向いたくさび角θを形成するカム面２６が設けられ、カム面２６によりくさび角度θを有するくさび形空所２７がポケット２５に形成される。
くさび形空所２７には円柱形のローラ２２が挿入され、くさび形空所２７の広い部分に通じるばね凹所２８にばね２３のばね片２９が挿入される。このばね片２９はローラ２２をくさび形空所２７の狭小方向に付勢している。
また、ポケット２５の周方向の開口幅は、ローラ２２の直径よりも小さく形成され、ローラ２２は、その一部が開口から部分的に露出し、外輪２１に挿通される軸２０に接触する。軸２０が挿通される前の状態では、ローラ２２は軸方向内向きにポケット２５から抜け出ない。
ばね２３は、図２に示すように、環状部３１と、各ポケット２５に対応した数のばね片２９とにより構成され、弾性を有する金属板に折り曲げ加工を施すことにより形成される。環状部３１は外輪２１の内径とほぼ同じ内径を有し、その外周部の周方向５等分位置から基部３２がそれぞれ同じ向きに起立しており、各基部３２を折り返すことによってばね片２９が形成される。これにより、各ばね片２９は環状部３１のまわりに相互に一定の角度を持って羽根車状に突き出すように形成される。
ばね２３は外輪２１の一方の端面から各ばね片２９が各ポケット２５に挿入されるとともに、環状部３１が外輪２１の一端面に突き当てられる。ばね２３が外輪２１に取り付けられた状態で、外輪２１の他端面からローラ２２が、その先端をばね片２９に押し当てながら挿入される。
蓋２４は、中央に軸２０が通る軸穴３３を有し、外周面にリブ３４が形成されている。このリブ３４をケーシング１１の周溝１４に嵌め合わせて、ケーシング１１の他端（開放端）に蓋２４が取り付けられる。この蓋２４の軸穴３３から軸２０がケーシング１１の軸穴１５にわたり挿通され、外輪２１の内周面が、軸２０の外周面と接触する。
この実施形態の一方向クラッチは、以上のように構成され、図１に示すように、軸２０がケーシング１１に対して図１の矢印ａの方向（くさび形空所２７の狭小方向）に回転すると、ローラ２２がカム面２６と軸２０の外周面との間で噛み込んでロックし、軸２０のトルクがケーシング１１に伝達される。また、軸２０が図１の矢印ａと反対向きに回転すると、ローラ２２がくさび形空所２７の拡大方向に移動し、軸２０は空転状態となってトルクの伝達が遮断される。トルクがケーシング１１側から軸２０の方向に伝達される場合も前述と同様の作用で伝達される。
ケーシング１１は、弾性を有する合成樹脂から形成されているので、内周部が径方向外向きに弾性変形する。このため、ロック時、ローラ２２によってカム面２６に作用する衝撃を伴う押し付け力により、全ポケット２５のカム面２６の外径部が径方向外向きに変位した際、カム面２６の外径部に接するケーシング１１の内周部が径方向外向きに弾性変形する。
ケーシング１１の内周部の弾性変形で、ローラ２２によるカム面２６への押し付け力が吸収される。このため、ケーシング１１の内周部がローラ２２によるカム面２６への衝撃を伴う押し付け力を吸収する衝撃吸収機構とされ、ケーシング１１が衝撃吸収機構を有するものとなる。
ケーシング１１の衝撃吸収機構により、ローラ２２によるカム面２６への押し付け力が吸収されるので、その押し付け力が軽減される。その結果、軸２０の外周面への圧痕やフレッチング摩耗の発生が抑制される。
この発明の第２実施形態を図３、図４に示す。この実施形態は、合成樹脂により形成されたケーシング１１の円筒部１２内に弾性を有する合成樹脂からなる円筒体１８が一体に嵌められる点で、前述の第１実施形態と相違し、その他の構成は、前記第１実施形態と同様であり、同じ構成と考えられるものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態の一方向クラッチは、図３に示すように、ケーシング１１内に円筒体１８を介して外輪２１が嵌められたものである。
ケーシング１１の円筒部１２の内周面に、軸方向の凹所１７が周方向５等分位置に形成されている。ケーシング１１の素材としては、弾性を有する合成樹脂であってもよいが、これに限られず、剛性、耐衝撃性に優れた合成樹脂を採用することもできる。この場合、ケーシング１１の長寿命を図ることができる。
円筒体１８は、弾性を有する合成樹脂により形成され、その内周面に軸方向の突条１３が周方向の５等分位置に形成される。また、円筒体１８の外周面にも軸方向の突条１９が周方向の５等分位置に形成され、内周面の突条１３と外周面の突条１９が円筒体１８の周方向において、同じ位置に形成されている。
円筒体１８は、突条１９がケーシング１１の凹所１７に嵌り合うように、ケーシング１１内にすき間なく嵌め合わされ、その嵌め合いにより、ケーシング１１と円筒体１８が一体となり、円筒体１８がケーシング１１の内周部を形成する。
円筒体１８の内部には、突条１３が外輪２１の凹所１６に嵌り合うように、外輪２１がすき間なく嵌め合わされ、この嵌め合いにより、外輪２１とケーシング１１とは、円筒体１８を介して相対回転が防止される。
円筒体１８は、弾性を有する合成樹脂から形成されているので、ロック時、ローラ２２によってカム面２６に作用する衝撃を伴う押し付け力により、全ポケット２５のカム面２６の外径部が径方向外向きに変位した際、カム面２６の外径部に接する円筒体１８の内周部が径方向外向きに弾性変形する。
円筒体１８の内周部の弾性変形で、前述の第１実施形態の場合と同様に、ローラ２２の押し付ける力が吸収される。このため、円筒体１８が、ローラ２２によるカム面２６への衝撃を伴う押し付け力を吸収する衝撃吸収機構とされ、円筒体１８を一体に嵌め合わせたケーシング１１が衝撃吸収機構を有するものとなる。
ケーシング１１の衝撃吸収機構により、ローラ２２によるカム面２６への押し付け力が吸収されるので、その押し付け力が軽減され、軸２０の外周面への圧痕やフレッチング摩耗の発生が抑制される。また、ケーシング１１を剛性、耐衝撃性に優れた合成樹脂により形成した場合、ケーシング１１の長寿命を図ることができる。
この発明の第３実施形態を図５、図６に示す。この実施形態は、ケーシング１１の円筒部１２が、同心状に間隔をおいて配置された外側円筒部１２ａと内側円筒部１２ｂと、その両円筒部１２ａ、１２ｂの間に一体に設けられた複数の径方向のリブ１２ｃとから形成された点で前述の第１実施形態と相違し、その他の構成は、前記第１実施形態と同様であり、同じ構成と考えられるものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態の一方向クラッチは、図５に示すように、ケーシング１１は、その内周部を形成する内側円筒部１２ｂ内に外輪２１が嵌められたものである。
ケーシング１１は、外側円筒部１２ａと内側円筒部１２ｂとの間にすき間１２ｄが存在するので、内側円筒部１２ｂを径方向外向きに弾性変形させることができる。このため、ロック時、ローラ２２によってカム面２６に作用する衝撃を伴う押し付け力により、全ポケット２５のカム面２６の外径部が径方向外向きに変位した際、カム面２６の外径部に接するケーシング１１の内側円筒部１２ｂが弾性変形する。
この弾性変形で、前述の第１実施形態の場合と同様に、ローラ２２の押し付ける力が吸収され、内側円筒部１２ｂが、ローラ２２によるカム面２６への衝撃を伴う押し付け力を吸収する衝撃吸収機構となり、図６に示すように、内側円筒部１２ｂを内周部としたケーシング１１が衝撃吸収機構を有するものとなる。
ケーシング１１の衝撃吸収機構により、ローラ２２によるカム面２６への押し付け力が吸収されるので、その押し付け力が軽減され、軸２０の外周面への圧痕やフレッチング摩耗の発生が抑制される。また、外側円筒部１２ａと内側円筒部１２ｂとの間に径方向のリブ１２ｃが一体に複数形成されているので、ケーシング１１の径方向の強度が確保され、ケーシング１１の素材として採用できる合成樹脂の剛性、耐衝撃性などの制限が緩和される。
第１実施形態の一方向クラッチを示す断面図 同上の一方向クラッチを示す分解斜視図 第２実施形態の一方向クラッチを示す断面図 同上の一方向クラッチのケーシングを示す分解斜視図 第３実施形態の一方向クラッチを示す断面図 同上の一方向クラッチのケーシングを示す分解斜視図
符号の説明
１１ ケーシング
１２ 円筒部
１２ａ 外側円筒部
１２ｂ 内側円筒部
１２ｃ リブ
１２ｄ すき間
１３ 突条
１４ 周溝
１５ 軸穴
１６ 凹所
１７ 凹所
１８ 円筒体
１９ 突条
２０ 軸
２１ 外輪
２２ ローラ
２３ ばね
２４ 蓋
２５ ポケット
２６ カム面
２７ くさび形空所
２８ ばね凹所
２９ ばね片
３１ 環状部
３２ 基部
３３ 軸穴
３４ リブ

Claims (4)

  1. 円筒状のケーシング(１１)内に嵌まり合う外輪(２１)の内周面に周方向に間隔をおいて複数のポケット(２５)が設けられ、そのポケット(２５)にローラ(２２)が挿入され、前記ポケット(２５)の底面に軸(２０)との間で回転の一方向を向いたくさび角を形成するカム面(２６)が設けられ、前記ローラ(２２)を前記カム面(２６)の狭小方向に付勢するばね(２３)が前記各ポケット(２５)に収納されてなる一方向クラッチにおいて、
    前記ケーシング(１１)が合成樹脂で形成され、前記ケーシング(１１)は、前記軸(２０)と前記外輪(２１)が一方向に相対回転し前記ローラ(２２)が前記ポケット(２５)のカム面(２６)と前記軸(２０)の外周面との間に噛み込むときに発生する衝撃を吸収する衝撃吸収機構を有することを特徴とする一方向クラッチ。
  2. 前記ケーシング(１１)は、少なくともその内周部が弾性を有しており、前記ケーシング(１１)の内周部が前記衝撃吸収機構とされることを特徴とする請求項１に記載の一方向クラッチ。
  3. 前記ケーシング(１１)内に一体に嵌め合わされた円筒体(１８)が、弾性を有する合成樹脂により形成され、前記円筒体(１８)が前記ケーシング(１１)の内周部を形成したことを特徴とする請求項２に記載の一方向クラッチ。
  4. 前記ケーシング(１１)は、同心状に間隔をおいて配置された外側円筒部(１２ａ)と内側円筒部(１２ｂ)と、その両円筒部(１２ａ、１２ｂ)の間に一体に設けられた複数の径方向のリブ(１２ｃ)とから形成され、前記内側円筒部(１２ｂ)がケーシング(１１)の内周部を形成したことを特徴とする請求項２に記載の一方向クラッチ。
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