JP2009228476A - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】スクロール圧縮機の小型化を図ることである。
【解決手段】固定スクロール(75)および可動スクロール(76)のラップ(75a,76a)が互いに噛合して圧縮室(73)が形成される。圧縮室(73)では分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒が圧縮される。両スクロール(75,76)のラップ(75a,76a)は、厚さが中心側から外周側へ向かって次第に薄くなっている。
【選択図】図3
【解決手段】固定スクロール(75)および可動スクロール(76)のラップ(75a,76a)が互いに噛合して圧縮室(73)が形成される。圧縮室(73)では分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒が圧縮される。両スクロール(75,76)のラップ(75a,76a)は、厚さが中心側から外周側へ向かって次第に薄くなっている。
【選択図】図3
Description
本発明は、スクロール圧縮機に関し、特に、小型化対策に係るものである。
従来より、例えば冷凍装置等に用いられ、冷媒等の流体を圧縮するスクロール圧縮機が広く知られている。
特許文献1には、この種のスクロール圧縮機が開示されている。このスクロール圧縮機の圧縮機構は、固定スクロールおよび可動スクロールの各ラップが噛合することで、流体の圧縮室が形成される。圧縮室は、可動スクロールのラップの外周面に臨む第1圧縮室と、可動スクロールのラップの内周面に臨む第2圧縮室とに区画されている。
また、圧縮機構には、その外周面側に流体を圧縮室へ導くための吸入口が形成され、その中央部に圧縮室で圧縮された流体を外部(吐出空間)へ吐出させるための吐出ポートとが形成されている。このスクロール圧縮機構では、固定スクロールに対して可動スクロールが偏心回転運動する。その結果、各圧縮室は、圧縮機構の外周側から内周側へ徐々に移動してその容積が減少し、各圧縮室内で流体が圧縮される。
また、近年、オゾン層の破壊への影響が懸念されているため、環境負荷の少ない冷媒を用いることが推奨されている。例えば、塩素原子や臭素原子を含まず、オゾン層の破壊への影響が小さい冷媒として、特許文献2に示すような、分子式:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒が知られている。
特開平9−170574号公報
特開平4−110388号公報
ところで、上記特許文献2に示す分子式:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒は、単位体積あたりの冷凍能力が比較的低い。したがって、この分子式の冷媒を対象として上記特許文献1に示すようなスクロール圧縮機で圧縮する場合、能力を稼ぐために圧縮室の容積を増大させる必要がある。そうすると、固定スクロールおよび可動スクロールのラップの外形が大きくなり、圧縮機自体が大型化するという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、分子式:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒を圧縮対象とするスクロール圧縮機において、大型化を抑制することにある。
第1の発明は、互いの渦巻き状のラップ(75a,76a)が噛合して圧縮室(73)を形成する固定スクロール(75)および可動スクロール(76)を備え、上記可動スクロール(76)の公転運動により、上記圧縮室(73)を上記ラップ(75a,76a)の外周側から中心側へ移動させながらその容積を減少させて、分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒、または該冷媒を含む混合冷媒を圧縮するスクロール圧縮機を前提としている。そして、上記両スクロール(75,76)は、ラップ(75a,76a)の厚さが該ラップ(75a,76a)の中心側から外周側へいくに従って薄くなるように形成されているものである。
上記の発明では、ラップ(75a,76a)の厚さ(歯厚)が外周側へ向かうにつれて薄くなっているため、ラップの巻き数および外径を同じとした場合、従来のようにラップの厚さ(歯厚)が均一なスクロールと比べて、特に最外周に形成される圧縮室(73)の容積を大きく稼ぐことができる。したがって、所定の圧縮室(73)の容積を稼ぐために必要なラップ(75a,76a)の外径が従来よりも小さくなる。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒は、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンである。
上記の発明では、冷媒回路(10)に充填された冷媒が、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンからなる単一冷媒、または2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンを含む混合冷媒である。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記冷媒は、上記分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒と、ジフルオロメタンとを含む混合冷媒である。
上記の発明では、冷媒として上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒とジフルオロメタンとを含む混合冷媒が用いられている。ここで、上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒は、いわゆる低圧冷媒である。このため、例えば上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒からなる単一冷媒を用いる場合には、冷媒の圧力損失が圧縮機の運転効率に与える影響が比較的大きく、理論上の運転効率に対して実際の運転効率が比較的大きく低下してしまう。したがって、この発明では、上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒に、いわゆる高圧冷媒であるジフルオロメタンを加える。
第4の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記冷媒は、上記分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒と、ペンタフルオロエタンとを含む混合冷媒である。
上記の発明では、冷媒として上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒とペンタフルオロエタンとを含む混合冷媒が用いられている。ここで、上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒は、微燃性の冷媒ではあるが、発火するおそれがない訳ではない。したがって、この発明では、上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒に、難燃性の冷媒であるペンタフルオロエタンを加える。
第5の発明は、上記第1乃至第4の何れか1の発明において、上記両スクロール(75,76)は、ラップ(75a,76a)の高さが該ラップ(75a,76a)の中心側から外周側へいくに従って段階的または連続的に高くなるように形成されているものである。
上記の発明では、ラップ(75a,76a)の高さが外周側へ向かうにつれて高くなっているため、ラップの巻き数および外径を同じとした場合、従来のようにラップの高さ(歯高さ)が均一なスクロールと比べて、特に最外周に形成される圧縮室(73)の容積を大きく稼ぐことができる。したがって、上記第1の発明に係る作用と相まって、所定の圧縮室(73)の容積を稼ぐために必要なラップ(75a,76a)の外径が一層小さくなる。
第6の発明は、上記第1乃至第5の何れか1の発明において、上記両スクロール(75,76)は、ラップ(75a,76a)の巻き数が互いに異なる非対称渦巻き構造に構成されているものである。
上記の発明では、例えば図3に示すように、可動スクロール(76)のラップ(76a)の巻き数が固定スクロール(75)のラップ(75a)の巻き数よりも多い。
以上のように、本発明によれば、上記両スクロール(75,76)は、ラップ(75a,76a)の厚さが該ラップ(75a,76a)の中心側から外周側へいくに従って薄くなるように形成した。したがって、ラップの厚さが均一なものと比べて、所定の圧縮室(73)の容積を稼ぐために必要なラップ(75a,76a)の外径を小さくすることができる。よって、分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒、またはそれを含む混合冷媒は単位体積あたりの冷凍能力が低いため圧縮室(73)の必要容積が増大するが、スクロール(75,76)の径が大きくなるのを抑制することができる。その結果、スクロール圧縮機(30)の小型化を図ることができる。
また、第3の発明によれば、上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒に、いわゆる高圧冷媒であるジフルオロメタンを加えるようにした。これにより、冷媒の圧力損失がスクロール圧縮機(30)の圧縮効率に与える影響を小さくすることができる。その結果、小型化に加え運転効率の向上も図ることができる。
また、第4の発明によれば、上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒に、難燃性の冷媒であるペンタフルオロエタンを加えるようにした。従って、冷媒が燃えにくくなるすることができる。
さらに、第5の発明によれば、ラップ(75a,76a)の高さが該ラップ(75a,76a)の中心側から外周側へいくに従って段階的または連続的に高くなるように形成するようにした。したがって、スクロール(75,76)の外径が大きくなるのを一層抑制することができる。よって、スクロール圧縮機(30)を一層小型にすることができる。
また、第6の発明によれば、スクロール(75,76)をいわゆる非対称渦巻き構造としたので、スクロール(75,76)の外径をより小さくでき、スクロール圧縮機(30)を一層小型にすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
図1に示すように、本実施形態の空気調和装置(20)は、本発明に係るスクロール圧縮機(30)を備えた冷凍装置を構成している。この空気調和装置(20)は、室外機(22)と3台の室内機(23)とを備えている。なお、室内機(23)の台数は特に限定するものではなく、単なる例示である。
上記空気調和装置(20)は、冷媒が充填されて冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備えている。冷媒回路(10)は、室外機(22)に収容される室外回路(9)と、各室内機(23)に収容される室内回路(17)とを備えている。これらの室内回路(17)は、液側連絡配管(18)およびガス側連絡配管(19)によって室外回路(9)に接続されている。これらの室内回路(17)は、互いに並列に接続されている。
本実施形態の冷媒回路(10)には、冷媒として2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(以下、「HFO−1234yf」という。)の単一冷媒が充填されている。なお、HFO−1234yfの化学式は、CF3−CF=CH2で表される。
〈室外回路の構成〉
上記室外回路(9)には、スクロール圧縮機(30)(以下、単に圧縮機(30)という。)、室外熱交換器(11)、室外膨張弁(12)および四路切換弁(13)が設けられている。
上記室外回路(9)には、スクロール圧縮機(30)(以下、単に圧縮機(30)という。)、室外熱交換器(11)、室外膨張弁(12)および四路切換弁(13)が設けられている。
上記圧縮機(30)は、例えば運転容量が可変なインバータ式の圧縮機として構成されている。圧縮機(30)には、インバータを介して電力が供給される。圧縮機(30)は、吐出側が四路切換弁(13)の第2ポート(P2)に接続され、吸入側が四路切換弁(13)の第1ポート(P1)に接続されている。なお、圧縮機(30)についての詳細は後述する。
上記室外熱交換器(11)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器として構成されている。室外熱交換器(11)の近傍には、室外ファン(14)が設けられている。室外熱交換器(11)では、室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器(11)は、一端が四路切換弁(13)の第3ポート(P3)に接続され、他端が室外膨張弁(12)に接続されている。また、四路切換弁(13)の第4ポート(P4)は、ガス側連絡配管(19)に接続されている。
上記室外膨張弁(12)は、室外熱交換器(11)と室外回路(9)の液側端との間に設けられている。室外膨張弁(12)は、開度可変の電子膨張弁として構成されている。
上記四路切換弁(13)は、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通して第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通して第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とが連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とが切り換え自在に構成されている。
〈室内回路の構成〉
上記室内回路(17)には、そのガス側端から液側端へ向かって順に、室内熱交換器(15)と、室内膨張弁(16)とが設けられている。
上記室内回路(17)には、そのガス側端から液側端へ向かって順に、室内熱交換器(15)と、室内膨張弁(16)とが設けられている。
上記室内熱交換器(15)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器として構成されている。室内熱交換器(15)の近傍には、室内ファン(21)が設けられている。室内熱交換器(15)では、室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。また、室内膨張弁(16)は、開度可変の電子膨張弁として構成されている。
〈圧縮機の構成〉
上記圧縮機(30)は、例えば全密閉の高低圧ドーム型のスクロール圧縮機として構成されている。圧縮機(30)の構成を図2および図3を参照しながら説明する。
上記圧縮機(30)は、例えば全密閉の高低圧ドーム型のスクロール圧縮機として構成されている。圧縮機(30)の構成を図2および図3を参照しながら説明する。
上記圧縮機(30)は、いわゆる縦型で円筒形の密閉容器を形成するケーシング(70)を備えている。ケーシング(70)の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構(82)と、圧縮機構(82)を駆動する電動機(85)とが収納されている。この電動機(85)は、圧縮機構(82)の下方に配置され、回転軸であるクランク軸(90)を介して圧縮機構(82)に連結されている。
上記電動機(85)は、ステータ(83)とロータ(84)とを備えている。ステータ(83)は、ケーシング(70)の胴部に固定されている。一方、ロータ(84)は、ステータ(83)の内側に配置され、クランク軸(90)が連結されている。
上記圧縮機構(82)は、可動スクロール(76)と固定スクロール(75)とを備えている。
上記可動スクロール(76)は、略円板状の可動側鏡板(76b)と、渦巻き状の可動側ラップ(76a)とを備えている。可動側ラップ(76a)は可動側鏡板(76b)の前面(上面)に立設されている。また、可動側鏡板(76b)の背面(下面)には、クランク軸(90)の偏心部が挿入された円筒状の突出部(76c)が立設されている。可動スクロール(76)は、オルダムリング(79)を介して、可動スクロール(76)の下側に配置されたハウジング(77)に支持されている。
一方、上記固定スクロール(75)は、略円板状の固定側鏡板(75b)と、渦巻き状の固定側ラップ(75a)とを備えている。固定側ラップ(75a)は固定側鏡板(75b)の前面(下面)に立設されている。圧縮機構(82)では、固定側ラップ(75a)と可動側ラップ(76a)とが互いに噛み合うことによって、両ラップ(75a,76a)の接触部の間に複数の圧縮室(73)が形成されている。
上記複数の圧縮室(73)は、固定側ラップ(75a)の内周面と可動側ラップ(76a)の外周面との間に構成される第1圧縮室(73a)と、固定側ラップ(75a)の外周面と可動側ラップ(76a)の内周面との間に構成される第2圧縮室(73b)とから構成されている。
上記圧縮機構(82)では、固定スクロール(75)の外縁部に吸入ポート(98)が形成されている。吸入ポート(98)には、ケーシング(70)の頂部を貫通する吸入管(57)が接続されている。吸入ポート(98)は、可動スクロール(76)の公転運動に伴って、第1圧縮室(73a)と第2圧縮室(73b)のそれぞれに間欠的に連通する。また、吸入ポート(98)には、圧縮室(73)から吸入管(57)へ戻る冷媒の流れを禁止する吸入逆止弁が設けられている(図示省略)。
また、上記圧縮機構(82)では、固定側鏡板(75b)の中央部に吐出ポート(93)が形成されている。吐出ポート(93)は、可動スクロール(76)の公転運動に伴って、第1圧縮室(73a)と第2圧縮室(73b)のそれぞれに間欠的に連通する。吐出ポート(93)は、固定スクロール(75)の上側に形成されたマフラー空間(96)に開口している。
上記ケーシング(70)内は、円盤状のハウジング(77)によって、上側の吸入空間(101)と下側の吐出空間(100)とに区画されている。吸入空間(101)は、連通ポート(102)を通じて、吸入ポート(98)に連通している。このため、吸入空間(101)は、吸入管(57)から吸入された冷媒で満たされる低圧空間となる。
上記吐出空間(100)は、固定スクロール(75)とハウジング(77)とに亘って形成された連絡通路(103)を通じて、マフラー空間(96)に連通している。運転中の吐出空間(100)は、吐出ポート(93)から吐出された冷媒がマフラー空間(96)を通じて流入するので、圧縮機構(82)で圧縮された冷媒で満たされる高圧空間となる。吐出空間(100)には、ケーシング(70)の胴部を貫通する吐出管(56)が開口している。
また、本発明の特徴として、上記固定スクロール(75)および可動スクロール(76)の各ラップ(75a,76a)の厚さ(歯厚)が変化している。具体的に、各ラップ(75a,76a)の厚さ(歯厚)は、巻き始め側(ラップ(75a,76a)の中心側)から巻き終り側(ラップ(75a,76a)の外周側)にいくにつれて次第に薄くなっている。こうすることで、ラップの厚さが均一に形成された場合と比較して、外周側ほど圧縮室(73)の容積を稼ぐことができる。つまり、従来に比べて、ラップ(75a,76a)の最外周に形成される圧縮室(73)の容積、即ち閉じ込み容積を最も稼ぐことができる。
また、上記ラップ(75a,76a)の中心側にいくほどラップ(75a,76a)の厚さが増すため、その中心側ほどラップ(75a,76a)の強度が増す。したがって、圧縮室(73)の圧力はラップ(75a,76a)の中止側にいくにつれて増大するが、ラップ(75a,76a)の強度不足は起こらない。
さらに、本実施形態の圧縮機(30)では、いわゆる非対称渦巻き構造が採用されており、固定側ラップ(75a)と可動側ラップ(76a)とで巻き数が異なる。具体的には、可動側ラップ(76a)の巻き数が固定側ラップ(75a)の巻き数よりも約1/2巻き多い。
また、本実施形態の圧縮機(30)では、電動機(85)の絶縁材料に、高温高圧の冷媒に接触した場合でも、冷媒により物理的や化学的に変性を受けない物質で、特に耐溶剤性、耐抽出性、熱的・化学的安定性、耐発泡性を有する物質が用いられている。電動機(85)の絶縁材料としては、ステータ(83)の巻き線の絶縁被覆材料、ステータ(83)およびロータ(84)の絶縁フィルム等がある。
具体的に、ステータ(83)の巻き線の絶縁被覆材料は、ポリビニルフォルマール、ポリエステル、THEIC変性ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミドのうちから選ばれる一種類または複数種類の物質が用いられている。なお、好ましいのは、上層がポリアミドイミド、下層がポリエステルイミドの二重被覆線である。また、上記物質以外に、ガラス転移温度が120℃以上のエナメル被覆を用いてもよい。
また、絶縁フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテフタレート(PBT)のうちから選ばれる一種類または複数種類の物質が用いられている。なお、絶縁フィルムに、発泡材料が冷凍サイクルの冷媒と同じ発泡フィルムを用いることも可能である。インシュレーター等の巻き線を保持する絶縁材料には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)のうちから選ばれる一種類または複数種類の物質が用いられている。ワニスには、エポキシ樹脂が用いられている。また、シール材料には、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド繊維やNBRからなるパッキン、パーフルオロエラストマー、シリコンゴム、水素化NBRゴム、フッ素ゴム、ヒドリンゴムのうちから選ばれる一種類または複数種類の物質が用いられている。
また、上記ケーシング(70)の底部には、冷凍機油が貯留される油溜まりが形成されている。また、クランク軸(90)の内部には、油溜まりに開口する第1給油通路(104)が形成されている。また、可動側鏡板(76b)には、第1給油通路(104)に接続する第2給油通路(105)が形成されている。この圧縮機(30)では、油溜まりの冷凍機油が第1給油通路(104)および第2給油通路(105)を通じて低圧側の圧縮室(73)に供給される。
−運転動作−
上記空気調和装置(20)の運転動作について説明する。この空気調和装置(20)は、冷房運転と暖房運転とが実行可能になっており、四路切換弁(13)によって冷房運転と暖房運転との切り換えが行われる。
上記空気調和装置(20)の運転動作について説明する。この空気調和装置(20)は、冷房運転と暖房運転とが実行可能になっており、四路切換弁(13)によって冷房運転と暖房運転との切り換えが行われる。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、四路切換弁(13)が第1状態に設定される。この状態で、圧縮機(30)の運転が行われると、圧縮機(30)から吐出された高圧冷媒が、室外熱交換器(11)において室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器(11)で凝縮した冷媒は、各室内回路(17)へ分配される。各室内回路(17)では、流入した冷媒が、室内膨張弁(16)で減圧された後に、室内熱交換器(15)において室内空気から吸熱して蒸発する。一方、室内空気は冷却されて室内へ供給される。
冷房運転時には、四路切換弁(13)が第1状態に設定される。この状態で、圧縮機(30)の運転が行われると、圧縮機(30)から吐出された高圧冷媒が、室外熱交換器(11)において室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器(11)で凝縮した冷媒は、各室内回路(17)へ分配される。各室内回路(17)では、流入した冷媒が、室内膨張弁(16)で減圧された後に、室内熱交換器(15)において室内空気から吸熱して蒸発する。一方、室内空気は冷却されて室内へ供給される。
上記各室内回路(17)で蒸発した冷媒は、他の室内回路(17)で蒸発した冷媒と合流して、室外回路(9)へ戻ってくる。室外回路(9)では、各室内回路(17)から戻ってきた冷媒が、圧縮機(30)で再び圧縮されて吐出される。なお、冷房運転中は、各室内膨張弁(16)の開度が、室内熱交換器(15)の出口における冷媒の過熱度が一定値(例えば5℃)になるように過熱度制御される。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、四路切換弁(13)が第2状態に設定される。この状態で、圧縮機(30)の運転が行われると、圧縮機(30)から吐出された高圧冷媒が、各室内回路(17)へ分配される。各室内回路(17)では、流入した冷媒が室内熱交換器(15)において室内空気へ放熱して凝縮する。一方、室内空気は加熱されて室内へ供給される。室内熱交換器(15)で凝縮した冷媒は、室内膨張弁(16)で減圧された後に、他の室内熱交換器(15)で凝縮した冷媒と合流し、室外回路(9)へ戻ってくる。
暖房運転時には、四路切換弁(13)が第2状態に設定される。この状態で、圧縮機(30)の運転が行われると、圧縮機(30)から吐出された高圧冷媒が、各室内回路(17)へ分配される。各室内回路(17)では、流入した冷媒が室内熱交換器(15)において室内空気へ放熱して凝縮する。一方、室内空気は加熱されて室内へ供給される。室内熱交換器(15)で凝縮した冷媒は、室内膨張弁(16)で減圧された後に、他の室内熱交換器(15)で凝縮した冷媒と合流し、室外回路(9)へ戻ってくる。
上記室外回路(9)では、各室内回路(17)から戻ってきた冷媒が、室外膨張弁(12)で減圧された後に、室外熱交換器(11)において室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(11)で蒸発した冷媒は、圧縮機(30)で再び圧縮されて吐出される。なお、暖房運転中は、各室内膨張弁(16)の開度が、室内熱交換器(15)の出口における冷媒の過冷却度が一定値(例えば5℃)になるようにサブクール制御される。
−実施形態の効果−
以上のように、固定スクロール(75)および可動スクロール(76)において、ラップ(75a,76a)の厚さが該ラップ(75a,76a)の中心側から外周側へいくに従って薄くなるように形成したので、ラップの厚さが均一なものと比べて、特に最外周の圧縮室(73)の容積(即ち、閉じ込み容積)を大きく稼ぐことができる。したがって、所定の圧縮室(73)の容積を稼ぐために必要なラップ(75a,76a)の外径を小さくすることができる。ここで、本実施形態で用いられる冷媒「HFO−1234yf」は単位体積当たりの冷凍能力が低いため、同様の冷凍能力を確保するためには圧縮室(73)に取り込む冷媒量を増やす必要がある。つまり、最外周の圧縮室(73)の容積(閉じ込み容積)を増やす必要がある。その場合でも、本発明によれば、ラップ(75a,76a)の外径が大きくなるのを抑制しつつ、最外周の圧縮室(73)の容積を大きく稼ぐことができる。その結果、スクロール(75,76)の外径を小さくすることができ、スクロール圧縮機(30)の小型化を図ることができる。
以上のように、固定スクロール(75)および可動スクロール(76)において、ラップ(75a,76a)の厚さが該ラップ(75a,76a)の中心側から外周側へいくに従って薄くなるように形成したので、ラップの厚さが均一なものと比べて、特に最外周の圧縮室(73)の容積(即ち、閉じ込み容積)を大きく稼ぐことができる。したがって、所定の圧縮室(73)の容積を稼ぐために必要なラップ(75a,76a)の外径を小さくすることができる。ここで、本実施形態で用いられる冷媒「HFO−1234yf」は単位体積当たりの冷凍能力が低いため、同様の冷凍能力を確保するためには圧縮室(73)に取り込む冷媒量を増やす必要がある。つまり、最外周の圧縮室(73)の容積(閉じ込み容積)を増やす必要がある。その場合でも、本発明によれば、ラップ(75a,76a)の外径が大きくなるのを抑制しつつ、最外周の圧縮室(73)の容積を大きく稼ぐことができる。その結果、スクロール(75,76)の外径を小さくすることができ、スクロール圧縮機(30)の小型化を図ることができる。
−実施形態の変形例−
本変形例は、上記実施形態の両スクロール(75,76)において、ラップ(75a,76a)の高さも変化させるようにしたものである。本変形例では、図4および図5に示すように、両スクロール(75,76)のラップ(75a,76a)の高さが途中で変化している。具体的に、固定スクロール(75)の固定側ラップ(75a)は、図4のAの位置で高さが変化しており、巻き始め側(中心側)よりも巻き終り側(外周側)が高くなっている。可動スクロール(76)の可動側ラップ(76a)も同様に、図4のAの位置に対応する位置で高さが変化しており、巻き始め側(中心側)よりも巻き終り側(外周側)が高くなっている。
本変形例は、上記実施形態の両スクロール(75,76)において、ラップ(75a,76a)の高さも変化させるようにしたものである。本変形例では、図4および図5に示すように、両スクロール(75,76)のラップ(75a,76a)の高さが途中で変化している。具体的に、固定スクロール(75)の固定側ラップ(75a)は、図4のAの位置で高さが変化しており、巻き始め側(中心側)よりも巻き終り側(外周側)が高くなっている。可動スクロール(76)の可動側ラップ(76a)も同様に、図4のAの位置に対応する位置で高さが変化しており、巻き始め側(中心側)よりも巻き終り側(外周側)が高くなっている。
上記の構成にすることで、ラップの高さ(歯高さ)が均一に形成された場合と比べて、ラップ(75a,76a)の外周側に形成される圧縮室(73)の容積を稼ぐことができる。つまり、ラップ(75a,76a)の外径を大きくすることなく、またラップ(75a,76a)の巻き数を増やすことなく、外周側の圧縮室(73)の容積を増大させることができる。したがって、上記実施形態の冷媒「HFO−1234yf」を用いる場合でも、スクロール(75,76)の外径を一層小さくすることができ、スクロール圧縮機(30)の小型化を一層図ることができる。その他の構成、作用および効果は実施形態と同様である。
なお、ラップ(75a,76a)の高さは低い方がラップ(75a,76a)の剛性が増す。したがって、本変形例のように圧縮室(73)の圧力が高くなる中心側のラップ(75a,76a)の高さを低くすることで、強度的にも満足しやすくなる。
また、本変形例では、ラップ(75a,76a)の途中に段差を1箇所だけ設けて高さを変えるようにしたが、段差を複数設けて、中心側から外周側へ向かって複数段階にラップ(75a,76a)の高さを高くするようにしてもよい。
また、中心側から外周側へ向けて段階的ではなく連続的にラップ(75a,76a)の高さを高くするようにしてもよい。つまり、ラップ(75a,76a)の高さが中心側から外周側へいくに従って次第に高くなる。
《その他の実施形態》
上述した実施形態については以下のような構成としてもよい。
上述した実施形態については以下のような構成としてもよい。
上記実施形態では、冷媒回路(10)の冷媒として、上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒のうちHFO−1234yf以外の冷媒の単一冷媒を用いてもよい。具体的には、1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(「HFO−1225ye」といい、化学式はCF3−CF=CHFで表される。)、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(「HFO−1234ze」といい、化学式はCF3−CH=CHFで表される。)、1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(「HFO−1234ye」といい、化学式はCHF2−CF=CHFで表される。)、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(「HFO−1243zf」といい、化学式はCF3−CH=CH2で表される。)、1,2,2−トリフルオロ−1−プロペン(化学式はCH3−CF=CF2で表される。)、2−フルオロ−1−プロペン(化学式はCH3−CF=CH2で表される。)等を用いることができる。
また、上記実施形態について、上記分子式1で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒(2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,2−トリフルオロ−1−プロペン、2−フルオロ−1−プロペン)に、HFC−32(ジフルオロメタン)、HFC−125(ペンタフルオロエタン)、HFC−134(1,1,2,2−テトラフルオロエタン)、HFC−134a(1,1,1,2―テトラフルオロエタン)、HFC−143a(1,1,1−トリフルオロエタン)、HFC−152a(1,1−ジフルオロエタン)、HFC−161、HFC−227ea、HFC−236ea、HFC−236fa、HFC−365mfc、メタン、エタン、プロパン、プロペン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、ジメチルエーテル、ビス−トリフルオロメチル−サルファイド、二酸化炭素、ヘリウムのうち少なくとも1つを加えた混合冷媒を用いてもよい。
例えば、HFO−1234yfとHFC−32の2成分からなる混合冷媒を用いてもよい。この場合は、78.2質量%のHFO−1234yfと、21.8質量%のHFC−32とからなる混合冷媒を用いることができる。また、HFO−1234yfの割合が77.6質量%でHFC−32の割合が22.4質量%の混合冷媒を用いることができる。なお、HFO−1234yfとHFC−32の混合冷媒は、HFO−1234yfの割合が70質量%以上94質量%以下でHFC−32の割合が6質量%以上30質量%以下であればよく、好ましくは、HFO−1234yfの割合が77質量%以上87質量%以下でHFC−32の割合が13質量%以上23質量%以下であればよく、さらに好ましくは、HFO−1234yfの割合が77質量%以上79質量%以下でHFC−32の割合が21質量%以上23質量%以下であればさらに好ましい。
また、HFO−1234yfとHFC−125の混合冷媒を用いてもよい。この場合は、HFC−125の割合が10質量%以上であるのが好ましく、さらに10質量%以上20質量%以下であるのがさらに好ましい。
また、HFO−1234yfとHFC−32とHFC−125の3成分からなる混合冷媒を用いてもよい。この場合は、52質量%のHFO−1234yfと、23質量%のHFC−32と、25質量%のHFC−125とからなる混合冷媒を用いることができる。
また、上記実施形態において、圧縮機(30)が横型のものであってもよい。
以上説明したように、本発明は、分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒、または該冷媒を含む混合冷媒を圧縮するスクロール圧縮機について有用である。
30 スクロール圧縮機
73 圧縮室
75 固定スクロール
75a 固定側ラップ(ラップ)
76 可動スクロール
76a 可動側ラップ(ラップ)
73 圧縮室
75 固定スクロール
75a 固定側ラップ(ラップ)
76 可動スクロール
76a 可動側ラップ(ラップ)
Claims (6)
- 互いの渦巻き状のラップ(75a,76a)が噛合して圧縮室(73)を形成する固定スクロール(75)および可動スクロール(76)を備え、
上記可動スクロール(76)の公転運動により、上記圧縮室(73)を上記ラップ(75a,76a)の外周側から中心側へ移動させながらその容積を減少させて、分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒、または該冷媒を含む混合冷媒を圧縮するスクロール圧縮機であって、
上記両スクロール(75,76)は、ラップ(75a,76a)の厚さが該ラップ(75a,76a)の中心側から外周側へいくに従って薄くなるように形成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1において、
上記分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒は、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンである
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1または2において、
上記冷媒は、上記分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒と、ジフルオロメタンとを含む混合冷媒である
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1乃至3の何れか1つにおいて、
上記冷媒は、上記分子式1:C3HmFn(但し、mおよびnは1以上5以下の整数で、m+n=6の関係が成立する。)で表され且つ分子構造中に二重結合を1個有する冷媒と、ペンタフルオロエタンとを含む混合冷媒である
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1乃至4の何れか1項において、
上記両スクロール(75,76)は、ラップ(75a,76a)の高さが該ラップ(75a,76a)の中心側から外周側へいくに従って段階的または連続的に高くなるように形成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1乃至5の何れか1項において、
上記両スクロール(75,76)は、ラップ(75a,76a)の巻き数が互いに異なる非対称渦巻き構造に構成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
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