JP2009166631A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents

車両用サスペンションシステム Download PDF

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Abstract

【課題】実用性の高い車両用サスペンションシステムを提供する。
【解決手段】サスペンションスプリングと、接近離間力を制御可能に発生する接近離間力発生装置とが互いに並列的に配設されたサスペンションシステムにおいて、(a)接近離間力を、ばね下部の振動に対しての減衰力として発生させる第1対ばね下振動制御(S22,23)と、(b)接近離間力を、ばね下部の振動に対しての減衰力として発生させない第2対ばね下振動制御(S24)とを選択的に実行可能に構成され、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合(S17)に第1対ばね下振動制御を実行するように構成する。このような構成のシステムによれば、許容限度を超えた車両の横滑りが発生する場合に、ばね下部の振動に対する減衰効果を高めることが可能となり、車輪の接地性の低下を抑制することが可能となる。
【選択図】図8

Description

本発明は、電磁モータの力によってばね上部とばね下部とを接近・離間させる装置を各車輪に対応して設けた車両用サスペンションシステムに関する。
電磁モータの力によってばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力(以下、「接近離間力」という場合がある)を制御可能に発生させる装置、つまり、接近離間力発生装置を各車輪に配備した車両用サスペンションシステムは、車体の姿勢,振動等、車体の挙動を適切に制御できる可能性が高いことから、近年、開発が急速に進められている。そのような車両用サスペンションシステムとしては、例えば、下記特許文献に示すようなシステムが検討されている。
特開2002−218778号公報 特開2002−211224号公報 特開2006−82751号公報
上記特許文献に記載の車両用サスペンションシステムの備える接近離間力発生装置は、例えば、車体のロールを抑制するように制御されており、車体姿勢の安定についての一役を担っている。ところが、このような接近離間力発生装置を備えたシステムは、未だ開発途上であり、改良の余地を多分に残すものとなっている。そのため、種々の改良を施すことによって、そのシステムの実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い車両用サスペンションシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用サスペンションシステムは、サスペンションスプリングと、接近離間力を制御可能に発生する接近離間力発生装置とが、互いに並列的に配設されたシステムであって、(a)接近離間力を、ばね下部の振動に対しての減衰力として発生させる第1対ばね下振動制御と、(b)接近離間力を、第1対ばね下振動制御において発生させられる減衰力より小さい減衰力として発生、若しくは、減衰力として発生させない第2対ばね下振動制御とを選択的に実行可能に構成され、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合に第1対ばね下振動制御を実行するように構成される。
上記接近離間力発生装置は、電磁モータの発生させる力によって効果的にばね下部の振動に対する制御を実行することが可能である。その接近離間力発生装置を備えた本発明の車両用サスペンションシステムにおいては、ばね下部の振動に対する減衰効果の比較的高い制御である第1対ばね下振動制御と、ばね下部の振動に対する減衰効果の比較的低い制御である第2対ばね下振動制御とを選択的に実行可能であり、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合には、第1対ばね下振動制御が実行される。したがって、本発明のシステムによれば、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合に、例えば、車輪の接地性の低下を抑制することが可能となり、車両の走行安定性を高めることが可能となる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、下記(1)項〜(4)項は、請求可能発明の前提となる構成を示した態様に関する項であり、それらのいずれかの項の態様に、それらの項以降に掲げる項のいずれかに記載の技術的特徴を付加した態様が、請求可能発明の態様となる。ちなみに、(1)項を引用する(5)項が請求項1に相当し、請求項1に(6)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(7)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(8)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項4に(9)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに(12)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項6に、請求項6に(13)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項7に、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに(14)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項8に、請求項8に(15)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項9に、請求項1ないし請求項9のいずれか1つに(16)項および(17)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項10に、それぞれ相当する。
(1)ばね上部とばね下部との間に配設されたサスペンションスプリングと、
そのサスペンションスプリングと並列的に配設され、電磁モータを有し、その電磁モータが発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力である接近離間力を発生させる接近離間力発生装置と、
前記電磁モータの作動を制御することで前記接近離間力発生装置が発生させる接近離間力を制御する制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記制御装置が、
(a)接近離間力を、ばね下部の振動に対しての定められた規則に従う大きさの減衰力として発生させる第1対ばね下振動制御と、(b)接近離間力を、ばね下部の振動に対して前記第1対ばね下振動制御において発生させられる減衰力より小さな減衰力として発生させる、若しくは、減衰力として発生させない第2対ばね下振動制御とを選択的に実行する対ばね下振動制御実行部を有する車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、請求可能発明の前提をなす態様であり、接近離間力発生装置を車両の振動を減衰するための振動減衰装置として用いた態様である。本項に記載の「接近離間力発生装置」は、電磁モータの発生させる力によってばね下部の振動を効果的に減衰することが可能であり、本項に記載の態様においては、ばね下振動に対する減衰効果の比較的高い制御である第1対ばね下振動制御と、ばね下振動に対する減衰効果の比較的低い制御である第2対ばね下振動制御とを選択的に実行することが可能である。
一般的な車両では、ばね上部とばね下部との間に設けられて車両の振動を減衰するための振動減衰装置、例えば、液圧式のショックアブソーバ等が設けられており、その装置が発生させる減衰力の大きさの基準となる減衰係数の値は、車輪の接地性,振動のばね上部への伝達性等に影響を及ぼす。車輪の接地性は車両の操安性に影響を及ぼすものであり、車輪の接地性の低下は望ましくないことから、車輪の接地性の低下を抑制すべく、ばね下部の振動に対する減衰力は大きいほうが望ましい。つまり、ばね下部の振動に対する減衰係数を大きくし、ばね下部の振動に対する減衰効果を高くすることが望ましい。一方で、振動のばね上部への伝達性を考えた場合、比較的高周波域の振動は、減衰係数の値が大きいほどばね上部に伝達し易い。このため、比較的高周波域の振動のばね上部への伝達性を考慮した場合には、ばね下部の振動に対する減衰係数を小さくし、ばね下部の振動に対する減衰効果を低くすることが望ましい。したがって、ばね下振動に対する減衰効果を高くした場合には、車輪の接地性が向上し、一方、ばね下振動に対する減衰効果を低くした場合には、比較的高周波域の振動がばね上部に伝達し難くなる。
また、ばね下振動に対する減衰効果を低くするほど、つまり、ばね下振動に対する減衰力を小さくするほど、電磁モータによる消費電力が低減され、電磁モータへの負担が軽減される。このように、それぞれの制御は、それぞれ異なる特徴を有しており、本項に記載の態様によれば、それぞれの制御を選択的に実行することで、例えば、それぞれの制御の特徴を活かすことが可能となる。例えば、基本的には、高周波域の振動のばね上部への伝達性,電磁モータの消費電力の低減等を考慮して、第2対ばね下振動制御を実行し、車輪の接地性を高めたい場合には、第1対ばね下振動制御を実行することが可能となる。
本項に記載の「接近離間力発生装置」の構成は、特に限定されるものではなく、例えば、後に説明するように、ばね上部とばね下部との一方に連結される弾性体とその弾性体を変形させるアクチュエータと備え、アクチュエータの発生させる力を弾性体に作用させるとともに、その力を接近離間力として発生させるような構成であってもよい。つまり、接近離間力発生装置を、いわゆる左右独立型のスタビライザ装置の一構成要素とすることが可能である。また、後に説明するように、ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されるばね下部側ユニットとを有し、ばね上部とばね下部との接近離間に伴ってそれら2つのユニットが相対移動することで伸縮可能とされ、電磁モータが発生させる力に依拠して2つのユニットを相対移動させる方向の力を発生させるとともに、その力を接近離間力として作用させるような構成であってもよい。つまり、接近離間力発生装置として、いわゆる電磁式のショックアブソーバを採用してもよい。
(2)前記定められた規則に従う大きさの減衰力が、ばね下絶対速度に応じた大きさの減衰力である(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、対ばね下振動制御の制御則を限定した態様である。上記接近離間力発生装置は、電磁モータの発生させる力により、ばね上部とばね下部との相対速度に依存しない減衰力を発生させることが可能であることから、ばね下絶対速度に応じた大きさの減衰力を発生させる制御、いわゆるグランドフックダンパ理論に基づく制御を実行することが可能である。したがって、本項に記載の態様によれば、ばね下部の振動を効果的に減衰することが可能となる。
(3)前記第2対ばね下振動制御が、接近離間力を、ばね下部の振動に対して減衰力として発生させない制御である(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
(4)前記第2対ばね下振動制御が、接近離間力を、ばね下部の振動に対して前記第1対ばね下振動制御において発生させられる減衰力より小さな減衰力として発生させる制御である(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、第2対ばね下振動制御を限定した態様であり、それぞれの項に記載の態様によれば、例えば、高周波域の振動のばね上部への伝達性を下げるとともに、電磁モータの消費電力の低減等を図ることが可能となる。また、前者の項の態様によれば、高周波域の振動の伝達性をさらに下げるとともに、電磁モータの消費電力をさらに低減することが可能となる。ただし、ばね下部の振動に対して全く対処しない場合には車輪の接地性が相当に低下する虞があるため、前者の項に記載の態様においては、接近離間力発生装置とは別のばね下振動を減衰可能な装置、具体的に言えば、液圧式のショックアブソーバ等を設けることが望ましい。
(5)前記対ばね下振動制御実行部が、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合に前記第1対ばね下振動制御を実行するように構成された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合、言い換えれば、車輪がグリップ限界を超えて横滑りすることで車両が横滑りする場合には、車両が予定の走行ラインを外れて走行することになる。このため、このような場合には、車輪の接地性を高めることが望ましい。また、ばね下部の振動と車輪の接地性とは互いに関連しあっており、ばね下部の振動に対する減衰効果を高めること、つまり、ばね下振動に対する減衰係数を大きくすることで車輪の接地性を高めることが可能である。したがって、本項に記載の態様によれば、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合に、ばね下振動に対する減衰効果を高めることが可能となり、例えば、車輪の接地性を高めることで車両の走行安定性を高めることが可能となる。
(6)前記対ばね下振動制御実行部が、前記許容限度を超えた車両の横滑りが発生していない場合に前記第2対ばね下振動制御を実行するように構成された(5)項に記載の車両用サスペンションシステム。
振動のばね上部への伝達性,電磁モータの消費電力の低減等を考慮した場合には、第2対ばね下振動制御を実行することが望ましい。したがって、本項の態様によれば、例えば、車輪の接地性を高めたい場合には第1対ばね下振動制御を実行し、その他の場合には、振動のばね上部への伝達性を下げるとともに、電磁モータの消費電力の低減等を図ることが可能となる。
(7)当該車両用サスペンションシステムが、前記許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合に車両に対する制動力と推進力との少なくとも一方を制御してその車両の横滑りを抑制する横滑り抑制制御を実行可能な車両横滑り抑制システムを搭載する車両に設けられ、
前記対ばね下振動制御実行部が、前記車両横滑り抑制システムからの指令に基づいて、前記第1対ばね下振動制御を実行するように構成された(5)項または(6)項に記載の車両用サスペンションシステム。
高速走行時,緊急回避操作時、摩擦抵抗の低い路面での走行時等において許容限度を超えた車両の横滑りが発生する場合がある。このような場合に車両に対するの制動力と推進力との少なくとも一方を制御することで車両の横滑りを抑制するシステム、いわゆるVSC(Vehicle Stability Contorol)システムが既に実用化されている。本項に記載の態様は、その車両横滑り抑制システムと連動させて第1対ばね下振動制御を実行する態様である。車両横滑り抑制システムにおいて車両の横滑りが抑制されるような場合に、車輪の接地性が低下していては、このシステムによる車輪の横滑り抑制効果が低下する虞がある。したがって、本項に記載の態様によれば、例えば、横滑り抑制制御実行時に車輪の接地性を高めることが可能となり、横滑り抑制制御によって車輪の横滑りを効果的に抑制することが可能となる。つまり、車両横滑り抑制システムと連動させて第1対ばね下振動制御を実行することで、車両横滑り抑制システムの性能を向上させることが可能となるのである。
(8)前記対ばね下振動制御実行部が、ばね下共振周波数の振動の強度が設定された値を超える状況下にあることを条件として前記第1対ばね下振動制御を実行するように構成された(5)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、第1対ばね下振動制御を実行する条件をさらに限定した態様である。つまり、本項に記載の「第1対ばね下振動制御」は、許容限度を超えた車両の横滑りが発生するとともに、ある程度の強度を有するばね下共振周波数域の振動が生じることを条件として実行されるのである。比較的高周波域の振動、具体的に言えば、ばね下共振周波数域の振動における車輪の接地性は、例えば、低周波域の振動における車輪の接地性と比較すると、相当に低いものとなる場合がある。したがって、本項に記載の態様によれば、例えば、車輪の接地性の低下が特に想定される場合に、第1対ばね下振動制御を実行することが可能となる。
本項に記載の「ばね下共振周波数の振動の強度が設定された値を超える状況下」にあるか否かは、ばね下共振周波数の振動に基づいて判定するだけでなく、例えば、ばね下共振周波数域の振動、具体的に言えば、ばね下共振周波数の前後3Hzの振動に基づいて判定してもよい。ばね下共振周波数域の振動に基づいて判定する場合には、例えば、ばね下共振周波数域の振動の強度の平均値がある値を超えるか否かを判定してもよく、ばね下共振周波数域の振動の強度の最高値がある値を超えるか否かを判定してもよい。また、本項に記載の「振動の強度」とは、振動の成分を示すものであり、例えば、振動の振幅,加速度等を採用することが可能である。
(9)前記対ばね下振動制御実行部が、ばね下共振周波数の振動の強度が前記設定された値以下である状況下においては、前記許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合であっても前記第1対ばね下振動制御を実行せずに前記第2対ばね下振動制御を実行するように構成された(8)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項の態様によれば、例えば、車輪の接地性の低下が特に想定される場合に限定して第1対ばね下振動制御を実行し、その他の場合には、第2対ばね下振動制御を実行することが可能となり、振動のばね上部への伝達性を下げるとともに、電磁モータの消費電力の低減等を図ることが可能となる。
(10)前記制御装置が、接近離間力を、ばね上部の振動に対してのばね上絶対速度に応じた大きさの減衰力として発生させる対ばね上振動制御を実行する対ばね上振動制御実行部を有する(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
(11)前記制御装置が、接近離間力を、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するロール抑制力と車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するピッチ抑制力との少なくとも一方として発生させる姿勢変化抑制制御を実行する姿勢変化抑制制御実行部を有する(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、接近離間力発生装置の別の機能に関する限定を加えた態様である。前者の項に記載の態様は、アブソーバの主たる機能を実現する態様であり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御を実行可能な態様である。後者の項に記載の態様は、接近離間力を車体の姿勢変化を抑制する姿勢変化抑制力として作用させて、ロール抑制制御とピッチ抑制制御との少なくとも一方を実行可能な態様であり、例えば、スタビライザ装置としての機能を実現する態様である。上記2つの対ばね下振動制御のうちの一方と、対ばね上振動制御と姿勢変化抑制制御とを同時に実行させる場合には、ばね下部の振動に対する減衰力としての接近離間力に加えて、ばね上部の振動に対する減衰力および姿勢変化抑制力としての接近離間力が、接近離間力発生装置によって発生させられることになる。
(12)前記接近離間力発生装置が、
一端部がばね上部とばね下部との一方に連結される弾性体と、
その弾性体の他端部とばね上部とばね下部との他方との間に配設されてその他方と前記弾性体とを連結するとともに、前記電磁モータを自身の構成要素とし、その電磁モータが発生させる力に依拠して自身が発生させる力を前記弾性体に作用させることで、自身の動作量に応じて前記弾性体の変形量を変化させるとともに、その力を前記弾性体を介して接近離間力としてばね上部とばね下部とに作用させる電磁式のアクチュエータと
を有する(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、接近離間力発生装置の構造をある1つのタイプに限定した態様である。本項に記載の「接近離間力発生装置」は、アクチュエータの発生させる力を弾性体に作用させるとともに、アクチュエータの動作量に応じて弾性体の変形量を変化させる構造のものとされており、その弾性体は、変形量に応じた何らかの弾性力を発揮するものであればよく、例えば、コイルばね,トーションばね等、種々の構造の弾性体を採用することが可能である。本項に記載の「接近離間力発生装置」としては、例えば、いわゆる左右独立型のスタビライザ装置を採用することが可能である。
(13)前記弾性体が、ばね上部に回転可能に保持されたシャフト部と、そのシャフト部の一端部からそのシャフト部と交差して延びるとともに先端部がばね下部に連結されたアーム部とを有し、
前記アクチュエータが、車体に固定されるとともに、自身が発生させる力によって前記シャフト部をそれの軸線まわりに回転させるものである(12)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、接近離間力発生装置の構造をさらに具体的に限定した態様である。本項の態様における「弾性体」は、シャフト部とアーム部との少なくとも一方が、弾性体としての機能を有していればよい。例えば、シャフト部が捩られることでそれがばねとしての機能を有するようにしてもよく、アーム部が撓むことでそれがばねとしての機能を有するようにしてもよい。なお、上記弾性体は、シャフト部とアーム部とが別部材とされてそれらが結合されたものであってもよく、それらが一体化して成形されたものであってもよい。
(14)前記接近離間力発生装置が、
ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されるばね下部側ユニットとを有し、ばね上部とばね下部との接近離間に伴ってそれらばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが相対移動することで伸縮可能に構成され、かつ、
前記電磁モータが発生させる力に依拠して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとを相対移動させる方向の力を発生させるとともに、その力を接近離間力としてばね上部とばね下部とに作用させるように構成された(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、接近離間力発生装置の構造を前述のタイプとは別のタイプに限定した態様である。本項に記載の「接近離間力発生装置」として、例えば、ばね上部とばね下部との相対動作に対する抵抗力だけでなく、ばね上部とばね下部との相対動作に対する推進力をも発生可能な電磁式のショックアブソーバを採用することが可能である。
(15)前記接近離間力発生装置が、
前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方に設けられて雄ねじが形成されたねじロッドと、そのねじロッドと螺合して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの他方に設けられたナットとを有し、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に伴って、前記ねじロッドと前記ナットとの一方が回転する構造とされたねじ機構を備え、
前記電磁モータが発生させる力に依拠して、前記ねじロッドとナットとの一方に回転力を付与することで前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとを相対移動させる方向の力を発生させるように構成された(14)項に記載の車両用サスペンションシステム。
本項に記載の態様は、ねじ機構を採用した接近離間力発生装置に限定した態様であり、電磁モータに回転モータを採用した場合において、そのモータの回転力を、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に対する力に容易に変換することが可能となる。なお、本項の態様においては、ばね上部側ユニット,ばね下部側ユニットのいずれにねじロッドを設け、いずれにナットを設けるかは、任意である。さらに、ねじロッドを回転不能とし、ナットを回転可能とするような構成としてもよく、逆に、ナットを回転不能とし、ねじロッドを回転可能とするような構成としてもよい。
(16)当該車両用サスペンションシステムが、前記サスペンションスプリングと並列的に配設された液圧式のショックアブソーバを備えた(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
(17)前記ショックアブソーバが、自身に対して設定された減衰係数が1000〜2000N・sec/mとされたものである(16)項に記載の車両用サスペンションシステム。
上記2つの項に記載の態様は、サスペンションスプリングと液圧式のショックアブソーバと接近離間力発生装置とが並列的に設けられた態様である。上記2つの項に記載の態様においては、上記第2対ばね下振動制御において接近離間力をばね下部の振動に対する減衰力として発生させなくとも、液圧式のショックアブソーバによってばね下部の振動を減衰することが可能である。したがって、上記2つの項に記載の態様は、第2対ばね下振動制御がばね下部の振動に対する減衰力を発生させない制御である場合に好適な態様である。また、後者の項の態様においては、ショックアブソーバの減衰係数が比較的低めに設定されている。後者の項の態様によれば、例えば、上記第2対ばね下振動制御において接近離間力をばね下部の振動に対する減衰力として発生させなくとも、減衰係数が低めに設定された液圧式のショックアブソーバによってばね下部の振動を減衰することが可能である。つまり、電磁モータの消費電力を相当に軽減させたうえで、高周波域の振動のばね上部への伝達性を下げるとともに、ばね下部の振動をある程度減衰することが可能となる。なお、後者の項に記載の「1000〜2000N・sec/m」は、アブソーバの発生させる力を、アブソーバのストローク動作に対して作用させる場合の値ではなく、車体と車輪との接近・離間動作に対して、車輪の上下方向に車体と車輪とに直接作用させたと仮定した場合の値である。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
(A)第1実施例
<車両用サスペンションシステムの構成>
図1に、実施例の車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本システム10は、前後左右4つの車輪12に対応して設けられた4つのサスペンション装置20と、それらサスペンション装置20の制御を担う制御装置とを含んで構成されている。転舵輪である前輪のサスペンション装置20と非転舵輪である後輪のサスペンション装置20とは、車輪を転舵可能とする機構を除き略同様の構成とみなせるため、説明の簡略化に配慮して、後輪のサスペンション装置20を代表して説明する。
図2,3に示すように、サスペンション装置20は、独立懸架式のものであり、マルチリンク式サスペンション装置とされている。サスペンション装置20は、それぞれが車輪保持部としてのサスペンションアームである第1アッパアーム30,第2アッパアーム32,第1ロアアーム34,第2ロアアーム36,トーコントロールアーム38を備えている。5本のアーム30,32,34,36,38のそれぞれの一端部は、車体に回動可能に連結され、他端部は、車輪12を回転可能に保持するアクスルキャリア40に回動可能に連結されている。それら5本のアーム30,32,34,36,38により、アクスルキャリア40は、車体に対して略一定の軌跡を描くような上下動が可能とされている。
サスペンション装置20は、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング50と液圧式のショックアブソーバ(以下、「アブソーバ」と略す場合がある)52とを備えており、それらは、それぞれ、ばね上部の一構成部分であるタイヤハウジングに設けられたマウント部54と、ばね下部の一構成部分である第2ロアアーム36との間に、互いに並列的に配設されている。アブソーバ52は、油圧式のものであり、ばね上部とばね下部との相対振動を減衰する構造とされている。つまり、サスペンション装置20は、車輪12と車体とを弾性的に相互支持するとともに、それらの接近離間に伴う振動に対する減衰力を発生させているのである。なお、油圧式のアブソーバ52の構造は公知のものであることから、詳細な説明は省略する。
また、サスペンション装置20は、車体と車輪との距離(以下、「車体車輪間距離」という場合がある)を調整可能な車体車輪間距離調整装置(以下、「調整装置」という場合がある)60を備えており、その調整装置60はそれぞれ、概してL字形状をなすL字形バー62と、そのバー62を回転させるアクチュエータ66とを備えている。L字形バー62は、図2,3に示すように、概ね車幅方向に延びるシャフト部70と、シャフト部70と連続するとともにそれと交差して概ね車両後方に延びるアーム部72とに区分することができる。L字形バー62のシャフト部70は、それの軸方向の中間部において、車体に固定された保持具74によって車体の下部に回転可能に保持されている。アクチュエータ66は、それの一端部に設けられた取付部材76によって車体下部の車幅方向における中央付近に固定されており、シャフト部70の端部(車幅方向における中央側の端部)がそのアクチュエータ66に接続されている。一方、アーム部72の端部(シャフト部70とは反対側の端部)は、リンクロッド77を介して、第2ロアアーム36に連結されている。詳しく言えば、第2ロアアーム36には、リンクロッド連結部78が設けられ、リンクロッド77の一端部は、そのリンクロッド連結部78に、他端部はL字形バー62のアーム部72の端部に、それぞれ遥動可能に連結されている。
調整装置60の備えるアクチュエータ66は、図4に示すように、駆動源としての電磁モータ80と、その電磁モータ80の回転を減速して伝達する減速機82とを含んで構成されている。これら電磁モータ80と減速機82とは、アクチュエータ66の外殻部材であるハウジング84内に設けられており、そのハウジング84は、それの一端部に固定された上述の取付部材76によって、車体に固定的に取り付けられている。L字形バー62は、それのシャフト部70がハウジング84の他端部から延び入るように、配設されている。L字形バー62のシャフト部70は、それのハウジング84内に存在する部分において、後に詳しく説明するように、減速機82と接続されている。さらに、シャフト部70は、それの軸方向の中間部において、ブシュ型軸受86を介してハウジング84に回転可能に保持されている。
電磁モータ80は、ハウジング84の周壁の内面に沿って一円周上に固定して配置された複数のコイル88と、ハウジング84に回転可能に保持された中空状のモータ軸90と、コイル88と向きあうようにしてモータ軸90の外周に固定して配設された永久磁石92とを含んで構成されている。電磁モータ80は、コイル88がステータとして機能し、永久磁石92がロータとして機能するモータであり、3相のDCブラシレスモータとされている。なお、ハウジング84内に、モータ軸90の回転角度、すなわち、電磁モータ80の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ94が設けられている。モータ回転角センサ94は、エンコーダを主体とするものであり、アクチュエータ66の制御、つまり、調整装置60の制御に利用される。
減速機82は、波動発生器(ウェーブジェネレータ)96,フレキシブルギヤ(フレクスプライン)98およびリングギヤ(サーキュラスプライン)100を備え、ハーモニックギヤ機構(「ハーモニックドライブ(登録商標)機構」,「ストレインウェーブギヤリング機構」等と呼ばれることもある)として構成されている。波動発生器96は、楕円状カムと、それの外周に嵌められたボールベアリングとを含んで構成されるものであり、モータ軸90の一端部に固定されている。フレキシブルギヤ98は、周壁部が弾性変形可能なカップ形状をなすものとされており、周壁部の開口側の外周に複数の歯が形成されている。このフレキシブルギヤ98は、先に説明したL字形バー62のシャフト部70に接続され、それによって支持されている。詳しく言えば、L字形バー62のシャフト部70は、モータ軸90を貫通しており、それから延び出す部分の外周面において、フレキシブルギヤ98の底部を貫通する状態でその底部とスプライン嵌合によって相対回転不能に接続されているのである。リングギヤ100は、概してリング状をなして内周に複数(本減速機82においては、フレキシブルギヤ98の歯数より2歯多い数)の歯が形成されたものであり、ハウジング84に固定されている。フレキシブルギヤ98は、その周壁部が波動発生器96に外嵌して楕円状に弾性変形させられ、楕円の長軸方向に位置する2箇所においてリングギヤ100と噛合し、他の箇所では噛合しない状態とされている。このような構造により、波動発生器96が1回転(360度)すると、つまり、電磁モータ80のモータ軸90が1回転すると、フレキシブルギヤ98とリングギヤ100とが、2歯分だけ相対回転させられる。
以上の構成から、電磁モータ80が駆動させられると、そのモータ80が発生させるモータ力によって、L字形バー62が回転させられて、そのL字形バー62のシャフト部70が捩じられることになる。この捩りにより生じる捩り反力が、アーム部72,リンクロッド77,リンクロッド連結部78を介し、第2ロアアーム36に伝達され、第2ロアアーム36を車体に対して押し下げたり、引き上げたりする力、言い換えれば、車体と車輪とを上下に接近・離間させる方向の力である接近離間力として作用する。つまり、アクチュエータ66が発生させる力であるアクチュエータ力が、弾性体として機能するL字形バー62を介して、接近離間力として作用することになる。このことから、調整装置60は、接近離間力を発生する接近離間力発生装置としての機能を有していると考えることができ、その接近離間力を調整することで、車体と車輪との距離を調整することが可能となっている。
サスペンション装置20の構成は、概念的には、図5のように示すことができる。図から解るように、マウント部54を含むばね上部としての車体の一部と、第2ロアアーム36等を含んで構成されるばね下部との間に、コイルスプリング50,アブソーバ52および調整装置60が、互いに並列的に配置されている。また、調整装置60を構成する弾性体としてのL字形バー62およびアクチュエータ66は、ばね上部とばね下部との間に直列的に配置されている。言い換えれば、L字形バー62は、コイルスプリング50およびアブソーバ52と並列的に配置され、L字形バー62と車体の一部54との間には、それらを連結するアクチュエータ66が配設されているのである。
調整装置60は、ばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力である接近離間力を発生させ、その接近離間力の大きさを変更可能とされている。詳しく言えば、アクチュエータ66が、モータ力に依拠するアクチュエータ力によって、弾性体としてのL字形バー62を変形させつつ、つまり、L字形バー62のシャフト部70を捩りつつ、そのアクチュエータ力を、L字形バー62を介して、ばね上部とばね下部とに接近離間力として作用させているのである。L字形バー62の変形量、つまり、シャフト部70の捩り変形量は、アクチュエータ66の動作量に対応したものとなっており、また、アクチュエータ力に対応するものとなっている。接近離間力は、L字形バー62の変形による弾性力に相当するものであることから、アクチュエータ66の動作量に対応し、アクチュエータ力に対応するものとなる。したがって、アクチュエータ66の動作量とアクチュエータ力とのいずれか一方を変化させることで、接近離間力を変化させることが可能とされているのである。本サスペンションシステム10では、アクチュエータ66の動作量を直接の制御対象とした制御を実行することで、接近離間力が制御される。
なお、本システム10の制御においては、アクチュエータ66の動作量は、所定の中立位置を基準とする動作量として扱われる。この中立位置は、例えば、車体に、ロールモーメント,ピッチモーメント等が実質作用しておらず、かつ、車体,車輪12に振動が生じていないとみなせる状態である基準状態において、アクチュエータ力を発揮していないときのアクチュエータ66の動作位置として設定される。また、本システム10の制御においては、アクチュエータ66の動作量と電磁モータ80の回転角とは対応関係にあるため、実際には、アクチュエータ66の動作量に代えて、モータ回転角センサによって取得されるモータ回転角を対象とした制御が行われる。
本システム10は、図1に示すように、各調整装置60,詳しく言えば、各アクチュエータ66の作動を制御する制御装置である調整装置電子制御ユニット(調整装置ECU)110を備えている。調整装置ECU110は、各アクチュエータ66の作動を制御し、各アクチュエータ66が有する電磁モータ80に対応する駆動回路としての4つのインバータ112と、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ114とを備えている。(図9参照)。各インバータ112は、コンバータ116を介してバッテリ118に接続されており、各インバータ112は各調整装置60の電磁モータ80に接続されている。
電磁モータ80は定電圧駆動されることから、電磁モータ80への供給電力量は、供給電流量を変更することによって変更され、電磁モータ80は、その供給電流量に応じた力を発揮することとなる。ちなみに、供給電流量の変更は、各インバータ112がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。
コントローラ114には、上記モータ回転角センサ94とともに、操舵量としてのステアリング操作部材の操作量であるステアリングホイールの操作角を検出するためのステアリングセンサ120,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ121,車体に発生する横加速度を検出する横加速度センサ122,車体に発生する前後加速度を検出する前後加速度センサ124,車体のマウント部54に設けられ車体に発生するばね上縦加速度を検出するばね上縦加速度センサ126,第2ロアアーム36に設けられ車体に発生するばね下縦加速度を検出するばね下縦加速度センサ128が接続されている。さらに、コントローラ114は、インバータ112にも接続され、それを制御することで、調整装置60を制御するものとされている。なお、コントローラ114のコンピュータが備えるROMには、後に説明する調整装置60の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<車両横滑り抑制システムの構成、制御>
また、本サスペンションシステム10を搭載する車両においては、許容限度を超える車両の横滑りを抑制するシステムとして車両横滑り抑制システム130が採用されている。車両横滑り抑制システム130は、図1に示すように、各車輪12の制動力を独立して制御可能なブレーキアクチュエータ132と、エンジン出力を調整するアクセルスロットルの開度を制御するスロットルアクチュエータ136と、それらブレーキアクチュエータ132およびスロットルアクチュエータ136の作動を制御する車両横滑り抑制システム電子制御ユニット(車両横滑り抑制ECU)138とを含んで構成されている。
車両横滑り抑制ECU138は、ブレーキアクチュエータ132の作動を制御する駆動回路140と、スロットルアクチュエータ136の作動を制御する駆動回路142と、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ144とを備えている。(図9参照)。各駆動回路140,142は、コンバータ116を介してバッテリ118に接続されており、駆動回路140はブレーキアクチュエータ132に接続され、駆動回路142はスロットルアクチュエータ136に接続されている。コントローラ144には、上記ステアリングセンサ120,車速センサ121とともに、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ146が接続されている。さらに、コントローラ144は、各駆動回路140,142にも接続され、それらを制御することで、各車輪12の制動力、および、エンジン出力を制御するものとされている。なお、コントローラ144のコンピュータが備えるROMには、後に説明する車両の横滑りを抑制するためのプログラム,各種のデータ等が記憶されている。ちなみに、車両横滑り抑制ECU138のコントローラ144と調整装置ECU110のコントローラ114とは、互いに接続されて通信可能とされており、必要に応じて、各システムの制御に関する情報,指令等が通信される。
本車両横滑り抑制システム130においては、許容限度を超えた車両の横滑りが発生した場合に、車両に対する推進力としてのエンジン出力を低下させるとともに各車輪12のうちの一部の車輪の制動力を増加させることで、そのような車両の横滑りを抑制する横滑り抑制制御を実行することが可能とされている。詳しく言えば、前輪が後輪に対して相対的に横滑りすることで許容限度を超えた車両の横滑りが発生した時(以下、「前輪の横滑りによる車両横滑り発生時」という場合がある)には、エンジン出力を低下させるとともに旋回内輪の後輪の制動力を増加させることで、前輪の横滑りを抑制して車両の横滑りを抑制するのである。一方、後輪が前輪に対して相対的に横滑りすることで許容限度を超えた車両の横滑りが発生した時(以下、「後輪の横滑りによる車両横滑り発生時」という場合がある)には、エンジン出力を低下させるとともに旋回外輪の前輪の制動力を増加させることで、後輪の横滑りを抑制して車両の横滑りを抑制するのである。このようにして、許容限度を超えた車両の横滑りが発生した場合に、各車輪12の制動力とエンジン出力とを制御することで、そのような車両の横滑りを抑制しているのである。
なお、許容限度を超えた車両の横滑りの発生は、ステアリングホイールの操舵角δと車両走行速度vに基づいて推定される推定ヨーレートωcと、実測された実ヨーレートωrとに基づいて判定される。具体的に言えば、推定ヨーレートωcと実ヨーレートωrとが比較され、実ヨーレートωrが推定ヨーレートωcより大きく、かつ、それらの差の絶対値が設定閾値Δω1より大きい場合には、車両の旋回状態が過剰なオーバーステア傾向にあり、後輪の横滑りによる車両横滑り発生時と判定される。一方、実ヨーレートωrが推定ヨーレートωcより小さく、かつ、それらの差の絶対値が上記設定閾値Δω1より大きい場合には、車両の旋回状態が過剰なアンダステア傾向にあり、前輪の横滑りによる車両横滑り発生時と判定される。
<車両用サスペンションシステムの制御>
i)基本的な制御
本サスペンションシステム10では、各調整装置60が発生させる接近離間力を独立して制御することによって、4つの車輪12の各々に対応するばね上振動を減衰する制御(以下、「ばね上振動減衰制御」という場合がある),車両の旋回に起因する車体のロールを抑制する制御(以下「ロール抑制制御」という場合がある),車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制する制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が実行可能とされている。本システムにおいては、通常、それら3つの制御が総合された制御が実行されている。この制御では、各調整装置60において、ばね上速度,車体が受けるロールモーメント,ピッチモーメント等に基づいて、適切な接近離間力を発揮させるべく、電磁モータ80のモータ回転角が制御されている。詳しく言えば、ばね上速度,車体が受けるロールモーメント,ピッチモーメント等に基づいて、目標となるモータ回転角である制御目標値としての目標モータ回転角が決定され、実際のモータ回転角がその目標モータ回転角となるように電磁モータ80が制御される。なお、ロール抑制制御およびピッチ抑制制御は、車体のロール,ピッチ等のそれぞれの車体の姿勢変化を抑制する制御であることから、姿勢変化抑制制御の一種と考えることができる。
本システム10においては、上述の制御目標値としての目標モータ回転角は、ばね上振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御の各制御ごとの制御目標値成分である目標モータ回転角成分を和することによって決定される。各制御ごとの成分は、それぞれ、
ばね上振動減衰目標モータ回転角成分(ばね上振動減衰成分)θ* U
ロール抑制目標モータ回転角成分(ロール抑制成分)θ* R
ピッチ抑制目標モータ回転角成分(ピッチ抑制成分)θ* P
である。以下に、ばね上振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御の各々を、その各々の目標モータ回転角成分の決定方法を中心に詳しく説明するとともに、目標モータ回転角に基づく上記電動モータ80への供給電力の決定について詳しく説明する。
a)ばね上振動減衰制御
ばね上振動減衰制御では、接近離間力を、車体の上下方向への移動速度、いわゆるばね上絶対速度に応じた大きさの減衰力として発生させており、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御が実行される。具体的には、ばね上絶対速度に応じた大きさの接近離間力を発生させるべく、車体のマウント部54に設けられたばね上縦加速度センサ126によって検出されるばね上縦加速度Guに基づき、ばね上絶対速度Vuが計算され、次式に従って、ばね上振動減衰成分θ* Uが演算される。
θ* U=K1・CS・Vu
ここで、K1は、ばね上振動に対する減衰力をばね上振動成分θ* Uに変換するためのゲインであり、CSは、スカイフックダンパ理論に基づく減衰係数である。
b)ロール抑制制御
ロール抑制制御では、車両の旋回時において、その旋回に起因するロールモーメントに応じて、旋回内輪側の調整装置60にはバウンド方向の接近離間力を、旋回外輪側の調整装置60にはリバウンド方向の接近離間力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車両走行速度vに基づいて推定された推定横加速度Gycと、実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K2・Gyc+K3・Gyr (K2,K3:ゲイン)
そして、決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分θ* Rが決定される。調整装置ECU110のコントローラ114内には、制御横加速度Gy*をパラメータとするロール抑制成分θ* Rのマップデータが格納されており、ロール抑制成分θ* Rの決定にあたっては、そのマップデータが参照される。
c)ピッチ抑制制御
ピッチ抑制制御では、車体の制動時に発生する車体のノーズダイブに対して、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントに応じて、前輪側の調整装置60にはリバウンド方向の接近離間力を、後輪側の調整装置60にはバウンド方向の接近離間力を、それぞれピッチ抑制力として発生させる。それによって、ノーズダイブが抑制されることになる。また、車体の加速時に発生する車体のスクワットに対して、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントに応じて、後輪側の調整装置60にはリバウンド方向の接近離間力を、前輪側の調整装置60にはバウンド方向の接近離間力を、それぞれ、ピッチ抑制力として発生させる。ピッチ抑制制御では、そのような接近離間力によって、ノーズダイブおよびスクワットが抑制されることになる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、実測された実前後加速度Gzgが採用され、その実前後加速度Gzgに基づいて、ピッチ抑制成分θ* Pが、次式に従って決定される。
θ* P=K4・Gzg (K4:ゲイン)
d)目標供給電流の決定
以上のように、ばね上振動減衰成分θ* U,ロール抑制成分θ* R,ピッチ抑制成分θ* Pがそれぞれ決定されると、目標モータ回転角θ*が、次式に従って決定される。
θ*=θ* U+θ* R+θ* P
そして、実際のモータ回転角である実モータ回転角θが上記目標モータ回転角θ*になるように、電磁モータ80が制御される。この電磁モータ80の制御において、電磁モータ80に供給される電力は、実モータ回転角θの目標モータ回転角θ*に対する偏差であるモータ回転角偏差Δθ(=θ*−θ)に基づいて決定される。詳しく言えば、モータ回転角偏差Δθに基づくフィードバック制御の手法に従って決定される。具体的には、まず、電磁モータ80が備えるモータ回転角センサ94の検出値に基づいて、上記モータ回転角偏差Δθが認定され、次いで、それをパラメータとして、次式に従って、目標供給電流i*が決定される。
*=KP・Δθ+KI・Int(Δθ)
この式は、PI制御則に従う式であり、第1項,第2項は、それぞれ、比例項、積分項を、KP,KIは、それぞれ、比例ゲイン,積分ゲインを意味する。また、Int(Δθ)は、モータ回転角偏差Δθの積分値に相当する。
ちなみに、上記目標供給電流i*は、それの符号により電磁モータ80のモータ力の発生方向をも表すものとなっており、電磁モータ80の駆動制御にあたっては、目標供給電流i*に基づいて、電磁モータ80を駆動するためのデューティ比およびモータ力発生方向が決定される。そして、それらデューティ比およびモータ力発生方向についての指令がインバータ114に発令され、インバータ114によって、その指令に基づいた電磁モータ80の駆動制御がなされる。このようにして、4つの調整装置60の各々は、発生させるべき接近離間力を発生させ、車体のロール,ピッチ等を抑制するとともに、ばね上振動を減衰するのである。
なお、本システム10においては、上述のように、ばね上部の振動に対する制御、つまり、対ばね上振動制御であるばね上振動減衰制御は実行しているが、通常、ばね下部の振動に対する減衰制御は実行していない。ばね上振動だけでなく、ばね下振動をも調整装置60によって減衰することは、電磁モータ60による電力消費,電磁モータ60への負担等が懸念されるためである。そこで、本システム10においては、ばね下部の振動は、アブソーバ52によって対処するようにされている。ばね下部の振動のばね上部への伝達性を考慮した場合、比較的高周波数域の振動に関して言えば、アブソーバの減衰係数は低いほうがばね下部の振動はばね上部へ伝達され難い。このため、本システム10のアブソーバ52の減衰係数は低目に設定されている。具体的に言えば、アブソーバ52の減衰係数は、1500N・sec/m(車輪の動作に対してその車輪に直接作用させたと仮定した値)とされており、調整装置60を有していないサスペンションシステムにおけるショックアブソーバ、つまり、コンベンショナルなショックアブソーバに設定されている値である3000〜5000N・sec/mの半分以下に設定されている。
ii)車輪の接地性を考慮した調整装置の制御
アブソーバ52の減衰系数の値は、ばね下部からばね上部への振動の伝達性に影響するだけでなく、車輪の接地性等にも影響する。具体的に言えば、図6に示すように、ばね下共振周波数の振動に対する接地荷重変動率は、減衰係数が小さいほど高くなっている。接地荷重変動率と車輪の接地性とは相対関係にあり、接地荷重変動率が高くなるほど、車輪の接地性は低くなることから、ばね下共振周波数の振動に対する接地性は、減衰係数が小さいほど低くなっている。本システム10において、アブソーバ52の減衰係数は、上述したように低めに設定されており、ばね下共振周波数の振動に対する車輪の接地性は低くなっている。
また、本サスペンションシステム10を搭載する車両においては、上記車両横滑り抑制システム130が採用されており、許容限度を超えた車両の横滑りが発生した場合に上記横滑り抑制制御が実行される。そのような車輪の横滑りを抑制するための制御が実行される場合に、車輪の接地性が低くなっていれば、この制御による車輪の横滑り抑制効果が低下する虞がある。そこで、本サスペンションシステム10においては、車輪の接地性が低下する虞があるときに横滑り抑制御御が実行される場合には、ばね下部の振動を減衰して車輪の接地性の低下を防止することで、車輪の横滑りを効果的に抑制している。つまり、ばね下共振周波数の振動が発生し、かつ、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合には、上記ばね上振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御に加えて、ばね下部の振動に対する制御である対ばね下振動制御、つまり、ばね下振動減衰制御が実行されるのである。
ばね下振動減衰制御では、調整装置60が発生させる接近離間力を、ばね下部の上下方向への移動速度、いわゆるばね下絶対速度に応じた大きさの減衰力として発生させており、擬似的なグランドフックダンパ理論に基づいた制御が実行される。具体的には、ばね下絶対速度に応じた大きさの接近離間力を発生させるべく、ばね下縦加速度センサ128によって検出されるばね下縦加速度Gsに基づき、ばね下絶対速度Vsが計算され、次式に従って、ばね下振動減衰制御の制御目標値成分であるばね下振動減衰目標モータ回転角成分(ばね下振動減衰成分)θ* Sが演算される。
θ* S=K5・CU・Vs
ここで、K5は、ばね下振動に対する減衰力をばね下振動成分θ* Sに変換するためのゲインであり、CUは、ばね下振動に対する減衰係数であり、ばね下部の振動に対する減衰効果を高くして車輪の接地性を高めるべく、比較的高めに設定されている。
また、ばね下共振周波数の振動の発生の有無を判定するには、ばね下部の振動から、フィルタ処理によって、その周波数域の振動成分を算出し、その周波数域の振動成分の大きさを比較する。具体的に言えば、まず、ばね下縦加速度センサ128によってばね下縦加速度Gsを検出し、その検出されたばね下縦加速度Gsに基づいて、ばね下共振周波数の前後3Hzの領域の振動についてのフィルタ処理を実行する。そして、その周波数域の振動の強度である振幅のうちの最大振幅αを算出する。その算出された最大振幅αが設定閾値α1以上となる場合には、ばね下共振周波数の振動が発生していると判定される。
ばね下共振周波数の振動が発生しており、さらに、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合には、上述のように決定されたばね下振動減衰成分θ* Sと、上記ばね上振動減衰成分θ* U,ロール抑制成分θ* R,ピッチ抑制成分θ* Pとに基づき、目標モータ回転角θ*が次式に従って決定される。
θ*=θ* S+θ* U+θ* R+θ* P
この決定された目標モータ回転角θ*に基づき、PI制御則に従う上記式に従って、目標供給電流i*が決定され、その目標供給電流i*が電磁モータ80に供給される。このように、ばね上振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御に加えてばね下振動減衰制御を実行することで、調整装置60が発生させる接近離間力によってばね下部の振動をも減衰して、車両の横滑りを効果的に抑制しているのである。
上述のように、本システム10においては、車輪の接地性を考慮した制御と、高周波域の振動の伝達性,電磁モータへの負担等を考慮した制御とを選択的に実行しているのである。つまり、車輪の接地性を向上させるべく、接近離間力を、ばね下部の振動に対する減衰力として作用させる制御である第1対ばね下振動制御と、高周波域の振動の伝達性を低めるとともに電磁モータの消費電力の低減等を図るべく、接近離間力を、ばね下部の振動に対する減衰力として作用させない制御である第2対ばね下振動制御とを選択的に実行しているのである。
<制御プログラム>
上記車両横滑り抑制システム130において横滑り抑制制御が、図7にフローチャートを示す横滑り抑制制御プログラムが車両横滑り抑制ECU138のコントローラ144によって実行されることで行われる。一方、サスペンションシステム10において調整装置60の発生させる接近離間力の制御が、図8にフローチャートを示す調整装置制御プログラムが調整装置ECU110のコントローラ114によって実行されることで行われる。それら2つのプログラムは、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいて繰り返し実行されている。以下に、それぞれの制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
i)横滑り抑制制御プログラム
本プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、車速vが車速センサ121の検出値に基づいて取得され、次に、S2において、ステアリングホイールの操作角δが、ステアリングセンサ120の検出値に基づいて取得される。続いて、S3において、取得された車速vおよび操作角δに基づいて推定ヨーレートωcが推定される。コントローラ144には、車速vと操作角δとをパラメータとする推定ヨーレートωcに関するマップデータが格納されており、推定ヨーレートωcは、そのマップデータを参照することによって推定される。そして、S4において、車体に実際に発生するヨーレートである実ヨーレートωrが、ヨーレートセンサ146の検出値に基づいて取得される。
次に、S5において、許容限度を超えた車両の横滑りが発生しているか否かが判定される。具体的には、実ヨーレートωrと推定ヨーレートωcとが比較され、それらの差の絶対値が設定閾値Δω1より大きいか否かが判定される。実ヨーレートωrと推定ヨーレートωcとの差の絶対値が設定閾値Δω1より大きいと判定された場合には、許容限度を超えた車両の横滑りが発生していると判定され、S6において、車両横滑りフラグGのフラグ値が1にされる。そのフラグGのフラグ値が1とされる場合には、許容限度を超えた車両の横滑りが発生していることを示し、0とされている場合には、許容限度を超えた車両の横滑りが発生していないことを示している。
続いて、S7において、前輪の横滑りによる車両横滑り発生時と、後輪の横滑りによる車両横滑り発生時とのいずれであるかが判定される。具体的には、実ヨーレートωrが推定ヨーレートωcより大きいか否かが判定され、実ヨーレートωrが推定ヨーレートωcより大きいと判定された場合には、後輪の横滑りによる車両横滑り発生時と判定され、S8において、エンジン出力を低下させるべく、アクセルスロットルの開度を低下させる旨の制御信号が駆動回路142に送信されるとともに、旋回外輪の前輪の制動力を増加させる旨の制御信号が駆動回路140に送信される。また、S7において、実ヨーレートωrが推定ヨーレートωcより小さいと判定された場合には、前輪の横滑りによる車両横滑り発生時と判定され、S9において、エンジン出力を低下させるべく、アクセルスロットルの開度を低下させる旨の制御信号が駆動回路142に送信されるとともに、旋回内輪の後輪の制動力を増加させる旨の制御信号が駆動回路140に送信される。また、S5において実ヨーレートωrと推定ヨーレートωcとの差の絶対値が設定閾値Δω1以下と判定された場合には、許容限度を超えた車両の横滑りが発生していないと判定され、S10において、車両横滑りフラグGのフラグ値が0にされる。
ii)調整装置制御プログラム
調整装置制御プログラムは、4つの調整装置60の各アクチュエータ66に対して、アクチュエータ66ごとに、実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ66に対しての本プログラムによる処理について説明する。本プログラムに従う処理では、まず、S11において、ばね上縦加速度センサ126によって検出されるばね上縦加速度Guに基づいて、ばね上絶対速度Vuが演算され、S12においてその演算されたばね上絶対速度Vuに基づいて、ばね上振動減衰制御のためのばね上振動減衰成分θ* Uが決定される。次に、S13において、横加速度センサ122によって検出される実横加速度Gyrと上記推定横加速度Gycとに基づいて、制御横加速度Gy*が演算され、S14において、その制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制制御のためのロール抑制成分θ* Rが決定される。続いて、S15において、前後加速度センサ124によって前後加速度Gzgが検出され、S16において、その検出された前後加速度Gzgに基づいて、ピッチ抑制制御のためのピッチ抑制成分θ* Pが決定される。
次に、S17において、許容限度を超えた車両の横滑りが発生しているか否かが判定される。具体的に言えば、上述の横滑り抑制制御プログラムにおいて決定されている車両横滑りフラグGのフラグ値が1とされているか否かが判定される。そのフラグGに関する情報は、車両横滑り抑制ECU138のコントローラ144から調整装置ECU110のコントローラ114に送信されるのである。つまり、車両横滑り抑制システム130からに指令に基づいて、車両の横滑りが判定されるのである。車両横滑りフラグGのフラグ値が1とされていると判定された場合、つまり、許容限度を超えた車両の横滑りが発生していると判定された場合には、ばね下共振周波数の振動が発生しているか否かが判定される。具体的に言えば、S18において、ばね下縦加速度センサ128によってばね下縦加速度Gsが検出され、S19において、その検出されたばね下縦加速度Gsに基づき、ばね下共振周波数域についてのフィルタ処理を実行して、ばね下共振周波数域の振動の振幅の最大振幅αを算出する。続いて、S20において、その最大振幅αが設定閾値α1以上であるか否かが判定される。
最大振幅αが設定閾値α1以上と判定された場合には、ばね下共振周波数域の振動が生じていると判定され、S21において、ばね下縦加速度Gsに基づいてばね下絶対速度Vsが演算され、S22において、その演算されたばね下絶対速度Vsに基づいて、ばね下振動減衰制御のためのばね下振動減衰成分θ* Sが決定される。そして、S23において、ばね下振動減衰成分θ* Sとばね上振動減衰成分θ* Uとロール抑制成分θ* Rとピッチ抑制成分θ* Pとが合計されることによって、目標モータ回転角θ*が決定される。
また、S17において車両横滑りフラグGのフラグ値が0とされていると判定された場合、若しくは、S20において最大振幅αが設定閾値α1未満と判定された場合には、S24において、ばね上振動減衰成分θ* Uとロール抑制成分θ* Rとピッチ抑制成分θ* Pとが合計されることによって、目標モータ回転角θ*が決定される。
目標モータ回転角θ*が決定されると、S25において、モータ回転角センサ94に基づいて実モータ回転角θが取得され、S26において、実モータ回転角θの目標モータ回転角θ*に対する偏差であるモータ回転角偏差Δθが決定される。そして、S27において、目標モータ回転角θ*に基づき、前述のPI制御則に従う式に従って、目標供給電流i*が決定され、S28において、決定された目標供給電流i*に基づく制御信号がインバータ112に送信された後、本プログラムの1回の実行が終了する。
<コントローラの機能構成>
上記横滑り抑制制御プログラムを実行する車両横滑り抑制ECU138のコントローラ144は、それの実行処理に鑑みれば、図9に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、コントローラ144は、S5,S7の処理を実行する機能部、つまり、許容限度を超えた車両の横滑りの発生を検知するする機能部として、車両横滑り検知部150を、S8,S9の処理を実行する機能部、つまり、エンジン出力を低下させるとともに各車輪の一部の制動力を増加させて、横滑り抑制制御を実行する機能部として、横滑り抑制制御実行部152を、それぞれ備えている。
また、上記調整装置制御プログラムを実行する調整装置ECU110のコントローラ114も、それの実行処理に鑑みれば、図9に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、コントローラ114は、S11,S12の処理を実行する機能部、つまり、対ばね上振動制御を実行する機能部として、対ばね上振動制御実行部154を、S21〜S24の処理を実行する機能部、つまり、対ばね下振動制御を実行する機能部として、対ばね下振動制御実行部156を、S13〜S16の処理を実行する機能部、つまり、姿勢変化抑制制御を実行する機能部として、姿勢変化抑制制御実行部158を、S17の処理を実行する機能部、つまり、許容限度を超えた車両の横滑りが発生しているか否かを判定する機能部として、車両横滑り判定部160を、S18〜S20の処理を実行する機能部、つまり、ばね下共振周波数の振動が発生しているか否かを判定する機能部として、ばね下共振周波数振動発生判定部162を、それぞれ備えている。なお、対ばね下振動制御実行部156は、S21〜S23の処理を実行する機能部、つまり、第1対ばね下振動制御を実行する機能部として、第1対ばね下振動制御実行部164を、S24の処理を実行する機能部、つまり、第2対ばね下振動制御を実行する機能部として、第2対ばね下振動制御実行部166を、それぞれ有している。
(B)第2実施例
<車両用サスペンションシステムの構成>
図10に、第2実施例の車両用サスペンションシステム170を模式的に示す。先の実施例のサスペンションシステム10が、接近離間力発生装置として上記調整装置60を備えているのに対し、本システム170は、接近離間力発生装置として電磁式のショックアブソーバ(以下、「アブソーバ」という場合がある)172を備えている。本システム170は、先の実施例のシステム10と共通する構成要素を多く備えているため、本システム170の説明において、先のシステム10と共通する構成要素については、同じ符号を用い、それらの説明は省略あるいは簡略に行うものとする。
本システム170は、前後左右4つの車輪12に対応して設けられた4つのサスペンション装置174を備えている。サスペンション装置174は、図11に示すように、先の実施例のサスペンションシステム10が備えるサスペンション装置20と同様に、独立懸架式のものであり、マルチリンク式サスペンション装置とされている。サスペンション装置174は、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング176と電磁式のアブソーバ172とを備えており、それらは、それぞれ、マウント部54と第2ロアアーム36との間に、互いに並列的に配設されている。
電磁式のアブソーバ172は、図12に示すように、概して有底円筒状の下部チューブ180と、その下部チューブ180に嵌入して下部チューブ180の上端部から上方に突出する上部チューブ182とを含んで構成されている。下部チューブ180は、取付ブシュ184を介して第2ロアアーム36に連結されており、一方、上部チューブ182は、それの上端部において、電磁モータ186を収納するモータケース188に固定的に連結されており、そのモータケース188は、それの外周部において、緩衝ゴムを介してマウント部54に連結されている。
電磁モータ186は、モータケース188の周壁の内面に沿って一円周上に固定して配置された複数のコイル190と、モータケース188に回転可能に保持されたモータ軸192と、コイル190と向き合うようにしてモータ軸192の外周に固定して配設された永久磁石194とを含んで構成されている。電磁モータ186は、コイル190がステータとして機能し、永久磁石194がロータとして機能するモータであり、3相のDCブラシレスモータとされている。
アブソーバ172は、外周部に雄ねじが形成されたねじロッド200と、ベアリングボールを保持してねじロッド200と螺合するナット202とを有しており、ねじロッド200とナット202とはボールねじ機構を構成している。ナット202は、ねじロッド200と螺合させられた状態で、下部チューブ180の内底部に立設されている筒状のナット支持部材204の上端部に固定的に支持されている。一方、ねじロッド200は、自身の下端部をナット支持部材204に挿入した状態で、上下方向に延びるように上部チューブ182内に配設されており、上端部においてモータ軸192に固着されている。
上部チューブ182には、その内壁面に上下方向に延びるようにして1対のガイド溝210が設けられるとともに、それらのガイド溝210の各々には、ナット支持部材204の上端部に付設された1対のキー212の各々が嵌まるようにされており、それらガイド溝210およびキー212によって、ナット支持部材204と上部チューブ182、つまり、下部チューブ180と上部チューブ182とが、相対回転不能、かつ、上下方向に相対移動可能とされている。
また、下部チューブ180には、その外周部に環状の下部リテーナ216が固定されており、マウント部54の下面側には、防振ゴムを介して、環状の上部リテーナ218が付設されている。コイルスプリング176は、それら下部リテーナ216と上部リテーナ218とによって、それらに挟まれる状態で支持されている。
上述のような構造から、アブソーバ172は、上部チューブ182,モータケース188等を含んでマウント部54に連結されるばね上部側ユニットが構成されるとともに、下部チューブ180,ナット支持部材204等を含んで第2ロアアーム36に連結されるばね下部側ユニットが構成される構造のものとなっている。ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとは、ばね上部とばね下部との接近離間に伴って、相対移動可能とされており、ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に伴って、アブソーバ172が伸縮するものとされている。
アブソーバ172の伸縮に伴って、ねじロッド200とナット202とが相対移動するとともにねじロッド200が回転するものとされている。アブソーバ172の備える電磁モータ186は、ねじロッド200に回転力を付与することが可能とされていることから、アブソーバ172は、その回転力に依拠してばね上部側ユニットとばね下部側ユニット、つまり、ばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力である接近離間力を発生させることが可能とされている。接近離間力は、ばね上部とばね下部との相対動作を阻止する抵抗力として作用させることが可能であり、この抵抗力を減衰力として利用することにより、ばね上部とばね下部との相対振動を減衰することが可能である。また、アブソーバ172は、ばね上部とばね下部との相対動作に対する推進力をも発生させることが可能とされており、いわゆるスカイフックダンパ理論等に基づく制御を実行すること、旋回時の車体のロール,加速・減速時の車体のピッチ等を効果的に抑制すること、車両の車高を調整すること等が可能とされているのである。
また、本サスペンションシステム170では、図10に示すように、4つのアブソーバ172に対応するアブソーバ電子制御ユニット(アブソーバECU)220が設けられている。アブソーバECU220は、各アブソーバ172、詳しくは、各電磁モータ186の作動を制御する制御装置であり、各電磁モータ186に対応する駆動回路としての4つのインバータ222と、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ224とを備えている。(図14参照)。各インバータ222は、コンバータ116を介してバッテリ118に接続されており、各インバータ222は各アブソーバ172の電磁モータ186に接続されている。また、コントローラ224は、インバータ222にも接続され、それを制御することで、アブソーバ172を制御するものとされている。
なお、本サスペンションシステム170を搭載する車両にも、先のサスペンションシステム10を搭載する車両に設けられている車両横滑り抑制システム130と同様のシステム226が設けられており、その車両横滑り抑制システム226において、上記横滑り抑制制御が実行可能とされている。
<車両用サスペンションシステムの制御>
i)基本的な制御
本サスペンションシステム170では、各アブソーバ172が発生させる接近離間力をそれぞれ独立して制御することによって、先のシステム10と同様に、ばね上振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御が実行されている。さらに、本システム170では、先のシステム10と異なり、コイルスプリング176と並列的に液圧式のショックアブソーバが設けられていないことから、ばね下部の振動を減衰するべく、ばね下振動減衰制御も、通常、実行されている。つまり、本システム170では、接近離間力を、通常、ばね上振動の減衰力,ばね下振動の減衰力,ロール抑制力,ピッチ抑制力として作用させているのである。詳しく言えば、ばね上振動減衰制御,ばね下振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御の各制御ごとの接近離間力であるばね上振動減衰接近離間力成分(ばね上振動減衰成分)FU,ばね下振動減衰接近離間力成分(ばね下振動減衰成分)FS,ロール抑制接近離間力成分(ロール抑制成分)FR,ピッチ抑制接近離間力成分(ピッチ抑制成分)FPを合計した目標接近離間力F*を決定し、アブソーバ172が、その目標接近離間力F*を発生させるように制御されることで一元的に実行されるのである。それら4つの制御は、先のシステム10において実行される各制御と略同様であることから、以下に、それら各制御における接近離間力成分の決定方法を簡単に説明する。また、接近離間力を制御するための電磁モータ186の作動制御もあわせて説明する。
ばね上振動減衰制御では、ばね上部の振動を減衰するためにばね上絶対速度Vuに応じた大きさの接近離間力を発生させるべく、次式に従って、ばね上振動減衰成分FUが演算される。
U=CS・Vu (CS:スカイフックダンパ理論に基づく減衰係数)
ばね下振動減衰制御では、ばね下部の振動を減衰するためにばね下絶対速度Vsに応じた大きさの接近離間力を発生させるべく、次式に従って、ばね下振動減衰成分FSが演算される。
S=CG・Vs (CG:グランドフックダンパ理論に基づく減衰係数)
ロール抑制制御では、車両の旋回に起因するロールモーメントに応じた大きさの接近離間力を発生させるべく、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、先のシステム10と同様に次式に従って決定され、
Gy*=K2・Gyc+K3・Gyr (K2,K3:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分FRが決定される。コントローラ224内には制御横加速度Gy*をパラメータとするロール抑制成分FRのマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して、ロール抑制成分FRが決定される。
ピッチ抑制制御では、車両の加減速に起因するピッチモーメントに応じた大きさの接近離間力を発生させるべく、実前後加速度Gzgに基づいて、ピッチ抑制成分FPが、次式に従って決定される。
P=K6・Gzg (K6:ゲイン)
上述のようにばね上振動減衰成分FU,ばね下振動減衰成分FS,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定されると、ばね上振動減衰制御,ばね下振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御を一元化すべく、次式に従って目標接近離間力F*が決定される。
*=FU+FS+FR+FP
そして、この決定された目標接近離間力F*を発生させるように電磁モータ186が制御される。
上記目標接近離間力F*を発生させるための電磁モータ186の作動制御は、インバータ222によって行われる。詳しく言えば、決定された目標接近離間力F*に基づいて、モータ力の発生方向およびモータ力の大きさに応じたデューティ比についての指令が、コントローラ224によってインバータ222に発令される、インバータ222は、自身が備えるスイッチング素子を指令に基づいて切り換えることで、電磁モータ186を駆動し、電磁モータ186は、その発令されたモータ力方向、および、デューティ比に応じた大きさの接近離間力を発生させるのである。
ii)車輪の接地性を考慮したアブソーバの制御
ばね下部の振動のばね上部への伝達性を考慮した場合、比較的高周波数域の振動に関して言えば、アブソーバの減衰係数は低いほうがばね下部の振動はばね上部へ伝達され難い。このため、高周波域の振動の車体への伝達を抑制するべく、本システム170における通常のばね下振動減衰制御に用いられる減衰係数CGは、比較的低いものとされている。ただし、減衰系数の値が低いと、図6に示すように、ばね下共振周波数の振動に対する接地性は低下する傾向にある。
また、本サスペンションシステム170を搭載する車両においても、上記横滑り抑制制御が実行可能とされており、横滑り抑制制御実行時に車輪の接地性が低くなっていれば、この制御による車両の横滑り抑制効果が低下する虞がある。そこで、本サスペンションシステム170においては、車輪の接地性が低下する虞があるときに横滑り抑制制御が実行される場合には、車輪の接地性を高くするべく、ばね下振動減衰制御に用いられる減衰係数を、通常のばね下振動減衰制御に用いられる減衰係数CGより大きな減衰係数CBに切換えている。具体的に言えば、ばね下共振周波数の振動が発生しており、さらに、許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合には、次式に従って、ばね下振動減衰成分FSが演算され、
S=CB・Vs
そのように決定されたばね下振動減衰成分FSと、上記ばね上振動減衰成分FU,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPとに基づき、目標接近離間力F*が決定される。
本システム170においては、上述のように、車輪の接地性を考慮して、ばね下部の振動に対する減衰係数を大きくすることで減衰効果を高くした第1対ばね下振動制御と、高周波域の振動の伝達性を考慮して、ばね下部の振動に対する減衰係数を小さくすることで減衰効果を低くした第2対ばね下振動制御とが選択的に実行されるのである。なお、第2対ばね下振動制御においては、第1対ばね下振動制御において発生させられる減衰力より小さな減衰力が発生させられることから、電磁モータによる消費電力の低減,電磁モータへの負担の軽減等が図られている。
<制御プログラム>
上記車両横滑り抑制システム226において、先の車両横滑り抑制システム130において実行されている横滑り抑制制御と同様の横滑り抑制制御が、図7にフローチャートを示す横滑り抑制制御プログラムが車両横滑り抑制ECU138のコントローラ144によって実行されることで行われる。一方、サスペンションシステム170において、アブソーバ172の発生させる接近離間力の制御が、図13にフローチャートを示すアブソーバ制御プログラムがアブソーバECU220のコントローラ224によって実行されることで行われる。それら2つのプログラムは、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいて繰り返し実行されている。横滑り抑制制御のフローは先の実施例において説明されていることから、横滑り抑制制御のフローの説明は省略する。また、アブソーバ制御プログラムに従う処理は、先のサスペンションシステム10の調整装置制御プログラムに従う処理と略同様であるため、アブソーバ172の制御のフローを、省略あるいは簡略して説明するものとする。
本アブソーバ制御プログラムに従う処理では、先の調整装置制御プログラムに従う処理と略同様に、S31〜S36において、上記式に従って、ばね上振動減衰成分FU,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定される。そして、S39において、許容限度を超えた車両の横滑りが発生しているか否かが判定される。車両横滑り抑制システム170からの指令に基づいて車両の横滑りが発生していると判定された場合には、S40およびS41において、ばね下共振周波数の振動が発生しているか否かが判定される。ばね下共振周波数の振動が発生していると判定された場合には、S42において、第1対ばね下振動制御を実行すべく、減衰係数CBに従ってばね下振動減衰成分FSが決定される。また、S39において車両の横滑りが発生していないと判定された場合、若しくは、S41においてばね下共振周波数の振動が発生していないと判定された場合には、S43において、第2対ばね下振動制御を実行すべく、減衰係数CGに従ってばね下振動減衰成分FSが決定される。ばね下振動減衰成分FSが決定されると、S44において、ばね上振動減衰成分FUとロール抑制成分FRとピッチ抑制成分FPとばね下振動減衰成分FSとが合計されることによって、目標接近離間力F*が決定され、S45において、決定された目標接近離間力F*に基づく制御信号が、インバータ152に発令される。以上の一連の処理の後、本プログラムの1回の実行が終了する。
<コントローラの機能構成>
上記アブソーバ制御プログラムを実行するアブソーバECU220のコントローラ224、および、横滑り抑制制御プログラムを実行する車両横滑り抑制ECU138のコントローラ144は、それらの実行処理に鑑みれば、図14に示すような機能構成を有するものと考えることができる。車両横滑り抑制システム226は、先の車両横滑り抑制システム130の車両横滑り抑制ECU138と同じものを備えていることから、車両横滑り抑制ECU138のコントローラ144の機能構成の説明は、省略するものとする。また、アブソーバECU220のコントローラ224の機能構成は、先のサスペンションシステム10の調整装置ECU110のコントローラ114と略同様の機能構成であることから、アブソーバECU220のコントローラ224の機能構成の説明は、簡略して行うものとする。
コントローラ224は、S31,S32の処理を実行する機能部として対ばね上振動制御実行部230を、S37,S38,S42,S43の処理を実行する機能部として対ばね下振動制御実行部232を、S33〜S36の処理を実行する機能部として姿勢変化抑制制御実行部234を、S39の処理を実行する機能部として車両横滑り判定部236を、S40,S41の処理を実行する機能部としてばね下共振周波数振動発生判定部238を、それぞれ備えている。なお、対ばね下振動制御実行部232は、S42の処理を実行する機能部として第1対ばね下振動制御実行部240を、S43の処理を実行する機能部として第2対ばね下振動制御実行部242を、それぞれ有している。
請求可能発明の第1実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1の車両用サスペンションシステムの備えるサスペンション装置を車両後方からの視点において示す模式図である。 図1の車両用サスペンションシステムの備えるサスペンション装置を車両上方からの視点において示す模式図である。 サスペンション装置の備える調整装置を構成するアクチュエータを示す概略断面図である。 サスペンション装置を概念的に示す図である。 ばね下共振周波数の振動に対する接地荷重変動率と減衰係数との関係を概念的に示すグラフである。 横滑り抑制制御プログラムを示すフローチャートである。 調整装置制御プログラムを示すフローチャートである。 サスペンションシステムの制御を司る制御装置、および、車両横滑り抑制システムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。 請求可能発明の第2実施例である車両用サスペンションシステムの全体構成を示す模式図である。 図1の車両用サスペンションシステムの備えるサスペンション装置を車両後方からの視点において示す模式図である。 サスペンション装置の備える電磁式のショックアブソーバを示す概略断面図である。 アブソーバ制御プログラムを示すフローチャートである。 サスペンションシステムの制御を司る制御装置、および、車両横滑り抑制システムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。
符号の説明
10:車両用サスペンションシステム 36:第2ロアアーム(ばね下部) 50:コイルスプリング(サスペンションスプリング) 52:液圧式ショックアブソーバ 54:マウント部(ばね上部) 60:車体車輪間距離調整装置(接近離間力発生装置) 62:L字形バー(弾性体) 66:アクチュエータ 70:シャフト部 72:アーム部 80:電磁モータ 110:調整装置電子制御ユニット(制御装置) 130:車両横滑り抑制システム 154:対ばね上振動制御実行部 156:対ばね下振動制御実行部 158:姿勢変化抑制制御実行部 170:車両用サスペンションシステム 172:電磁式ショックアブソーバ(接近離間力発生装置) 176:コイルスプリング(サスペンションスプリング) 180:下部チューブ(ばね下部側ユニット) 182:上部チューブ(ばね上部側ユニット) 186:電磁モータ 188:モータケース(ばね上部側ユニット) 200:ねじロッド(ねじ機構) 202:ナット(ねじ機構) 204:ナット支持部材(ばね下部側ユニット) 220:アブソーバ電子制御ユニット(制御装置) 226:車両横滑り抑制システム 230:対ばね上振動制御実行部 232:対ばね下振動制御実行部 234:姿勢変化抑制制御実行部

Claims (10)

  1. ばね上部とばね下部との間に配設されたサスペンションスプリングと、
    そのサスペンションスプリングと並列的に配設され、電磁モータを有し、その電磁モータが発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とを接近・離間させる方向の力である接近離間力を発生させる接近離間力発生装置と、
    前記電磁モータの作動を制御することで前記接近離間力発生装置が発生させる接近離間力を制御する制御装置と
    を備えた車両用サスペンションシステムであって、
    前記制御装置が、
    (a)接近離間力を、ばね下部の振動に対しての定められた規則に従う大きさの減衰力として発生させる第1対ばね下振動制御と、(b)接近離間力を、ばね下部の振動に対して前記第1対ばね下振動制御において発生させられる減衰力より小さな減衰力として発生させる、若しくは、減衰力として発生させない第2対ばね下振動制御とを選択的に実行する対ばね下振動制御実行部を有する車両用サスペンションシステム。
  2. 前記対ばね下振動制御実行部が、前記許容限度を超えた車両の横滑りが発生していない場合に前記第2対ばね下振動制御を実行するように構成された請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
  3. 当該車両用サスペンションシステムが、前記許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合に車両に対する制動力と推進力との少なくとも一方を制御してその車両の横滑りを抑制する横滑り抑制制御を実行可能な車両横滑り抑制システムを搭載する車両に設けられ、
    前記対ばね下振動制御実行部が、前記車両横滑り抑制システムからの指令に基づいて、前記第1対ばね下振動制御を実行するように構成された請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
  4. 前記対ばね下振動制御実行部が、ばね下共振周波数の振動の強度が設定された値を超える状況下にあることを条件として前記第1対ばね下振動制御を実行するように構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  5. 前記対ばね下振動制御実行部が、ばね下共振周波数の振動の強度が前記設定された値以下である状況下においては、前記許容限度を超えた車両の横滑りが発生している場合であっても前記第1対ばね下振動制御を実行せずに前記第2対ばね下振動制御を実行するように構成された請求項4に記載の車両用サスペンションシステム。
  6. 前記接近離間力発生装置が、
    一端部がばね上部とばね下部との一方に連結される弾性体と、
    その弾性体の他端部とばね上部とばね下部との他方との間に配設されてその他方と前記弾性体とを連結するとともに、前記電磁モータを自身の構成要素とし、その電磁モータが発生させる力に依拠して自身が発生させる力を前記弾性体に作用させることで、自身の動作量に応じて前記弾性体の変形量を変化させるとともに、その力を前記弾性体を介して接近離間力としてばね上部とばね下部とに作用させる電磁式のアクチュエータと
    を有する請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  7. 前記弾性体が、ばね上部に回転可能に保持されたシャフト部と、そのシャフト部の一端部からそのシャフト部と交差して延びるとともに先端部がばね下部に連結されたアーム部とを有し、
    前記アクチュエータが、車体に固定されるとともに、自身が発生させる力によって前記シャフト部をそれの軸線まわりに回転させるものである請求項6に記載の車両用サスペンションシステム。
  8. 前記接近離間力発生装置が、
    ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されるばね下部側ユニットとを有し、ばね上部とばね下部との接近離間に伴ってそれらばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとが相対移動することで伸縮可能に構成され、かつ、
    前記電磁モータが発生させる力に依拠して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとを相対移動させる方向の力を発生させるとともに、その力を接近離間力としてばね上部とばね下部とに作用させるように構成された請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
  9. 前記接近離間力発生装置が、
    前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの一方に設けられて雄ねじが形成されたねじロッドと、そのねじロッドと螺合して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの他方に設けられたナットとを有し、前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとの相対移動に伴って、前記ねじロッドと前記ナットとの一方が回転する構造とされたねじ機構を備え、
    前記電磁モータが発生させる力に依拠して、前記ねじロッドとナットとの一方に回転力を付与することで前記ばね上部側ユニットとばね下部側ユニットとを相対移動させる方向の力を発生させるように構成された請求項8に記載の車両用サスペンションシステム。
  10. 当該車両用サスペンションシステムが、前記サスペンションスプリングと並列的に配設された液圧式のショックアブソーバを備え、
    そのショックアブソーバが、自身に対して設定された減衰係数が1000〜2000N・sec/mとされたものである請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の車両用サスペンションシステム。
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