JP2009131358A - 人工硬膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い柔軟性と縫合可能な機械的強度とを備えた生体内分解吸収性合成高分子からなる人工硬膜を提供する。
【解決手段】生体内分解吸収性合成高分子からなる多層構造を有する人工硬膜であって、ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体からなり、かつ、結晶に由来する融解エンタルピーが1〜10J/gである最外層を有し、かつ、生体内分解吸収性高分子からなる繊維構造物からなる補強層を有する人工硬膜。
【選択図】なし
【解決手段】生体内分解吸収性合成高分子からなる多層構造を有する人工硬膜であって、ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体からなり、かつ、結晶に由来する融解エンタルピーが1〜10J/gである最外層を有し、かつ、生体内分解吸収性高分子からなる繊維構造物からなる補強層を有する人工硬膜。
【選択図】なし
Description
本発明は、高い柔軟性と縫合可能な機械的強度とを備えた生体内分解吸収性合成高分子からなる人工硬膜に関する。
頭蓋骨と脳との間や脊髄を覆うように介在する硬膜は、主として脳、脊髄の保護と脳脊髄液の漏出を防止する機能を果たすものである。脳神経外科領域に伴う手術において硬膜を開切する術式を行った場合には、欠損又は拘縮した硬膜を補填する必要がある。従来は、この補填材としてヒト硬膜の凍結乾燥物が使用されていた。しかしながら、かかるヒト硬膜は製品の均一性や供給に難があり、またヒト硬膜を介したCreutz felt−Jacob病感染の可能性の報告(非特許文献1)があり、1997年4月7日をもって使用禁止の通達が厚生省より出された。
ヒト硬膜に代わる補填材としては、フッ素系樹脂からなる人工硬膜等が上市されている。しかしながら、フッ素系樹脂からなる人工硬膜は、長期間の埋設により感染による肉芽形成や難治性皮膚瘻孔を生じることがあるという報告がされていた(非特許文献2)。
これに対して、一定期間役割を果たした後は分解吸収する、生体内分解吸収性高分子からなる人工硬膜が提案されている。このような人工硬膜としては、天然高分子であるコラーゲンからなるもの(非特許文献3)やゼラチンからなるもの(非特許文献4)も試みられたが、生体硬膜と一体縫合する際に必要な縫合強度が得られない、天然由来であることから感染のリスクが残る等の種々の問題により実用に供されていなかった。
これに対して特許文献1には、生体内分解吸収性合成高分子、特にラクチド/ε−カプロラクトン共重合体からなる人工硬膜が記載されている。このような人工硬膜は、感染のリスクがほとんどないことに加え、充分な縫合強度が得られる程度の強度を有し、更に、一定期間役割を果たした後は分解することから長期埋設による弊害を防止できる。
しかしながら、人工硬膜には適用部位によって微妙な曲率に追従できるだけの高い柔軟性が求められることがあり、また、縫合後に周辺組織との間で液漏れ等が発生しないためには充分に端部が硬膜に密着する必要がある。従来の人工硬膜はこのような柔軟性の点では不充分なこともあった。
特開平8−80344号公報
脳神経外科; 21 (2)、167−170、1993
脳神経外科ジャーナル; 16 (7)、555−560、2007
Journal of Biomedical Materials Research;Vol.25 267−276, 1991
脳と神経;21, 1089−1098, 1969
しかしながら、人工硬膜には適用部位によって微妙な曲率に追従できるだけの高い柔軟性が求められることがあり、また、縫合後に周辺組織との間で液漏れ等が発生しないためには充分に端部が硬膜に密着する必要がある。従来の人工硬膜はこのような柔軟性の点では不充分なこともあった。
本発明は、高い柔軟性と縫合可能な機械的強度とを備えた生体内分解吸収性合成高分子からなる人工硬膜を提供することを目的とする。
本発明は、生体内分解吸収性合成高分子からなる多層構造を有する人工硬膜であって、ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体からなり、かつ、結晶に由来する融解エンタルピーが1〜10J/gである最外層を有し、かつ、生体内分解吸収性高分子からなる繊維構造物からなる補強層を有する人工硬膜である。
以下に本発明を詳述する。
以下に本発明を詳述する。
特許文献1に記載された人工硬膜に用いられるラクチド/ε−カプロラクトン共重合体は、本来的には極めて高い柔軟性を有するものであるが、加熱溶融してシート形状に加工した後には柔軟性が低下するという問題があった(以下、「自己硬化」ともいう)。また、ラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体の重合時においては、ラクチドとε−カプロラクトンとの反応性の相違による偏った重合を回避し高重合度の共重合体を得るためには、重合開始剤として高級アルコールを添加することが必須であるというのが技術常識であったが、高級アルコールは最終的に加工した人工硬膜中にも残留する可能性があり、その人体に対する影響が懸念されていた。
本発明者らは、鋭意検討した結果、130℃を超える高温で共重合反応を行う場合には、重合開始剤として高級アルコールを用いなくとも充分な重合度の共重合体が得られることを見出した。そして、重合開始剤として高級アルコールを用いずに130℃を超える高温で反応させて得た共重合体は、高級アルコールを含まないことから安全性が高いことに加え、加熱溶融して成形体としたときにも自己硬化が進まずに高い柔軟性を示すことを見出した。そして、更に鋭意検討の結果、このような自己硬化しない柔軟性の高いラクチド/ε−カプロラクトン共重合体からなるシートを最表層とし、更に内層として高い縫合強度を実現できる繊維構造物からなる補強層を有する人工硬膜は、高い柔軟性と縫合可能な機械的強度とを発揮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の人工硬膜は、生体内分解吸収性合成高分子からなる多層構造を有するものである。
本発明の人工硬膜は、ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体からなり、かつ、結晶に由来する融解エンタルピーが1〜10J/gである最外層を有する。
本発明の人工硬膜は、ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体からなり、かつ、結晶に由来する融解エンタルピーが1〜10J/gである最外層を有する。
上記最外層を構成するラクチド/ε−カプロラクトン共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう)は、ラクチドのモル比率の好ましい下限が40モル%、好ましい上限が60モル%である。ラクチド又はε‐カプロラクトンのモル比率がそれぞれ60モル%よりも高くなると、結晶性が高くなって硬くなり、充分な柔軟性が得られないことがある。より好ましい下限は45モル%、より好ましい上限は55モル%である。
上記最外層を構成する共重合体は、重量平均分子量の好ましい下限が100,000、好ましい上限が500,000である。100,000未満であると、充分な強度を確保できないことがあり、500,000を超えると溶融粘度が高く成形性に劣ることがある。より好ましい下限は150,000、より好ましい上限は450,000である。
上記最外層を構成する共重合体は、高級アルコール成分を含有しないことが好ましい。高級アルコール成分を含有した場合には、その濃度によっては人体への影響が懸念され、人工硬膜としての使用が困難となることがある。
上記最外層は、結晶に由来する融解エンタルピーの下限が1J/g、上限が10J/gである。1J/g未満であると、機械的強度が著しく低下してしまったり、保管時に寸法が変化してしまうことがあり、10J/gを超えると、結晶性が高くなって硬くなり、柔軟性が損なわれ、脳表を傷つけたり、縫合時に端部が浮いてしまい縫合しても周辺組織との間で液漏れ等が発生することがある。
本願明細書において、結晶に由来する融解エンタルピーとは、示差走査熱量計(DSC)により生体内分解吸収性高分子を測定した際に観測される単位重量あたりの熱量を意味し、1stスキャン時の値を意味する。この融解エンタルピーの値が大きいほど、結晶性が高いといえる。
ラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体は、重合直後においては比較的容易に融解エンタルピーを10J/g以下、即ち低結晶状態とすることができる。しかしながら、該共重合体を用いて人工硬膜を製造するためには、加熱溶融してシート状成形体を形成することが必要となる。従来のラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体では、このような加工工程を経ることにより著しく結晶に由来する融解エンタルピーが上昇(即ち、結晶化)してしまい、柔軟性が低下していた。
本発明で用いる共重合体は、加熱溶融工程を経てなお結晶に由来する融解エンタルピーが10J/g以下である、即ち、結晶に由来する融解エンタルピーの変化が極めて小さいことが特徴である。
ラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体は、重合直後においては比較的容易に融解エンタルピーを10J/g以下、即ち低結晶状態とすることができる。しかしながら、該共重合体を用いて人工硬膜を製造するためには、加熱溶融してシート状成形体を形成することが必要となる。従来のラクチドとε−カプロラクトンとの共重合体では、このような加工工程を経ることにより著しく結晶に由来する融解エンタルピーが上昇(即ち、結晶化)してしまい、柔軟性が低下していた。
本発明で用いる共重合体は、加熱溶融工程を経てなお結晶に由来する融解エンタルピーが10J/g以下である、即ち、結晶に由来する融解エンタルピーの変化が極めて小さいことが特徴である。
上記最外層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は800μmである。50μm未満であると、人工硬膜全体としての厚さが不充分となり、強度が不足したり、液漏れを生じたりすることがあり、800μmを超えると、人工硬膜全体としての厚さが厚すぎて柔軟性が損なわれることがある。より好ましい下限は100μm、より好ましい上限は300μmである。
本発明で用いるラクチド/ε−カプロラクトン共重合体は、従来公知のラクチドとε‐カプロラクトンとの共重合時において、1)重合開始剤として高級アルコールを添加しない、2)反応温度を130℃を超える温度とする、ことにより得ることができる。
高級アルコールを添加しないことにより、得られる共重合体を確実に高級アルコール成分を含有しないものとすることができる。従来の技術常識では、高級アルコールは必須成分と考えられていたが、反応温度を130℃を超える温度とすることにより、不都合は発生しない。更に、反応温度を130℃を超える温度とすることにより、結晶に由来する融解エンタルピーの変化が極めて小さい樹脂とすることができる。一方、反応温度が140℃以上になると、ほとんど結晶性が失われ極めて柔軟となる一方、得られるシートの機械的強度が著しく低下してしまったり、保管時に寸法が変化してしまうことがある。
高級アルコールを添加しないことにより、得られる共重合体を確実に高級アルコール成分を含有しないものとすることができる。従来の技術常識では、高級アルコールは必須成分と考えられていたが、反応温度を130℃を超える温度とすることにより、不都合は発生しない。更に、反応温度を130℃を超える温度とすることにより、結晶に由来する融解エンタルピーの変化が極めて小さい樹脂とすることができる。一方、反応温度が140℃以上になると、ほとんど結晶性が失われ極めて柔軟となる一方、得られるシートの機械的強度が著しく低下してしまったり、保管時に寸法が変化してしまうことがある。
ラクチドとε‐カプロラクトンは開環に必要な活性化エネルギーが大きく異なり、ラクチドの方がε‐カプロラクトンよりも開環に要する活性化エネルギーが低い。即ち、低温で重合するほどラクチドが先に重合しラクチドの連鎖長が長くなり結晶性が高くなる。一方、重合温度が高くなるほどラクチド及びε‐カプロラクトンの連鎖長が短く各モノマーがランダムに分子鎖内で配列することとなり結晶性を低下させることができる。反応温度を130℃を超える温度とすることにより、得られる共重合体の結晶性を低下させ、かつ、加熱溶融等の加工工程を経ても大きくは結晶化が進まないようにすることができる。
上記ラクチドとε‐カプロラクトンとの共重合においては、重合触媒としてスズ、亜鉛、鉄、ニッケル、アルミニウム、カリウム、ナトリウム、チタン、アンチモン、ビスマス等の有機金属化合物又はこれらの塩を用いてもよい。なかでも、使用実績及び重合時の扱いの容易性の点からスズ化合物が好ましく、オクチル酸スズが反応速度及び安定性の点からより好ましい。
人工硬膜用途に用いるためには、人体に有害な金属化合物をできる限り含有しないことが好ましい。例えばオクチル酸スズは生体に対する毒性が比較的低いことが知られているが、特に1ppm未満であればその影響は極めて小さいと考えられる。
上記ラクチドとε‐カプロラクトンとの共重合において重合触媒を用いる場合には、重合後に共重合体から金属触媒を除去することが好ましい。
上記ラクチドとε‐カプロラクトンとの共重合において重合触媒を用いる場合には、重合後に共重合体から金属触媒を除去することが好ましい。
上記金属触媒の除去方法としては特に限定されないが、例えば、触媒除去剤を用いる方法が簡便であり、かつ、効果的である。
上記触媒除去剤としては、有機酸とアルコールとから構成されるものが好適であり、なかでも有機酸として酢酸、アルコールとしてはイソプロパノールから構成されるものが安全性及び回収の容易さから好適である。ここで、有機酸とアルコールとの組成比は共重合体を溶解させない範囲で有機酸の割合が高いほうが効果的な触媒除去を可能とする。
具体的には、例えば、酢酸/イソプロパノール=15/85〜35/65(体積比)であるものが好適である。酢酸の濃度が15体積%未満であると、1ppm以下にまで触媒を除去できないことがあり、35体積%を超えると、共重合体が溶解してしまい回収が困難となることがある。
上記触媒除去剤としては、有機酸とアルコールとから構成されるものが好適であり、なかでも有機酸として酢酸、アルコールとしてはイソプロパノールから構成されるものが安全性及び回収の容易さから好適である。ここで、有機酸とアルコールとの組成比は共重合体を溶解させない範囲で有機酸の割合が高いほうが効果的な触媒除去を可能とする。
具体的には、例えば、酢酸/イソプロパノール=15/85〜35/65(体積比)であるものが好適である。酢酸の濃度が15体積%未満であると、1ppm以下にまで触媒を除去できないことがあり、35体積%を超えると、共重合体が溶解してしまい回収が困難となることがある。
本発明の人工硬膜は、生体内分解吸収性高分子からなる繊維構造物からなる補強層を有する。上記補強層は、多層構造の内層の1つを構成するものであって、本発明の人工硬膜に高い縫合強度を付与するものである。また、縫合時に針穴の拡張を抑える効果があり、これにより針穴からの液漏れを効果的に防止することができる。
上記補強層を構成する生体内分解吸収性高分子としては特に限定されないが、上記最外層に用いるラクチド/ε−カプロラクトン共重合体よりも融点が高く、同じ溶媒に溶解しないものが好適である。また、透明な高分子を選択した場合には、人工硬膜全体としての透明性を確保でき、補填操作中、又は、補填後に人工硬膜を通して内部の状況が観察でき、トラブルを早期に発見することもできる。
このような生体内分解吸収性高分子としては、例えば、ポリグリコリド、グリコリド/ε−カプロラクトン共重合体、ラクチド/グリコリド共重合体、ラクチド/グリコリド/ε−カプロラクトン共重合体、ポリジオキサノン等が挙げられる。
このような生体内分解吸収性高分子としては、例えば、ポリグリコリド、グリコリド/ε−カプロラクトン共重合体、ラクチド/グリコリド共重合体、ラクチド/グリコリド/ε−カプロラクトン共重合体、ポリジオキサノン等が挙げられる。
上記繊維構造物としては特に限定されないが、例えば、布、織物、編物、ウェブ、レース、フェルト、不織布等が挙げられる。
上記補強層の目付け量としては特に限定されないが、好ましい下限は15g/m2、好ましい上限は45g/m2である。15g/m2未満であると、充分な補強効果が得られないことがあり、45g/m2を超えると、人工硬膜全体としての柔軟性が損なわれることがある。より好ましい下限は20g/m2、より好ましい上限は40g/m2である。
上記補強層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は200μmである。50μm未満であると、充分な補強効果が得られないことがあり、200μmを超えると、人工硬膜全体としての柔軟性が損なわれることがある。より好ましい下限は80μm、より好ましい上限は120μmである。
本発明の人工硬膜は、上記最表層、補強層のほかに、例えば、針穴からの髄液漏を抑止するための伸縮層や、湿潤状態を保つための親水性ゲル層等の層を有してしてもよい。
本発明の人工硬膜は、ASTM D 1894に準ずる方法により測定した表面の静止摩擦係数の好ましい下限が1.5、好ましい上限が10である。1.5未満であると、縫合操作時に滑りやすくなり脳表を傷つける可能性があり、10を超えると、人工硬膜同士が密着したときに剥がすのが困難となり、操作性が劣ることがある。
本発明の人工硬膜は、KESシステムに準ずる方法により測定した曲げ硬さの好ましい下限が0.1gf・cm2/cm、好ましい上限が1.0gf・cm2/cmである。0.1gf・cm2/cm未満であると、自重で容易に折れ曲がってしまい、操作性が劣ることがあり、1.0gf・cm2/cmを超えると、補填する組織部位の起伏に人工硬膜が追従せず、補填組織周辺部を傷つけたり、液漏れしないように縫合するのが困難となることがある。
本発明の人工硬膜は、JIS K 7113に準ずる方法により測定した引張破断強度の好ましい下限が5MPa、好ましい上限が15MPaである。5MPa未満であると、縫合時に容易に破断したり、脳圧に耐えられない等の不都合が生じることがあり、15MPaを超えると、縫合時の破断の危険性は回避されるが、人工硬膜自体が硬い特性を有することになり脳表および組織を傷つける危険性が増す。
本発明の人工硬膜は、JIS K 7113に準ずる方法により測定した10%伸張時の弾性率の好ましい下限が10MPa、好ましい上限が20MPaである。10MPa未満であると、伸張時に縫合部位の変形が大きくなり髄液漏れの危険性が高くなることがあり、20MPaを超えると、硬くなり伸張し難く、縫合時に組織を傷つけることがある。
本発明の人工硬膜を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、別々に作製した上記最表層、補強層を、加熱しながら真空プレスすることにより一体化させる方法等が挙げられる。
上記最表層を構成するシートは、例えば、上記ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を押出し機により溶融成形することにより調製することができる。
上記補強層を構成する繊維構造物は、例えば、原料となる生体内分解吸収性合成高分子を押出し機を用いてメルトブローする方法等により調製することができる。
上記最表層を構成するシートは、例えば、上記ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を押出し機により溶融成形することにより調製することができる。
上記補強層を構成する繊維構造物は、例えば、原料となる生体内分解吸収性合成高分子を押出し機を用いてメルトブローする方法等により調製することができる。
本発明によれば、高い柔軟性と縫合可能な機械的強度とを備えた生体内分解吸収性合成高分子からなる人工硬膜を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
(1)ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体の合成
L−ラクチド1440g、ε−カプロラクトン1140g、2−エチルヘキサン酸スズ300ppmをセパラブルフラスコに入れ、減圧後窒素雰囲気下において135℃、7日間重合した。
得られたラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を酢酸のイソプロパノール溶液(酢酸/イソプロパノール=30/70v/v)で処理し、40℃で真空下乾燥した。
得られた共重合体は、重量平均分子量320,000(GPCにより測定)、金属含有量0.5ppm未満(IPC発光分光分析により定量)であった。
(1)ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体の合成
L−ラクチド1440g、ε−カプロラクトン1140g、2−エチルヘキサン酸スズ300ppmをセパラブルフラスコに入れ、減圧後窒素雰囲気下において135℃、7日間重合した。
得られたラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を酢酸のイソプロパノール溶液(酢酸/イソプロパノール=30/70v/v)で処理し、40℃で真空下乾燥した。
得られた共重合体は、重量平均分子量320,000(GPCにより測定)、金属含有量0.5ppm未満(IPC発光分光分析により定量)であった。
(2)最表層用シートの調製
得られた共重合体を押出し機により溶融成形して厚さ100μmのシートを得た。
得られたシートから8mgのサンプルを切り出し、DSC測定(DSC昇温速度10℃/min)を行い、シートの結晶部に由来する融解エンタルピーを測定した。
得られた共重合体を押出し機により溶融成形して厚さ100μmのシートを得た。
得られたシートから8mgのサンプルを切り出し、DSC測定(DSC昇温速度10℃/min)を行い、シートの結晶部に由来する融解エンタルピーを測定した。
(3)繊維構造物の調製
ポリグリコール酸(固有粘度1.8)を押出し機を用いたメルトブロー法により溶融成形し、目付け量が30g/m2の不織布を調製した。
ポリグリコール酸(固有粘度1.8)を押出し機を用いたメルトブロー法により溶融成形し、目付け量が30g/m2の不織布を調製した。
(4)人工硬膜の製造
得られたポリグリコール酸不織布の両側に共重合体からなるシートを積層し、150℃、100kg/cm2の条件で真空プレスすることにより一体化させて、3層構造の人工硬膜(厚さ約200μm)を得た。
得られたポリグリコール酸不織布の両側に共重合体からなるシートを積層し、150℃、100kg/cm2の条件で真空プレスすることにより一体化させて、3層構造の人工硬膜(厚さ約200μm)を得た。
(比較例1)
L−ラクチド1440g、ε−カプロラクトン1140g、2−エチルヘキサン酸スズ300ppmをセパラブルフラスコに入れ、減圧後窒素雰囲気下において140℃、7日間重合した。
得られたラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を酢酸のイソプロパノール溶液(酢酸/イソプロパノール=30/70v/v)で処理し、40℃で真空下乾燥した。
得られた共重合体は、重量平均分子量300,000(GPCにより測定)、金属含有量0.5ppm未満(IPC発光分光分析により定量)であった。
得られた共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、人工硬膜を製造した。
L−ラクチド1440g、ε−カプロラクトン1140g、2−エチルヘキサン酸スズ300ppmをセパラブルフラスコに入れ、減圧後窒素雰囲気下において140℃、7日間重合した。
得られたラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を酢酸のイソプロパノール溶液(酢酸/イソプロパノール=30/70v/v)で処理し、40℃で真空下乾燥した。
得られた共重合体は、重量平均分子量300,000(GPCにより測定)、金属含有量0.5ppm未満(IPC発光分光分析により定量)であった。
得られた共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、人工硬膜を製造した。
(比較例2)
L−ラクチド1440g、ε−カプロラクトン1140g、2−エチルヘキサン酸スズ300ppmをセパラブルフラスコに入れ、減圧後窒素雰囲気下において130℃、7日間重合した。
得られたラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を酢酸のイソプロパノール溶液(酢酸/イソプロパノール=30/70v/v)で処理し、40℃で真空下乾燥した。
得られた共重合体は、重量平均分子量350,000(GPCにより測定)、金属含有量0.5ppm未満(IPC発光分光分析により定量)であった。
得られた共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、人工硬膜を製造した。
L−ラクチド1440g、ε−カプロラクトン1140g、2−エチルヘキサン酸スズ300ppmをセパラブルフラスコに入れ、減圧後窒素雰囲気下において130℃、7日間重合した。
得られたラクチド/ε−カプロラクトン共重合体を酢酸のイソプロパノール溶液(酢酸/イソプロパノール=30/70v/v)で処理し、40℃で真空下乾燥した。
得られた共重合体は、重量平均分子量350,000(GPCにより測定)、金属含有量0.5ppm未満(IPC発光分光分析により定量)であった。
得られた共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、人工硬膜を製造した。
(評価)
実施例1、比較例1、2で製造した人工硬膜について、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
実施例1、比較例1、2で製造した人工硬膜について、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
(1)静止摩擦係数の測定
人工硬膜の表面について、ASTM D 1894に準拠する方法により、摩擦係数測定機(新東科学社製:HEIDON−14DR)を用いて静止摩擦係数の測定を行った。
人工硬膜の表面について、ASTM D 1894に準拠する方法により、摩擦係数測定機(新東科学社製:HEIDON−14DR)を用いて静止摩擦係数の測定を行った。
(2)KES−曲げ試験
人工硬膜をそれぞれ50mm×100mmの試験片に切断し、純曲げ試験機(KES−FB2)を用いて曲げ硬さを測定した。
人工硬膜をそれぞれ50mm×100mmの試験片に切断し、純曲げ試験機(KES−FB2)を用いて曲げ硬さを測定した。
(3)引張試験
人工硬膜をそれぞれ10mm×80mmの試験片に切断し、チャック間距離40mm、引張速度50mm/minで引張試験を行い、引張破断強度及び10%伸張時の弾性率を測定した。
人工硬膜をそれぞれ10mm×80mmの試験片に切断し、チャック間距離40mm、引張速度50mm/minで引張試験を行い、引張破断強度及び10%伸張時の弾性率を測定した。
これに対して、比較例1で製造した人工硬膜では、最表層の結晶に由来する融解エンタルピーが観測されず(即ち、1J/g未満)であり、曲げ硬さ、10%伸張時弾性率が共に低下して実施例1で製造したものよりも柔軟な特性を有しているものの、表面の静止摩擦係数が高く操作性が悪く。また、引張破断強度も生体硬膜より低くなり要求される物性を満足しない。
比較例2で製造された人工硬膜では、最表層の結晶に由来する融解エンタルピーが19.4と実施例1のものと比較して高く、結晶性が高いことがわかる。この場合、人工硬膜全体として非常に硬くなってしまい、人工硬膜として所望される物性を満足しない。
本発明によれば、高い柔軟性と縫合可能な機械的強度とを備えた生体内分解吸収性合成高分子からなる人工硬膜を提供することができる。
Claims (2)
- 生体内分解吸収性合成高分子からなる多層構造を有する人工硬膜であって、
ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体からなり、かつ、結晶に由来する融解エンタルピーが1〜10J/gである最外層を有し、かつ、
生体内分解吸収性高分子からなる繊維構造物からなる補強層を有する
ことを特徴とする人工硬膜。 - ラクチド/ε−カプロラクトン共重合体は、ラクチドとε‐カプロラクトンとのモル比(ラクチド/ε‐カプロラクトン)が40/60〜60/40、重量平均分子量が100,000〜500,000以下であり、かつ、高級アルコール成分を含有しないものであることを特徴とする請求項1記載の人工硬膜。
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