本発明の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法の実施の一形態を、薄板状光学用成形品として、たとえば平面方向の対角寸法3インチ、板厚0.2〜0.3mmで均等板厚の携帯電話用サイドライト型導光板を成形する場合により、図に基づいて詳細に説明する。図において、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとする。
最初に、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法に用いる射出成形機1の構成を説明する。図1は、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法に用いる射出成形機1の正面図である。図2は、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法に用いる射出成形機1の型締装置5の一例を説明するために示した系統図である。図3は、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法に用いる成形金型11の断面図であって射出開始前の位置に可動金型12が停止された状態を示す図である。図4は、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法に用いる成形金型11の断面図であってキャビティ14内の樹脂が圧縮された状態を示す図である。図5は、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法に用いる成形金型11の断面図であってゲートカットされた状態を示す図である。図6は、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法を説明するために示したチャート図である。図7は、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法を説明するために示した可動金型12の位置と型締力の時間経過に伴なう変化を示したグラフである。図8は、本実施形態の射出プレス成形方法で成形した導光板である。図9は、板厚0.3mmの導光板を射出プレス成形した場合の射出速度と樹脂温度の関係を示すテスト結果である。図10は、板厚0.2mmの導光板を射出プレス成形した場合の射出速度と樹脂温度の関係を示すテスト結果である。図11は、射出速度と射出開始時型開量の関係を示すテスト結果である。図12は、型締開始時の昇圧時間と転写性の関係を示すテスト結果である。
図1に示されるように、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法に用いる射出成形機1は、成形材料を可塑化溶融して所定量を射出する射出装置3と、成形金型11を開閉駆動するとともに所定の圧力で型締する型締装置5とを備えている。
射出装置3は、加熱筒2a内にスクリュ(図示は省略する)が軸回りに回転可能に且つ軸方向に前進・後退移動可能に嵌挿されており、可塑化溶融された所定量の成形材料を射出するノズル2bが加熱筒2aの先端に設けられたもので、ベッド4上に配設されている。射出装置3は、図示しない計量機構の計量用サーボモータおよび射出機構の射出用サーボモータにより制御され、加熱筒2a内でのスクリュの回転速度やスクリュの後退および前進位置、スクリュの前進による成形材料の射出速度、保圧切替位置、保圧時の圧力、射出量等が制御される。なお、本実施形態ではスクリュの直径は28mmである。また、射出装置3は、上記のようにサーボモータを用いたものが好適に用いられるが、油圧機構によるものでも良い。
ベッド4上には固定盤6と受圧盤7が固定配置されており、固定盤6と受圧盤7の角隅部にはそれぞれタイバー8が配設されており、タイバー8の中間部には可動盤9が摺動可能に挿通されている。図2に示されるように、この実施の形態における型締装置5は、可動盤9を固定盤6に対して近接・遠退させるように駆動する型締シリンダ10と、この型締シリンダ10に作動油を供給してラム10aを伸長・退縮させるよう駆動する駆動装置200と、駆動装置200による型締シリンダ10への作動油の供給を制御する制御装置300とを備えている。受圧盤7には型締シリンダ10が配設され、型締シリンダ10のラム10aが可動盤9の背面に固定されている。
この実施の形態では、図2に示すように、ブースタラム式の型締装置5が採用されている。ラム10aの基端部には、型締シリンダ10内に摺動可能に嵌挿されて主型締駆動シリンダ室114aと型開き駆動シリンダ室115とを形成する鍔部10bが形成されており、また、ラム10aの基端面には、型締シリンダ10の内部に設けられたブースタラム113が挿通されるブースタシリンダラム室114bが形成されている。また、主型締駆動シリンダ室114a、ブースタシリンダラム室114b、型開き駆動シリンダ室115に作動油を送る管路には、それぞれ圧力検出器121a、121b、121cが配設され、制御装置300に接続されている。
型締シリンダ10に作動油を供給するための駆動装置200は、作動油を貯留するタンク130と、タンク130に貯留された作動油を圧送するポンプ128と、ポンプ128により圧送された作動油を一時的に貯蔵して所定の圧力で供給するためのアキュムレータ123と、アキュムレータ123から型締シリンダ10の所定のシリンダ室114a、114b、および115に作動油を切換え供給するサーボバルブ118とを備えている。
ポンプ128は、タンク130に蓄えられた作動油を吸引し加圧して作動油を吐出する。ポンプ128を回転駆動するモータ129は、交流誘導モータが好適に採用される。タンク130にはリリーフ弁125が接続されており、リリーフ弁125の制御ポート132には、制御装置300からの信号によON−OFF制御される切換弁126が接続されている。切換弁126がOFFのとき(図2に示す切換状態)は制御ポート132がタンク130と連通して制御ポート132が無圧となるので、リリーフ弁125はポンプ128の吐出する全ての作動油をタンク130に戻すこととなる。一方、切換弁126がONのときは制御ポート132は遮断され、制御ポート132は予めリリーフ弁125に手動で設定された油圧値に制御されるので、リリーフ弁125によりポンプ128の吐出する作動油が所定油圧に制限される。すなわち、切換弁126がONのときポンプ128は負荷状態となり、ポンプ128の吐出作動油の全量が、リリーフ弁125の設定圧力に到達するまで逆止弁124を通じて管路122へ流出してアキュムレータ123に蓄圧される。作動油の圧力がリリーフ弁125の設定圧力に到達したときは、余分な作動油がリリーフ弁125を通じてタンク130に戻される。
管路122にはアキュムレータ123と、型締力を検知するためのセンサを構成する圧力検出器121dと、カートリッジ弁119とが接続されている。アキュムレータ123は、ゴム袋あるいはシリンダとピストンからなり、ゴム袋あるいはシリンダ内に貯留した作動油を窒素ガスの圧力で押圧して作動油を吐出するようにしたものである。圧力検出器121は、歪ゲージや半導体によって変換された型締シリンダ10に供給される作動油の圧力の電気信号を制御装置300などへ伝送する。圧力検出器121dまたは制御装置300は、低圧と高圧の二つの設定値を有し、アキュムレータ123による圧力すなわち管路122の作動油の圧力が低圧の設定値まで降下したときに切換弁126をONにし、管路122の作動油の圧力が高圧の設定値まで上昇したときに切換弁126をOFFにするように制御する。すなわち、切換弁126がONの間はポンプ128から吐出される作動油はアキュムレータ123に蓄圧される。
カートリッジ弁119は、切換弁120により開閉制御可能な逆止弁であり切換弁120がOFFのときは閉であり、切換弁120がONのときは開となる。カートリッジ弁119の出口はサーボバルブ118の入口Pポートに接続されている。したがって、アキュムレータ123から吐出される作動油は、管路122、カートリッジ弁119およびサーボバルブ118を介して型締シリンダ10に供給される。ブースタラム113からブースタシリンダラム室114bに作動油を供給して型閉し固定金型13に可動金型12が当接したとき、切換弁116をONして主型締駆動シリンダ室114aにも作動油を供給して型締する。このとき、主型締駆動シリンダ室114aとタンク130の間に設けた逆止弁117は主型締駆動シリンダ室114aから逆方向であるから、主型締駆動シリンダ室114aの作動油は保持される。金型11内のキャビティ14への溶融樹脂の射出行程と金型へ射出された溶融樹脂の固化・冷却行程が終了した後、サーボバルブ118は主型締駆動シリンダ室114aの圧抜きを行う。そして、サーボバルブ118は型開き駆動シリンダ室115へ作動油を供給して型開きを行う。このとき、逆止弁117は強制的に開くように制御され、主型締駆動シリンダ室114aの作動油はタンク130に戻る。
型締シリンダ10による型締力は、アキュムレータ123からサーボバルブ118を介して型締シリンダ10に供給される作動油の圧力を圧力検出器121a、121bによって検知される。また、可動金型12が取付けられた可動盤9の位置(ラム10aの伸長量)は、リニアスケールなど図示しないセンサによって検知される。これらのセンサの検知結果に基づいて、型締装置5の型締シリンダ10により、成形材料の射出充填前に可動盤9を停止させる位置(すなわち型開き量)や、型締開始時期、型締時の型締速度、型締力、そして、射出装置3の成形材料を射出することによる圧力で可動盤9が後退する量などが制御される。本実施形態でにおける型締装置5は、サーボバルブ118により制御される型締シリンダ10の例を示すが、サーボモータとボールネジ機構等により作動されるトグル機構でも良い。
この実施の形態における導光板の成形金型11は、平面方向の対角寸法が3インチ、板厚がたとえば0.3mmで均等板厚の携帯電話用サイドライト型導光板を射出プレス成形によって成形するものである(以下携帯電話用サイドライト型導光板については、単に導光板Pと略す)。
図3〜図5に断面図で示すように、成形金型11は、第1の金型である可動金型12と第2の金型である固定金型13とからなり、型合わせされた両金型12,13の間には容積および厚さが可変のキャビティ14が形成されるようになっている。なお、本発明では、板厚が0.2mm〜0.7mm程度で、対角寸法が1.5〜13インチ程度(角部が丸いものを含む)の導光板Pを成形することができる。
射出成形機1の可動盤9に取付けられる可動金型12には、金型本体部15とコア部16と可動枠部19等が設けられている。金型本体部15の固定金型側の面における略中央には、コア部16が固着されている。コア部16の固定金型13と対向する面は、鏡面からなり出光面を形成するキャビティ形成面16aとなっており、導光板Pの形状に略一致した突起部等を含む略四角形をしている。またコア部16の内部には、前記キャビティ形成面16aと平行に複数本の冷却媒体流路17が形成されている。なおコア部のキャビティ形成面を形成する部分と他の部分は、別体のブロックからなるものでもよい。またキャビティ形成面16aは鏡面の例を示したが、ドット、グルーブ、ホログラム等のパターン加工や粗面加工等がなされたものでもよく、また、スタンパが取付けられたものを除外しない。
前記金型本体部15の固定金型13側の面における上下4箇所には、凹部が形成され、該凹部内にはバネ18が前記固定金型13側に向けて取付けられている。そして前記バネ18の前記固定金型13側は、前記コア部16の周囲を囲むよう配設された可動枠部19に当接されている。従って換言すれば可動枠部19によって形成された空洞部の中にコア部16が配設されている。そして可動枠部19全体が前記バネ18により金型本体部15およびコア部16に対して型開閉方向に移動可能となっている。そして可動枠部19の固定金型13と対向する面は当接面19aとなっている。図3〜4に示した実施の形態の場合、ゲートP3は、キャビティ14の下方とランナP2と間に、すなわち、成形される導光板Pの端面となる位置に形成される。また可動枠部19のゲートP3と反対側には入光面を形成するための入光面形成ブロック20が着脱自在に配設されている。なお図3は、射出開始前の位置に可動金型12が停止された状態を示す。また図4は、射出開始後にキャビティ14内の溶融樹脂(図示せず)が圧縮された状態を示す。更に図5は、ゲートカットされた状態を示す。なお、図3〜図5は、いずれもコア部16と可動枠部19の位置関係やバネの収縮等は実際より誇張して描写してある。導光板Pの入光面とは反対側の端面となる位置に設けられたゲートを介してキャビティ内に成形材料を射出することにより、光学的な特性が良好な導光板Pを成形することができる。
金型本体部15の可動盤9側には、断熱板21が取付けられ、内部の空間および孔にはエジェクタ装置のエジェクタプレート22を介して前後進される突き出しピン23が配設されている。突き出しピン23は、金型本体部15とコア部16の内部に亘って形成された孔内に配設され、その先端はランナ形成面32に臨み、スプルP1とランナP2が保持しやすいよう断面Z字状に食い込み部23aが設けている。突き出しピン23を駆動するのは、可動盤9内または可動盤9から型締シリンダ10のラム10a側に配設されたエジェクタ駆動装置である。
また金型本体部15の内部にはゲートカッタ部材24を配設するための孔25および空間部26が形成されている。一方、金型本体部15の孔25内にはガイドピン27が配設されている。ガイドピン27は、孔25内に当接状態に設けられたボールガイド28により支持されており、ガイドピン27の前後進時には、ボールガイド28のボールが転動してガイドピン27を保芯しながら移動されるようになっている。そして金型本体部15の空間部26内には前記ガイドピン27が当接されるように円盤状のプレート29が配設されている。そして前記プレート29における固定盤6側中央にはゲートカッタ部材24が可動盤9側から挿入され係合されている。ゲートカッタ部材24は、長方形の薄板からなり、コア部16の断面矩形の孔31内に前後進移動可能に配設されている。前記ゲートカッタ部材24の前面(先端面)はゲート形成面であり、そのキャビティ側(図中上側)の角部が溶融状態のゲートを切断するためのゲートカッタ24bとなっている。そして図5に示されるように、前記ゲートカッタ部材24におけるキャビティ側の側面の一部は、ゲートカット後にキャビティ形成面を構成する。またゲートカッタ部材24の基部24dは円柱形をしており、前記基部24dの周囲にはプレート29およびゲートカッタ部材24を可動盤9側に付勢するようにバネ30が前記空間部26内に配設されている。本実施形態では前記ゲートカッタ部材24は、ロックウエルCスケール硬度が55〜65HRCのハイス鋼等の硬質金属部材を使用している。またゲートカッタ部材24の寸法は、溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅が10〜20mm、溶融樹脂の流動方向の厚みが1.2〜2.0mm程度とすることが、本実施形態の大きさの導光板Pを成形する場合に望ましい。
またゲートカッタ部材24を駆動するのは、可動盤9内または可動盤9からラム10a側に配設されたゲートカッタ駆動装置である。ゲートカッタ駆動装置は、サーボバルブにより制御される油圧シリンダ、またはサーボモータとボールネジ機構が用いられる。サーボバルブにより制御される油圧シリンダの場合は、速度制御または圧力制御によりゲートカッタ部材24の前進時のクローズドループ制御を行う。またゲートカッタ駆動装置をサーボモータとする場合は、ゲートカッタ部材24の位置制御または速度制御が行われる。またゲートカッタ部材24の前進停止位置は、可動金型12内にストッパブロックまたはシムを配設し、そのストッパブロック等を厚さの異なるストッパブロック等に交換することにより調整してもよい。
またコア部16において、後述する固定金型13のスプルブッシュ44やインサートブロック43と対向する面は、ランナ形成面32となっている。そして前記ランナ形成面32とキャビティ形成面16aの間に、ゲートカッタ部材24が進退する矩形の孔31が形成され、前記孔31とゲートカッタ部材24との間隙は、いずれも樹脂が入り込まない間隔に形成されている。またランナ形成面32については、ゲートカッタ部材24から突き出しピン23側に隣接する部分に、凸部が形成され、スプルブッシュ44と対向し突き出しピン23が臨む部分が凹部となっている。そしてゲートカッタ部材24のゲート形成面は、突出時以外においては、前記凸部よりも低い位置(可動盤9側)に位置している。その理由は射出時に、射出装置3のノズル2bの通路先端で固まった樹脂がコールドスラグウエル状となっている凹部によって受け止められることによりキャビティ14へ流入しないためと、射出圧がゲートカッタ部材24の前面にかかり過ぎ、孔31との間にバリ等が発生することを防止するためである。なおランナとゲートは直線的にキャビティに接続されるものでもよい。
また突き出しピン23の周囲であってゲートカッタ部材24の近傍には冷却媒体流路33が形成されている。そして離型時にエアが吹出されるエア通路34が、コア部16と可動枠部19の間に形成されている。なおエア通路34は、ゲートカッタ部材24と孔31の間にも設けてもよい。なお導光板PとスプルP1等を一体のままスプルを把持して取出す際には、ゲートカッタ部材24は不要であり、ゲートカッタ部材24は本発明において必須のものではない。
次に固定金型13について説明すると、図3〜図5に示されるように、射出成形機1の固定盤6に取付けられる固定金型13には、金型本体部41、キャビティ形成ブロック42、インサートブロック43、スプルブッシュ44、ゲートカッタ部材45、当接ブロック46等から形成されている。そして金型本体部41の固定盤6側には、断熱板47が取付けられるとともに、射出装置3のノズル2b(図1を参照)が挿入される穴48が形成され、その周囲にはロケートリング49が取付けられている。金型本体部41の可動金型12側にはキャビティ形成ブロック42が取付けられ、該キャビティ形成ブロック42の可動金型12と対向する面は、キャビティ形成面42aとなっている。本実施形態においてこのキャビティ形成面42aは、導光板Pの反射面を形成する部分であり、微細なドットが刻設されている。またキャビティ形成ブロック42の内部には、前記キャビティ形成面42aと平行に、冷却媒体流路50が複数形成されている。またキャビティ形成ブロック42およびインサートブロック43と、当接ブロック46との間には、離型時にエアを噴出するためのエア通路53が形成されている。
更に金型本体部41には、キャビティ形成ブロック42とともにインサートブロック43が配設されている。インサートブロック43は、その中央部に可動盤9側に向けて拡径された孔が設けられたスプルブッシュ44が配設されている。そしてスプルブッシュ44の周囲にはスプルP1およびランナP2を冷却する冷却媒体流路51が形成されている。また、図3〜図5に示されるように、スプルブッシュ44の先端からキャビティ形成面に向けて、インサートブロック43の可動金型12と対向する面には、ランナ形成面54が形成されている。そして前記ランナ形成面54は、当接ブロック46の当接面46aに溝状に一段低い位置(固定盤6側の位置)に形成され、当接ブロック46のランナ形成面と共に固定金型13側のランナP2を形成する面を構成する。そしてランナ形成面54の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、スプルブッシュ44に隣接する部分からキャビティ14に向けて徐々に広くなっている。そしてランナ形成面54についても可動金型12のランナ形成面32と等間隔を保つように、凹部に対向して凸部が形成され、凸部に対向して凹部が形成されている。
そしてランナ形成面54の凹部の部分は、ゲート形成面へ連続する同一面で接続されている。従ってランナP2とゲートP3やその形成面に明確な区別がある訳ではない。前記連続する同一面のうち可動金型12のゲートカッタ部材24のゲート形成面と対向する部分が、固定金型ゲート形成面を形成する部分となる。また当接ブロック46のランナ形成面に連続してゲート形成面が形成されている。そして前記ゲート形成面は、後述するキャビティ形成面42aおよびゲートカッタ部材45や、前記凸部に対して一段低い位置(固定盤側の位置)に設けられている。そしてゲート形成面の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、スプルP1の直径よりも幅広に設けられている。従って本実施形態のゲートP3は、フィルムゲートの一種であって、導光板Pの側面(入光面とは反対側の側面)の長さの2/3〜1/4程度の長さ(幅)となっている。
そしてインサートブロック43のランナ形成面54に接続されるゲート形成面と、キャビティ形成ブロック42のキャビティ形成面42aとの間には、ゲートカッタ部材45が固定されている。ゲートカッタ部材45は、ロックウエルCスケール硬度が55〜63HRCの合金工具鋼(SKD鋼)等の硬質金属部材からなる長方形の薄板であり、キャビティ形成面42aを形成する部材よりも前記硬度が高い金属が使用されている。そしてゲートカッタ部材45の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、ゲート形成面と同じか僅かに幅広に形成されている。またゲートカッタ部材45の厚みは、0.4〜0.8mm程度である。そしてゲートカッタ部材45の前面(先端面)は、キャビティ形成面16aと対向しており、キャビティ形成面の一部となっている。またゲートカッタ部材45のゲート部側の角部が刃であるゲートカッタ45bを形成している。またゲート部側の面は可動金型12のゲートカッタ部材24が前進時に僅かな間隔を隔てて対向する面となっている。従って本実施形態のゲート形成面の距離は、固定金型13と可動金型12のキャビティ14の距離と同様に可動金型12の進退により可変であり、更にはゲートカッタ部材24の前後進によっても可変である。
次に、以上のように構成された射出成形機を用いて平面方向の対角寸法3インチ、板厚0.2〜0.7mmのうちの任意の均等板厚の導光板Pを成形する場合により、本実施形態の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法を説明する。
本発明の薄板状光学用成形品の射出プレス成形方法は、概略、金型11を所定量型開きした状態でキャビティ14内に成形材料を射出して充填するとともに、型締装置5により型締してキャビティ14内に射出された成形材料を圧縮する射出プレス成形して、薄板状光学用成形品を成形するためのものであって、成形材料の圧縮開始から設定された型締力に到達するまでの昇圧時間と、前記射出開始時の型開きの量とから設定される型締速度で型締するものである。
図6は、平面方向の対角寸法3インチ、板厚0.3mmの均等板厚の導光板Pを成形する場合における本実施形態の射出プレス成形方法の概略を示したチャート図であり、図7は型締装置5による可動金型12の固定金型13に対する型開き量の変化と型締圧力の変化を示すグラフである。
図6に示すように、本実施形態では平面方向の対角寸法3インチ(面積約27cm2)、板厚0.3mmの均等板厚の導光板Pを4.2秒の成形サイクル時間で成形している。その内訳は、型開閉時間(型開時間、取出時間、型閉時間を含む)1.4秒と、射出・保圧および型締のための合計時間2.8秒とである。このため本実施形態では、可動金型12のキャビティ形成面16aを冷却する冷却媒体流路17、突き出しピン23およびランナ形成面32近傍を冷却する冷却媒体流路33、固定金型13のキャビティ形成面42aを冷却する冷却媒体流路50、スプルブッシュ44近傍およびランナ形成面54近傍を冷却する冷却媒体流路51へ、温調器により、成形される樹脂であるポリカーボネートのガラス転移温度Tgより30〜70℃低い、80〜120℃程度に温度制御された冷却媒体(冷却水)を流している。
また射出装置3の加熱筒2aの前部ゾーン(最もノズル2bに近いゾーン)は360℃に温度設定され、成形材料としてポリカーボネートの溶融樹脂が計量されている。そして型締シリンダ10が作動され、固定盤6に取付けられた固定金型13に対して可動盤9に取付けられた可動金型12を近接移動させる。そして、図示しないリニアスケールなどのセンサによって可動金型12が射出開始時型開量を確保した停止位置にあることを検知すると、可動金型12の移動を停止制御する。すなわち、型締開始から所定の型開き量となる位置に停止させるまでは、可動金型12の位置を検出してその結果に基づいて可動金型12の移動を制御する位置制御を行う。その際の可動盤9および可動金型12のコア部16の射出開始時の位置A(図7)は、固定金型13のキャビティ形成面42aに対する可動金型12のキャビティ形成面16aの距離が成形される導光板Pの板厚に所定の型開き量を加算した位置に停止制御される。この可動盤9および可動金型12のコア部16が射出開始時の位置Aに停止されている時には、型締装置5の型締シリンダ10により可動盤9および可動金型12のコア部16の位置が成形材料の射出圧力を受けることによって後退しないか(後退量0mm)、または後退量が最大でも0.05mmまでとなるように、主型締駆動シリンダ室114aおよびブースタシリンダラム室114bに封じ込まれた作動油によりラム10aを前進させる力と、型開き駆動シリンダ室115に封じ込まれた作動油によりラム10aを後退させる力とが均衡するように、圧力検出器121a、121b、121c、およびサーボバルブ118と制御装置300とにより制御される。
なお、この際に、一旦コア部16を最前進位置(導光板板厚よりも更に固定金型13側)まで前進させ、バネ18を収縮させて可動枠部19と金型本体部15が当接される型閉完了位置(0位置)まで可動盤9等を前進させてから、再び型締シリンダ10により可動盤9等を微量後退させ、図3における射出開始時の位置Aに位置制御して停止させるようにしてもよい。そのことにより成形完了位置より型開方向の位置に可動金型12のコア部16を停止させることができる。
また、射出開始前にキャビティ14内を減圧状態としてもよい。射出開始前にキャビティ14内を減圧状態とした場合には、射出の際に溶融樹脂がキャビティ14内で空気の抵抗を受けずに速やかに入光面形成ブロック20側の端部まで流動可能となるため、特に0.2〜0.3mmの板厚の薄い導光板Pを成形する際に有効である。さらにまた、同様の目的のために、キャビティ14内を減圧せずに、射出開始時にパーティング面をわずかに開きキャビティ14内の空気が抜けやすくしてもよい。
次に所定の射出遅延時間が経過すると、射出装置3の図示しない射出機構を作動させ、加熱筒2a内のスクリュを前進させて溶融樹脂の射出を行う。本実施形態では、射出速度は200〜550mm/sec程度に、好ましくはピークにおいて300〜400mm/secとなるよう設定され、射出装置3の図示しない射出用サーボモータによりスクリュの前進速度が制御される。従来の技術では、充填不足の対策として射出速度が600〜1000mm/secに設定されていたのに対して、本発明ではこのように比較的低い射出速度でキャビティ14内に射出充填できるので、成形される導光板Pのゲート近傍の内部応力を小さくすることができる。なお図8に示すのが本実施形態の射出プレス成形方法で成形した導光板Pである。また図13に示すのが従来の方法により成形された導光板でありゲート近傍の内部応力が大きくなっている。
図9に示されるのは、板厚0.3mm、対角寸法3インチの導光板Pを成形する際、射出開始時型開量(射出開始時における可動金型12の停止位置)を導光板Pの板厚分からプラス0.3mm型開きした状態で射出プレス成形した場合における、射出速度と樹脂温度の関係を示すテスト結果である。そして図9において、樹脂温度とは加熱筒2aの前部ゾーンの設定温度を示している。そして射出速度は、設定射出速度を示している。またテストを通じて使用された樹脂は、ポリカーボネート(出光興産のタフロンLC1500:分子量10,000〜12,000)である。テストによれば、樹脂温度が330℃の場合は、いずれの射出速度の場合でも充填不足による板の欠損や板厚ムラ(ゲートから遠い部分ほど薄い)が発生した。また樹脂温度340℃では射出速度300mm/sec以下の場合、樹脂温度350℃、360℃では射出速度200mm/sec以下の場合、樹脂温度370℃、380℃では射出速度150mm/sec以下の場合にそれぞれ充填不足による不良が発生した。また樹脂温度390℃以上では、いずれの射出速度の場合でも樹脂が劣化して黄変が発生した。また340〜380℃範囲であっても射出速度が600mm/secとした場合には射出速度が速すぎてせん断発熱による樹脂の黄変またはバリ等が発生し、内部応力の分布も好ましくなかった。これに対して、樹脂温度が340〜380℃では射出速度350〜550mm/sec、樹脂温度350〜380℃では射出速度300〜550mm/sec、樹脂温度370〜380℃では射出速度200〜550mm/secで良品を成形することができることが知見された。従って板厚0.3mm、対角寸法3インチの導光板Pの射出プレス方法による成形は、射出速度200〜550mm/sec(望ましくは300〜450mm/sec、さらに望ましくは300〜400mm/sec)、樹脂温度(加熱筒2aの前部の設定温度)350〜380℃で成形することが好ましい。なお、射出速度が400mm/secを超えて550mm/secまでの範囲でも成形が可能であるが、射出装置が大型化する上にエネルギー効率の点でも無駄がある。なお、成形する導光板Pの板厚が0.3mmの場合、射出速度を200mm/secとすると、キャビティ内の溶融樹脂の流動性を確保するために樹脂温度(加熱筒2aの前部の設定温度)を370〜380℃にしないと良品の成形はできない。従って、射出速度200mm/secで成形できる対角寸法3インチの導光板Pの板厚としては、0.3mmが限界である。
そして樹脂温度はできればあまり上げすぎない方が、バリ、光学特性、経済性の点から望ましい。なおこの条件については、板厚0.3〜0.7mmの導光板でも同様に成形可能である。またキャビティ14を冷却する冷却媒体流路17、50へ送られる冷却媒体の温度は、110℃に設定されている。前記冷却媒体の温度が高いほうがキャビティ14内の溶融樹脂の流動は良好であるが、成形サイクルが長くなるという問題がある。
次に図10に示されるのは、板厚0.2mm、対角寸法3インチの導光板Pを成形する際、射出開始時型開量(射出開始時における可動金型の停止位置)を板厚分からプラス0.3mm型開きした状態で射出プレス成形した場合における、射出速度と樹脂温度の関係を示すテスト結果である。テストによれば、樹脂温度が350℃の場合は、いずれの射出速度の場合でも充填不足による板の欠損や板厚ムラ(ゲートから遠い部分ほど薄い)が発生した。また樹脂温度360〜380℃でも、射出速度200mm/sec以下の場合、それぞれ充填不足による不良が発生した。その理由としては、板厚が0.3mm未満の場合には、キャビティ内で溶融樹脂が冷却固化して形成されるスキン層以外の流動可能な断面積がわずかとなるので、キャビティ末端までの溶融樹脂が流動し難くなるからである。そして、その対策として射出前にキャビティの間隔を広げておくことは有効であるが、板厚が0.3mm未満のものではその効果に限界がある。その理由は、板厚が0.3mm未満のものは、溶融樹脂の射出充填量自体が少なく、型締装置によりキャビティ内の溶融樹脂が圧縮されてキャビティ端部付近まで溶融樹脂が送られた際にはキャビティの間隔は成形品の板厚近くまで狭められており、キャビティ端部までキャビティの間隔を拡げた状態で溶融樹脂が射出充填できる訳ではないからである。また樹脂温度390℃以上では、いずれの射出速度の場合でも樹脂が劣化して黄変が発生した。また360〜380℃であっても射出速度が600mm/secとした場合にはせん断発熱による樹脂の黄変またはバリ等が発生し内部応力の分布も好ましくなかった。従って板厚0.2mm、対角寸法3インチの導光板Pの射出プレス方法による成形は、射出速度300〜550mm/sec、加熱筒2aの前部ゾーンの設定温度が360〜380℃の場合には、良品を成形することができることが知見された。そして、特に板厚が0.2〜0.3mm未満の場合は、射出速度は350〜550mm/secとすることがより望ましい。また、キャビティを冷却する冷却媒体流路17、50へ送られる冷却媒体の温度は100〜120℃と高めに設定することが溶融樹脂の流動を促進する意味でより一層望ましい。そして、溶融樹脂の温度を上昇させ、射出速度を速くすると、金型のコア部16と可動枠部19の間の間隙部などにバリが発生し易くなる。そのため、板厚が0.2〜0.3mm未満の場合には、特に前記間隙部の間隙を5〜10μmとして、後処理が必要となるようなバリの発生を防止することがより一層望ましい。
次に図11に示されるのは、板厚0.3mm、対角寸法3インチの導光板Pを樹脂温度(加熱筒前部の設定温度)360℃として射出プレス成形した場合の、射出速度と射出開始時型開量(射出開始時における可動金型の停止位置)の関係についてのテスト結果である。本テストによれば、射出開始時型開量が0.1mmの場合には、いずれの射出速度においても充填不足が発生し、また、0.6mm以上の場合にはいずれの射出速度においても射出された樹脂が完全に潰せなかったり、縞模様が残るプレスマークと呼ばれる不良が発生した。従って、本実施形態では、成形される導光板Pの板厚は0.3mmであり、良品が成形できた最小の射出開始時型開き量である0.2mmの前記板厚0.3mmに対する比率は、66.7%である。また、プレスマークが発生せずに良品が成形できた最大の射出開始時型開き量0.5mmの前記板厚0.3mmに対する比率は、166.7%であった。
また、導光板Pに対して必要とされる射出開始時型開き量は、導光板Pの板厚が0.2〜0.7mmの間では、いずれもほとんど同じ射出開始時型開き量でよく、導光板Pの板厚と射出開始時型開き量とは比例しないことが判明した(ただし、対角寸法5〜7インチの場合は、板厚0.3mmより薄いものを除く。また、対角寸法7インチ以上の場合は板厚0.5mmより薄いものを除く。)。そして、対角寸法5〜7インチ、板厚0.3〜0.5mmのものでは、上記の対角寸法3インチ、板厚0.2mmの導光板の成形条件と同様に、射出速度を350〜550mm/sec.樹脂温度(加熱筒2aの前部の設定温度)360〜380℃で成形することがより好ましい。
その理由は、板厚が比較的薄いものは、キャビティ形成面にスキン層が形成されることにより溶融樹脂の流動可能なキャビティの断面積が小さくなってしまうので、板厚に対して射出開始時型開き量をより高い比率にする必要があるからである。一方、板厚が比較的厚いものは、スキン層が形成されても、キャビティの端部まで比較的容易に射出充填できるので、射出開始時型開き量はさほど求められないからである。また、板厚が比較的薄い導光板Pに対して射出開始時型開き量を大きくした場合ほど、射出量自体が少ないので、射出開始後の型締開始のタイミングを速くする必要がある。このように従来技術では想定できない比率(広い間隔)に射出開始時型開量を設定し、射出中または射出後に急速に型閉および昇圧することにより板厚が0.2mm〜0.7mmと極めて薄い導光板Pであっても比較的遅い射出速度で射出充填して成形することが可能となるのである。
そして射出がなされた際に、前記のように型締力は停止位置からの後退量が0〜最大で0.05mmまでに留まるように位置制御により保持されている。これにより設定された型開き量が維持されるので、光学的な特性が良好な導光板を成形することができる。射出後(射出完了と略同時)または射出完了直前に、型締装置5側では型締装置5の型締シリンダ10を作動させ、可動盤9および可動金型12を型閉方向へ移動させる。このことにより可動枠部19に対してコア部16が相対的に前進され、キャビティ14の固定金型13のキャビティ形成面42aに対する可動金型12のキャビティ形成面16aの距離が短くなるので、キャビティ14内の溶融樹脂が圧縮される。この実施の形態では、図6および図7に示されるように、射出機構のスクリュが全前進行程に対する位置で80〜100%、好ましくは85〜95%に到達したときに型締シリンダ10を作動させて圧縮を開始する。これにより、成形材料のキャビティ内への射出と、キャビティ内の成形材料の圧縮とを適切に行うことができ、したがって、比較的薄い導光板Pを、歩留りがよく、光学的な特性が良好に成形することができる。この際には、圧力検出器121a、121b、および121c(図2)によって型締シリンダ10に供給される作動油の圧力を型締シリンダ10による型締力として検知しており、その検知結果に基づいて型締シリンダ10は圧力制御されており、設定130kN(1個取りの金型に換算した場合)となるよう作動油の供給圧力が制御される。なおこの値はキャビティ14内の成形材料である樹脂に及ぼされる圧力の換算では、25〜80MPa、より好ましくは35〜60MPaとなるよう型締力が制御されている。そして前記圧力が80MPaを超えると、成形される導光板にバリが発生しやすくなる。
図12は型締により設定圧力まで昇圧される昇圧時間(図7のBを参照)と転写性との関係を示したものである。たとえば板厚が0.3mm、対角寸法3インチの導光板Pを射出開始時型開き量0.3mm、樹脂温度(加熱筒前部の設定温度)360℃、キャビティ温度110℃で昇圧した場合、0.040秒以上の時間では、転写不足が発生した。そして、0.035秒では良好な転写成形が可能であった。そして、この昇圧時間は短い方が好ましいが、本実施形態の型締装置5では昇圧時間を0.020秒とするのが限界であった。なお、昇圧時間とは、所定の型開き量で型締めを開始してから型締力が設定された値に達するまでにかかる時間を意味する。
ここで、射出開始時の型開き量が設定可能な範囲の下限である0.2mmのとき、昇圧時間が0.020秒の場合には
0.2mm÷0.020sec=10mm/sec(型締速度1)
また、射出開始時の型開き量が同様に0.2mmのとき、昇圧時間が0.035秒の場合には
0.2mm÷0.035sec=5.7mm/sec(型締速度2)
となる。つまり、射出開始時の型開き量が0.2mmのとき、型締速度は5.7〜10mm/secに設定することができる。ただし昇圧時間は、速い方が光学製品に対する転写性の関係から望ましく、0.020秒から0.025秒とすることがより望ましい。そして昇圧時間を0.025秒とした場合は、
0.2mm÷0.025sec=8mm/sec(型締速度3)
となる。従って、板厚0.3mmの導光板Pを射出開始時型開き量0.2mmとして成形する場合は、型締速度は、8〜10mm/secに設定することが望ましい。
一方、射出開始時の型開き量が設定可能な上限である0.5mmのとき、昇圧時間が0.020秒の場合には
0.5mm÷0.020sec=25mm/sec(型締速度4)
また、射出開始時の型開き量が同様に0.5mmのとき、昇圧時間が0.035秒の場合には
0.5mm÷0.035sec=14.3mm/sec(型締速度5)
となる。つまり、射出開始時の型開き量が0.5mmのとき、型締速度は14.3〜25mm/secに設定することが望ましい。
したがって、本実施の形態では、型開き量が下限の0.2mmのときの5.7mm/sec(型締速度2)から型開き量が上限の0.5mmのときの25mm/sec(型締速度4)の範囲が望ましい。しかしながら、あまりに型締速度が速いと、プレスマークと呼ばれる圧縮時にできる不良が出やすいので、型締速度は20mm/sec(型締速度6)に留めておくことが望ましい。また、型締速度が20mm/secを超えると、金型のコア部16と可動枠部19の間の間隙部などにバリが発生しやすくなる。そのために、より一層精密な金型を製造することが必要となる。従って、本発明により行われる型締速度は、8mm/sec(型締速度3)から20mm/sec(型締速度6)の範囲とすることが最も望ましい。
また、可動金型12が射出開始時の型開き量をたとえば0.3mmとした場合、かかる型開き量を移動した際に、ほぼ設定130kNまで急速に昇圧される。なお、型締装置5は、サーボモータを用いた機構よりもアキュームレータを用いた型締シリンダ10を用いた機構の方が、略同一スケールの場合では、立上がりが速く、高速の型締速度を達成することができる。そして本実施形態の対角寸法3インチの導光板Pの成形の1個取りの例では、130kNで型締が行われ、2個取の金型の場合でも、150〜400kNで型締が行われる。なお場合によっては射出中ではなく、射出開始と同時または射出後に型締を開始するようにしてもよい。本実施形態では、型締装置5の作動開始時から圧力制御による型締が行われるが、サーボモータを型締機構に用いる場合などには所定型締力(または検出樹脂圧)となるまで位置制御により可動盤を移動させ、その後圧力制御に変更するようにしてもよい。
射出装置3によりスクリュ位置が所定の保圧切換位置に到達すると、射出制御から圧力制御による保圧制御に切換えられる。なお保圧は5〜20MPa(樹脂圧)が望ましいが、クッション量をほとんどなくした射出および保圧が行われる。本実施形態では、保圧制御への切換えとほぼ同時に図示しないゲートカッタ部材駆動装置により、可動金型12のゲートカッタ部材24を0.45〜0.8mm前進させ、ゲートP3の切断を行う。この際、可動金型12のゲートカッタ部材24の刃であるゲートカッタ24bと固定金型13のゲートカッタ部材45の刃であるゲートカッタ45bの間でゲートP3の切断が行われる。なおゲートカットの際、ゲートP3の溶融樹脂は完全に固化した状態でないことは言うまでもない。
そしてゲートカッタ部材24によりゲートP3の切断が行われた後は、ゲートカッタ部材24は前進位置に保持される。そのことにより射出装置側からキャビティ14内の溶融樹脂へは完全に保圧が及ばなくなるが、型締装置5の型締シリンダ10の駆動によって可動金型12のコア部16が前進されることによりキャビティ14内の溶融樹脂の圧縮を行うことができるので、冷却による収縮があっても、ヒケが発生せず、良好な転写成形ができる。そしてコア部16が前進され、最終的に導光板Pの板厚B(図5を参照)の位置で前進が停止された状態となる。そしてその間に射出装置の側では次の成形に使用する溶融樹脂の計量が行われる。そして所定時間が経過すると型締力を低下させるとともに可動金型12の可動枠部19とコア部16の間のエア通路34と、固定金型13のキャビティ形成ブロック42およびインサートブロック43と、当接ブロック46との間のエア通路53等からキャビティ14へ離型用エアを及ぼす。次に型締装置を作動させ圧抜、型開を順に行う。その際、導光板Pと、スプルP1およびランナP2はそれぞれ可動金型12側に保持された状態で取出される。なお型締力はタイバセンサやトグル機構のクロスヘッド位置で検出してもよく、例えばゲートカットのタイミングで低下させるなど多段に制御してもよい。
また可動金型12が型開完了位置に停止するのとほぼ同時に、図示しない取出用ロボットが作動されるととともに、エジェクタ装置の突き出しピン23の前進が行なわれる。本実施形態に使用される取出用ロボットは、スプルP1およびランナP2の把持と、導光板Pの吸着が別個に保持可能となっている。なお前記取出時に、ゲートカッタ部材24は前進位置で停止した状態にある。本実施形態の射出プレス成形方法で成形された導光板Pは、図8に示されるように、ゲート近傍の内部応力が略均質なものであり、図13に示される従来の方法により成形された導光板がゲート近傍の内部応力が不均一なのと比較して顕著な差がある。なお本実施形態の導光板のゲートP3は、入光面になる部分ではないので、このまま仕上げ処理しないでも導光板として使用することができる。またスプルP1およびランナP2は別途リサイクルして利用することも可能である。
次に導光板Pの対角寸法および板厚と成形条件の関係について説明する。導光板Pの対角寸法および板厚と成形条件の関係は、樹脂やその成形条件によりカバーできる部分もあるので、厳密な区分はないが概略は次のものが特に望ましい。板厚が0.2mm〜0.3mm未満の導光板Pは、対角寸法1.5〜5インチまたは面積7.5cm2〜75cm2の範囲が特に望ましく、対角寸法5〜7インチ(150cm2)の導光板Pでは板厚は0.3mm〜0.5mmが特に望ましい。更に対角寸法7〜13インチでは板厚0.5〜0.7mmが特に望ましい。そして例えば7インチの導光板Pではゲートからゲートとは最遠方の角部までの距離は、約15cmであるので、大型の導光板Pほど高い射出速度や高い型締速度が要求されることになる。また大型の導光板Pほど樹脂の流動をよくするためには溶融樹脂の温度は高めであることが望ましい。また型締力については対角寸法1.5〜3インチの2個取りまたは4個取り又は、対角寸法2.5〜5インチの1個取りまたは2個取りの場合では200〜700kN、対角寸法6インチ以上の導光板Pの1個取りの場合ではそれぞれ投影面積に応じて型締力が設定される。型締力は設定最高圧までの昇圧時間が0.02秒〜0.035秒を実現できるよう決定される。従って導光板Pは、更に大型のものでも可能であるが、対角寸法1.5〜13インチ(520cm2)のものが第一義的に想定され、四隅部が円弧のものや各辺が円弧のものも含まれる。そしてその場合、導光板Pの2辺の延長線上の交わる点を対角寸法の測定基準点とする。または面積換算で7.5cm2〜520cm2の導光板Pが想定される。
導光板Pの成形サイクル時間は、次のような時間を要する。対角寸法1.5〜5インチ、板厚0.2〜0.5mmの導光板Pについては、型閉完了から射出を経て型開開始までの時間(成形時間)が2.5〜4.0秒であり、型開開始から導光板Pの取出しを経て型閉完了までの時間(型開閉時間)を0.75〜2.2秒、トータルの成形サイクル時間を6.2秒以内で行うことが可能である。また板厚0.4mm〜0.5mm、対角寸法5〜7インチの導光板Pでは、型閉から射出を経て型開までの成形時間(型開閉時間を除く)は、5〜6秒が必要となり、型開閉時間にはほとんど差がないので、トータルの成形サイクル時間は8秒以内で行うことが可能である。また対角寸法が7インチを超え、板厚が0.5mm〜0.7mmの導光板Pでは成形サイクル時間は20秒以内で行うことが可能である。
また本発明は、図14に示されるような別の実施形態の導光板の成形金型71により射出プレス成形してもよい。この別の実施形態の例は、成形金型(射出プレス成形金型)71におけるキャビティ72の数を2に増やしたことが主な変更であるが、キャビティ72の数は複数であれば個数は問わない。可動金型73において、金型本体部74にはキャビティ形成面75aが形成されるコア部75が固定されている。また金型本体部74には可動枠部76がバネ82により取付けられ、前記コア部75に対して可動枠部76が相対的に移動可能に設けられている。また可動金型73にはゲートカッタ部材77が配設されている。また可動金型73の略中央には、突き出しピンが内蔵されたランナ形成部材83が可動ゲートカッタ部材77に隣接して配設されている。なおランナ形成部材については、可動枠部と一体に設け、ランナおよびゲートの間隔が一定であるようにしてもよく、その場合、ランナおよびゲートの間隔を導光板の板厚よりも厚くしておくことが望ましい。一方固定金型78においては、キャビティ形成面80aが形成されるキャビティ形成ブロック80の周囲に当接ブロック81が配設され、可動枠部76と当接ブロック81が当接され、キャビティ72が形成されるようになっている。そしてキャビティ72の固定金型78のキャビティ形成面80aに対する可動金型73のキャビティ形成面75aの距離が型当接後に可変となるように設けられ、キャビティ72内の溶融樹脂が圧縮可能となっている。
更に本発明は、図15に示されるような更に別の実施形態の導光板の成形金型91により射出プレス成形してもよい。この成形金型91は、所謂インロー金型と呼ばれるものである。具体的には可動金型92の金型本体部93には、前面にキャビティ形成面94a、側面に嵌合面が形成されたキャビティ形成ブロック94が固定されている。また金型本体部93にはエジェクタの突き出しピン等が配設されるランナ形成ブロック95が固着されており、ランナ形成ブロック95の側面も嵌合面となっている。そして前記キャビティ形成ブロック94とランナ形成ブロック95により凸部が形成されている。
一方固定金型96は、金型本体部97の固定盤側にノズル当接部98が設けられ、ホットランナのマニホールドブロック99に接続されている。そして前記マニホールドブロック99は、ホットランナノズル100に接続され、ホットランナノズル100内にはシリンダ101により開閉作動されるバルブゲート102が配設されている。またホットランナノズル100の周囲にはランナ形成ブロック103が配設されている。そして金型本体部97の可動金型92側の略中央には、キャビティ形成面104aを形成するキャビティ形成ブロック104が固定されている。また金型本体部97の可動金型92側における周辺部には枠形成ブロック105が前記キャビティ形成ブロック104を取囲むように固定されている。そして前記枠形成ブロック105の可動金型92側の内側は、キャビティ側面形成面105aとなっている。そして前記キャビティ形成ブロック104のキャビティ形成面104aと枠形成ブロック105のキャビティ側面形成面105aとにより凹部が形成されている。
そして前記固定金型96の凹部に可動金型92の凸部を嵌合しても、嵌合面とキャビティ側面形成面105aは溶融樹脂が漏れない僅かな間隙となっており、両金型92,96の間にキャビティ106が形成される。そして固定金型96の枠形成ブロック105と可動金型92の金型本体部93が当接しない状態で、固定金型96のキャビティ形成面104aと可動金型92のキャビティ形成面94aの間の距離およびキャビティ106の容積が可変となっている。
従って射出プレス成形の際には、まず最初に前記固定金型96のキャビティ形成面104aに対する可動金型92のキャビティ形成面94aの間隔が、成形される導光板Pの板厚に0.2〜0.5mmを加算した位置となるよう可動金型92を停止させ、それから射出開始するとともにキャビティ106内の溶融樹脂を圧縮する。これにより、板厚0.2〜0.7mm、対角寸法1.5〜13インチの導光板を光学的な特性が良好に成形することが可能である。
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本実施形態では対角寸法3インチの携帯電話用の導光板の成形金型(射出プレス成形金型)について説明したが、導光板の形状や種類を選ばない。従って板厚が均厚な導光板でも、板厚が入光面側から他側に向けて薄くなる楔型導光板であってもよい。楔型導光板は、入光面以外の部分にゲートが形成され、薄肉部の板厚が上記の0.2〜0.7mmであるものが本発明の射出プレス成形方法に含まれる。また背面から入光され前面に出光するバックライト型導光板(光拡散板を含む)や外光を反射するものでもよい。また反射面と出光面の形状も鏡面、ドット、グルーブ、およびホログラム等各種の組合せが考えられる。更には入光および出光を伴うレンズやその他の光学薄板を本発明で行うことも想定される。いずれにしても、少なくとも一方が転写面であるものがより本発明の射出プレス成形方法に有効である。
上記実施形態では固定のゲートカッタが設けられる一方の金型は、固定金型であり、可動のゲートカッタが設けられる他方の金型が可動金型の例で説明したが、反対でもよい。即ち、固定金型に可動ゲートカッタを配設し、可動金型に固定ゲートカッタを配設してもよい。また導光板の成形金型(射出プレス成形金型)は、ゲートカットを行わないものでもよい。そして導光板の取出も可動金型に保持されるものが一般的ではあるが、固定金型側に保持されるものでもよい。また本実施形態では水平方向に型開閉が行われる射出成形機に取付けられる成形金型(射出プレス成形金型)について説明したが、垂直方向に型開閉が行われるものでもよい。
更に上記実施形態では射出成形機の型締装置により固定金型のキャビティ形成面と可動金型のキャビティ形成面の距離を変更して溶融樹脂を圧縮するものについて説明したが、可動盤または可動金型内に射出プレス用の油圧シリンダを設け、該油圧シリンダによりコア部を移動させて溶融樹脂を圧縮させるものでもよい。
更に成形に使用される成形材料である樹脂については、ポリカーボネートの例について記載したが、光学性能と流動性に優れた樹脂なら他の樹脂でもよく、例としては、メタクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂などが挙げられる。そして樹脂により溶融樹脂の温度およびガラス転移温度が相違するから、ゲートカットのタイミング、冷却媒体の温度、および成形サイクル時間等も相違することは言うまでもない。
上述したように、射出プレス成形は、射出開始前に固定金型13のキャビティ形成面42aと可動金型12のキャビティ形成面16aとの距離が導光板Pの板厚Bに所定量を加算した値となる位置A(射出開始時型開量が一定に確保された位置)で可動金型12を停止させ、射出開始後(射出中または射出後)にキャビティ14内の溶融樹脂を圧縮して成形を行う方法である。射出プレス成形は、成形完了時に対してキャビティ14およびゲートが僅かに開いた状態で射出を行うので流動損失が少ない。従って超高速な射出能力を有する射出装置が必要なく、溶融樹脂を比較的低速・低圧で射出することができる。また上記によりゲートの断面積が大きく射出速度が遅いことから、型締装置による昇圧時間を短くでき、板厚が薄い導光板PをゲートP3近傍の残留応力を極力小さくして成形することが可能である。そしてその結果、成形後の反りが極めて少なく、輝度バランスが優れた導光板を成形することができる。更には高速射出時のようなシルバーや焼けの問題が解消でき、スプルやランナも断面積が小さいものを使用できるので、冷却時間が短縮できるという利点がある。更にまた射出開始後(射出中または射出後)に可動金型12を型締方向に移動させて溶融樹脂に圧縮を加えることから、キャビティ14のゲート部から遠い位置において溶融樹脂の流れを速くし充填不足をなくすとともに、微細な転写を良好に行うことができるという利点もある。そしてまたゲートP3を切断した後については、通常の射出成形金型では、射出装置から保圧を及ぼすことはできないが、射出プレス成形の場合は、キャビティ14内の溶融樹脂を圧縮して冷却固化による収縮に対応することができる。なお射出プレス成形に用いられる成形金型11は、型締完了位置から射出によりキャビティ14が僅かに開き再び圧縮される射出圧縮成形方法にも用いることができる。