JP2009109209A - 非特異結合を抑えた高密度機能性粒子 - Google Patents

非特異結合を抑えた高密度機能性粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】標的物質の分離に好ましく、かつ、非特異結合が生じにくい粒子を提供すること。
【解決手段】 標的物質が結合できる粒子であって、標的物質を結合させることが可能な物質または官能基が粒子本体の表面に固定化されており、粒子の比表面積が0.0005m/g〜1.0m/gであって、粒子の密度が9.0(9.0を除く)〜23g/cmであり、粒子本体が金属または合金を含んで成ることを特徴とする粒子。
【選択図】なし

Description

本発明は、標的物質が結合できる実質的に金属または合金から成る高密度粒子であって、標的物質以外の物質の結合が抑えられた高密度粒子に関する。
細胞、蛋白質、核酸または化学物質等の標的物質の定量、分離、精製および分析等の生化学用途に利用される機能材としては、特定の標的物質と特異的に結合または反応する複合粒子が従来より知られている(特許文献1参照)。かかる複合粒子は、一般的に磁性を帯びており、例えば非磁性のビーズ中に磁性体を含ませることによって形成される。標的物質の分離に際しては、まず、標的物質が含まれる試料中に複合粒子を供し、攪拌などを行って複合粒子の表面に標的物質を結合させる。次いで、磁場の印加により複合粒子を移動させて集合・凝集させ、その後、集合・凝集した複合粒子を回収することによって、複合粒子に結合した標的物質を回収している。このような磁場または磁気を用いた手法(以下では「磁気分離法」または単に「磁気分離」とも呼ぶ)は、遠心分離法、カラム分離法または電気泳動法などの手法に比べて、少量の試料に対しても実施することが可能であり、また、標的物質を変性させずに短時間で実施できる特徴を有している。しかしながら、用いる複合粒子の密度が1.0g/cm〜3.4g/cmと小さいので、効率的に凝集させる点では、かかる複合粒子は決して好ましいものではなかった。このように複合粒子の密度が比較的小さい理由は、密度の低い樹脂やシリカを母材とし、その内部に磁性粉材料を分散させて複合粒子化しているからである。つまり、複合粒子の密度は磁性粉材料の量に依存することになるところ、磁化量から計算すると磁性粉材料の含率は高々20重量%程度にすぎず、複合粒子の密度は母材の低い材料密度に近い値となっている。
一方、密度の大きいジルコニア粒子を使用している例が特許文献2に記載されているものの、特許文献2に記載されているジルコニア粒子は、三次元内部貫通ネットワーク(即ち、貫通孔)を持つ多孔質から成るものであり、標的物質の分離に際して非特異結合が生じやすい。即ち、標的物質以外の物質が粒子に結合しやすく、所望の標的物質だけを粒子に結合させて分離することが困難であるという問題が懸念される。更に、特許文献2に記載されているジルコニア粒子は、多孔質であるために、かかる粒子を、標的物質を含んだ試料に供する際に空気などの気体が粒子内に取り込まれてしまう。その結果、取り込んだ気体の浮力などが作用して試料中で粒子を移動・凝集させにくくなり、標的物質の分離にとっては好ましくない(即ち、標的物質の分離に要する時間が長くなってしまう)。
また、従来技術においては、粒子の密度が極端に大きいと、標的物質を粒子に結合させる際に行う攪拌(例えば、容器内で攪拌翼を用いて行う攪拌)に要する操作および時間などの点で好ましくないと考えられていたため、標的物質の定量、分離、精製および分析等の生化学用途に対して「密度が極端に大きい粒子」を用いることは通常考えられていた。
尚、上記用途に用いられる金属酸化物粒子は存在するものの、実質的に金属から成る粒子を用いる例は少ない。主に用いられている金属酸化物粒子の粒径は数μm以下であり、このサイズで金属を粒子化すると場合によっては急激な酸化が発生し、発熱、発火の原因となる。このため、実質的に金属から成る粒子は安全上の理由から用いられることは少ない。
特開平4−501956号公報 特開平9−503989号公報
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものである。つまり、本発明の課題は、標的物質の分離に好ましく、かつ、非特異結合が生じにくい金属または合金から成る粒子を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、標的物質が結合できる粒子であって、
「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」が粒子本体の表面に固定化されており、
粒子の比表面積が0.0005m/g〜1.0m/gであり、粒子の密度が9.0(9.0を除く)〜23g/cmであり、
粒子本体が金属または合金を含んで成ることを特徴とする粒子を提供する。
本発明の粒子は、その表面に、「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」が固定化されている。換言すれば、「標的物質と結合する物質または官能基」が粒子本体に固定化されている。従って、標的物質と粒子とを共存させると、標的物質が粒子に結合することができるので、標的物質の分離、精製または抽出などの種々の用途に対して本発明の粒子を用いることができ、更にはテーラーメード医療技術の用途に対しても本発明の粒子を用いることができる。ここで、「標的物質」とは、分離のみならず、抽出、定量、精製または分析などの種々の対象になり得る物質を実質的に意味しており、粒子に直接的または間接的に結合できるものであれば、いずれの種類の物質であってもかまわない。具体的な標的物質としては、例えば、核酸、蛋白質(例えばアビジンおよびビオチン化HRPなども含む)、糖、脂質、ペプチド、細胞、真菌、細菌、酵母、ウィルス、糖脂質、糖蛋白質、錯体、無機物、ベクター、低分子化合物、高分子化合物、抗体または抗原等を挙げることができる。本発明の粒子は、このように種々の標的物質の分離、精製、抽出もしくは分析に用いることができる点で、種々の機能を奏するものといえる。従って、本発明の粒子は「機能性粒子」と呼ぶことができる。
本明細書において「粒子本体が金属または合金を含んで成る」とは、「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」が固定化されている粒子本体が金属または合金から成る態様を実質的に意味しているものの、その粒子本体の表層部が自然酸化もしくは耐蝕性の向上などの理由により酸化もしくは何らかの表面処理が行われているような態様も含んでいる。
本発明の粒子は、密度が9.0g/cm(9.0g/cmを除く)〜23g/cmであり、標的物質の分離に一般的に用いられる粒子よりも密度(または比重)が相当に大きいという特徴を有している。また、本発明の粒子は、粒子本体に貫通孔が実質的に形成されておらず、多孔質の形態でないという特徴も有している。このため、一般的に、粒子の比表面積が0.0005m/g〜1.0m/gと比較的小さくなっている。ここで「粒子本体に貫通孔が実質的に形成されていない」とは、粒子本体が実質的に中実であり、粒子が内部貫通ネットワーク構造を有さないことを意味している。即ち、本明細書にいう「粒子本体に貫通孔が実質的に形成されていない」または「粒子本体が貫通孔を有さない」とは、「粒子本体または粒子本体コア部が中実である」、「粒子表面が凹凸状になっていても、凹部が粒子内部にまで存在しない」、及び「一般的な多孔質粒子と比べた場合、かさ密度がより大きいこと」と同義である。
本発明の粒子は、密度が9.0g/cm(9.0g/cmを除く)〜23g/cmとなっており、従来技術の粒子と比べて密度が相当に大きいだけでなく、貫通孔を有しておらず、比表面積が0.0005m/g〜1.0m/gと比較的小さくなっている。従って、本発明の粒子は、遠心分離法および磁気分離法を用いなくても、粒子の自然沈降による移動速度だけで十分な分離速度が得られる効果を有している。換言すれば、本発明の粒子は、密度のみならず比表面積の点でも自然沈降に好ましい粒子となっている。「比表面積」に関して説明すると、比表面積が大きい多孔質粒子の場合には、粒子内部に間隙部が多いので、標的物質を含んだ試料に粒子を供する際に空気などの気体が粒子内部に取り込まれた状態となり、結果的に、取り込んだ気体の浮力などが作用して沈降速度が遅くなり得るが、本発明の粒子は、貫通孔を有しておらず、比表面積が0.0005m/g〜1.0m/gと実質的に非多孔質であるために、そのような不利な気体の影響を排除することができる。ここで、本明細書に用いる「自然沈降」とは、重力の作用を受けて粒子が液体中を沈降することを指している。また、本明細書において「分離」とは、核酸、蛋白質、糖、脂質、ペプチド、細胞、真菌、細菌、酵母、ウィルス、糖脂質、糖蛋白質、錯体、無機物、ベクター、低分子化合物、高分子化合物、抗体または抗原等の標的物質を含んだ試料(例えば、ヒト又は動物の尿、血液、血清、血漿、***、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液;ヒト又は動物の臓器、毛髪、皮膚、粘膜、爪、骨、筋肉又は神経組織等の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;便懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;培養細胞又は培養組織の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;ウィルスの懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;菌体の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;土壌懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;植物の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;食品・加工食品懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;排水等)から標的物質を分離することを指しており、より具体的には、試料中に含まれる標的物質を粒子に結合させた後、標的物質が結合した粒子を移動させることによって標的物質を試料から選別することを実質的に意味している。そして、「分離速度」とは、標的物質が結合した粒子が試料中を移動する速度を実質的に指しており、自然沈降に対して用いる場合では粒子の沈降速度を実質的に意味している。分離速度が大きい場合では、試料からの標的物質の分離に要する時間が短くて済むことになる。なお、本発明の粒子が磁性を有する場合には、磁場の印加によって、分離速度を付加的に大きくできることを理解されよう。
本発明の粒子は、自然沈降させるだけでも十分な分離速度を得ることができるので、本発明の粒子を用いると複雑な機構を用いずに標的物質の分離、抽出、精製または反応などを行うシステムが構築され得る。また、本発明の粒子は、そのようなシステムの小型化またはチップ化にとっても有効となり得る。
尚、本発明に係る粒子のように密度が相当に大きい場合(即ち、従来技術の粒子と比べて密度が相当に大きい場合)であっても、複数のウェルを備えたウェルプレート(粒子は各ウェルに収容されている)に標的物質を含んだ試料を流し込むことによって、標的物質を粒子に結合させることができるので、本発明の粒子は「標的物質を粒子に結合させる操作」の点で特に問題はない。
本発明の粒子は、密度が9.0g/cm(9.0を除く)〜23g/cmと大きいだけでなく、比表面積が0.0005m/g〜1.0m/gと比較的小さく、実質的に非多孔質とみなすことができるので、標的物質以外の物質が粒子に結合する非特異結合を抑えることができる。換言すれば、粒子の非多孔質(非多孔性)に起因して、標的物質以外の物質が吸収・吸着され得る粒子細孔または粒子表面が少なく又は実質的に存在しておらず、標的物質以外の物質が粒子に結合することを抑制することができる。このように、本発明の粒子は、非特異結合を抑えることができるので、簡易な操作だけで、高効率で標的物質の精製や分離を実施することができる。
発明を実施するための形態
以下にて、本発明の粒子を詳細に説明する。
本発明の粒子は、標的物質の分離に好適な密度を有している。即ち、ヒト又は動物の尿、血液、血清、血漿、***、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液;ヒト又は動物の臓器、毛髪、皮膚、粘膜、爪、骨、筋肉又は神経組織等の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;便懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;培養細胞又は培養組織の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;ウィルスの懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;菌体の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;土壌懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;植物の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;食品・加工食品懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;排水等の試料に粒子を分散させた際に粒子の沈降速度が比較的大きく/速くなるような密度を粒子は有している。
粒子の密度が3.5g/cmよりも小さくなると、自然沈降のみによる粒子の移動速度が実用上好ましくない。密度が25g/cmよりも大きい粒子は、現存する物質の密度を考慮すると製造が現実的に困難である。従って、本発明の粒子の密度は、好ましくは3.5g/cm以上かつ25g/cm以下であり、より好ましくは5.0g/cm以上かつ25g/cm以下、更に好ましくは9.0g/cmより大きくかつ25g/cm以下(例えば「10g/cm以上かつ20g/cm以下」または「11g/cm以上かつ19g/cm以下」)である。ここで、本明細書にいう「密度」とは、物質自身が占める体積だけを密度算定用の体積とする真密度を意味しており、ユアサアイオニクス社製真密度測定装置ウルトラピクノメーター1000を使用することによって求めることができる。
本発明の粒子の比表面積は、0.0005m/g〜1.0m/gである。ここで、本発明の粒子の比表面積は、0.0005m/g〜1.0m/gの範囲内であれば特に制限はなく、例えば「0.005m/g〜0.5m/g」、「0.001m/g〜0.2m/g」、「0.0006m/g〜0.004m/g」あるいは「0.0005m/g〜0.005m/g」であり得る。このように本発明の粒子の比表面積は比較的小さくなっている。従って、本発明の粒子は、実質的に非多孔質とみなすことができ、標的物質以外の物質が粒子に結合する可能性(即ち、「非特異結合の可能性」)が抑えられている。なお、本明細書にいう「比表面積」は、比表面積細孔分布測定装置Bellsorp−mini(日本ベル社製)を使用することによって求めた比表面積である。
本発明の粒子本体の材質は、上述のような密度および比表面積を有する粒子の製造に資するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、本発明の粒子本体は、Ag(銀)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、W(タングステン)、Rh(ロジウム)、Os(オスミウム)、Re(レニウム)、Ir(イリジウム)、Ru(ルテニウム)、Mo(モリブデン)、Hf(ハフニウム)、およびTa(タンタル)から成る群から選択される少なくとも1種類以上の遷移金属元素を含んで成る。あるいは、本発明の粒子本体は、例えば、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)およびTl(タリウム)から成る群から選択される少なくとも1種類以上の典型金属元素を含んで成る。上記遷移金属元素のなかでも、特に、Re(金属単体の密度:21.2g/cm)、Os(金属単体の密度:22.5g/cm)、Ir(金属単体の密度:22.5g/cm)、Pt(金属単体の密度:21.4g/cm)などを粒子本体の材質として用いることで、密度20g/cmを超える粒子を得ることができる。また、上記典型金属元素のなかでも、Pb(金属単体の密度:11.34g/cm)も比較的高い密度の粒子の製造に資するものである。尚、本発明の粒子本体は、かかる遷移金属元素と典型金属元素とが混在して成るものであってもかまわないことに留意されたい。
本発明の粒子は、磁性を帯びていることが好ましい(以下、磁性を帯びている本発明の粒子を「磁性粒子」とも呼ぶ)。なぜなら、粒子の自然沈降に対して磁気分離操作を補助的に行うことができるからである。その結果、粒子をより速く移動させることができ、標的物質(より具体的には「粒子に結合した標的物質」)をより短時間で分離することが可能となる。
磁性粒子の材質は、粒子が磁性を帯びることになる限り、特に限定されるものではない。例えば、粒子本体が、フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄、遷移金属および鉄を含んで成る酸化物から成る群から選択される少なくとも1種以上の鉄酸化物を含んで成ることが好ましい。あるいは、粒子本体が、ニッケル、コバルト、鉄およびそれらの金属を含んで成る合金から成る群から選択される少なくとも1種以上の金属材料を含んで成ることが好ましい。上記の「遷移金属および鉄を含んで成る酸化物」は、ガーネット構造を有するものが好ましい。このような「遷移金属および鉄を含んで成るガーネット構造の酸化物」は、一般的にYIGと呼されるものであり、例えば、YFe12の組成式で表される化合物やこの化合物のYの一部をビスマスで置換したBi3−xFe12(0<X<3)である。
磁性粒子の粒子本体は、磁性を帯びていない粒子を磁性物質で被覆することによって形成してもよい。磁性物質の被覆に際しては、無電解めっき法、電気めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法または化学蒸着法などを用いることができる。なお、ここでいう「磁性を帯びていない粒子」とは、例えば、Cu,Au等から成る粒子を意味しており、「磁性物質」としては、上述の磁性を有する粒子の材質と同様、フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄、または、遷移金属および鉄を含んで成るガーネット構造の酸化物などの鉄酸化物を挙げることができるだけでなく、ニッケル、コバルト、鉄、または、それらの金属を含んで成る合金も挙げることができる。
粒子本体表面に形成される磁性物質被膜が少なすぎると、得られる粒子の磁化の値が小さくなり、磁気分離に際して好ましくない。従って、磁性物質被膜の体積が、粒子の体積に対して5%以上であることが好ましい。磁性物質被膜の厚さは、粒子の直径に対して1.7%以上であることが好ましい。ちなみに、磁性物質被膜を「磁性を帯びていない粒子」に供する態様のみならず、「磁性を帯びていない粒子」の中に磁性物質を含ませる態様であってもよい。
粒子の磁気特性としては、例えば飽和磁化および保磁力がある。一般に、飽和磁化の値が大きいほど磁界に対する粒子の応答性が向上する。ここで、本発明のような密度が比較的大きい粒子を製造するには、磁性を帯びていない粒子の表面もしくは内部に磁性物質を持たす必要がある。この方法では磁性物質は磁性を帯びていない粒子よりも密度が小さいために、供する磁性物質の量を制限することによって必要な密度を維持しなければならず、85A・m/kgよりも大きい飽和磁化を得ることは実際には困難である。その一方、飽和磁化が0.5A・m/kgよりも小さいと磁界に対する粒子の応答性が必要以上に低下するために好ましくない。従って、本発明の粒子の飽和磁化は、好ましくは0.5A・m/kg〜85A・m/kg(0.5emu/g〜85emu/g)であり、より好ましくは3A・m/kg〜10A・m/kg(3emu/g〜10emu/g)である。また、一般に、保磁力の値が大きいほど、飽和磁化の値が大きいほど凝集する力は強くなる。しかし、大きすぎると凝集が強くなりすぎ、分散しなくなってしまう。そのため、保磁力は、好ましくは、0kA/m〜23KA/m(0〜300エルステッド)であり、より好ましくは0kA/m〜15.95kA/m(0〜200エルステッド)であり、更に好ましくは0kA/m〜7.97kA/m(0〜100エルステッド)である。
本明細書の「飽和磁化」および「保磁力」の値は、振動試料型磁力計(東英工業製、型式VSM−5)を用いて測定される値である。具体的には、「飽和磁化」は、797kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加した際の磁化量から求められる飽和磁化の値である。「保磁力」は、797kA/mの磁界を印加した後、磁界をゼロに戻し、更に、磁界を逆方向に徐々に増加させた場合において、磁化量がゼロになる印加磁界の値である。
本発明の粒子の形状は特に制限はなく、例えば、球形状、楕円体形状、粒形状、板形状、針形状または多面体形状(例えば立方体形状)等であってよい。但し、磁性を帯びていない粒子に磁性物質被膜を形成する場合には、「磁性を帯びていない粒子」が球形状または楕円体形状を有していることが好ましい。
本発明の粒子の平均サイズ(即ち「平均粒子サイズ」)は5μm〜1mmであることが好ましい。平均粒子サイズが5μmよりも小さいと、標的物質の分離に際して粒子の自然沈降による移動速度を十分に大きくすることができない一方、平均粒子サイズが1mmよりも大きいと、標的物質を結合させるよりも早く沈降してしまい、標的物質が十分に結合できなくなるからである。より好ましくは10μm〜500μmの平均粒子サイズであり、更に好ましくは20μm〜100μmの平均粒子サイズである。ここでいう「粒子サイズ」とは、粒子のあらゆる方向における長さのうち最大となる長さを実質的に意味しており、「平均粒子サイズ」とは、粒子の電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に基づいて例えば300個の粒子のサイズを測定し、その数平均として算出した粒子サイズを実質的に意味している。ちなみに、純金属から成る粒子はサイズが小さくなると、急激な酸化が生じやすく、場合によっては粒子が発火する危険性があるが、本発明のような比較的大きい粒子サイズでは、急激な酸化が生じにくく、粒子が発火する危険性は低減されている。
本発明の粒子の表面に固定化されている「標的物質を結合させることが可能な物質」(以下では「標的物質が結合可能な物質」ともいう)は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンから成る群から選択される少なくとも1種以上の物質であることが好ましい。また、本発明の粒子の表面に固定化されている「標的物質を結合させることが可能な官能基」(以下では「標的物質が結合可能な官能基」ともいう)は、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、トシル基、スクシンイミド基、マレイミド基、チオール基、チオエーテル基およびジスルフィド基などの硫化物官能基、アルデヒド基、アジド基、ヒドラジド基、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、イミドエステル基、カルボジイミド基、イソシアネート基、ヨードアセチル基、アシル基、ならびに、二重結合から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基であることが好ましい。なお、「標的物質が結合可能な官能基」は、上述した官能基の誘導体であってもかまわない。
本明細書において「固定化」とは、一般的に、粒子本体の表面付近に「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」が存在している態様を実質的に意味しており、必ずしも「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」が粒子本体の表面に直接取り付けられている態様のみを意味するものではない。なお、本明細書において「標的物質が結合」という用語は、粒子に対して標的物質が「吸着」または「吸収」される態様をも包含している。
本発明の粒子には「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」が固定化されているので、かかる物質または官能基を介して標的物質を粒子に結合させることができる。
「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化させる手法は、特に制限されるものではなく、「標的物質が結合可能な物質」を粒子に結合または付着させることができるものであれば、いずれの手法を用いてもよい。「標的物質が結合可能な物質」を粒子に直接的に結合または付着させることに限らず、必要に応じて、珪素含有物質(例えばシロキサン、シランカップリング剤およびケイ酸ナトリウムなど)、標的物質が結合もしくは付着可能な官能基を有する樹脂、または粒子表面に貴金属被着処理を施した上で標的物質が結合もしくは付着可能な官能基を有する含硫黄化合物等の他の物質または官能基を予め粒子に付着または導入し、「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化し易くしてもよい。例えば、珪素含有物質を用いた場合では、粒子の表面には「標的物質が結合可能な物質」が固定化されていると共に、かかる珪素含有物質が存在することになる。
「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化させる手法の一例を説明すると、例えば、本発明の粒子の表面にエポキシ基やアミノ基を有するシランカップリング剤を反応させることによって、「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化させる。
同様に、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子に固定化させる手法は、特に制限されるものではなく、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子に結合または付着させることができるものであれば、いずれの手法を用いてもよい。同様に、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子に直接的に結合または付着させるだけでなく、必要に応じて、珪素含有物質(例えばシロキサン、シランカップリング剤およびケイ酸ナトリウムなど)、標的物質が結合もしくは付着可能な官能基を有する樹脂、または粒子表面に貴金属被着処理を施した上で標的物質が結合もしくは付着可能な官能基を有する含硫黄化合物等の他の物質または官能基を予め粒子に付着または導入し、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子に固定化し易くしてもよい。例えば、珪素含有物質を用いた場合では、粒子の表面には「標的物質が結合可能な官能基」が固定化されていると共に、かかる珪素含有物質が存在することになる。
以下では、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子に固定化する手法の一例として、シロキサンを用いた手法を説明する。
《シロキサンを用いた官能基の固定化》
この手法は、化学蒸着法(以下では「CVD法」と略称する)によって1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(以下では「TMCTS」と略称する)で粒子表面を予め被覆する手法である。かかる手法は、TMCTS膜が粒子表面に一層だけ形成された時点で、反応を終了する特徴を有している。
(前処理工程)
まず、有機溶剤中に粒子を分散させることによって得られる分散液にTMCTSを加える。この際、粒子表面にTMCTSが1層形成されるのに充分な量のTMCTSを加える。次いで、分散液をエバポレートして分散液から溶媒を除去し、真空デシケーター中で粒子を加熱乾燥させ、その後、150℃の恒温槽中にて加熱する。用いる有機溶剤は、エバポレータで蒸発しやすい沸点の低いものであれば、いずれの種類の有機溶剤でもよく、例えば、トルエン、ヘキサンまたはベンゼン等を挙げることができる。なお、真空デシケーター内が加熱乾燥に付されると、CVD法と同じ効果がもたらされるので、加熱温度はTMCTSが蒸発し、かつ分解等起きない範囲にすることが必要となる。具体的には30〜80℃程度の加熱温度が好ましい。最後に行う恒温槽中での加熱工程は、表面に付いたTMCTS同士の反応を進める過程である。温度が高くなりすぎると、TMCTSの分解が生じやすくなると共に、長時間実施すると、引き続いて行う官能基の固定化工程で必要とされる反応点がなくなってしまうので、100〜200℃の加熱温度および2時間以内の反応時間が好ましい。なお、粒子が疎水性となることから、粒子表面にTMCTS膜が形成されたことを確認できる。
(官能基の固定化工程)
上述の前処理工程に引き続いて、官能基の固定化工程を実施する。固定化する官能基を含んだ化合物は、その末端に二重結合が存在することが必要であるが、それ以外は特に制限はない。例えば、用いる化合物において官能基と二重結合部位との間がどのような構造であってもよい。なお、官能基は一つとは限らず、複数であってもかまわない。また、複数の異なる種類の官能基を固定化してもかまわない。
例えばエポキシ基等の官能基を含む化合物が固定化される反応過程では、TMCTSに含まれるSi−Hの部分と官能基を含む化合物の二重結合部とが相互に反応して官能基が粒子表面に導入されることになる。具体的な操作としては、粒子を溶媒中に分散させ、加温状態で、反応触媒と固定化すべき官能基を持つ化合物とを添加し、数時間反応させる。用いる溶媒は、固定化すべき官能基を持つ化合物が溶解できると共に、60℃以上に加温でも安定した反応速度が得られるものであれば、いずれの種類の溶媒であってもよく、例えば、水、エチレングリコールなどが挙げられる。同様に、反応触媒も上述の反応を促進させるものであれば、いずれの種類の触媒であってもよく、例えば、塩化白金酸などを挙げることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変を施してもよい。
例えば、標的物質の分離に際して粒子への非特異結合または非特異吸着をより抑えるために、ポリエチレングリコール、正常血清、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、カゼイン及び脱脂粉乳から成る群から選択される少なくとも1種以上の物質を粒子本体の表面に付着させてもよい。付着方法としては、特に限定されるものではなく、粒子の一般的な被覆法を用いてよい。
尚、本発明の粒子の本体表面にはポリマーが被着していてもよい。この場合、その被着しているポリマー(「被着ポリマー」とも称す)の表面に「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」を固定化させることができる。これによって、「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」を粒子本体に共有結合させることが困難な場合であっても、「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」を粒子表面に固定化できる。また、粒子本体表面に固定化された「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」が、種々の使用条件下の用途において粒子本体表面から分離してしまうことが懸念される用途では、「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」を被着ポリマーに固定化させることによって粒子本体からの分離を防止することができる。更に、被着させるポリマーとして、各種分子または金属イオン等が透過しにくいポリマーを選択すると、粒子本体表面または粒子内部からの金属イオン(即ち、粒子本体の構成成分たる金属のイオン)の溶出を抑えることができ、粒子の種々の用途において金属イオン等に起因した不要な反応を抑えることもできる。ここで、被着ポリマーを例示すれば、ポリスチレンまたはその誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミンおよびポリエチレンイミンから成る群から選択される少なくとも1種以上の合成高分子化合物を挙げることができる。なお、このような合成高分子化合物に限定されず、これらの変性物または共重合体であってもかまわない。更には、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースもしくはアルギン酸ナトリウム等の半合成高分子化合物、または、キトサン、キチン、デンプン、ゼラチンもしくはアラビアゴム等の天然高分子化合物等のポリマーであってもかまわない。
粒子の分離速度および非特異結合特性を確認するために、以下に示す実施例および比較例を実施した。
《粒子の調製》
実施例1〜4および比較例1,2で用いた粒子を以下のように調製した。
(実施例1)
実施例1で調製した粒子は、アビジンが固定化されたタングステン粒子Pである。
まず、日立金属製のタングステン粒子pを用意した。かかる粒子pは、粒径100μm、比表面積0.003m/g、密度19.1g/cmであった。1gの粒子pをトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子pが疎水性を持つように変化し、粒子が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたタングステン粒子pを得た。かかる粒子pは親水性であった。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたタングステン粒子Pを得た。粒子Pの比表面積は0.003m/gであって、密度は19.1g/cm、粒子径は約100μmであった。
(実施例2)
実施例2で調製した粒子は、アビジンが固定化された鉛粒子Pである。実施例1とは原料粒子のみが異なっている。
まず、大橋鋼球製の鉛粒子pを用意した。かかる粒子pは、粒径800μm、比表面積0.00066m/g、密度11.36g/cmであった。1gの粒子pをトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子pが疎水性を持つように変化し、粒子が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された鉛粒子pを得た。かかる粒子pは親水性であった。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化された鉛粒子Pを得た。粒子Pの比表面積は0.00066m/gであって、密度は11.3g/cm、粒子径は約800μmであった。
(実施例3)
実施例3で調製した粒子は、アビジンが固定化されたタングステン粒子Pである。実施例1とは粒子の調整法が異なっている。
まず、日立金属製のタングステン粒子pを用意した。かかる粒子pは、粒径100μm、比表面積0.003m/g、密度19.1g/cmであった。10gの粒子pを純水25gに分散させ、得られる分散液を攪拌しながら、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3gを分散液に添加して更に4時間攪拌した。次いで、アセトンで粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、エポキシ基を有するタングステン粒子pを得た。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を供し、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたタングステン粒子Pを得た。粒子Pの比表面積は0.003m/gであって、密度は19.1g/cm、粒子径は約100μmであった。
(実施例4)
実施例4で調製した粒子は、アビジンが固定化されたタングステン粒子Pである。粒子Pが磁性を有している点で実施例1の粒子Pと異なっている。
まず、日立金属製のタングステン粒子pを用意した。かかる粒子pは、粒径100μm、比表面積0.003m/g、密度19.1g/cmであった。1gの粒子pを水中に分散させ、得られる分散液に対してシランカップリング剤(信越化学工業製、KBM−903)を添加することによって、粒子pの表面にシランカップリング剤を被着させた。次いで、シプレーファーイスト製Pd触媒Catalyst−6Fを加えて粒子の表面にメッキ核を生成させた。得られた粒子を1.2N塩酸を用いて洗浄した後、奥野製薬製ニッケルメッキ液トップニコロンLPHを用いて、粒子表面にてニッケルメッキ層を生成させ、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付した。これ以降は、実施例1と同様の処理を実施して、水酸基が固定化された粒子pを得た。つまり、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。その後、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたタングステン粒子pを得た。かかる粒子pは親水性であった。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を供し、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたタングステン粒子Pを得た。粒子Pの比表面積は0.003m/gであって、密度は19.1g/cm、粒子径は約100μmであった。尚、この粒子Pの飽和磁化量を測定したところ13A・m/kgであった。
ちなみに、上述の実施例には、エポキシ基を有したシランカップリング剤を用いた例が含まれているが、シランカップリング剤として、メルカプト基、二重結合を有する官能基などを有したものを用いてもよいことに留意されたい。
(比較例1)
比較例1で用いた粒子は、水酸基が固定化された架橋アクリル粒子Rである。
まず、綜研化学(株)製の架橋アクリル粒子rを用意した。かかる粒子rは、粒径30μm、比表面積0.033m/g、密度1.19g/cmであった。1gの粒子rをトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を1g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。次いで、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子rが疎水性を帯びるように変化し、粒子が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、20mgの塩化白金酸および1gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン20mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。その後、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された架橋アクリル粒子Rを得た。かかる粒子Rは親水性であった。粒子Rの比表面積は0.033m/gであって、密度は1.19g/cm、粒径は約30μmであった(粒子Rの粒径と粒子rの粒径との差は測定誤差範囲内)。
(比較例2)
比較例2で用いた粒子は、アビジンが固定化された多孔質ゼオライト粒子Rである。
まず、東ソー(株)製(HSZ−700)のゼオライトrを用意した。かかるrは、粒径18μm、比表面積170m/g、密度2.3g/cmであった。1gの粒子rをトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を2g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。次いで、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子rが疎水性に変化し、粒子が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、20mgの塩化白金酸および2gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。そして、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン20mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。その後、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された多孔質ゼオライト粒子rを得た。かかる粒子rは親水性であった。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化された多孔質ゼオライト粒子Rを得た。得られた粒子Rの比表面積は170m/gであって、密度は2.3g/cm、粒径は約18μmであった(粒子Rの粒径と粒子rの粒径との差は測定誤差範囲内)。
《粒子の分離速度の確認試験》
実施例および比較例で得られた粒子の分離速度を確認するために、以下のような試験を実施した。
まず、実施例および比較例で得られた粒子1gをそれぞれ試験管内の5mlの水に分散させて静置させた。そして、静置後から透明な上澄みが得られるまでの時間(以下「分離時間」と呼ぶ)を測定した。分離時間からは、粒子の自然沈降による移動速度(即ち、自然沈降速度)が間接的に把握できる。また、同様な操作を試験管の底付近に磁石を配置した状態で行った。結果を表1に示す。
Figure 2009109209
表1に示す結果から、以下の事項を把握することができる。
(イ)より高密度である実施例の粒子の分離時間の方が比較例の粒子の分離時間よりも相当短いことが確認された。つまり、本発明の粒子の分離速度は比較例の粒子の分離速度よりも速く、本発明の粒子を用いると、より速く標的物質を試料から分離できる。
(ロ)粒子密度が比較的近い比較例1(1.19g/cm)と比較例2(2.3g/cm)との間で自然沈降速度を比べると、比表面積が大きい比較例2の方が自然沈降速度がより遅くなっている。比較例2の原料粒子は多孔質粒子であるが、そのような比表面積が大きい多孔質粒子(即ち、内部貫通ネットワーク構造を持っている粒子)は、空隙部が多く、気体が粒子内部に存在し、沈降しにくくなったと推測される。つまり、比表面積が大きい多孔質粒子などでは分離速度が遅くなる。
(ハ)実施例1と実施例4とを比較すると、磁性を有する粒子に対しては、自然沈降に加えて磁気分離操作を補助的に行うことよって、粒子の分離速度をより速くできる。
《粒子の非特異結合特性の確認試験》
実施例1で得られたアビジンが固定化されたタングステン粒子Pおよび比較例2で得られたアビジンが固定化されたゼオライト粒子Rを用いて、粒子の非特異結合特性を確認した。ここで、タングステン粒子Pの比表面積が0.003m/gであり、ゼオライト粒子Rの比表面積が170m/gであるので、粒子Pを非多孔質粒子とみなし、粒子Rを多孔質粒子とみなすことができることに留意されたい。標的物質としては、HRPおよびビオチン化HRPの2種類の物質を用いた(両者の酵素活性は略同等である)。粒子に固定化されているアビジンは、ビオチン化HRPと特異的に結合するが、HRPとは特異的に結合しない。つまり、ビオチン化HRPは粒子に特異的(優先的)に結合し、一方、HRPは、粒子の細孔領域などに吸着され得、粒子に対しては非特異的に結合することになる。
実施例1の粒子Pおよび比較例2の粒子Rに対してはそれぞれ同様の操作を行ったため、以下では、実施例1の粒子Pに対する操作を中心に説明する。
まず、1.5mlチューブを2つ用意し、それぞれに2mgの粒子Pを仕込んだ。一方のチューブには、濃度20ng/mlのビオチン化HRPを100μl加え、もう一方のチューブには、濃度20ng/mlのHRPを100μl加えた後、ボルテックスミキサーで30分間攪拌した。その後、10mMPBS緩衝液(pH7.2)400μlで、それぞれのチューブに仕込まれた粒子Pを洗浄し遠心分離に付した。この洗浄および遠心分離を4回行った。PBS緩衝液(pH7.2)を除去した後、粒子Pが含まれるそれぞれのチューブに200μlのTMB(テトラメチルベンジジン)を加えて30分間静置させることによって、粒子Pを発色させた。次いで、1N硫酸を200μl加えて、反応を停止させた。そして、TECAN社製プレートリーダーInfinite200で吸光度(450nm)を測定することによって、それぞれのチューブに仕込まれた粒子Pの発色量を求めた。ビオチン化HRPが供された粒子Pに対する発色量およびHRPが供された粒子Pに対する発色量は、それぞれ、粒子Pに対して特異的に結合するビオチン化HRPの量および粒子Pに対して非特異的に結合するHRPの量に比例するものである。従って、非特異的に結合するHRPに対する発色量I非特異に対する特異的に結合するビオチン化HRPの発色量I特異の比(I特異/I非特異)が大きい場合では粒子の非特異結合特性がより少なく、逆に、かかる比(I特異/I非特異)が小さい場合では粒子の非特異結合特性がより大きいことになる。
同様の操作を、比較例2の粒子Rに対しても行い、粒子Rに対して特異的に結合するビオチン化HRPの発色量I特異および粒子Rに対して非特異的に結合するHRPの発色量I非特異を求めた。
結果を表2に示す。表2の結果から分かるように、実施例1の粒子Pの方が比較例2の粒子RよりもI特異/I非特異の値が大きく非特異結合が抑えられていることが分かった。つまり、比表面積が小さく実質的に非多孔質の本発明の粒子では、標的物質以外の物質が結合する非特異結合を抑えることができることを理解できよう。
Figure 2009109209
《まとめ》
以上の「粒子の分離速度の確認試験」および「粒子の非特異結合特性の確認試験」から、本発明の粒子は、自然沈降による移動速度だけでも十分な分離速度を得ることができると共に、標的物質以外の物質が結合する非特異結合を抑えることができることが分かった。
本発明の粒子は、細胞、蛋白質、核酸または化学物質等の標的物質の定量、分離、精製および分析等に利用できる。例えば、本発明の粒子は、DNA等の核酸を結合させることができ、結果的にDNAの塩基配列の解析に用いることができるので、テーラーメード医療技術に資するものである。

Claims (10)

  1. 標的物質が結合できる粒子であって、
    前記標的物質を結合させることが可能な物質または官能基が粒子本体の表面に固定化されており、
    比表面積が0.0005m/g〜1.0m/gであって、密度が9.0(9.0を除く)〜23g/cmであり、
    前記粒子本体が金属または合金を含んで成ることを特徴とする、粒子。
  2. 前記粒子が非多孔質であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子。
  3. 前記粒子本体が、遷移金属または鉛を含んで成ることを特徴とする、請求項1または2に記載の粒子。
  4. 前記粒子が、磁性を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の粒子。
  5. 前記粒子本体が、フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄、ならびに、遷移金属および鉄を含んで成る酸化物から成る群から選択される少なくとも1種以上の鉄酸化物、または、ニッケル、コバルト、鉄およびそれらの金属を含んで成る合金から成る群から選択される少なくとも1種以上の金属材料を含んで成ることを特徴とする、請求項4に記載の粒子。
  6. 飽和磁化が0.5〜85A・m/kgであることを特徴とする、請求項4または5に記載の粒子。
  7. 前記粒子の平均サイズが5μm〜1mmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の粒子。
  8. 前記標的物質を結合させることが可能な物質が、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンから成る群から選択される少なくとも1種以上の物質であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の粒子。
  9. 前記標的物質を結合させることが可能な官能基が、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、トシル基、スクシンイミド基、マレイミド基、チオール基、チオエーテル基、ジスルフィド基、アルデヒド基、アジド基、ヒドラジド基、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、イミドエステル基、カルボジイミド基、イソシアネート基、ヨードアセチル基、カルボキシル基のハロゲン置換体、および、二重結合から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の粒子。
  10. 前記粒子本体の表面に珪素含有物質および/またはポリエチレングリコールが存在することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の粒子。
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