以下では、まず、本発明の粒子について詳細に説明し、その後、本発明の分離方法について説明する。
本発明の粒子は、標的物質の分離に好適な密度を有している。即ち、ヒト又は動物の尿、血液、血清、血漿、***、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液;ヒト又は動物の臓器、毛髪、皮膚、粘膜、爪、骨、筋肉又は神経組織等の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;便懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;培養細胞又は培養組織の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;ウィルスの懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;菌体の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;土壌懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;植物の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;食品・加工食品懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;排水等の試料に粒子を分散させた際に粒子の沈降速度が比較的大きくなるような密度を粒子は有している。粒子の密度が3.5g/cm3よりも小さくなると、自然沈降のみによる粒子の移動速度が実用上好ましくない一方、粒子の密度が23g/cm3よりも大きくなると、標的物質を結合させる際に行う攪拌にとって好ましくない。従って、本発明の粒子の密度は、3.5g/cm3〜23g/cm3であり、より好ましくは5.0g/cm3〜9.0g/cm3であり、更に好ましくは、5.5g/cm3〜7.0g/cm3である。ここで、本明細書にいう「密度」とは、物質自身が占める体積だけを密度算定用の体積とする真密度を意味しており、真密度測定装置ウルトラピクノメーター1000(ユアサアイオニクス社製)を使用することによって求めることができる値である。
本発明の粒子の好ましい比表面積は、0.0005m2/g〜10m2/gであり、より好ましくは0.0005m2/g〜6m2/gであり、更に好ましくは0.002m2/g〜3m2/gであり、より更に好ましくは0.005m2/g〜1.0m2/gであり、例えば、0.01m2/g〜0.06m2/gである。従って、本発明の粒子は、実質的に非多孔質とみなすことができ、標的物質以外の物質が粒子に結合する可能性(即ち、「非特異結合の可能性」)が抑えられている。これは、標的物質の分離精度が向上することを意味している。また、本発明の粒子は、実質的に非多孔質であり、貫通孔(即ち、内部貫通ネットワーク構造)などを有していないので、標的物質を含んだ試料に粒子を供する際に空気などの気体が粒子内部に取り込まれることが抑制され、自然沈降させるだけでも十分な分離速度を得ることができる。
なお、本明細書にいう「比表面積」は、比表面積細孔分布測定装置Bellsorp−mini(日本ベル社製)を使用することによって求めた比表面積である。
本発明の粒子は、上述したように、自然沈降させるだけでも十分な分離速度を得ることができるものである。つまり、標的物質を含んだ試料中において粒子の自然沈降速度は速くなっている。
粒子本体の材質は、本発明の粒子が、上述のような密度および比表面積を有することになるのであれば、特に限定されるものではない。好ましくは、粒子本体は、金属または金属酸化物から形成されており、例えば、ジルコニア(酸化ジルコニウム、イットリウム添加酸化ジルコニウム)、酸化鉄、アルミナ、ニッケル、コバルト、鉄、銅およびアルミニウムから成る群から選択される少なくとも1種以上の材料から形成されている。また、例えば、本発明の粒子の粒子本体は、Ag(銀)、Au(金)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、W(タングステン)、Rh(ロジウム)、Os(オスミウム)、Re(レニウム)、Ir(イリジウム)、Ru(ルテニウム)、Mo(モリブデン)、Hf(ハフニウム)およびTa(タンタル)から成る群から選択される少なくとも1種類以上の遷移金属元素から形成されていてもよいし、あるいは、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)およびTl(タリウム)から成る群から選択される少なくとも1種類以上の典型金属元素から形成されていてもよい。
本発明の粒子は、磁性を帯びていることも有効である。(以下、磁性を帯びている本発明の粒子を「磁性粒子」とも呼ぶ)。なぜなら、粒子の自然沈降に対して磁気分離操作を補助的に行うことができるからである。その結果、粒子をより速く移動させることができ、標的物質(より具体的には「粒子に結合した標的物質」)をより短時間で分離することが可能となる。また、磁気で粒子を特定の部分に集めたり固定することにより、ピペッティングやデカンテーションを容易に行うことができる。
尚、粒子本体の表面に被着ポリマーを設ける場合では、被着ポリマーに磁性を付与することは通常難しいため、粒子本体に磁性を帯びたものを使用することが好ましい。
磁性粒子の本体の材質は、粒子が磁性を帯びることになる限り、特に限定されるものではない。例えば、磁性粒子の本体は、遷移金属および鉄を含んで成るガーネット構造の酸化物、フェライト、マグネタイトならびにγ−酸化鉄から成る群から選択される少なくとも1種以上の鉄酸化物から形成されることが好ましい。あるいは、磁性粒子の本体が、ニッケル、コバルト、鉄およびそれらの金属を含んで成る合金から成る群から選択される少なくとも1種以上の金属材料を含んで成るものであってもよい。ここで「遷移金属および鉄を含んで成るガーネット構造の酸化物」とは、一般的にYIGと呼称されるもので、例えば、Y3Fe5O12の組成式で表される化合物やこの化合物のYの一部をビスマスで置換したBixY3−xFe5O12(0<X<3)を挙げることができる。
別法にて、磁性粒子は、磁性を帯びていない粒子を磁性物質で被覆することによって形成してもよく、あるいは、磁性を帯びていない粒子に磁性物質を単に被着させることによって形成してもよい。磁性物質の被覆および被着に際しては、無電解めっき法、電気めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法または化学蒸着法などを用いることができる。なお、ここでいう「磁性を帯びていない粒子」とは、例えば、ジルコニア(酸化ジルコニウム、イットリウム添加酸化ジルコニウム)またはアルミナ等から成る密度の高い粒子が挙げられる。また、高密度の磁性物質の比率を高くする場合には、より密度の低い、アルミニウム、シリカ、樹脂等から成る粒子も使用できる。被覆または被着に用いる「磁性物質」としては、上述の磁性を有する粒子の材質と同様、フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄、または、遷移金属および鉄を含んで成るガーネット構造の酸化物などの鉄酸化物を挙げることができるだけでなく、ニッケル、コバルト、鉄、または、それらの金属を含んで成る合金も挙げることができる。
磁性物質を被覆または被着させることによって磁性粒子を得る場合、粒子表面に形成される磁性物質被膜の量が少なすぎると、粒子の磁化の値が小さくなり、磁気分離に際して好ましくない。従って、磁性物質被膜の体積が、粒子(磁性物質被膜を含んだ粒子)の体積に対して5%以上であることが好ましい。磁性物質被膜の厚さは、粒子(磁性物質被膜を含んだ粒子)の直径に対して1.7%以上の厚さとなることが好ましい。ちなみに、磁性物質被膜を「磁性を帯びていない粒子」に供する態様のみならず、「磁性を帯びていない粒子」の内部に磁性物質を含ませる態様も考えられる。
磁性粒子の磁気特性としては、例えば「飽和磁化」および「保磁力」がある。一般に、飽和磁化の値が大きいほど磁界に対する粒子の応答性が向上する。ここで、本発明のような密度が比較的大きい粒子に対して磁性をもたすには、磁性を帯びていない粒子の表面もしくは内部に磁性物質を供する必要がある。ここで、磁性物質は磁性を帯びていない粒子よりも密度が小さいために、供する磁性物質の量を制限することによって、必要な密度を維持しなければならない。また、粒子本体に非磁性のポリマーを被着させる場合には、磁性物質のみから粒子が成る場合よりも大きい飽和磁化を得ることは現実的に困難である。以上より、85A・m2/kgよりも大きい飽和磁化を得ることは実際には困難といえる。その一方で、飽和磁化が0.5A・m2/kgよりも小さいと磁界に対する粒子の応答性が必要以上に低下するために好ましくない。従って、本発明の粒子の飽和磁化量は、好ましくは0.5A・m2/kg〜85A・m2/kg(0.5emu/g〜85emu/g)であり、より好ましくは3A・m2/kg〜10A・m2/kg(3emu/g〜10emu/g)であり、例えば4A・m2/kg〜7A・m2/kg(4emu/g〜7emu/g)である。また、一般に、保磁力の値が大きくなると、粒子は凝集し易くなる。しかしながら、保磁力の値が大きすぎると凝集作用が強くなりすぎ、粒子が分散しなくなるので、標的物質を結合させる点で好ましくない。そのため、保磁力は、好ましくは、0kA/m〜23KA/m(0〜300エルステッド)であり、より好ましくは0kA/m〜15.95kA/m(0〜200エルステッド)であり、更に好ましくは0kA/m〜7.97kA/m(0〜100エルステッド)である。
本明細書でいう「飽和磁化」および「保磁力」の値は、振動試料型磁力計(東英工業製、型式VSM−5)を用いて測定される値である。具体的には、「飽和磁化」の値は、797kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加した際の磁化量から求められる値である。「保磁力」の値は、797kA/mの磁界を印加した後、磁界をゼロに戻し、更に、磁界を逆方向に徐々に増加させた場合において、磁化量がゼロになる印加磁界の値である。
本発明の粒子の形状は特に制限はなく、例えば、球形状、楕円体形状、粒形状、板形状、針形状または多面体形状(例えば立方体形状)等であってよい。但し、標的物質との結合に際して粒子間のバラツキを小さくするために、粒子形状は規則的な形状が望ましく、特に球形状が好ましい。また、磁性を帯びていない粒子本体に磁性物質被膜を設ける場合には、「磁性を帯びていない粒子本体」が球形状または楕円体形状を有していることが好ましい。
本発明の粒子の平均サイズ(即ち「平均粒子サイズ」)または粒径(即ち、「平均粒径」)は1μm〜1mmであることが好ましい。平均粒子サイズまたは平均粒径が1μmよりも小さいと、標的物質の分離に際して粒子の自然沈降による移動速度を十分に大きくすることが難しくなる一方、平均粒子サイズまたは平均粒径が1mmよりも大きいと、標的物質との結合が生じる前に粒子が沈降してしまい、標的物質を十分に分離できなくなる可能性があるからである。より好ましくは5μm〜500μmの平均粒子サイズまたは平均粒径であり、更に好ましくは10μm〜100μmの平均粒子サイズまたは平均粒径である。ここでいう「粒子サイズ」とは、粒子(粒子本体にポリマーを被着させる場合には、被着しているポリマーの厚さをも含めた粒子)の電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に基づいて、ピクセル個数等から求めた粒子の面積と等しい面積を有する真円の直径を実質的に意味しており、「平均粒子サイズ」(即ち、「粒子の平均サイズ」)とは、粒子の電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に基づいて例えば300個の粒子のサイズを測定し、その数平均として算出した粒子サイズを実質的に意味している。尚、純金属から成る粒子はサイズまたは粒径が小さくなると、急激な酸化が生じやすく、場合によっては粒子が発火する危険性があるが、本発明のような比較的大きい粒子サイズまたは粒径では、急激な酸化が生じにくく、粒子が発火する危険性は低減されている。
また、本発明の粒子は、単一粒子測定に用いる上で好ましい粒子サイズ分布を有しており、その意味で本発明の粒子の粒子サイズ分布は優れているといえる。即ち、本発明の粒子の粒子サイズ分布の変動係数は0.2以下(即ち0〜0.2)となっており、好ましくは0.005〜0.2であり、より好ましくは0.005〜0.1、更に好ましくは0.005〜0.05である。変動係数は、上述したように、その値がより小さいほど粒子サイズ分布がより狭く、複数個の粒子間において粒子サイズのバラツキがより少ないことを意味している一方、その値がより大きいほど粒子サイズ分布がより広く粒子サイズのバラツキがより大きいことを意味している。例えば、変動係数が0.2よりも大きくなると粒子サイズのバラツキが比較的大きくなり、上述の用途には適さなくなり得る。従って、変動係数は「0」に近いほど好ましいが、変動係数「0」は粒子サイズのバラツキが全くないことを意味しており、現実的でないことから、本発明の製造方法で現実的に達成され得る「0.005」を変動係数の下限値として規定している。尚、本明細書にいう「変動係数」は、粒子サイズ測定により得られた全データを統計処理して算出される係数であって、次式(式1)により定義される。
より具体的な態様において、「変動係数」は、CCDカメラで撮影した粒子の画像ファイルを「Image-Pro Plus(Media Cybernetics,Inc.製)」というソフトウエアで画像処理して算出された粒径に基づいて導き出される値を指している。また、変動係数の値はサンプリングする場所によって変動し得るので、本明細書において「変動係数が0.2以下」とは、任意に選出した30個の粒子に基づいた変動係数の算出処理を5回繰り返して行い、そのうちの少なくとも1回が変動係数0〜0.2に入っていることを実質的に意味している。
本発明の粒子の本体表面に固定化されている「標的物質を結合させることが可能な物質」(以下では「標的物質が結合可能な物質」ともいう)は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンから成る群から選択される少なくとも1種以上の物質であることが好ましい。また、本発明の粒子の本体表面に固定化されている「標的物質を結合させることが可能な官能基」(以下では「標的物質が結合可能な官能基」ともいう)は、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、トシル基、スクシンイミド基、マレイミド基、チオール基、チオエーテル基およびジスルフィド基などの硫化物官能基、アルデヒド基、アジド基、ヒドラジド基、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、イミドエステル基、カルボジイミド基、イソシアネート基、ヨードアセチル基、カルボキシル基のハロゲン置換体、ならびに、二重結合から成る群から選択される少なくとも1種以上の官能基であることが好ましい。なお、「標的物質が結合可能な官能基」は、上述した官能基の誘導体であってもかまわない。
本明細書において「固定化」とは、一般的に、粒子本体の表面付近に「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」が存在している態様を実質的に意味しており、必ずしも「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」が粒子本体の表面に直接取り付けられている態様のみを意味するものではない。また、「固定化」とは、粒子表面の少なくとも一部に「標的物質が結合可能な物質または官能基」が固定化されている態様を実質的に意味しており、「標的物質が結合可能な物質または官能基」が必ずしも粒子表面全体にわたって固定化されていなくてもよい。但し、好ましい態様では、粒子本体が「標的物質が結合可能な物質または官能基」に内包されるように、「標的物質が結合可能な物質または官能基」が粒子表面全体にわたって存在している。なお、本明細書において「標的物質が結合」という用語は、粒子に対して標的物質が「吸着」または「吸収」される態様を包含しているのみならず、標的物質と粒子との間に働く種々の「親和力」に起因して標的物質が粒子に結合される態様をも包含している。
本発明の粒子本体には「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」が固定化されているので、かかる物質または官能基を介して標的物質を粒子に結合させることができる。
「標的物質が結合可能な物質」を粒子本体に固定化させる手法は、特に制限されるものではなく、「標的物質が結合可能な物質」を粒子本体に結合または付着させることができるものであれば、いずれの手法を用いてもよい。「標的物質が結合可能な物質」を粒子本体に直接的に結合または付着させることに限らず、必要に応じて、珪素含有物質(例えばシロキサン、シランカップリング剤およびケイ酸ナトリウムなど)、または、標的物質が結合もしくは付着可能な官能基を有する樹脂等の他の物質を予め粒子本体に付着または導入したり、あるいは、粒子本体の表面に貴金属被着処理を施した上で標的物質が結合もしくは付着可能な官能基を有する含硫黄化合物等の他の物質を予め粒子本体に付着または導入したりすることによって、「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化させ易くしてもよい。尚、珪素含有物質を用いた場合では、粒子本体の表面には「標的物質が結合可能な物質」が固定化されていると共に、かかる珪素含有物質が存在することになる。
「標的物質が結合可能な物質」を粒子本体に固定化させる手法の一例を説明すると、例えば、粒子本体の表面にエポキシ基やアミノ基を有するシランカップリング剤を反応させることによって、「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化させることができる。
同様に、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子本体に固定化させる手法は、特に制限されるものではなく、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子に結合または付着させることができるものであれば、いずれの手法を用いてもよい。例えば、必要に応じて、「標的物質が結合可能な官能基」を化学的に処理して別の官能基に変換し、反応性や吸着性等を変更してもよい。「標的物質が結合可能な物質」と同様、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子本体に直接的に結合または付着させるだけでなく、必要に応じて、珪素含有物質(例えばシロキサン、シランカップリング剤およびケイ酸ナトリウムなど)、標的物質が結合もしくは付着可能な官能基を有する樹脂等の他の物質を予め粒子本体に付着または導入したり、あるいは、粒子本体の表面に貴金属被着処理を施した上で標的物質が結合もしくは付着可能な官能基を有する含硫黄化合物等の他の物質を予め粒子本体に付着または導入したりすることによって、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子本体に固定化させ易くしてもよい。例えば、珪素含有物質を用いた場合では、粒子本体の表面には「標的物質が結合可能な官能基」が固定化されていると共に、かかる珪素含有物質が存在することになる。
以下では、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子に固定化する手法の一例として、シロキサンを用いた手法を説明する。
《シロキサンを用いた官能基の固定化》
この手法は、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(以下では「TMCTS」と略称する)で粒子本体の表面を予め被覆する手法である。かかる手法は、TMCTS膜が粒子本体の表面に一層だけ形成された時点で、反応を終了する特徴を有している。
(前処理工程)
まず、有機溶剤中に前駆体粒子を分散させることによって得られる分散液にTMCTSを加える。この際、粒子表面にTMCTSが1層形成されるのに充分な量のTMCTSを加える。次いで、分散液をエバポレートして分散液から溶媒を除去し、真空デシケーター中で粒子を加熱乾燥させ、その後、150℃の恒温槽中にて加熱する。用いる有機溶剤は、エバポレータで蒸発しやすい沸点の低いものであれば、いずれの種類の有機溶剤でもよく、例えば、トルエン、ヘキサンまたはベンゼン等を挙げることができる。なお、真空デシケーター内部が加熱乾燥に付されると、化学蒸着法(CVD法)と同じ効果がもたらされるので、加熱温度はTMCTSが蒸発し、かつ分解等起きない範囲にすることが必要となる。具体的には30〜80℃程度の加熱温度が好ましい。最後に行う恒温槽中での加熱工程は、粒子表面に付いたTMCTS同士の反応を進める過程である。温度が高くなりすぎると、TMCTSの分解が生じやすくなると共に、長時間実施すると、引き続いて行う官能基の固定化工程で必要とされる反応点がなくなってしまうので、100〜200℃の加熱温度および2時間以内の反応時間が好ましい。なお、粒子が疎水性を帯びることから、粒子表面にTMCTS膜が形成されたことを確認できる。
(官能基の固定化工程)
上述の前処理工程に引き続いて、官能基の固定化工程を実施する。固定化する官能基を含んだ化合物は、その末端に二重結合が存在することが必要であるが、それ以外は特に制限はない。例えば、用いる化合物において官能基と二重結合部位との間がどのような構造であってもよい。なお、官能基は一つとは限らず、複数であってもかまわない。また、複数の異なる種類の官能基を固定化してもかまわない。
例えばエポキシ基またはカルボキシル基等の官能基を固定化する反応過程では、TMCTSに含まれるSi−Hの部分と、エポキシ基またはカルボキシル基等の官能基を含む化合物の二重結合部とが相互に反応して官能基が粒子表面に導入されることになる。具体的な操作としては、前処理工程で得られた粒子を溶媒中に分散させ、加温状態で、反応触媒と固定化すべき官能基を持つ化合物とを添加し、数時間反応させる。用いる溶媒は、固定化すべき官能基を持つ化合物が溶解できると共に、60℃以上に加温でも安定した反応速度が得られるものであれば、いずれの種類の溶媒であってもよく、例えば、水、エチレングリコールなどが挙げられる。同様に、反応触媒も上述の反応を促進させるものであれば、いずれの種類の触媒を用いてもよく、例えば、塩化白金酸などを用いることができる。
次に、以下では、「ポリマーが粒子本体に被着している粒子」の態様について説明する。
ある好適な態様では、ポリマーが粒子本体の表面の一部に被着しており、「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」が粒子本体および/またはポリマーの表面に固定化されている。また、別の態様では、ポリマーが粒子本体の表面全体を被覆しており、「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」がポリマーの表面に固定化されている。ポリマーが粒子本体の表面全体を被覆している場合、粒子の有する形態に基づいて、本発明の粒子を「内包粒子」または「コア−シェル構造の粒子」と呼ぶこともできる。
粒子本体表面に被着しているポリマーは、「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」の固定化に寄与するものが好ましく、「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」の種類、粒子の使用条件、その他必要な特性等により、任意に選択することができる。代表的な被着ポリマーを例示すれば、ポリスチレンまたはその誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミンおよびポリエチレンイミンから成る群から選択される少なくとも1種以上の合成高分子化合物を挙げることができる。なお、このような合成高分子化合物に限定されず、これらの変性物または共重合体であってもかまわない。更には、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースもしくはアルギン酸ナトリウム等の半合成高分子化合物、または、キトサン、キチン、デンプン、ゼラチンもしくはアラビアゴム等の天然高分子化合物等のポリマーであってもかまわない。尚、「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」が結合または付着できる官能基が予め導入されているポリマーであってもよい。
粒子表面または粒子内部からの金属イオン(即ち、粒子本体を構成している金属のイオン)の溶出を抑えることを主たる目的とする場合には、粒子本体を構成する各種分子または金属イオン等が透過しにくい被着ポリマーを選択すればよく、例えば、水系で粒子を使用する場合には、水が透過しにくいポリスチレン、ポリメタクリル酸アルキル、ポリビニルエーテルまたはポリ酢酸ビニルなどのポリマーを選択すればよい。
本明細書において「被着」とは、粒子表面の少なくとも一部にポリマーが付着または存在している態様を実質的に意味しており、ポリマーが必ずしも粒子本体の表面全体に付着または存在してなくてもよい。但し、好ましい態様では、粒子本体がポリマー被膜に内包されるように、粒子本体の表面全体がポリマーで被覆されている。粒子本体の表面全体がポリマーで被覆されていると、ポリマー表面に固定化すべき「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」をより多くすることができる点で好ましいだけでなく、粒子本体の構成材料に起因する金属イオン(即ち、粒子本体を構成する金属のイオン)等の溶出をより抑えることが可能となる点で好ましい。
ポリマーを粒子本体に被着させる手法は、特に制限されるものではなく、ポリマーを粒子本体表面に付着することができるものであれば、いずれの手法を用いてもよい。例えば、以下の手法を挙げることができる。
(1)前駆体粒子の表面から重合を開始する手法
(2)前駆体粒子の存在下で重合を行い、重合物を粒子表面に析出させる手法
(3)モノマーエマルジョン中に前駆体粒子を内包して重合を行う手法
(4)予め重合して得ておいたポリマーの溶液に前駆体粒子を混合させ、粒子表面にポリマーを析出させる手法
上記手法をより具体的に説明すると次のようになる。(1)の手法では、前駆体粒子の表面に開始剤や連鎖移動剤を結合または吸着させて、粒子表面からポリマーを伸張させることによって、前駆体粒子の表面にポリマーを被着させる。(2)の手法では、重合反応の進行とともに析出するモノマーを用いて前駆体粒子の存在下で重合を行うことによって、前駆体粒子の表面にポリマーを被着させる。ポリマーと粒子とが引き合うように各々の電荷を選択したり、粒子表面に重合性二重結合を固定しておく等によって被着をより効率的に行うことができる。(3)の手法では、モノマーエマルジョンを形成し得るモノマーと溶剤との組合せを選択し、それにより得られるモノマーエマルジョン中に前駆体粒子を内包させて重合することによって、粒子表面にポリマーを被着させる。この場合、前駆体粒子がモノマーエマルジョン中に優先的に存在するように、モノマーに馴染みをよくする表面処理や界面活性剤等を用いるとよい。また、(4)の手法では、ポリマー溶液中に前駆体粒子を混入し、貧溶剤を加えたり、pHを変化させたり、塩を多量に加えたりすることによってポリマーの溶解性を低下させて析出させることによって、前駆体粒子の表面にポリマーを被着させる。この場合も電荷の選択や重合性二重結合の固定等の手法は有効である。また、前駆体粒子を電荷の異なるポリマー溶液に交互に浸して、粒子表面に積層を形成してもよい。
尚、上述のような手法では、マイクロカプセル化手法、エマルジョン重合等の種々の方法が従来公知であり、それらを用いて実施することができる。
ポリマーの被着処理に先立って、前駆体粒子の表面に特定の処理を施してもよい。例えば、磁性化処理の他、金属もしくは無機物によるコート処理、界面活性剤の吸着処理、シランカップリング剤もしくはチタンカップリング剤等の反応性物質を用いた処理、シロキサン被覆処理およびシロキサン中のSi−Hへの官能基導入処理(ヒドロシリル化反応)、酸処理もしくはアルカリ処理、溶剤洗浄処理、または、研磨処理等を施してもよい。これらの処理により、前駆体粒子の表面の汚れの除去、前駆体粒子の表面の電荷の制御、粒子表面への反応性官能基の導入が行われるので、ポリマーの被着効率が向上したり、被着ポリマーと粒子表面との密着性が向上したりする。尚、シロキサンまたはシランカップリング剤等の珪素含有物質を用いた場合では、本発明の粒子の本体表面には「標的物質が結合可能な物質または官能基」および被着ポリマーの他に、かかる珪素含有物質が存在すること(例えば、珪素化合物が粒子本体表面と被着ポリマー表面との間に介在し得ること)になることを理解されよう。開始剤および/または重合性二重結合を前駆体粒子の表面に予め結合または吸着させて重合を行うと、被着ポリマーの表面析出が生じやすくなるので、ポリマーの被着処理に有利となり得る。その他、非特異結合の低減、金属イオン等の溶出の抑制、密度の調整、色や蛍光等の付与等、別の特性を付与するための処理を施してもよい。
被着ポリマーには架橋処理を施してもよい。被着ポリマーが架橋されると、被着ポリマーの耐久性、耐溶剤性または低膨潤性等の特性が向上し得る。架橋の方法は特に制限されないが、代表的な手法を分類すると、以下のようになる。
(1)a.前駆体粒子へのポリマー被着処理に際して架橋、b.被着処理後に架橋
(2)a.架橋剤を添加(室温や低温で進行する架橋も含む)、b.架橋性官能基をポリマー中に導入
(3)a.熱架橋、b.放射線架橋
上記手法(1)、(2)および(3)は種々に組み合わせることができることに留意されたい。例えば、(1)aかつ(2)aかつ(3)aの3つを組み合わせる例としては、前駆体粒子の表面から重合を開始したり重合物を前駆体粒子の表面に析出させたりしてポリマーを被着させる処理に際して2官能性のモノマーを含めて加熱処理を行う手法、または、モノマーエマルジョン中に前駆体粒子を内包して重合を行う処理に際して2官能性のモノマーを含めて加熱処理を行う手法を挙げることができる。また、(1)bかつ(2)aかつ(3)aの3つを組み合わせる例としては、カルボキシル基を有するポリマーの析出またはカルボキシル基を有するモノマーの重合によって前駆体粒子を被着させる系において、被着後に多官能性エポキシ架橋剤を添加し、熱を加えて架橋させる手法を挙げることができる。なお、同様の系においてカルボキシル基の代わりに水酸基、エポキシ架橋剤の代わりにイソシアネート架橋剤を用いて架橋させる手法も考えられる。(2)bに属する例としては、被着ポリマー中にエポキシ基、イソシアネート基または二重結合等を導入する手法が挙げられる。ここで、エポキシ基またはイソシアネート基の導入には(3)aを用いることができ、二重結合の導入には(3)bを用いることができる。
被着ポリマーが用いられる場合、本発明の粒子の本体表面および/または被着ポリマー表面に「標的物質が結合可能な物質」または「標的物質が結合可能な官能基」が固定化されていることを理解されよう。
粒子本体の表面に被着ポリマーを設ける態様において「標的物質が結合可能な官能基」を固定化させる手法は、特に制限されるものではなく、「標的物質が結合可能な官能基」を粒子本体に結合または付着させることができるものであれば、いずれの手法を用いてもよい。更に、「標的物質が結合可能な官能基」の固定化は、ポリマーの被着処理前、被着処理中または被着処理後のいずれに行ってもよい。
粒子本体の表面に被着ポリマーを設ける態様において「標的物質が結合可能な官能基」を固定化させる手法としては、例えば、被着すべきポリマーの重合反応に際して、「標的物質が結合可能な官能基」を有するモノマーを重合または共重合させる方法がある。この場合、「標的物質が結合可能な官能基」を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸イソシアナートアルキル、p−スチレンスルホン酸(塩)、ジメチロールプロパン酸、N−アルキルジエタノールアミン、(アミノエチルアミノ)エタノールまたはリジン等を挙げることができる。
粒子本体の表面に被着ポリマーを設ける態様において「標的物質に対する結合性がより高い官能基」を固定化したい場合には、上記手法で被着ポリマーに導入された官能基aに対して反応性を有する他の官能基bと「標的物質に対する結合性がより高い官能基c」との2つの官能基を有する化合物を、粒子に付加的に導入してもよい。この場合、官能基aと官能基bとが結合することによって、「標的物質に対する結合性がより高い官能基c」が固定化された粒子を得ることができる。また、被着ポリマー表面と「標的物質が結合可能な官能基」との間を離したい場合または粒子本体表面と「標的物質が結合可能な官能基」との間を離したい場合(即ち、「リンカー」を導入したい場合)にも同様に、導入された官能基aに対して反応性を有する他の官能基bと「標的物質が結合可能な官能基」との2つの官能基を有する化合物を、官能基aが導入された粒子に付加的に導入してもよい(この場合も同様に、官能基aと官能基bとの結合を介して「標的物質が結合可能な官能基」が粒子に固定化される)。尚、このような化合物の導入を2回以上繰り返し行って、リンカーをより長くしてもよい。被着ポリマー表面と「標的物質が結合可能な官能基」との間がより離れると、又は、粒子本体表面と「標的物質が結合可能な官能基」との間がより離れると、「標的物質が結合可能な官能基」の自由度が高まって、その反応性が向上するだけでなく、標的物質の自由度も高まって標的物質の機能が抑制されない等の有利な効果を期待できる。被着ポリマー主鎖から官能基までの原子数をリンカーの長さと定義すると、リンカーの長さは原子5個以上50個以下で上記の効果が特に期待できる。ちなみに、リンカーの主鎖としては、生態関連物質等の非特異吸着性の低いもの(例えばポリエチレングリコール鎖)を用いることが特に好ましい。
粒子本体の表面に被着ポリマーを設ける態様において「標的物質が結合可能な物質」を固定化させる手法は、特に制限されるものではなく、「標的物質が結合可能な物質」を粒子に結合または付着させることができるものであれば、いずれの手法を用いてもよい。「標的物質が結合可能な物質」の固定化も、ポリマーの被着処理前、被着処理中または被着処理後のいずれに行ってもよい。
例えば、上述の「標的物質が結合可能な官能基」を導入する手法と同様な手法で、「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化させることができる。一例を挙げると、「標的物質が結合可能な物質」と結合性を有する官能基を粒子本体表面または被着ポリマー表面に予め導入し、その官能基を介して「標的物質が結合可能な物質」を粒子に固定化することができる。また、被着ポリマーとして疎水性ポリマーを用い、「標的物質が結合可能な物質」として疎水性のものを用いると、水中においては疎水性の物質同士が吸着する所謂「疎水性相互作用」が生じることになるので、疎水性の「標的物質が結合可能な物質」を被着ポリマー表面に固定化させることができる。
次に、以下において、本発明の粒子と標的物質との結合態様について説明する。本発明の粒子と標的物質とを共存させると、「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」と標的物質との間に働く吸着力または親和力によって、標的物質が粒子に結合することになる。以下分類して説明するため、「吸着」を「化学吸着」と同義とする。
「吸着力」に起因して、標的物質が粒子に結合する態様の一例としては、「標的物質」がアビジンであり、粒子本体がジルコニアから形成されており、「標的物質を結合させることができる物質または官能基」がエポキシ基である場合である。
「親和力」に関しては、標的物質との間に働く親和力の種類に基づいて、粒子本体表面に固定化されている「標的物質を結合させることができる物質または官能基」を大きく次の5つに分類できる(尚、各分類において挙げる物質または官能基は、あくまでも例示にすぎず、その他の物質または官能基も考えられることに留意されたい)。尚、そのような親和力に起因する場合、「標的物質を結合させることができる物質または官能基」は、以下では「親和性を有する物質または官能基」と呼ぶ。
(1)標的物質との間に働く親和力が、静電相互作用、π−π相互作用、π−カチオン相互作用または双極子相互作用に起因する「親和性を有する物質または官能基」の例
シリカ、活性炭、スルホン酸基、カルボキシル基、ジエチルアミノエチル基、トリエチルアミノエチル基、フェニル基、アルギニン、セルロース、リジン、ポリリジン、ポリアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、クラウンエーテルもしくはπ電子を有する環状化合物、または、それらの官能基誘導体、酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
(2)標的物質との間に働く親和力が疎水相互作用に起因する「親和性を有する物質または官能基」の例
アルキル基、オクタデシル基、オクチル基、シアノプロピル基もしくはブチル基またはフェニル基、または、それらの官能基誘導体、酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
(3)標的物質との間に働く親和力が水素結合に起因する「親和性を有する物質または官能基」の例
DNA、RNA、Oligo(dT)、キチン、キトサン、アミロース、セルロース、デキストリン、デキストラン、プルラン、多糖、リジン、ポリリジン、ポリアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)もしくはβ-グルカン、または、それらの官能基誘導体、酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
(4)標的物質との間に働く親和力が配位結合に起因する「親和性を有する物質または官能基」の例
イミノジ酢酸、ニッケル、ニッケルイオン、ニッケル錯体、コバルト、コバルトイオン、コバルト錯体、銅、銅イオンもしくは銅錯体、または、それらの酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
(5)標的物質との間に働く親和力が生化学的相互作用に起因する「親和性を有する物質または官能基」の例(生化学的相互作用:生体分子に関する相互作用を含むものであって、抗原・抗体反応、リガンド・レセプター結合、水素結合、配位結合、疎水相互作用、静電相互作用、π−π相互作用、π−カチオン相互作用、双極子相互作用およびファンデルワールス力などが単独または二種以上で連係して働く相互作用)
抗原、抗体、レセプター、リガンド、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンニュートラアビジン、シリカ、活性炭、ケイ酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、アルブミン、アミロース、セルロース、レクチン、プロテインA、プロテインG、Sタンパク質、デキストリン、デキストラン、プルラン、多糖、カルモジュリン、ニッケル、ニッケルイオン、ニッケル錯体、コバルト、コバルトイオン、コバルト錯体、銅、銅イオン、銅錯体、ゼラチン、N-アセチルグルコサミン、イミノジ酢酸、アミノフェニルホウ酸、エチレンジアミン二酢酸、アミノベンズアミジン、アルギニン、リジン、ポリリジン、ポリアミド、ジエチルアミノエチル基、トリエチルアミノエチル基、ECTEOLA-セルロース、フィブロネクチン、ビトロネクチン、アルギニン-グリシン-アスパラギン(RGD)酸配列を含むペプチド、ラミニン、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、コラーゲン、コンカナバリンA、アデノシン5'リン酸(ATP) 、ADP、ATP、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、アクリジン色素、アプロチニン、オボムコイド、トリプシンインヒビターやプロテアーゼインヒビター等のインヒビター類、ホスホリルエタノールアミン、フェニルアラニン、プロタミン、シバクロンブルー、プロシオンレッド、ヘパリン、グルタチオン、DIG、DIG抗体、DNA、RNA、Oligo(dT)、キチン、キトサン、β-グルカン、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ヒアルロン酸、エラスチン、セリシンもしくはフィブロイン、または、それらの官能基誘導体、酸素結合体もしくは蛍光プローブ結合体など
上述の分類から分かるように、本明細書で用いる「親和性を有する」とは、標的物質と粒子に固定化される物質または官能基との間に、静電相互作用、π−π相互作用、π−カチオン相互作用、双極子相互作用、疎水相互作用、生化学的相互作用、水素結合または配位結合などがもたらされることを実質的に意味している。粒子本体に固定化される物質または官能基の種類によっては、上述の親和性を2種以上兼ね備える場合があり、上述の分類で重複する物質または官能基が存在する場合がある点に留意されたい。また、上述の分類に必ずしも限定される必要はなく、標的物質に対して作用し、標的物質を粒子表面またはその近傍に存在させる機能を有するものであれば、いずれの物質または官能基を粒子に固定化させてもよい(一例を挙げるとすると、標的物質との相補的な形状に起因して親和性を有するものが考えられる)。
前駆体となる粒子の表面に「標的物質に対して親和性を有する物質または官能基」を固定化させる態様または方法は何ら制限されるものではない。例えば、高分子、無機化合物、低分子リンカーまたはカップリング剤等を介在させることによって、「標的物質に対して親和性を有する物質または官能基」を未固定の粒子表面に結合作用、吸着作用または吸収作用で固定化することができる。また、粒子の一般的な被覆法を用いることによっても「標的物質に対して親和性を有する物質または官能基」を未固定の粒子表面に固定化することができる。
「標的物質に対して親和性を有する物質」を粒子本体に固定化させる手法の一例を説明する。例えば、「標的物質に対して親和性を有する物質」として抗体を用いた場合、前述のシロキサンを用いた官能基の固定化の手法によって、シロキサンのSi−Hの部分に二重結合とエポキシ基有する化合物(グリシジルメタクリレート)を反応させ、粒子表面にエポキシ基を固定化する。さらに、得られた粒子を水中で抗体と撹拌することによって、抗体を粒子に固定化できる。
また、「標的物質に対して親和性を有する官能基」を粒子表面に固定化する手法も、例えば、前述したようなシロキサンを用いた手法で行うことができる。
次に、以下において、本発明の粒子を用いた分離方法について詳細に説明する。尚、かかる分離方法の説明に含める形で「本発明の方法を利用して標的物質の分析、抽出、精製または反応を行うシステム」についても説明する。
かかる分離方法は、上述した本発明の粒子を用いて、試料中から標的物質を分離する又は標的物質を固定した粒子を得る方法である。本発明の分離方法は、
(i)標的物質を含んで成る試料と本発明の粒子とを接触させ、粒子と標的物質とを結合させる工程、
(ii)試料を静置に付して、試料中で粒子を自然沈降させる工程、および
(iii)試料中で沈殿した粒子を回収することによって、標的物質を試料から分離する又は標的物質を固定した粒子を得る工程
を含んで成る。
工程(i)では、標的物質を含んで成る試料と本発明の粒子とが接触し、粒子と標的物質とが相互に結合される(図1(a)参照)。例えば、標的物質を含んで成る試料に対して粒子を供給することによって、試料と粒子とを接触させる。結合が促進されるように、必要に応じて、攪拌処理を施してもよい。供される粒子は、粒子サイズ分布の変動係数が0.2以下であることを特徴とする粉末形態の粒子(好ましくは平均サイズ1μm〜1mmの粒子)である。供される粉末形態の粒子の量は、試料の種類や分離用途などとの関係で決まってくるものであり、総括的に特定できるものではないが、例を挙げるとすると、一粒子から使用でき、分析、研究用途ではグラム単位まで(10−2g〜103g程度)となり、工業的に利用する場合はキログラム単位(1〜103kg程度)からトン単位(1〜10t程度)までとなり得る。
工程(ii)にて粒子の自然沈降がもたらされるように、標的物質を含んで成る試料は、例えば、ビーカー、メスシリンダー、試験管、マイクロチューブ、バイオチップ、化学チップ、μ-TASチップなどに仕込んだ状態で用いることが好ましい。
標的物質と粒子との間の結合は、それらの間に働く吸着力または親和力によって引き起こされる。より具体的には、粒子本体に固定化されている「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」と標的物質との間で吸着力または親和力が働くことによって、標的物質と粒子とが相互に結合する。尚、試料中に供する粉末形態の粒子の量によっては、標的物質の結合に寄与しない粒子も存在し得る(例えば粒子を過剰に供給した場合)。尚、本発明の方法で用いる粒子は、標的物質以外の物質が粒子に結合する非特異結合を抑えることができる粒子である。従って、試料中に標的物質以外の物質が含まれていても、標的物質を優先的に粒子に結合できる。
標的物質は、前述したように、例えば、核酸、蛋白質(例えばアビジンおよびビオチン化HRPなども含む)、糖、脂質、ペプチド、細胞、真菌、細菌、酵母、ウィルス、糖脂質、糖蛋白質、錯体、無機物、ベクター、低分子化合物、高分子化合物、抗体または抗原等である。また、試料は、前述したように、例えば、ヒト又は動物の尿、血液、血清、血漿、***、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液;ヒト又は動物の臓器、毛髪、皮膚、粘膜、爪、骨、筋肉又は神経組織等の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;便懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;培養細胞又は培養組織の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;ウィルスの懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;菌体の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;土壌懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;植物の懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;食品・加工食品懸濁液、抽出液、溶解液又は破砕液;排水等である。
工程(ii)では、粒子が供された試料を静置に付して、試料中で本発明の粒子を自然沈降させる(図1(b)参照)。本発明の方法で用いる粒子は、上述したような密度特性および比表面積特性を有するものであるため、比較的速い自然沈降速度が得られる。換言すれば、用いる粒子の密度が大きいだけでなく、粒子の比表面積が0.0005m2/g〜10m2/gと比較的小さく実質的に非多孔質とみなすことができるので、標的物質を含んだ試料に粒子を供する際に空気などの気体が粒子内部に取り込まれた状態となることが抑制される(即ち、気体が粒子内部に存在し得ないので、気体に起因した浮力作用などの影響を排除することができる)。その結果、粒子を自然沈降させるだけでも十分な分離速度を得ることができる。
工程(iii)では、試料中で沈殿した本発明の粒子(図1(c)参照)が回収されることによって、標的物質が試料から分離される又は標的物質が固定された粒子が得られる。例えば、自然沈降に起因して試料の下方領域または容器の底領域に粒子が沈殿するので、上澄みが試料の上方領域に形成される。従って、かかる上澄みをピペットなどで吸引除去することによって、試料中で沈殿した粒子を回収することができる。回収された粒子には、上述したように標的物質が結合しているので、粒子の回収によって標的物質が試料から分離されることになる。
このように本発明の方法では、試料中の標的物質を分離できたり、あるいは、標的物質が固定化された粒子を得ることができるので、それらを応用することによって、細胞、蛋白質、核酸または化学物質等の種々の標的物質の分析、抽出、精製および反応等を行うシステムが可能となる。より具体的に言うと、上述のような標的物質の分離、固定化を行うシステムの構築以外にも、標的物質の分析、抽出、精製または反応などを行うシステムの構築が可能となる。例えば、「標的物質の分析を行うシステム」では、チップ内に標的物質と結合可能な抗体を固定した粒子を装填した形態でチップ内に標的物質を注入することによりチップ内粒子に標的物質を固定し、さらに標的物質に結合する酵素、蛍光色素、磁性体などを結合させた抗体をマーカーとして標的物質量を吸光、化学発光、蛍光、または磁気などにより検出することにより、また、標的物質が核酸である場合には標的物質と結合可能な核酸を固定した粒子を装填した形態でチップ内に酵素または蛍光色素を固定した標的物質を注入することによりチップ内粒子に標的物質を固定し、標的物質量を吸光、化学発光、蛍光、または磁気などにより検出することにより標的物質を定量分析または定性分析することができる。この際、各反応段階においてチップ上に複数個ある反応槽のうち同一箇所で実施しても、別の箇所で実施してもかまわない。また、チップ上に複数個ある反応槽間の移動、もしくは各反応槽中での撹拌に重力を用いることが可能である。また、「標的物質の抽出を行うシステム」または「標的物質を精製するシステム」では、上述した本発明の方法の工程(iii)の分離のあとに、標的物質を粒子からはずし遊離させる物質を用いる、または必要な加熱、冷却などの処理を行うことにより、標的物質を抽出または精製することができる。更に、「標的物質の反応を行うシステム」では、チップ内に標的物質と結合可能な物質を固定した粒子を装填した形態でチップ内に標的物質を注入することによりチップ内粒子に標的物質を固定し、チップ上に複数個ある反応槽の各所において混合、加熱、撹拌、紫外線照射などを行うことで、標的物質の反応を実施できる。この際、チップ上に複数個ある反応槽間の移動、もしくは各反応槽中での撹拌に重力を用いることが可能である。また、酵素や触媒を粒子に固定して、重力を利用して反応系に投入することも可能である。
次に、以下において、「標的物質が結合した複数の粒子」を個々の粒子単位で同時解析することによって標的物質の分析、解析または定量を行うシステムについて詳細に説明する。
かかるシステムに用いられる本発明の粒子は粒子間の粒径のバラツキが小さいので、標的物質が固定化された粒子において、酵素、蛍光色素または磁性体等を用いて、吸収、蛍光、発光または磁気等を測定することにより、粒子数が2個〜109個といった多数の粒子の場合であっても、単一粒子単位で標的物質を同時に定量測定することが可能である。すなわち、粒子数と同数の標的物質の種類の測定などが可能となる。例えば、抗原・抗体反応や核酸の配列解析等において、個別の単一粒子ごとに多数の粒子の同時測定が可能である。また、多数の粒子の同時測定の際、ハニカム形状等の多数のくぼみ(セル)のついたセル内に粒子を入れて測定する場合では、粒子間で粒径のバラツキが小さいことに起因して、セル1つに対して、粒子1つを入れることができ、『セル1つに対して、粒子2つが入り、1つのセルに対して粒子2つ分の測定値が得られる』といった測定エラーが起こりにくい。
かかるシステムでは、本発明の粒子と上述した本発明の方法とが利用されている。システムの構成は、複数のウェルを持つセル、ウェル中に導入された粒子、ウェル内に試薬を導入する流路、発光、蛍光、吸収及び磁性等を検出する多チャンネル検出装置または撮像装置、及び得られた結果を解析する画像解析システムからなる。
例えば、このシステムを用いた分析(「解析」or「定量」)では、まず、標的物質が結合した粒子をチップ内のウェルに一ウェルに対して一粒子を導入し、あるいは、ウェル内の粒子に標的物質を結合させる。標的物質に結合させた蛍光色素からの蛍光や標的物質が関与する化学発光や発色による吸収等をCCDカメラ等の撮像装置により複数の粒子で同時検出する。得られた画像から、個々の粒子の蛍光、発光、吸収強度等を画像解析により定量する。なお、検出器はCCDカメラのみならず、CMOSセンサー、フォトダイオード、光電子増倍管等、検出機構の種類によらず、発光、蛍光、吸収等が検出可能であれば良い。また、顕微鏡を検出器と結合させ、倍率を拡大して検出してもかまわない。解析においては、CCDカメラ等で得られた画像をもとに、画像解析ソフト等により、ピクセル強度を解析することにより、標的物質の量を定量する。また、標的物質に結合した磁気プローブ等を磁気センサー等で定量してもかまわない。以上により、「標的物質が結合した複数の粒子」を粒子ごとに同時解析することができる。尚、ここでいう「同時解析」とは、画像解析や多チャンネル測定や磁気センサー等により、複数の粒子に結合している標的物質を同時に、検出し、解析を行うことを実質的に指していることに留意されたい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。
例えば、(1)標的物質の分離に際して粒子への非特異結合または非特異吸着を更に抑えるために、(2)粒子の親和性を制御するために、または(3)官能基を導入するための基材として用いるために、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリジメチルアクリルアミド、デキストラン、プルラン、アガロース、セファロース、アミロース、セロビオース、キチン、キトサン、多糖、正常血清、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、カゼイン、脱脂粉乳およびこれらの官能基誘導体から成る群から選択される少なくとも1種以上の物質を粒子本体表面に付着させてもよい。付着方法としては、特に限定されるものではなく、粒子の一般的な被覆法を用いてよい。例えば、ポリエチレングリコールを用いた場合では、粒子本体の表面には「標的物質を結合させることが可能な物質または官能基」が固定化されていると共に、かかるポリエチレングリコールが存在することになる。
「粒子の分離速度」、「粒子の非特異結合特性」および「粒子サイズのバラツキが測定値に与える影響」を確認するために、以下に示す実施例および比較例を実施した。
《粒子の調製》
実施例1〜20および比較例1〜8では粒子を以下のように調製した。
(実施例1)
実施例1で調製した粒子は、水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P1である。まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p1を用意した。かかる粒子p1は、粒径50μm、比表面積0.02m2/g、密度6g/cm3であった。1gの粒子p1をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子p1を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子p1が疎水性を有するように変化し、粒子p1が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P1を得た。かかる粒子P1は親水性であった。粒子P1の比表面積は0.02m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約50μmであった(粒子P1の粒径とp1の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例2)
実施例2で調製した粒子は、水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P2である。粒子P2が磁性を有している点で実施例1の粒子P1と異なっている。
まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p2を用意した。かかる粒子p2は、粒径50μm、比表面積0.02m2/g、密度6g/cm3であった。1gの粒子p2を水中に分散させ、得られる分散液に対してシランカップリング剤(信越化学工業製、KBM−903)を添加することによって、粒子p2の表面にシランカップリング剤を被着させた。次いで、シプレーファーイスト製Pd触媒Catalyst−6Fを加えて粒子p2の表面にメッキ核を生成させた。得られた粒子を1.2N塩酸を用いて洗浄した後、奥野製薬製ニッケルメッキ液トップニコロンLPHを用いて、粒子表面にて磁性ニッケルメッキ層を生成させ、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付した。これ以降は、実施例1と同様の処理を実施して、水酸基が固定化された粒子P2を得た。つまり、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。その後、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P2を得た。かかる粒子P2は親水性を有していた。粒子P2の比表面積は0.02m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約50μmであった(粒子P2の粒径と粒子p2の粒径との差は測定誤差範囲内)。尚、この粒子P2の飽和磁化量を測定したところ4.5A・m2/kgであった。
(実施例3)
実施例3で調製した粒子は、水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P3である。実施例1とは粒子の調製方法が異なっている。
まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p3を用意した。かかる粒子p3は、粒径50μm、比表面積0.02m2/g、密度6g/cm3であった。10gの粒子p3を純水25gに分散させ、得られる分散液に対して、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3gを添加して4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。そして、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P3を得た。かかる粒子P3は親水性であった。粒子P3の比表面積は0.02m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約50μmであった(粒子P3の粒径と粒子p3の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例4)
実施例4で調製した粒子は、水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P4である。実施例1および3とは粒子の調製方法が異なっている。
まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p4を用意した。かかる粒子p4は、粒径50μm、比表面積0.02m2/g、密度6g/cm3であった。10gの粒子p4を純水25gに分散させ、得られる分散液に対してテトラエトキシシラン5gおよびアンモニア水5gを添加して4時間攪拌した。その後、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3gを分散液に添加して3時間攪拌を行った。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。その後、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P4を得た。かかる粒子P4は親水性を有していた。粒子P4の比表面積は0.02m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約50μmであった(粒子P4の粒径と粒子p4の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例5)
実施例5で調製した粒子は、アビジンが固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P5である。
まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p5を用意した。かかる粒子p5は、粒径50μm、比表面積0.02m2/g、密度6g/cm3であった。10gの粒子p5を純水25gに分散させ、得られる分散液を攪拌しながら、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3gを分散液に添加して更に4時間攪拌した。次いで、アセトンで粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、エポキシ基を有するイットリウム添加ジルコニア粒子を得た。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を供し、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P5を得た。得られた粒子P5の比表面積は0.02m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約50μmであった(粒子P5の粒径と粒子p5の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例6)
実施例6で調製した粒子は、アビジンが固定化されたアルミナ粒子P6である。実施例5とは原料粒子および調製方法が異なっている。
まず、大明化学工業製のアルミナ粒子p6を用意した。かかる粒子p6は、粒径200μm、比表面積0.008m2/g、密度3.6g/cm3であった。1gの粒子p6をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子p6を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子p6が疎水性を有するように変化し、粒子p6が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたアルミナ粒子を得た。かかる粒子は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたアルミナ粒子P6を得た。得られた粒子P6の比表面積は0.008m2/gであって、密度は3.6g/cm3、粒径は約200μmであった(粒子P6の粒径と粒子p6の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例7)
実施例7で調製した粒子は、アビジンが固定化された銅粒子P7である。実施例6とは原料粒子が異なっている。
まず、日立金属製の銅粒子p7を用意した。かかる粒子p7は、粒径50μm、比表面積0.013m2/g、密度8.9g/cm3であった。1gの粒子p7をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子p7を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子p7が疎水性を有するように変化し、粒子p7が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された銅粒子を得た。かかる粒子は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化された銅粒子P7を得た。得られた粒子P7の比表面積は0.013m2/gであって、密度は8.9g/cm3、粒径は約50μmであった(粒子P7の粒径と粒子p7の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例8)
実施例8で調製した粒子は、アビジンが固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P8である。実施例6および実施例7とは原料粒子が異なっている。原料粒子がイットリウム添加ジルコニアから成る点で実施例5と同じであるが、実施例8は、実施例5とは異なる物性値を有するイットリウム添加ジルコニアを用いている。
まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p8を用意した。かかる粒子p8は、粒径30μm、比表面積0.03m2/g、密度6g/cm3であった。1gの粒子p8をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子p8を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子p8が疎水性を有するように変化し、粒子p8が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子を得た。かかる粒子は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P8を得た。得られた粒子P8の比表面積は0.03m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約30μmであった(粒子P8の粒径と粒子p8の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例9)
実施例9で調製した粒子は、アビジンが固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P9である。原料粒子がイットリウム添加ジルコニアから成る点で実施例5および8と同じであるが、実施例9は、実施例5および8とは異なる物性値を有するイットリウム添加ジルコニアを用いている。
まず、ネツレン(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p9を用意した。かかる粒子p9は、粒径15μm、比表面積0.04m2/g、密度6g/cm3であった。1gの粒子p9をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子p9を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子p9が疎水性を有するように変化し、粒子p9が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P9を得た。かかる粒子は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P9を得た。得られた粒子P9の比表面積は0.04m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約15μmであった(粒子P9の粒径と粒子p9の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例10)
実施例10で調製した粒子は、エポキシ基が固定化されたポリスチレン被着ジルコニア粒子P10である。かかる粒子は、粒子本体の少なくとも一部にポリマーが被着していることを特徴としている。
まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p10を用意した。かかるジルコニア粒子p10は、粒径30μm、比表面積0.03m2/g、密度6g/cm3であった。3gのジルコニア粒子p10を水/アルコール混合溶液中に分散させ、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.13gを加えて35℃で約30分攪拌した。その後、窒素のバブリングを30分行い、p−スチレンスルホン酸ナトリウム0.1g、過硫酸カリウム0.1g、スチレンモノマー9.4g、グリシジルメタクリレート1.4gを加えて70℃で8時間反応させた。反応終了後、未反応物や沈降の遅い粒子を水洗浄によって除去することによって、エポキシ基が固定化されたポリスチレン被着ジルコニア粒子P10を得た。得られた粒子P10の比表面積は0.05m2/gであって、密度は5.5g/cm3、粒径は約30μmであった(粒子P10の粒径と粒子p10の粒径との差は測定誤差範囲内)。尚、得られた粒子P10の比表面積が原料粒子p10の比表面積よりも増えているが、これは、一部のポリマーが粒状に被着したことが原因の1つとして考えられる。
(実施例11)
実施例11で調製した粒子は、アビジンが固定化されたポリスチレン被着ジルコニア粒子P11である。エポキシ基の代わりにアビジンが固定化されている点が実施例10の粒子P10と異なっている。
実施例10で得られた「エポキシ基が固定化されたポリスチレン被着ジルコニア粒子P10」200mgを、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液に供し、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたポリスチレン被着ジルコニア粒子P11を得た。得られた粒子P11の比表面積は0.05m2/gであって、密度は5.5g/cm3、粒径は約30μmであった(粒子P11の粒径と粒子p10の粒径との差は測定誤差範囲内)。尚、得られた粒子P11の比表面積が原料粒子p10の比表面積よりも増えているが、これは、実施例10と同様、一部のポリマーが粒状に被着したことが原因の1つとして考えられる。
(実施例12)
実施例12で調製した粒子は、エポキシ基が固定化された架橋ポリスチレン被着ジルコニア粒子P12である。被着ポリマーのポリスチレンが架橋されている点が実施例10の粒子P10と異なっている。
実施例10のスチレンモノマーの架橋剤としてジビニルベンゼン0.3gを用いた以外は実施例10と同様な処理を行うことによって、「エポキシ基が固定化された架橋ポリスチレン被着ジルコニア粒子P12」を得た。得られた粒子P12の比表面積は0.05m2/gであって、密度は5.5g/cm3、粒径は約30μmであった(粒子P12の粒径と粒子p10の粒径との差は測定誤差範囲内)。尚、得られた粒子P12の比表面積が原料粒子p10の比表面積よりも増えているが、これは、実施例10と同様、一部のポリマーが粒状に被着したことが原因の1つとして考えられる。
(実施例13)
実施例13で調製した粒子は、エポキシ基が固定化されたポリスチレン被着の磁性ジルコニア粒子P13である。粒子P13が磁性を有している点で実施例10の粒子P10と異なっている。
まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p13を用意した。かかる粒子p13は、粒径30μm、比表面積0.03m2/g、密度6g/cm3であった。1gの粒子p13を水中に分散させ、得られる分散液に対してシランカップリング剤(信越化学工業製、KBM−903)を添加することによって、粒子p13の表面にシランカップリング剤を被着させた。次いで、シプレーファーイスト製Pd触媒Catalyst−6Fを加えて粒子p13の表面にメッキ核を生成させた。得られた粒子を1.2N塩酸を用いて洗浄した後、奥野製薬製ニッケルメッキ液トップニコロンLPHを用いて、粒子表面にニッケルメッキ層を生成させ、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付した。これ以降は、実施例10と同様の処理を実施して、「エポキシ基が固定化されたポリスチレン被着の磁性ジルコニア粒子P13を得た。得られた粒子P13の比表面積は0.05m2/gであって、密度は6.5g/cm3、粒径は32μmであった。また、この粒子P13の飽和磁化量を測定したところ6.5A・m2/kgであった。尚、得られた粒子P13の比表面積が原料粒子p13の比表面積よりも増えているが、これは、実施例10と同様、一部のポリマーが粒状に被着したことが原因の1つとして考えられる。
(実施例14)
実施例14で調製した粒子は、「抗ヒトCRPモノクローナル抗体6404」が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P14である。まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p14を用意した。かかる粒子p14は、粒径50μm、比表面積0.02m2/g、密度6g/cm3であった。1gの粒子p14をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子p14を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子p14が疎水性を有するように変化し、粒子p14が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、その粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P14’を得た。かかる粒子P14’は親水性を有していた。
この粒子P14’にトシルクロライドを加え攪拌した。得られた粒子を洗浄し、トシル基活性化ジルコニア粒子を得た。このトシル基活性化ジルコニア粒子に抗ヒトCRPモノクローナル抗体6404(MedixBiochemica製)を固定化した。尚、HRP−Rabbit−Anti−Mouse IgG2a 2次抗体(ZYMED社製)による発色から粒子表面に抗ヒトCRPモノクローナル抗体6404が固定化されていることを確認した。以上の操作によって得られた粒子P14の比表面積は、0.02m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は50μmであった。
(実施例15)
実施例15で調製した粒子は、水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P15である。実施例1とは粒子の調製方法が異なっている。
まず、ニッカトー(株)製のイットリウム添加ジルコニア粒子p15を用意した。かかる粒子p15は、粒径50μm、比表面積0.02m2/g、密度6g/cm3であった。1gの粒子p15を水中に分散させ、得られる分散液に対して、KBE−402(信越化学工業製)をエタノールに混合させた溶液を滴下した。これにアンモニア水を加え、室温で4時間撹拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P15を得た。かかる粒子P15は親水性を有していた。粒子P15の比表面積は0.02m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約50μmであった(粒子P15の粒径と粒子p15の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(実施例16)
実施例16で調製した粒子は、実施例1の粒子にアビジンが固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P16である。
実施例1で得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を供し、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたイットリウム添加ジルコニア粒子P16を得た。得られた粒子P16の比表面積は0.02m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約50μmであった。
(実施例17)
実施例17で調製した粒子は、アビジンが固定化されたタングステン粒子P17である。
まず、日立金属製のタングステン粒子p17を用意した。かかる粒子p17は、粒径100μm、比表面積0.003m2/g、密度19.1g/cm3であった。1gの粒子p17をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子p17が疎水性を持つように変化し、粒子が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたタングステン粒子p17を得た。かかる粒子p17は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたタングステン粒子P17を得た。粒子P17の比表面積は0.003m2/gであって、密度は19.1g/cm3、粒径は約100μmであった。
(実施例18)
実施例18で調製した粒子は、アビジンが固定化された鉛粒子P18である。実施例17とは原料粒子のみが異なっている。
まず、大橋鋼球製の鉛粒子p18を用意した。かかる粒子p18は、粒径800μm、比表面積0.00066m2/g、密度11.36g/cm3であった。1gの粒子p18をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子p18が疎水性を持つように変化し、粒子が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された鉛粒子p18を得た。かかる粒子p18は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化された鉛粒子P18を得た。粒子P18の比表面積は0.00066m2/gであって、密度は11.3g/cm3、粒径は約800μmであった。
(実施例19)
実施例19で調製した粒子は、アビジンが固定化されたタングステン粒子P19である。実施例17とは粒子の調整法が異なっている。
まず、日立金属製のタングステン粒子p19を用意した。かかる粒子p19は、粒径100μm、比表面積0.003m2/g、密度19.1g/cm3であった。10gの粒子p19を純水25gに分散させ、得られる分散液を攪拌しながら、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3gを分散液に添加して更に4時間攪拌した。次いで、アセトンで粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、エポキシ基を有するタングステン粒子p19を得た。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を供し、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたタングステン粒子P19を得た。粒子P19の比表面積は0.003m2/gであって、密度は19.1g/cm3、粒径は約100μmであった。
(実施例20)
実施例20で調製した粒子は、アビジンが固定化されたタングステン粒子P20である。粒子P20が磁性を有している点で実施例17の粒子P17と異なっている。
まず、日立金属製のタングステン粒子p20を用意した。かかる粒子p20は、粒径100μm、比表面積0.003m2/g、密度19.1g/cm3であった。1gの粒子p20を水中に分散させ、得られる分散液に対してシランカップリング剤(信越化学工業製、KBM−903)を添加することによって、粒子p20の表面にシランカップリング剤を被着させた。次いで、シプレーファーイスト製Pd触媒Catalyst−6Fを加えて粒子の表面にメッキ核を生成させた。得られた粒子を1.2N塩酸を用いて洗浄した後、奥野製薬製ニッケルメッキ液トップニコロンLPHを用いて、粒子表面にてニッケルメッキ層を生成させ、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付した。これ以降は、実施例17と同様の処理を実施して、水酸基が固定化された粒子p20を得た。つまり、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。その後、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたタングステン粒子p20を得た。かかる粒子p20は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を供し、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたタングステン粒子P20を得た。粒子P20の比表面積は0.003m2/gであって、密度は19.1g/cm3、粒径は約100μmであった。尚、この粒子P20の飽和磁化量を測定したところ13A・m2/kgであった。
ちなみに、上述の実施例には、エポキシ基を有したシランカップリング剤を用いた例が含まれているが、シランカップリング剤として、メルカプト基、二重結合を有する官能基などを有したものを用いてもよいことに留意されたい。
(比較例1)
比較例1で調製した粒子は、水酸基が固定化された架橋アクリル粒子R1である。
まず、綜研化学(株)製の架橋アクリル粒子r1を用意した。かかる粒子r1は、粒径30μm、比表面積0.033m2/g、密度1.19g/cm3であった。1gの粒子r1をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を1g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。次いで、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子r1が疎水性に変化し、粒子が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、20mgの塩化白金酸および1gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン20mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。その後、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された架橋アクリル粒子R1を得た。かかる粒子R1は親水性を有していた。粒子R1の比表面積は0.033m2/gであって、密度は1.19g/cm3、粒径は約30μmであった(粒子R1の粒径と粒子r1の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(比較例2)
比較例2で調製した粒子は、アビジンが固定化された多孔質ゼオライト粒子R2である。
まず、東ソー(株)製のゼオライト粒子(HSZ−700)r2を用意した。かかる粒子r2は、粒径18μm、比表面積170m2/g、密度2.3g/cm3であった。1gの粒子r2をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を2g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。次いで、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子r2が疎水性を有するように変化し、粒子が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、20mgの塩化白金酸および2gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。そして、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン20mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。その後、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された多孔質ゼオライト粒子r2を得た。かかる粒子r2は親水性であった。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化された多孔質ゼオライト粒子R2を得た。得られた粒子R2の比表面積は170m2/gであって、密度は2.3g/cm3、粒径は約18μmであった(粒子R2の粒径と粒子r2の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(比較例3)
比較例3で調製した粒子は、アビジンが固定化されたシリカ粒子R3である。比較例2とは原料粒子が異なっている。
まず、ニップンテクノクラスタ製のシリカ粒子r3を用意した。かかる粒子r3は、粒径3.0μm、比表面積1.2m2/g、密度1.96g/cm3であった。1gの粒子r3をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、シリカ粒子r3が疎水性を有するように変化し、シリカ粒子r3が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化されたシリカ粒子シリカ粒子r3を得た。かかる粒子r3は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたシリカ粒子R3を得た。得られた粒子R3の比表面積は1.2m2/gであって、密度は1.96g/cm3、粒径は約3.0μmであった(粒子R3の粒径と粒子r3の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(比較例4)
比較例4で調製した粒子は、アビジンが固定化された多孔質構造を持つジルコニア粒子R4である。比較例2および3とは原料粒子が異なっている。
まず、ZirChrom社製多孔質ジルコニア粒子(ZirChrom-PHASE)r4を用意した。かかる粒子r4は、粒径25μm、比表面積30m2/g、密度6g/cm3であった。1gの粒子r4をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子r4が疎水性に変化し、粒子r4が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された多孔質ジルコニア粒子r4を得た。かかる粒子r4は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化された多孔質構造を持つジルコニア粒子R4を得た。得られた粒子R4の比表面積は30m2/gであって、密度は6g/cm3、粒径は約25μmであった(粒子R4の粒径と粒子r4の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(比較例5)
比較例5で調製した粒子は、アビジンが固定化された多孔質シリカ粒子R5である。比較例2〜4とは原料粒子が異なっている。
まず、旭硝子エスアイテック製の多孔質シリカ粒子(サンスフェアL-121)r5を用意した。かかる粒子r5は、粒径11.5μm、比表面積336m2/g、密度2.0g/cm3であった。1gの粒子r5をトルエン中に分散させ、得られる分散液に対して1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(信越化学工業製、LS−8600)を0.5g加えた。分散液をエバポレートに付してトルエンを蒸発させた後で、真空デシケーター中で粒子を50℃にて4時間放置した。その後、150℃の恒温槽中で粒子を1.5時間加熱した。かかる処理によって、粒子r5が疎水性を有するように変化し、粒子r5が1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンで被覆されたことを確認した。
引き続いて、得られた粒子を水中に分散させて80℃に加熱した。これにより得られた分散液に対して、10mgの塩化白金酸および0.5gの共栄社化学製ライトエステルを加えて、80℃にて4時間攪拌した。次いで、粒子を水洗した後、粒子に対して10wt%エタノールアミン10mlを供することによって得られる分散液を室温下で12時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面に水酸基が固定化された多孔質シリカ粒子r5を得た。かかる粒子r5は親水性を有していた。
引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化された多孔質シリカ粒子R5を得た。得られた粒子R5の比表面積は336m2/gであって、密度は2.0g/cm3、粒径は約11.5μmであった(粒子R5の粒径と粒子r5の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(比較例6)
比較例6で調製した粒子は、エポキシ基が固定化された架橋アクリル粒子R6である。比較例1とは固定化される官能基の点で異なっている。
まず、綜研化学(株)製の架橋アクリル粒子r6を用意した。かかる粒子r6は、粒径30μm、比表面積0.03m2/g、密度1.19g/cm3であった。10gの粒子r6を純水25gに分散させ、得られる分散液に対して、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3gを添加して4時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面にエポキシ基が固定化された架橋アクリル粒子R6を得た。得られた粒子R6の比表面積は0.03m2/gであって、密度は1.19/cm3、粒径は約30μmであった(粒子R6の粒径と粒子r6の粒径との差は測定誤差範囲内)。尚、かかる粒子R6は親水性であった。
(比較例7)
比較例7で調製した粒子は、アビジンが固定化された多孔質ゼオライト粒子R7である。比較例2とは製造方法が異なっている。
まず、東ソー(株)製のゼオライト粒子(HSZ−700)r7を用意した。かかる粒子r7は、粒径18μm、比表面積170m2/g、密度2.3g/cm3であった。10gの粒子r7を純水25gに分散させ、得られる分散液に対して、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3gを添加して4時間攪拌した。次いで、粒子を洗浄・濾過・乾燥に付すことによって、表面にエポキシ基が固定化された多孔質ゼオライト粒子r7を得た。かかる粒子r7は親水性を有していた。引き続いて、得られた粒子200mgに対して、100mgのアビジンが10mMPBS溶液(pH7.2)20mlに溶解している水溶液を加え、一晩攪拌した。その後、10mMPBS溶液(pH7.2)および水で粒子を洗浄した後、粒子を真空乾燥に付すことによって、アビジンが固定化されたジルコニア粒子R7を得た。得られた粒子R7の比表面積は170m2/gであって、密度は2.3g/cm3、粒径は約18μmであった(粒子R7の粒径と粒子r7の粒径との差は測定誤差範囲内)。
(比較例8)
比較例8で調製した粒子R8は、「抗ヒトCRPモノクローナル抗体6404」が固定化されたDynabeads M−280 Tosylactivated粒子である。
かかる粒子R8は、Dynabeads M−280 Tosylactivated粒子(ダイナル製)に抗ヒトCRPモノクローナル抗体6404(MedixBiochemica製)を加え撹拌し、磁気分離で洗浄を行い、抗ヒトCRPモノクローナル抗体6404(MedixBiochemica製)を粒子表面に固定化することによって作製した。尚、HRP−Rabbit−Anti−Mouse IgG2a 2次抗体による発色から粒子表面に抗ヒトCRPモノクローナル抗体6404が固定化されていることを確認した。得られた粒子R8の比表面積は、6m2/gであって、密度は1.3g/cm3、粒径は2.8μmであった。
以上の実施例1〜20および比較例1〜8の種々の条件を表1に示す。
《粒子の分離速度の確認試験》
実施例および比較例で得られた粒子の分離速度を確認するために、以下のような試験を実施した。
まず、実施例および比較例で得られた粒子1gをそれぞれ試験管内の5mlの水に分散させて静置させた。そして、静置後から透明な上澄みが得られるまでの時間(以下「分離時間」とも呼ぶ)を測定した。分離時間からは、粒子の自然沈降による移動速度(即ち、自然沈降速度)が間接的に把握できる。また、同様な操作を試験管の底部近傍に磁石を配置した状態で行った。結果を表2に示す。
表2の結果からは、以下の事項を把握することができる。
(a)密度の大きい実施例の粒子の自然沈降速度は、総じて比較例の粒子の自然沈降速度よりも相当速い。つまり、本発明の粒子の分離速度は比較例の粒子の分離速度よりも速く、本発明の粒子を用いると、標的物質を試料からより速く分離できる。
(b)同程度の密度(1.96〜2.3g/cm3)の比較例2、3、5および7の間で自然沈降速度を比べると、比表面積が大きい比較例5の場合の自然沈降速度が最も遅くなっている。比較例5の原料粒子の多孔質粒子であるが、そのような比表面積が大きい多孔質粒子(即ち、内部貫通ネットワーク構造を持っている粒子)は、空隙部が多く、気体が粒子内部に存在し、沈降しにくくなったと推測される。つまり、比表面積が大きい多孔質粒子などでは分離速度が遅くなるといえる。本発明の粒子の比表面積は比較的小さいが、そのような小さい比表面積の点からも、本発明の粒子はより速く標的物質を試料から分離できるといえる。
(c)また、実施例1と実施例2との比較、または、実施例10と実施例13との比較もしくは実施例17と実施例20との比較を行うと、磁性を有する粒子に対しては、自然沈降に加えて磁気分離操作を補助的に行うことよって、粒子の分離速度をより速くできる。
《原料粒子の表面状態の確認試験》
日立走査型電子顕微鏡(SEM、型式S−4500)を用いて、実施例1と比較例5で用いた原料粒子の表面状態を観察した。結果を図2〜5に示す。図2および図3が実施例1で用いたイットリウム添加ジルコニア粒子p1の電顕写真であり、図4および図5が比較例5で用いた多孔質シリカ粒子r5の電顕写真である。図2〜図5から明らかなように、実施例1の粒子は非多孔質粒子であり、粒子表面は凹凸がなく滑らかであるのに対し、比較例5の粒子は多孔質の粒子であり、表面の凹凸が大きくでこぼこしている。このことから、比表面積が格段に違うこと、即ち、本発明の粒子の比表面積がより小さいことを理解できよう。
図6(a)および(b)に、実施例で用いた原料粒子のイットリウム添加ジルコニア粒子の表面付近の断面図を示すと共に、図7(a)および(b)に、比較例4で用いた原料粒子(即ち、多孔質ジルコニア粒子)の表面付近の断面図を示す。かかる図面から特に分かるように、比較例で用いたような多孔質ジルコニア粒子には貫通孔が形成されている一方(図7(a)および(b)において「うねるように存在する黒い部分」が貫通孔に相当する)、実施例の原料粒子は非多孔質であって貫通孔が形成されていない(図6(a)および(b)参照)。つまり、比較例で最終的に得られる従来技術の粒子では粒子本体が貫通孔を有している一方、実施例で最終的に得られる本発明の粒子では粒子本体が非多孔質であって貫通孔を有していないことが特に理解できるであろう(尚、本発明の粒子において粒子本体に貫通孔が形成されていないことは図2および図3を参照することによっても理解できる)。
《粒子の特異・非特異結合特性の確認試験》
実施例5、11、16および17で得られた粒子P5、粒子P11、粒子P16および粒子P17ならびに比較例2、4、5および7で得られた粒子R2、粒子R4、粒子R5および粒子R7を用いて、粒子(P5、P11、P16、P17、R2、R4、R5、R7)の特異・非特異結合特性を確認した。標的物質としては、HRPおよびビオチン化HRPの2種類の物質を用いた(両者の酵素活性は略同等である)。粒子に固定化されているアビジンは、ビオチン化HRPと特異的に結合するが、HRPとは特異的に結合しない。つまり、ビオチン化HRPは粒子に特異的(優先的)に結合し、一方、HRPは、粒子の細孔領域などに吸着され得、粒子に対して非特異的に結合することになる。
粒子P5および粒子P11、P16、P17ならびに、粒子R2、粒子R4、粒子R5、粒子R7に対してはそれぞれ同様の操作を行ったため、以下では、実施例5の粒子P5に対する操作を中心に説明する。まず、1.5mlチューブを2つ用意し、それぞれに適当量(発色量が0.01〜1.5になるような量)の粒子P5を仕込んだ。一方のチューブには、濃度20ng/mlのビオチン化HRPを100μl加え、もう一方のチューブには、濃度20ng/mlのHRPを100μl加えた後、ボルテックスミキサーで30分間攪拌した。その後、10mMPBS緩衝液(pH7.2)400μlで、それぞれのチューブに仕込まれた粒子P5を洗浄し遠心分離に付した。この洗浄および遠心分離を4回行った。PBS緩衝液(pH7.2)を除去した後、粒子P5が含まれるそれぞれのチューブに200μlのTMB(テトラメチルベンジジン)を加えて30分間静置させることによって、粒子P5を発色させた。次いで、1N硫酸を200μl加えて、反応を停止させた。そして、TECAN社製プレートリーダーInfinite200で吸光度(450nm)を測定することによって、それぞれのチューブに仕込まれた粒子P5の発色量を求めた。ビオチン化HRPが供された粒子P5に対する発色量およびHRPが供された粒子P5に対する発色量は、それぞれ、粒子P5に対して特異的に結合するビオチン化HRPの量および粒子P5に対して非特異的に結合するHRPの量に比例するものである。従って、非特異的に結合するHRPに対する発色量I非特異に対する特異的に結合するビオチン化HRPの発色量I特異の比(I特異/I非特異)が大きい場合では粒子の非特異結合特性がより少なく、逆に、かかる比(I特異/I非特異)が小さい場合では粒子の非特異結合特性がより大きいことになる。
同様の操作を、実施例11の粒子P11、実施例16の粒子P16、実施例17の粒子P17、比較例2の粒子R2、比較例4の粒子R4、比較例5の粒子R5、比較例7の粒子R7に対しても行い、それぞれの粒子に対して特異的に結合するビオチン化HRPの発色量I特異および非特異的に結合するHRPの発色量I非特異を求めた。
結果を表3に示す。表3の結果から分かるように、実施例5の粒子P
5、実施例11の粒子P
11、実施例16の粒子P
16および実施例17の粒子P
17の方が比較例2の粒子R
2、比較例4の粒子R
4、比較例5の粒子R
5および比較例7の粒子R
7よりもI特異/I非特異の値が大きく非特異結合が抑えられていることが分かった。つまり、比表面積が小さく実質的に非多孔質の本発明の粒子では、標的物質以外の物質が結合する非特異結合を抑えることができることを理解できよう。
《多数の粒子を個別測定する際に粒子サイズのバラツキが標的物質の測定値に与える影響》
本発明では、粒子の粒子サイズ分布の変動係数(即ち、粒径のバラツキの程度)が、測定結果に与える影響について調べた。具体的には、粒径のバラツキが少ない粒子を用いた場合と、粒径のバラツキが大きい粒子を用いた場合とで測定結果にどのような差が生じるかをシミュレーションにより確認した。
以下では平均粒子径50μmの粒子から任意の10個を取り出し、粒径のバラツキが少ない粒子の場合、粒径のバラツキが大きい粒子の場合の各々について蛍光強度/粒子の変動係数を計算で求めた。
(粒径のバラツキが少ない粒子を用いた場合)
表4に示す粒子a〜粒子jまでの10種類の粒子表面に「蛍光を発する標的物質」が結合しており、この蛍光量を粒子個別に検出する場合を想定する。粒子a〜粒子jの各々は、A列に示す粒径を有しているので、B列に示す表面積を有している。これらの粒子が表面積あたり1000の蛍光強度を持つと仮定すると、各々の粒子はC列に示すような蛍光強度を示すことになる。表4を参照すると分かるように、粒子a〜粒子jまでの10種類の粒子では、粒径(μm)の変動係数値(CV値)が0.0298であるのに対して蛍光強度/粒子のCV値は0.0596となる。
(粒径のバラツキが大きい粒子を用いた場合)
表5に示す粒子a’〜粒子j’までの10種類の粒子表面に「蛍光を発する標的物質」が結合しており、この蛍光量を粒子個別に検出する場合を想定する。粒子a’〜粒子j’の各々は、A列に示す粒径を有しているので、B列に示す表面積を有している。これらの粒子が表面積あたり1000の蛍光強度を持つと仮定すると、各々の粒子はC列に示すような蛍光強度を示すことになる。表5を参照すると分かるように、粒子a’〜粒子j’までの10種類の粒子では、粒径(μm)の変動係数値(CV値)が0.2582であるのに対して蛍光強度/粒子のCV値は0.4907となる。
(シミュレーションの結論)
上記シミュレーション結果から、粒径にバラツキの少ない粒子群(同様の50μmの平均粒径を持つ粒子群)では表4に示すように粒径(μm)のCV値0.0298に対して蛍光強度/粒子のCV値が0.0596となるのに対して、粒径にバラツキの大きい粒子群では表5に示すように粒径(μm)のCV値0.2582に対して蛍光強度/粒子のCV値が0.4907となる。この結果から、粒径のバラツキが大きいと、標的物質測定の粒子間におけるバラツキは著しく大きくなることが分かる。特に表5に示す結果からは、粒径(μm)のCV(変動係数)値が約0.25の時、蛍光強度/粒子のCV値は約0.5となり、粒子2個で粒子1個の測定値を得る場合があり、エラーが生じることが分かる。
このような結果は一般化可能であり、10個を超える多数の粒子においても、粒径のバラツキが大きいと、個別の粒子測定にエラーがもたらされることになる。また、これらの粒径のバラツキに対する測定への影響は、蛍光測定のみならず、発光測定、吸収測定、磁気測定等でも同様に生じることになる。
《まとめ》
以上の「粒子の分離速度の確認試験」および「粒子の非特異結合特性の確認試験」から、本発明の粒子は、自然沈降による移動速度だけでも十分な分離速度を得ることができると共に、標的物質以外の物質が結合する非特異結合を抑えることができることが分かった。また、「原料粒子の表面状態の確認試験」からは、本発明の粒子が非多孔質粒子であり、「粒子本体が貫通孔を有さない」ことを確認することができた。更には、「粒子サイズのバラツキが測定値に与える影響」を確認するシミュレーションから、粒子サイズのバラツキが大きいと、粒子間において標的物質測定結果に大きなバラツキが生じることが分かった。