JP2009090342A - 溶融合金のシール装置およびこの装置を用いた鋳造方法並びに連続鋳造開始時の断気方法 - Google Patents

溶融合金のシール装置およびこの装置を用いた鋳造方法並びに連続鋳造開始時の断気方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融合金に接触する大気を不活性ガスでパージして、蓋をせずともシールを保つことを可能とする溶融合金のシール装置を提供する。さらに、このシール装置を用いた鋳造方法および連続鋳造の鋳造開始時の断気方法を提供する。
【解決手段】溶融合金を保持するモールドの開口部に不活性ガスを供給するためのノズルと、このノズルに不活性ガスを供給するための配管を備え、ノズルが、複数の孔を有するパイプと、パイプに巻き付けられた金属多孔質体からなるシール装置。また、ノズルが、金属繊維集合体と、金属繊維集合体の周囲を取り巻いて略円柱状をなす金属メッシュシートとからなるシール装置。さらに、ノズルが、不活性ガスが噴出する噴出口に向かって拡径する拡径ノズルであり、この拡径ノズルの噴出口に、平面状または曲面状の多孔質体を備えたシール装置。
【選択図】図3

Description

本願発明は、溶融合金を大気と断気するためのシール技術に係り、シールガスを用いて溶融合金の酸化および窒化を抑制する技術に関する。特に、鋳物などの鋳造プロセスでのシールと、溶融合金の連続鋳造において鋳造開始時の断気方法に関する。
溶融合金はその金属の種類によっては、非常に大気と反応しやすい場合がある。具体的には、溶融状態の鋼、ステンレス鋼、Fe−Ni合金、Ni基合金などは、溶融状態で1400℃以上の高温を保つために、溶融合金の表面が大気に暴露された状態では、酸化しやすい状態にある。また合金中にSi、Mn、Al、Tiなどの活性元素が添加されていると、これらが優先して大気中の酸素や窒素と反応して、それぞれ酸化物や窒化物を形成する。これらの酸化物や窒化物は大型の非金属介在物となり、溶融合金中に巻き込まれると、鋳造工程を経た鋳造品にて疵となってしまう場合がある。
そのため、溶融合金の表面が極力大気に曝露されないよう種々の方法が研究されており、鋼の連続鋳造の分野では、タンディッシュのシール技術は幾つか開示されている。タンディッシュの不活性ガスのシール技術は、蓋が比較的容易に設置できるという理由から、容易でありなおかつ効果も高いために、すでに一般的な技術となっている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、タンディッシュから連続鋳造鋳型に溶融合金を導くための浸漬ノズルのスライディングゲート部をシールする技術も開示されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、連続鋳造鋳型を不活性ガスでシールする技術も幾つか示されている(例えば、特許文献5〜7参照)。
特許文献5に記載の技術は、鉄鋼製の箱をダミーバーの上に設置し、そこに不活性ガスを導入することで断気し、鋳造を開始する技術である。鋳造後、非定常部である箱を除去し、欠陥部を製品にもたらさないことを特徴としている。しかしながら、鉄鋼製の箱を鋳造に合わせて毎回作製することが必要となり、また、その鉄鋼製箱をセットする段取り作業をも要し、コストや工程数が増大して非現実的と言える。
特許文献6に記載の技術は、タンディッシュ下面と鋳型を遮蔽板で覆い、そこに活性ガスを導入することで断気し、鋳造を開始する技術である。この技術も、遮蔽板の設置に手間取るという問題があり、さらに、遮蔽板によって溶鋼上部を覆ってしまうため鋳造開始時に直接溶鋼が監視できず、ダミーバー(スラブ)の引き抜きスタートの号令のタイミングを見定めるのが困難であったり、非常時に対応できないなど問題が多く、非現実的であった。
特許文献7に記載の技術は、鋳型上面を蓋で覆い、その上で、不活性ガスを鋳型に導入し断気しながら、鋳造を開始する技術である。この技術によれば溶鋼上部が不活性ガスで置換されて好ましいものの、やはり、鋳造開始時に直接溶鋼が監視できないため、特許文献6に記載の技術と同様、非現実的であった。
特開平6−39505号公報 特開平7−204808号公報 特開平8−257708号公報 特開2002−143994号公報 特開昭59−45064号公報 特開昭60−6253号公報 特開平10−314901号公報
以上説明したとおり、大気の接触による溶融合金の酸化、窒化の抑制はかねてからの課題であり、不活性ガスによるシール方法が採用されてきた。特に、蓋をしやすく、容器を密閉しやすい場合には、蓋と不活性ガスの組み合わせの効果によって、ある程度シールが保たれていた。
しかしながら、蓋の設置が構造上難しい容器、例えば鋳造での砂型、連続鋳造機の鋳型などは、鋳造開始時に溶融合金を注ぎ込む工程があるため、上部に蓋をすると作業性を悪化させていた。
したがって、本願発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、本願発明の目的とするところは、溶融合金に接触する大気を不活性ガスでパージして、蓋をせずともシールを保つことを可能とする溶融合金のシール装置を提案することである。さらに、本願発明は、このシール装置を用いた鋳造方法および連続鋳造の鋳造開始時の断気方法も提案する。
本願発明は、溶融合金を不活性ガスでシールするためのシール装置であって、溶融合金を保持するモールドの開口部に不活性ガスを供給するためのノズルと、このノズルに不活性ガスを供給するための配管を備え、ノズルは、複数の孔を有するパイプと、パイプに巻き付けられた金属多孔質体からなることを特徴としている。
また、本願発明は、溶融合金を不活性ガスでシールするためのシール装置であって、溶融合金を保持するモールドの開口部に不活性ガスを供給するためのノズルと、このノズルに不活性ガスを供給するための配管を備え、ノズルは、金属繊維集合体と、金属繊維集合体の周囲を取り巻いて略円柱状をなす金属メッシュシートとからなることを特徴としている。
さらに、本願発明は、溶融合金を不活性ガスでシールするためのシール装置であって、溶融合金を保持するモールドの開口部に不活性ガスを供給するためのノズルと、このノズルに不活性ガスを供給するための配管を備え、ノズルは、不活性ガスが噴出する噴出口に向かって拡径する拡径ノズルであり、この拡径ノズルの噴出口に、平面状または曲面状の多孔質体を備えたことを特徴としている。
本願発明のシール装置を合金の鋳造時および連続鋳造の鋳造開始時に用いることで、鋳造時にあっては溶融合金の酸化や窒化にともなう非金属介在物性欠陥を防止でき、さらに、鋳造連続鋳造にあっては鋳造初期の非定常部の歩留まりを改善でき、品質の向上と製造コストの低減に貢献する。
本願発明の好ましい実施形態について図面を用いて以下に説明する。
1.連続鋳造工程
本願発明のシール装置を適用することができる連続鋳造工程において用いられるCCM(Continuous Casting Machine、連続鋳造機)の模式図を図1に示す。図1に示す鋳造機は、溶融合金が上方から供給されてスラブが下方へ送出される垂直型の鋳造機である。本願発明は、鋳造開始時のスタートのシール技術であるので、連続鋳造機の型、すなわち垂直型、湾曲型、垂直曲げ型など型式は限定されるものではない。
まず、図示しない電気炉等で、原料を溶解する。その後、精錬工程として、脱炭、脱酸、脱硫を行い、取鍋精錬にて温度調整を行う。次に、図1に示すCCMで溶融合金を鋳造し、スラブを製造する。図1において符号10は取鍋であり、取鍋10に、上記溶解工程と精錬工程を経た溶融合金20を出鋼する。続いて溶融合金20は、取鍋10の下流側に設けられたタンディッシュ11を経て、モールド15に供給されて型入れされる。型に注湯された溶融合金20は、モールド下側に設けられたスプレー冷却帯17を通過することによって凝固させられつつ、ピンチロール18によって引き抜かれて所定の厚さを有するスラブ21が得られる。スラブ21は、所定の位置にてトーチ19によって切断される。以上は、鋳造開始後一定時間が経過した、鋳造の定常状態である。
続いて、連続鋳造のスタートについて説明する。図2は、上記連続鋳造機のスタートのセッティング状態であり、タンディッシュ11とモールド15部分をより詳細に示した拡大図である。タンディッシュ11に保持された溶融合金20は、ストッパー14を制御することによって浸漬ノズル12を経由して吐出孔13から、モールド15内に供給される。符号16はシール材で、溶融合金が漏れ出さないようにシールする部材である。モールド15内に所定量の溶融合金20が注湯された後、ダミーバー22(ピンチロール18までセットされている)を鋳造方向(図において鉛直下方向)に引き抜いて鋳造を開始し、ダミーバー22の引き抜きと共に溶融合金20を供給し続けることで、連続的にスラブを鋳造する。
スタート前は、モールド15内は大気で満たされており、溶融合金20をモールド15内に注湯する際、溶融合金20が酸素や窒素を巻き込む。また、注湯開始からダミーバー22を引き抜き始め、モールドパウダーを投入するまでの間に溶融合金20の液面が大気に曝され続けることによって酸化物や窒化物が生成し、製造後のスラブの品質を悪化させることは既に述べたとおりである。本願発明は、図3に示すように、鋳造スタート時にモールド15の上部にシール装置を設けることによって、溶融合金と大気の接触を抑制する断気方法である。
2.鋳型(砂型)を用いた鋳物
次に、本願発明のシール装置を適用することができる他の実施態様である鋳型における鋳物の鋳造工程の模式図を図4に示す。まず、図示しない電気炉等で、原料を溶解する。その後、精錬工程として、脱炭、脱酸、脱硫を行い、取鍋精錬にて温度調整を行い、取鍋10に保持された溶融合金20を得る。符号40は、所望の部品形状が内部に形成された鋳型(砂型)であり、鋳型40の注入口より、溶融合金20を注湯する。これらを冷却して溶融合金20が凝固した後、鋳型40を取り外し、所望の鋳造物を得る。
上記工程において、溶融合金20を鋳型40に注湯するまでは、鋳型40内は大気で満たされており、溶融合金20を鋳型40内に注湯する際、溶融合金20が酸素や窒素を巻き込む。また、鋳型40内が完全に溶融合金20で満たされるまでの間に溶融合金20の液面が大気に曝され続けることによって酸化物や窒化物が生成し、鋳造後の鋳造物の品質を悪化させることは既に述べたとおりである。本願発明は、図4に示すように、鋳造時に鋳型40の上部であって開口部にシール装置を設けることによって、溶融合金20と大気の接触を抑制する鋳造方法である。
3.シール装置
以下、本願発明の鋳造方法(断気方法)に用いるシール装置について詳細に説明する。図3は、本願発明の一実施形態に係るシール装置を連続鋳造機のモールドに設けた状態を示す斜視図である。モールド15の上端開口部の片側には、配管31と、この配管に接続された噴出ノズル32からなるシール装置が設けられている。不活性ガスは、噴出ノズル32から噴き出された後、モールド15から大気を追い出し、モールド15内部を不活性ガスで満たす。これによりモールド15の内部と外界をシールすることができる。
図5〜7は、本願発明のシール装置の一実施形態に係るノズルの拡大図である。配管31の先端には、不活性ガス噴出ノズル32が接続されている。図5に示すように、ノズル32においては、パイプに孔が複数設けられており、ここから不活性ガスが噴出する。さらに、図6に示すように、それら孔を覆うようにして、金属多孔質体が巻き付けられている。この金属多孔質体によって、孔から噴き出す不活性ガスは金属多孔質体全体に拡散して全面から微少量ずつ噴出するため、直管の一端から噴出する場合および複数の孔のみから噴出する場合と比較して流速を緩やかにすることができ、不活性ガスがモールド15や鋳型40を満たすにあたり、大気を巻き込むことが抑制される。
また、本願発明においては、図7に示すように、ノズルを水平に設置した場合、鉛直方向で上半分にカバーを設けることができる。カバーを設けない場合、不活性ガスは全方向に噴出するが、カバーを設けることで不活性ガスは主に下方向のみに噴出され、不活性ガス流が乱されて大気を巻き込むことをより抑制することができる。
図8は、本願発明のシール装置の他の実施形態に係るノズル32の拡大図である。配管31の先端には、図示しない超極細ステンレス鋼繊維(繊維径50μm以下)が充填されていて、その周囲をステンレスメッシュ34によって覆われて構成されたノズル32が接続されている。この超極細ステンレス鋼繊維およびステンレスメッシュによって、配管31から供給される不活性ガスはノズル32全体に拡散して全面から微少量ずつ噴出するため、流速を緩やかにすることができ、不活性ガスがモールド15や鋳型40を満たすにあたり、大気を巻き込むことが抑制される。
図10(a)は、従来の配管の先端に多孔質体を設けたものの拡大図であり、図10(b)〜(e)は、本願発明のシール装置の他の実施形態に係るノズル32の拡大図である。(b)〜(e)は、ノズルの先端が拡径しており、不活性ガスの噴出口において多孔質体が平面状または球面の一部をなす曲面状に構成されている。このように、ノズル先端が拡径しているため、不活性ガス流は拡散して流速が急激に低下し、拡径ノズルの多孔質体全体から微少量ずつ噴出するため、流速を緩やかにすることができ、不活性ガスがモールド15や鋳型40を満たすにあたり、大気を巻き込むことが抑制される。
続いて、上述した溶融金属と大気の接触による問題を解決するために、本願発明者らが鋭意行った実験、およびその実験と併せて行った計算シミュレーションについて、以下に説明する。
まず、実験室において20kgの高周波誘導炉を用いてSUS304(Fe−18mass%Cr−8mass%Ni)を溶解した。るつぼにはマグネシアを用い、Alを0.1%添加して溶融合金を脱酸した。フリーボード(溶融合金上面からるつぼ上面までの空間)にArガスを吹き付けて、連続的に酸素濃度計でフリーボードの雰囲気の酸素濃度を測るというシール実験を行った。ここでは、るつぼ上面に蓋をして機密性を維持した。そうしたところ、酸素を10%以下に低下させると、溶融合金表面に形成するスカム(溶融合金が酸化した滓)が無くなることがわかった。ただし、実験後の鋼塊を調査したところ、100μmを超えるような大型の非金属介在物は存在していた。
さらに、雰囲気の酸素を5%以下まで低下させると、100μmを超えるような大型の非金属介在物も無くなることが明らかとなった。この予備実験から、シール技術の目標を酸素濃度で10%以下必須、最終的ターゲットを5%以下と定めた。もちろん前提条件は、上記したとおり、作業性を阻害しないために「蓋なし」である。
続いて、実機的なレベルでの実験に移行した。まず、溶融合金を介さない冷間実験を実施した。まず従来条件での測定を行い、ベンチマークとした。溶融合金保持容器やモールド内をシールするために、内径3.17mm(一分)のストレート型ノズルを用いてArガスを吹き込んでいた。
その結果、シールするべき空間の酸素濃度は、18〜20%とほとんど大気と変わらないことが判明した。まずはストレート型ノズルを2個にしてシールを試みたが、酸素濃度は16%ほどまでしか低下せず、狙った効果は得られなかった。この理由を、計算シミュレーションにより鋭意解析したところ、Arで直線的な強い流れを作ると、その流れにつられて大気も引き込まれてしまうことがわかった。
そこで、強い直線的な流れを作らないように、流速を分散させるべくノズルを改造する必要があるとの結論に至った。種々のノズル形状を考案して試行したところ、比較的ポーラスな形態を持ち合わせるタイプが好ましいことが判明した。さらに、耐火性、耐久性を考慮に入れて、ステンレスたわしを内径6.35mm(二分)の配管に接続して冷間実験に供したところ、酸素濃度計では測定限界以下まで酸素濃度を低下させることに成功した。ここでは、たわし1個あたり50gであり、略球体の直径は80mmで、板幅0.5mm、板厚0.05mm、長さ252mをらせん状に巻いたかさ比重0.187g/cmの家庭用を用いた。なお、ステンレスたわしノズルは1つで行った。
さらに、冷間において、早期にパージして、溶融合金保持容器や鋳型内を不活性ガスで満たすためには、不活性ガスの供給量も10L/min以上に高く保つ必要性があるという結果であった。
続けて、実機レベルに最も近い状態の溶融合金を介する実験に移行した。ここでは、溶融合金を注ぐ時の不活性ガスによる断気の状態を、60トン規模の溶融合金を鋳込む連続鋳造機のモールドを用いて実験した。原料を電気炉で溶解し、AODおよびVODで精錬した60トン規模のNH840(INCOLOY840相当、UNSS33400相当;Fe−20mass%Cr−20mass%Ni−0.4mass%Ti−0.4mass%Al)の溶融合金とした。手順は冷間と同じく、浸漬ノズルを介してモールドに溶融合金を注ぐ前から、モールドをArでシールし始めた。続けて、タンディッシュのストッパーを開けて、モールドに注湯を開始した。モールドを溶融合金が満たし、モールドパウダーを溶融合金表面に投入するまで、Arシールを続けた。このような手順で3チャージほど繰り返し実験を行った。この一連の実験では、途中でArガス流量を2〜3000L/minの間で変化させ、酸素濃度がどのように影響を受けるかについても研究した。
その結果、溶融合金を注ぎ始めても、Arを100L/min以上の供給量で吹き続ければ、酸素濃度10%以下を達成できる。最終ターゲットの酸素濃度5%以下を達成するには、200L/min以上の流量を必要とすることも判明した。このように、冷間実験の10L/minよりも高い供給量を要する理由は、1400〜1500℃と高温の溶融合金に曝された時に、気体が膨張して上部の室温の大気と入れ代わる流れが発生するからである。
以上説明したように、本願発明は、実験、解析、計算シミュレーションを通して完成されたものであり、具体的には、次の通りである。すなわち、溶融合金を保持するモールドの開口部に不活性ガスを供給するためのノズルと、このノズルに不活性ガスを供給するための配管を備え、ノズル先端が、多孔質体で構成されていることを特徴とする溶融合金を不活性ガスでシールするためのシール装置である。
また、上記多孔質体としてステンレスたわしを配したノズルを使用する場合、溶融合金の気相に暴露される表面積に対して、1個/400000mm以上の割合で配置することが望ましい形態である。そのステンレスたわしはかさ比重0.1〜0.4g/cmであることがより望ましいものである。不活性ガスの流量は、100〜2000L/minに制御すべきである。そして、不活性ガスはArがよい。
また、本願発明は鋳物の鋳造方法も提案しており、上記のシール装置を、溶融合金の鋳造時に鋳型の上に配置して、大気から断気することを特徴とする鋳造方法である。本願発明ではさらに、連続鋳造の鋳造開始時の断気方法も提案する。すなわち、連続鋳造の鋳造開始時に用いて溶融合金を大気から断気することを特徴とする連続鋳造の鋳造開始時の断気方法である。
以下に本願発明を実施するために最良の形態を、数値限定の理由を示しながら説明する。本願発明は、溶融合金を不活性ガスでシールするためのシール装置であり、ノズルとそれに不活性ガスを供給するための配管から構成されている。このノズルの先端には、多孔質体が設けられており、図5〜7に示す実施形態における金属多孔質体としては、細孔が全体に形成されていて不活性ガスを拡散することができる限りにおいてはその材質については特に限定されず、ステンレスウールやステンレスたわし等の多孔質体を使用することができる。本願発明の実施例においては、重さ50g、幅0.5mm、厚さ0.05mm、長さ250m程度のステンレス線材を螺旋状に巻いた、かさ比重0.187g/cm、直径80mmφのたわしを複数用いている。
パイプの長さは、使用するモールドや鋳型によって変化し、また、ステンレスたわしの使用個数はパイプ長さによって変化する。パイプ長さに対してたわしの使用個数が少ない場合、不活性ガスの拡散が全体的に不均一となる。たわしのかさ比重が低い領域ではそこから供給される不活性ガスの流速が高くなり、大気の巻き込みを起こし、鋳型内の酸素濃度は上昇してしまう。一方、パイプ長さに対してたわしの使用個数が多いと、かさ比重が極端に高くなってしまい、供給すべき不活性ガスが供給できず、断気状態を維持することができない。そのため、本願発明では最適パイプ長さを400〜600mmとし、たわしの最適設置個数をパイプ100mmあたり1〜2個と定めた。好ましくは100mmあたり1〜1.5個である。また、金属多孔質体の好ましいかさ比重は、0.1〜0.4g/cmである。
次に、図8に示す実施形態における超極細ステンレス鋼繊維としては、繊維径50μm以下のものを用いることが好ましい。繊維径が50μmを超えると、空孔が不均一となり、不活性ガスの流速にばらつきが生じて好ましくない。また、超極細ステンレス鋼繊維の周囲に設けるステンレスメッシュとしては、同様の理由から、約50メッシュ以下の格子を有するメッシュが好ましい。そのノズルの長さは、上記の実施形態と同様に300〜500mmであり、直径は50〜70mmが好ましい。金属繊維集合体はかさ比重0.1〜0.4g/cmが好ましい。
図10(b)〜(e)に示す実施形態におけるノズル先端に設ける多孔質体としては特に限定されず、樹脂製のスポンジや繊維集合体、あるいは金属多孔質体とすることができる。この多孔質体の形状は、図10に示すように、平面状や曲面状とすることができ、曲面状の場合、球面の一部を構成する曲面であると、不活性ガス流が乱されず、好ましい。なお、不活性ガスの流量を200L/min(200000cm/min)で一定とした場合の、拡径ノズルの形状、最大径、吐出面積、流速の関係を表1に示す。
Figure 2009090342
このように、吐出面積が一定であれば、流速も一定となるので、例えば1方向へ不活性ガスを噴出させたい場合は(b)を、全方向に噴出させたい場合は(e)を選択するというように、形状を設定すればよい。
さらに、本願発明の各シール装置のノズルを、溶融合金の気相に暴露される表面積に対して、1個/400000mm以上の割合で配置することがより好ましい実施形態である。400000mmに1個未満の配置では、シールが破れる場所が発生してしまう。そのため、1個/400000mm以上の割合で配置することとした。特に限定はしないが、連続鋳造機で用いる場合、10000mm未満の面積に1個以上配置すると、ノズルが溶融合金表面を遮ってしまうことによって、監視できなくなる可能性がある。
本願発明のシール装置に用いられる多孔質体はかさ比重0.1〜0.4g/cmであるとより良い。0.4g/cm超えでは密すぎて、不活性ガスの抵抗体となっていまい、すなわち圧力損失が大きく、供給量が低下しまうため、パージに時間を要するようになる。0.1g/cm未満であると、流れが強くなり、大気を巻き込む。そのため、かさ比重0.1〜0.4g/cmと定めた。好ましくは0.15〜0.25g/cmである。
不活性ガスの流量は100〜2000L/minに調節する。100mL/min未満では、高温の溶融合金を注いだ時に、気体が膨張して上部の室温の大気と入れ代わる流れが発生し、断気状態が維持できなくなり酸素濃度が10%を超えてしまう。2000L/minを超えて高い供給量を得るには、設備費用を要するばかりでなく、溶融合金の表面を冷やしてしまい、地金を形成し、最悪ブレークアウトに至らしめる恐れがある。そのため、100〜2000L/minと定めた。好ましくは、雰囲気の酸素濃度を5%以下に低下させることのできる200〜2000L/minとする。さらに好ましくは、200〜900L/minである。
不活性ガスは、Ar、二酸化炭素、He、Ne、Xeが挙げられるが、コストやハンドリング性を考慮すると、Arが好ましい実施形態である。また、気体の密度を考えると、Arは大気よりも高い密度を持つので、鋳型に溜まりやすい。
上記の通り定めたシール装置を、溶融合金の鋳造時に鋳型の上に配置して使用すると、鋳造品の大気酸化による非金属介在物性欠陥を防止できる。また、上記の通り定めたシール装置を、連続鋳造の鋳造開始時に用いて溶融合金を大気から断気すると、溶融合金の酸化や窒化にともなう非金属介在物性欠陥を防止できる。
なお、この方法が適用できる合金は、普通鋼、ステンレス鋼、鋳鋼はもちろんのこと、Fe−Ni合金、Ni基合金、Ni基超合金など多岐に亘り適用可能である。具体的には、NW2201(99mass%Ni)、UNS S33400(INCOLOY840相当、NH840相当;Fe−20mass%Cr−20mass%Ni−0.4mass%Ti−0.4mass%Al)、SUS321(Fe−18mass%Cr−8mass%Ni−0.3mass%Ti)、NCF825(Fe−42 mass%Ni− 21.5 mass%Cr−3mass%Mo−2mass%Cu−1mass%Ti)、NCF625(Ni−21.5mass%Cr−9mass%Mo−3.5mass%Fe−3.6mass%(Nb+Ta))、NCF690(Ni‐30.0 mass%Cr‐9.5 mass%Fe)、NW6022(Hastelloy C−22:Ni−21.3mass%Cr−13.5mass%Mo−4mass%Fe−3mass%W)、NW0276(Hastelloy C−276:Ni−15.5mass%Cr−16mass%Mo−5.5mass%Fe−3.8mass%W)、NW4400(Monel400:Ni−31.5 mass%Cu)、NCF601(INCONEL 601: Ni−23mass%Cr−14.4 mass%Fe −1.4 mass%Al)、NCF600(INCONEL 600:Ni−15.5 mass%Cr−7mass%Fe)、SUH660(Fe−25mass%Ni−15mass%Cr−1.2mass%Mo−2mass%Ti−0.2mass%Al)、NCF718(Ni−18.0mass%Cr−3.0mass%Mo−18.5mass%Fe−0.9mass%Ti−0.5mass%Al−5.1mass%(Nb+Ta))、NCF750(Ni−15.5 mass%Cr−7 mass%Fe−2.5 mass%Ti−0.9 mass%Al−1.0 mass%(Nb+Ta))、NCF800(30〜35 mass%Ni−21 mass%Cr−Fe)、NCF800H(30〜35mass%Ni−21 mass%Cr−Fe)、NCF80A(Ni−19.5 mass%Cr−2.4 mass%Ti−1.5 mass%Al)、NW6002(Ni−21.5mass%Cr−9mass%Mo−18.5mass%Fe−1.2mass%Co)、NW5500(MonelK500: Ni−29.5 mass%Cu−3mass%Al−0.5mass%Ti)、Fe−36%Ni、Fe−42%Ni、PB(パーマロイB)、PC(パーマロイC)、Fe−50.5%Ni、Fe−42%Ni−6%Cr、Fe−47%Ni−6%Cr等を挙げることができる。
以上説明した本願発明の断気方法を合金の連続鋳造の鋳造開始時に用いることで、溶融合金の酸化や窒化にともなう非金属介在物性欠陥を防止できるため、鋳造初期の非定常部の歩留まりを改善でき、品質の向上と製造コストの低減に貢献する。
以下に実施例を示して本願発明の効果を明確にする。
A.複数孔を有するノズル+ステンレスウール(連続鋳造)
図5および6にシール装置の模式図を示す。図5において、ノズル32の長さは、500mmであり、5.5mmφの切り穴を21mm間隔で23個空けた。ステンレスウールを固定するストッパーは、75mmφであった。このノズル32に、表2に示す個数のステンレスたわしをストッパー間に挿入した。このステンレスたわしは、幅0.5mm、厚さ0.05mm、長さ250m程度のステンレス製の線材を螺旋状に巻いてなる50gの家庭用たわしを用いた。このシール装置(図6に図示)を、図3に示すように連続鋳造機のモールド15の開口部に2箇所に設置して実験を行った。
また、図6に示すシール装置において、ステンレスウールの上半分をカバー33で覆い、図7に示すシール装置を作製し、同様にして図3に示すように連続鋳造機のモールド15の開口部に2箇所に設置して実験を行った。また、比較例として、ノズルを用いない、直径6.35mmφ(二分)のストレートタイプの配管を使用した。
鉄屑、ステンレス屑、Fe−Cr、Fe−Niなどの原料を、60トン電気炉で溶解し、AODおよびVODの両方または一つを用いて精錬した。取鍋に保持された溶融合金を連続鋳造機にて鋳造した。連続鋳造機は垂直型であり、モールドは銅板製で表面にNiメッキを施したものである。モールドのサイズは、154×880〜1250mmとした。スタートセッティング時のモールドの高さは、ダミーバーのセッティングを除いて500mmである。
表2に示す鋼種でモールドシールを実施した。手順は、浸漬ノズルを介してモールドに溶融合金を注ぐ前から、モールドを不活性ガスでシールし始め、続けて、タンディッシュのストッパーを開けて、モールドに注湯を開始した。モールドを溶融合金が満たし、モールドパウダーを溶融合金表面に投入するまでシールを続けた。
各項目を以下のように評価し、その評価結果を表2に示した。
・酸素濃度:ジルコニア式酸素濃度計にて測定した。
・ガス流量:流量計にて測定した。
・#1スラブ研削および切断歩留まり:連続鋳造の鋳造開始時のスラブである#1スラブを研削した後、浸透探傷試験を行った。異物欠陥によるインジケーションが消え去るまで研削し、歩留りを重量変化から計算した。研削でも除去しきれない場合は、切断するがそれも考慮に入れた。
表2に示すように、本願発明の範囲内である発明例1〜6は、いずれも酸素濃度が10vol%以下となり、#1スラブの歩留まりが90%以上と良好であった。この理由は、大気との反応により形成される酸化物、窒化物などの非金属介在物が、断気することによって形成しにくくなったためである。
一方、比較例1〜2はシール装置を用いなかったため、酸素濃度が下がらなかった。比較例3は、ガス流量が高過ぎて、溶湯が冷えて凝固物が発生した。比較例4および6は、Arの流量が不足しており、大気のパージが不十分で酸素濃度が下がらなかった。比較例5は、たわし比率が低過ぎて、不活性ガスの拡散が不十分であったため、大気の巻き込みが起こってしまった。比較例7は、たわし比率が高すぎて、Arの流量が十分確保できなかった。そのため、これらの比較例は#1スラブの歩留まりが90%未満と低くなってしまった。
Figure 2009090342
また、図6に示すカバー無しの発明例2と、図7に示すカバーを有する発明例4において、モールド内のシール開始からの経過時間と酸素濃度の関係を表すグラフを、図13および14にそれぞれ示す。図に示すように、カバー無しの場合は最終的に酸素濃度が約5%で収束するのに対し、カバー有りの場合は約2%までも低下することが分かった。
B.超極細ステンレス鋼繊維+ステンレスメッシュ
図8にシール装置の模式図を示す。図8に示すように、直径6.35mmφ(二分)のステンレスパイプに、超極細ステンレス鋼繊維を331g使用し、かさ比重が0.15g/cm程度になるように、ストッパーが75mmφ、長さ500mmとなるように詰めた。なお、ここで超極細ステンレス鋼繊維とは、直径が50μm以下の繊維である。次に、約50メッシュのステンレスメッシュを1周巻き付け、高さ500mm、直径75mmの円柱状ノズルとした。このシール装置を、図3におけるシール装置の代わりに用いて、モールドの冷間実験を行った。なお、シール装置は、モールドの開口部において1個のみを使用した。
上記シール装置とモールド上面との距離を様々に変化させて不活性ガスを流し、シール装置とモールド上面との距離と、モールド内酸素濃度の関係を調べた。その結果を図9のグラフに示す。図に示すように、モールド内の酸素濃度を5%以下に抑えるには、シール装置とモールドの距離を30mm以内に設定する必要があることが分かった。これは、距離が30mmを超えると、ノズルから噴出した不活性ガスが、モールド周辺の大気の流れの影響を大きく受け、モールド内のシール性を悪化させてしまうためである。また、モールド上面より下(マイナス表記)は、操業上−30mmまでしか下げることができない。このように、シール装置とモールドの距離を好ましい距離に設定することで、酸素濃度を1%程度まで低減できることが明らかになった。表3に、このシール装置を用いて連続鋳造機にて行った実施例を示す。この実施例では、モールド上面とシール装置との距離を全て+10mmとして実施した。
表3に示すように、本願発明の範囲内である発明例7〜10は、いずれも酸素濃度が10vol%以下となり、#1スラブの歩留まりが90%以上と良好であった。この理由は、大気との反応により形成される酸化物、窒化物などの非金属介在物が、断気することによって形成しにくくなったためである。
一方、比較例11はシール装置を用いなかったため、酸素濃度が下がらなかった。比較例10は、Arの流量が高過ぎて、溶湯が冷えて凝固物が発生した。比較例9は、Arの流量が不足しており、大気のパージが不十分で酸素濃度が下がらなかった。比較例8は、従来のストレートタイプを用いており、不活性ガスの拡散が不十分であったため、大気の巻き込みが起こってしまった。そのため、これらの比較例は#1スラブの歩留まりが90%未満と低くなってしまった。
Figure 2009090342
C.拡径ノズル
C−1)鋳物
図10(a)〜(e)に、従来のストレートパイプ配管および本願発明の拡径ノズルを有するシール装置の模式図を示す。図10(a)は従来のストレートパイプ配管であり、拡径ノズルは、図に示すように、(b)径を拡大して多孔質体で平面状に覆ったもの、(c)半球状に覆ったもの、(d)略球状に覆ったもの、(e)球状に覆ったものがある。各発明例および比較例で使用した(a)〜(e)のタイプおよび拡径した直径を表3に示す。これらのシール装置を図4に示すように鋳型に設けて、不活性ガスを噴出させた。
500kgの高周波誘導炉を用いてSUS304(Fe−18mass%Cr−8mass%Ni)など、表4に示す鋼種を溶解した。耐火物にはマグネシア系スタンプ材を用いた。また、いずれもAlを0.1%添加して脱酸した。溶鋼温度は1600℃とした。その後、図4に示すように、取鍋10に受けて、砂型(鋳型)40に次々と湯を注いでいった。
各項目を以下のように評価し、この評価結果を表4に併記した。
・酸素濃度:ジルコニア式酸素濃度計にて測定した。測定位置はシールに使わない押し湯部とした。
・ガス流量:流量計にて測定した。
・欠陥:X線透過試験を行い、0.5mm以上の欠陥があるものを有りと記した。実際、破壊して欠陥部を見ると非金属介在物性の欠陥があった。
表4に示すように、本願発明の範囲内である発明例11〜15は、いずれも酸素濃度が10%以下となり、欠陥が防止できた。一方の比較例は、12はシールなし、13と14はいずれも従来の(a)ストレートタイプであり、酸素濃度が下がらず欠陥が発生した。比較例15は本願発明のシール装置を適用したが、流量が低すぎて欠陥が発生した。比較例16は逆に流量が高すぎて、溶湯を冷却してしまい、溶鋼が細部に回らなかった。
Figure 2009090342
C−2)連続鋳造
上記鋳物の項目と同様、図10に示すシール装置を用いた。これらシール装置を、図3におけるシール装置の代わりに用いて、モールドの冷間実験を行った。なお、シール装置は、モールドの開口部において1個のみを使用した。
鉄屑、ステンレス屑、Fe−Cr、Fe−Niなどの原料を、60トン電気炉で溶解し、AODおよびVODの両方または一つを用いて精錬した。取鍋に保持された溶融合金を連続鋳造機にて鋳造した。連続鋳造機は垂直型であり、モールドは銅板製で表面にNiメッキを施したものである。モールドのサイズは、154×800〜1230mmである。スタートセッティング時のモールドの高さは、ダミーバーのセッティングを除いて500mmである。
表5に示す鋼種でモールドシールを実施した。手順は、浸漬ノズルを介してモールドに溶融合金を注ぐ前から、モールドを不活性ガスでシールし始め、続けて、タンディッシュのストッパーを開けて、モールドに注湯を開始した。モールドを溶融合金が満たし、モールドパウダーを溶融合金表面に投入するまでシールを続けた。
各項目を以下のように評価し、その評価結果を表5に示した。
・酸素濃度:ジルコニア式酸素濃度計にて測定した。
・ガス流量:流量計にて測定した。
・#1スラブ研削および切断歩留まり:連続鋳造の鋳造開始時のスラブである#1スラブを研削した後、浸透探傷試験を行った。異物欠陥によるインジケーションが消え去るまで研削し、歩留りを重量変化から計算した。研削でも除去しきれない場合は、切断するがそれも考慮に入れた。
表5に示すように、本願発明の範囲内である発明例12〜18は、いずれも酸素濃度が10vol%以下となり、#1スラブの歩留まりが90%以上と良好であった。この理由は、大気との反応により形成される酸化物、窒化物などの非金属介在物が、断気することによって形成しにくくなったためである。
一方、比較例16はシールなし、比較例13〜15はいずれも従来のストレートタイプであり、酸素濃度が下がらなかった。比較例17は本願発明のシール装置を適用したが、流量が低すぎた。比較例18は逆に流量が高すぎて溶湯を冷却してしまい、溶鋼表面に凝固物が形成し、それが巻き込まれてしまった。そのため、これらの比較例は#1スラブの歩留まりが90%未満と低くなってしまった。
Figure 2009090342
連続鋳造の鋳造開始時のスラブである#1スラブを、鋳造方向に垂直な断面で切断し、浸透探傷試験を行った時のスラブ断面の画像を図11および12に示す。鋳造鋼種はNH840であり、スラブの採取位置は、ダミーバーと接している面から450mmの部分に位置しており、まさしく鋳造開始地点である。図11は本願発明のシール装置を用いずに鋳造した比較例2の#1スラブ断面である。図12は本願発明のシール装置を用いて鋳造した発明例2の#1スラブ断面である。
図11では、外縁部の染色部分、すなわち非金属介在物が多く見られるのに対し、図12のスラブでは、これが大幅に低減されていることが分かる。なお、各写真中央部の染色については、製品に無害な大きさのセンターポロシティーであるので、比較は外縁部の染色部についてのみ行えばよい。
また、発明例8(表3)において、シール開始からの時間経過と、モールド内の酸素濃度との関係を表すグラフを図15に示す。このグラフから明らかなように、本願発明のシール装置を用いれば、酸素濃度は速やかに低減し、注湯開始前に5%を実現することができた。さらに、注湯開始後もその低濃度を維持することができて好適である。
非金属介在物性欠陥を防止し、鋳造合金の歩留まりおよび品質を向上させ、さらに製造コストの低減に寄与する。
本願発明における連続鋳造機を示す模式図である。 タンディッシュ部分とモールド部分の拡大図である。 本願発明の連続鋳造におけるシール装置の設置状態を示す斜視図である。 本願発明の鋳造におけるシール装置の設置状態を示す斜視図である。 本願発明の複数孔を有するノズルを示す模式図である。 本願発明の複数孔を有するノズルにステンレスウールを装着したシール装置を示す模式図である。 本願発明の複数孔を有するノズルにステンレスウールを装着したシール装置にカバーを設けた状態を示す模式図である。 本願発明の超極細ステンレス鋼繊維ノズルにステンレスメッシュを装着したシール装置を示す模式図である。 本願発明のシール装置のノズルとモールドの距離とモールド内酸素濃度の関係を示すグラフである。 本願発明の拡径ノズルを示す模式断面図である。 従来の方法で作製したスラブ断面の浸透探傷試験結果を示す写真である。 本願発明の方法で作製したスラブ断面の浸透探傷試験結果を示す写真である。 本願発明におけるシール開始からの経過時間とモールド内酸素濃度の関係を示すグラフである。 本願発明におけるシール開始からの経過時間とモールド内酸素濃度の関係を示すグラフである。 本願発明におけるシール開始からの経過時間とモールド内酸素濃度の関係を示すグラフである。
符号の説明
C 連続鋳造機
10 取鍋
11 タンディッシュ
12 浸漬ノズル
13 吐出孔
14 ストッパー
15 モールド
16 シール材
17 スプレー冷却帯
18 ピンチロール
19 トーチ
20 溶融合金
21 スラブ
22 ダミーバー
31 配管
32 噴出ノズル
33 カバー
34 ステンレスメッシュ
40 鋳型

Claims (12)

  1. 溶融合金を不活性ガスでシールするためのシール装置であって、溶融合金を保持するモールドの開口部に上記不活性ガスを供給するためのノズルと、このノズルに上記不活性ガスを供給するための配管を備え、上記ノズルは、複数の孔を有するパイプと、上記パイプに巻き付けられた金属多孔質体からなることを特徴とする溶融合金のシール装置。
  2. 前記パイプの延在方向を水平にして設置した場合において、巻き付けられた前記金属多孔質体のうち鉛直上半分の表面がカバーで覆われていることを特徴とする請求項1に記載の溶融合金のシール装置。
  3. 溶融合金を不活性ガスでシールするためのシール装置であって、溶融合金を保持するモールドの開口部に上記不活性ガスを供給するためのノズルと、このノズルに上記不活性ガスを供給するための配管を備え、上記ノズルは、金属繊維集合体と、上記金属繊維集合体の周囲を取り巻いて略円柱状をなす金属メッシュシートとからなることを特徴とする溶融合金のシール装置。
  4. 前記金属繊維集合体は、直径が50μm以下の繊維からなることを特徴とする請求項3に記載の溶融合金のシール装置。
  5. 溶融合金を不活性ガスでシールするためのシール装置であって、溶融合金を保持するモールドの開口部に上記不活性ガスを供給するためのノズルと、このノズルに上記不活性ガスを供給するための配管を備え、上記ノズルは、不活性ガスが噴出する噴出口に向かって拡径する拡径ノズルであり、この拡径ノズルの噴出口に、平面状または曲面状の多孔質体を備えたことを特徴とする溶融合金のシール装置。
  6. 前記曲面は、球面の一部であることを特徴とする請求項5に記載の溶融合金のシール装置。
  7. 前記不活性ガスの流量が100〜2000L/minであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶融合金のシール装置。
  8. 前記ノズルを、前記溶融合金の気相に暴露される表面積に対して、1個/400000mm以上の割合で配置することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載に記載の溶融合金のシール装置。
  9. 前記多孔質体または金属繊維集合体は、かさ比重0.1〜0.4g/cmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の溶融合金のシール装置。
  10. 前記不活性ガスは、Arであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の溶融合金のシール装置。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の溶融合金のシール装置を、溶融合金の鋳造時に鋳型の上に配置して、上記鋳型に保持された溶融合金を大気から断気することを特徴とする鋳造方法。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の溶融合金のシール装置を、連続鋳造の鋳造開始時に用い、モールドに保持された溶融合金を大気から断気することを特徴とする連続鋳造開始時の断気方法。
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