JP2009078758A - 車両用サスペンション制御装置 - Google Patents

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博志 内田
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真一郎 山下
Ichiro Hagiwara
一郎 萩原
Naoto Fukushima
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Abstract

【課題】車輪3に付与する制御力によって、旋回中の自動車Aの内外輪の接地荷重配分を適切に変化させ、これにより旋回挙動を最適に制御できるようにする。
【解決手段】旋回中に生じるヨーレイトφ′及び横滑り量Vの目標値からの偏差が最小となるように、所定の制御則に則って各車輪3毎の電磁アクチュエータ2を制御する。その制御則として、少なくとも、ヨーレイト偏差の大きさを表す項と、横滑り量偏差の大きさを表す項と、電磁アクチュエータ2から制御対象である車体B及び車輪3への伝達エネルギを表す項と、該車体B及び車輪3の全エネルギ収支を表す項とを、有する関数Lの積分を最小化する最適制御則を用いる。自動車Aの走行状態に基づき、最適制御則に含まれる操縦性及び安定性の重み係数κの値を変更して、挙動制御の特性を補正する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、車体に懸架した車輪に制御力を付与し、これにより内外輪の荷重配分を変化させて、車両の旋回挙動を制御するようにしたサスペンション制御装置に関する。
従来より、この種のサスペンション制御装置としては、例えば特許文献1に開示される電磁サスペンション装置のように、車体と車輪との間に配置したアクチュエータ(リニアモータやボールねじ機構等)によってサスペンションをストロークさせるようにしたものが知られている。
また、特許文献2に記載の車両懸架装置では、車両の旋回中に各車輪のショックアブソーバの減衰力を可変制御して、ロール剛性を高めるとともに、その際に前輪側と後輪側とでロール剛性の変更度合いを異ならせて、前後輪のコーナーリングフォースに差を付けることで、車両のヨー方向の挙動を制御するようにしている。
特開2007−083813号公報 特開平9−109641号公報
ところで、前者の従来例(特許文献1)のようなアクチュエータを用いて車輪に制御力を付与し、その接地荷重を増減することにより、車両の前輪側及び後輪側でそれぞれ内外輪の接地荷重配分を調整すれば、後者の従来例(特許文献2)のように前輪側及び後輪側のロール剛性を異ならせてコーナーリングフォースに差を付けることができ、車両のヨー方向の挙動を制御することができる。
しかしながら、前記後者の従来例では、ショックアブソーバの減衰力制御において車両の旋回中に制御定数k1を高めの値k2に切り換えるようにしており、単なる2段切換えに過ぎないので、車両の挙動を適切に制御できるものとは言い難い。すなわち、制御によって車両に作用するヨーモーメントが不十分であれば、操舵に対する追従性(操縦性)を十分に高めることができず、一方でヨーモーメントが大き過ぎれば挙動が乱れる虞れがあるからである。
斯かる点に鑑みて本発明の目的は、車輪に付与する少なくとも上下方向の制御力によって車両旋回中の内外輪の接地荷重配分を適切に変化させ、これにより当該車両の操縦性及び挙動安定性を両立した最適な旋回挙動制御を実現することにある。
前記の目的を達成するために、本発明では、車両旋回中にヨーレイト及び横滑り量の目標値からの偏差がいずれも最小となるように、所定の評価関数を最小化する最適制御則に則ってアクチュエータを制御するようにした。
すなわち、請求項1の発明は、車体に懸架した車輪にアクチュエータによって少なくとも上下方向の制御力を付与するようにした車両用サスペンション制御装置を対象として、前記アクチュエータを所定の制御則に則って制御し、その制御力によって車輪の接地荷重を増減することにより旋回中の内外輪の接地荷重配分を変化させて、車両の旋回挙動を制御する挙動制御手段を備える場合に、前記制御則は、少なくとも、車両のヨーレイトの目標値からの偏差の大きさを表す項と、車両横滑り量の目標値からの偏差の大きさを表す項と、有する関数の積分である評価関数を最小化するような最適制御則としたものである。
前記構成の車両用サスペンション制御装置では、車両の旋回中に挙動制御手段により、所定の制御則に則ってアクチュエータの制御が行われ、1つ以上の車輪に少なくとも上下方向の制御力が付与されて、その接地荷重が増減変化するようになる。これにより、旋回中の車両において内外輪の接地荷重配分を変化させることができ、前輪側及び後輪側の少なくとも一方のコーナーリングフォースを調整して、車両の旋回挙動を制御することが可能になる。
その際、前記所定の制御則が車両のヨーレイト偏差及び横滑り量偏差を最小化するような最適制御則であれば、これに則って決定される制御力が車輪へ付与されることにより、車両の旋回挙動は、ヨーレイト及び横滑り量がいずれも運転操作に相応しいものとなり、操縦性及び安定性を両立した最適な挙動制御が実現できる。
ところで、一般に最適制御則を解析的に導くことは難しく、前記のような制御を実際に行うためには実時間で最適制御問題を解かなくてはならないから、車両への適用は困難であると考えられていた。この点、本願の発明者は、詳細は後述するが、制御対象のエネルギ収支に着目して、システムを漸近安定させる最適制御則を解析的に導く手法を提案しており、こうして導かれた最適制御則を用いれば、前記のような制御を実現できる。
すなわち、例えば、最適制御則は、ヨーレイト偏差及び横滑り量偏差のそれぞれの大きさを表す項に加えて、少なくとも、アクチュエータから制御対象である車体及び車輪への伝達エネルギを表す項と、該車体及び車輪の全エネルギ収支を表す項とを、有する関数の積分を最小化するものとして求められ、以下の式(A)で表される。
Figure 2009078758
但し、Uは、制御力による車輪の接地荷重変化量の目標値であり、Uは、制御力の加わらないときに車輪の横力によって車両に作用するヨーモーメント、Uは、単位制御入力を加えたときに車輪の横力によって車両に作用するヨーモーメントである。また、φ′はヨーレイトであってヨーレイトセンサにより検出可能である。tarφ′は目標ヨーレイトであって、例えば車速及びステアリング操舵角等から求められる。さらに、κ、r、rは、それぞれ、制御の重み係数であり、望ましい制御特性になるように予め実験、解析等によって設定される。
より具体的に、式(A)のUは、例えば以下の式(B)で表され、Uは式(C)で表される。
= l[(μW−aW 2)Γ+(μW−aW 2)Γ] ・・・ (B)
= l[(μ−2aW)Γ−(μ−2aW)Γ
−l[−(μ−2aW)Γ+(μ−2aW)Γ] ・・・ (C)
式(B),(C)においてl,lは、それぞれ、車体重心から前車輪及び後車輪までの前後方向の距離、aはタイヤの特性によって決まる定数であり、それらは車両やタイヤの諸元に基づいて設定される。路面摩擦係数μは例えば車速及びエンジン出力等から従来周知の手法により推定される。また、W,W,…は、各車輪の接地荷重を表し、例えば車速及びステアリング操舵角等から推定される。さらに、Γ,Γ,…は、それぞれ、各車輪の横力の最大値に対する比率を表し、例えばマジックフォーミュラ等のタイヤモデルを用いて推定される。
前記のような最適制御により制御力を付与して接地荷重を増減させる車輪は、例えば旋回内方の前車輪等、最低1輪であってもよいが、好ましいのは前輪或いは後輪のいずれかにおいて内外輪の一方の接地荷重を増大させ、他方は減少させることであり(請求項3,4)、こうすれば、効率良く内外輪の接地荷重配分を変更することができる。その際、制御演算の高速化の観点からは内外輪の接地荷重の増減変化量を同じにするのが好ましい。
より好ましいのは、車両前側の内外輪の一方の接地荷重が増大し、他方は減少するとともに、車両後側の内外輪の前記一方の接地荷重は減少し、他方は増大するようにアクチュエータを制御することであり(請求項5)、こうすれば、内外輪の接地荷重変化の向きが車両の前側及び後側で逆向きになるので、車両に作用するロール・モーメントも逆向きになり、挙動制御に起因する車両のロール軸周りの振動を抑制することができる。尚、この場合にも各輪の接地荷重の増減変化量は同じにするのが好ましい(請求項6)。
以上、説明したように、本発明に係る車両用のサスペンション制御装置によると、アクチュエータにより車輪に少なくとも上下方向の制御力を付与して、車両の旋回中に内外輪の接地荷重配分を変化させることにより、その旋回挙動を制御するようにしたものにおいて、前記アクチュエータの制御を、ヨーレイト偏差及び横滑り量偏差がいずれも最小化するような最適制御則に則って行うことで、車両の最適な旋回挙動制御を実現することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(サスペンション制御装置の概略構成)
図1には、本発明に係るサスペンション制御装置Sを搭載した自動車A(車両)を模式的に示し、この例では、図(a)に示すように、前後左右のサスペンション1FR,1FL,1RR,1RLにそれぞれ電磁アクチュエータ2,2,…を設けている。各サスペンション1FR,1FL,…は、それぞれ、車輪3(タイヤ3a、ホイール3b)及びそれを支持するホイールサポート等のサスペンション部材(図示せず)を含めた所謂ばね下の部材を、例えばコイルばね4(板ばねやトーションバー或いは空気ばね等でもよい)及びショックアブソーバ5を介して車体Bに連結するものであり、そのコイルばね4等と並列に車体Bとの間に設けた電磁アクチュエータ2によって、車輪3に少なくとも上下方向の制御力を付与するようになっている。
同図(b)に模式的に示すように、サスペンション1は、力学的には車輪3等がコイルばね4及びショックアブソーバ5によってばね上の部材6(主に車体Bの分担質量分)に連結されてなる2自由度の振動系とみなすことができる。図の例では、ばね下の質量をM、タイヤ3aのばね定数をK、コイルばね4のばね定数をK、ショックアブソーバ5の減衰係数をCと表し、ばね上の質量はMと表している。
また、車輪3の接地する路面の凹凸、即ち上下方向変位をq、ばね下の上下方向変位をq、ばね上の上下方向変位をqと表し、電磁アクチュエータ2に入力される制御量はuと表している。この制御量uに対応して駆動される電磁アクチュエータ2は、ばね下に上下方向の制御力を付与する一方、それとは逆向きの反力をばね上に付与することになる。電磁アクチュエータ2の発生する制御力は、ばね下及びばね上を互いに押し離す向きを正値とし、両者を引き寄せる向きを負値とする。
尚、電磁アクチュエータ2としては、一例としてリニアモータが用いられ、ばね下に連結したロッドには永久磁石が、また、それを囲むようにばね上には駆動用コイルが、それぞれ配置されている。駆動用コイルへの給電制御によってロッドの進退駆動力が制御されて、ばね下、ばね上へそれぞれ制御力が付与される。勿論、ロッドをばね上に連結してもよい。
そして、各車輪3,3,…毎の電磁アクチュエータ2,2,…の制御がコントローラ10によって行われる。図2に模式的に示すように、自動車Aの車体Bには、各車輪3,3,…毎のサスペンション1FR,1FL,…の取付部位(ばね上)に対応して上下方向の加速度q″を検出する加速度センサ11,11,…と、サスペンション1のストロークq(=q−q)を検出するストロークセンサ12,12,…とが備えられている。
また、自動車Aの走行速度(車速)Vを検出する車速センサ13と、同横加速度V′を検出する横加速度センサ14と、同ヨーレイトφ′を検出するヨーレイトセンサ15と、同ステアリング操舵角δを検出する舵角センサ16と、が備えられている。但し、センサの種類は前記のものに限定されず、例えば周知の車輪速センサからの出力に基づいて車速Vを演算するのであれば、前記車速センサ13はなくてもよい。尚、この実施形態では前記センサ13〜16が、後述するコントローラ10の走行状態量検出部10bとともに、自動車Aの走行状態量を検出する走行状態量検出手段を構成する。
コントローラ10は、前記各センサ11〜16等からの信号を受けて各車輪3,3,…毎、即ち各サスペンション1FR,1FL,…毎の電磁アクチュエータ2,2,…を制御し、それらの発生する制御力によってサスペンション1のストロークを積極的に変更する。具体的には路面の凹凸等による入力を吸収して、車体Bへの振動伝達を軽減するとともに、慣性力による車両の姿勢変化を抑えるようにして、乗り心地及び運動性能を高次元で両立させる。
また、コントローラ10は、前記各サスペンション1FR,1FL,…毎の電磁アクチュエータ2,2,…を所定の制御則に則って制御し、それらの発生する制御力にによって車輪3の接地荷重を増減させることにより、自動車Aの旋回中に内外輪の接地荷重配分を変化させて、その旋回挙動を制御するようになっている。
すなわち、この実施形態では、自動車Aの前後左右4車輪3,3,…の接地荷重W(i=1,2,…)をそれぞれ変更するようにしており、図3(a)に模式的に示すように、例えば左旋回中の自動車Aの操縦性を高めるのであれば、前輪側では旋回内輪である左側前輪で接地荷重Wが増大(図に斜線を入れて示す摩擦円半径が拡大)し、旋回外輪である右側前輪では減少するとともに、後輪側では旋回内輪(左側後輪)では接地荷重Wが減少し、旋回外輪(右側後輪)では増大するように、各サスペンション1FR,1FL,…毎の電磁アクチュエータ2,2,…を制御する。その際、制御に係る演算量をできるだけ少なくして応答性を高めるために、各車輪3,3,…毎の接地荷重W,W,…の増減量は全て同じ大きさUになるようにしている。
そうして前輪側において旋回内輪の接地荷重Wが増大し、旋回外輪の接地荷重Wが減少すると、タイヤ3aのグリップ力の非線形性から、同図(b)に示すように旋回内輪の横力の増分が同外輪の横力の減少分よりも大きくなるので、内外輪3,3を合わせた前輪側の横力が増大してコーナリングフォースが大きくなる。一方、後輪側においては、前輪側とは反対に接地荷重配分が旋回外方寄りに変化し、図示は省略するが内外輪を合わせた横力は減少して、コーナリングフォースも小さくなる。よってヨーモーメント(図の例では反時計周りのヨーモーメントφ)が増大し、ステアリング操舵に追従する自動車Aの操縦性が高くなるのである。
尚、詳しい説明は省略するが、前記と反対の向きに制御力を加えて各車輪3,3,…の接地荷重W,W,…をそれぞれ前記とは逆向きに変化させると、前輪側のコーナリングフォースが小さくなる一方、後輪側のコーナリングフォースは大きくなるので、ヨーモーメントが減少し、自動車Aの旋回挙動は安定寄りに変化することになる。
より具体的に、コントローラ10には、加速度センサ11,11,…及びストロークセンサ12,12,…からの信号に基づいて各サスペンション1FR,1FL,…毎のばね下の上下方向変位q、その速度q′及び加速度q″、並びにばね上の上下方向変位q及びその速度q′、即ちサスペンション1の作動状態を表すサスペンション状態量を演算するサスペンション状態量検出部10aが備えられている。
また、コントローラ10は、車速センサ13、横加速度センサ14、ヨーレイトセンサ15、舵角センサ16等からの信号に基づいて、それぞれ、車速V、横加速度V′、ヨーレイトφ′、ステアリング操舵角δ等を検出するとともに、路面摩擦係数μや各車輪3,3,…の接地荷重W,W,…、横滑り角β,β,…、或いは横力Y,Y,…等を演算する、即ち自動車Aの走行状態を表す種々の走行状態量を検出する走行状態量検出部10bを備えている。
さらに、コントローラ10には、前記2つの状態量検出部10a,10bによる演算結果に基づいて電磁アクチュエータ2,2,…への制御出力を演算する2つの制御量演算部10c、10dが備えられている。第1の制御量演算部10cは、前記の如く電磁アクチュエータ2,2,…の作動によりサスペンション1FR,1FL,…を積極的にストロークさせて、路面の凹凸等による入力を吸収し、車輪や車体Bの振動を抑えるように電磁アクチュエータ2,2,…を駆動するための制御量を演算する。
一方、第2の制御量演算部である挙動制御量演算部10dは、前記図3を参照して説明したように旋回中の自動車Aの内外輪の接地荷重配分を変化させて、操縦性及び安定性が両立するようにその旋回挙動を制御するための制御量uを演算する。そして、それら2つの制御量演算部10c、10dによりそれぞれ演算された制御量同士が所定の協調ロジックに従って合算されて、各サスペンション1FR,1FL,…毎の電磁アクチュエータ2,2,…に出力される(uopt)。
加えて、この実施形態のコントローラ10には、前記のように検出される自動車Aの現在の走行状態に基づいてその挙動制御の特性、具体的には挙動制御における操縦性及び安定性のバランスを補正する補正制御部10eも備えられている。尚、前記サスペンション状態量検出部10a、走行状態量検出部10b、第1及び第2の制御量演算部10c,10d、補正制御部10eのそれぞれの機能は、コントローラ10のCPUによって所定のプログラムが実行されることにより、実現するものであり、その意味でコントローラ10は、前記各部10a〜10eをソフトウエア・プログラムの態様で備えている。
特に、本発明の特徴として、第2の制御量演算部である挙動制御量演算部10dには、前記の如き自動車Aの旋回挙動制御においてヨーレイトφ′及び横滑り量(車両の横方向速度Vによって表される)がそれぞれ運転操作に相応しい最適なものとなり、操縦性と安定性とが両立するように電磁アクチュエータ2,2,…を制御するとともに、そのアクチュエータ駆動のためのエネルギ消費は極力、抑えるような制御則が設定されている。換言すれば、前記の制御則は、以下に詳述するような最適制御則である。
(最適制御則の求め方)
次に、前記のようにコントローラ10の挙動制御量演算部10dに設定されている制御則について、特に、そのような最適制御則を導く手法、つまり、最適制御問題の解法について詳細に説明する。
−基本的な考え方−
まず、基本的な考え方から説明する。一般的に最適制御問題では、制御対象の特性を運動方程式で記述し、これを制御する系について種々の観点から定義した評価関数を最大、或いは最小にするような制御則を求めるものであるが、通常、そのような制御則を解析的に導くことは容易ではない。
この点につき本願の発明者らは、機械力学系システムの非線形系を含む比較的広範囲の最適制御問題を解析的に解く方法として、制御対象のエネルギ収支に着目し、システムを漸近安定させる制御則を簡単に導くことのできる手法を考案している。
この手法では、制御対象の特性を運動方程式で記述するのではなく、以下のように制御対象の全入出力パワーの収支の式(1)を用いる。この式(1)は、システムの各自由度毎の運動方程式をベクトル表示し、これに速度ベクトルを乗じたものである。入力パワーには制御入力だけでなく外乱入力も含まれる。尚、制御対象は受動要素だけとは限らないため、内部にエネルギ源があり、これが運動に影響を与えていれば、外乱入力として取り扱う。
Figure 2009078758
前記式(1)において、d,e,q,u,ν,z∈Rn、M∈Rn×nは正定対称な慣性マトリックス、nは制御対象の自由度である。qは一般化座標、uは制御入力で、独立なアクチュエータの数はnとする。νは力入力の外乱、zは変位入力の外乱である。uとνは直接、慣性に作用し、zはばね下を介して慣性に作用するものとする。dはコリオリ力や遠心力やダンピング力等、eはポテンシャル力である。
制御対象が非線形であっても、制御装置を合理的に設計すれば、式(1)のようにuを直接、Mに作用させることができる。このように合理的に設計された機械力学系システムを想定し、このシステムに対して以下の評価関数Jを考える。
Figure 2009078758
前記式(2)においてgは、制御性能の評価を与えるスカラー関数であり、uTq′は、制御装置のアクチュエータから制御対象に加えられるパワー、即ちアクチュエータから伝達されるエネルギである。rは重み係数で正定値である。また、この手法では実時間制御を対象とし、有限評価区間を前提としている。前記式(2)を最小化する制御量u(t)を求めることが最適制御問題である。
まず、最適制御の必要条件を求めるために、以下の式(3)のようなスカラー関数Lを定義する。この式においてκは未定定数である。右辺の{}内は、式(1)の左辺と同じで制御対象の全パワー収支であるから、エネルギ保存則を満たし常にゼロである。従って、式(3)で表される関数Lの積分(汎関数)を最小化する条件は、式(2)をも最小化する条件を与える。
Figure 2009078758
よって、Lの積分にqを変数とする変分原理を適用した次式(4)は、制御入力uに関する最適制御のための必要条件を与える。Lはuに関して1次式であるから、∂L/∂uには意味がなく、次式(4)に制御に関する全ての情報が含まれることになる。但し、Lにはqの2回の導関数が含まれるため、次式においては、一般的なオイラーの方程式に第3項が追加されている。
Figure 2009078758
前記式(4)を積分し、積分定数をゼロとすると以下の式(5)が得られ、この式(5)に前記式(3)を代入して左辺第1〜3項を順に第1〜3行として記すと、以下の式(6)のようになる。そして、その式(6)から以下の式(7)のように制御則が求まる。
Figure 2009078758
Figure 2009078758
Figure 2009078758
こうして、評価関数Jを最小化するqとuとの関係を直接、導くことができるため、従来一般的な手法のように2点境界値問題を最適性の原理を用いて解くプロセスは不用になる。κは未定定数であるが、κ=0のときにuは、評価関数のパラメータのみで定まることになり、一方、κ=∞のときにuは、制御対象のパラメータのみで定まることになるから、uが最適であるためのκはゼロでない有限値でなければならない。
前記式(7)の第1行は外力ν及び慣性のq依存性に対する制御、第2行はコリオリ力や遠心力やダンピング力に対する制御、第3行はポテンシャル力とそのq依存性及び外力zに対する制御、第4行は評価関数を低減させる制御である。式(7)には未実行の微積分項が含まれているが、全ての外力及び状態量の検出或いは推定が可能とすれば、これらの実時間での実行は可能である。
尚、前記式(5)においては積分定数をゼロとしたが、前記の結果より積分定数は制御則に一定のバイアスを与えることになるため、ゼロとすることが妥当であることが分かる。これは式(7)中の積分についても同様である。
また、前記式(7)ではアクチュエータの数と系の自由度とが同じであることを想定しており、アクチュエータの数が少ない場合には次のような処理が必要となる。例えばアクチュエータが2つの独立な慣性の間に置かれるような場合は、制御ベクトルにその拘束条件を含めておき、最適制御則は、2つの制御則にそれぞれ重み付けをして加算したものとすればよい。
すなわち、u,ui+1を、それぞれが独立な制御として導いた場合の最適制御則とし、ρ,ρi+1を重み係数とすれば、制御出力 uopt = ρ+ρi+1i+1 となる。尚、重み係数ρ,ρi+1の値は理論的に導かれるものではなく、制御対象の構造的特徴に依るものである。
−サスペンション・システムの場合−
以上のような考え方に従って、この実施形態のサスペンション制御装置Sにおける自動車Aの挙動制御のための制御量uの求め方、即ち最適な挙動制御を実現するための制御則を導出する。まず、図4に示す車両モデルの運動方程式は以下の式(8)〜(10)のように表される。式(8)は、自動車Aの運動座標系における前後力の釣り合いを、また、式(9)は同横力の釣り合いを表し、式(10)はヨーモーメントの釣り合いを表している。
Figure 2009078758
前記式(8)〜(10)においてmは車両の質量、Iは重心周りの慣性モーメントであり、Vは車速、即ち自動車Aの前後方向速度、Vは同横方向速度である。また、X(i=1,2,…),Y(i=1,2,…)は、それぞれ旋回中の自動車Aの各車輪3,3,…における前後力及び横力であり、i=1,2,…の順に、旋回内側の前車輪3、旋回外側の前車輪3、旋回内側の後車輪3、旋回外側の後車輪3に対応している。さらに、l,lは、それぞれ、車体重心から前車輪3,3及び後車輪3,3までの前後方向の距離を表している。
前記各自由度毎の運動方程式(8)〜(10)に速度成分を乗じて、前記式(1)に相当するパワー収支式を作成する。すなわち、式(8)に前後方向速度Vを乗じ、式(9)に横方向速度Vを乗じ、式(10)にはヨーレイトφ′を乗じ、それらを足し合わせることで以下の式(11)を得る。
Figure 2009078758
ここで、この実施形態の旋回挙動制御の目標は、旋回中に自動車Aに生じるヨーレイトφ′の目標値tarφ′からの偏差(ヨーレイト偏差)と、横滑り量、即ち横方向速度Vの目標値tarからの偏差(横滑り量偏差)とをそれぞれ最小化することなので、前記式(2)の評価関数Jにおいて制御性の評価を与える関数gは以下の式(12)によって表される。そして、前記式(3)のスカラー関数Lは、前記式(11)のパワー収支式を用いて以下の式(13)によって表される。
Figure 2009078758
前記式(12)、(13)において定数κは、後述のように制御特性を変更するための重み係数として機能する。また、r,r,rは、それぞれ、望ましい制御特性になるように予め設定される重み係数であり、r,rは、それぞれヨーレイト偏差、横滑り量偏差に乗算されていて、評価関数Jにおいてそれらの重みを変更する意味を持つ。一方、rは、式(13)の右辺第3項、即ち電磁アクチュエータ2からの伝達エネルギを表す項の重み係数に相当し、評価関数Jにおける消費エネルギの重みを変更する意味を持つ。
そして、前記式(12)の評価関数Jを最小化する条件を求めるためには、上述したように式(13)の関数Lの積分(汎関数)を最小化する条件を求めればよい。式(13)には、各車輪3,3,…の横力Y(i=1,2,…)が含まれているので、この実施形態では周知のマジックフォーミュラ・モデルを用いて、以下の式(14)のように車輪横力を推定する。
Figure 2009078758
尚、各車輪3,3,…の接地荷重W,W,…は、例えば車速V及びステアリング操舵角δ等から推定することができ、加速度センサ11,11,…やストロークセンサ12,12,…の検出値に基づいて推定することもできる。同様に各車輪3,3,…の横滑り角β,β,…は、例えばヨーレイトφ′を積分して求めた自動車Aの進行方向とステアリング操舵角δとから推定できる。また、a,B(Stiffness Factor),C(Shape Factor)は、それぞれタイヤの特性によって決まる定数であり、その適値は探索的手法によって求められる。
そして、前記式(13)の関数Lの積分を最小化する条件を求めるためには、その式(13)に前記式(14)を代入した上で、前記(4)に相当する以下の式(15)を適用する。これにより前記式(7)のように積分を含まない解析解の制御則(必要条件)を求めることができる。
Figure 2009078758
ここで、前記図3を参照して上述したように、この実施形態では各車輪3,3,…毎の接地荷重の増減量Uが同じ大きさになるように、各電磁アクチュエータ2,2,…を制御する。こうすると各車輪3,3,…の接地荷重は、旋回内側の前車輪3においてW+U、旋回外側の前車輪3においてW−U、旋回内側の後車輪3においてW−U、旋回外側の後車輪においてはW+Uとなるから、制御則は、全ての車輪3,3,…に共通の接地荷重変化量Uを決定するものであればよい。
そこで、詳しい説明は省略するが、前記のように式(13)〜(15)から求められる制御則を接地荷重変化量Uについて整理して、以下の式(16)〜(18)を得る。尚、式(17)(18)においてΓ,Γ,…は、それぞれ、各車輪3,3,…の横力Y,Y,…の最大値D,D,…に対する比率を表している。また、D,D,…は、D=(μW−aW 2)と表され、θ=(1/D)×(∂Y/∂φ′)と表される(i=1,2,…)。
Figure 2009078758
前記式(17)の右辺第1〜4項を比較すると、その第1項に比べて第2〜4項の値は十分に小さく、無視することができる。同様に式(18)の右辺第3、4項も無視することができるので、前記式(17)、(18)は、簡略化して以下の式(19)、(20)のように表せる。式(19)のUは、制御入力のないときに前車輪3,3の横力によって生じるヨーモーメントを表し、式(20)のUは、単位制御入力を加えたときに全ての車輪3,3,…の横力によって生じるヨーモーメントを表している。U、Uは、サスペンション1FR,1FL,…の素のロール剛性や現在のロールの大きさ等によって変化する。
Figure 2009078758
本手法による制御則の導出は前記式(16)、(19)、(20)までであり、これは最適制御の必要条件を与える。式(16)における未定定数κ、r,rは、上述したようにそれぞれ制御特性に影響を与える重み係数であり、r,rについては、望ましい制御特性になるような、即ち評価関数Jが最小となるような値を予め実験、解析等を用いた探索的手法により求めればよい。上述したが、rの値を大きくすればヨーレイト偏差の重みが大きくなり、rの値を大きくすれば、エネルギ消費の重みが大きくなる。
そうして導出された制御則は、式(3)、(13)の関数L、即ち、自動車Aのヨーレイト偏差及び横滑り量偏差のそれぞれの大きさを表す項と、電磁アクチュエータ2から制御対象(車体B及び車輪3)への伝達エネルギを表す項と、該制御対象の全エネルギ収支を表す項とを、有する関数Lの積分を最小化するような最適制御則であり、式(16)の接地荷重変化量Uとなるように各車輪3,3,…の電磁アクチュエータ2,2,…を制御すれば、エネルギ消費を抑えつつ、自動車Aのステアリング操舵に対する追従性と挙動安定性とを両立する適切な旋回挙動制御を実現できる。
さらに、この実施形態では、以下に具体的に述べるように、ステアリング操舵角δの変化率に基づいて前記式(16)における重み係数κの値を変更するようにしており、これにより、自動車Aの走行状態まで加味して挙動制御の特性(具体的には操縦性及び安定性のバランス)を変更し、より適切な制御を行うことができる。
すなわち、前記式(20)から明らかなように、Uは主に、単位制御入力に応じて自動車Aに作用するヨーモーメントを表している。式(16)では、このUに重み係数κが乗算されているから、κを大きくすると見かけ上、制御入力によるヨーモーメントが増大することになるが、同式(16)の制御則は操縦性及び安定性を両立するものなので、この制御則に則って求められる接地荷重変化量Uは、ヨーモーメントが減少する向きに変化する(つまり、接地荷重変化量Uは小さめの値になる。
ところが、重み係数κを大きくしても、Uの値が変化するわけではないから、制御によって実際に自動車Aに作用するヨーモーメントの大きさは変わらない。このため、前記のように制御される接地荷重変化量Uが小さめになれば、実際に自動車Aに作用するヨーモーメントが小さめになって、ステアリング操舵に対する追従性が低下するとともに、自動車Aの挙動の安定性は高くなるのである。
つまり、前記式(16)における重み係数κの値を大きくすれば、自動車Aの旋回挙動制御の特性は、ステアリング操舵に対する追従性よりも挙動安定性を重視するものに変更され、反対に重み係数κの値を小さくすれば、安定性よりも操縦性を重視するものに変更されることになる。
(サスペンション制御の具体例)
次に、コントローラ10による電磁アクチュエータ2,2,…の制御、特に、挙動制御量演算部10dにおける制御量uの演算について、図5に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。
まず、図示のフローのスタート後のステップS1では、主にセンサ13〜16からの信号を入力して、少なくとも、車速V、横加速度V′、ヨーレイトφ′、ステアリング操舵角δ等の走行状態量を検出し、続くステップS2では、例えば車速V及びエンジン出力等から路面摩擦係数μの推定演算を行うとともに、例えば車速V及びステアリング操舵角δ等から各車輪3,3,…の接地荷重W,W,…の推定演算を行う。
続いてステップS3において、例えば車速V,Vやステアリング操舵角δ等から各車輪3,3,…の横滑り角β,β,…を推定し、前記路面摩擦係数μや接地荷重W,W,…の推定値とともに、前記した式(14)を用いて各車輪3,3,…の横力Y,Y,…を推定する。続くステップS4では、前記各車輪3,3,…の横力Y,Y,…の推定値とその最大値D,D,…とに基づいてΓ,Γ,…を算出し、式(19)、(20)を用いてU、Uを算出する。
続いてステップS5において、例えば車速V及びステアリング操舵角δ等から目標ヨーレイトtarφ′を算出し、実ヨーレイトφ′との偏差(ヨーレイト偏差tarφ′−φ′)を求める。また、ステップS6では、車両の走行状態、具体的には例えばステアリング操舵角δの変化率に基づいて、予め設定したテーブルから重み係数κの値を読み出し、前記の式(16)に設定する。
一例を図6に示すように、重み係数κの値は、ステアリング操舵角δの変化率Δδ(時間当たりの変化量)に対応付けて、変化率Δδが低いほど大きな値になり、変化率Δδが高いほど小さな値になるように設定されている。すなわち、ステアリング操舵角δの変化率Δδが低いということは、例えば緩いカーブをゆったりと走行しているような状況であり、自動車Aの挙動の安定性は高いことが好ましいとともに、操舵に対する追従性はむしろ低い方が乗り心地等の観点で有利になるからである。
一方、例えば衝突回避のために運転者がステアリングを急操舵したときには、その操舵に対する自動車Aの挙動変化の追従性を十分に高くして、障害物との衝突を回避することが最優先であり、この場合には少々、挙動安定性が損なわれても構わないから、舵角変化率Δδが高いほど重み係数κの値は小さくなるように設定している。尚、前記テーブルにおいて重み係数κの値は、舵角変化率Δδの変化に応じて連続的に変化するように設定しなくてもよく、例えばステップ状に変化するようにしてもよい。
前記ステップS6に続いてステップS7では、前記ステップS4で算出したU、Uと、ステップS5で求めたヨーレイト偏差(tarφ′−φ′)とを式(16)に代入して、各車輪3,3,…に共通の接地荷重変化量U(目標値)を演算する。そして、その接地荷重変化量Uと各車輪3,3,…の現在の接地荷重W,W,…とに基づいて、ステップS8では各車輪3,3,…毎の電磁アクチュエータ2,2,…の制御量uを算出する。
そうして算出した挙動制御のためのアクチュエータ制御量uに、別途、第1制御量演算部10cにより算出された振動抑制等のための制御量を合算し、ステップS9では各車輪3,3,…の電磁アクチュエータ2,2,…への給電量を演算する。そして、その給電量に対応する制御信号uoptを出力して、リターンする。
前記ステップS1〜S3の手順は、コントローラ10の走行状態量検出部10bによって行われ、ステップS4〜S8の手順は同挙動制御量演算部10dによって行われる。特にステップS6において舵角変化率Δδに応じて重み係数κを変更する処理は、同補正制御部10eによって行われる。
(作用・効果)
したがって、この実施形態の車両用サスペンション制御装置によると、自動車Aの旋回走行中には、上述したようにコントローラ10の挙動制御量演算部10dにより演算される制御量uに基づいて、前後左右の各車輪3,3,…毎の電磁アクチュエータ2,2,…の制御が行われ、該各車輪3,3,…に所要の制御力が付与されて、それらの接地荷重W,W,…が増減変化するようになる。
例えば、ステアリング操舵に対する車体の挙動変化が遅れ気味であれば、旋回内側の前車輪3の接地荷重Wを増大させるとともに、旋回外側の前車輪3では接地荷重Wを減少させることで、接地荷重配分が効率良く旋回内方寄りに変化して、コーナリングフォースが大きくなる。一方、旋回内側の後車輪3では接地荷重Wを減少させ、旋回外側の後車輪3では接地荷重Wを増大させることで、接地荷重配分は効率良く旋回外方寄りに変化し、コーナリングフォースが小さくなる。よって、旋回方向のヨーモーメントが増大し操舵への追従性が高くなる。
反対に、ステアリング操舵に対する挙動変化が大きめであれば、電磁アクチュエータ2,2,…の制御力は前記とは反対の向きに加えられ、各車輪3,3,…の接地荷重W,W,…がそれぞれ前記とは逆向きに変化することで、ヨーモーメントが減少し、自動車Aの挙動安定性が高くなる。
そして、そのような電磁アクチュエータ2,2,…の制御は、この実施形態では、ヨーレイト偏差及び横滑り量偏差を最小化して、自動車Aの操縦性と安定性とを両立するような最適制御則に則って行われるので、それら電磁アクチュエータ2,2,…の制御力によって制御される自動車Aの旋回挙動は、ヨーレイト及び横滑り量がいずれも運転操作に相応しいものとなり、操縦性と安定性とが両立するようになる。
そのような最適制御則は、予め解析的に導出されて制御演算式の態様でコントローラ10のメモリに格納されているので、従来までと異なり、自動車Aのサスペンション制御に十分な応答性を確保できる。特にこの実施形態では、制御目標値である接地荷重変化量Uを全ての車輪3,3,…に共通とすることで、制御に係る演算量をできるだけ少なくしており、このことによっても制御応答性を確保し易い。
そうして最適制御によって、基本的に自動車Aの挙動制御における操縦性及び安定性の両立を図った上で、さらに、この実施形態では、最適制御則における制御の重み係数κの値をステアリング操舵角δの変化率Δδに基づいて補正するようにしており、例えば急操舵時には操舵応答を特に高くする、というように走行状態に応じて操縦性及び安定性のバランスをより適切なものに変更できる。
加えて、この実施形態の旋回挙動制御では、前記したように自動車Aの前車輪3,3及び後車輪3,3において、それぞれ内外輪の一方では接地荷重を増大させ、他方では減少させて接地荷重配分を変化させるとともに、そのような内外輪間の接地荷重配分の変化を前輪側及び後輪側では逆向きにしている。このことで、前後輪3,3のコーナーリングフォースを逆向きに変化させて、より効率良くヨーモーメントを作用させることができる上に、それに伴い車体Bに作用するロール・モーメントも前後で逆向きになるので、挙動制御に起因するロール軸周りの振動を抑制する効果もある。
(他の実施形態)
尚、本発明に係るサスペンション制御装置の構成は前記の実施形態には限定されず、それ以外の種々の構成も包含する。すなわち、例えば前記の実施形態では、サスペンション1FR,1FL,…のそれぞれに電磁アクチュエータ2,2,…を設けているが、これに限らず、例えば前2輪、後2輪のいずれか一方のみに電磁アクチュエータ2,2を設けてもよい。
また、アクチュエータとして例示したリニアモータ以外にも例えば、油空圧シリンダや圧電素子等を用いることもでき、電動モータとボールねじ機構とを組み合わせてアクチュエータとすることも可能である。
また、前記したように、自動車の前車輪3,3及び後車輪3,3において、それぞれ内外輪の一方では接地荷重を増大させ、他方では減少させて接地荷重配分を効率良く変化させるとともに、そのような内外輪間の接地荷重配分の変化を前輪側及び後輪側では逆向きにしているが、これに限るものではない。
すなわち、例えば前車輪3,3又は後車輪3,3のいずれか一側のみにおいて、内外輪の一方の接地荷重を増大させ、他方は減少させるようにしてもよいし、或いは、前車輪3等の旋回内側の1輪のみにおいて接地荷重を変化させるようにしてもよい。複数の車輪3,3,…の接地荷重を変化させる場合に、それらの変化量を同じにする必要もない。
さらに、サスペンション制御の具体的な内容についても前記の実施形態は一例に過ぎず、例えば、式(19)、(20)で表されるU、Uを、それぞれ、式(17)、(18)によって表してもよいし、式(19)、(20)とは異なる近似式によって表すことも可能である。
また、前記の実施形態では、制御則において操縦性及び安定性の重み付けを変化させる係数κの値を、舵角変化率Δδに応じて変更設定するようにしているが、これは舵角変化率Δδのみに限定されず、例えば車速V、横加速度V′、ヨーレイトφ′、路面摩擦係数μ、或いは各車輪3,3,…の接地荷重W,W,…、横滑り角β,β,…、横力Y,Y,…等、自動車Aの走行状態を表す種々の走行状態量に応じて変更することができる。
また、式(16)の制御則も一例であり、例示した評価関数J以外にも種々の観点から定義した評価関数を最小化するような制御則を用いることができる。但し、そういった制御則は、前記実施形態と同様に評価関数の項に制御対象の全エネルギ収支を表す項を加えた関数(式(3)、(13)の関数L)の積分を最小化するようなものとするのが好ましい。
さらにまた、本発明に係るサスペンション制御装置は、自動車以外の車両にも適用することができる。
本発明に係るサスペンション制御装置は、所謂アクティブ・サスペンションに用いられるアクチュエータを所定の最適制御則に則って制御し、車両の内外輪の接地荷重配分を適切に変更することで、その旋回挙動の操縦性及び安定性を両立する最適な制御を実現できるので、自動車への搭載に好適なものである。
本発明に係るサスペンション制御装置を搭載した自動車(a)と、サスペンション(b)とを模式的に示す図である。 サスペンション制御装置の概略構成を示すブロック図である。 接地荷重配分の変化による挙動制御の概念図(a)と、内外輪の接地荷重配分の増減により横力が変化する説明図(b)である。 制御則の導出に用いる車両モデルの構成図である。 挙動制御量の演算手順を示すフローチャート図である。 舵角変化率に対応付けて重み係数の値を設定したテーブルの概念図である。
符号の説明
A 自動車(車両)
B 車体
S サスペンション制御装置
1 サスペンション
2 電磁アクチュエータ
3 車輪
3a タイヤ
3b ホイール
4 コイルばね
5 ショックアブソーバ
10 コントローラ
10a サスペンション状態量検出部
10b 走行状態量検出部(走行状態量検出手段)
10c 第1の制御量演算部
10d 第2の制御量演算部(挙動制御手段)
10e 補正制御部(制御特性補正手段)
11 車体上下加速度センサ
12 サスペンションストロークセンサ
13 車速センサ(走行状態量検出手段)
14 横加速度センサ(走行状態量検出手段)
15 ヨーレイトセンサ(走行状態量検出手段)
16 舵角センサ(走行状態量検出手段)

Claims (6)

  1. 車体に懸架した車輪にアクチュエータによって少なくとも上下方向の制御力を付与するようにした車両用のサスペンション制御装置であって、
    前記アクチュエータを所定の制御則に則って制御し、その制御力によって車輪の接地荷重を増減することにより旋回中の内外輪の接地荷重配分を変化させて、車両の旋回挙動を制御する挙動制御手段を備え、
    前記制御則は、少なくとも、車両のヨーレイトの目標値からの偏差の大きさを表す項と、車両横滑り量の目標値からの偏差の大きさを表す項と、有する関数の積分である評価関数を最小化する最適制御則である
    ことを特徴とする車両用サスペンション制御装置。
  2. 車両の旋回挙動制御の制御則は、ヨーレイト偏差及び横滑り量偏差のそれぞれの大きさを表す項に加えて、少なくとも、アクチュエータから制御対象である車体及び車輪への伝達エネルギを表す項と、該車体及び車輪の全エネルギ収支を表す項とを、有する関数の積分を最小化するものとして求められ、以下の式(A)で表される
    Figure 2009078758
    但し、Uは、制御力による車輪の接地荷重変化量の目標値であり、Uは、制御力の加わらないときに車輪の横力によって車両に作用するヨーモーメント、Uは、単位制御入力を加えたときに車輪の横力によって車両に作用するヨーモーメント、さらに、φ′はヨーレイト、tarφ′は目標ヨーレイトであって、κ、r、rは、それぞれ、制御の重み係数である、請求項1に記載の車両用サスペンション制御装置。
  3. 挙動制御手段は、車両前側の内外輪の一方の接地荷重が増大し、他方は減少するとともに、その増減量が同じになるようにアクチュエータを制御する、請求項1又は2のいずれかに記載の車両用サスペンション制御装置。
  4. 挙動制御手段は、車両後側の内外輪の一方の接地荷重が増大し、他方は減少するとともに、その増減量が同じになるようにアクチュエータを制御する、請求項1又は2のいずれかに記載の車両用サスペンション制御装置。
  5. 挙動制御手段は、車両前側の内外輪の一方の接地荷重が増大し、他方は減少するとともに、車両後側の内外輪の前記一方の接地荷重は減少し、他方は増大するようにアクチュエータを制御する、請求項1又は2のいずれかに記載の車両用サスペンション制御装置。
  6. 挙動制御手段は、全車輪の接地荷重の増減量が同じになるようにアクチュエータを制御する、請求項5に記載の車両用サスペンション制御装置。
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