本発明は、少なくとも樹脂と着色剤とを含有してなるトナーに関し、特に、高温高湿環境下で画像形成を行った時でも、カラーの写真画像に最適な色相角と彩度となる良好な色調が得られるトナーに関する発明である。
本発明による効果は、本発明で使用される化合物が中心金属に対して水分子を配位させにくい構造になっていることにより発現したものと推測される。すなわち、本発明で用いられる一般式(I)〜(III)で表される化合物は、フタロシアニン環の中心にケイ素原子が配位し、当該ケイ素原子が共有結合性の置換基とも結合している構造を有することによるものと考えられる。
つまり、ケイ素原子は他の金属原子と比較して原子番号が小さく電子の数が少ないことから、分極可能な電子の数も少ないものであり、この様なフタロシアニン化合物は中心金属の分極電子を介して水分子が配位しにくいものになると推測される。また、ケイ素原子と結合している共有結合性の置換基の立体障害性の影響により、水分子がケイ素原子に近づきにくい構造になっていることも理由の1つと考えられる。その結果、トナーの帯電性が湿度による影響を受けにくいので、現像量が確保されて画質を安定化させるものと考えられる。
この様に、本発明で使用される化合物は、中心金属の原子番号が他の金属原子と比べて小さく、フタロシアニン化合物の電子軌道がシンプルで安定化し易いため、透明感があり明度の高いトナー画像が形成されるものと推測される。
また、本発明に係るトナーによれば、色にごりのない鮮やかなカラー画像が得られる様になった。これは、本発明で使用される化合物は、たとえば銅フタロシアニン化合物の様に、α型やβ型結晶といった色味の異なる複数種類の結晶より構成されているものとは異なる構造を有するためと考えられる。その結果、好適な範囲の彩度や色相角が得られることにより、単色の画像に加え、他色のトナーと重ねて形成される二次色の発色領域も拡大し、優れた色再現性が得られるものと推測される。
さらに、本発明に係るトナーは、カラートナーとして用いたとき、ベタ画像の明度が比較的高くなって、明度領域が好適化する様になり、中間調の画像が均質に見える様になるという効果を奏するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るトナーは、少なくとも樹脂と着色剤とを含有してなるもので、下記一般式(I)乃至(III)で表されるいずれかの化合物を含有するものである。一般式(I)乃至(III)で表されるこれらの化合物は、いずれもフタロシアニン環の中心に位置する金属原子(以下、中心金属原子ともいう)としてケイ素原子(Si)が用いられている。
上記一般式(I)乃至(III)中のZは、各々独立に、ヒドロキシ基、塩素、炭素数6乃至18のアリールオキシ基、炭素数1乃至22のアルコキシ基、下記一般式(IV)で表される化合物を示すものである。
一般式(IV)中のR1、R2及びR3は、炭素数1乃至22のアルキル基、炭素数6乃至18のアリール基、炭素数1乃至22のアルコキシ基、または、炭素数6乃至18のアリールオキシ基を表すものである。R1、R2、R3はお互い同じ基であっても、異なる基であってもよい。また、R1、R2及びR3は、上記炭素数のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表すものであるが、これらの基の炭素数は好ましくは1乃至10であり、より好ましくは、2乃至8である。
上記一般式(II)、及び、(III)中のLは、酸素原子、または、−O−SiR2−O−を示すものである。なお、Lが−O−SiR2−O−であるとき、式中のRは、炭素数1乃至4のアルキル基、塩素基、ヒドロキシ基のいずれかを表す。
さらに、一般式(I)乃至(V)中のA1、A2、A3及びA4は、各々独立に以下に示す原子団を示す。
また、一般式(III)中のnは、1以上の整数を表わす。一般式(II)は、一般式(III)のnが0のときのものである。
本発明に係るトナーは、中心金属原子にケイ素原子が用いられた上記一般式(I)乃至(III)のいずれかで表されるテトラアザポルフィン系化合物と呼ばれる軸配位子を有するフタロシアニン化合物を含有するものである。ここで、軸配位子とは、上記一般式(I)乃至(III)中で、Z(Z1、Z2)あるいはL(L1、L2)で表されるものである。そして、一般式(I)乃至(III)で表される化合物の中でも、本発明では一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I)乃至(III)で表される化合物を含有するトナーは、軸配位子を有さないフタロシアニン化合物を含有するトナーに比べ、より良好な色再現性が発現される。特に、一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物を用いたトナーは、その傾向が顕著である。これは、一般式(I)乃至(III)で表される化合物が軸配位子を有さないフタロシアニン化合物と比べて構造が複雑になる分、化合物の凝集や結晶化が起こりにくくなるためと推測される。その結果、トナー粒子中や定着画像中で着色剤が均一に分散して、色再現性がより向上するものと推測される。
また、フタロシアニン化合物が凝集や結晶化しにくい構造となる分、トナー中の結着樹脂への相溶性や溶剤あるいは重合性単量体への溶解性が向上し、トナー製造工程でフタロシアニン化合物が均一に分散し易くなり、良好な色再現性を発現するものと推測される。
また、一般式(I)乃至(III)で表される化合物を構成するZ(Z1、Z2)は、前述した基の中でも一般式(IV)で表される基が好ましい。そして、一般式(IV)で表される基中のR1、R2及びR3は、炭素数1乃至6のアルキル基、アリール基、アルコキシ基が好ましく、特に、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましい。また、R1、R2、R3はお互い同じ基であっても、異なる基であってもよい。
さらに、一般式(II)と(III)を構成するL(L1、L2)は、前述した基の中でも酸素原子が特に好ましい。
また、一般式(I)乃至(III)で表される化合物を構成するA1、A2、A3及びA4は、前述した原子団が挙げられるが、その中でもベンゼン環が好ましい。また、原子団に電子吸引性置換基が結合したものも好ましく、たとえば、塩素基(−Cl)や塩ハロゲン化メチル基(−CClX2)、トリフルオロメチル基(−CF3)、ニトロ基(−NO2)等が挙げられる。
本発明では、上記フタロシアニン化合物を単独もしくは2つ以上を選択併用することも可能である。トナー中における上記フタロシアニン化合物の含有量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲に設定するのが良い。特に、上記化合物は高い分子吸光性が期待されるので、添加量が少なくても本発明の効果を発現する可能性を有することが期待される。
一般式(I)で表されるテトラアザポルフィン化合物(軸配位子を有するフタロシアニン化合物)の具体例を表1に示すが、本発明に係るトナーに使用可能な一般式(I)で表される化合物は表1に示すもののみに限定されるものではない。
また、一般式(II)と(III)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に係るトナーに使用可能な一般式(II)と(III)で表される化合物はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例では、化合物の構造式について前述の一般式で示した立体性の表示が省略されているが、下記具体例も一般式と同様、構造に立体性を有するものである。
次に、上記一般式(I)で表される化合物、一般式(II)と(III)で表される化合物は、たとえば、以下の文献に開示された公知の方法により作製することが可能である。先ず、一般式(I)で表されるテトラアザポルフィン系化合物(軸配位子を有するフタロシアニン化合物)の製造方法は、たとえば、以下の特許明細書に記載された内容から参照することができる。米国特許第5428152号、同第4927735号、同第5021563号、同第5219706号、同第5034309号、同5284943号、同5075203号、同5484685号、同5039600号、同5438135号、同5665875号等。
また、一般式(II)と(III)で表される多量体化合物の製造方法は、たとえば、特開平10−158534号公報で紹介されているジクロロシリコンフタロシアニン化合物を用いた作製方法が挙げられる。たとえば、前記特許文献には次の手順で一般式(II)で表される化合物の1つである2量化ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物を作製する、1984年にE.Ciliberto等がJ.Am、Chem.Soc.誌に発表した方法が開示されている。先ず、1,3−ジイミノイソインドリンまたはフタロジニトリルと四塩化ケイ素を溶媒中で加熱後、反応生成物をろ過、洗浄、精製してジクロロシリコンフタロシアニンを生成する。これをアルカリ処理してジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物とし、キノリン等の高沸点溶剤中で加熱処理を行った後、さらにアルカリ処理を行うことで2量化ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物が得られる。また、ジクロロシリコンフタロシアニン化合物をN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の親水性極性溶媒で加熱し、アルカリ処理する工程を経て作製する方法もある。
本発明に係るトナーは、上記一般式(I)乃至(III)で表される化合物を含有することにより、中間調のトナー画像を形成した時に粒状性の粗い画像を形成することがないので、均質なフルカラー画像が得られる。また、湿度が変化する環境下でプリント作製を行っても、階調性や色調が変動することがなく安定したカラー画像形成が行える。特に、湿度が高い環境下でプリント作製を行っても、グリーンやブルーの色調が変化することがなく、安定した色調のカラー画像が安定して得られる。したがって、オフィスに比べ温度や湿度の環境条件が厳しいとされる印刷工場で安定したトナーを用いたプリント作製が行えるので、印刷工場で作成することの多い写真画像入りのカラーのグラビア写真を版を起こす手間をかけずにオンデマンドに作成できる。この様に、本発明によれば、印刷工場におけるプリント物の生産性を飛躍的に向上させることができるものと期待される。
本発明に係るトナーは、高温高湿環境下でも濁りのない鮮やかな色調のカラー画像形成が行えるものであるが、これは前述の様に、湿度の高い環境下におかれてもトナーの帯電量が変動しにくいことによるものと考えられる。なお、トナーの帯電量はブローオフ式の帯電量測定装置を用いて測定することができる。
ブローオフ式の帯電量測定は、両端に金網を配した円筒形状のファラデーケージと呼ばれる容器に現像剤を収納し、高圧空気により現像剤からトナーを脱離させた後、残留した電荷量をエレクトロメータにより測定するものである。また、トナーの帯電量は残留電荷量をQ、トナー質量をMとしたときにQ/Mで表され、トナー質量はブローオフ前後のファラデーケージの質量差から求められる。
以下に、ブローオフ式の帯電量測定手順を具体的に説明する。
400メッシュのステンレス製スクリーンを装着したブローオフ式帯電量測定装置「TB−200(東芝ケミカル社製)」を用い、ブロー圧4.9×104Paの条件で10秒間窒素ガスにてブローを行ってトナーを飛翔させる。トナー帯電量(μC/g)は測定された電荷を飛翔したトナーの質量で除することにより算出される。
次に、本発明に係るトナーの粒径等について説明する。
本発明に係るトナーは、体積基準におけるメディアン径(D50)を3μm以上8μm以下とすることが好ましい。体積基準メディアン径を上記範囲とすることにより、たとえば、1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することも可能である。
本発明に係るトナーは、写真画像の色再現を忠実に行える様にすることが課題の1つであるが、体積基準メディアン径を上記範囲の小径レベルのものにすることにより、写真画像を構成するドット画像が微小化され印刷画像と同等以上の高精細写真画像が得られる。特に、オンデマンド印刷と呼ばれる数百部から数千部レベルでプリント注文を受ける印刷分野では、高精細な写真画像の入った高画質プリントを迅速にユーザへ納品できる。
なお、トナーの体積基準メディアン径(D50径)は、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピュータシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパチャー径は50μmのものを使用する。
本発明に係るトナーは、その体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が2%以上21%以下のものが好ましく、5%以上15%以下のものがより好ましい。
体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)は、トナー粒子の粒度分布における分散度を体積基準で表したもので、以下の式によって定義される。
CV値(%)=(個数粒度分布における標準偏差)/(個数粒度分布におけるメディアン径(D50))×100
このCV値の値が小さい程、粒度分布がシャープであることを示し、それだけトナー粒子の大きさがそろっていることを意味する。すなわち、大きさの揃ったトナーが得られることになるので、デジタル画像形成で求められる微細なドット画像や細線をより高精度に再現することが可能である。また、写真画像をプリントするにあたり、大きさの揃った小径トナーを用いることにより、印刷インクで作製された画像レベルあるいはそれ以上の高画質の写真画像を作成することができる。
本発明に係るトナーは、その軟化点温度(Tsp)が70℃以上110℃以下となるものが好ましく、70℃以上100℃以下となるものがより好ましい。本発明に係るトナーに使用される着色剤は、熱の影響を受けてもスペクトルが変化することのない安定した性質を有するものであるが、軟化点を前記範囲とすることで定着時にトナーに加わる熱の影響をより低減させることができる。したがって、着色剤に負担をかけずに画像形成が行えるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。
また、トナーの軟化点を前記範囲とすることにより、従来技術よりも低い温度でトナー画像定着が行える様になり、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を可能にする。
なお、トナーの軟化点は、たとえば、以下の方法を単独で、あるいは、組み合わせることにより制御が可能である。すなわち、
(1)樹脂形成に用いる単量体の種類や組成比を調節する。
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により樹脂の分子量を調節する。
(3)ワックス等の種類や添加量を調節する。
また、トナーの軟化点温度の測定方法は、具体的には「フローテスターCFT−500(島津製作所社製)」を用い、高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより1.96×106Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、最初に流出する温度を溶融開始温度、降下量5mmに対する温度を軟化点温度とするものが挙げられる。
次に、本発明に係るトナーの製造方法について説明する。
本発明に係るトナーは、少なくとも樹脂と着色剤を含有してなる粒子(以下、着色粒子ともいう)より構成されるものである。本発明に係るトナーを構成する着色粒子は、特に限定されるものではなく、従来のトナー製造方法により作製することが可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法によるトナー製造方法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合トナーの製造方法(たとえば、乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法等)を適用することにより作製可能である。
なお、粉砕法により本発明に係るトナーを製造する場合、混練物の温度を130℃以下に維持した状態で作製を行うことが好ましい。これは、混練物に加える温度が130℃を超えると、混練物に加えられた熱の作用で混練物中における着色剤の凝集状態に変動を来し均一な凝集状態を維持できなくなるおそれがあるためである。仮に、凝集状態にバラツキが発生すると、作製されたトナーの色調にバラツキが生じることになり、色濁りの原因となることが懸念される。
次に、本発明に係るトナーを構成する樹脂やワックス等について、具体例を挙げて説明する。
先ず、本発明に係るトナーに使用可能な樹脂は、特に限定されるものではないが、下記に記載されるビニル系単量体と呼ばれる重合性単量体を重合して形成される重合体がその代表的なものである。また、本発明で使用可能な樹脂を構成する重合体は、少なくとも1種の重合性単量体を重合して得られる重合体を構成成分とするものであり、これらビニル系単量体を単独あるいは複数種類組み合わせて作製した重合体である。
以下に、ビニル系の重合性単量体の具体例を示す。
(1)スチレンあるいはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等
(2)メタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等
(3)アクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(8)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(9)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等
また、本発明に係るトナーに使用可能な樹脂を構成するビニル系の重合性単量体には、以下に示すイオン性解離基を有するものも使用可能である。たとえば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の官能基を単量体の側鎖に有するものが挙げられ、具体的には、以下のものが挙げられる。
先ず、カルボキシル基を有するものとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。また、スルフォン酸基を有するものとしては、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸等が挙げられ、リン酸基を有するものとしてはアシドホスホオキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
また、以下に示す多官能性ビニル類を使用することにより、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。以下に、多官能性ビニル類の具体例を示す。
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等
次に、本発明に係るトナーに使用可能なワックスとしては、以下に示す様な公知のものが挙げられる。
(1)ポリオレフィン系ワックス
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等
(2)長鎖炭化水素系ワックス
パラフィンワックス、サゾールワックス等
(3)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
(4)エステル系ワックス
カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等
(5)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等
ワックスの融点は、通常40〜125℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセットなどを起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
次に、本発明に係るトナーは、その製造工程で外部添加剤(=外添剤)として数平均一次粒径が4〜800nmの無機微粒子や有機微粒子等の粒子を添加して、トナー作製されることが可能である。
外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。外添剤の種類は特に限定されるものではなく、たとえば、以下に挙げる無機微粒子や有機微粒子、及び、滑剤が挙げられる。
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することが可能で、たとえば、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましいものとして挙げられる。また、必要に応じてこれらの無機微粒子を疎水化処理したものも使用可能である。
シリカ微粒子の具体例としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタニア微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
アルミナ微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
また、クリーニング性や転写性をさらに向上させるために滑剤を使用することも可能であり、たとえば、以下の様な高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。すなわち、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩が挙げられる。
これら外添剤や滑剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。また、外添剤や滑剤の添加方法としては、タービュラーミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウターミキサ、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
本発明に係るトナーは、キャリアとトナーより構成される二成分現像剤として、また、トナーのみから構成される非磁性一成分現像剤として使用することが可能である。
本発明に係るトナーを二成分現像剤として使用する場合、たとえば、後述するタンデム方式の画像形成装置を用いて、高速でのフルカラープリント作成が可能である。また、トナーを構成する樹脂やワックスを選択することにより、定着時の紙温度が100℃程度のいわゆる低温定着対応のフルカラープリントの作製も可能である。
また、二成分現像剤として使用する際に用いられる磁性粒子であるキャリアは、たとえば、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を使用することが可能である。これらの中ではフェライト粒子が好ましい。キャリアの体積平均粒径は15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。
また、キャリアを使用せずに画像形成を行う非磁性一成分現像剤として使用する場合、画像形成時にトナーは帯電部材や現像ローラ面に摺擦、押圧して帯電が行われる。非磁性一成分現像方式による画像形成は、現像装置の構造を簡略化できるので、画像形成装置全体をコンパクト化できるメリットがある。したがって、本発明に係るトナーを非磁性一成分現像剤として使用すると、コンパクトなカラープリンタでフルカラーのプリント作成が実現され、スペース的に制限のある作業環境でも色再現性に優れたフルカラープリントの作成が可能である。
次に、本発明に係るトナーを用いた画像形成方法について説明する。最初に、本発明に係るトナーを二成分系現像剤として用いる場合の画像形成方法について説明する。
図1は、本発明に係るトナーを二成分系現像剤とした時に使用可能な画像形成装置の一例を示す概略図である。
図1において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像装置、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング装置、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。また、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の記録部材Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、2次転写ロール5Aにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
2次転写ロール5Aは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とを有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ロール71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、1次転写ロール5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとからなる。
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
このように感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
次に、本発明に係るトナーを非磁性一成分系現像剤として用いた場合の画像形成方法について説明する。図2は、非磁性一成分系現像剤を使用するフルカラー画像形成装置の一例である。なお、図2に示す画像形成装置100は、前述の現像装置20が搭載可能な画像形成装置の代表的なものである。図2の画像形成装置は、回転駆動される静電潜像担持体(以下、感光体ドラムともいう)1の周囲に、感光体ドラム1表面を所定電位に均一帯電させる帯電ブラシ2、感光体ドラム1上の残留トナーを除去するクリーナ6が設けられている。
レーザ走査光学系3は、帯電ブラシ2により均一帯電された感光体ドラム1上を走査露光し、感光体ドラム1上に静電潜像を形成する。レーザ走査光学系3は、レーザダイオード、ポリゴンミラー、fθ光学素子を内蔵し、その制御部にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック毎の印字データがホストコンピュータから転送される。そして、上記各色毎の印字データに基づいて、レーザビームが順次出力され、感光体ドラム1上を走査露光して、各色毎の静電潜像を形成する。
現像装置4を収納する現像装置ユニット40は、静電潜像が形成された感光体ドラム1に各色トナーを供給して現像を行う。現像装置ユニット40には、支軸33の周囲にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各非磁性1成分トナーをそれぞれ収納した4つの現像装置4Y、4M、4C、4Bkが装着され、支軸33を中心に回転して、各現像装置4が感光体ドラム1と対向する位置に導かれる。
現像装置ユニット40は、レーザ走査光学系3により感光体ドラム1上に各色の静電潜像が形成される毎に、支軸33を中心に回転し、対応する色のトナーを収容した現像装置4を感光体ドラム1に対向する位置に導く。そして、各現像装置4Y、4M、4C、4Bkより感光体ドラム1上に、帯電された各色トナーを順次供給して現像を行う。
図2の画像形成装置は、現像装置ユニット40より感光体ドラム1の回転方向下流側に無端状の中間転写ベルト7が設けられ、感光体ドラム1と同期して回転駆動する。中間転写ベルト7は、1次転写ローラ5により押圧された部位で感光体ドラム1と接触し、感光体ドラム1上に形成されたトナー画像を転写する。また、中間転写ベルト7を支持する支持ローラ72と対向して、2次転写ローラ73が回転可能に設けられ、支持ローラ72と2次転写ローラ73との対向する部位で、中間転写ベルト7上のトナー画像が記録紙等の記録材P上に押圧転写される。
なお、フルカラー現像装置ユニット40と中間転写ベルト7との間には、中間転写ベルト7上の残留トナーを除去するクリーナ8が中間転写ベルト7に対して接離可能に設けられている。
記録部材Pを中間転写ベルト7に導く給紙手段60は、記録材Pを収容する給紙トレイ61と、給紙トレイ61に収容した記録材Pを1枚ずつ給紙する給紙ローラ62、給紙した記録材Pを2次転写部位に送るタイミングローラ63より構成される。
トナー画像が押圧転写された記録部材Pは、エアーサクションベルト等で構成された搬送手段66により定着装置24に搬送され、定着装置24で転写されたトナー画像が記録材P上に定着される。定着後、記録材Pは垂直搬送路80を搬送され、装置本体100の上面に排出される。
図2の画像形成装置は、交換可能な現像装置4を装填して画像形成を行うものである。図3(a)に示す現像装置4は、通常、トナーカートリッジとも呼ばれ、現像ローラ等の部品が配置された内部に所定量のトナーも収納されているものである。トナーカートリッジの形態で供給される現像装置は、画像形成装置内の所定位置に装填後、収納されている現像剤を感光体ドラムに供給して現像を行い、所定枚数の画像形成を行って現像剤がなくなると、装置より取り外し、新しいトナーカートリッジを装填する。
また、図3(b)は、現像装置4の断面構成の一例に示す概略図である。以下、現像装置4をトナーカートリッジ4ともいう。トナーカートリッジ4は、現像ローラ41に隣接してバッファ室42を、バッファ室42に隣接してホッパ43等を有する。
現像ローラ41は、導電性の円柱基体と、基体の外周にシリコーンゴム等の硬度の高い物質を用いて形成した弾性層を有する。
バッファ室42にはトナー規制部材であるブレード44が現像ローラ41に圧接させた状態で配置されている。ブレード44は、現像ローラ41上のトナーの帯電量及び付着量を規制するものである。また、現像ローラ41の回転方向に対してブレード41の下流側に、現像ローラ41上のトナー帯電量・付着量の規制を補助するための補助ブレード45をさらに設けることも可能である。
現像ローラ41には供給ローラ46が押圧されている。供給ローラ46は、図示しないモータにより現像ローラ41と同一方向(図中反時計回り方向)に回転駆動する。供給ローラ46は、導電性の円柱基体と基体の外周にウレタンフォームなどで形成された発泡層を有する。
ホッパ43には一成分現像剤であるトナーTが収容されている。また、ホッパ43にはトナーを攪拌する回転体47が設けられている。回転体47には、フィルム状の搬送羽根が取付けられており、回転体47の矢印方向への回転によりトナーを搬送する。搬送羽根により搬送されたトナーは、ホッパ43とバッファ室42を隔てる隔壁に設けられた通路44を介してバッファ室42に供給される。なお、搬送羽根の形状は、回転体47の回転に伴い羽根の回転方向前方でトナーを搬送しながら撓むとともに、通路48の左側端部に到達すると真っ直ぐの状態に戻るようになっている。このように羽根はその形状を湾曲状態を経て真っ直ぐに戻るようにすることでトナーを通路48に供給している。
また、通路48には通路48を閉鎖する弁321が設けられている。この弁はフィルム状の部材で、一端が隔壁の通路48右側面上側に固定され、トナーがホッパ43から通路48に供給されると、トナーからの押圧力により右側に押されて通路48を開けるようになっている。その結果、バッファ室42内にトナーが供給される。
また、弁321の他端には規制部材322が取り付けられている。規制部材322と供給ローラ46は、弁321が通路48を閉鎖した状態でも僅かな隙間を形成する様に配置される。規制部材322は、バッファ室42の底部に溜まるトナー量が過度にならないように調整するもので、現像ローラ41から供給ローラ46に回収されたトナーがバッファ室42の底部に多量に落下しないように調整される。
トナーカートリッジ4では、画像形成時に現像ローラ41が矢印方向に回転駆動するとともに供給ローラ46の回転によりバッファ室42のトナーが現像ローラ41上に供給される。現像ローラ41上に供給されたトナーは、ブレード44、補助ブレード45により帯電、薄層化された後、像担持体との対向領域に搬送され、像担持体上の静電潜像の現像に供される。現像に使用されなかったトナーは、現像ローラ41の回転に伴ってバッファ室42に戻り、供給ローラ46により現像ローラ41から掻き取られ回収される。
本発明に係るトナーは、従来技術における定着時の加熱温度でトナー中の着色剤の結晶構造に変動を来すものではなく、公知の定着装置であれば安定した色再現性を有するトナー画像が得られる。ところで、近年では地球環境への配慮等の視点から画像形成装置のエネルギー消費量を低減化させる動きがある。その中でも定着工程におけるエネルギー消費量の低減化が注目され、現状の定着温度よりも低い温度でトナー画像を定着するいわゆる低温定着対応の技術が採り入れられる様になっている。
すなわち、本発明に係るトナーを低温定着対応のトナーとした時には、定着装置における加熱部材の表面温度を140℃未満に設定することが好ましく、さらに、加熱部材の表面温度を130℃未満に設定することがより好ましくなる。
上記設定温度下では、加熱部材から供給される熱を転写シートに効率よく供給することが求められ、加熱部材あるいは加圧部材のいずれか一方に耐熱性のベルトを用いたいわゆるベルト定着と呼ばれる定着方法が好ましい。
図4に、本発明に係るトナーを定着することが可能なベルト定着方式の定着装置(ベルトと加熱ローラを用いたタイプ)の一例を示す。
図4に示す定着装置24は、ニップ幅を確保するためにベルトと加熱ローラを用いたタイプのもので、定着ローラ240とシームレスベルト241、及びシームレスベルト241を介して定着ローラ240に押圧される圧力パッド(圧力部材)242a、圧力パッド(圧力部材)242b、前記潤滑剤供給部材243とで主要部が構成されている。
定着ローラ240は、金属製のコア(円筒状芯金)240aの周囲に耐熱性弾性体層240b、及び離型層(耐熱性樹脂層)240cより形成され、コア240aの内部には加熱源としてハロゲンランプ244が配置されている。定着ローラ240の表面温度は温度センサ245により計測され、その計測信号に基づいて図示しない温度コントローラによりハロゲンランプ244がフィードバック制御され、定着ローラ240表面が一定温度になるように調整される。シームレスベルト241は、定着ローラ240に対し所定の角度で巻き付けられるように接触し、ニップ部を形成している。
シームレスベルト241の内側には、低摩擦層を表面に有する圧力パッド242がシームレスベルト241を介して定着ローラ240に押圧される状態で配置されている。圧力パッド242は、強いニップ圧がかかる圧力パッド242aと、弱いニップ圧がかかる圧力パッド242bとが設けられ、金属製等のホルダ242cに保持されている。
ホルダ242cには、シームレスベルト241がスムーズに摺動回転するようにベルト走行ガイドが取り付けられている。ベルト走行ガイドはシームレスベルト241内面と摺擦するため摩擦係数が低い部材が望ましく、かつ、シームレスベルト241から熱を奪いにくいように熱伝導の低い部材が好ましい。なお、シームレスベルト241の材質の具体例としては、たとえばポリイミドが挙げられる。
本発明に係るトナーにより形成されたトナー画像は、最終的に転写材P上に転写され、定着処理により、転写材上に固定されることにより画像形成が行われる。上記画像形成に使用される転写材Pは、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、記録材或いは転写紙とよばれるものである。具体的には薄紙から厚紙までの普通紙や上質紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等の各種転写材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.「現像剤(トナー)1〜29」、「比較用現像剤(比較用トナー)1〜6」の作製
1−1.「トナー1」の作製
下記トナー構成物をヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)に投入し、撹拌羽の周速を25m/秒に設定して5分間混合処理した。
ポリエステル樹脂 100質量部
(ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸の縮合物 重量平均分子量20,000)
「化合物I−3」 2質量部
ペンタエリスリトールテトラステアレート 6質量部
ジベンジル酸ホウ素 1質量部
混合物を二軸押出混練機で混練し、次いで、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミル粉砕機(ターボ工業社製)で粉砕処理し、さらに、コアンダ効果を利用した気流分級機で体積基準メディアン径が5.8μmになるまで微粉分級処理を行った。
次に、下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、「トナー1」を作製した。
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm)
0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。なお、作製された「トナー1」の体積基準メディアン径は5.8μmであった。
1−2.「トナー2〜24」の作製
(1)「化合物分散液1〜25」の調製
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、表1に示す「化合物I−1」2質量部を徐々に添加し、「クリアミックスWモーションCLM−0.8(エムテクニック社製)」を用いて分散処理し、「化合物分散液1」を調製した。
「化合物分散液1」中の「化合物I−1」は、体積基準メディアン径が98nmの粒子を形成していた。なお、体積基準メディアン径は、「MICROTRAC UPA−150(HONEYWELL社製)」を用い、下記測定条件下で測定したものである。
サンプル屈折率 1.59
サンプル比重 1.05 (球状粒子換算)
溶媒屈折率 1.33
溶媒粘度 0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整 測定セルにイオン交換水を投入し調製した。
上記「化合物分散液1」で使用した「化合物I−1」に代えて、下記表2に示す様に、各化合物を用いて、「化合物分散液2〜25」を調製した。表2に使用した化合物ナンバーと分散液中の化合物の体積基準メディアン径を示す。
(2)「コア部用樹脂粒子1」の作製
下記に示す第1段重合、第2段重合及び第3段重合を経て多層構造を有する「コア部用樹脂粒子1」を作製した。
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に下記(構造式1)に示すアニオン系界面活性剤4質量部をイオン交換水3040質量部とともに投入し、界面活性剤水溶液を調製した。
(構造式1) C10H21(OCH2CH2)2SO3Na
上記界面活性剤水溶液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃に昇温させた後、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて反応容器中に滴下した。
スチレン 532質量部
n−ブチルアクリレート 200質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
上記単量体混合液を滴下後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を「樹脂粒子A1」とする。なお、第1段重合で作製した「樹脂粒子A1」の重量平均分子量は16,500だった。
(b)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に下記化合物からなる単量体混合液を投入し、続いて、離型剤としてパラフィンワックス「HNP−57(日本製蝋社製)」93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させた。この様にして単量体溶液を調製した。
スチレン 101.1質量部
n−ブチルアクリレート 62.2質量部
メタクリル酸 12.3質量部
n−オクチルメルカプタン 1.75質量部
一方、前記アニオン界面活性剤3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を調製し、98℃に加熱した。この界面活性剤水溶液中に前記「樹脂粒子A1」を32.8質量部(固形分換算)添加し、さらに、上記パラフィンワックスを含有する単量体溶液を添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エムテクニック社製)」で8時間混合分散した。前記混合分散により分散粒子径が340nmの乳化粒子を含有する乳化粒子分散液を調製した。
次いで、前記乳化粒子分散液に過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌を行うことで重合(第2段重合)を行って樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を「樹脂粒子A2」とする。なお、第2段重合で作製した「樹脂粒子A2」の重量平均分子量は23,000だった。
(c)第3段重合
上記第2段重合で得られた「樹脂粒子A2」に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン 293.8質量部
n−ブチルアクリレート 154.1質量部
n−オクチルメルカプタン 7.08質量部
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って重合(第3段重合)を行い、重合終了後、28℃に冷却して「コア部用樹脂粒子1」を作製した。第3段重合で作製した。「コア部用樹脂粒子1」の重量平均分子量は26,800であった。
(3)「シェル用樹脂粒子」の作製
前記「コア部用樹脂粒子1」の作製における第1段重合で使用された単量体混合液を以下のものに変更した以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行って「シェル用樹脂粒子1」を作製した。
スチレン 624質量部
2−エチルヘキシルアクリレート 120質量部
メタクリル酸 56質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
(4)「トナー2」の作製
下記の手順により「トナー2」を作製した。
(a)コア部の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア部用樹脂粒子 420.7質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
「化合物分散液1」 200質量部(固形分換算)
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10.0に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温させ、上記粒子の会合を行った。この状態で「マルチサイザー3(コールター社製)」を用いて会合粒子の粒径測定を行い、会合粒子の体積基準メディアン径が5.5μmになった時に、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を添加して会合を停止させた。
会合停止後、さらに、熟成処理として液温を70℃にして1時間にわたり加熱撹拌を行うことにより融着を継続させて「コア部1」を作製した。
「コア部1」の平均円形度を「FPIA2000(システックス社製)」で測定したところ、0.912だった。
(b)シェルの形成
次に、上記液を65℃にして「シェル用樹脂粒子1」を96質量部添加し、さらに、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、70℃まで昇温させて1時間にわたり撹拌を行った。この様にして、「コア部1」の表面に「シェル用樹脂粒子1」を融着させた後、75℃で20分間熟成処理を行ってシェルを形成させた。
この後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加してシェル形成を停止した。さらに、8℃/分の速度で30℃に冷却して生成した着色粒子をろ過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥処理を行った。
次に、下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、「トナー2」を作製した。
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm)
0.8質量部
なお、上記ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の下で行ったものである。
形成された「着色粒子2」は体積基準メディアン径(D50)が5.8μm、平均円形度が0.988であった。
(5)「トナー3〜26」の作製
「トナー2」の作製で使用した「化合物分散液1」に代えて、表2に示す「化合物分散液2〜25」を用いた他は同様の手順により、ケイ素原子を含有するフタロシアニン化合物を含有するコアシェル構造の「トナー3〜26」を作製した。形成された「トナー3〜26」は、いずれも「トナー2」と同様、体積基準メディアン径(D50)が5.8μm、平均円形度が0.988であった。
(6)「トナー27」の作製
「トナー2」で使用した「化合物分散液1」200質量部(固形分換算)に代えて、
「化合物分散液3」 100質量部(固形分換算)
「化合物分散液22」 100質量部(固形分換算)
を用いた他は同様の手順により、コアシェル構造の「トナー27」を作製した。なお、「トナー27」の体積基準メディアン径と平均円形度は「トナー2」と同じ値になった。
(7)「トナー28」の作製
「トナー2」で使用した「化合物分散液1」200質量部(固形分換算)に代えて、
「化合物分散液18」 100質量部(固形分換算)
「化合物分散液25」 100質量部(固形分換算)
を用いた他は同様の手順により、コアシェル構造の「トナー28」を作製した。なお、「トナー28」の体積基準メディアン径と平均円形度は「トナー2」と同じ値になった。
(8)「トナー29」の作製
「トナー2」の作製で使用した「化合物分散液1」の添加量を100質量部(固形分換算)に変更し、さらに、
「化合物分散液18」 50質量部(固形分換算)
「化合物分散液25」 50質量部(固形分換算)
を用いた他は同様の手順により、コアシェル構造の「トナー29」を作製した。なお、「トナー29」の体積基準メディアン径と平均円形度は「トナー2」と同じ値になった。
(9)「比較用トナー1〜6」の作製
「トナー2」の作製において、「化合物分散液1」で使用された「化合物I−1」に代えて、「化合物I−1」中のケイ素原子(Si)を銅原子(Cu)に置き換えた構造の化合物を用いて「化合物分散液」を作製した。この「化合物分散液」を用いた他は同様の手順で「比較用トナー1」を作製した。
また、「化合物I−1」中のケイ素原子(Si)をチタン原子(Ti)、亜鉛原子(Zn)、スズ原子(Sn)、バナジウム原子(V)に置き換えた構造の化合物を用いた各「化合物分散液」を用意した。そして、「トナー2」の作製において「化合物分散液1」に代えて上記の各化合物分散液を用いた他は同様の手順で「比較用トナー2〜5」を作製した。
また、「トナー2」の作製において、「化合物I−1」を特開平5−239368号公報に開示される下記化合物に変更した他は同様の手順で「比較用トナー6」を作製した。
1−4.「現像剤1〜29」、「比較用現像剤1〜6」の調製
上記「トナー1〜29」及び「比較用トナー1〜6」の各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%の「現像剤1〜29」及び「比較用現像剤1〜6」を調製した。
2.評価実験
(1)帯電性評価
前記「現像剤1〜29」及び「比較用現像剤1〜6」を市販の複合プリンタ「bizhub C352(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」用の現像装置にそれぞれ投入してシアン色トナーを含有する現像装置を用意した。現像装置は1つの現像剤につき2つ用意し、これらを前記プリンタのシアン色現像装置を駆動する単体駆動機に装填後、前記プリンタに装填させた状態で温度20℃、湿度50%RHの環境下で48時間放置した。48時間放置後、2つの現像装置のうちの1つを温度33℃、湿度80%RHの環境下で24時間放置し、もう1つの現像装置を温度10℃、湿度12%RHの環境下で24時間放置した。
24時間放置後、前記プリンタを30秒、及び、1200秒駆動させ、各駆動時間経過直後に収納されている現像剤をそれぞれ5gずつサンプリングした。サンプリングした現像剤の帯電量を、前述の条件の下、ブローオフ式帯電量測定装置「TB−200(東芝ケミカル社製)」により測定した。30秒駆動後の帯電量Qaと1200秒駆動後の帯電量Qbの差ΔQを算出することにより評価を行った。
そして、温度33℃、湿度80%RHの環境下に放置したもの、及び、温度10℃、湿度12%RHの環境下に放置したもののいずれも、30秒駆動後の帯電量と1200秒駆動後の帯電量の差ΔQが5μC/g未満となるものを合格とした。特に、両方のケースで帯電量の差ΔSが3μC/g以下となるものは優れていると判断した。
(2)色調評価
温度20℃、湿度50%RHの環境下で、カラーコード#008000greenのパッチを出力した。その後、画像形成装置の湿度補正をオフにして、温度33℃、湿度80%RH、及び、温度10℃、湿度12%RHの環境下にそれぞれ2時間放置した。その後で、同条件でパッチの出力を行い、出力したパッチ画像の色調を以下の様に目視で評価した。評価は、各パッチ画像の色調を温度23℃、湿度50%RHで出力した前述のパッチの色調と比較するとともに、各パッチ画像の色調について、カラーコードが入った全部で136色の色見本からなるweb用カラーチャートを用いた。下記評価項目のうち、◎、○、△となったものを合格とした。
◎:カラーコード#008000(green)として識別できた
○:カラーコード#228b22(forestgreen)として識別できた
△:カラーコード#32cd32(limegreen)として識別できた
×:上記以外のカラーコード、たとえば、以下のカラーコードに類似した色調だった。
カラーコード#00ff00(lime)
カラーコード#90ee90(lightgreen)
カラーコード#7cfc00(lawngreen)
カラーコード#ddff2f(greenyellow)
カラーコード#20b2aa(lightseagreen)
なお、上記の目視によるカラー画像の色調評価に用いた色の表示方法は、以下のものである。すなわち、色調評価に用いる色の表示方法として、#記号と6桁の英数字で色を表すカラーコードと、redやgreen、white等の固有のカラー名で色を表すカラーネームを用い、これらはwebページ上で表現される色を指定する制御コードである。
カラーコードは前述の様に、#(シャープ)記号に続く6桁の16進数で色を表現するものである。カラーコードにおける16進数で表す6桁の英数字は次の様な意味をもつ。たとえば、#FFFFFFというカラーコードにおいて、#記号の後の最初の2桁が赤、中央の2桁が緑、最後の2桁が青を表し、この光の三原色を00〜FFまでの16進数で表している。また、16進数は00に近いほどその色は弱くなり、FFに近いほどその色が強調されることになる。
具体例として、赤をFF(最大)にして、緑と青を00(最小)とした表示「#FF0000」は赤色を表す。また、赤、緑、青をすべてFF(最大)にした表示「#FFFFFF」は白色を表し、赤、緑、青をすべて00(最小)にした表示「#000000」は黒色を表す。この様に、カラーコードは赤、緑、青の3つの16進数を組み合わせて色調を表示するもので、多くの色調を一義的に表現することができる。なお、カラーコードはRGBコードとも呼ばれる。
また、カラーネームは、色の名称を英語で表したもので、147色のカラーネームが存在する。色の名称を英語で表す場合、W3C(World Wide Web Consortium(ワールドワイドウェブコンソーシアム);1994年に発足したWWW(インターネット)で利用される技術の標準化を進める国際団体)の勧告により、標準16色と呼ばれるHTMLで名称を直接指定することが可能な色がある。標準16色で定義される16色の色は、「Red」、「Yellow」、「Lime」、「Aqua」、「Blue」、「Fuchsia」、「Maroon」、「Olive」、「Green」、「TEAL」、「Navy」、「Purple」、「Black」、「Gray」、「Silver」、及び、「White」である。
以下の表に結果を示す。
上記表に示す様に、本発明に該当する実施例1〜29は、いずれも上記評価項目について良好な結果が得られ、本発明の効果が発現されることが確認された。一方、本発明外に位置づけられる比較例1〜6は、高温高湿環境や低温低湿環境の影響で帯電性や色調が所定レベルをクリアできないという結果となり、本発明の効果が発現されないことが確認された。この様に、本発明に係るトナーを用いることにより、高温高湿環境等の過酷な画像形成環境下で良好な色調を有するカラー画像が得られることが確認された。
したがって、本発明によれば、たとえばオフィスよりも画像形成環境が厳しいとされる印刷工場で、鮮やかなフルカラー画像を安定して形成することができる様になる。その結果、これまで版を起こす手間をかけてプリント作成していたカラーグラビア写真の入ったプリント物を作成する場合も、版を起こす手間をかけることなくオンデマンドに作成することができる様になる。その結果、印刷工場におけるプリント作成の作業効率を大幅に向上させることができるものと期待される。