JP2009029491A - 食品の鮮度を保持するための包装紙 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】食品の鮮度を保持するための包装紙であって、
紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸、塗布又は印刷したことを特徴とする包装紙。
【選択図】なし
Description
上記の問題を解決する、即ち、初期の段階での細菌の発生・増殖が抑えられるように、鮮度保持機能を有する食品の包装紙が幾つか使用されているが、その効果が十分でなかったり、移り香が起きる等の問題があり、あまり普及していないのが現状である。
また、鮮度保持のために、遠赤外線材を使用する包装紙(例えば、特許文献1参照。)、酸化チタンを使用する包装紙(例えば、特許文献2参照。)、粉末の炭を使用する包装紙(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。これらは、鮮度を維持するため材料を基材にコーティング又は基材中に混入させるものであるが、何れの場合も、簡単な操作で製造できるといえるものではなく、また、生鮮食品の包装紙の形態として使用するのに適していないものであったり、使い捨てに使用できる程の経済性を有していないものであった。
一方、幅広い抗菌性を有し、天然素材で安全性が高い物質としてヒノキチオールが知られている。しかし、ヒノキチオールは、水溶化が困難であり、紫外線に弱いという欠点を有しているため、溶解性が高いアルコールに混ぜて使用されるのが一般的であり、歯磨き、ヘアートニック等に使用されるに留まっている。
また、天然ヒノキチオールは食品添加物に指定されているにも拘らず、上記の理由等により、梅干のカビの予防程度にしか使用されていない。
(1)食品の鮮度を保持するための包装紙であって、
紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又は
アルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸、塗布又は印刷したことを特徴とする包装紙、
(2)前記ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩において2種以上の金属が使用される前記(1)記載の包装紙、
(3)前記金属が銅、アルミニウム、亜鉛又はこれらの混合物である前記(2)記載の包装紙、
(4)アロエ、緑茶、熊笹、及びドクダミからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を含む水溶液を使用する前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の包装紙、
(5)グリセリン及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む水溶液を使用する前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の包装紙、
に関する。
特に好ましい態様において、各種成分を含有する水溶液又はアルコール溶液がインクの替わりに、オフセット、グラビア等の印刷機により印刷される。この場合、単に水溶液に含浸させた場合よりも、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩の安定性が増し、その結果、効果が持続する。
本発明の、食品の鮮度を保持するための包装紙は、紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸、塗布又は印刷することにより製造できる。
プロパンジオール塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モルホリン塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩等のヘテロ環アミン塩、アンモニウム塩、アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩等の塩基性アミン塩等の有機塩類等を挙げることができる。
尚、上記媒体は、水であるか又はアルコール含有率20ないし60%となるアルコール(水溶液)である。
アルコール溶液に使用するアルコールは、たとえば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらは単独であるいは複数を組み合わせて使用してもよい。好ましいアルコールはエタノールである。
、その時にしぼり出された液を濃縮した液が熊笹抽出物となる。熊笹は、日本や中国に広く分布しているイネ科のササの1種である。熊笹の抽出物には、主成分であるトリテルペノール(β−アミリン・フリーデン)の他、リグニン残渣、還元糖、グルコースなどの糖類も含まれている。熊笹の抽出物に代えて、これらの合成品の混合物を用いることもできる。
成品の混合物を用いることもできる。
また、添加する際の各抽出物の配合量は以下の通りである。
例えば、アロエの抽出物は、媒体1000gに対して、20μgないし100g、好ましくは、0.1gないし10g、より好ましくは、0.5ないし2.5gの割合で添加される。
例えば、緑茶の抽出物は、媒体1000gに対して、20μgないし100g、好ましくは、0.1gないし5g、より好ましくは、0.2ないし2gの割合で添加される。
例えば、熊笹の抽出物は、媒体1000gに対して、10μgないし50g、好ましくは、0.05gないし3g、より好ましくは、0.1ないし1gの割合で添加される。
例えば、ドクダミの抽出物は、媒体1000gに対して、10μgないし50g、好ましくは、0.05gないし3g、より好ましくは、0.1ないし1gの割合で添加される。
尚、上記媒体は、水又はアルコール含有率20ないし60%となるアルコール(水溶液)である。
界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル類、キラヤサポニン等が挙げられる。これらを含有することにより、ヒノキチオール濃度を10質量%にまで高めた水溶液とすることができる。
ビ、アカネ、ウメ、ニンニク、ペパーミント、ヨモギ、サンショウ、ダイオウ、アザミ、ハッカ、ビワ、ムラサキ、ラベンダー、レモングラス、及びレンギョウの抽出成分、ハチミツより抽出されるプロポリス等を含有してもよい。これらは、ヒノキチオールの殺菌力を損なうことなく、ヒノキチオールの独特の臭い、苦みを緩和することができ、また、水に対するヒノキチオールの溶解度を高めることができる。
また、インクとして使用する水溶液又はアルコール溶液の温度は、30ないし60℃であるのが好ましく、また、30℃ないし45℃であるのが好ましい。
この場合、特に、オフセット印刷、グラビア印刷により製造された包装紙は、単に水溶液又はアルコール溶液を含浸させた場合に比して、高い鮮度保持機能を示すだけでなく、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩の安定性を向上させ、その結果として効果が持続する。
オフセット印刷、グラビア印刷等により、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩が、紙又は不織布の表面のみに局在化して(即ち、殆ど内部に浸透せず)留まることになると考えられるが、しかし、何故、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩の安定性が向上するかについては明確ではない。
実施例1:包装紙の製造
上質紙に以下の組成の水溶液(30℃)をインクとして用い、慣用のグラビア印刷機及び印刷条件でグラビア印刷(全面)を行うことにより、包装紙を製造した。
実施例1と同様の方法で製造した包装紙(2セット製造し、それぞれ、包装紙1、包装紙2と記載する。)で食材(牛肉、本マグロ(赤身))を包装し、冷蔵保存中のこれらの食材に付着した黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する効果を検討した。
市販牛肉ブロックと本マグロ(赤身)ブロックをそれぞれ無菌的に1g程度の大きさに切り分けた。
大腸菌(Escherichia coli)IFO 12529株及び黄色ブドウ球
菌(IFO 12732株)を、それぞれ普通ブイヨン培地で37℃にて18時間培養した後、培養液10μLを3mLの普通ブイヨン培地に添加後、37℃にて6時間振とう培養した。この培養液を生理食塩水(0.85%食塩水)にて10段階希釈し、105倍ま
で希釈したものを添加細菌液(大腸菌、黄色ブドウ球菌)とした。添加細菌液10μLを食材に塗布し、安全キャビネット内で5分間菌液が乾燥するまで放置した。
各食材を包装紙1、2にて包装し、4℃にて3日間保存した。また、対照として未包装の食材を4℃にて3日間保存した。保存後、各食材の表面から菌を採取し、これを寒天培地に添加し、35℃で24時間培養した。菌種として黄色ブドウ球菌を用いた際の各培地における細菌繁殖状況を示す写真を図1として示し、菌種として大腸菌を用いた際の各培地における細菌繁殖状況を示す写真を図2として示した。
尚、図1中、上段が食材として牛肉を用いた際の、下段が食材として本マグロ(赤身)を用いた際の細菌繁殖状況を示し、左からそれぞれ、対照(未包装)、包装紙1、包装紙2の培地を示す。
また、図2は、上段が食材として本マグロ(赤身)を用いた際の、下段が食材として牛肉を用いた際の細菌繁殖状況を示し、左からそれぞれ、対照(未包装)、包装紙1、包装紙2の培地を示す。
図2より、大腸菌を用いた牛肉、本マグロ(赤身)の双方において、対照では大腸菌が繁殖したのに対して、包装紙1、包装紙2を用いた場合はこの繁殖がかなり抑制されることが解った。
実施例1と同様の方法で製造した包装紙(2セット製造し、それぞれ、包装紙1、包装紙2と記載する。)で本マグロ(中トロ)を包装し、冷蔵保存中のこの食材に付着した大腸菌に対する効果を検討した。
市販本マグロ(中トロ)ブロックを無菌的に1g程度の大きさに切り分けた。
実施例2と同様にして大腸菌を培養し、本マグロ(中トロ)に塗布した。
各食材を包装紙1、2にて包装し、4℃にて2日間保存した。また、対照として未包装の食材を4℃にて2日間保存した。保存前及び保存後に、各食材の表面から菌を採取し、これを寒天培地に添加し、35℃で24時間培養した。各培地における細菌繁殖状況を示す写真を図3として示した。
尚、図3中、上段が保存前の、下段が保存後の細菌繁殖状況を示し、左からそれぞれ、対照(未包装)、包装紙1、包装紙2の培地を示す。
また、試験前の本マグロ(トロ)の写真を図4(左:対照、中:包装紙1、右:包装紙2)として、また、試験後の本マグロ(トロ)の写真を図5(左:対照、中:包装紙1、右:包装紙2)として示したが、図4と図5の比較から、対照において見られた変色が包装紙1、包装紙2を用いた場合には殆ど生じていないことが解った。
実施例1と同様の方法で製造した包装紙(3セット製造し、それぞれ、包装紙1、包装紙2、包装紙3と記載する。)で食材(牛肉、マグロ)を包装し、冷蔵保存中のこれらの食材に付着した細菌に対する抗菌効果を検討した。
試験方法は、以下に記載した通りに行い、また、対照として、フードウェル ペーパーホイル(東洋アルミプロダクツ(株)社製)及びヘルシーケース中判(東洋アルミプロダクツ(株)社製)を使用した。
1.食材
市販牛肉ブロックとマグロブロックをそれぞれ無菌的に1g程度の大きさに切り分けた。
2.供試菌株及び菌数測定用培地
大腸菌としてE.coli ATCC25922株を用いた。生菌数(無添加群)はACプレート(3Mペトリフィルム)、大腸菌群数は大腸菌群測定用CCプレート(3Mペトリフィルム)を用いて添付のマニュアルに従って菌(群)数を測定した。
3.添加大腸菌液の作製と塗布
大腸菌は3mLのトリプトソーイブイヨンにて37℃で16時間培養後、培養液10μLを3mLのトリプトソーイブイヨンに添加後、37℃にて6時間振とう培養した。この培養液を生理食塩水(0.85%食塩水)にて10段階希釈し、105倍まで希釈したも
のを添加大腸菌液とした。添加大腸菌液10μLを食材に塗布し、安全キャビネット内で5分間菌液が乾燥するまで放置した。
4.保存試験
各食材5ブロックを包装紙1ないし3、フードウェル ペーパーホイル(東洋アルミプロダクツ(株)社製)及びヘルシーケース中判(東洋アルミプロダクツ(株)社製)にて包装し、4℃にて保存した。市販牛肉は0時間、1日間、2日間、3日間、6日間保存後に生菌数と大腸菌群数を測定した。市販マグロは0時間、6時間、1日間、2日間、3日間保存後に大腸菌群数を測定した。
5.生菌数の測定
各期間保存後、食材を秤量し、10倍量の生理食塩水を添加し、30秒間攪拌後、生理食塩水にて10倍段階希釈し、希釈液1mLを生菌測定用培地に添加し、35℃で48時間培養した。生菌数の測定は添付のマニュアルに従った。
牛肉における生菌数の経時変化を表2に示した。
各期間保存後、食材に10mLの生理食塩水を添加して30秒間攪拌後、生理食塩水にて10倍段階希釈し、希釈液1mLを大腸菌群測定用培地に添加し、35℃で24時間培養した。大腸菌群数の測定は添付のマニュアルに従った。
マグロにおける大腸菌群数の経時変化を表3に示し、牛肉における大腸菌群数の経時変化を表4に示した。
表2から、包装紙(包装紙1ないし3)を用いた場合は、バラツキはあるものの、試験開始から2日目まで(包装紙1では3日目まで)は、牛肉の生菌数の増加を抑制又は減少させるものの、それ以降は、生菌数は増加して100000個/g(測定限界)以上となることが解った。ペーパーホイルでは試験開始1日目から生菌数の増加が認められ、試験開始2日目からは100000個/g(測定限界)以上に増加した。ヘルシーケースでは、包装紙1ないし3とほぼ同様に2日目以降、生菌数の増加が認められた。
表3から、包装紙1ないし3を用いた場合、実験開始直後からマグロにおいて大腸菌群数の低下が認められ、それ以降はほぼ同程度の大腸菌群数が検出されたことが解った。ペーパーホイルでは試験期間を通してほほ同程度の大腸菌群数が検出された。
表4から、包装紙1ないし3を用いた場合、実験開始直後から牛肉において大腸菌群数の低下が認められ、1日目以降も大腸菌群数が低下し続け、3日目には検出限界以下まで減少したことが解った。ペーパーホイル及びヘルシーケースにおいても大腸菌群数の低下は認められたものの、検出限界以下になることはなかった。試験期間を通してほほ同程度の大腸菌群数が検出された。
Claims (5)
- 食品の鮮度を保持するための包装紙であって、
紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸、塗布又は印刷したことを特徴とする包装紙。 - 前記ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩において2種以上の金属が使用される請求項1記載の包装紙。
- 前記金属が銅、アルミニウム、亜鉛又はこれらの混合物である請求項2記載の包装紙。
- アロエ、緑茶、熊笹、及びドクダミからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を含む水溶液を使用する請求項1ないし3の何れか1項に記載の包装紙。
- グリセリン及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む水溶液を使用する請求項1ないし4の何れか1項に記載の包装紙。
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