JP2008528038A - 胚性幹細胞の指示された分化及びその利用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、胚性幹細胞の、内胚葉性細胞系統、特に膵臓細胞系統に沿った指示された分化のための方法を提供する。

Description

発明の背景
この10年間にわたって、幹細胞の分野では、大きな興奮が、様々な幹細胞集団が様々な退行性疾患又は異常の治療の基礎を形成するであろうという希望をあおってきた。胚性幹細胞は、それらの、表面的に3つのすべての胚葉に由来する組織に分化することのできる無類の能力の故に、特別の興奮を引き付けてきた。従って、胚性幹細胞は、如何なる特定の組織に由来する成体幹細胞より一層広範な治療の基礎を形成しうる。
しかしながら、外胚葉、中胚葉及び内胚葉系統に分化する胚性幹細胞の限りない能力により生じた興奮にもかかわらず、有効な治療剤は、胚性幹細胞の特定の細胞型への分化を制御し、指示する能力を必要とする。その上、有効な治療剤は、この指示された分化が、効率的に、特定の分化した細胞型を生じることを必要とする。換言すれば、指示された分化の方法にとっては、高いパーセンテージの特定の分化した細胞型を生じるか又は高いパーセンテージの特定の組織又は器官を構成する細胞型を生じることが有利である。かかる分化の効率的な方法は、特定の細胞型を一貫して生成することができず又は非常に低いパーセンテージの特定の分化した細胞型を生じる従来技術からの実質的な飛躍を表している。
外胚葉、中胚葉又は内胚葉に由来する組織に影響を与える広範な退行性の疾患及び傷害に対する現実的な治療の選択肢を供給することに対する大きな要求がある。胚性幹細胞は、かかる多様な治療剤の開発のための特に魅力的な資源である。従って、本発明は、胚性幹細胞の特定の内胚葉由来の細胞型への指示された分化を促進する方法を提供する。かかる方法は、部分的に分化した及び/又は最終分化した細胞の培養物を生成するために利用することができ、かかる細胞は、内胚葉由来の組織及び器官の傷害又は病気を治療し又は予防するために利用することができる。
発明の概要
この発明は、細胞の内胚葉性細胞型への指示された分化のための方法を提供する。本発明の方法により分化した内胚葉性細胞型は、内胚葉由来の組織及び器官の傷害及び病気を治療し又は予防するために利用することができる。
本発明は、胚性幹細胞の様々な内胚葉性細胞型への分化を指示する方法を提供する。特に、本発明は、胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った分化を指示する方法を提供する。ある具体例において、この発明の方法は、胚性幹細胞からの、膵臓細胞の運命への分化を開始した細胞を示すpdx−1+細胞の生成へと導く。別のある具体例においては、この発明の方法は、胚性幹細胞からの、インスリン産生細胞の生成へと導く。更に別の具体例においては、この発明の方法は、胚性幹細胞からの、インスリン及びCペプチドを発現する細胞、及び/又はグルコース応答性細胞の生成へと導く。
本発明の方法を用いて生成されたpdx−1+細胞及び/又はインスリン産生細胞を、ヒト又は動物の患者へ送達することができ、それらの膵臓の病気を治療し又は予防するために利用することができる。
こうして、一面において、この発明は、胚性幹(ES)細胞の膵臓細胞系統への指示された分化のための方法であって、該方法は、これらのES細胞を十分な期間にわたって、十分量の、アクチビンA、BMP2、BMP4、又はノーダルから選択する少なくとも一種の初期因子(EF)と接触させることを含み、これらの膵臓細胞系統の細胞が膵臓系統細胞マーカーを発現し及び/又は膵臓細胞系統機能を示す当該方法を提供する。
ある具体例において、これらの膵臓細胞系統の細胞は、Pdx−1及び/又はインスリンを発現し、及び/又はグルコースに応答性であり、及び/又はCペプチドを分泌する。かかる膵臓細胞系統の細胞は、インスリン産生細胞例えば膵臓β細胞であってよい。
ある具体例において、これらのES細胞は、胚様体(EB)として培養され、直接支持マトリクス(例えば、MATRIGEL(商標))上にプレートされ、及び/又は直接組織培養プレートにプレートされる。例えば、これらのEBは、浮遊懸濁培養にて、支持マトリクス(例えば、MATRIGEL(商標)又は他のマトリクス)中で、及び/又はフィルター上で培養することができる。
MATRIGEL(商標)以外の支持マトリクスは、当分野で公知であり、Kawaguchi等、Proc.Natl.Acad.Sci. 95(3): 1062-66, 1998に記載されたような胎盤から抽出できる基底膜;BD Bioscience's PuraMatrix 合成ペプチド足場 (synthetic peptide scaffold);又はフィブロネクチンマトリクスなどを含む。
ある具体例において、これらのEBは、EBがEFと接触している期間中のみ、支持マトリクス(例えば、MATRIGEL(商標))中で培養される。
ある具体例において、これらのEBは、MEF(マウスの胚性フィーダー)又は他のフィーダー層上で成長したES細胞から生成され、又はフィーダーフリー条件下で成長したES細胞から生成される。
好適具体例において、これらのES細胞は、異種フリー(xeno-free)、好ましくは、CGMP-及びGTCP-従順である(CGMP: Current Good Manufacturing Practice;GTCP: Good Tissue Culture Practice)。
多くの異なる動物種からのES細胞を、この発明の方法において利用することができる。ある具体例において、これらのES細胞は、ヒトのES細胞である。他の具体例においては、これらのES細胞は、非ヒト哺乳動物からのもの例えばゲッ歯類(ラット、マウス、ウサギ、ハムスターなど);霊長類(例えば、サル、類人猿など)、ペット(ネコ、イヌなど);家畜(ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)からのES細胞である。
ある具体例において、ヒトES細胞は、hES1、hES2、hES3、hES4、hES5、hES6又はDM ES細胞株からのものである。
ある具体例において、ES細胞は、膵臓細胞系統に、部分的に分化又は最終分化している。
他の具体例において、ES細胞を、EFと、約15日間、好ましくは約10日間にわたって、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、若しくは約14日にわたって接触させる。
ある具体例において、EFは、アクチビンA及びBMP4を含む。ある具体例において、EFは、約50ng/mL(例えば、約10〜200ng/mL、又は約20〜100ng/mL、又は約30〜70ng/mL、又は約40〜60ng/mL)のアクチビンA及び約50ng/mL(例えば、約10〜200ng/mL、又は約20〜100ng/mL、又は約30〜70ng/mL、又は約40〜60ng/mL)のBMP4を含む。
ある具体例において、この方法は、更に、ES細胞を、EFとの接触の後に、十分量の少なくとも一種の後期因子(LF)と第2の十分な期間にわたって接触させることを含む。例えば、LFは、HGF、エキセンジン4、ベータセルリン、及びニコチンアミドであってよい。ある具体例において、これらの少なくとも一種のLFは、約50ng/mL(例えば、約10〜200ng/mL、又は約20〜100ng/mL、又は約30〜70ng/mL、又は約40〜60ng/mL)のHGF、約10ng/mL(例えば、約2〜50ng/mL、又は約20〜100ng/mL)のエキセンジン4、及び約50ng/mL(例えば、約10〜200ng/mL、又は約20〜100ng/mL、又は約30〜70ng/mL、又は約40〜60ng/mL)のβ−セルリンを含む。
ある具体例において、ES細胞を、EFと、約10日間にわたって接触させ、その後、LFと約10日間にわたって接触させる。
ある具体例において、EFは、約50ng/mLのアクチビンAと約50ng/mLのBMP4を含み、LFは、約50ng/mLのHGF,約10ng/mLのエキセンジン4、及び約50ng/mLのβ−セルリンを含む。
ある具体例において、この方法は、更に、ES細胞を、初期プロトコールの後及び成熟プロトコール中に、連続的に、(1)基礎培地と約6日間;(2)約20ng/ml(例えば、約5〜100ng/mL、又は約10〜40ng/mL)FGF−18、及び約2μg/ml(例えば、約0.5〜10μg/ml、又は約1〜5μg/ml)ヘパリン(基礎培地中)と約5〜6日間;(3)約20ng/ml(例えば、約5〜100ng/mL、又は約10〜40ng/mL)FGF−18、約2μg/ml(例えば、約0.5〜10μg/ml、又は約1〜5μg/ml)ヘパリン、約10ng/mlEGF(例えば、約2〜50ng/mL、又は約5〜20ng/mL)、約4ng/ml TGF−α(例えば、約1〜20ng/mL、又は約2〜10ng/mL)、約30ng/ml(例えば、約5〜150ng/mL、又は約15〜60ng/mL)IGF1、約30ng/ml(例えば、約5〜150ng/mL、又は約15〜60ng/mL)IGF2、及び約10ng/ml(例えば、約2〜50ng/mL、又は約5〜20ng/mL)VEGF(基礎培地中)と約4〜5日間;(4)約10μM(例えば、約2〜50μM、又は5〜20μM)フォルスコリン、約40ng/ml(例えば、約10〜150ng/mL、又は約20〜80ng/mL)HGF、及び約200ng/ml(例えば、約50〜800ng/mL、又は約100〜400ng/mL)PYYと約3〜4日間;及び(5)約100ng/ml(例えば、約25〜400ng/mL、又は約50〜200ng/mL)のエキセンジン4及び約5mM(例えば、約1〜20mM、又は2〜10mM)のニコチンアミドと約3〜4日間接触させることを含む。
ある具体例において、ステップ(1)〜(3)は、DMEM/F12培地又は同等物を使用する。ある具体例において、ステップ(4)は、RPMI1640又は同等の培地を使用する。ある具体例において、ステップ(5)は、CMRL培地を使用する。ある具体例において、これらのES細胞は、ディスパーゼによってステップ(1)と(2)の間で解離されない。ある具体例においては、培地中のFBS(使用する場合)を、化学的に限定された血清代替物(SR)で置き換える。
ある具体例において、この方法は、更に、ES細胞を、EF及びLF処理後に及び成熟プロトコール中に、約10μM(例えば、約2〜50μM、又は5〜20μM)フォルスコリン、約40ng/ml(例えば、約10〜150ng/mL、又は約20〜80ng/mL)HGF、及び約200ng/ml(例えば、約50〜800ng/mL、又は約100〜400ng/mL)PYYと約3〜4日間接触させることを含む。
ある具体例において、これらのES細胞は、成熟プロトコール中、フィブロネクチン被覆した組織培養表面上で成長する。
ある具体例において、これらの分化した細胞は、Cペプチドを放出し及び/又はグルコース刺激に応答性である。
ある具体例において、この方法は、更に、これらのES細胞を、EFに接触させた後及び成熟プロトコール中に、連続的に、(1)約20ng/ml FGF−18及び約2μg/ml ヘパリン(基本培地中)と約8日間;(2)約20ng/ml FGF−18、約2μg/ml ヘパリン、約10ng/ml EGF、約4ng/ml TGFα、約30ng/ml IGF1、約30ng/ml IGF2、及び約10ng/ml VEGF(基本培地中)と約6日間;そして(3)約10μM フォルスコリン、約40ng/ml HGF、及び約200ng/ml PYYと約5日間接触させることを含む。これらの因子の濃度の範囲は上記した通りであることが企図される。
ある具体例において、これらの分化した細胞は、Cペプチドを放出する。
ある具体例において、上記のステップ(1)は、6日間続き、ステップ(2)及び(3)は、各々4日間続く。
第2の面において、この発明は、胚性幹細胞から本発明の方法により分化した細胞及び細胞クラスターを提供する。一具体例において、これらの細胞又は細胞クラスターは、pdx−1を発現する。他の具体例において、これらの細胞又は細胞クラスターは、インスリンを発現する。更に別の具体例においては、これらの細胞又は細胞クラスターは、Cペプチドを発現して分泌する。更に別の具体例においては、これらの細胞又は細胞クラスターは、インスリン及びCペプチドを発現する。前述の何れかにおいて、典型的な細胞又は細胞クラスターは、グルコース応答性である。
こうして、この発明のこの面は、様々な主題の方法により得られる分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞クラスターを与える。
ある具体例において、これらの分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞クラスターは、部分的に分化している。
他の具体例において、これらの分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞クラスターは、最終分化している。
ある具体例において、これらの分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞クラスターは、インスリン産生細胞たとえば膵臓のベータ島細胞の機能を、全体的に又は部分的に真似る。
第三の面において、この発明は、膵臓の病気、傷害、又は状態の治療又は予防のための方法を提供する。かかる膵臓の病気、傷害、又は状態は、冒された個人における害された膵臓機能例えば害されたグルコース代謝を適当に調節する能力により特徴付けられる。一具体例において、膵臓の病気、傷害、又は状態は、糖尿病(例えば、I型又はII型糖尿病)であり、この発明は、糖尿病の治療又は予防のための方法を提供する。一具体例において、この治療の方法は、部分的に分化した細胞又は細胞クラスター(例えば、pdx−1+)の組成物を投与することを含む。他の具体例において、この治療方法は、最終分化した細胞又は細胞クラスターの組成物を投与することを含む。かかる最終分化した細胞又は細胞クラスターは、(全体的に又は部分的に)グルコース応答性細胞を含む。前述の何れかにおいて、この発明は、この発明の方法により分化した細胞又は細胞クラスターを、少なくとも一の更なる治療と共に投与することを含む治療方法を企図している。
こうして、この発明のこの面は、個人において、害された膵臓機能により特徴付けられる膵臓の病気、傷害、又は状態を治療し又は予防するための方法であって、該個人に、主題の分化した膵臓細胞系統の細胞を投与することを含む当該方法を提供する。
ある具体例において、この害された膵臓機能は、害された、冒された個人においてグルコース代謝を適当に調節する能力を含む。
ある具体例において、この状態は、I型又はII型糖尿病である。
ある具体例において、この方法は、この病気、傷害、又は状態の治療又は予防に有効な少なくとも一つの更なる治療と共にある。
第四の面において、この発明は、胚性幹細胞の、膵臓細胞系統に沿った指示された分化のための、開始プロトコール、突然変異プロトコール、及び開始及び突然変異プロトコールの組合せを提供する。一具体例において、この開始プロトコール、突然変異プロトコール、又はこれらの組合せは、pdx−1、インスリン、及び/又はCペプチドの発現を促進する。他の具体例において、この開始プロトコール、突然変異プロトコール、又はこれらの組合せは、ベータ島細胞の機能を、全体的に又は部分的に真似るグルコース応答性細胞又は細胞クラスターの誘導を促進する。
前述の何れかにおいて、この発明は、これらの方法を用いて、他の成体又は胚性幹細胞集団の内胚葉性細胞型への分化を指示することができることを企図する。
この発明の具体例は、この発明の異なる面につき記載されていても、適宜、この発明のすべての面に適用可能であることが企図される。
この発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明、及び請求の範囲から明らかとなろう。
図面の簡単な説明
図1は、胚様体形成により自発的に分化させたヒトの胚性幹細胞のRT−PCR分析の結果を示している。発現分析は、ヒトの胚性幹細胞が、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉細胞系統に沿って自発的に分化することができることを確認した。
図2は、幹細胞の分化した膵臓細胞への分化を指示する方法の図式表示を示している。この方法は、2段階で進行する。第一の段階では、幹細胞は、特定の細胞系統例えば膵臓細胞系統に沿って分化するように、特定の細胞系統の下での部分的分化を示すマーカーの発現を促進することによって指示される。第2の段階では、部分的に分化した細胞は、最終分化して、少なくとも一種の特定の分化した細胞型のマーカーを発現する。部分的に又は最終分化した細胞は、治療上有用でありうること、従って、この方法は、終点(例えば、特定の分化プロトコールのゴール)が部分的に分化した細胞の生成又は最終分化した細胞の生成である変法を企図しているということに注意されたい。
図3は、hES3を、MATRIGEL(商標)中で、3Dで胚様体として、懸濁培養した実験の結果をまとめたものである。これらの細胞を、10日間、初期因子を含む培地中で培養した後、後期因子を含む培地中で10日間培養した。培養後、細胞を、pdx−1の発現につきアッセイした。図3中の各棒について、これらの胚様体を、示した場合を除いて、次の初期及び後期因子と共に培養した:初期因子は、アクチビンA、BMP2、BMP4及びノーダルであり;後期因子は、HGF、エキセンジン4、ベータセルリン及びニコチンアミドであった。省略した特定の因子を、各棒の下に示した。
図4A及びBは、マウス胚性幹細胞の特定の内胚葉性細胞系統に沿った指示された分化を示している。pdx−1遺伝子座に割り込んでノックアウトしたlacZレポーターを有するマウス胚性幹細胞株を、膵臓細胞に分化するのに利用した。図4Aは、EB形成後にプレエティングに続いてβ−ガラクトシダーゼを発現する(pdx−1発現を示す)細胞のクラスターを示している。図4Bは、様々な培養ステージのマウス胚様体につきpdx−1についての定量的RT−PCRのデータを示している。Pdx−1発現は、EB形成の24日目まで経時的に増加した。
図5A及びBは、初期膵臓マーカーのpdx−1が、ヒト胚性幹細胞株hES2から形成された胚様体において経時的に増加したことを示している。図5Aは、pdx−1発現が、胚様体形成の0〜24日の間に増加した(RT−PCRにより測定)ことを示している。対照として、アクチン発現を測定したが、この発現は、経時的に有意に変化しなかった。図5Bは、pdx−1のRT−PCR産物のエチジウムブロミド染色したゲルを示しており、これは、予想されたサイズの単一のバンドが検出されたことを示している。
図6は、TGFβファミリー成長因子の胚様体への添加が、培養において、pdx−1の発現を増大させることを示している。ヒトES細胞株3(hES3)由来の胚様体を、MATRIGEL(商標)中で、血清代用物を補ったRPMI培地中で培養した。pdx−1のRT−PCRによる発現は、培養において、20日後に測定した。発現は、アクチン1ngあたりのfgで表した。TGFβファミリー成長因子の添加は、pdx−1発現の9倍増を生じた。
図7A及びBは、特定の内胚葉性細胞系統に沿った指示された分化を示している。図7Aは、肝細胞マーカーのアルブミンを発現する胚性幹細胞のクラスターを示している。図7Bは、幾つかの分化プロトコールの何れかを受けた2つの異なるヒト胚性幹細胞株において内胚葉性分化のマーカーを検査した定量的RT−PCRのデータを示している。
図8は、胚様体をMATRIGEL(商標)中で懸濁3D培養した場合の、培養中の様々な時点における胚性幹細胞におけるpdx−1発現を示している。これらの細胞を、10日間、初期因子を含む培地中で培養した後に、後期因子を含む培地中で10日間培養した。
図9A及びBは、ある条件の組合せの下で分化した胚性幹細胞におけるpdx−1及びインスリンの発現を示している。細胞を、3D培養において、3週間にわたって、初期及び後期因子の存在下で、胚様体として培養し、その後、27日目まで、多段階分化プロトコールにかけた。図9Aは、pdx−1の発現を示し、図9Bは、インスリンの発現を示している。
図10A及びBは、ある条件の組合せの下で分化した胚性幹細胞におけるpdx−1及びインスリンの発現を示している。細胞を、3D培養にて、1週間にわたって、培養体として培養した後に、32日目まで、多段階の分化プロトコールにかけた。図10Aは、pdx−1の発現を示しており、図10Bは、インスリンの発現を示している。
図11は、イン・ビトロでの、胚性幹細胞の指示された分化中の、内胚葉性及び膵臓の遺伝子の発現の速度論を示している。
図12は、イン・ビトロでの、胚性幹細胞の指示された分化中の、遺伝子発現の一過性のパターンの詳細な分析を示している。図11及び12にまとめたデータは、胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った指示された分化中の遺伝子発現が、正常の膵臓の発生中に起きるものを真似ていることを示している。
図13A及びBは、初期及び後期因子の種々の組合せの、pdx−1発現の誘導に対する効果を調べるためにデザインされた実験の結果をまとめたものである。図13Aに描いた結果は、標準化された発現を表しており、図13Bに描いた結果は、アクチン投入量の%として表してあるということに注意されたい。
図14は、ノーダルの、pdx−1発現の誘導に対する効果を示している。2EF+3LFプロトコールを、50ng/mlの組換えノーダルタンパク質の存在下又は非存在下で行なった。
図15は、アクチビン及びBMP4タンパク質濃度の、pdx−1発現の誘導に対する効果を示している。このデータは、pdx−1及びアクチン標準曲線により測定したものであり、アクチンの%として表してある。
図16は、アクチビン及びBMP4タンパク質濃度の、幾つかのエンドクリン遺伝子の発現の誘導に対する効果を示している。Pdx−1及びインスリンの遺伝子の発現は、標準曲線に基いて計算したものであり、アクチンの%として表してある。Pax4、ソマトスタチン、及びグルカゴンを、相対的値として計算した。
図17A〜Dは、2EF−3LF初期分化プロトコール(パネルC及びD)が、4EF−4LF初期分化プロトコール(パネルA及びB)よりも一層有効にpdx−1発現を誘導することを示している。
図18A及びBは、pdx−1発現とその後の、初期分化フェーズ及び成熟フェーズの両方を含む拡大した分化プロトコールを用いて分化させた胚性幹細胞の代表的クラスターからのCペプチドの放出を示している。図18Aは、組合わせたプロトコールの図式表示である。図18Bの左パネルは、最初の20日の分化(初期分化プロトコール)の後の定量的PCRによるpdx−1の発現を示している。図18Bの右パネルは、分化の36日目におけるCペプチドの放出を示している。36日目は、拡大した分化プロトコールの成熟部分のほぼ半分の時点である。
図19A及びBは、Cペプチドの、この拡大した分化プロトコール中の、様々なステージにおいてアッセイしたクラスターからの放出を示している。
図20A〜Fは、イン・シトゥーハイブリダイゼーションによる、インスリンの発現を示している。図20A及びBは、初期分化プロトコールの20日目の後に、胚様体が、幾らかの単離されたインスリン+細胞を含むことを示している。図20C及びDは、成熟プロトコールを利用する更なる分化が、インスリン発現を、胚様体中の一層高いパーセンテージの細胞において誘導することを示している。加えて、成熟プロトコール後に、これらのインスリン+細胞は、胚様体内のセクター/クラスター内で最も優勢であるようである。図20Eは、20日目の胚様体の低温切片を示している。図20Fは、センス鎖陰性対照を示している。
図21A〜Fは、免疫細胞化学による、45日目の胚様体におけるCペプチドタンパク質発現を示している。
図22A〜Eは、イン・シトゥーハイブリダイゼーションによるpdx−1発現を示している。図22A及びBは、初期分化プロトコールにて20日にわたって培養した胚様体におけるpdx−1発現を示している。図22Cは、成長因子の非存在下で20日間培養した胚様体がpdx−1を発現できないことを示している。図22Dは、図22A及びCに描いた実験の結果をまとめたものであり、成長因子の非存在下(右)に対して存在下(左)で20日間培養した細胞における活発なpdx−1の発現を確認する。図22Eは、初期及び成熟プロトコールの組合せにおける43日目の後に、胚様体が、pdx−1を活発に発現することを示している。Pdx−1発現は、一般に、特定の胚様体の一部分にクラスター化される。
図23は、Cペプチド放出を生じる多段階成熟プロトコールの2つの変法を示している。上段のダイヤグラムは、図19に示したものと同じである。中段及び下段のダイヤグラムは、2つの変法を示しており、各々は、上段のダイヤグラムより一層効率的である。
図24は、多段階プロトコールの変法を用いた場合のCペプチドの放出を示している。
図25A〜Cは、多段階成熟プロトコールのステップ4におけるフォルスコリンのCペプチドの放出に対する効果を示している。
図26A及びBは、多段階プロトコールのステップ4におけるウシ胎児血清(FBS)のCペプチドの放出に対する効果を示している。
図27A〜Dは、用いたプロトコール(図27A)、グルコース濃度の、分化したHES3細胞に対する効果(Cペプチド(図27B)、pdx−1 mRNA(図27C)及びインスリン mRNA(図27D)の放出により測定)を示している。
図28は、分化したHES3胚様体における、一本鎖及び二本鎖免疫組織化学による、Pdx−1及びCペプチドの発現を示している。
図29は、成長因子、様々な後期因子及び初期因子の存在下及び非存在下でのMATRIGEL(商標)分化の20日目におけるPdx−1の発現を示している。
図30は、Pdx−1の、MATRIGEL(商標)の存在下及び非存在下での、0日目及び10日目における発現を示している。
図31は、Cペプチドの、単純化した多段階成熟プロトコールを用いた場合の、26日目及び29日目における放出を示している。
図32は、インスリン及びCペプチドの存在を、切片化した胚様体において、免疫蛍光法により示している。上段パネルは、高倍率の像であり、下段パネルは、低倍率の像である。
図33は、β−細胞エンドクリン細胞系統の分化のマーカーであるPdx−1及びNkx6.1の発現を示している。
発明の詳細な説明
(i)概観
真性糖尿病は、インスリン産生又は利用に関する問題のために循環グルコースレベルを調節できないことを特徴とする一般的な病気である。I型糖尿病(全糖尿病症例の約5%)は、インスリンを産生する膵臓ベータ細胞の自己免疫破壊により引き起こされる。一層一般的な2型糖尿病は、肥満と関係し、膵臓による減少したインスリン産生量又はインスリンの標的器官による非効率的な利用(インスリン抵抗性)に関係する多くの原因を有している。集合的に、糖尿病は、世界的な流行病と考えることができ、米国人の7.9%もの多くの人々が冒されている。糖尿病の病理の非常に特徴的な点、即ち膵臓ベータ細胞の自己免疫破壊又は減少した効率は、それを、細胞療法の理想的な候補とする。改良された島分離技術及び免疫抑制養生法を利用する島移植における最近のブレークスルーは、患者を長期にわたってインスリン依存性から開放することに非常に成功している。しかしながら、死体の膵臓組織の限られた供給は、このアプローチを、世界的な患者の治療への需要に応ずるには不適当なものにしている。それ故、研究者は、ベータ細胞の別の起源を捜し出すことに集中しており、胚性幹細胞は、一つの魅力的な選択肢である。
幾つかの研究室は、インスリン産生細胞のマウスES細胞からの分化を報告している。McKay研究室からのプロトコールは、ネスチン陽性である細胞の分離及び精製に依存しており、ベータ細胞は最初に神経性中間体を通るであろうという仮定に基づいている。しかしながら、この論文において認められたインスリン放出が、細胞培養培地からのインスリン取込みにより引き起こされたことは、ありそうなことである。その上、幾つかの研究室は、形態学的に、これらのプロトコールにより生成された細胞がボーンファイド(bone fide)ベータ細胞と全く異なっていることを示しており、事実、それらは、一層、ニューロン様であって、インスリン取込みと放出の獲得された能力を有している。
ヒトES細胞における仕事は、マウスにおけるそれよりも、主に、一般にヒトESの分野の初期のため及び公的なhESC研究に対する国際議会のために遅れていた。マウスES細胞からのベータ細胞の分化を詳述する公開された報告は、価値のある開拓者的努力であり、この分野に対する楽観主義を助長してきており、未だ、再生不可能性又は乏しい効率の報告により脅かされている。これは、最後の細胞療法のための多数のベータ細胞を効率的に生成するヒトES細胞の分野における強壮な指示された分化のプロトコールを開発することの巨大な序幕を残している。
糖尿病の症例における上昇及び糖尿病を治療する方法としてのEdmontonプロトコールの最近の成功の両者は、この病気を治癒させる細胞療法に対する大きな楽観主義を生んだ。高度に競合的な分野であるが、未だ如何なる効率的な、多能性のヒト胚性幹細胞(hESC)の、膵臓ベータ細胞様の表現型に向けた分化を指示するのに利用可能な再生可能なプロトコールもない。本発明は、胚性肝細胞の、膵臓細胞の運命への分化を指示するための様々な方法を提供する。これらは、約20日の時間枠にわたって投与された幾つかの初期及び後期因子(EF及びLF)の利用を含む方法を含む。この初期分化方法論は、pdx−1の発現を促進し、胚性幹細胞の、膵臓細胞系統に沿った分化を促進する。加えて、この初期分化方法論は、最終的膵臓分化のマーカー例えばインスリン及びソマトスタチンの発現を促進する(pdx−1の発現より低レベルであるが)。本発明は、胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った分化の促進を助成する因子並びに初期及び後期因子の最適化されたサブセットを同定する様々な実験を提供する。
様々な初期分化方法に加えて、本発明は、幹細胞の膵臓細胞系統に沿った分化を更に促進するようにデザインされた成熟プロトコールを提供する。特に、この発明は、以前は、ここに詳述した初期分化プロトコールを用いて膵臓細胞系統に沿って指示されていた胚性幹細胞の最終分化を促進するために利用することのできる成熟プロトコールを提供する。これらの成熟プロトコールを利用して、胚性幹細胞は、更に分化して、インスリン及びCペプチドを含む(但し、これらに限られない)最終分化マーカーの発現を誘導し及び/又は増大させることができる。その上、かかる成熟プロトコールは、グルコース応答性である(例えば、膵臓ベータ細胞の機能を真似る)細胞又は細胞クラスターを生成するために利用することができる。
(ii)定義
便宜のために、この明細書、実施例及び添付の請求の範囲で用いるある種の用語をここに集めた。別途規定しない限り、ここで用いるすべての技術的及び科学的用語は、この発明が属する分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有している。
ここで用いる単数形は、一つ又は一つより多くの(即ち、少なくとも一つの)目的語を指す。例えば、「エレメント」は、一つのエレメント又は一つより多くのエレメントを意味する。
「タンパク質」は、ここで用いる場合には、本質的に20種類のアミノ酸の何れかよりなる任意のポリマーである。しばしば「ポリペプチド」が比較的大きいポリペプチドを参照する際に用いられ、「ペプチド」がしばしば小さいポリペプチドを参照する際に用いられるが、これらの用語の当分野での用い方は、重複しており変化する。
用語「ペプチド」、「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、ここでは、交換可能に用いる。
用語「ポリヌクレオチド配列」及び「ヌクレオチド配列」も又、ここでは、交換可能に用いる。
「組換え」は、ここで用いる場合、タンパク質を、原核生物又は真核生物発現系から得ることを意味する。
用語「野生型」は、イン・ビボで正常にそれぞれ存在する通りの、タンパク質をコードする天然のポリヌクレオチド配列若しくはその一部、又はタンパク質配列若しくはその部分を指す。
用語「変異体」は、生物の遺伝物質における任意の変化、特に、野生型ポリヌクレオチド配列における変化(即ち、欠失、置換、付加又は変更)又は野生型タンパク質における任意の変化を指す。用語「変異物」は、「変異体」と交換可能に用いる。遺伝物質中の変化がタンパク質の機能の変化を生じるということがしばしば仮定されるが、用語「変異体」及び「変異物」は、野生型タンパク質の配列における変化を、その変化がタンパク質の機能を変える(例えば、増大させ、減少させ、新規な機能を与える)か、又はその変化がタンパク質の機能に何らの効果を有しない(例えば、変異がサイレンとである)かによらず指す。
ここで用いる場合、用語「核酸」は、ポリヌクレオチド例えばデオキシリボ核酸(DNA)及び適宜リボ核酸(RNA)を指す。この用語は又、ヌクレオチド類似体から作られたRNA又はDNAの類似体、及び、記載した具体例に適用可能であれば、一本鎖(例えば、センス又はアンチセンス)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むとも理解されるべきである。
本願明細書でいう「遺伝子」又は「組換え遺伝子」とは、エキソン及び(任意に)イントロン配列の両方を含む、ポリペプチドをコードする、開いた読み枠を含む核酸を意味する。
本願明細書でいう「ベクター」とは、それに結合した別の核酸を、運搬することのできる核酸分子のことを言う。好適なベクターは、それらが結合した核酸の自律的複製及び/又は発現が可能なものである。操作可能に遺伝子に結合し、その遺伝子の発現を誘導することのできるベクターを、本願明細書では「発現ベクター」と称する。
ポリヌクレオチド配列(DNA、RNA)は、発現制御配列がポリヌクレオチド配列の転写及び翻訳を制御し、調節する場合に、発現制御配列に「機能的に結合されている」。用語「機能的に結合された」は、適当な開始シグナル(例えば、ATG)を発現すべきポリヌクレオチド配列の前に有すること及び発現制御配列の制御下でのそのポリヌクレオチド配列の発現及びそのポリヌクレオチド配列にコードされる所望のポリペプチドの生成を可能にする正しいリーディングフレームを維持することを含む。
「転写調節配列」は、操作可能に結合されたタンパク質コード配列の転写を誘導し又は制御する開始シグナル、エンハンサー及びプロモーターなどの核酸配列を指すためにこの明細書中で用いられる包括的用語である。幾つかの例において、組換え遺伝子の転写は、その組換え遺伝子の発現をその発現を意図する細胞型において制御するプロモーター配列(又は他の転写調節配列)の制御下にある。この組換え遺伝子を、天然型のタンパク質の転写を制御する配列と同じ又は異なる転写調節配列の制御下に置くことができるということも又、理解される。
ここで用いる場合、用語「組織特異的プロモーター」は、プロモーターとして役立つ即ちそのプロモーターに操作可能に結合された選択した核酸配列の発現を調節する核酸配列、及び組織例えば神経起源の特異的細胞例えば神経細胞において選択した核酸配列の発現に影響を及ぼす核酸配列を意味する。この用語は又、一の組織において主として選択した核酸の発現を調節するが他の組織においても発現を引き起こす、いわゆる「漏出性」プロモーターをもカバーする。
「相同性」及び「同一性」は、本明細書中で同義語として用いられ、2つのペプチド間での又は2つの核酸分子間での配列類似性を指す。相同性は、比較の目的のために整列させうる各配列中の一の位置を比較することにより測定することができる。比較される配列中の一の位置を同じ塩基又はアミノ酸が占めているならば、それらの分子は、その位置で相同であり又は同一である。配列間の相同性又は同一性の程度は、それらの配列に共有されるマッチする位置又は相同な位置の数の関数である。
「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、一のポリペプチドをコードする第一のアミノ酸配列と、該第一のアミノ酸配列の如何なるドメインに対しても外来性であり実質的に相同でない一のドメイン(ポリペプチドの部分)を規定する第2のアミノ酸配列とのの融合物である。キメラタンパク質は、第1のタンパク質を発現する生物においても見出される外来ドメインを(異なるタンパク質中であっても)与えることができ、又はそれは、異なる種類の生物により発現されるタンパク質構造の「種間」、「遺伝子間」等の融合物であってよい。
ここで用いる場合、「小型有機分子」は、タンパク質よりも容易に細胞膜を横切る能力により一般に特徴付けられるタンパク質より小さい化合物を指す。好適な小型有機分子は、10,000AMUより小さいサイズを有することを特徴とする。一層好ましくは、5000〜10,000AMUである。最も好ましくは、これらの小型有機分子は、1000〜5000AMUのサイズを有することを特徴とする。
この発明の「非ヒト動物」には、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、及び非ヒト霊長類が含まれる。
ここで用いる場合、「増殖性」及び「増殖」は、細胞が有糸***を行なうことを指す。
「分化」は、本願のコンテキストにおいては、一層特殊化された細胞と結びついていることの知られているマーカーを発現し及び更なる分割又は分化のできない最終分化した細胞に一層近い細胞の形成を意味する。細胞が、一層拘束されてない細胞からだんだん特定の細胞型に拘束された細胞へ進行し、最終的に、最終分化した細胞へと進行する経路は、進行性分化又は進行性拘束と呼ばれる。一層特殊化されている(例えば、進行性分化の経路に沿って進み始めている)が、未だ最終分化してはいない細胞は、部分的に分化したと呼ばれる。
用語「前駆細胞」は、「幹細胞」と同義に用いられる。両用語は、増殖して、多数の母細胞(これらは、更に、分化した又は分化しうる娘細胞を生じさせることができる)を生成する能力を有する一層多くの前駆細胞を生じさせることのできる未分化細胞をいう。好適具体例において、用語前駆細胞又は幹細胞は、子孫が、しばしば、分化によって、例えば完全に独自の性質を得ることにより、異なる方向に特殊化する一般化された母細胞をいい、該分化は、胎児の細胞及び組織の進行性の多様化において現れる。細胞の分化は、複雑な過程であり、典型的には、多くの細胞***において生じる。分化した細胞は、多能性細胞(それ自身が、多能性細胞に由来する)などから導くことができる。これらの多能性細胞の各々は幹細胞と考えることができるが、各々が生じさせることのできる細胞型の範囲は、かなり変化しうる。幾つかの分化した細胞は又、一層大きい発生能力を有する細胞を生じさせる能力をも有している。かかる能力は自然であってもよいし、又は種々の因子での処理により人工的に誘導することもできる。
用語「胚性幹細胞」は、胚盤胞の内部細胞塊の多能性幹細胞を指すために用いる(米国特許第5843780号、第6200806号参照)。かかる細胞は、体細胞核移植から得られる胚盤胞の内部細胞塊から同様に得ることができる(例えば、米国特許第5945577号、5994619号、6235970号参照)。胚性幹細胞の顕著な特徴は、胚性幹細胞の表現型を規定する。従って、一の細胞は、胚性幹細胞の少なくとも一つのユニークな特徴を有し、それで、その細胞が他の細胞から識別されうるならば、胚性肝細胞の表現型を有する。典型的な顕著な胚性幹細胞の特徴には、制限はしないが、遺伝子発現プロフィル、増殖能、核型、特定の培養条件に対する応答性などが含まれる。
用語「成体幹細胞」は、胎児、若年、及び成体組織を含む非胚性組織に由来する任意の多能性幹細胞を指すために用いる。幹細胞は、血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋、及び心筋を含む広範な成体組織から分離されてきた。これらの幹細胞の各々は、遺伝子発現、因子応答性、及び培養における形態に基づいて特性決定されうる。典型的な成体幹細胞には、神経幹細胞、神経冠幹細胞、間充織幹細胞、造血幹細胞及び膵臓幹細胞が含まれる。上記のように、幹細胞は、事実上すべての組織に常在していることが見出されている。従って、本発明は、幹細胞集団が、事実上、任意の動物組織から単離することができるということを認める。
用語「組織」は、ある特定の機能を一緒に行う、同様に特殊化された細胞の群又は層をいう。
用語「実質的に純粋な」は、特定の細胞集団に関して、少なくとも約75%の、好ましくは少なくとも約85%の、一層好ましくは少なくとも約90%の、最も好ましくは少なくとも約95%の純度の細胞の集団をいう(全細胞集団を作る細胞に関して)。書き直すと、用語「実質的に純粋な」又は「本質的に精製された」は、少なくとも一つの部分的に分化した及び/又は最終分化した細胞型の調製に関して、その本質的に精製された細胞集団と機能的に又は構造的に関係のない、未分化の、非内胚葉細胞型に分化した、又は内胚葉組織型に分化した、約20%より少ない、一層好ましくは約15%、10%、8%、7%より少ない、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%より少ない又は1%未満の細胞を含む細胞の集団を指す。
「マーカー」を用いて、細胞の状態を測定する。マーカーは、形態学的に又は生化学的(酵素的)に、特に細胞型に特徴的であり、又はその細胞型により発現される分子に特徴的である。好ましくは、かかるマーカーは、タンパク質であり、一層好ましくは、当分野で利用可能な抗体その他の結合性分子に対するエピトープを有する。しかしながら、マーカーは、細胞中で見出される、タンパク質(ペプチド及びポリペプチド)、脂質、多糖類、核酸及びステロイドを含む任意の分子からなってよい(これらに限られない)。加えて、マーカーは、細胞の形態学的又は機能的特徴を含むことができる。形態学的特徴の例には、形状、サイズ、及び核対細胞質比が含まれるが、これらに限られない。機能的特徴の例には、特定の基材に付着する能力、特定の染料を取込み又は排出する能力、特定の条件下で移動する能力、及び特定の細胞系統に沿って分化する能力が含まれるが、これらに限られない。
マーカーは、任意の当業者が利用可能な方法により検出することができる。マーカー分子上の少なくとも一つのエピトープを認識して結合する抗体(及びすべての抗体誘導体)に加えて、マーカーは、分析技術を利用して、タンパク質ドットブロット、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)又は他のタンパク質を分離してからマーカーを可視化するゲルシステム(ウエスタンブロットなど)、ゲル濾過、アフィニティーカラム精製などにより、形態学的に、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、マーカー分子との特異的反応を有する染料(ルテニウムレッド及び細胞外マトリクス分子など)による染色、特異的な形態学的特徴(上皮における微絨毛の存在、又は移動性細胞たとえば繊維芽細胞及び間充織における偽足/糸状仮足の存在など)により;及び生化学的に、酵素産物若しくは中間体、又は細胞全体の組成例えばタンパク質の脂質に対する比、若しくは脂質の糖質に対する比、更には2種類の特定の脂質の互いの若しくは多糖類に対する比のアッセイなどによって検出することができる。核酸マーカーの場合には、任意の公知の方法を用いることができる。かかるマーカーが核酸であるならば、PCR、RT−PCR、イン・シトゥーハイブリダイゼーション、ドットブロットハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、サザーンブロットなどを適当な検出法と結合して用いることができる。もしかかるマーカーが、形態学的及び/又は機能的特徴であるならば、適当な方法には、視覚的検査例えば肉眼、立体顕微鏡、解剖顕微鏡、共焦点顕微鏡又は電子顕微鏡を用いる検査が含まれる。この発明は、単一マーカー並びに分子及び/又は非分子的マーカーの任意の組合せを用いる細胞の進行性の又は最終分化を分析する方法を企図している。
分化は、細胞が特殊化した表現型を呈する(例えば、他の細胞型から識別される少なくとも一つの特徴又は機能を得る)発生過程である。幾つかの場合には、分化した表現型は、ある種の発生経路における成熟終点である細胞表現型を指す(いわゆる、最終分化した細胞)。多くの(但し、すべてではない)組織において、分化の過程は、細胞周期から出ることと結合している。これらの場合には、最終分化した細胞は、増殖能を失うか又は大いに制限される。しかしながら、我々は、用語「分化」又は「分化した」が、運命又は機能において、発生の以前の点よりも一層特殊化された細胞を指し、最終分化した細胞と最終分化はしてないが発生の以前の点よりは一層特殊化された細胞の両方を包含することに注意する。未拘束細胞(例えば、幹細胞)から増大した程度の特定の細胞型への拘束及び最終的には最終分化した細胞への拘束を有する細胞への細胞の発生は、進行性分化又は進行性拘束として知られている。一層特殊化されているが未だ最終分化してない細胞は、部分的に分化したと呼ばれる。
用語「開始プロトコール」又は「開始方法」は、胚性幹細胞及び胚様体の膵臓細胞系統に沿っての偏向を開始するのに用いられるこの発明の様々な方法の一つを指すために交換可能に用いられる。この開始プロトコールは、典型的には約20日であり、の初期因子(EF)及び後期因子(LF)の添加を含む。しかしながら、EFのみの存在下で例えば10日間の一層短い持続期間の開始プロトコールも又、企図され、典型的な開始プロトコールは、4EF及び4LFの添加を含む8因子プロトコール並びに2EF−3LFプロトコールを含むが、これらに限られない。この出願中では、特定の開始プロトコールは又、一層特殊化して、胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った初期分化の促進の助成に用いられる初期及び後期因子の数又は組合せによって言及される。
用語「成熟プロトコール」は、以前に開始プロトコールにかけられた胚性幹細胞及び胚様体を更に分化させるのに用いられる様々な方法の何れかを指すのに用いる。この成熟プロトコールは、様々な段階に細分することができ、用語成熟プロトコールは、細胞をこれらの様々な相の何れか又はすべてにかける方法を指すために用いられる。培養日数、プロトコールの段階、又は加えた因子の特定の引用は、様々な入れ替え及び変異プロトコールのステージの識別の助成のために用いられる。
語句「非経口投与」及び「非経口投与した」は、ここで用いる場合、腸内投与及び局所投与以外の投与方法(通常、注射による)を意味し、制限はしないが、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、髄腔内注射、脳室内注射、嚢内注射、眼窩内注射、心内注射、皮内注射、腹腔内注射、経気管注射、皮下注射、角皮下注射、関節内注射、皮膜下注射、蜘蛛膜下注射、脊椎内注射、脳脊髄内注射、及び胸骨内注射及び点滴を意味する。
語句「全身投与」、「全身投与した」、「末梢投与」及び「末梢投与した」は、ここで用いる場合、化合物、薬物又は他の直接中枢神経系に投与するもの以外の物質の投与を意味し、それは、動物システムに入って、代謝その他の過程にかかる(例えば、皮下投与)。
語句「製薬上許容しうる」は、ここでは、音響医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比と同等の、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症のない、ヒト及び動物の組織と接触する使用に適した化合物、物質、組成物及び/又は投薬形態を指すために用いられる。
語句「製薬上許容しうるキャリアー」は、ここで用いる場合、製薬上許容しうる物質、組成物又はビヒクル例えば液体若しくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤又はカプセル封入材であって、主題の薬剤を、一の器官から又は身体の部分から他の器官又は身体の部分へ担い又は輸送することに関係するものを意味する。各キャリアーは、配合物の他の成分と適合性であるという意味において「許容しうる」ものでなければならない。
用語「ヘッジホッグシグナリング」、「ヘッジホッグシグナル変換」及び「ヘッジホッグシグナリング経路」は、この出願中で、ヘッジホッグタンパク質(Sonic、Desert、Indianヘッジホッグ)が、種々の細胞型の増殖、分化、移動及び生存に影響を及ぼす機構を指すために、交換可能に用いる(例えば、Allendoerfer (2003) Current Opinion Investig. Drugs 3: 1742-1744; Ingham (2001) Genes & Dev 15: 3059-3087を参照されたい)。ヘッジホッグシグナル変換を促進する薬剤は、「ヘッジホッグアゴニスト」又は「ヘッジホッグシグナリングのアゴニスト」と呼ばれる。ヘッジホッグシグナル変換を阻害する薬剤は、「ヘッジホッグアンタゴニスト」又は「ヘッジホッグシグナリングのアンタゴニスト」と呼ばれる。ヘッジホッグシグナル変換は、ヘッジホッグタンパク質又は、経路中の任意の点(細胞外、細胞表面、又は細胞内)でヘッジホッグシグナリングを代行し若しくは拮抗する薬剤により影響を受けうる。更なる例としては、米国特許第6,444,793号;米国特許第6,683,108号;米国特許第6,683,198号;米国特許第6,686,388号;WO02/30421;WO02/30462;WO03/011219;WO03/027234;WO04/020599を参照されたい。前述の参考文献の各々を、参考として、本明細書中にそっくりそのまま援用する。
用語「BMPシグナリング」、「BMPシグナル変換」及び「BMPシグナリング経路」は、この出願中では、BMPタンパク質が、種々の細胞型の増殖、分化、移動及び生存に影響を及ぼす機構を指すために、交換可能に用いる(例えば、Balemans (2002) Developmental Biology 250: 231-250; 米国特許第6498142号;Miyazawa等、(2002) Genes Cell 7:1191-1204を参照されたい)。BMPシグナル変換を促進する薬剤は、「BMPアゴニスト」又は「BMPシグナリングのアゴニスト」と呼ばれる。BMPシグナル変換を阻害する薬剤は、「BMPアンタゴニスト」又は「BMPシグナリングのアンタゴニスト」と呼ばれる。BMPシグナル変換は、BMPタンパク質により、又は経路の任意の点(細胞外、細胞表面又は細胞内)でBMPシグナリングを代行し若しくは拮抗する薬剤により影響されうる。
用語「Wntシグナリング」、「Wntシグナル変換」及び「Wntシグナリング経路」は、この出願中では、Wntタンパク質が、種々の細胞型の増殖、分化、移動及び生存に影響を及ぼす機構を指すために、交換可能に用いる(例えば、WO02/44378;Wharton, Developmental Biology 253: 1-17, 2003を参照されたい)。Wntシグナル変換を促進する薬剤は、「Wntアゴニスト」又は「Wntシグナリングのアゴニスト」と呼ばれる。Wntシグナル変換を阻害する薬剤は、「Wntアンタゴニスト」又は「Wntシグナリングのアンタゴニスト」と呼ばれる。Wntシグナル変換は、Wntタンパク質により、又は経路の任意の点(細胞外、細胞表面又は細胞内)でWntシグナル変換を代行し若しくは拮抗する薬剤により影響されうる。
用語「Notchシグナリング」、「Notchシグナル変換」及び「Notchシグナリング経路」は、この出願中では、Notchタンパク質が、種々の細胞型の増殖、分化、移動及び生存に影響を及ぼす機構を指すために、交換可能に用いる(例えば、Baron, Stem Cell Dev. Bio. 14: 113-119, 2003を参照されたい)。Notchシグナル変換を促進する薬剤は、「Notchアゴニスト」又は「Notchシグナリングのアゴニスト」と呼ばれる。Notchシグナル変換を阻害する薬剤は、「Notchアンタゴニスト」又は「Notchシグナリングのアンタゴニスト」と呼ばれる。Notchシグナル変換は、Notchタンパク質により、又は経路の任意の点(細胞外、細胞表面又は細胞内)でNotchシグナル変換を代行し若しくは拮抗する薬剤により影響されうる。
用語「接着マトリクス」は、培養において細胞の接着を促進する任意のマトリクスを指す(例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、スーパーフィブロネクチン)。典型的なマトリクスには、MATRIGEL(商標)(Beckton-Dickinson)、HTB9マトリクス、及びスーパーフィブロネクチンが含まれる。MATRIGEL(商標)は、マウス肉腫細胞株に由来する。HTB9は、膀胱細胞癌の株(米国特許第5,874,306号)に由来する
用語「膵臓」は、当分野で認められており、一般に、胃の後ろに、脾臓と十二指腸の間に横向きに位置された、大きな、細長い、総状の腺をいう。膵臓の外分泌機能例えば外部への分泌は、消化酵素の起源を与える。実際、「パンクレアチン」は、消化補助に用いられる酵素(主として、アミラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼ)を含む膵臓に由来する物質をいう。外分泌部分は、内腔を囲む幾つかの漿液細胞よりなる。これらの細胞は、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、カルボキシペプチダーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼA2、エラスターゼ及びアミラーゼ等の消化酵素を合成して分泌する。
膵臓の内分泌部分は、ランゲルハンス小島よりなる。これらのランゲルハンス小島は、外分泌する膵臓の中に埋め込まれた細胞の丸い集落のように見える。4つの異なる型であるα、β、δ及びφ細胞が、これらの小島において同定されている。α細胞は、膵臓の小島で見出される細胞の約20%を構成して、ホルモンのグルカゴンを生成している。グルカゴンは、幾つかの組織に作用して、食間に利用可能なエネルギーを作る。。肝臓においては、グルカゴンは、グリコーゲンの分解を引き起こし、アミノ酸前駆体からの糖新生を促進する。δ細胞は、膵臓でグルカゴン放出を阻止して膵臓の外分泌を低下させるように作用するソマトスタチンを生成する。ホルモンの膵臓ポリペプチド(PP)は、φ細胞で生成される。このホルモンは、膵臓の重炭酸塩及び酵素の外分泌を阻止し、胆嚢の弛緩を引き起こして、胆汁の分泌を低下させる。この小島で最も豊富な細胞は、60〜80%を構成し、インシュリンを産生するβ細胞である。インシュリンは、食事中又はその少し後で上昇する過剰の栄養素の蓄積を引き起こすことが知られている。インシュリンの主要な標的器官は、肝臓、筋肉及びエネルギーの貯蔵のために特殊化された脂肪臓器である。
用語「膵管」には、副膵管、背側膵管、主膵管及び腹側膵管が含まれる。漿腺は、隣接する分泌細胞間の内腔の拡張を有し、これらは、細胞間小管と呼ばれる。用語「小葉間導管」は、膵臓内の分泌ユニットの小葉内に見出される介在導管及び線条部導管をいう。「介在導管」は、分泌性細葉又は細管から排液させる第1の管セグメントをいう。介在導管は、しばしば、炭酸脱水酵素活性を有し、それにより、重炭酸イオンがこれらの分泌物にこのレベルで加えられる。「線条部導管」は、最大の小葉内管要素であり、分泌物のイオン組成を調節することができる。
ここで用いる場合、「島同等物」又は「IE」は、細胞の集団又はクラスターを横切る総インスリン含量の比較に用いられる尺度である。島同等物は、総インスリン含量及び細胞数の評価(総タンパク質含量として典型的に定量される)に基づいて定義される。これは、細胞クラスター、培養、球、又は他の細胞集団内の細胞総数に基づくインスリン含量の尺度の標準化を可能にする。標準のラット及びヒトの島は、直径約150μmであり、総タンパク質1μg当たり40〜60ngのインスリンを含む。本発明の方法により分化したヒトの島様構造は、平均で、総タンパク質1μg当たり約50ngのインスリンを含む。
用語「レポーター構築物」は、特定の細胞の存在を「レポート」し又は「同定」する構築物を指すために用いる。典型的には、レポーター構築物は、発生に関連した様式で発現を調節するのに十分な特定の遺伝子のプロモーター、エンハンサー又は調節用配列の部分を含む。かかる調節用配列は、容易に検出しうるマーカーをコードする核酸配列(「レポーター遺伝子」)に操作可能に結合されている。この方法において、容易に検出可能な産物の発現をモニターすることができ、この産物は、操作可能に結合されたプロモーター又はエンハンサーと首尾一貫した様式で調節される。レポーター遺伝子は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションなどを包含する幾つかの方法の何れかによって細胞に導入することができる。典型的なレポーター遺伝子には、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、組換えにより加工されたGFP変異物、レッド蛍光タンパク質、イエロー蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、LacZ、ルシフェラーゼ、ホタルレミラタンパク質が含まれるが、これらに限られない。更なる典型的レポーター遺伝子は、ネオマイシン、ヒグロマイシン、ゼオシン及びピューロマイシンを含む(これらに限られない)抗生物質耐性タンパク質をコードする。
用語「xeno−free/臨床的に従順なES細胞又は細胞株」又は「xeno−free CGMP−従順なhES細胞株」は、下記を指す
すべての現在の78の米国国立衛生研究所(NIH)に列記されたヒト胚性幹細胞(hESC)株(米国連邦研究資金につき承認されたもの)は、マウス胎児の繊維芽細胞(MEF)に由来し及び、動物ベースの成分を含む培養培地の存在下で繁殖されてきた。この培養培地における動物起源のフィーダー層及び動物成分の利用は、潜在的に、ウイルスその他の病原体のこれらの胚性幹(ES)細胞への交差トランスファーの危険をかなり高めうる。それ故、一層安全な current good manufacturing practice (CGMP) 及び good tissue culture practice (GTCP)に従順なhESC株及び分化したhESC前駆細胞は、臨床適用に一層適している。
hESC培養条件の改良の幾つかの試みが報告されている。これらの進歩は、条件付き培地の、hESC培養のための付着基材としてのMATRIGEL(商標)と一緒の利用、及びhESC株のヒトフィーダー層上での誘導及び繁殖を含む。これらの改良は、xeno−freeの臨床的に従順なhESC株の樹立のためのCGMP従順なプロトコールの開発に向けて重要なステップである。xeno−freeのCGMP従順なhES株は又、長期の液体窒素(LN2)貯蔵において有効で且つ細胞株の夾雑の可能性を最小化又は制限する低温保存プロトコールの開発をも必要とする。少なくとも2つの凍結プロトコールが、現在、hESCについて用いられている。これらは、(a)クリオバイアル(CV)を用いる慣用の遅い段階的なプログラムされた凍結方法及びLN2中での貯蔵及び(b)オープンプルドストロー(OPS)及びLN2中での貯蔵を利用するsnap凍結保存法を含む。他の有効で、安全且つ無菌の低温貯蔵プロトコールは、Richards等(Stem Cells 22: 779-789, 2004)に記載されている。これらのプロトコールは、本発明に有用なCGMP及びGTCP従順なxeno−free hESC株の生成及び長期貯蔵のために利用することができる。
(iii)典型的方法
様々な種の何れかから胚性幹細胞の未分化培養物を単離して維持する方法は、当分野で周知である。典型的な種には、マウス、非ヒト霊長類、及びヒトが含まれるが、これらに限られない。その上、様々な環境下で、胚性幹細胞の、幾つかの部分的に又は最終分化した細胞型への分化が観察されてきている。例えば、胚様体を形成するように凝集した胚性幹細胞は、鼓動する組織の小さい領域又は中心を含む胚様体を生成することができる。この鼓動する組織は、胚様体内の細胞の少しのパーセンテージが心筋細胞を形成するように分化したことを示している。
しかしながら、この挑戦は、胚性幹細胞がランダムに特定の細胞系統に沿って分化するのを辛抱強く待つものではない。この挑戦は、胚性幹細胞を分化させて、培養を横切る細胞型の異なる「混合バッグ」を作る方法を工夫するものでもない。現時点において、この挑戦は、胚性幹細胞の、特定の細胞型への分化又は特定の発生学的細胞系統に沿った分化を指示する効率的な方法を開発することである。かかる方法は、我々の幹細胞生物学の理解を増大させ、分化した細胞型の実質的に精製された培養物を生成し、そして分化した細胞ベースの治療剤を開発するのに必須である。
本発明は、従来技術における限界に取り組み、胚性肝細胞の内胚葉性細胞型への分化を指示するための方法論を提供するものである。特に、本発明の方法は、胚性幹細胞に、様々な部分的に及び/又は最終分化した細胞又は細胞クラスターを生成するように分化することを指示するために利用することができる。例えば、本発明の方法(例えば、開始プロトコール、成熟プロトコール、及びそれらの組合せ)は、胚性幹細胞の部分的に及び最終分化した膵臓細胞型への分化を指示するために利用することができる。
本発明の開始及び/又は成熟プロトコールにより誘導される部分的に及び最終分化した細胞型(例えば、膵臓細胞型)は、更に、拡大及び/又は精製して、一種以上の部分的に及び/又は最終分化した内胚葉性細胞型の本質的に精製された培養物を生成することができる。非制限的実施例として、本発明の方法を利用して、胚性幹細胞から、(i)最終分化した膵臓細胞型(例えば、単一の最終分化した膵臓細胞型又は多数の最終分化した膵臓細胞型)の本質的に精製された集団;(ii)部分的に分化した膵臓細胞型(例えば、単一の部分的に分化した膵臓細胞型又は多数の部分的に分化した膵臓細胞型)の本質的に精製された集団;又は(iii)一種以上の部分的に及び/又は最終分化した膵臓細胞型の本質的に精製された集団を生成することができる。
胚性幹細胞(例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類など)の培養物は、胚様体の形成のステップを含む方法を用いて又は直接的に(例えば、胚様体の形成を含むステップなしで)分化させることができる。本発明の一具体例において、この分化の方法の初期のステップは、胚様体を形成するための胚性幹細胞の凝集を含む。
胚様体形成による分化
胚性幹(ES)細胞は、それらの細胞をフィーダー層から取り出して懸濁液中で凝集させて胚様体(EB)を形成させることによって分化させることができる。EBは、分離させたES細胞を、低付着性プレート上にバルクでプレートするか又は懸滴法によって作成することができる。ES細胞は、トリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、EDTA又は機械的破壊を含む幾つかの方法によって、単一細胞に完全に分離し又は小さい塊に部分的に分離することができる。この分離方法は、当業者が、容易に選択することができ、細胞が由来する種並びに細胞の全体的健康状態に依って変えることができる。例えばヒトのES細胞は、単一細胞レベルまでの分離後には同様には生存しない。従って、本発明の方法は、ヒトのES細胞を用いて実施する場合には、分離技術を、ES細胞をEB形成前に単一細胞レベルにまで分離せずにフィーダー層から取り出すように選択することができる。EBの形成後に、それらのEBを、懸濁液中で(例えば、細胞の浮遊凝集物として、フィルター上で、又はゲル様マトリクスに包埋して)、ある期間、好ましくは3日〜3週間にわたって培養することができる。ある具体例において、EBは、懸濁液中で、3日未満、例えば6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、又は48時間にわたって培養することができる。ある別の具体例においては、これらのEBを、3週間より長期間にわたって培養することができる。
ES細胞を凝集させてEBを形成する一般的方法は当分野で公知であるが、ある種からのES細胞は、EB形成前に達成された分離のレベルに一層敏感であるようである。従って、ある種のES細胞を、EB形成前に不完全に分離する(例えば、単一細胞にまでは分離しない)上で概説したアプローチに加えて、本発明は、ES細胞を、アポトーシスをブロックし或は細胞生存を促進する薬剤の存在下で分離するEBを形成する方法を企図する。典型的な薬剤には、カスパーゼインヒビターが含まれるが、これらに限られない。
EB形成後に、EBを、基礎培地BME、CMRL1066、MEM、DMEM、DMEM/F12、RPMI、グラスゴーMEM(アルファ改変あり又はなし)、IMDM、Leibovitz L−15、McCoys5A、培地199、Ham F−10、Ham F−12、F−12K、NCTC−109培地、Waymouth培地、William培地E、又は上記の何れかの組合せを含む(但し、これらに限られない)様々な培地中で培養することができる。当業者は、コスト、種、利用可能性などに基づいて、これらの中から及びEB培養用にデザインされた類似の培地の中から容易に選択することができる。前述の培地の何れも、変化する濃度のグルコース(1〜50mM)、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、ヌクレオシド、N−2サプリメント、G−5サプリメント及びB27サプリメントを補足することができる。この培地は、フェノールレッドを含んでも含まなくてもよい。その上、この培地は、適当量の緩衝用塩を用いて緩衝することができる。典型的な緩衝用塩には、トリス、HEPES、酢酸ナトリウムが含まれるが、それらに限られない。我々は、EB培地のpHが5〜9で変化しうることに注意する。
EB培地の前述の基本成分に加えて、ある具体例では、この培養培地に、種々の量の動物血清を補足することができる。当分野で一般に用いられる典型的な動物血清には、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清(BS)、ウマ血清(HS)、ニワトリ血清(CS)、ヤギ血清(GS)が含まれるが、これらに限られない。この血清は、熱活性化されていてもいなくてもよい。或は、この培地は、化学的に限定された血清代用物を補足することができる(例えば、ノックアウトシーラムリプレースメントを補ったノックアウトDMEM)。一具体例において、この培地中の動物血清又は血清代用物の濃度は、0〜20%の範囲で選択される。他の具体例において、この培地中の血清又は血清代用物の濃度は、20%より高く、例えば、20〜40%である。
ある具体例において、EBは、血清又は血清代用物だけを補った基礎培地で培養できるが、EBは、更に別の細胞株により条件付けられた培地を含む培地で培養することもできる。或は、別の具体例において、EBは、血清又は血清代用物を欠くが、他の細胞株により条件付けられた培地を含む基礎培地中で培養することができる。条件付けられた培地を得ることのできる典型的な細胞株には、マウス胎児繊維芽細胞(MEF);マウス又はヒトのインスリノーマ(例えば、RIN−5、β−TC、NIT−1、INS−1、INS−2);ヘパトーマ(例えば、HepG2、Huh−7、HepG3);HT−1080;内皮細胞(例えば、HUVEC);骨髄間質細胞;内臓内胚葉様細胞例えばend−2;又は間充織細胞例えばHEPM若しくは7F2が含まれるが、これらに限られない。或は、条件付けられた培地は、培養した胚性組織、胎児組織又は成体組織(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス又は他の動物由来)、又は特定の組織型(例えば、膵臓、肝臓、骨髄、肺、皮膚、血液など)から樹立された初代細胞から及び動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス又は他の動物)から得ることができる。
胚組織には、内胚葉、中胚葉、外胚葉、及び/又は胚体外組織例えば栄養外胚葉及び内臓内胚葉が含まれる。胚組織由来の条件付き培地を用いるある具体例において、胚組織は、その組織の、発声中の胚の膵臓に教示シグナルを送る能力に基いて選択される。かかる教示的組織は、脊索及び背側大動脈を含む。典型的な一次細胞株には、内皮細胞、大動脈平滑筋細胞、間充織細胞、膵臓の内分泌又は外分泌細胞、肝細胞、腸管上皮細胞、及び腺管細胞が含まれる。培地は又、マウスの胚性幹細胞由来する何れかの細胞からの条件付きであってもよい。EBが条件付き培地の存在下で培養された前述の具体例の何れかにおいて、その条件付き培地は、EBと同じ種の又は異なる種からの、細胞株、組織などに由来するものであってよい。
前述の培地は、細胞の、特定の分化した内胚葉性細胞型への分化を指示する出発点を構成する。前述の培地の何れかを、今や、適当な分化因子で更に補足して、EB中の細胞に特定の内胚葉性細胞系統例えば膵臓細胞系統、肝臓細胞系統、肺細胞系統などに沿って分化するように指示することができる。例として、EBを、特定の分化因子を補った培地で培養して、EB中の細胞にインスリン産生細胞を含む膵臓細胞型への分化を指示することができる。かかる因子には、アクチビンA、アクチビンB、BMP2、BMP4、ノーダル、TGFβ、ソニックヘッジホッグ、デザートヘッジホッグ、EGF、HGF、FGF2、FGF4、FGF8、FGF18、PDGF、Wntタンパク質、レチノイン酸、酪酸ナトリウム、NGF,HGF、GDF、成長ホルモン、PYY、カージオトロピン、GLP−1、エキセンジン−4、ベータセルリン、ニコチンアミド、トリヨードチロキシン、インスリン、IGF−1、IGF−II、胎盤ラクトゲン、VEGF、ワートマニン、ガストリン、コレシストキニン、スフィンゴシン−1−ホスフェート、FGF−10、FGFインヒビター、成長ホルモン、KGF、島新生関連タンパク質(INGAP)、Reg、及びcAMPレベルを増大させる因子例えばフォルスコリン及びIBMXが含まれるが、これらに限られない。これらの因子の殆どは、精製されたストックからの培地に加えることができ、又はもしそれらがタンパク質因子であれば、これらの因子を組換えにより発現する細胞から得られた条件付き培地の形態で与えることができる。加えて、この発明は、上記のタンパク質因子のあるものについて、小型分子アゴニストが当分野で知られており、該タンパク質の生物活性を真似ることを企図している。かかる小型分子模倣物は、該タンパク質と類似の生物学的結果を生じる幾つかの方法の何れかにおいて機能しうる。従って、この発明は、EBを、前述のタンパク質の何れかの小型分子アゴニスト/模倣物の存在下で培養する方法を企図する。
理論に拘束はされないが、これらの因子のあるものは、細胞の運命に、それらの細胞の表面上のレセプターに結合し、それによりそれらの細胞において機能的な少なくとも一つのシグナル変換経路を改変することによって影響を与えることができる。或は、これらの因子のあるものは、細胞の運命に、細胞膜を通過して細胞内で作用して、それらの細胞において機能的である少なくとも一つのシグナル変換経路を改変することによって影響を与えることができる。
この発明は、細胞の膵臓細胞型への分化の促進を助成するために、これらの因子の少なくとも一つを利用することを企図している。一具体例において、少なくとも一つの因子は、これらの細胞に、同じシグナル変換経路(例えば、デザートヘッジホッグタンパク質と組み合わせたソニックヘッジホッグタンパク質)を改変することによって影響を与える。他の具体例において、少なくとも一つの因子は、これらの細胞に、種々のシグナル変換経路(例えば、少なくとも一種のWntタンパク質と組み合わせた少なくとも一種のヘッジホッグタンパク質)を改変することによって影響を与える。他の具体例において、少なくとも一種の因子は、細胞に、重複しうるかしえない機構によって影響を与える。作用の正確な機構にかかわらず、この発明は、上記の分化因子の少なくとも一つをEBの培養物に加えて、それらの膵臓細胞型への分化を促進することを助成することを企図している。一種より多くの分化因子を培養物に加える場合には、この発明は、それらの分化因子を同時に又は付随的に加えることができることを企図している。
前述は、胚性幹細胞の、特定の細胞系統に沿っての分化を指示するために利用することのできる因子及び条件の代表である。更なる特別の例として、ここにまとめた実験は、胚性幹細胞を膵臓細胞系統に沿って偏向させる開始プロトコールの多くの例を提供する。その上、ここにまとめた実験は、開始プロトコールと組み合わせて用いた場合に、偏向された胚性幹細胞の、最終分化した膵臓細胞型への更なる分化(例えば、末端分化した膵臓細胞型を示す少なくとも一つのマーカーを発現する細胞を生成する)の促進を助成する成熟プロトコールの多数の例を提供する。
懸濁培養期間(一具体例において、3日〜3週間)の後に、EBを、粘着性マトリクス上に置き換えることができる。典型的な粘着性マトリクスには、ゼラチン、MATRIGEL(商標)、種々の型のコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、又は前述の何れかの組合せが含まれるが、これらに限られない。EBは、直ちに粘着性マトリクス上に置き換えることもできるし、その前に解離させることもできる。
指示された分化
他の具体例においては、ES細胞を、EB形成を含むステップなしで分化させることができる。例えば、膵臓細胞型への分化を開始するために、ES細胞を、先ずEBの培養物を形成することなく、直接、適当な粘着性マトリクス上にプレートすることができる。これらのES細胞は又、培養物において単層として分化させることもでき又はフィーダー細胞上で分化させることもできる。これらのES細胞は、EBの培養に適した培地の上記の組合せの何れかにプレートすることができ、更に、少なくとも一種の上記の分化因子を補うことができる。典型的な粘着性マトリクスには、ゼラチン、MATRIGEL(商標)、種々の型のコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、又は前述の何れかの組合せが含まれるが、これらに限られない。
ES細胞を直ちに分化させるかEB形成を介して分化させるかにかかわらず、この発明は、ES細胞、分化しつつあるES細胞、又はEBが、酸素及び二酸化炭素の標準的組織培養条件下で、又は酸素圧力を変化させうるインキュベータ中で培養されうることを企図する。
前述の何れかの一具体例において、EBを、液体培地中で懸濁状態で又は2D若しくは3Dゲル若しくはマトリクス中に包埋することにより懸濁状態で培養することができる。典型的なマトリクスには、MATRIGEL(商標)、コラーゲンゲル、ラミニンゲル、並びに人工的3D格子(ポリ乳酸またはポリグリコール酸などの材料から構築)が含まれるが、これらに限られない。EBをマトリクス中で懸濁培養する場合には、分化因子を、周囲液体培地への添加により又は該因子をEBが懸濁されている特定のマトリクスに共有若しくは非共有結合することにより投与することができる。EBは、トランスウェル上で培養することができる。トランスウェル上での培養は、細胞極性の確立を促進することができる。
前述の何れかの一具体例において、ES細胞又はEBの分化を、これらの細胞を、内胚葉の細胞、細胞株又は組織と、又は発生中に内胚葉性分化を誘導することの知られた組織に由来する細胞、細胞株又は組織と共存培養することによって促進することができる。
進行性分化
前述の分化の方法の何れかにおいて、この発明は、単一分化ステップが、特定の部分的又は最終分化した所望の細胞型を生成しないことはありそうなことであり、必ずしもそれらを所望の比又はパーセンテージで生成しないであろうことを企図する。従って、この発明は、ES細胞及びEBを、数ステージで培養して分化させることができることを企図する。各連続するステージにおいて、これらの分化因子及び分化マトリクスは、同じであっても、異なってもよい。
ES細胞及びEBの進行性分化は、関心ある特定の組織の部分的に及び/又は最終分化した細胞のマーカーを調べることにより測定することができる。例えば、ゴールがES細胞の膵臓細胞型への分化である(EBの形成を伴うか又は伴わない)方法において、進行性分化は、部分的に又は最終分化した膵臓細胞のマーカーの発現をアッセイすることによってモニターすることができる(例えば、内胚葉性細胞系統の初期マーカー、膵臓細胞系統の初期マーカー、部分的に分化した内分泌性膵臓細胞のマーカー;部分的に分化した外分泌性膵臓細胞のマーカー;最終分化した内分泌性膵臓細胞のマーカー;最終分化した外分泌性膵臓細胞のマーカー)。
例として、内胚葉に限定された初期分化は、遺伝子(sox17、HNF1α、HNF3α、HNF3β、HNF3γ、ブラキュリT、グースコイド、クラウディンス、AFP、HEX、エオメソダーミン、TCF2、Mixl1、CXCR4、GATA5、及びprox1を含むが、これらに限られない)の発現をアッセイすることによってモニターすることができる。対照的に、非内胚葉性細胞系統への分化は、非内胚葉性遺伝子(例えば、胚体外組織を示す遺伝子)の発現をアッセイすることによりモニターすることができる。培養における特定の時点において非内胚葉性分化のレベルを評価するために用いることのできる代表的遺伝子には、絨毛性ゴナドトロピン、アムニオンレス、HNF4、GATA4又はGATA6が含まれるが、これらに限られない。
限定された内胚葉が形成されるにつれて、膵臓細胞系統への部分的又は最終分化を、pdx−1、ngn3、HB9、HNF6、ptf1−p48、islet1、nkx6.1、nkx2.2、glut2、neuroD、サイトケラチン19、IAPP、pax4、pax6、HES1、アミラーゼ、グルカゴン、ソマトスタチン、インスリン、ホルモンコンバーターゼ、グルコキナーゼ、Sur−1、Kirb6.2及び膵臓ポリペプチドを含む(但し、これらに限られない)膵臓遺伝子(例えば、外分泌性膵臓遺伝子及び内分泌性膵臓遺伝子)の発現によってモニターすることができる。
前述の何れかにおいて、遺伝子発現を、生きた細胞において経時的に測定して、所与の培養における分化のスナップショットを与えることができる。或は、所与の時点での所与の培養からの細胞の試料を採って処理することができる。かかる細胞は、特定の培養における特定の時点での分化の代表を与えるであろう。
遺伝子発現は、細胞生物学及び分子生物学の分野で周知の様々な技術によって測定することができる。これらの技術には、RT−PCR、ノーザンブロット分析、イン・シトゥーハイブリダイゼーション、マイクロアレイ分析、SAGE又はMPSSが含まれる。タンパク質発現は、同様にして、周知技術例えばウエスタンブロット分析、免疫組織化学染色、ELISA又はRIAを利用して分析することができる。
限定された内胚葉への分化は、ノーダル、wnt、及びFGFシグナリングを含む(但し、これらに限られない)ある経路を活性化することによって達成することができる。ノーダルは、アクチビン及びBMPを含むリガンドのTGF−ベータサブファミリーに属する。これらのTGFβ関連リガンドの添加は、hES細胞を限定された内胚葉に向けて駆動することができる。Wntシグナリングは、Wntリガンドの何れかの添加によって活性化することができる。wntシグナリングの一つの主要な結果は、β−カテニンの安定化である。β−カテニンの安定化は又、GSK3インヒビター(6−ブロモインディルビンの誘導体を含むが、これらに限られない)の添加によっても達成することができる。FGFシグナリングの阻害は又、ES細胞を内胚葉経路に向けるのを助成することができる。FGFシグナリングの阻害は、幾つかのFGFレセプターアンタゴニストの一つ例えばSU5402を利用することによって達成することができる。内胚葉性分化の誘導は、細胞内Smad2タンパク質のリン酸化状態を測定することによって評価することができる。
内分泌性の膵臓への分化は、ES細胞においてキーとなる発生遺伝子の発現によって偏向されうる。例えば、適当なプロモーター下でのpdx−1の発現は、ESを膵臓細胞系統へ駆動するために利用することができ、それらの細胞を分化因子に応答するように偏向するのを助成することができる。このプロモーターは、構成的なもの例えばCMV、SV40、EF1α、又はベータ−アクチンであってよい。或は、このプロモーターは、誘導性のもの例えばメタロチオネイン、エクダイソン、又はテトラサイクリンであってもよい。この組換えタンパク質は又、調節エレメント例えばエストロゲンレセプターのリガンド結合ドメイン又はその変異物に対するタグであってもよい。かかる融合タンパク質は、トマキシフィンを含むエストロゲン類似体の添加又は撤去によって調節することができる。組換えDNAは、ES細胞に、エレクトロポレーション、リポフェクション、又はアデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス又は他の多面発現性ウイルスなどのウイルスによるトランスダクションを含む様々な方法を用いて導入することができる。加えて、ある種の遺伝子の阻害は、分化の促進を助成することができ及び/又はESの分化因子に対する応答性の促進を助成することができる。例えば、スムースンド/パッチトレセプター、RBK−JK又はHES1の、hES由来細胞における阻害は、それらのES細胞の膵臓細胞系統への駆動を助成することができる。これらの遺伝子の阻害は、アンチセンスオリゴ、siRNA、内在性アレルの相同組換えによる欠失又はインヒビター若しくは優勢な負の遺伝子の構成的発現によって達成することができる。
分化した細胞型の更なる精製
ある具体例において、特定の組織の少なくとも一の部分的に又は最終分化した細胞型の本質的に精製された集団を、ES細胞から直接又はEBから生成することができる。しかしながら、分化した細胞のある種の適用には、更に特定の分化した細胞を拡大し又は選択することは、必要であるか又は好適でありうる。例えば、かかる選択は、細胞の調製物を更に精製するために利用することができ、又は例えば多数の部分的に及び/又は最終分化した細胞型を含む調製物を採るために及び一層少ない若しくは単一の部分的に及び/若しくは最終分化した細胞型を含む調製物を調製するために利用することができる。
ES細胞から分化した細胞は、拡大され、選択されることを必要としうる。一つの非制限的アプローチは、薬物耐性マーカー例えばneoRを、ES細胞中で特定の組織特異的プロモーター(例えば、インスリンプロモーター又はpdx−1プロモーター)の制御下で発現することである。これらの細胞が分化プロトコールを受けるにつれて、G418のような選択用薬物を加えて、マーカー遺伝子を発現する細胞について選択することができる。加えて、所望してない細胞系統に沿って分化している細胞を排除するために、適当な遺伝子例えばジフテリア毒素を特定のプロモーターにタグとして付けることができる。
レポーターES株は、分化の進行をモニターするために利用することもできる。例えば、特定のプロモーター(例えば、pdx−1プロモーター又はインスリンプロモーター)の下流にGFPを含む構築物をES細胞に導入することができる。このレポーターを発現する細胞は、容易に検出することができる。用いることのできる他のレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、lacZ又はCATが含まれる。有用なレポーター株は、特定の細胞系統に沿って分化した細胞の同定を助成するために多数のレポーターを含むことができる。これらのレポーターを発現する細胞は、FACS、抗体親和性捕捉、磁気分離、又はこれらの組合せによって、容易に精製することができる。これらの精製されたレポーターを発現する細胞は、マイクロアレイハイブリダイゼーション、SAGE、MPSSなどの技術によるゲノム分析、又は精製した集団を特性決定する更なるマーカーを同定するためのプロテオーム分析に利用することができる。これらの方法は、所望の細胞系統に沿って分化してない細胞並びに所望の細胞系統に沿って分化した細胞の集団を同定することができる。余りに多い所望の細胞系統に沿って分化してない細胞を含む培養においては、所望の細胞を単離してサブ培養して、所望の組織の少なくとも一つの部分的に又は最終分化した細胞型の本質的に精製された集団を生成することができる。
レポーター株を、高スループットスクリーニングアッセイにおいて利用して、小型分子、成長因子、マトリクス、又は特定の細胞系統に沿った分化に好意的な種々の成長条件について迅速にスクリーニングすることができる。スクリーニング用プラットフォームは、24、48、96ウェルであってよく又は384ウェルであってさえよい。検出方法は、発現されるレポーター遺伝子の型に依存する。例えば、ルミネセンスプレートリーダーは、ルシフェラーゼレポーターを検出することができ、蛍光プレートリーダーは、GFPを検出することができ、lacZレポーターさえ検出することができる。加えて、高含量スクリーニングを実施することができ、該スクリーニングでは、自動化顕微鏡が各ウェルをスキャンして、レポーター遺伝子を発現する細胞の数、細胞のサイズ、細胞の形状、及び細胞の動きを含む幾つかのパラメーター(これらに限られない)を測定する。
pdx−1陽性細胞又はその前駆細胞は、更に、米国特許第6,610,535号に詳述された方法に基づいて又は特許出願PCT/US03/23852に記載されたようにして、内分泌細胞に分化されうる(これらの各々の開示を、参考として、本明細書中に、そっくりそのまま援用する)。このプロトコールで用いられる分化因子には、FGF18、カージオトロピン、PYY、フォルスコリン、HGF、ヘパリン、インスリン、デキサメタゾン、フォリスタチン、ベータセルリン、成長ホルモン、胎盤ラクトゲン、EGF、KGF、IGF−I、IGF−II、VEGF、エキセンジン−4、レプチン、及びニコチンアミド、並びにノッチアンタゴニストが含まれるが、これらに限られない。
ES細胞は又、それらをSCID動物に注射することによって、イン・ビボで分化させることもできる。hES細胞がSCIDマウスに注射された場合には、3つすべての生殖層からの組織を含むテラトーマを形成しうるということは周知である。異なる組織又は器官への注射は、それらを、特定の細胞系統へと駆動することができる。このSCIDマウスは又、再生する膵臓を有することもでき、その場合、該マウスは、部分的膵臓切除術を受け又はストレプトゾトシンによる治療を受ける。或は、hES細胞は、胚又は胎児動物の種々の部分に、発生の様々なステージにおいて植え付けることができる。
一具体例において、ES細胞は、分化して、本質的に純粋な膵臓細胞調製物を生じる。かかる本質的に純粋な膵臓細胞調製物は、少なくとも一つの部分的に及び/又は最終分化した膵臓細胞型を含んでいる。ある具体例において、この少なくとも一つの部分的に及び/又は最終分化した膵臓細胞型には、インスリン産生細胞が含まれる。ES由来のインスリン産生細胞は、好ましくは、次の特徴を有する:(i)インスリンを発現する(RT−PCR、ノーザンブロット、又はイン・シトゥーハイブリダイゼーションにより検出);(ii)インスリン及びC−ペプチドを発現する(ウエスタンブロット又は免疫組織化学染色により検出);(iii)インスリン及びC−ペプチドを分泌する(ELISA又はRIAにより検出可能);(iv)グルコース応答性のインスリン分泌を示す;(v)糖尿病の動物(例えば、STZ処理したNOD/SCIDマウス)を、その動物の適当な部位に移植された場合に救済する。
ES細胞をインスリン産生細胞を含む調製物に分化させる過程において、種々のステージの前駆細胞を富化させて更にこれらの前駆細胞を分化させることは望ましいことでありうる。これらの前駆細胞は、上で詳述したように、少なくとも一つの発生遺伝子を発現している細胞を選択することによって精製することができる。選択に利用されるマーカーは、好ましくは、この細胞表面上で発現され、それで、それらは、抗体親和性捕捉及びフローサイトメトリー又は磁気細胞分離による分類に従順である。これらのマーカーには、dynein、ギャップジャンクション膜チャンネルタンパク質、一体膜タンパク質2A、CXCR4、Sur−1、Glut−2、Kir6.2、微小線維結合性タンパク質2、プロコラーゲン、タキキニン2、Thy−1.2、テナシンC、バニン1、インワードレクチファイヤーK+チャンネルJ8、アダプタータンパク質複合体AP−1、微小管結合タンパク質1B、アネキシンA1、CD36、CD84、クラステリン、カテニンデルタ2、エンドムチン、グラニュリン、ケラチンHb5、インテグリンα7、リソソーム膜糖タンパク質2、KSPG、ガレクチン−6、リポコルチンI、マンノース結合性レクチン、リンパ球抗原64、シナプトタグミン4、トロンボスポンジン、トロンボモジュリン、ビシニン様1、Fabp1、Fabp2、Slc25a5、Slc2a2、Slc7a8、Ep−cam、N−カドヘリン、E−カドヘリン、CK19、及びCD31が含まれる。
(iv)典型的な組成物
本発明の方法を用いて、ES細胞を、内胚葉細胞系統に由来する組織の少なくとも一つの細胞型に分化(部分的に又は最終分化)させることができる。例として、本発明の方法を利用して、ES細胞を分化させて、本質的に純粋な少なくとも一つの部分的に及び/又は最終分化した膵臓又は肝臓の細胞の調製物を生成することができる。かかる本質的に純粋な、少なくとも一つの部分的に及び/又は最終分化した細胞の調製物を、製薬上許容しうるキャリアーに配合して、特定の内胚葉に由来する器官の機能の低下を特徴とする病気を患っている患者に投与することができる。
一具体例において、ES細胞は、分化して、本質的に純粋な膵臓細胞調製物を生成する。かかる本質的に純粋な膵臓細胞調製物は、少なくとも一の部分的に及び/又は最終分化した膵臓細胞型を含む。ある具体例においては、この少なくとも一の部分的に及び/又は最終分化した膵臓細胞型には、インスリン産生細胞が含まれる。ES由来のインスリン産生細胞は、好ましくは、次の特徴を有する:(i)インスリンmRNAを発現する(RT−PCR、ノーザンブロット、又はイン・シトゥーハイブリダイゼーションにより検出);(ii)インスリン及びC−ペプチドを発現する(ウエスタンブロット又は免疫組織化学染色により検出);(iii)インすイン及びC−ペプチドを分泌する(ELISA又はRIAにより検出);(iv)グルコース応答性のインスリン分泌を示す;(v)糖尿病の動物(例えば、STZ−処理したNOD/SCIDマウス)を、その動物の適当な部位に移植した場合に救済する。
(v)他の幹細胞集団への適用
本発明は、胚性幹細胞の、内胚葉性細胞型への分化を指示する方法を提供する。しかしながら、これらの本願で提供される方法は、胚性幹細胞の分化を変調することに限られない。胚性幹細胞は、無限の分化潜在能力を有している。しかしながら、この無限の潜在能力は、これらの細胞に特定の細胞系統に沿った、制御された仕方での、及び商業的及び治療的に有用なパーセンテージの細胞培養としての分化を指示することを試みる研究者にやりがいのある仕事を提供してきた。対照的に、多くの成体幹細胞集団は、実際には、指示された分化に一層従順であることが判明している。従って、ここに与えた方法が、胚性幹細胞の内胚葉性細胞型への指示された分化を効果的に促進するとすると、この発明は、これらの方法が、同様に、他の成体幹細胞例えば胎児又は成体動物組織に由来する幹細胞の分化を指示することができることを企図する。典型的な成体幹細胞には、造血幹細胞、神経幹細胞、神経冠幹細胞、間充織幹細胞、心筋幹細胞、膵臓幹細胞、肝臓幹細胞、及び内皮幹細胞が含まれるが、これらに限られない。更なる典型的な成体幹細胞は、舌、皮膚、食道、脳、脊髄、内皮、毛嚢、胃、小腸、大腸、卵巣、精巣、血液、骨、骨髄、臍帯、肺、胆嚢などを含む(但し、これらに限られない)、事実上任意の器官又は組織から誘導することができる。一具体例において、成体幹細胞は、本発明の方法又は当分野で公知の他の方法論を利用して、内胚葉性細胞系統に沿って分化することのできる幹細胞集団である。
(vi)治療方法
本発明は、胚性幹細胞の、特定の分化した細胞型への指示された分化を促進するための様々な方法を提供する。ある具体例においては、この発明は、胚性幹細胞の、膵臓細胞系統に沿った指示された分化を促進する方法を提供する。典型的な方法は、pdx−1+、インスリン、及び/又はC−ペプチドを発現する細胞及び細胞クラスターの生成を生じる。その上、典型的な方法は、C−ペプチドを放出する細胞及び細胞クラスターの生成を生じる。本発明は、更に、胚性幹細胞から分化した、実質的に純粋な細胞及び細胞クラスター(例えば、部分的に又は最終分化した細胞)の培養物を提供する。実質的に純粋なとは、分化した細胞又は細胞クラスターの培養物が、未分化の又は異なる型の細胞に分化した細胞(例えば、非膵臓細胞系統)を20%未満、好ましくは15%、10%、7%、5%、4%、3%、2%、1%未満又は1%未満未満含むことを意味する。
本発明の方法により膵臓細胞系統に沿って分化した実質的に純粋な細胞及び細胞クラスターを、膵臓の傷害、疾病又は他の機能低下と関係する様々な異常の治療のために治療的に利用することができる。この発明の治療方法における利用のための実質的に純粋な細胞培養物には、本質的に均一な細胞培養物(例えば、本質的に、これらの細胞のすべては、特定の、部分的に及び/又は最終分化した細胞型である)又は不均一な細胞培養物が含まれる。不均一な細胞培養物を用いる場合には、本質的に、これらの細胞のすべては、特定の細胞系統に由来し、特定の組織型(例えば、この培養物は、様々な部分的に及び/又は最終分化した膵臓細胞型例えばpdx−1+及びインスリン+細胞型の混合物を含む)に関係する。
説明のために、本発明の方法を利用して、部分的に又は最終分化した膵臓細胞型を生成することができる。かかる膵臓細胞型は、膵臓の異常(内分泌異常及び外分泌異常の両方)並びに膵臓の傷害の治療又は予防において利用することができる。一具体例において、この発明の方法を利用して、糖尿病又は他のグルコース調節障害の疾患の治療に有用な膵臓ベータ様細胞又は細胞クラスターを生成することができる。膵臓ベータ様細胞又は細胞クラスターとは、細胞又は細胞クラスターが、pdx−1、インスリン、及び/又はC−ペプチドを含む膵臓遺伝子(但し、これらに限られない)を発現することを意味する。ある具体例において、膵臓ベータ様細胞又は細胞クラスターは、C−ペプチドを分泌し且つグルコース応答性である。
特定の病状に加えて、本発明の方法を利用して、特定の器官又は組織の傷害の治療のための、部分的に又は最終分化した細胞型を生成することができる。かかる傷害には、にぶい傷、外科的切除術、又は癌若しくは他の増殖性疾患により引き起こされる組織ダメージが含まれるが、これらに限られない。
前述の何れかにおいて、この発明は又、内胚葉に由来する組織の部分的に及び/又は最終分化した細胞型の調製物が、治療目的以外の他の目的に有用であることをも企図する。かかる細胞は、分化した細胞の増殖、分化、生存又は移動を促進する非細胞性因子を同定するためのスクリーニングにおいて有用でありうる。
本発明は、内胚葉に由来する組織の外傷、病気、又は他の機能低下の治療又は予防処置に利用することのできる部分的に及び/又は最終分化した内胚葉性細胞型を提供する。かかる細胞は、冒された組織に直接投与することができる(例えば、当該組織に又は冒された組織の隣へ直接的に移植又は注射による)。かかる細胞は又、全身投与することもでき(例えば、静脈注射により)、病気又は損傷した部位へ進ませる(例えば、全身投与後に、冒された組織へ進ませる)こともできる。
加えて、この発明は、部分的に及び/又は最終分化した細胞の調製物を単独で投与し、又は他の治療剤と組み合わせて投与することもできることを企図している。例として、これらの細胞は、増殖、分化、移動又は生存の少なくとも一つを促進する少なくとも一種の薬剤と並行して又は付随して投与することができる。理論に拘束されることは望まないが、かかる薬剤は、例えば、移植された細胞がダメージを受けた部位へ進むのを助成することができる。その上、かかる薬剤は、内在性組織及び移植された細胞の両方の生存を促進するのを助成することができる。かかる薬剤を利用して、全面的に又は部分的に、内胚葉性細胞型の機能の喪失、障害又は低下と関係する異常を治療することができる。
下記は、ES細胞から膵臓細胞系統に沿って分化した細胞の調製物を利用して治療することのできる病状の説明である。かかる疾患は、(i)分化した細胞だけの調製物、(ii)少なくとも一種の細胞ベースでない化合物又は薬剤と組み合わせた分化した細胞の調製物、又は(iii)治療する特定の病気又は傷害に適した少なくとも一の治療養生法と組み合わせた分化した細胞だけの調製物を利用して治療することができる。
代表的疾患
膵臓疾患
1.真性糖尿病
真性糖尿病は、米国の1700万人の人々が患っている病気のグループに与えられた名称である。この病気は、インスリンを造り及び/又は利用することができないことと関連している。インスリンは、膵臓でベータ細胞により造られるホルモンである。それは、身体の殆どの細胞へのグルコースの輸送を調節し、グルカゴン(他の膵臓ホルモン)と共に働いて、血中グルコースレベルを狭い範囲内に維持する。身体中の殆どの組織は、エネルギー生成ついて、グルコースに依存している。
糖尿病は、インスリンとグルコースの正常なバランスを破壊する。通常、食後、炭水化物は、グルコース及び他の単糖類に分解される。これは、血中グルコースレベルを引き上げて、膵臓を刺激してインスリンを血流中に放出させる。インスリンは、グルコースを、細胞中に与えて、過剰のグルコースを肝臓ではグリコーゲンとして又は脂肪細胞ではトリグリセリドとして貯蔵するように指示する。もしインスリンが不十分であり又は効果的でないならば、グルコースレベルは、血流中で高いままである。これは、重大なインスリン欠損に依る急性及び慢性の問題の両方を引き起こす。急性には、それは、身体の電解質バランスを転覆させ、グルコースが過剰の排尿と共に身体から流出する際に脱水を引き起こし、そしてもし抑制しなければ、遂には、腎不全、意識の喪失及び死亡に至ることがありうる。経時的に、慢性的に高いグルコースレベルは、身体中の血管、神経、及び臓器にダメージを与えうる。これは、高血圧、心臓血管病、循環器の問題、及び神経障害を含む他の重大な状態へと導きうる。
2.膵臓炎
膵臓炎は、膵臓の急性又は慢性の炎症でありうる。急性の発作は、しばしば、胃上部から背中へ発散する重い腹痛を特徴とし、軽い膵臓膨潤から生命を脅かす臓器不全まで及ぶ影響を引き起こしうる。慢性膵臓炎は、一連の急性発作を含みうる、間欠的な又は一定した痛みを引き起こす(膵臓に永久にダメージを与える場合)進行性の病気である。
通常、膵臓消化酵素は、造られて、十二指腸(小腸の最初の部分)に不活性形態で運ばれる。膵臓炎の発作中、これらの酵素は、十二指腸に到達するのを妨げられ又は阻止され、未だ膵臓にいるのに活性化されて、膵臓を自己消化して破壊すると考えられる。膵臓炎の正確な機構は十分理解されていないが、女性よりも男性において一層頻発し、アルコール中毒症及び胆嚢疾患と関連し、これらにより悪化することが知られている(膵臓の先頭を通って、ちょうど十二指腸と接続するところで膵管と合流する胆管をブロックする胆石)。これらの2つの病気は、急性膵臓炎発作の約80%の原因であり、慢性膵臓炎に顕著に関係する。急性膵臓炎の症例の約10%は、特発性(未知)の原因によるものである。残りの10%の症例は、次の何れかによるものである:薬物例えばバルプロ酸及びエストロゲン;ウイルス感染例えばムンプスウイルス、エプスタイン−バールウイルス及びA又はB型肝炎ウイルス;高トリグリセリド症、高副甲状腺症、又は高カルシウム血症;嚢胞性繊維症又はレイ症候群;膵臓癌;膵臓領域内の外科手術(胆管の外科手術など);又は外傷。
急性膵臓炎
急性膵臓炎の発作の約75%は、軽症である(もっとも、それらは、患者に重症の腹痛、吐き気、嘔吐、衰弱、及び黄疸を引き起こしうるが)。これらの発作は、局所的な炎症、膨潤、及び出血(通常、適当な治療により解決され、殆ど又は全く患者にダメージを与えない)を引き起こす。この時点で約25%が、合併症例えば組織の壊死、感染症、低血圧(低い血液の圧力)、呼吸困難、ショック、及び腎不全又は肝不全を生じる。
慢性膵臓炎
慢性膵臓炎の患者は、急性膵臓炎に似た症状を有する繰り返し起きる発作を有しうる。これらの発作は、病気の進行につれて頻度が増す。経時的に、この膵臓組織は、ますます傷つき、消化酵素を産生する細胞は破壊され、膵臓機能不全(酵素を生成して脂肪及びタンパク質を消化することができない)、体重喪失、栄養失調、腹水症、仮性膵嚢胞(感染を受けうる液体貯留及び破壊された組織)、及び脂肪質の便を生じる。インスリン及びグルカゴンを産生する細胞が破壊されるにつれて、患者は、永久的に糖尿病性となりうる。
3.膵臓不全
膵臓不全は、膵臓が、腸管内の食物を分解して吸収を可能にするのに十分な消化酵素を産生及び/又は輸送することができないことである。それは、典型的には、多くの病気の何れかによって引き起こされる慢性的な膵臓の損傷の結果として生じる。それは、最も頻繁に子供の嚢胞性線維症及び成人の慢性膵炎と関係しており;膵臓癌と関係する頻度は一層低いが、ときには関係している。
膵臓機能不全は、通常、吸収不良、栄養失調、ビタミン欠乏、及び体重喪失(又は子供における体重増加不能)の症状を伴い、しばしば脂肪便(緩い、脂肪性の、腐敗臭のある便)を伴う。成人においては、糖尿病も又、膵臓機能不全に伴って起こりうる。
上記の病気の何れかの治療において、投薬量(例えば、分化した細胞の治療上有効な量を構成するもの)は、様々な因子により、患者によって変化することが予想される。選択した投薬量レベルは、治療すべき特定の病気、特定の細胞ベースの治療と組み合わせて用いる他の薬物、化合物及び/又は物質、患者の病気の重さ、年齢、性別、体重、一般的健康状態及び病歴を含む様々な因子並びに医療分野で周知の同様の因子に依存するであろう。
通常の知識を有する医師又は獣医師は、必要な医薬組成物の有効量を、容易に決定して処方することができる。例えば、医師又は獣医師は、その医薬組成物において用いられるこの発明の細胞の投与量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるものよりも低レベルで開始して、所望の効果が達成されるまで、徐々に投薬量を増大させることができる。
一般に、この発明の細胞の適当な投与量は、治療効果を生じるのに有効な最低投与量である細胞量である。かかる有効投与量は、一般に、患者の年齢、性別、及びその傷害又は病気の重さを含む因子に依存する。
本発明の場合には、その医薬組成物は、本発明の方法により分化した細胞及び少なくとも一種の製薬上許容しうるキャリアー又は賦形剤を含む。上記のように、この医薬組成物は、全身投与、腹腔内投与、直接移植を含む(但し、これらに限られない)幾つかの方法の何れかで投与することができ、更に、中空線維、管状膜、シャント又は他の生体適合性のデバイス又は足場と結合して投与することができる。
用語「治療」は、予防、治療及び回復をも包含することを意図しており、この治療を受ける患者は、それを必要とする任意の動物であり、霊長類(特に、ヒト)、及び他の哺乳動物例えばウマ、ネコ、ブタ及びヒツジ並びに一般に、家禽及び愛玩動物が含まれる。
本発明は、胚性肝細胞の、内胚葉由来の細胞の培養物を生成するための分化を指示する方法を提供する。かかる培養物は、適宜、更に精製して、特定の細胞型を富化させ、それにより、内胚葉由来の細胞型の本質的に純粋な調製物を提供することができる。
部分的に及び/又は最終分化した内胚葉由来の細胞の本質的に純粋な調製物を治療に用いて、特定の臓器又は組織の傷害又は病気を治療し又は予防的に治療することができる。例えば、膵臓細胞の本質的に純粋な調製物を、製薬上許容しうるキャリアー中に配合して、膵臓の機能喪失を特徴とする病気(例えば、糖尿病)を患っている患者に送達することができる。
細胞調製物を患者に送達する場合、この発明は、治療が、更に、他の治療剤を投与することを含むことを企図する。例として、細胞死を阻止し、細胞生存を促進し、又は細胞移動を促進する薬剤を、分化した細胞の調製物と並行して又は付随して投与することができる。その上、この発明は、患者の細胞の、治療される特定の病気の治療に適した他の治療養生法に並行して又は付随しての投与を含む治療方法を企図している(例えば、糖尿病の治療のための、細胞+インスリン)。
治療方法が細胞及び少なくとも一種の更なる薬剤又は治療様式の施与を含む場合には、この発明は、それらの細胞及び薬剤を、同じ投与方法により又は異なる投与方法によって投与することを企図する。非制限的例として、この発明は、ある具体例において、最終分化した及び/又は部分的に分化した膵臓細胞の調製物を外科的に又はラプロスコープにより直接腹腔内に又は内在性膵臓組織に移植することを企図する。少なくとも一種の薬剤も又、特定の治療プロトコールの部分であるならば、かかる薬剤は、同様に送達されうるか、又は他の様式(例えば、静脈注射により、経皮的に、経口で、皮下投与など)で送達されうる。
本発明の医薬組成物/調製物(例えば、細胞の医薬組成物及び非細胞性薬剤/化合物の医薬組成物)は、慣用の医薬配合技術に従って配合される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版、(1990, Mack Publishing Co., ペンシルベニア、Easton)を参照されたい。この発明の医薬組成物は、活性なポリペプチド及び/又は薬剤、又は製薬上許容しうるその塩を含むことができる。これらの組成物は、活性なポリペプチド及び/又は薬剤に加えて、製薬上許容しうる賦形剤、キャリアー、緩衝剤、安定剤又は他の当分野で周知の物質を含むことができる。かかる物質は、非毒性であるべきであり、活性な薬剤の効力を邪魔すべきでない。好適な医薬組成物は、非発熱性である。このキャリアーは、投与の経路(例えば、静脈内、脈管内、口内、鞘内、神経弓突起又は非経口、経皮など)に依って、様々な形態をとることができる。その上、このキャリアーは、医薬組成物を全身投与するか局所投与するかによって、例えば外科的移植、ラプロスコープ移植によるか又は生体適合性デバイス(例えば、カテーテル、ステント、ワイヤ又は他の管腔内デバイス)によるなどの様々な形態をとることができる。
適当なキャリアーの説明のための例は、水、塩溶液、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノール、又は動物、植物若しくは合成起源の油である。このキャリアーは又、他の成分例えば防腐剤、懸濁剤、可溶化剤、緩衝剤などを含むこともできる。
一具体例において、この医薬組成物は、持続的放出のために配合される。典型的な持続的放出用組成物は、固体の生体適合性ポリマーであって、それにこの組成物を結合させ又はカプセル封入した当該ポリマーの半透性マトリクスを有する。適当なポリマーの例には、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド、L−グルタミン酸及びエチル−L−グルタマーゼのコポリマー、分解されえないエチレン−ビニルアセテート、分解可能な乳酸−グリコール酸コポリマー、及びポリ−D+−ヒドロ酪酸が含まれる。
ポリマーマトリクスは、任意の所望の形態例えばフィルム、又はマイクロカプセルで生成することができる。
他の持続的放出用組成物には、リポソームに捕捉されて改変される組成物が含まれる。この目的に適したリポソームは、様々な種類の脂質、リン脂質、及び/又は界面活性剤よりなるものであってよい。これらの成分は、典型的には、生物の膜の脂質の配置に類似した二層構造にて配置される。
この発明による医薬組成物には、インプラント(即ち、身体内の部位に直接送達されて、好ましくはその部位に維持されて局所的送達を与える組成物又はデバイス)が含まれる。
上記のように、ここで企図される様々な送達方法で利用するための生体適合性デバイスは、幾つかの材料の何れかよりなるものであってよい。これらの生体適合性デバイスには、ワイヤ、ステント、カテーテル、バルーンカテーテル、及び他の管腔内デバイスが含まれる。かかるデバイスは、意図する脈管、移植の持続期間、治療すべき特定の病気、及び患者の全体的健康状態に依って、サイズ及び形状が変化しうる。熟練した内科医又は外科医は、特定の適用に基いて、利用可能なデバイスの内から容易に選択することができる。
更なる説明として、典型的な生体適合性の、管腔内デバイスは、現在、Cordis, Boston Scientific, Guidant, 及びMedtronicを含む幾つかの会社により作成されている(現在利用可能なカテーテル、ステント、ワイヤなどの詳細な説明は、Cordis Corporation (cordis.com);Medtronic, Inc. (medtronic.com); 及びBoston Scientific Corporation (bostonscientific.com)のウェブサイトで入手可能である)。
この発明は又、この発明の医薬組成物を含む製品及び関連キットをも提供する。この発明は、この発明の医薬組成物を含む任意の種類の製品を包含するが、その製品は、典型的には、好ましくは内部に含む組成物を同定するラベルを有する容器である。
この容器は、含んでいる組成物と反応しない任意の材料から形成することができ、意図する適用のためのこの組成物の利用を容易にする任意の形状又は他の特徴を有することができる。非経口投与を意図するこの発明の医薬組成物のための容器は、一般に、無菌のアクセスポートを有する(例えば、静脈内投与用溶液のバッグ又はバイアルは、適当なゲージの注射針で刺し抜くことのできるストッパーを有している)。
本発明の治療方法で用いるための細胞ベースの及び/又は細胞ベースでない組成物は、便利に、投与のために、生物学的に許容しうる媒質例えば水、緩衝塩溶液、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)又はこれらの適当な混合物と配合することができる。細胞ベースの及び細胞ベースでない組成物の両方の投与を含む治療方法のために、この発明は、かかる組成物を、同じ又は異なるキャリアーにて配合することができることを企図する。適当な配合物及び媒質は、投与方法に基いて選択することができる。
活性成分の選択した媒質における最適濃度は、医化学者に周知の手順に従って、経験的に決定することができる。ここで用いる場合、「生物学的に許容しうる媒質」には、少なくとも一種の薬剤の所望の投与経路に適当でありうる溶媒、分散媒などが含まれる。製薬上活性な物質のための媒質の利用は、当分野で公知である。慣用の媒質又は薬剤が特定の薬剤又は薬剤の組合せの活性と非適合性でない限り、この発明の医薬組成物におけるその利用は、企図される。適当なビヒクル及び他のタンパク質を含むそれらの配合物は、例えば、書籍「Remington's Pharmaceutical Sciences (Remington's Pharmaceutical Sciences. Mack Publishing Company, 米国、ペンシルベニア、Easton, 1985)」に記載されている。これらのビヒクルには、注射可能な「デポジット配合物」が含まれる。
本発明の組成物は、経口、非経口、又は局所的に与えることができる。それらは、当然、各投与経路に適した形態で与えられる。例えば、それらは、錠剤又はカプセル形態で、又は注射、吸入、軟膏、制御された放出用デバイス若しくはパッチ、又は点滴により投与される。
有効な量又は投薬レベルは、用いる特定の組成物の活性、投与経路、投与時点、用いる特定の組成物の排出速度、治療の持続期間、用いる特定の組成物と組み合わせて用いる他の薬物、組成物及び/又は物質、動物の年齢、性別、体重、病気、一般的健康状態及び病歴を含む様々な因子、及び医療分野出周知の同様の因子に依存する。
これらの組成物(例えば、細胞ベースの組成物単独又は少なくとも一種の細胞ベースでない組成物と組み合わせたもの)は、それだけで投与することができ、又は製薬上許容しうる及び/又は無菌のキャリアーとの混合物として投与することができ、そして他の化合物に付随的に又は並行的に投与することができる。
従って、本発明の他の面は、有効量の細胞ベースの又は細胞ベースでない組成物を含む、少なくとも一種の製薬上許容しうるキャリアー(添加剤)及び/又は希釈剤と一緒に配合された製薬上許容しうる組成物を提供する。下記のように、本発明の医薬組成物は、特に、固体又は液体形態での投与のために配合することができる(次の(1)〜(3)に適合されたものを含む:(1)カテーテル、ポート又は他の生体適合性の、管腔内デバイスによる送達;(2)経口投与、例えば、水薬(水性又は非水性溶液又は懸濁液)、錠剤、丸薬、粉末、顆粒、舌への塗布のためのペースト;(3)例えば無菌の溶液又は懸濁液としての、例えば皮下注射、筋肉注射又は静脈注射による非経口投与)。その上、これらの細胞又は細胞クラスターは、外科的に又はラプロスコープによって膵臓の近く又は腹腔内に、又は離れた一層アクセスし易い部位に移植することができる。ある具体例において、主題の組成物は、簡単に無菌水に溶解させ又は懸濁させることができる。ある具体例においては、この医薬製剤は、非発熱性である(即ち、患者の身体温度を上昇させない)。
用いることのできる製薬上許容しうるキャリアー物質の幾つかの例には、次のものが含まれる:(1)糖類例えばラクトース、グルコース及びシュークロース;(2)澱粉例えばトウモロコシ澱粉及びジャガイモ澱粉;(3)セルロース及びその誘導体例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセテート;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤例えばココアバター及び座薬ワックス;(9)油例えば落花生油、綿実油、紅花油、胡麻油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10)グリコール例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル例えばエチルオレエート及びエチルラウレート;(13)寒天;(14)緩衝剤例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張塩溶液;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)他の医薬配合物で用いられる非毒性の適合性物質。
投与用の組成物は又、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの補助剤を含むこともできる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌性及び抗真菌性の薬剤例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含有させることによって確実にすることができる。等張剤例えば糖類、塩化ナトリウムなどをこれらの組成物に含ませることも又、望ましいことでありうる。加えて、注射可能な医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤例えばアルミニウムモノステアレート及びゼラチンを含有させることによってもたらされうる。
幾つかの場合には、組成物の効果を延長させるために、皮下又は筋肉注射からの薬剤の吸収を遅くすることが望ましい。これは、乏しい水溶性を有する結晶又は非晶質物質の液体懸濁物の利用によって達成されうる。従って、この組成物の吸収速度は、溶解速度に依存し、それは更に結晶サイズ及び結晶型に依存しうる。或は、非経口投与された組成物形態の遅延された吸収は、この薬剤を油ビヒクルに溶解又は懸濁させることによって達成される。
前述の何れかについて、この発明は、新生児、若年者、及び成人患者への投与を企図し、当業者は、ここに記載した投与方法及び投薬量を、患者の年齢、健康状態、サイズ、及び特定の病気の状態に基いて、容易に適合させることができる。その上、この発明は、冒された胎児の病気を治療するための子宮内投与を企図している。
(vii)免疫寛容
外因性の細胞又は組織の送達を含む治療のための介入に伴って起こりうる一つの問題は、拒絶の問題である。例えば、全臓器移植前の抗原ミスマッチを最小にするために為された努力にもかかわらず、移植片の拒絶は、移植された臓器の、並びに移植を受けた患者の長期的効力における重大な制限因子のままである。
幾つかの報告が、胚性幹細胞が、たとえ異種の幹細胞であっても、免疫応答を引き起こすことはないことを示唆しているが、これは、実地において真であるかどうかは不明である。その上、たとえ胚性幹細胞自身が免疫応答を引き起こさないとしても、イン・ビトロで分化したES細胞の子孫は、免疫応答を引き起こしうる。従って、この発明は、免疫抑制剤及び/又は他の抗拒絶用薬物に並行的に又は付随的に医薬製剤を投与することを含む治療方法を企図する。上で詳述したように、これらの治療方法が細胞ベースの及び細胞ベースでない組成物の両方の投与を含む場合には、この発明は、同じ又は異なる投与様式による投与を企図し、同様に、これらの組成物が、各々、それらの特性及び所望の投与経路に照らして適当に配合されることを企図する。
伝統的な抗拒絶用薬物による免疫抑制に加えて、この発明は、分化した細胞の宿主による拒絶を防止する更なる方法を企図する。かかる方法は、患者における寛容の誘導に基くものであり、単独で又は他の免疫抑制剤若しくは抗拒絶用薬物と組み合わせて利用することができる。
一具体例において、寛容は、先ず患者に、内胚葉性細胞を分化させるのに利用される同じES細胞系統から分化した樹状細胞を導入することにより誘導される。ES細胞は、先ず、IL−1、IL−3、IL−6、GM−CSF、G−CSF、SCF、又はエリスロポエチンを含む(但し、これらに限られない)一種以上の因子の添加により造血細胞系統に駆動することにより樹状細胞に分化することができる。或は、これらのES細胞を、OP−9間質細胞又は卵黄嚢内胚葉性細胞などの細胞系統と共存培養することができる。
ES細胞の樹状細胞への分化後に、本質的に純粋な、樹状細胞の集団を調製することができ、患者に送達することができる。かかる樹状細胞は、治療用細胞(例えば、膵臓細胞又は肝細胞)の投与の前に、患者に送達される。樹状細胞は、適宜、伝統的な免疫抑制療法にのっとって送達される。これらの治療用細胞を遅れて送達する場合は、それらを、適宜、免疫抑制剤の投与量と同じか又は一層低い投与量で送達することができる。
本発明の方法を用いて、胚性でない幹細胞の分化を指示する場合には、この発明は、これらの部分的に又は最終分化した成体幹細胞を、胚性幹細胞について記載したすべての方法で、治療に利用することができることを企図する。成体幹細胞を利用する場合には、潜在的移植片拒絶を、治療すべき患者に由来する細胞を利用することによって排除することができる。或は、上記の企図した免疫抑制性及び寛容アプローチも又、企図される。
典型的具体例
この発明は、今や、一般的に説明されており、下記の実施例を参照することにより、一層容易に理解されよう(該実施例は、単に、本発明のある面及び具体例を説明することを目的とするものであって、この発明を制限することを意図するものではない)。
実施例1:ヒトの胚性幹細胞は、自発的に分化して外胚葉、中胚葉及び内胚葉性の細胞型になる
図1は、ヒトの胚性幹(ES)細胞が、胚様体(EB)として培養された場合に、3つのすべての細胞系統に沿って分化することを示した以前の実験を確認する。ヒトの胚性幹細胞株1又は2(hES1及びhES2)を用いて、胚様体を生成した。簡単にいえば、ES細胞を、MEFフィーダー層から、手作業による切り出し(M)によるか又はコラゲナーゼ消化(C)によって取り出した。これらの取り出したES細胞を、次いで、適当な培地中に置いた。EB形成後、0、5、又は9日目に、RNAを、EBから抽出して、示したマーカーの発現につきリアルタイムRT−PCRにより分析した。示した相対的発現を、β−アクチンのそれに対して規格化して、0日目の発現を1に等しく設定した。アスタリスク(*)は、0日目の発現がないことによる自由裁量の値を示している。データは、2つのhES株(hES1及びhES2)について示されており、hES2は括弧内に示してある。sox17、nkx6.1及びブラキュリの発現における有意の変化は、なかった。
実施例2:胚様体生成のための方法
幹細胞の分化を指示するための一つの方法は、胚様体を生成することである。これらの胚様体は、浮遊懸濁培養、MATRIGEL(商標)若しくは他のマトリクス中、又はフィルター上を含む(但し、これらに限られない)幾つかの条件下で成長させることができる。しかしながら、最初のステップは、胚性幹細胞の培養物からの胚様体の実際の形成である。我々は、胚性幹細胞の培養物からの胚様体の生成のために、次の方法の何れかを用いた。これらの方法を用いて、胚様体を、MEFフィーダー層上で成長させたヒトの胚性幹細胞、他のフィーダー層上で成長させた胚性幹細胞、及びフィーダーなしの条件下で成長させた胚性幹細胞から生成することができる。
材料:ヒト胚性幹細胞(例えば、hES1〜6株又はDM株);培養培地;PBS;コラゲナーゼIVストック溶液(5mg/ml)−好ましくはhES1〜6と共に使用;トリプシン/EDTAストック溶液(0.25%)−好ましくはDM株と共に使用;ウルトラロー6ウェル(ultra-low-6-well)プレート。
(a)コラゲナーゼEBプロトコール
下記のプロトコールを利用して、胚様体を生成することができる。このプロトコールは、細胞株hES1〜6から胚様体を生成するために、特異的に利用された。しかしながら、このプロトコールは、一層一般的に、他のES細胞又は細胞株において用いることができる。
標準的条件下で成長させたhES細胞を含むP100組織培養プレートを、出発材料として利用した。この培地を吸引して、それらの細胞を、PBSで2回洗った。洗浄後に、3mlの1mg/mlコラゲナーゼIVを各プレートに加えて、それらのプレートを8分間、37℃の組織培養インキュベーター中でインキュベートした。インキュベーション後に、コラゲナーゼをこれらの細胞から吸引して、それらの細胞を、10mlのPBSで洗った。そのPBSを、穏やかに吸引して、胚性幹細胞のコロニーを撹乱しないように注意した。
約8mlのEB培養培地をこのプレートに穏やかに加えて、そのプレートに、機械的に且つ穏やかに5mlプラスチックピペット又は細胞スクレーパーを用いて線条接種した。これらの材料を、ピペットで吸い上げたり下ろしたりして細胞片を移動させた(ピペット操作を過剰にして細胞にダメージを与えないように注意した)。この胚性幹細胞培養物を、ウルトラロー6ウェルプレートに移して、胚様体形成を促進した。胚様体を、数日間にわたって培養して、EB培養培地を2〜3日ごとに交換した。
EB中の遺伝子又はタンパク質の発現の分析のために実験が必要な場合には、これらのEBを次のように処理した:EBを管内に集めて、管底に沈降させるか又は暫時回転させてEBの管底への沈殿を促進した。この時点で、EBを免疫組織化学研究のため又はRNA抽出のために、標準的技術を利用して処理することができる。
(b)手作業で継代させたhES1〜6のコラゲナーゼEBプロトコール
下記のプロトコールを用いて、胚様体を生成することができる。このプロトコールは、特異的に、細胞株hES1〜6から胚様体を生成するために利用された。しかしながら、このプロトコールは、一層一般的に、他のES細胞又は細胞株において利用することができる。
MEFフィーダー層上で標準的条件下で成長させたhES細胞を含む器官培養皿を出発材料として用いた。その培地を吸引して、それらの細胞をPBSで2回洗った。その後、0.5mlの1mg/mlコラゲナーゼIVを各皿に加えて、それらのプレートを、5分間、37℃の組織培養インキュベーター中でインキュベートした。インキュベーション後に、このコラゲナーゼをこれらの細胞から吸引し、それらの細胞を1mlのPBSで洗った。このPBSを、穏やかに吸引して、胚性幹細胞のコロニーを撹乱しないように注意した。
約1mlのEB培養培地を穏やかにこのプレートに加えた。ES細胞コロニーを、ピペットチップを用いて穏やかに解離させた。注意を払って、MEFがこの皿から剥離するのを回避した。ES細胞片を、EB培養培地を含む懸濁プレートに移して、胚様体形成を促進した。胚様体を、数日間培養して、EB培養培地を2〜3日ごとに交換した。
EBにおける遺伝子又はタンパク質の発現の分析のために実験が必要な場合には、EBを次のように処理した:EBを管内に集めて、管底に沈降させ又は暫時回転させてEBの沈殿を促進した。この時点において、EBを、免疫組織化学研究のため又はRNA抽出のために、標準的技術を利用して処理することができる。
(c)トリプシン継代したHarvard HUES−1細胞のためのコラゲナーゼEBプロトコール
次のプロトコールを利用して、胚様体を生成することができる。このプロトコールは、特異的に、胚様体をHarvard 細胞株HUES−1から生成するために用いられた。しかしながら、このプロトコールは、一層一般的に、他のES細胞又は細胞株において利用することができる。
MEFフィーダー層上で標準的条件下で成長させたhES細胞を含むP100組織培養皿を、出発材料として用いた。このプロセスは、ES細胞がフィーダー層から減少するステージから開始する。これらの細胞を0.05%トリプシンを用いてトリプシン処理して、IV型コラーゲンをコートしたプレート上に、分割比1:3でプレートした。これらの細胞を、準集密になるまで3〜4にわたって培養した。
この減少期後に、この培地を吸引して、これらの細胞をPBSで2回洗った。約3mlの1mg/mlコラゲナーゼIVを、各皿に加えて、それらのプレートを、4分間、37℃の組織培養インキュベーター中でインキュベートした。インキュベーション後に、このコラゲナーゼを、これらの細胞から吸引して、これらの細胞を10mlのPBSで洗った。このPBSを、穏やかに吸引し、注意して、胚性幹細胞のコロニーの撹乱を回避した。
約8mlのEB培養培地を穏やかにこのプレートに加えて、そのプレートを、5mlプラスチックピペット及び細胞スクレーパーを用いて機械的に掻き採る。これらの材料を、ピペットにより吸い上げたり下ろしたりして細胞片を移動させた(注意を払って、過剰のピペット操作により細胞にダメージを与えないようにした)。これらの胚性幹細胞クラスターを、懸濁プレートに移して、胚様体形成を促進した。胚様体を数日間培養して、EB培養培地を、2〜3日ごとに交換した。
EB中での遺伝子又はタンパク質の発現の分析のために実験が必要な場合には、EBを次のように処理した:EBを管内に集めて、管底に沈降させるか又は暫時回転させてEBの管底への沈殿を促進した。この時点において、EBを、免疫組織化学研究のため又はRNA抽出のために、標準的技術を利用して処理することができる。
実施例3:幹細胞の特定の分化した細胞型への分化を指示する方法
下記は、幹細胞の特定の分化した細胞への分化を指示するために用いることができるプロトコールの表示である。ここに概説した特定のプロトコールは、胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った分化を促進した(マーカーpdx−1の発現によりアッセイ)。
材料:ヒトの胚性幹細胞;培地(RPMI/20%血清置換(20SR)/pen−strep;PBS;コラゲナーゼIV(好ましくは、hES1〜6株を用いる利用);トリプシン/EDTA(好ましくは、DM株);ウルトラローアタッチメント−6ウェルプレート(Corning/costar)成長因子低下MATRIGEL(商標);初期因子(EF);後期因子(LF)。
Figure 2008528038
上記の時間表中のD0は、胚様体としての細胞培養を開始する時点を示している。或は、細胞が胚様体形成なしで分化する実施例については、D0は、胚性幹細胞を直接MATRIGEL(商標)又は他の組織培養プレート上にプレートする時点を示している。D0の前に、ES細胞を増殖させる培養を、上で概説したプロトコールの一つに従って処理して、EBの出発培養物を生成しなければならない。
代表的な実験手順
第1部: hES1〜6のコラゲナーゼ処理
標準的条件下で成長させたhES細胞を含むP100組織培養プレートを出発材料として用いた。その培地を吸引して、それらの細胞を、PBSで2回洗った。約3mlの1mg/mlコラゲナーゼIVを各プレートに加えて、それらのプレートを、8分間、37℃の組織培養インキュベーター中でインキュベートした。インキュベーション後に、このコラゲナーゼをこれらの細胞から吸引して、それらの細胞を10mlのPBSで洗った。このPBSを穏やかに吸引し、注意して胚性幹細胞のコロニーを撹乱することのないようにした。
約8mlのEB培養培地(RPMI/20SR)を、穏やかにこのプレートに加えて、そのプレートを5mlプラスチックピペット及び細胞スクレーパーを用いて機械的に掻き採った。これらの材料をピペットで吸い上げたり下ろしたりして細胞片を移動させた(過剰のピペット操作によりこれらの細胞にダメージを与えないように注意した)。これらのペレットを15mlの管に移して、2500rpmで4分間回転させて沈降させた。その培地を吸引した。
第2部: MATRIGEL(商標)EBの作成
初期因子ステージ
0日目
1:6MATRIGEL(商標)培地(例えば、1mlの液化MATRIGEL(商標)+5ml RPMI/20SR)を、予備冷却したピペットを用いて調製した。全容積は、各ウェルにつき2mlとした。これらのhES細胞ペレットを、MATRIGEL(商標)培地に再懸濁させて、ウルトラロープレートのウェル当たり2mlのhESペレット:培地懸濁液を加えた。
成長因子を加えるべきウェルに対しては、因子カクテル(各100ng)を、ペレット再懸濁化手順の前又は懸濁物をウルトラロープレートにプレートした直後にMATRIGEL(商標)培地に加えることができる。プレートを37℃の組織培養インキュベーター中でインキュベートして、MATRIGEL(商標)培地ゲルを数時間後に。一晩のインキュベーション後に、これらのhESペレットは、包埋された胚様体を形成した。
3日目及び6日目
EB培養物に、0.5mlの追加のRPMI/20SR培地+初期因子(100ngの各因子)を補った。
後期因子ステージ
10日目
培地を取り出した。注意を払って、EBがMATRIGEL(商標)から除去されるのを防止した。新鮮な培地をこれらの細胞に加え、それらを、約1時間にわたって平衡化させた。この後に、LFカクテル及びRPMI/20SRを加えた。
13日目及び16日目
EB培養物に、0.5mlの追加のRPMI/20SRばいち+後期因子を補った。
20日目
MATRIGEL(商標)EBを、15mlFALCON管に集めた。12mlの冷却PBSを加えて、これらのEBを、10分間、氷上に置いた。これらのEBを、4分間、2500rpm(round per minute)で回転させた。上清を注意深く取り出して、EBをエッペンドルフ管に移した。これらのEBを、次いで、免疫組織化学又はRT−PCRを用いて分析した。
実施例4:幹細胞を特定の内胚葉性細胞系統に沿って分化させるための多段階法の図式表示
図2は、幹細胞を特定の内胚葉性細胞系統に沿って分化させるための多段階法の図式表示を与えるものである。図2に示した特定の具体例について、出発材料は、胚性幹細胞であり、特定の内胚葉性細胞系統は、膵臓(特に、ベータ島)細胞である。胚性幹細胞は、幾つかの形式の何れかにおいて、例えば懸濁培養における胚様体として、MATRIGEL(商標)又は他のマトリクス材料中に包埋された胚様体として、フィルター上の胚様体として、MATRIGEL(商標)又は他のマトリクス上に直接プレートされた胚性肝細胞として、又は組織培養プレート上に直接プレートされた胚性肝細胞として培養することができる。特定の形式にかかわらず、前述の方法の何れかにおいて培養された胚細胞は、初期因子を含む培地中で1〜10日間(又は1〜15日間さえ)培養される。この培養期間は、これらの細胞を、特定の内胚葉性経路に向けさせる。膵臓細胞型については、初期因子中での培養が、部分的分化を生じる(初期マーカーPdx−1の発現により評価)。pdx−1の発現の誘導を助成する典型的な初期因子には、アクチビンA、BMP2、BMP4及びノーダルが含まれるが、これらに限られない。かかる因子は、個々に加えることも組み合わせて加えることもできる。組合せには、2、3、4種類、又は4種類より多くの因子の組合せが含まれる。
この分化の最初のステージの後に、細胞を、1〜10日間にわたって(又は1〜15日間にわたってさえ)、後期因子を補った培地中で培養する。この培養期間は、更に、細胞の特定の経路に沿った最終分化に向けた分化を促進する。これは、pdx−1の更なる発現の促進、分化の最終マーカーの発現の促進、pdx−1の更なる発現とインスリンの更なる発現の両方の促進を含むことができ、又は最終分化のマーカーの増大した発現を伴うpdx−1の発現を減少させる。
膵臓細胞型(特に、ベータ島細胞)については、後期因子中での培養が、更なる分化を促進する。更なる分化の促進は、pdx−1の発現の更なる増加をアッセイすることにより評価することができる。加えて又は別法として、更なる分化は、インスリンを含む後期マーカーの発現によって評価することができる。pdx−1の発現は、細胞の最終分化に際して、おそらく一層低レベルであっても、維持されるということに注意されたい。
最終ベータ島分化のマーカーの発現の誘導を助成する典型的な後期因子には、HGF、エキセンジン4、ベータセルリン及びニコチンアミドが含まれるが、これらに限られない。かかる因子は、個別に加えることも、組み合わせて加えることもできる。組合せには、2、3、4種類又は4種類より多くの組合せが含まれる。
この点において、細胞は、適宜、更に培養して、最終分化及び機能性能を増進させることができる。
実施例5:幹細胞を特定の内胚葉性細胞系統に沿って分化させるための多段階方法
ヒトの胚性幹細胞3(hES3)を、図2に示したように多段階分化プロトコールにかけた。これらの胚性幹細胞を、MATRIGEL(商標)中に、3Dで、懸濁して、胚様体として培養した。これらの細胞を、10日間、初期因子を含む培地中で培養してから、10日間、後期因子を含む培地中で培養した。培養後、細胞を、pdx−1の発現についてアッセイした。
図3は、これらの実験の結果をまとめたものである。図3に描いた各棒について、胚様体は、示したものを除いて、次の初期及び後期因子と共に培養した:初期因子は、アクチビンA、BMP2、BMP4及びノーダルであり;後期因子は、HGF、エキセンジン4、ベータセルリン及びニコチンアミドであった。省いた特定の因子は、各棒の下に示してある。
図3に示したように、すべての初期因子及びすべての後期因子の存在下での胚様体の培養は、pdx−1の発現の、これらの成長因子の非存在下と比べて約4倍の増加を生じた。しかしながら、これらの因子のすべての利用は、pdx−1の強い発現を誘導するのに必須ではなかった。例えば、BMP2、ノーダル、ベータセルリン及びニコチンアミドを含有することは、随意であるようである。
更に、MATRIGEL(商標)の分化における役割を研究した。幾つかのhES3由来の胚様体を、自由浮遊にてRPMI培地単独(−)中で20日間又はMATRIGEL(商標)1:6/RPMI中で、示した期間にわたって、2EF及び3LF成長因子の存在下で培養した。20日目に、細胞を、Pdx−1の存在について分析した。図30に示したように、Pdx−1の発現は、MATRIGEL(商標)中で0〜10日間培養した細胞において顕著に増進されたが、MATRIGEL(商標)中で10〜20日間培養した場合には増進されなかった。これらのデータは、MATRIGEL(商標)を必要とするのが約0〜10日に限られている(EBがEFと接触している場合)ことを示している。MATRIGEL(商標)の10〜20日の連続した存在は、僅かに利益となるだけである。このプロトコールにおいて0〜10日におけるMATRIGEL(商標)の欠如は、たとえMATRIGEL(商標)が10〜20日に存在しても、Pdx−1発現を刺激しない。この実験は又、初期分化ウィンドウにおけるアクチビン/BMP4同時刺激の役割を強調している。
実施例6:マウス胚性幹細胞レポーター系統の指示された分化
pdx−1座に割り込ませたlacZレポーターを有するマウス胚性幹細胞系統を、膵臓細胞系統に沿って分化させた。ES細胞の培養物を用いて、EBを生成させて、初期及び後期因子の存在下で培養にかけた。図4Aは、β−ガラクトシダーゼを発現する細胞のクラスターを示しており、そうしてpdx−1の発現を示している(EB形成及びその後のプレーティング後)。図4Bは、マウスEBについての、培養の様々なステージにおけるpdx−1についての定量的RT−PCRデータを示している。pdx−1発現がEB形成の24日目まで経時的に増加したことは明らかである。
実施例7:膵臓細胞系統に沿った指示された分化は、経時的に増大する。
ヒトの胚性幹細胞系統hES2を用いて、MATRIGEL(商標)に懸濁させたEBを生成した。細胞を初期及び後期因子で、上記のように処理した。これらの駆動されたEBにおけるpdx−1の発現は、時間と共に増大した。図5Aは、pdx−1 mRNAが、リアルタイムRT−PCRにより検出して、EB形成の日数(0〜24日)と共に増大したことを示している。図5Bは、pdx−1 RT−PCR生成物のエチジウムブロミド染色したゲルを示しており、それは、予想されたサイズの単一バンドが検出されたことを示している。
実施例8:様々な成長因子調製物は、膵臓細胞系統に沿った指示された分化を促進する
ヒトの胚性幹細胞系統hES3を用いて、MATRIGEL(商標)に懸濁させたEBを生成した。TGF−β因子の添加は、hES3におけるpdx−1の発現を増大させた。hES3 EBを、MATRIGEL(商標)にて、アクチビン、BMP−2、BMP−4又はノーダルに代表される幾つかのTGF−β関連因子を加えたRPMI培地中で培養した。RT−PCRによるpdx−1の発現は、培養において、20日後に測定された。図6に示したように、発現を、アクチン1ng当たりのfgとして表してある。成長因子の添加は、pdx−1発現の、成長因子の存在しない培養と比較して、9倍増へと導いた。その上、この処理は、培養20日後にインスリン発現の増大(RT−PCRによる測定)を生じた。発現は、アクチン1ng当たりのfgとして表してある。成長因子の添加は、インスリン発現の約2倍増へと導いた。
実施例9:ヒト胚性幹細胞の、特定の内胚葉性細胞系統に沿った指示された分化
この発明の方法を用いて、幹細胞の、特定の内胚葉性細胞型への分化を指示することができる。図7にまとめたこれらの結果は、肝細胞型が胚性幹細胞から分化しうることを示している。図7Aは、肝細胞マーカーのアルブミンの、ES細胞を直接、MATRIGEL(商標)コートした組織培養プレート上にプレートすることにより培養されたhES細胞における発現を示している。
図7Bは、幾つかの分化プロトコールにかけた2つの異なるhES系統についての定量的RT−PCRのデータを示している。条件Eに従って分化したヒトES細胞は、肝臓マーカーの発現における最大の増加を有した。ES細胞を、MATRIGEL(商標)コートしたプレート上にプレートして、20%血清代替物及び1%DMSOを補ったノックアウト培地中に維持した。5日後に、細胞を、2.5mM酪酸ナトリウムで処理した。この培地を、次いで、100ng/mlアルファ−FGF、0.1ng/ml TGF−β、30ng/ml EGF及び30ng/ml HGFを補ったhES培地で置き換えた。最後に、この培地を、10ng/mlオンコスタチンM、1μMデキサメタゾン、30ng/ml HGF及び0.1ng/ml TGF−βを補ったhES培地で置き換えた。
実施例10:ヒトの胚性幹細胞の、組み合せたアプローチ − 44日プロトコールを利用する、膵臓細胞系統に沿った指示された分化
上で詳述したように、3次元培養で成長させたヒトの胚性幹細胞の分化(pdx−1の発現により表示される)を、膵臓細胞系統に沿って指示することができる。その後、更なる実験を行なって、ヒト胚性幹細胞の、膵臓細胞系統に沿った指示された分化が、それらの細胞を、上述の3−D培養系と、脂肪の膵臓細胞型への分化に影響を与えるために我々によって示された他の培養系との組合せにかけることによって更に影響されうるかどうかを見た。
比較のための基準線を確立するために、ヒトの胚性幹細胞を、上記のようにして、3次元培養にて、MATRIGEL(商標)中で20日間にわたって分化させた。最初の10日間では、これらの細胞を初期因子(アクチビンA:50ng/ml;BMP2:50ng/ml;BMP4:50ng/ml;ノーダル:50ng/ml)の存在下で培養し、2番目の10日間では、これらの細胞を後期因子(ベータセルリン:50ng/ml;HGF:50ng/ml;エキセンジン4:10ng/ml、ニコチンアミド:10mM)の存在下で培養した。pdx−1レベルを、RT−PCRにより、3D MATRIGEL(商標)プロトコールにおける細胞培養の様々な時点で測定した。RNAを単離して、pdx−1及びアクチンの発現について、RT−PCRにより分析した。データを、アクチン発現との比較において標準化した。結果は、アクチン1kgの発現当たりのpdx−1の絶対g+/−SDとして表されている。これらの結果は、図8にまとめてある。
我々は、次いで、上記のMATRIGEL(商標)、3次元培養プロトコールの、24日間、5段階分化プロトコール(元々、インスリン+細胞を膵管前駆体から生成する能力につき評価されたもの)との結合に基づいて実験をセットアップした。ヒトの胚性幹細胞を直接24日間プロトコールに置くか、又は先ず、1、2若しくは3週間にわたって上記の3次元MATRIGEL(商標)プロトコールにて培養した。
方法:20日目を、24日間プロトコールの最初の日と考えた。その前に、細胞を3D培養にてMATRIGEL(商標)中で培養した。細胞を培養するために用いた方法論(該細胞は、先ず、まる3週間3D培養にて培養され、次いで、24日間分化プロトコールにかけられる)は、下記の通りである:
D0−10(0〜10日目):0日目は、通常、セットアップの日である。細胞を、KO SR培地+初期成長因子カクテル(アクチビンA:50ng/ml;BMP2:50ng/ml;BMP4:50ng/ml;ノーダル:50ng/ml)にて培養した。この培地を、D3、6に(細胞に供給するために)注ぎ足した。
D10−20(10〜20日目):細胞を、KO SR培地+後期成長因子カクテル(ベータセルリン:50ng/ml;HGF:50ng/ml;エキセンジン4:10ng/ml;ニコチンアミド:10mM)にて培養した。培地を、16にて交換した。
D20:EBを3D MATRIGEL(商標)から溶出して、低付着プレートに再プレートした。
D20−26(20〜26日目):24日間成熟プロトコール(=24日間プロトコールの第一段階)を開始する。細胞を、基本培地(DMEM/F12、17mM Glc、2mM Glutamax、8mM HEPES、2% B27、+ペニシリン/ストレプトマイシン)中で6日間培養した。細胞に、新鮮な培地を23日目に供給した。
D26(26日目):EBをディスパーゼにより解離させて(2ウェルの一つ、他方は、EBとして維持)、低付着プレートに再プレートした。
D26−32(26〜32日目):24日間プロトコールの第二段階。細胞を、基本培地+20ng/ml FGF−18、2μg/ml ヘパリンにて培養した(新しい培地をD26に、新しいGFをD29に加えた)。
D32−36(32〜36日目):24日間プロトコールの第三段階。細胞を、基本培地+20ng/ml FGF−18、2μg/ml ヘパリン、10ng/ml EGF、4ng/ml TGFα、30ng/ml IGFI、30ng/ml IGFII、10ng/ml VEGFにて培養した(新しい培地をD32に、新しいGFをD34に加えた)。
D36(36日目):細胞を、フィブロネクチンコートしたプレートに再プレートした。
D36−40(36〜40日目):24日間プロトコールの第四段階。細胞を、RPMI培地(11mM Glc、5% FBS、2mM Glutamax、8mM HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン)+10μMフォルスコリン、40ng/ml HGF、200ng/ml PYY中で培養した(新しい培地をD36に、新しいGFをD38に加えた)。
D40−44(40〜44日目):24日間プロトコールの第五段階。細胞を、CMRL培地(5mM Glc、5% FBS、2mM Glutamax、ペニシリン/ストレプトマイシン)+100ng/mlエキセンジン4、5mM ニコチンアミドにて培養した(新しい培地をD40に、新しいGFをD42に加えた)。
D44(44日目):RNAを、pdx−1及びインスリンの発現につきRT−PCRによって分析するために収穫した。
注意:RNA試料は、細胞の指示された分化の評価を助成するために、このプロセスに沿った様々な時点の細胞から収穫した。
結果:この24日間プロトコールは、細胞を、ディスパーゼを用いて解離させうる段階を含む。我々の実験では、我々は、このディスパーゼ解離ステップが必要であるかどうか、及び膵臓細胞系統に沿って分化すべき細胞の能力に悪影響を与えていないかどうかを評価した。
上記のように、標準的な3D分化プロトコール後に、胚性幹細胞は、分化して高レベルのpdx−1を発現する。図9Aに示したように、20日間3D分化プロトコール及び24日間プロトコールの両方に従う細胞は、pdx−1を発現し続ける。しかしながら、pdx−1発現は、培養の最初の20日後より低レベルである(図8と図9Aを比較)。しかしながら、更に、これらの細胞は、非常に高レベルのインスリンmRNAを発現する(図9B参照)。インスリンタンパク質の発現は、CペプチドELISAアッセイを行なうことにより確認される。
その上、図9A及び図9Bの両方に示したように、これらの細胞の、24日間分化プロトコールにおけるディスパーゼでの処理は、これらの細胞の膵臓細胞系統に沿って分化する能力に悪影響を与えた。従って、このステップの除去は、有用でありうる。
実施例11:ヒトの胚性幹細胞の、組み合せたアプローチ − 34日間プロトコールを利用する、膵臓細胞系統に沿った指示された分化
上で詳述したように、3次元培養で成長させたヒトの胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った分化(pdx−1の発現により表示される)を指示することができる。次いで、更なる実験を行なって、ヒトの胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った指示された分化が、更に、それらの細胞を、上記の3D培養系と、幹細胞の分化に影響を与えるために我々により示された他の培養系との組合せにかけることによって影響されうるかどうかを見た。一つのかかる他の培養系は、実施例10に概説した24日間プロトコールであった。我々は、更に、34日間分化プロトコールを試験した。
この組み合せたアプローチにおいて、細胞を、3D培養における10日間だけの培養及び分化にかける。その時点で、細胞を採って、34日間分化プロトコールにかける。この組み合せたアプローチの後に、pdx−1及びインスリンの発現をRT−PCRにより評価した。
方法:このプロトコール(開始から完了まで)は、34日間の長さである。その前に、細胞を、3D培養にてMATRIGEL(商標)中で、10日間、初期成長因子カクテルの存在下で培養した。最初に1週間3D培養で培養してから34日間分化プロトコールにかけた細胞についての方法論は、下記の通りである:
D1−10(1〜10日目):細胞を、KO SR培地+初期成長因子カクテル(アクチビンA:50ng/ml;BMP4:50ng/ml)にて培養した。この培地を、D1、3、6で交換した。
D10(10日目):EBを、3D MATRIGEL(商標)から溶出して、低付着プレートに再プレートした。
D10−18(10〜18日目):34日間プロトコールの第二段階。細胞を、基本培地((DMEM/F12、17nM グルコース、2nM グルタミン、8mM HEPES、2% B27及びPen/strep)+20ng/ml FGF−18、2μg/ml ヘパリンにて培養した。これらの細胞に、13日目及び16日目に培地に成長因子を注ぎ足して供給した。
D18−24(18〜24日目):34日間プロトコールの第三段階。細胞を、基本培地+20ng/ml FGF−18、2μg/mlヘパリン、10ng/ml EGF、4ng/ml TGFα、30ng/ml IGFI、30ng/ml IGFII、10ng/ml VEGFにて培養した。これらの細胞に、新鮮な培地及び成長因子を21日目に供給した。
D24(24日目):細胞を、フィブロネクチンコートしたプレートに再プレートした。
D24−29(24〜29日目):34日間プロトコールの第四段階。細胞を、RPMI培地(11mM Glc、5% FBS、2mM Glutamac、8mM HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン)+10μM フォルスコリン、40ng/ml HGF、200ng/ml PYY中で培養した。
D29−34(29〜34日目):32日間プロトコールの第五段階。細胞を、CMRL培地(5mM Glc、5% FBS、2mM Glutamax、ペニシリン/ストレプトマイシン)+100ng/mlエキセンジン4、5mM ニコチンアミドにて培養した。これらの細胞に、新鮮な培地及び成長因子を32日目に供給した。
D34:CMRL(成長因子なし)中で細胞の培養を継続して、それらの細胞を収穫する。
注意:RNA試料は、これらの細胞の指示された分化の評価を助成するために、このプロセスに沿った様々な時点の細胞から収穫した。その上、培養培地及び因子は、この分化プロトコール中、規則的に交換した。
結果:実施例10で概説したように、標準的な3D分化プロトコール後に、胚性幹細胞は、分化して、高レベルのpdx−1を発現する。我々は、更に、胚性幹細胞の、膵臓細胞系統に沿った分化を、実施例11に概説したアプローチを利用して指示した。この実施例11に概説したプロトコールにおいて、我々は、試料を、この分化プロトコールの様々な時点で収穫した。図10は、2つの時点:10日目(34日間プロトコール開始の直前)及び22日目(34日間分化プロトコールの行程の約1/3)についてのこれらの結果をまとめてある。
図10A及び10Bは、10日目(34日間プロトコールの開始前)で、pdx−1の発現が低く且つインスリンの発現は検出できないことを示している。しかしながら、図10A及び10Bに示したように、22日目において、pdx−1の発現は、非常に高い。事実、pdx−1の発現は、この時点で、24日間プロトコールの完了後よりも高い(図9A参照)。図10Bに示したように、22日目において、インスリンの発現は、検出できる。しかしながら、インスリンのこの時点での発現は、24日間プロトコールの完了後よりほど強くない(図9B参照)。これは、34日間分化プロトコール中の部分行程、これらの細胞が膵臓細胞系統に沿って最終分化することを継続していることを示しうる。約22日目にて、pdx−1の発現は、依然として、比較的高く、おそらく、一層多くの細胞ができるが未だインスリン産生細胞に分化していないことを示している。
34日間分化プロトコールの様々な時点で類似の方法を用いる細胞の分析は、細胞が、膵臓細胞系統に沿って分化(部分的分化対最終分化)するように指示される時点及び条件を更に正確にすることができる。
実施例12:胚性幹細胞の、正常膵臓分化を真似る20日間分化プロトコールを利用する、Pdx−1+細胞への指示された分化
ベータ細胞の胚性及び成体幹細胞からのイン・ビトロ生成を目的とした仕事の殆どは、初期膵臓前駆細胞におけるpdx−1遺伝子の組織特異的発現の故に、該遺伝子の活性化に集中してきた。しかしながら、膵臓細胞系統に沿った分化の指標としてのpdx−1発現への依存に対する一つの潜在的批判は、用いられる特定のイン・ビトロ分化スキームが擬似活性化を生じうるということである。かかるpdx−1の擬似活性化は、膵臓細胞系統に沿った分化を示しえず、インスリンを産生し、グルコースに応答する細胞への更なる分化のできる細胞の良い予言者を与えることはできない。従って、我々は、我々のプロトコールを用いて、胚性幹細胞の指示された分化中のpdx−1発現が、正常な膵臓の発生に生理的に関連しているかどうかを示すようにデザインした実験を行なった。
我々は、限定された内胚葉の形成中に正常に活性化される遺伝子の発現タイムコースを行なった。図11及び12に示したように、これらのマーカーのイン・ビトロ発現の速度論は、大体、正常ベータ細胞の発生において予想された遺伝子発現のイン・ビボ活性化順序に従った。ブラキュリ(Tbra)(図11)における急速な増加は、多能性マーカーOct4及びnanogにおける降下を伴い(図12)、嚢胚形成に関係する過程及び胎児生殖層の形成の開始を示唆している。この後に、内胚葉性遺伝子Hnf3β及びSox17の一層持続された発現があり、これは、15日目に始まるpdx−1発現細胞の出現に先行している。20日目に、インスリン転写物が、検出され、レベルは、拡大した分化と共に増大する。興味深いことには、Oct4発現レベルは、20日目において、未分化レベル(0日目)の約60%にまでアップレギュレートされた。これは、他のOct4発現細胞型例えば始原生殖細胞の出現のためであろう。加えて、他の成熟細胞系統のマーカー例えばアルブミン、AFP及びCyp3A4(通常、肝細胞形成において発現される)の粗略な試験は、初期の発現ピークとその後の全体的減少を示した(図12)。
この分析は、この発明の、胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った分化を指示するためのイン・ビトロの方法が、正常な膵臓及びベータ細胞の分化中に認められたものを真似る一時的に調節された様式で、適当な遺伝子発現を誘導することを示した。
実施例13:20日間分化プロトコールの更なる最適化
上で詳述したように、我々は、胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った分化を指示する20日間分化プロトコール(初期プロトコール)を開発した。特に、我々は、胚性幹細胞のpdx−1+細胞(これは、更に、インスリン+細胞へ分化することができる)への分化を指示する初期因子及び後期因子の添加を含むプロトコールを開発した。上記の初期/後期因子(EF:LF)の分化プロトコールは効果的であるが、我々は、この方法論を更に最適化するようにデザインした更なる実験を行なった。
我々は、個々の初期及び後期因子を評価した。これらの研究は、我々の開始プロトコールにおいて有効であることが判明した8つの因子(4EF及び4LF)のうち、初期成長因子混合物のBMP4とアクチビンAが重要成分であることを示した。BMP4とアクチビンAの効力は、後期因子混合物がポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼインヒビターのニコチンアミドを除外した場合に、最も劇的であった。これらの研究は、唯2つの初期因子と唯3つの後期因子(4つの初期因子と4つの後期因子ではない)に基づく初期分化プロトコールが、多いに効果的であって、容易に、胚性幹細胞の、膵臓系統に沿った分化に偏向されたpdx−1+細胞への指示された分化を促進するために利用することができることを示した。この改訂されたプロトコールは、初期の20日間プロトコールと、用いる初期及び後期因子の性質においてのみ異なっている。この2EF−3LFプロトコールは、初期因子アクチビンA(50ng/ml)及びBMP−4(50ng/ml)を含んだ。これらの細胞を、前に記載したように初期因子にて0〜10日目まで培養した。2EF−3LFプロトコールは、後期因子HGF(50ng/ml)、エキセンジン4(10ng/ml)及びβ−セルリン(50ng/ml)を含んだ。
2EF−3LFプロトコールは、強いpdx−1の発現を、一層安価な、一層早く且つ簡単な手順を用いて誘導したので、以前の4EF−4LFプロトコールを超える改良を表すものである。図13〜16は、2EF−3LFプロトコールの開発へと導いた実験をまとめたものである。
理論には拘束されないが、BMP2及びBMP4は、同じ細胞表面レセプター複合体に結合する2つの構造的に関係する成長因子であるので、2つの成長因子の組合せが4EF混合物において過飽和であること及びpdx−1の誘導には1つの因子単独で十分であろうことは予想された。図13Aは、BMP2を欠くEF成長カクテルが、4つ全部の初期EFにより誘導されたものより僅かに大きいレベルでpdx−1発現を誘導したことを示すデータをまとめてある(図13A中のG2をG7と比較されたい)。少々驚いたことには、TGF−β関連リガンドのノーダル(進化的に保存された内胚葉誘導因子)は、EFカクテルにおいて殆ど効果を有しない。図13において、「全部」は、初期4EF−4LF20日間プロトコールに用いるEF及び/又はLFの4つ全部の添加を示すことに注意されたい。各実験条件についての二連のウェルを、最良の実行条件のCt値Pdx−1/アクチンに沿って示してある。図13Aに描いた結果は、規格化された表現で表してある、及び図13Bに描いた結果は、アクチン投入の%としてPdx−1発現を表していることに注意されたい。
ノーダルが、pdx−1発現の誘導を有意に改善しないことを示す更なる実験を図14にまとめた。しかしながら、我々は、ノーダルが、膵臓分化に何ら悪影響を有するように見えなかったこと及び従って随意に開始プロトコールに含ませることができることに注意する。簡単にいえば、2EF−3LFプロトコールを、50ng/mlの組換えノーダルの存在下又は非存在下で実施した。20日目において、試料を、pdx−1発現について、Q−PCRにより分析して、Pdx−1及びアクチン標準曲線に対して計算した。スチューデントのT検定は、これら2つの実験条件間で、統計的有意性(p>0.05)がないことを確立した。
理論には拘束されないが、この結果に対する一つの説明は、分化中のヒトES細胞は、低レベルのクリプト(ノーダルに必要なコレセプター)を発現すること及び、我々のアッセイでは、アクチビンタンパク質は内因性のノーダルシグナルを真似ることである。この仮説は、BMP2及びノーダルの、初期因子混合物からの除去を企図した。更なる分析は、残りの2つのEF(BMP4及びアクチビンA)が、組み合わせると、4EF−4LF混合物を用いて初期に認められたものより遥かに大きいpdx−1発現レベルを生じることを示した(図13AのG2とG8を比較されたい)。BMP4とアクチビンの相乗効果は、単一因子実験によって更に支持される(図13のG8〜G11及び図15のG7を比較されたい)。
加えて、多くの実験が、BMP4及びアクチビンの組合せにおける最適濃度を決定するために実行された。我々は、50ng/ml BMP4と50ng/ml アクチビンが、ニコチンアミドを欠くLF混合物と共に、強いpdx−1発現を、他のインスリン、グルカゴン、Pax4及びソマトスタチンを含む内分泌細胞系統のマーカーに加えて、誘導することを繰り返し見出した(図15及び16)。
上記のように、これらの実験は、ニコチンアミドのLF混合物中の存在が、pdx−1発現を、4EF(図13AのレーンG3をG5及びG6と比較されたい)及び簡素化した2EF混合物(図13BのG3〜G5を比較されたい)の両コンテキストで阻害することを示した。従って、pdx−1発現が、ニコチンアミドを含む4EF−4LF開始プロトコールを用いて達成されても、この因子は、2EF−3LF開始プロトコールでは省かれた。
対照的に、これらの実験は、ベータ−セルリンが、LF混合物の重要な成分であることを示した(図13AのG2をG5及びG6と、図13BのG3〜G5を比較されたい)。従って、ベータ−セルリンは、2EF−3LF開始プロトコールにおいてLFとして維持された。
更に、LF HGF、エキセンジン4、及びベータ−セルリンの、膵臓細胞によるpdx−1の発現に対する重要性を研究した。MATRIGEL(商標)における分化中に、低レベルのpdx−1が先ず、12日目という初期に検出され(例えば、図4B、11、12参照)、経時的に徐々に増加する。これらの成長因子HGF、エキセンジン4及びベータ−セルリンは、それらの、成熟、増殖又は一層特化された島由来細胞集団のインスリン分泌速度論の変調における役割について詳細に特性決定されており、従って、出現中のpdx−1を発現する膵臓前駆細胞に対して指示シグナルを殆ど与えないことが予想される。3LFの各々並びにニコチンアミドの、20日目のpdx−1発現に対する寄与を評価した。それらの結果は、図29に示してあり、これは、3LFの除去が、pdx−1レベルの凡そ3倍増へと導くことを示している(左から2番目の柱)。これらのデータは、EF、アクチビンA及びBMP4の組合せが、3D MATRIGEL(商標)マトリクス内での膵臓分化を開始するのに十分であることを示唆している。pdx−1発現は、成長因子なしの対照又は3LFだけ(10日目から投与開始)の場合には、検出されなかった。図29において、Ex−4:エキセンジン4;Nic:ニコチンアミド;HGF:肝細胞成長因子;β−細胞:ベータ−細胞;4LF:3LFプラスニコチンアミド。
まとめると、これらの実験は、多数の開始プロトコールを利用して、胚性幹細胞の膵臓細胞系統に沿った分化の指示を助成することができることを示した。これらの開始プロトコールの2つの代表的な例は、4EF−4LF開始プロトコール及びここに記載した2EF−3LF開始プロトコールである。他のプロトコールは、これら2つの例に照らして、この発明の範囲内にある。
図29に示した結果を用いて、実施例16に記載した簡素化された成熟プロトコール(ステップ1及び5を標準的プロトコールから除いた)を開発した。
実施例14:開始プロトコールによる胚性幹細胞の指示された分化後のPdx−1発現細胞の局在化
Pdx−1免疫組織化学を実施して、Q−PCR(定量的PCR)データを補強して、EB中のPdx−1発現細胞の局在性及び定量を与えた。この手順(材料及び方法に詳細に記載)を、多数の独立した分化実験から生成されたEBにおいて繰り返して、人工産物による汚染を排除した。これらの開始プロトコール実験(実施例13に上記)は、Q−PCRにより評価するPdx−1 mRNA発現の誘導に依存しているので、BMP2、ノーダル及び/又はニコチンアミドがPdx−1タンパク質の産生及び蓄積に悪影響を及ぼす可能性を排除することが重要であった。
図17は、この発明のプロトコールを利用して分化させた胚様体におけるPdx−1の免疫位置測定を示している。EBを、4EF−4LFプロトコール(図17A及びB)又は2EF−3LFプロトコール(図17C及びD)を利用して、20日間にわたって分化させた。何れかの開始プロトコールを利用して、Pdx−1陽性細胞集団を、上皮リボン(しばしば、内腔を含み、しばしば、EB周辺に限られる)内で同定した(図17A及びBにおいて矢印で示してある)。理論には拘束されないが、Pdx−1発現細胞のクラスターは、EBのサブ集団が、インスリン産生細胞の更なる発生の基礎となる膵臓「ニッシェ」を支持することを示唆しうる。
pdx−1 mRNAの発現を、更に、イン・シトゥーハイブリダイゼーションにより分析して(図22)、Pdx−1免疫組織化学と正確に相関することが示された。簡単にいえば、図22A及びBは、20日間開始プロトコール(2EF−3LF)後のイン・シトゥーハイブリダイゼーションにより、pdx−1を示している。図22A及びBにまとめた結果は、個々の培養ウェルから収穫したすべてのEBの約1/3が、分化の20日目以後にPdx−1を発現する(一層暗い染色)ことを示した。図22Bに示した一層高い倍率の視野は、pdx−1転写物が、EBの周辺近くに局在化されていることを示している。図22Cは、成長因子の非存在下で培養したEBがPdx−1を発現できないことを示した。図22Dは、図22A及びCに示した細胞の並行培養物の定量的PCRの結果をまとめたものであり、成長因子を含む培養(一層高い棒)における強いpdx−1発現を、成長因子の非存在下で分化したもの(一層低い棒)に対して確認するものである。
加えて、明ヘマトキシリン対比染色を、切片の免疫組織化学と組み合わせて利用して、EBのグループ内のpdx−1発現細胞数を評価した。EBの視野(全部で65)を、手作業での計数のために一層小さい領域に分けた。全細胞数を、ヘマトキシリン染色により測定した。我々は、20日目において、切片当たり、約1%の細胞がPdx−1陽性であることを見出した。EBの視野において、EBの約1/3がPdx−1陽性クラスターを含んだ。
EBにおけるpdx−1の発現パターンを、更に、Pdx−1とCペプチドの発現が一緒に局在化しているかどうかを調べることによって研究した。hES3細胞は、2EF−3LF開始プロトコール、及び実施例15に「ステップ4のみの成熟」として更に記載されたように単にステップ4を利用する簡素化された成熟プロトコールを利用して分化するように指示された。その結果生成したEBの切片を調製して、Pdx−1及びCぺプチドに対する抗体を利用して、単純又は二重染色した免疫組織化学試料として免疫染色した。これらの結果を、図28(上段パネルは、高倍率の像を示し、下段パネルは、低倍率の像を示している)にDAPI染色した核と共に示した。図28は、Pdx−1陽性細胞が、分化したhES3細胞のクラスター又は上皮リボン内に局在化していることを示しており、Cペプチド陽性細胞がそれらの間にあることを示している。
実施例15:成熟プロトコール
5ステップ成熟
これらの開始プロトコールは、多能性の胚性幹細胞にpdx−1を発現する膵臓前駆細胞に向かう指示をする簡単な分化レジームを与える。20日間分化プロトコール(例えば、開始プロトコール)の最後において、インスリン発現は、依然として低い。従って、我々は、成熟プロトコールを用いて、これらの偏向された細胞の更なる膵臓への分化を促進した。
図18Aは、3EF−3LF開始プロトコールプラス成熟プロトコールの特定の組合せの図式表示を与えるものである。図18Aに描いた成熟プロトコールは、5ステップもの多くのステップを有しうる。これらのステップの任意の組合せの利用は、成熟プロトコールとして言及され、ステージ/ステップ、培養日数、及び/又は用いた特定の因子への言及は、成熟プロトコールの順列を区別する。
簡単にいえば、2EF−3LF開始プロトコールを利用して分化させた試料を、更に、この5ステップの24日間成熟プロトコールを利用して分化させた。20日目のpdx−1発現(図18B、左パネル)と成熟プロトコールのステージ3の後の培地中へのCペプチドの放出(36日目、図18B、右パネル)との間には、強い相関があった。Cペプチドは、プロインスリンの酵素的プロセッシング中に放出される安定な副生物であって、我々のアッセイにおいては、間接的であるが信頼できる測定を与えることに注意されたい。この発見は、(1)中点(20日目)において、pdx−1発現は、一層成熟した細胞型の一層遅い出現のプレステージであり及び(2)この組み合せたイン・ビトロプロトコールが。膵臓前駆細胞を最終分化した内分泌細胞に導く発生信号(cue)に接近するという考えを支持する。
図18B(右パネル)に示したように、我々は、全部で36日の拡大されたイン・ビトロ培養の後にCペプチドの培地中への放出を検出した。我々は、図18Aに図式表示された成熟プロトコールの、5つのステップの適切さの系統的な研究を開始した。我々は、先ず、これらのステップの各々を研究することを目的として、一連の単一プロセス排除実験を工夫した。2EF−3LF分化プロトコールからの、20日目のpdx−1を発現するEBを、直接、マルチステッププロトコールの唯一つのステップに、更なる24日の分化のために入れ換えた。これらの実験において、(36日目に再び)48時間の培養後に検出されたCペプチドの基準線濃度は、約0.5ng/mlであった(成熟プロトコールの最初の4ステップを進行した対照用培養にて測定 − 上段図式 − 図18A及び19A)。
図19Bは、これらの実験の結果をまとめたものである。興味深いことには、36日目において、ステージ4を除いて、他の条件の各々について、Cペプチド放出には僅かの変化しかなく、これは、Cペプチドの放出において6倍増を示した(図19B)。この特定のステージには、多くのユニークな面があり:最も顕著には、RPMIの基本培地としての連続使用、及びフィブロネクチンコートした皿での成長である。
ステップ4だけの成熟
この成熟プロトコールを、図23のダイヤグラムに示すように、更に、精密化した。上段のダイヤグラムは、元の5ステップ成熟プロトコールである。中段のダイヤグラムは、その5ステッププロトコールの4ステップだけを利用することを示している。20日齢のMATRIGEL(商標)EBを、冷PBSで洗って、過剰のMATRIGEL(商標)を除き、フィブロネクチンコートした皿に再コートして、直接ステップ4培地にて4日間培養し、ステップ1〜3及び5は省略した。
この簡素化したプロトコールを、マルチステッププロトコールのステップ4が、Cペプチドの分化しつつあるhES細胞からの放出へのキーステップであるという観察に基づいて開発した。図24に示したように、成熟ステップの様々な順列を研究した。グラフの下の矢印は、グラフの上に示した順列に従って、培養培地を交換し又は維持した時点を示している。すべての変化において、Cペプチド放出のスパイクが、それらがステップ4培養培地に移行する際に、培養において認められる。事実、20日間MATRIGEL(商標)プロトコールの最後から直接ステップ4培地に入れ換えた培養(図24のグラフ中の断続線)では、Cペプチド放出は、27日目まで適度の放出量で加速されて、45日の培養期間にわたって維持された。
図24は又、ステップ5が、一貫して、Cペプチドレベルを低下させること、及びステップ5の培地にのみさらされた培養物(黒色線)はCペプチド放出を示さないことをも示している。
成熟因子の研究
ステップ4の活性成熟成分を、分化中のEBを20日間MATRIGEL(商標)プロトコール後に直接ステップ4の培地条件に入れ換える簡素化したステップ4のみのプロトコールを利用して研究した。ステップ4の培地を、幾つかの成分を除去することにより改変し、条件化された培地を、30日目に改変されたステップ4培地で成長させた培養物から集めた。図23のダイヤグラムに示したように、ステップ4の培地は、RPMIに基づいており、通常、5%FBS、10μgフォルスコリン、40ng/ml HGF、及び200ng/mlPYYを含む。この実験の結果を図25に示した。すべての添加した成長因子の除去(5%FBSは維持)は、培養培地におけるCペプチドレベルの約2倍の減少を引き起こす。除去した成分の各々を、個々に又は組合せで、加え戻すことは、フォルスコリンがCペプチドの放出に寄与していることを示す(図25A参照)。すべてのフォルスコリン含有条件及びすべてのフォルスコリンを欠く条件を比較する図25Aに示した実験結果の集合の分析は、フォルスコリンが培地中に存在する場合のCペプチド放出の統計的に有意の増加を示している。類似の効果が、インスリン発現において見られる(図25B)。
フォルスコリンと対照的に、FBSは、なくてもよいこと及びステップ4の培地の必須成分でないことが示された。簡単にいえば、hES3細胞を、上記の簡素化した成熟プロトコールを利用して分化させた。ステップ4の培地を、標準的プロトコールに従ってRPMIを利用して又はCMRLを利用して調製して、FBS、化学的に限定された市販の血清代用品(SR)を補足し、又は、全く補足しなかった。Cペプチドレベルを、28日目に測定した。図26Aに示したように、Cペプチド放出に、培養でRPMIベースの培地を用いるかCMRLベースの培地を用いるかの間で、統計的に有意の変化はなかった。更に、図26Bに示したように、Cペプチド放出に関して、FBS(中央の棒)は、培地(左の棒)から省くことができ、SR(右の棒)により十分以上に補償されている。
更に、培地中の低濃度のグルコースは、分化したhES3細胞集団において、Cペプチドの放出を完全に破壊し、インスリンmRNAレベルを有意に低下させるということが示され、これは、分化したhES3細胞集団が、グルコース刺激されたインスリン/Cペプチド放出のできるすべての細胞型を含むことを示している。特に、hES3細胞を、上記の簡素化した成熟プロトコールを利用して分化させた。このプロトコールの30日目において、培養培地を取り出して、22mMグルコースを補ったRPMI若しくはDMEM、22mMグルコースを補ったRPMI、又は5mMグルコースを補ったDMEMで置き換えた。5mMグルコースは、グルコースの生理的濃度を反映しており、該グルコース濃度でインスリンは、分泌顆粒内に蓄積される。この交換した培地において48時間後に、条件化培地中のCペプチドレベルをELISAにより評価した。図27に示したように、22mMのグルコースを含む培地と11mMのグルコースを含む培地の間で、統計的に有意な変化は殆ど又は全くなかったが、Cペプチドレベルは、予想外にも、5mMグルコースを含む条件化DMEMにおいて、殆ど検出不能なレベルまで減少した(図27B)。同様に、インスリンmRNAの発現は、11mM及び22mMのグルコース濃度において変化しないままであったが、5mMグルコースでは有意に低下した(図27D)。対照的に、pdx−1 mRNAの発現レベルは、有意に影響を受けてはいない(図27C)。この結果は、十分に特性決定されたグルコースによるインスリン遺伝子発現の調節と一致し、インスリンのグルコース刺激された調節に応答性の分化した細胞の存在を示した。
実施例16:改変した10日間開始プロトコール後の成熟プロトコール
我々は、最初の10日間のEFフェーズのプロトコールだけを含み、2番目の10日間のLFフェーズのプロトコールを省いた改変した開始プロトコールにおいてEBを培養した。この方法で培養されたEBを、次いで、成熟プロトコールのステップ2〜4にかけた。この方法で分化させた細胞は、Cペプチドを強く分泌した(12〜14ng/ml)。実施例15及び16では、Cペプチド放出を、ELISAによってアッセイしたことに注意されたい。
この改変したプロトコールは又、図23の下段に示した簡素化したマルチステップ成熟プロトコールにも利用された。簡単にいえば、10日齢のMATRIGEL(商標)EBを、MATRIGEL(商標)なしで、冷PBSで洗い、次いで、ステップ2培地中の懸濁培養に8日間にわたって再プレートし、その後、ステップ3培地(6日間)及びステップ4培地(5日間)に再プレートした。
条件化培地を26日目及び29日目に採取した場合には、幾らかの量のCペプチドが、一貫して、検出された(図31参照)。
実施例17:開始及び/又は成熟プロトコールを利用する分化後の膵臓細胞型の細胞特性決定
我々は、この分化レジームにおける種々の時点での、EB当たりの、インスリン/Cペプチド合成細胞の分布及び数を研究した。完全長のインスリンアンチセンスリボプローブを、フォールマウント イン・シトゥーハイブリダイゼーション(WISH)(3D培養においてインスリンmRNAを発現する個々の細胞の同定を可能にする技術)のために生成した。20日間2EF−3LFプロトコールの最後にQ−PCRにより検出された低レベルのインスリンと一致して、WISHは、このステージの個々のEBの表面において、非常に少ないインスリンを発現する細胞クラスターを示す(図20A及びB)。このステージにおいて、冷凍切片化材料の観察(図20E)に基づいて、我々は、各個別のクラスターが、せいぜい4〜5個の細胞を含むと評価した。対照的に、この成熟プロトコールを利用する更なる分化は、多数のはっきり限定されたインスリン産生細胞のクラスターの拡大及び形成を刺激し(図20C)、幾らかのEBは、拡大した区画における強い表面染色を示している(一層高倍率の図20D)が、他のものは、殆ど又は全く染色を示していない。興味深いことには、我々は、中位のサイズのEBより小さい大多数のものは、少なくとも少数のインスリンを産生するクラスターを含み、それは、EBの一領域に強く限定されているということを見出したが、これは、膵臓ニッシェとEBサイズの形成の両方を示唆しており、それに関して、インスリン産生島様細胞の更なる成熟への傾向がある。
これらのデータは、更に、Cペプチド切片免疫組織化学により補強される(図21)。簡単にいえば、図21は、Cペプチドを用いる免疫細胞化学後の45日目EBのパラフィン切片を示している。Cペプチド陽性細胞は、しばしば、インスリン発現細胞のクラスターと類似の様式でEB周辺に分布したが、ときには、一層内部の領域に位置した(図21B〜F)。図21Aは、陽性対照として、成体マウス小島におけるCペプチド免疫位置測定を示している。
45日目EBにおける二重標識実験は、断続パターンにおける、インスリンとCペプチドの一緒の局在性を示し、これは、内因性ベータ細胞における分泌顆粒の貯蔵を著しく暗示する。これは、この開始及び成熟プロトコールの組合せを用いて誘導されたインスリン発現細胞は、インスリンとCペプチド(グルコース刺激された分泌のためのペプチド)を蓄積し、そうして内因性の正常なベータ細胞の生化学的特性を模倣するという強力な証拠を与える。
類似の一緒の局在化は、EBをこの簡素化したステップ1及び5を含まないプロトコールを仮定して免疫蛍光染色した場合にも見られる。図32は、この簡素化したプロトコールから26日目に収穫して、パラフィン包埋して切片化したEBの高倍率(上段パネル)及び低倍率(下段パネル)の像を示している。このステージにおいて、殆どのインスリン陽性細胞は、インスリン合成の副生物であるCペプチドについても反応性であった。核は、DAPIによる染色により示されている。
図33は、標準的プロトコールのステップ(1)及び(5)を用いない簡素化されたプロトコールによる分化の更なる証拠を示している。EBをこの簡素化したプロトコールを仮定してNkx6.1及びPdx−1免疫反応性について試験した場合、免疫蛍光染色は、ベータ−細胞系統に属する細胞の効率的な形成を示した(左パネル:上段、高倍率;下段、低倍率)。これらの細胞は、主として、上皮リボン又は内腔を含む管類に限定された。加えて、Pdx−1陽性細胞クラスターは又、右パネルに見られるように、グルコーストランスポーターGlut2についても反応性である。核は、DAPIによる染色により示されている。
別途特定する場合を除いて、下記の方法を、実施例12〜17で概説した実験に用いた。
ヒトES細胞培養物:hES細胞を、標準手順に従って培養した。胚様体(EB)の形成、及び細胞の最初の20日間の3DMATRIGEL(商標)中での培養は、下記の通りであった:
第1部:hES1〜6のコラゲナーゼ処理
1.hESコロニーの中央ボタン及び嚢胞性部分を、解剖顕微鏡下で、ガラスピペットポンプ吸い上げを利用して捨てる。hESプレート(P100組織培養プレート)をPBSで2回洗う。注意:この吸い上げステップは、コラゲナーゼ処理の前又は後で行なうことができる。
2.3mlの1mg/mlコラゲナーゼIVをこのhESプレートに加えて、そのプレートをCO2インキュベーター中で37℃で8分間維持する。
3.コラゲナーゼ溶液を吸引する。
4.10mlのPBSで一回洗う。PBSを穏やかに吸引する。コロニーを撹乱しないこと。
5.10mlのRPMI/20SRをこのプレートに加える。
6.2mlパスツールピペットを用いて、このhESプレートを機械的に切り裂く。
7.細胞スクレーパーを利用して、すべての切り裂かれた片を移動させる。
8.ピペットで、数分間、ペレットを吸い上げ下げして再懸濁させる。
9.ペレットを15mlのファルコンチューブに移す。
10.プレートをもう一度、RPMI/20SRで洗って、すべての残留ペレットをプレートから取り去る。
11.ペレットを、15mlファルコンチューブに移す。
12.これらのペレットを、1500rpmで4分間回転させて沈降させる。
13.上清培地を吸引する。
第2部:MATRIGEL(商標)EBを作成する
初期因子ステージ
0日目
1.培地を氷上又は4℃で予備冷却する。予備冷却した2ml、5ml及び10mlをピペット(−20℃)で採る。
2.1:6MATRIGEL(商標)培地(例えば、1mlの液化MATRIGEL(商標)+5ml RPMI/20SR)を、予備冷却したピペットを利用して調製する。
3.hESペレットをMATRIGEL(商標)培地中に再懸濁させる。
4.2mlのhESペレット懸濁液をウルトラロープレートの一ウェルに加える。注意:hESコロニーのP100プレートは、集密になったら、3〜5ウェルに分けることができる。
5.成長因子グループに関して、成長因子カクテル(ウェル当たり100ngアクチビンA+100ngBMP4)を、MATRIGEL(商標)培地にペレットの再懸濁手順の前に加えるか又は細胞懸濁液をウルトラロープレートにプレートした直後に直接ウエルに加えることができる。
6.ウルトラロープレートを37℃の細胞インキュベーター中に維持する。MATRIGEL(商標)培地が数時間後にゲル化する。そしてhESペレットは、一晩で、集まって、包埋されたEBを形成する。
3日目及び6日目
7.RPMI/20SR(0.5ml)+EF(ウェル当たり、最初の投与量と同量−100ngのアクチビンA+100ngBMP4)を注ぎ足す。
後期因子ステージ
D10
1.1mlブルーピペットで、解剖顕微鏡下で、非常にゆっくり注意して、培地を取り出す。MATRIGEL(商標)及びEBを吸い採らないこと。
2.3mlの新鮮なRPMI/20SRを各ウェルに加えて、細胞インキュベーター中で1時間平衡化させる。
3.3mlの培地を1mlブルーピペットを用いて、解剖顕微鏡下で、非常にゆっくり注意して取り出す。
4.RPMI/20SR(0.5ml)+LF(ウェル当たり100ngHGF+20ngエキセンジン4+100ngB−セルリン)を注ぎ足す。
D13及び16
5.RPMI/20SR(0.5ml)+LF(ウェル当たり100ngHGF+20ngエキセンジン4+100ngB−セルリン)を注ぎ足す。
D20
6.すべてのMATRIGEL(商標)を、2mlのパスツールピペットを用いて、15mlファルコンチューブに集める。予備冷却したPBSを12mlまで注ぎ足す。よく混合してチューブを氷上に10分間置く。
7.低温室で、2500rpmで4分間回転させて、MATRIGEL(商標)を沈降させる。
8.上清培地を、非常に注意して、1mlブルーピペットで取り出す。MATRIGEL(商標)EBを撹乱しないこと。
9.予備冷却したPBSを12mlまで注ぎ足す。
10.低温室で、2500rpmで4分間、MATRIGEL(商標)EBを回転させて沈降させる。
11.MATRIGEL(商標)EBを、2mlパスツールピペットを用いて、1.5mlエッペンドルフチューブに移す。
免疫組織化学研究のための − パラフィン切片
1)穏やかに回転してEBペレットを得る。この回転は、EBの良好な形態を維持するために、穏やかで且つ短時間であることが必要である。
2)EBを4%PFA(パラホルムアルデヒド)で2〜4時間、室温で、1.5mlエッペンドルフチューブ内で固定する。
3)PBSで3回洗う(各5分)。
4)穏やかに回転させてEBペレットを沈降させる。
5)1.5%アガロースを60℃で溶融させる。
6)EBを、50〜100μlの溶融アガロースで注意して急速に再懸濁させる。
7)エッペンドルフチューブを氷上に数分間置いて、アガロースを凝固させる。
8)試料を、パラフィン包埋の準備をする。
免疫組織化学研究のための − 冷凍切片
1)穏やかに回転してEBペレットを得る。この回転は、EBの良好な形態を維持するために、穏やかで且つ短時間であることが必要であることに注意されたい。
2)型成形する。
3)EBを、注意して、50〜100μlの凍結溶液で再懸濁化する。泡を発生させないこと。
4)EB溶液を型に注意して加える。泡を立てないこと。
5)試料を、液体窒素中で凍結させる。
6)試料を、−70℃又は−20℃で貯蔵する。
7)試料を、冷凍切片のために準備する。注意:固定ステップから、スライドが、開始に必要である。
RNA抽出の準備
EBペレットを得るための高速度の利用。(Qiagen キットのプロトコール又はTrizolプロトコールを参照されたい)
注意:
1.幾らかのEBは、RTL溶解緩衝液によって、激しくピペッティングを行なっても、非常によく溶解しないことがありうる。この場合には、RLT溶解物又はTrizol溶解物を、−70℃に、少なくとも数時間維持してから抽出する方がよい。この凍結解凍のサイクルが、溶解を助成するようである。
2.Trizol法は、2倍を上回る最終RNA収量を与える。しかしながら、DNA切断ステップを通る必要があり、DNアーゼ処理ステップは、ゲノムDNAをきれいに除くために、1時間であるのが好適である。
最初の20日間プロトコール後の培養条件は、成熟手順として参照されよう(該条件下では、pdx−1発現細胞は、一層成熟したインスリン産生細胞集団に向かうように指示される)。20日目EBを、それらのRPMI−MATRIGEL(商標)培養物から、遠心分離及び冷PBS洗浄によって取り出して、基礎培地(DMEM/F12、17mMグルコース(Glc)、2mM グルタマックス、8mM HEPES、2%B27サプリメント、及び1×pen/strep)に移した(ベータ細胞の回復及び生存を促進すると考えられる)。26日目に、これらの細胞を、更に、20ng/ml FGF−18及び2μg/mlヘパリンを補った同じ基礎培地で6日間にわたって培養した。32日目と36日目の間で、これらの細胞を、FGF−18(20ng/ml)、ヘパリン(2μg/ml)、EGF(10ng/ml)、TGFα(4ng/ml)、IGF−I(30ng/ml)、IGF−II(30ng/ml)及びVEGF(10ng/ml)を補った基礎培地で培養した。36日目に、これらのEBを、フィブロネクチンコート(10μg/ml)した組織培養プレートに、新しい培地混合物(RPMI+グルコース(11mM)、FBS(5%)、グルタマックス(2mM)、HEPES(8mM)、1×pen/strep、フォルスコリン(10μM)、HGF(40ng/ml)、及びPYY(200ng/ml))中にプレートした。最終ステージ(40〜44日目)は、CMRLベースの培地(グルコース(5mM)、グルタマックス(2mM)、pen/strep(1×)、エキセンジン4(100ng/ml)及びニコチンアミド(5mM)を補足)中の培養物よりなった。一層詳細なESI 3DMATRIGEL(商標)プロトコール+分化プロトコールは、下記の通りである:
細胞:hES細胞(優先的に、hES3)を、コラゲナーゼによって消化する(2×p100集密皿から一枚の6ウェル皿へ)。
プレーティング:細胞を、先ず、6ウェルの低付着性プレートに、MATRIGEL(商標)中に分配して、RPMI−SR中のQC「MATRIGEL(商標)EBプロトコール」に従って3D培養を開始する。20日後に、細胞を、低付着性皿に再プレートし;更なる16日後に、細胞を、フィブロネクチンコートした標準6ウェルプレートにプレートする。
サンプリング:(A)RNAを、3DMATRIGEL(商標)プロトコールの20日目に、一つのウェルから集め;(B)上清を、マルチステップ成熟プロトコールの開始から、各培地交換の前及び24時間後に集め(一回のELISAに10μlが必要であり、100μlの培地を採って、−20℃に維持する)、(C)RNAを、45日目にウェルから集める。
用いる培地及び成長因子処理:
1.10日間3DMATRIGEL(商標)プロトコールw/EF=D0−D10(開始プロトコール−EFフェーズ)
2ml/ウェル 1/6MATRIGEL(商標)(RPMI−SR培地中):RPMI、20%SR、1×ペニシリン/ストレプトマイシンプラス1×50ng/ml 各々、アクチビンA、BMP2、BMP4、ノーダル培地をD3及びD6に供給(500μlのRPMI/20SRと2×GF濃縮物を加える)
10日目:培地交換;培地を1mlピペットを用いて、解剖顕微鏡下で、非常にゆっくりと注意して取り除く。MATRIGEL(商標)細胞を吸い取らないこと。3mlのRPMI−SRを加えて、1時間インキュベーター中で平衡化させてから、再び取り出して、新しい培地を後期GFと共に与える。
2.10日間3DMATRIGEL(商標)プロトコール(LF使用)=D10−D20(−LFフェーズ)
2ml/ウェル1/6MATRIGEL(商標)(RPMI−SR培地中):RPMI、20%SR、ペニシリン/ストレプトマイシン1×50ng/mlベータセルリン、50ng/ml HGF、10ng/mlエキセンジン4、10mMニコチンアミド培地をD13及びD16に供給(500μlを2×GF濃縮物と共に加える)。
D21 − 低付着性プレートへの再プレーティング:細胞を600gで4分間回転する。(スウィングバケット);注意して、ピペットを用いてMATRIGEL(商標)を取り出し;新しい培地に再懸濁させる。一RNA試料を集める(=3D用の+対照)。
3.6日間ステップ1 マルチステップ成熟プロトコール − D20−D26
2ml/ウェル基礎培地のみ、GFなし:DMEM/F12、17mM Glc、2mM Glutamax、8mM HEPES、2%B27、ペニシリン/ストレプトマイシン1× D23に培地交換(細胞を600gで4分間、スウィングバケットにて回転させ、新しい培地を与える)。
4.6日間ステップ2 マルチステップ成熟プロトコール − D26−D32
2ml/ウェル基礎培地+20ng/ml FGF−18、2μg/mlヘパリン D29に培地交換(細胞を600gで4分間、スウィングバケットにて回転させ、新しい培地を与える)。
5.4日間ステップ3 マルチステップ成熟プロトコール − D32−D36
2ml/ウェル基礎培地+20ng/ml FGF−18、2μg/mlヘパリン、10ng/ml EGF、4ng/ml TGF−α、30ng/ml IGF−I、30ng/ml IGF−II、10ng/ml VEGF D34に培地交換(細胞を600gで4分間、スウィングバケットにて回転させ、新しい培地を与える)。
D36 − フィブロネクチン上への再プレーティング:6ウェルプレートを、10μg/mlフィブロネクチン(PBS中)で1時間コートし、RPMI−SRで2回洗い、新しい培地中の細胞をコートされたプレートにプレートする。
6.6日間ステップ4 マルチステップ成熟プロトコール − D36−D40
2ml/ウェルの新しいRPMI培地:RPMI+11mM Glc、5%FBS、2mM Glutamax、8mM HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン(1×)、10μMフォルスコリン、40ng/ml HGF、200ng/ml PYY。
D38に培地交換(細胞の、フィブロネクチンに付着してない部分を600gで4分間、スウィングバケットにて回転させ、付着している細胞には、乾燥を避けるために1mlの新しい培地を与え、回収された細胞を新しい培地に与える)。
7.4日間ステップ4 マルチステップ成熟プロトコール − D40−D44
2ml/ウェルの新しいCMRL培地+5mM Glc、5%FBS、2mM Glutamax、 ペニシリン/ストレプトマイシン 100ng/ml エキセンジン4、5mMニコチンアミド。D42に培地交換(6で説明した通り)。
組織の処理及び包埋:胚様体を、3DMATRIGEL(商標)から、全培養物を15mlファルコンチューブに移して、氷上で冷却することによって分離した。これらのEBを、スウィングバケットローターにて遠心分離(1500RPM)することによりペレット化した。この細胞ペレットを、次いで、2回、氷冷PBSですすぎ、類似の仕方で遠心分離して、残留MATRIGEL(商標)を除去した。EBを、4%パラホルムアルデヒド中で4時間にわたって固定し、PBSにて2回すすぎ、次いで、70%エタノール中で4℃で貯蔵した。次いで、EBを、標準的な脱水/浄化/パラフィン包埋プロトコールを利用して、Leica TP1020自動組織プロセッサーを用いてパラフィン中に包埋した(70%、95%、100%エタノールにそれぞれ1時間を2回、その後、キシレンに1時間を2回、そしてパラフィンに1時間を4回)。切片を5μmに切り、最後の免疫組織化学又はイン・シトゥーハイブリダイゼーションのために長期間4℃で保存した。膵臓組織を、同様に、但し延長させた固定で調製した。
免疫組織化学:免疫染色を、標準的プロトコールに従って、ベクターシールドカラロメトリック(DAB)検出キットを利用して行なった。スライドガラスを先ずキシレン中で脱ワックスし(2×10分)、次いで、標準エタノールシリーズで脱水した(100%、95%、90%、70%エタノール、次いで、PBSにて2回)。抗原回復のために、スライドガラスを、10mM クエン酸ナトリウム溶液中でゆっくり95℃まで暖めた(慣用のマイクロ波の解凍セッティングにて約9分間)。これらのスライドガラスを、次いで、ゆっくり室温まで冷却し(約30分間)、PBSにて2回すすいだ。内因性ペルオキシダーゼ活性を、3%H22中で20分間インキュベートした後、PBSにて2回すすぐことにより消した。これらのスライドガラスを、1% BSA及び5% 血清(二次抗体が由来する種に対応するもの)を含むPBS中で、1時間、ブロックした。一次抗体を、次の濃度に希釈した:ウサギ抗Pdx−1(1:30,000)、モルモット抗Pdx−1(1:2000)、及びヤギ抗Pdx−1(1:40,000)。Cペプチド免疫染色のために、ウサギ抗ヒトCペプチド(Linco Research, ロット#81(1P))抗体を、1:5000希釈で用いた。スライドガラスを、希釈した一次抗体と一晩インキュベートした。翌日、それらのスライドガラスをPBSにて2回すすぎ、ビオチン化ヤギ抗ウサギ二次抗体を室温で1時間加えた。PBSでの3回のすすぎの後に、ABC混合物(Vectashields)を、これらの切片(20μl/ml試薬Aと20μl/ml試薬BをPBS中で混合することにより調製)の上に30分間置き、次いで、3回のPBS洗浄によりすすぎ、その後、DAB基質(Vector Laboratories, SK-4100)を加えた。この色彩反応を、顕微鏡観察により近くからモニターし、そのスライドガラスを水に浸してから1×PBSで一回すすぐことにより停止させた。これらの切片を、次いで、脱水して、キシレン(Sigma)中で、標準的プロトコールを用いて清浄化してから、キシレンベースの永久マウント用媒質(DPX中性マウンティング媒質、Sigma)中にマウントした。
RNAの単離、cDNAの合成及び定量的PCR:分化の様々なステージのhESC又はEBからの全RNAを、Qiagen RNeasy キットを利用して単離し、又はTrizol試薬(Invitrogen)を、製造業者の指示に従って用いて調製した。RNAをUV吸収により定量した。1〜5μgのRNAをDNアーゼI処理して、M−MuLV逆転写酵素(New England Biolabs)を用い、オリゴdT又はランダムヘキサマープライマーを用いて、製造業者の指示に従ってcDNAに変換した。定量的PCRを、製造業者の指示に従って、BioRad iCyclerを用いて、250nMの各プライマー及び1×SYBRグリーンマスター混合物(Bio-Rad)を含む反応当たり約50ngのcDNAを用いて行ない、Bio-RAD サーモサイクラーにより分析した。
下記の条件を用いた:
定量的PCR反応:
2×マスター混合物 15μl
プライマー(各) 100nM
テンプレート 25ng
2O 30μlまで
40サイクルの:
30秒間95℃ − 変性
30秒間55℃ − アニーリング
60秒間72℃ − 伸張
プレートセットアップ:
各未知試料につき、下記を含む:
3つの複製物(同じRT反応からのもの)。
1試料(同様に処理したが、RT酵素がRT反応に含まれていない(RTなし対照)もの)。これは、ゲノム又はその他の夾雑物(例えば、以前のPCR反応がピペットノズルに未だ残っているなど)に対する対照である。これは、Ct=35前には、シグナルを生成しないはずである。
下記の表の遺伝子について、2つの複製物は、2つの陽性対照の各々を含んでいる。反応当たり、各陽性対照10μlを使用。これらは、その標識量が、10μlの溶液に含まれるように調製される。
Figure 2008528038
遺伝子発現の分析
1)エクセルスプレッドシートへの切断及び貼付け(又は輸出)データ
2)グラフCt(Y)対標準曲線の量(X)。X軸を対数スケールLog(X)に変換する。方程式Y=傾き*Log(X)+Y切片を得る。「オプション」下で、方程式及びR2値は、チャート上に含まれる。
3)未知試料のインプットを、下記の方程式を利用して測定する(これは、エクセルスプレッドシートにて用意することができる)。
4)インプット=10^((Ct値−y切片)/傾き)。
5)遺伝子発現の内部対照(GAPDH又はβ−アクチン)につきこの手順を繰り返す
6)この遺伝子及び内部対照遺伝子についての3つの複製物の平均インプット値を計算する。
7)あなたの遺伝子の規格化された発現を、次ぎの方程式を利用して計算する:規格化された発現=遺伝子のインプット値平均/内部対照遺伝子のインプット値平均。
8)あなたの遺伝子の相対的発現を計算する:一つの実験条件を比較試料としてセットする(例えば、未処理又は時間=0)。相対的発現=未知の規格化された発現/比較の規格化された発現。
質対照 −
(a)陽性対照からあなたが生成した曲線の傾きは、大体、下記のチャートの標準曲線における傾きに等しいはずである。そうでなければ、新鮮なプライマー混合物と標準曲線試薬を調製されたい。傾きを比較するためには、同様にして、傾向線を生成しなければならない。ここで生成された傾きは、フェムトグラムで量を利用する。
(b)未知試料のCt値は、陽性対照により与えられたCt値の間にあるはずである。そうでなければ、これらの結果は、このアッセイの感度範囲の外にある。
標準曲線を、標的PCR増幅物の一連の100倍希釈物(反応当たり104fgから1fgの範囲)のlog(fgの濃度)を対応するCt閾値に対してプロットすることにより生成した。規格化した発現は、次ぎの方程式によって決定された:規格化された発現=(標的遺伝子のインプット/アクチン対照のインプット)(ここに、インプットは、((閾値サイクル(Ct値)−標準曲線のY切片)/標準曲線の傾き)のlogの逆数として計算される)。
下記の特異的プライマー対を利用した:
Figure 2008528038
CペプチドELISA:条件化培地におけるCペプチド濃度を、市販の抗Cペプチドコートされたプレート(LINCO research)を製造業者の推薦に従って、ELISAによって測定した。
リボプローブ合成:テンプレートプラスミドを、HindIII(アンチセンス)又はBamHI(センス)により線状化してから、精製した(Qiagen Qiaquick スピンカラム)。回収したDNAテンプレートの1.5μgを、対応するRNAポリメラーゼ(Promega)、ヌクレオチド(DIG RNA 標識混合物 − 10mM ATP、CTP、GTP(各)、6.5mM UTP、3.5mM DIG−11−UTP)、1×転写緩衝液(1×)、及び25ユニットのRNAsin(Promega)を含む合成反応で利用した。RNAプローブを、0.1容の4M LiCl及び2.5容の100%エタノールの添加により沈殿させて、−20℃で一晩インキュベートした。次いで、試料を、13,000rpmで30分間4℃で遠心分離した。その上清を捨てて、ペレットを、70%エタノール:30%DEPC−H2Oで洗い、15分間再遠心分離した。その上清を取り出して、ペレットを乾燥させた。プローブを、典型的には、50μlのDEPC−H2Oに再懸濁させ、アリコートをとって、−80℃に貯蔵した。
イン・シトゥーハイブリダイゼーション:EBを、メタノール:PBT洗液の下降シリーズ(75%、50%帯25%メタノール)にて再水和した。PBTは、1×PBS−DEPCプラス0.1%Tween−20から調製される。EBを、6%H22(PBT中)中で1時間インキュベートしてから、PBTにて3回すすいだ。次いで、EBを5分間、10μg/mlプロテイナーゼK(PBT中)で処理して、2mg/mlグリシン(PBT中)で5分間洗い、その後、更に2回PBTで洗って(各5分)、4%パラホルムアルデヒド(Sigma)/0.2%グルタルアルデヒド/PBT中で、室温で20分間にわたって再固定した。EBを、ハイブリダイゼーション溶液(50%脱イオン化ホルムアミド(Ambion)、5×SSC、0.1% Tween−20(Sigma)、0.1%SDS(Sigma)、50μg/mlヘパリン(Sigma)、50μg/ml酵母tRNA、60mMクエン酸(DEPC処理したH2O中))中で70℃で少なくとも2時間インキュベートした。次いで、ハイブリダイゼーション溶液を、50〜100ngのDIG標識したリボプローブを含む新鮮な溶液で置き換えて、揺動プラットフォーム上で70℃で一晩インキュベートした。次の日に、EBを、5分間、70℃に予備加温した溶液I(50%ホルムアミド、5×SSC、60mM クエン酸、及び1% SDS(DEPC処理したH2O中))中で洗った。EBを、溶液Iで、2回より多く(各30分)、70℃で洗い、溶液Iで、1回(30分)、65℃で洗った。次いで、EBを、溶液II(50%ホルムアミド、2×SSC、24mMクエン酸、0.2%SDS、及び0.1%Tween−20(DEPC処理したH2O中))で3回(各30分)、65℃で洗った。EBを、室温まで冷却して、マレイン酸緩衝液(100mMマレイン酸(Sigma)、170mM NaCl(Sigma)、0.1%Tween−20及び2mM レバミソール、pH7.5、NaOH含有)(MAB)にて3回(各5分)洗った。次いで、EBを、90分間、室温で、ブロッキング溶液(MAB、2%Boehringer Mannheimブロッキング試薬、10%熱不活性化ヒツジ血清)中でインキュベートした。次いで、ブロッキング溶液を、予備吸着させたアルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗ジゴキシゲニン抗体(Roche)を含む新鮮なブロッキング溶液で置き換えて、揺動プラットフォーム上で4℃で一晩インキュベートした。1ml当たり2μlの抗体を、2%Boehringer Mannheimブロッキング試薬、1%熱不活性化ヒツジ血清及び3mgヒトEBアセトン粉末を含むMAB中での、4℃で90分間のインキュベーションによって予備吸着させて、10分間、4℃で遠心分離した。EBを、3回(各5分)及び5回(各60〜90分)、MAB中で、室温で洗い、次いで、一晩、MAB中で、4℃でインキュベートした。次の日、EBを、3回(各10分)、AP緩衝液(100mMトリス−HCl、100mM NaCl、50mM MgCl2、0.1%Tween−20及び2mMレバミソール)中で洗った。次いで、EBを、NTMTアルカリホスファターゼ染色緩衝液(3.5μl/ml NBT及び3.5μl/ml BCIPを含むAP緩衝液)中で又はアルカリホスファターゼ染色緩衝液(BMパープル、Boehringer Mannheim)中で、沈殿反応が完結するまでインキュベートした。反応を、停止溶液(PBT中の2mM EDTA)の添加により停止させた。
Figure 2008528038

Figure 2008528038

Figure 2008528038
本発明の実施は、別途示さない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、ウイルス学、組換えDNA、及び免疫学の慣用技術(これらは、当業者の技能範囲内にある)を利用する。かかる技術は、文献に記載されている。例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第三版(Sambrook及びRussell編(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 2001);学術論文、Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Using Antibodies, 第二版、Harlow 及び Lane, Cold Spring Harbor Press, New York, 1999;Current Protocols in Cell Biology, Bonifacino, Dasso, Lippincott-Schwartz, Harford及びYamada編、John Wiley and Sons, Inc., New York, 1999)を参照されたい。
すべての刊行物、特許及び特許出願を、参考として、それらが、個々にそっくりそのまま援用されると示されたかのように、そっくりそのまま、本明細書中に援用する。
同等物
当業者は、ここに記載したこの発明の特定の具体例に対する多くの同等物を認識し、又は日常的実験を用いて確認することができるであろう。かかる同等物は、後記の請求の範囲に包含されるものである。
胚様体形成により自発的に分化させたヒトの胚性幹細胞のRT−PCR分析の結果を示している図である。 幹細胞の分化した膵臓細胞への分化を指示する方法の図式表示を示している図である。 hES3を、MATRIGEL(商標)中で、3Dで胚様体として、懸濁培養した実験の結果をまとめた図である。 マウス胚性幹細胞の特定の内胚葉性細胞系統に沿った指示された分化を示している図である。 初期膵臓マーカーのpdx−1が、ヒト胚性幹細胞株hES2から形成された胚様体において経時的に増加したことを示している図である。 TGFβファミリー成長因子の胚様体への添加が、培養において、pdx−1の発現を増大させることを示している図である。 特定の内胚葉性細胞系統に沿った指示された分化を示している。 胚様体をMATRIGEL(商標)中で懸濁3D培養した場合の、培養中の様々な時点における胚性幹細胞におけるpdx−1発現を示している図である。 ある条件の組合せの下で分化した胚性幹細胞におけるpdx−1及びインスリンの発現を示している図である。 ある条件の組合せの下で分化した胚性幹細胞におけるpdx−1及びインスリンの発現を示している図である。 イン・ビトロでの、胚性幹細胞の指示された分化中の、内胚葉性及び膵臓の遺伝子の発現の速度論を示している図である。 イン・ビトロでの、胚性幹細胞の指示された分化中の、遺伝子発現の一過性のパターンの詳細な分析を示している図である。 初期及び後期因子の種々の組合せの、pdx−1発現の誘導に対する効果を調べるためにデザインされた実験の結果をまとめた図である。 ノーダルの、pdx−1発現の誘導に対する効果を示している図である。 アクチビン及びBMP4タンパク質濃度の、pdx−1発現の誘導に対する効果を示している図である。 アクチビン及びBMP4タンパク質濃度の、幾つかのエンドクリン遺伝子の発現の誘導に対する効果を示している図である。 2EF−3LF初期分化プロトコール(パネルC及びD)が、4EF−4LF初期分化プロトコール(パネルA及びB)よりも一層有効にpdx−1発現を誘導することを示している図である。 pdx−1発現とその後の、初期分化フェーズ及び成熟フェーズの両方を含む拡大した分化プロトコールを用いて分化させた胚性幹細胞の代表的クラスターからのCペプチドの放出を示している図である。 Cペプチドの、この拡大した分化プロトコール中の、様々なステージにおいてアッセイしたクラスターからの放出を示している図である。 イン・シトゥーハイブリダイゼーションによる、インスリンの発現を示している図である。 免疫細胞化学による、45日目の胚様体におけるCペプチドタンパク質発現を示している図である。 イン・シトゥーハイブリダイゼーションによるpdx−1発現を示している図である。 Cペプチド放出を生じる多段階成熟プロトコールの2つの変法を示している図である。 多段階プロトコールの変法を用いた場合のCペプチドの放出を示している図である。 多段階成熟プロトコールのステップ4におけるフォルスコリンのCペプチドの放出に対する効果を示している図である。 多段階プロトコールのステップ4におけるウシ胎児血清(FBS)のCペプチドの放出に対する効果を示している図である。 用いたプロトコール(図27A)、グルコース濃度の、分化したHES3細胞に対する効果(Cペプチド(図27B)、pdx−1 mRNA(図27C)及びインスリン mRNA(図27D)の放出により測定)を示している図である。 分化したHES3胚様体における、一本鎖及び二本鎖免疫組織化学による、Pdx−1及びCペプチドの発現を示している図である。 成長因子、様々な後期因子及び初期因子の存在下及び非存在下でのMATRIGEL(商標)分化の20日目におけるPdx−1の発現を示している図である。 Pdx−1の、MATRIGEL(商標)の存在下及び非存在下での、0日目及び10日目における発現を示している図である。 Cペプチドの、単純化した多段階成熟プロトコールを用いた場合の、26日目及び29日目における放出を示している図である。 インスリン及びCペプチドの存在を、切片化した胚様体において、免疫蛍光法により示している図である。 β−細胞エンドクリン細胞系統の分化のマーカーであるPdx−1及びNkx6.1の発現を示している図である。

Claims (42)

  1. 胚性幹(ES)細胞の、膵臓細胞系統への指示された分化のための方法であって、該方法は、それらのES細胞を、十分な期間にわたって、十分な量のアクチビンA、BMP2、BMP4、又はノーダルから選択する少なくとも一種の初期因子(EF)と接触させることを含み、該膵臓細胞系統の細胞が、膵臓細胞系統のマーカーを発現し且つ/又は膵臓細胞系統の機能を示すことを特徴とする、当該方法。
  2. 膵臓細胞系統の細胞が、Pdx−1及び/若しくはインスリンを発現し、及び/又はグルコースに応答性であり、及び/又はCペプチドを分泌するものである、請求項1に記載の方法。
  3. 膵臓細胞系統の細胞が、インスリン産生細胞である、請求項2に記載の方法。
  4. ES細胞を、胚様体(EB)として培養し、支持マトリクス上に直接プレートし、及び/又は組織培養プレート上に直接プレートする、請求項1に記載の方法。
  5. EBを、浮遊懸濁培養で、支持マトリクス中で、及び/又はフィルター上で培養する、請求項4に記載の方法。
  6. EBを、EBがEFと接触する期間だけ、支持マトリクス中で培養する、請求項4に記載の方法。
  7. 支持マトリクスが、MATRIGEL(商標)である、請求項4に記載の方法。
  8. EBを、MEF(マウス胎児フィーダー)若しくは他のフィーダー層上で成長させたES細胞から、又はフィーダーなしの条件下で成長させたES細胞から生成する、請求項4に記載の方法。
  9. ES細胞が、ヒトES細胞である、請求項1に記載の方法。
  10. ES細胞が、マウスES細胞である、請求項1に記載の方法。
  11. ES細胞が、膵臓細胞系統に、部分的に又は最終分化する、請求項1に記載の方法。
  12. ES細胞を、EFと、約15日にわたって接触させる、請求項1に記載の方法。
  13. EFが、アクチビンA及びBMP4を含む、請求項1に記載の方法。
  14. EFが、約50ng/mLのアクチビンA及び約50ng/mLのBMP4を含む、請求項1に記載の方法。
  15. ES細胞を、EFとの接触後に、十分量の少なくとも一種の後期因子(LF)と第2の十分な期間にわたって接触させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
  16. 少なくとも一種のLFが、HGF、エキセンジン4、ベータセルリン、及びニコチンアミドである、請求項15に記載の方法。
  17. 少なくとも一種のLFが、約50ng/mLのHGF、約10ng/mLのエキセンジン4、及び約50ng/mLのβ−セルリンを含む、請求項15に記載の方法。
  18. ES細胞を、EFと、約10日間にわたって接触させ、その後、LFと、約10日間にわたって接触させる、請求項15に記載の方法。
  19. EFが、約50ng/mLのアクチビンA及び約50ng/mLのBMP4を含み、LFが、約50ng/mLのHGF、約10ng/mLのエキセンジン4、及び約50ng/mLのβ−セルリンを含む、請求項18に記載の方法。
  20. ES細胞を、開始プロトコール後、成熟プロトコール中に、連続的に、下記と接触させることを更に含む、請求項15に記載の方法:
    (1)基礎培地と約6日間;
    (2)約20ng/ml FGF−18、及び約2μg/mlヘパリン(基礎培地中)と約5〜6日間;
    (3)約20ng/ml FGF−18、約2μg/mlヘパリン、約10ng/ml EGF、約4ng/ml TGFα、約30ng/ml IGF1、約30ng/ml IGF2、及び約10ng/ml VEGF(基礎培地中)と約4〜5日間;
    (4)約10μMフォルスコリン、約40ng/ml HGF、及び約200ng/ml PYYと約3〜4日間;及び
    (5)約100ng/mlのエキセンジン4及び約5mMのニコチンアミドと約3〜4日間。
  21. ES細胞を、ステップ(1)と(2)の間で、ディスパーゼにより解離させない、請求項20に記載の方法。
  22. 培地中のFBS(使用する場合)を、化学的に限定された血清代用品(SR)で置き換える、請求項20に記載の方法。
  23. ES細胞を、EF及びLF処理後、成熟プロトコール中に、約10μMフォルスコリン、約40ng/ml HGF、及び約200ng/ml PYYと約3〜4日間にわたって接触させることを更に含む、請求項15に記載の方法。
  24. ES細胞を、成熟プロトコール中、フィブロネクチンコートした組織培養表面上で成長させた、請求項23に記載の方法。
  25. 分化した細胞が、Cペプチドを放出し且つ/又はグルコース刺激に応答性である、請求項23に記載の方法。
  26. 培地中のFBS(使用する場合)を、化学的に限定された血清代用品(SR)で置き換える、請求項23に記載の方法。
  27. ES細胞を、EFと接触させた後、成熟プロトコール中に、下記と、連続的に接触させることを更に含む、請求項1に記載の方法:
    (1)約20ng/ml FGF−18及び約2μg/ml ヘパリン(基本培地中)と約8日間;
    (2)約20ng/ml FGF−18、約2μg/ml ヘパリン、約10ng/ml EGF、約4ng/ml TGFα、約30ng/ml IGF1、約30ng/ml IGF2、及び約10ng/ml VEGF(基本培地中)と約6日間;そして
    (3)約10μM フォルスコリン、約40ng/ml HGF、及び約200ng/ml PYYと約5日間。
  28. 分化した細胞が、Cペプチドを放出する、請求項27に記載の方法。
  29. ステップ(1)を6日間続け、ステップ(2)及び(3)をそれぞれ4日間続ける、請求項27に記載の方法。
  30. 請求項1に記載の方法により得られた分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  31. 請求項2に記載の方法により得られた分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  32. 部分的に分化した、請求項31に記載の分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  33. 最終分化した、請求項31に記載の分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  34. インスリン産生細胞の機能を全体的又は部分的に真似る、請求項31に記載の分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  35. 請求項15に記載の方法により得られた分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  36. 請求項20に記載の方法により得られた分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  37. 請求項23に記載の方法により得られた分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  38. 請求項27に記載の方法により得られた分化した膵臓細胞系統の細胞又は細胞培養物。
  39. 個人において、害された膵臓機能により特徴付けられる膵臓の病気、傷害、又は状態を治療し又は予防するための方法であって、該個人に、請求項30に記載の分化した膵臓細胞系統の細胞を投与することを含む当該方法。
  40. 害された膵臓機能が、害された、冒された個人においてグルコース代謝を適当に調節する能力を含む、請求項39に記載の方法。
  41. 状態が、I型又はII型糖尿病である、請求項39に記載の方法。
  42. この病気、傷害、又は状態の治療又は予防に有効な少なくとも一つの更なる治療と共に実施する、請求項39に記載の方法。
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