JP2008256020A - 車輪用転がり軸受装置の密封構造 - Google Patents

Abstract

【課題】ハブホイールのフランジ部の根元に形成される、シール部材が摺動する摺動面の加工公差を少なくすることにより、シール部材のしめしろを安定化させた車輪用転がり軸受装置における密封構造を提供すること。
【解決手段】ハブホイール１におけるフランジ部１１と軸部１２とが結合する角部に、軸方向断面形状が直線状の傾斜平面５１が摺動面として形成されている。そして、転がり軸受２のフランジ部１１側の端部に取り付けられるシール部材６０は、アキシャルシールリップ６２，６３がこの傾斜平面５１に摺接するように構成されている。したがって、この傾斜平面５１から成る摺動面の加工公差は、従来の軸方向断面形状が円弧状の曲面が摺動面として設けられている場合に比し小さくなり、アキシャルシールリップ６２，６３のしめしろが安定化する。
【選択図】図２

Description

本発明は、自動車などの車輪に取り付けられる車輪用転がり軸受装置の密封構造、特に、ハブホイールのフランジ部近傍に形成されるシール部材による密封構造に関する。

自動車などの車輪に取り付けられる車輪用転がり軸受装置では、通常、車輪に取り付けられるフランジ部がハブホイールに形成されるとともに、ハブホイールの軸部に取り付けられる転がり軸受のシール部材がこのフランジ部の根元部の摺動面に摺動するように形成されている。このシール部材の構造の一例として、特許文献１に記載されている例を図４及び図５に示す。

この例に示す車輪用転がり軸受装置は、従動輪用のものであって、車輪に取り付けられるフランジ部１１を一端側に備え、他端側に軸部１２を備えたハブホイール１と、ハブホイール１の軸部１２の外周に形成されている２列の転がり軸受２とを備えている。

ハブホイール１は、フランジ部１１の軸部１２側の根元部にシール部材３０の摺動部となる周状肩部１３が形成されている。軸部１２は、この周状肩部１３に連接する一方の第１内輪側軌道２１が外周面に形成されている。また、軸部１２の端部は段部１４により小径軸部１５に形成され、この小径軸部１５に内輪２２が嵌合固定されている。この内輪２２の外周面には、他方の第２内輪側軌道２３が形成されている。

転がり軸受２は、内周面に２列の外輪側軌道２４を備え、外周面に図示しない車体の車軸ケースなどに取り付けられるフランジ部２５を備えた外輪２６を備えている。また、転がり軸受２は、この外輪２６に対応する内側部材が、前述の第１内輪側軌道２１を形成したハブホイール１の軸部１２と、第２内輪側軌道２３を備えた内輪２２とから構成されている。また、外輪２６と上記内側部材との間に形成される環状空間部２７の内部には、一方の外輪側軌道２４と第１内輪側軌道２１との間及び他方の外輪側軌道２４と第２内輪側軌道２３との間それぞれに保持器２８で保持された転動体２９が配置されている。また、環状空間部２７のフランジ部１１側の端部には環状空間部２７を密封するためのシール部材３０が外輪２６の内周面に嵌合固定された状態で装着されている。また、外輪２６のフランジ部１１の反対側の端部には環状空間部２７及び軸部１２の端部を覆うカバー２０が取り付けられている。

ところで、フランジ部１１側に取り付けられるシール部材３０によるシール構造は、図５に拡大して示すようになっている。フランジ部１１の軸部１２側の表面と、軸部１２の外周面とのコーナ部に形成された周状肩部１３に、軸方向断面が略円弧状の曲面１３ａが摺動面として形成されている（図５参照）。また、シール部材３０は、軸受外側に向いて周状肩部１３における摺動面としての曲面１３ａを摺動する第１ラジアルシールリップ３１と、軸受内側に向いて周状肩部１３における摺動面としての曲面１３ａに連接する軸方向に直線状に延びる外周面を摺動する第２ラジアルシールリップ３２とを備えている。さらに、シール部材３０は、周状肩部１３における曲面１３ａからフランジ部１１の側面に移行する付近の面、すなわち、軸方向断面で見て円弧状部又は円弧状部の終わりから直線部にかけて摺動するアキシャルシールリップ３３とを備えている。
特開平１１−２１０７７０号公報

上記のように、従来の転がり軸受２のフランジ部１１側の端部に装着されるシール部材３０は、アキシャルシールリップ３３が周状肩部１３における摺動面としての曲面１３ａ又はその終わりから平面にかけて接触するように形成されていた。ところが、摺動面としての曲面１３ａを製作する加工機の加工公差は摺動面としての平面を加工する場合に比しどうしても大きくなる。このため、アキシャルシールリップ３３のしめしろは、アキシャルシールリップ３３が平面状の摺動面に摺動する場合に比し不安定になりやすい。したがって、使用が長期間にわたる場合に想定外の使用によりしめしろが想定外の値に変化する恐れがある。

本発明は、このような事情に鑑み成されたものであって、ハブホイールのフランジ部の根元に形成される、シール部材が摺動する摺動面の加工公差を小さくすることにより、シール部材のしめしろを安定化させた車輪用転がり軸受装置における密封構造を提供するものである。

本発明の車輪用転がり軸受装置の密封構造は、一端側に車輪が取り付けられるフランジ部が形成されるとともに、他端側に軸部が形成されたハブホイールと、ハブホイールの軸部の外周側に取り付けられた転がり軸受とを備え、前記ハブホイールは、前記フランジ部と軸部とが結合する角部に、軸方向断面が直線状の傾斜平面を摺動面として有し、前記転がり軸受は、外周面で車体に取り付けられるとともに、内周面に外輪側軌道が形成された外輪と、ハブホイールの軸部の外周側に取り付けられるとともに、前記外輪側軌道に対向する内輪側軌道を備えた内側部材と、外輪と内側部材との間に形成される環状空間部のフランジ部側端部において、外輪の内周面に嵌合固定されたシール部材とを有し、さらに、このシール部材は、前記傾斜平面に摺接するアキシャルシールリップを有することを特徴とする。

本発明の車輪用転がり軸受装置の密封構造によれば、ハブホイールにおけるフランジ部と軸部とが結合する角部に、軸方向断面形状が直線状の傾斜平面が摺動面として形成され、転がり軸受のフランジ部側の端部に取り付けられるシール部材は、アキシャルシールリップがこの傾斜平面に摺接するように構成されている。したがって、摺動面の加工公差は、従来のように曲面からなる摺動面の場合に比し小さくなり、アキシャルシールリップのしめしろが安定する。このため、使用が長期間にわたる場合において、想定外の使用によりしめしろが想定範囲外になるような恐れが緩和される。

また、上記のような構成において、径方向に間隔を置いて前記傾斜平面に摺接する複数枚のアキシャルシールリップを有するものとしてもよく、高い泥水シール性能が要求される場合には、このようの構成することが好ましい。

本発明によれば、転がり軸受におけるハブホイールのフランジ部側の端部に取り付けられるシール部材のしめしろが安定し、耐久性が向上する。

以下、本発明の実施の形態について図１及び図２に基づき説明する。図１は、本発明の実施の形態に係る車輪用転がり軸受装置の断面図である。図２は同車輪用転がり軸受装置におけるシール部材周りの拡大図である。なお、図１及び図２において、図４及び図５に示した従来のものと同一又は相当する個所には同一の符号を付し、それについての説明を簡略化する。

本実施の形態に係る車輪用転がり軸受装置は、図１に示すように、従来のものと同様、ハブホイール１と複列（２列）の転がり軸受２とを備えている。
ハブホイール１は、一端側に車輪に取り付けられるフランジ部１１を備え、他端側に軸部１２を備えている。また、ハブホイール１は、フランジ部の軸部１２側の根元部、すなわち、軸部１２とフランジ部１１とが結合する角部にシール部材６０の摺動部となる周状肩部５０が形成されている。この周状肩部５０は、図２に示すように、従来のように曲面を摺動面としたものと異なり、軸方向の断面が直線状を成す傾斜平面５１が摺動面として形成されている。なお、この傾斜平面５１の両端は軸部１２の外周面及びフランジ部１１の軸部１２側の表面に小さな曲線部を介し連接されている。なお、軸部１２には、従来のものと同様に、第１内輪側軌道２１が外周面に形成されるとともに、軸部１２の端部を成す小径軸部１５には、外周面に第２内輪側軌道２３を備えた内輪２２が嵌合固定されている。

転がり軸受２は、外輪２６、この外輪２６に対向する内側部材、転動体２９、保持器２８、シール部材６０などから構成されている。シール部材６０を除く構成は従来のものと同一である。したがって、外輪２６内周面に２列の外輪側軌道２４が形成されている。また、内側部材は、前述の第１内輪側軌道２１を形成した軸部１２と第２内輪側軌道２３を備えた内輪２２とから構成されている。また、外輪２６のフランジ部１１の反対側の端部には、従来のものと同様にカバー２０が取り付けられている。

シール部材６０は、図２に示すように、芯金６１にゴム等の弾性部材を固着したものである。弾性部材は、径方向に間隔を置いて配置された外周側のアキシャルシールリップ６２と内周側のアキシャルシールリップ６３と、周状肩部５０における軸心に平行な軸部１２の外周面に摺接するラジアルシールリップ６４とから構成されている。径方向に間隔を置いて配置された２枚のアキシャルシールリップ６２，６３は、前述の傾斜平面５１に摺接するように構成されている。このシール部材６０は、前述の従来のシール部材とは異なるが、基本構造は公知のものでよい。但し、アキシャルシールリップ６２，６３が前述の傾斜平面５１に摺動するように構成されたものとする。

本実施の形態は以上のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
（１）本発明の車輪用転がり軸受装置の密封構造によれば、ハブホイール１におけるフランジ部１１と軸部１２とが結合する角部に、軸方向断面形状が直線状を成す傾斜平面５１が摺動面として形成されている。そして、転がり軸受２のフランジ部１１側の端部に取り付けられるシール部材６０は、アキシャルシールリップ６２，６３が傾斜平面５１に摺接するように構成されている。したがって、本実施の形態における傾斜平面５１から成る摺動面の加工公差は、従来のように軸方向の断面形状が円弧状の曲面からなる摺動面の場合に比し、小さくなる。これにより、アキシャルシールリップ６２，６３のしめしろが安定する。このため、シール部材６０が長期間使用された場合において、アキシャルシールリップ６２，６３のしめしろが想定範囲外となる恐れが緩和される。

（２）また、本発明の車輪用転がり軸受装置の密封構造によれば、径方向に間隔を置いて複数枚（この場合２枚）のアキシャルシールリップ６２，６３が配置され、これらアキシャルシールリップ６２，６３がそれぞれ傾斜平面５１に摺接するように構成されているので、高い泥水シール性能を発揮することができる。

上記実施の形態に係る車輪用転がり軸受装置の密封構造は、次のように変形することもできる。
（１）前記実施の形態においては２枚のアキシャルシールリップ６２，６３が示されていたが、要求される泥水シール性能に対応してこの枚数を適宜増減してもよい。

（２）また、シール部材６０の構造は本発明の趣旨が生かされる限りにおいて、どのように変更してもよい。図３はその一例であって、前述の実施の形態に対してラジアルシールリップ６４の構造が変更されたものである。この構造のラジアルシールリップ６４には、ラジアルシールリップ６４を軸部の外周面に押し付ける力を強くするために、環状リング６５を嵌め込むＵ字状溝６６が形成され、このＵ字状溝６６に環状リング６５が嵌め込まれている。

（３）先の実施の形態においては、カバー２０が設けられていたため、転がり軸受２における環状空間部２７のフランジ部１１の反対側の端部にシール部材が取り付けられていない。しかし、このようなカバー２０が施されないものにおいては、前述のものと異なる従来公知のシール部材を設けてよいことは言うまでもない。

（４）先の実施の形態においては、複列アンギュラ玉軸受の例を示したが、円錐ころ、円筒ころ、球面ころ等の他の転動体を用いた車輪用転がり軸受装置に適用しても同様の効果が得られる。

（５）先の実施の形態においては、従動輪用の車輪用転がり軸受装置について例示したが、駆動輪用の車輪用転がり軸受装置においても同様に適用することができる。

本発明の実施の形態に係る車輪用転がり軸受装置の断面図である。 同車輪用転がり軸受装置におけるシール部材周りの拡大図である。 変形例に係るシール部材周りの拡大図である。 従来例に係る車輪用転がり軸受装置の断面図である。 同車輪用転がり軸受装置におけるシール部材周りの拡大図である。

符号の説明

１…ハブホイール、２…転がり軸受、１１…フランジ部、１２…軸部、２１…第１内輪側軌道、２３…第２内輪側軌道、２４…外輪側軌道、２６…外輪、２７…環状空間部、５１…傾斜平面、６０…シール部材、６２，６３…アキシャルシールリップ。

Claims (2)

1. 一端側に車輪が取り付けられるフランジ部が形成されるとともに、他端側に軸部が形成されたハブホイールと、ハブホイールの軸部の外周側に取り付けられた転がり軸受とを備え、
   前記ハブホイールは、前記フランジ部と軸部とが結合する角部に、軸方向断面が直線状の傾斜平面を摺動面として有し、
   前記転がり軸受は、外周面で車体に取り付けられるとともに、内周面に外輪側軌道が形成された外輪と、ハブホイールの軸部の外周側に取り付けられるとともに、前記外輪側軌道に対向する内輪側軌道を備えた内側部材と、外輪と内側部材との間に形成される環状空間部のフランジ部側端部において、外輪の内周面に嵌合固定されたシール部材とを有し、
   さらに、このシール部材は、前記傾斜平面に摺接するアキシャルシールリップを有する
   ことを特徴とする車輪用転がり軸受装置の密封構造。
2. 前記シール部材は、径方向に間隔を置いて前記傾斜平面に摺接する複数枚のアキシャルシールリップを有することを特徴とする請求項１記載の車輪用転がり軸受装置の密封構造。

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