JP2019128018A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シール性を維持することができる車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】外輪2と内輪4との間をシールするインナー側シール部材6を備えた車輪用軸受装置1において、インナー側シール部材6は、外輪2に嵌合されるシール板7と、内輪4に嵌合された円筒部10aと円筒部10aから径方向外側に延びる立板部10bとを含むスリンガ10とを有し、シール板7は、立板部10bよりも径方向外側に設けられた第3サイドリップdを含み、第3サイドリップ9dは、水圧による外力によってスリンガ10に押し付けられる。【選択図】図5
Description
本発明は車輪用軸受装置に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置は、車両のシャーシ等に設けられているナックルに外方部材が固定され、回転体を介してハブ輪を含む内方部材が回転自在に支持されている。車輪用軸受装置には、外方部材と内方部材との隙間を塞ぐシール部材が設けられている。インナー側(車両側)のシール部材は、車輪用軸受装置の外方部材に嵌合されているシール板と、シール板を覆うように内方部材に嵌合されているスリンガとが組み合わされてパックシールとして構成されている。インナー側のシール部材は、シール板に設けられている複数のシールリップがスリンガに接触することで内部のグリースの漏れを防止するとともに外部から雨水、泥水および粉塵等の入り込みを防止している。
このような車輪用軸受装置において、粉塵又は泥水等にさらされる厳しい使用環境下においても長い軸受寿命を得るために、シール部材に複数のシールリップを設けてシール性を向上させているものがある。例えば、ラビリンスを構成して、パックシールの内部に粉塵又は泥水の入り込みを抑制するものがある。このように構成することで、パックシールは、ラビリンスによりシールリップ先端への粉塵又は泥水の入り込みが抑制され、シールリップ先端の損傷を防止し、シール性を向上させることができる。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載のシール部材は、スリンガの外周部分からシール板に向かって延びる円筒部が形成されている。シール部材には、円筒部の外周面とシール板との僅かな隙間によってラビリンスが構成されている。また、シール部材には、シール板に複数のシールリップが設けられ、スリンガに接触している。これにより、シール部材は、ラビリンスシールによって粉塵又は泥水の入り込みを抑制するとともに、シールリップによって内部に入り込んだ粉塵又は泥水を遮断する。
しかし、雨天に車両走行しているとき又は泥水が浸漬した路面を走行するとき、水面の高さが車輪用軸受装置のシール部材の位置まで到達することがある。このとき、シール部材に水圧による外力が加わり、泥水等がラビリンスシールを通過してシールリップまで入り込むことがある。シールリップとスリンガとの間に泥水等が入り込むと、シールリップ又はスリンガを損傷させて、シール性が低下する可能性があった。
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、シール部材に水圧による外力が加わってもシール性を維持することができる車輪用軸受装置の提供を目的とする。
即ち、第一の発明は、内周に複列の外側軌道面が設けられた外方部材と、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、および前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面が設けられた内方部材と、前記外方部材と前記内方部材とのそれぞれの軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と前記内方部材との間をシールするシール部材と、を備えた車輪用軸受装置において、前記シール部材は、前記外方部材に嵌合されるシール板と、前記内方部材に嵌合された円筒部と前記円筒部から径方向外側に延びる立板部とを含むスリンガとを有し、前記シール板は、前記立板部よりも径方向外側に設けられたシールリップを含み、前記シールリップは、外力によって前記スリンガに押し付けられる。
第二の発明は、前記スリンガは、前記立板部から前記シール板に向かって延びる鍔部を更に含み、前記シールリップは、外力によって前記鍔部に押し付けられる。
第三の発明は、前記シールリップの先端が外力によって前記立板部に押し付けられる。
第四の発明は、前記シールリップと前記スリンガの外周面との間にラビリンス隙間が構成されている。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、第一の発明および第三の発明によれば、外力によってシールリップがスリンガに押し付けられるので、シールリップとスリンガとの接触面圧が増大し、シールリップとスリンガの摺動面との間への泥水等の入り込みが抑制される。これにより、シール部材に水圧による外力が加わってもシール性を維持することができる。
第二の発明によれば、外力によってシールリップが鍔部に押し付けられるので、外力の大きさに応じてシールリップとスリンガとの接触面圧と接触面積が増大し、シールリップとスリンガの摺動面との間への泥水等の入り込みが抑制される。これにより、シール部材に水圧による外力が加わってもシール性を維持することができる。
第四の発明によれば、外力が加わっていない場合、シールリップとスリンガとが非接触型のラビリンスシールを構成して回転トルクを抑制し、水圧による外力が加わっている場合、シールリップとスリンガとが接触型のシールを構成して高いシール性を発揮する。これにより、シール部材に水圧による外力が加わってもシール性を維持することができる。
以下に、図1から図3を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
図1と図2とに示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材であるハブ輪3、内輪4、転動列である二列のインナー側円錐ころ5a、アウター側円錐ころ5b、シール部材の第一実施形態であるインナー側シール部材6、シール部材であるアウター側シール部材11を具備する。インナー側シール部材6およびアウター側シール部材11は、車輪用軸受シールである。本明細書において、インナー側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車輪用軸受装置1を車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、車輪用軸受装置1の回転軸と平行な方向を「軸方向」、車輪用軸受装置1の回転軸に直交する方向を「径方向」、車輪用軸受装置1の回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と表す。
図2に示すように、外輪2は、ハブ輪3と内輪4を支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成されている。外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材6が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材11が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。
外輪2の内周面には、インナー側の外側軌道面2cとアウター側の外側軌道面2dとが設けられている。外側軌道面2c,2dは、軸方向に関して互いに離れる方向に向かうほど内径が大きくなるテーパ状に形成されている。外輪2の外周面には、図示しない懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に形成されている。
ハブ輪3は、図示しない車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、有底円筒状に形成されている。ハブ輪3のインナー側端部には、外周面に縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置にハブボルト3dが挿通される。又、ハブ輪3は、アウター側の内側軌道面3cが外輪2の外側軌道面2dに対向するように配置されている。アウター側の内側軌道面3cは、アウター側に向かうにつれて外径が大きくなるテーパ状に形成されている。内側軌道面3cの大径側には、アウター側円錐ころ5bを案内するための大鍔部が形成され、小径側には、アウター側円錐ころ5bの脱落を防止するための小鍔部が形成されている。ハブ輪3の内周は、トルク伝達用のセレーション(又はスプライン)が形成されている。ハブ輪3には、小径段部3aに内輪4が嵌合している。
内輪4は、インナー側円錐ころ5aとアウター側円錐ころ5bとに予圧を与えるものである。内輪4の外周面には、周方向に環状の内側軌道面4aが形成されている。内側軌道面4aは、インナー側に向かうにつれて外径が大きくなるテーパ状に形成されている。内側軌道面4aの大径側には、インナー側円錐ころ5aを案内するための大鍔部が形成され、小径側には、インナー側円錐ころ5aの脱落を防止するための小鍔部が形成されている。内輪4は、ハブ輪3のインナー側端部を揺動加締加工することで、ハブ輪3に固定されている。つまり、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。ハブ輪3は、インナー側端部の内輪4の内側軌道面4aが外輪2外側軌道面2cに対向するように配置されている。
転動列であるインナー側円錐ころ5aとアウター側円錐ころ5bとは、ハブ輪3を回転自在に支持するものである。インナー側円錐ころ5aとアウター側円錐ころ5bとは、保持器16によって保持されている。インナー側円錐ころ5aは、内輪4の内側軌道面4aと、外輪2の外側軌道面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側円錐ころ5bは、ハブ輪3の内側軌道面3cと、外輪2の外側軌道面2dとの間に転動自在に挟まれている。車輪用軸受装置1では、外輪2とハブ輪3と内輪4とインナー側円錐ころ5aとアウター側円錐ころ5bとから複列円錐ころ軸受が構成されている。
図2と図3とに示すように、本発明に係るシール部材の第一実施形態であるインナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材6は、2枚のサイドリップを接触させる2サイドリップタイプのシールで構成され、略円筒状のシール板7と略円筒状のスリンガ10とからパックシールを構成している。なお、以下の実施形態においてインナー側シール部材6は、単数又は複数のシールリップを備えるパックシールであればよい。
シール板7は、外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されている。シール板7は、芯金8とゴム部材9(薄墨部分参照)とから構成されている。芯金8は、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)から構成されている。芯金8は、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、芯金8は、円筒状のシール板嵌合部8aと、シール板嵌合部8a(のアウター側端部)から径方向内側に向かって延びる円環状の支持部8bと、から構成されている。
シール板嵌合部8aのインナー側端部には、ゴム部材9が、加硫接着されている。ゴム部材9は、芯金8に加硫接着されるシールリップ基部9eと、当該シールリップ基部9eから延出するラジアルリップ9a、第1サイドリップ9b、第2サイドリップ9c及び第3サイドリップ9dからなるシールリップと、を有している。ゴム部材9は、例えば、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。
スリンガ10は、シール板7よりもインナー側に配置されている。スリンガ10は、例えば、シール板7と同じ材質の鋼板から構成されている。スリンガ10は、軸方向断面視で略U字状に形成されている。これにより、スリンガ10は、円筒部10aと、円筒部10aのインナー側端から径方向外側に向かって延びる円環状の立板部10bと、立板部10bの外周部からシール板7に向かって延びる円筒状の鍔部10cと、から構成されている。円筒部10aは軸方向に延びていて、内輪4に嵌合されている。立板部10bは、芯金8の支持部8bと軸方向に対向している。鍔部10cは、第2サイドリップ9cと第3サイドリップ9dとの間に配置されて、軸方向に水平に延びている。また、鍔部10cは、その軸方向アウター側端と支持部8bとの間に微小な隙間が構成されている。これにより、鍔部10cは、支持部8bとの間にラビリンスシールを構成している。
ラジアルリップ9aは、油膜を介して円筒部10aの外周面に接触し、主に車輪用軸受装置1の内部に封入されたグリースの外部への漏れを防止している。第1サイドリップ9bは、立板部10bのアウター側側面に油膜を介して接触し、主に車輪用軸受装置1の外部から粉塵等の内部への入り込みを防止している。また、第2サイドリップ9cは、第1サイドリップ9bよりも径方向外側で油膜を介して立板部10bと接触し、主に車輪用軸受装置1の外部から泥水等の入り込みを防止している。
第3サイドリップ9dは、第2サイドリップ9cおよび鍔部10cよりも径方向外側に配置されている。第3サイドリップ9dは、径方向視で鍔部10cと重複するように形成されている。第3サイドリップ9dの径方向外側面は、アウター側からインナー側に向けて径方向内側に向かう傾斜面に形成されている。また、第3サイドリップ9dは、その径方向内側面と鍔部10cとの間に微小な隙間のラビリンスが構成されている。つまり、第3サイドリップ9dと鍔部10cとは、ラビリンスシールLaとして構成され、主に車輪用軸受装置1の外部から泥水等の内部への入り込みを防止している。
図2に示すように、アウター側シール部材11は、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材11は、略円筒状の芯金12にシールリップ13が、例えば加硫接着された一体型のシールとして構成されている。
アウター側シール部材11の芯金12は、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)から構成されている。芯金12は、円環状の鋼板の外縁部がプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。シールリップ13は、例えば、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。
芯金12は、外輪2のアウター側開口部2bに嵌合されている。この際、アウター側シール部材11は、シールリップ13がハブ輪3のシール摺動面に接触するように配置されている。アウター側シール部材11では、シールリップ13が油膜を介してハブ輪3のシール摺動面と接触することでシール摺動面に対して摺動可能に構成されている。
このように構成される車輪用軸受装置1には、ハブ輪3と内輪4とがインナー側円錐ころ5aとアウター側円錐ころ5bとを介して外輪2に回転自在に支持されている。また、車輪用軸受装置1は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間をインナー側シール部材6で塞がれ、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間をアウター側シール部材11で塞がれている。これにより、車輪用軸受装置1は、内部からの潤滑グリースの漏れおよび外部からの雨水又は粉塵等の入り込みを防止しつつ、外輪2に支持されているハブ輪3と内輪4とが回転する。
次に、図4から図6を用いて、第3サイドリップ9dとスリンガ10の鍔部10cとのシール状態について詳細に説明する。
図4に示すように、第3サイドリップ9dと鍔部10cとの間には所定の大きさのラビリンス隙間GからなるラビリンスシールLaが構成されている。ラビリンス隙間Gは、第3サイドリップ9dとシールリップ基部9e(の内周面9f)との間の隙間よりも小さい。NBR等の弾性体から形成されている第3サイドリップ9dは、所定ばね定数に基づいて径方向内側にたわむように形成されている。
第3サイドリップ9dの内周面は、その基端から先端に向けうにつれて鍔部10cに接近するように傾斜している。また、第3サイドリップ9dの外周面は、その基部から先端に向かうにつれてシールリップ基部9eの内周面9fから離間するように傾斜している。第3サイドリップ9dは、その基部から先端部に向かうにつれて厚みが小さくっている。第3サイドリップ9dは、水圧による外力が加わることで、その大きさに応じて鍔部10cに向かってたわむ。これにより、第3サイドリップ9dと鍔部10cとの間のラビリンス隙間Gの大きさは、第3サイドリップ9dに加わる外力の大きさに応じて変動する。
第3サイドリップ9dに外力、例えば水圧Pwが加わらない場合、第3サイドリップ9dは、鍔部10cとの間のラビリンスシールLaを構成している。車輪用軸受装置1は、第3サイドリップ9dと鍔部10cとの間のラビリンス隙間Gによって、回転トルクを抑制しつつ、シール性を維持している。
図5に示すように、第3サイドリップ9dに泥水Mu等の水圧Pwが加わる場合(黒塗矢印参照)、第3サイドリップ9dは、水圧Pwが増加するにつれてたわみが大きくなり、ラビリンス隙間Gが小さくなる。つまり、第3サイドリップ9dは、泥水Mu等が第3サイドリップ9dの外周面とシールリップ基部9eとの間に入り込もうとする力である水圧Pwが増大するにつれて鍔部10cとの間のラビリンス隙間Gが減少し、ラビリンスシールLaとしてのシール性能が高くなる。
図6に示すように、ラビリンスシールLaで泥水Mu等の入り込みを防ぐことができる水圧Pwの範囲内の基準水圧P0に達した場合(黒塗矢印参照)、第3サイドリップ9dは、その先端部が鍔部10cに接触する。これにより、第3サイドリップ9dは、非接触型のラビリンスシールLaから、よりシール性能が高いラビリンス隙間G=0の接触型のシールとして作用する。第3サイドリップ9dは、水圧Pwが大きくなるほど鍔部10cに接触している領域Eと領域Eでの面圧とが増大する。つまり、第3サイドリップ9dは、水圧Pwが大きくなるほど、より大きい領域Eがより高い面圧で鍔部10cに接触することでシール性能がさらに向上する。
このように構成される車輪用軸受装置1は、外力が加わっていない場合、第3サイドリップ9dがラビリンスシールLaを構成してシール性能を維持しつつ回転トルクを抑制する。水圧Pwが加わっている場合、車輪用軸受装置1は、水圧Pwの大きさに応じて、第3サイドリップ9dのシール構造が非接触型のラビリンスシールLaから接触型のシールに変化する。これにより、インナー側シール部材6において、第3サイドリップ9dよりも内径側の空間への泥水Muの浸入を遮断することができる。さらに車輪用軸受装置1は、水圧Pwの大きさに応じて、接触型のシールを構成している第3サイドリップ9dの鍔部10cと接触している領域Eの大きさおよびその面圧が変化する。これにより、車輪用軸受装置1は、インナー側シール部材6に水圧Pwによる外力が加わって泥水等のシール内部への入り込む力が増大してもインナー側シール部材6のシール性を維持することができる。なお、本実施形態において、第3サイドリップ9dは、外力が加わっていない状態において、スリンガ10に接触していないラビリンスシールLaを構成していることで、外圧非負荷時における車輪用軸受装置1の回転トルクを低減することができるが、外力が加わっていない状態において、スリンガ10に接触している接触型のシールを構成していてもよい。
次に、図7を用いて、本発明に係るシール部材の第二実施形態であるインナー側シール部材14について説明する。なお、以下の実施形態に係るインナー側シール部材14は、図1から図6に示すインナー側シール部材6において、インナー側シール部材6に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の各実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
図7に示すように、車輪用軸受装置1は、シール部材であるインナー側シール部材14を具備する。インナー側シール部材14は、略円筒状のシール板7と鍔を有する略円筒状のスリンガ15とを具備する。
シール板7は、芯金8とゴム部材9とから構成されている。芯金8の支持部8bの一側(インナー側)面には、径方向内側からラジアルリップ9a、第1サイドリップ9b、第2サイドリップリップ9cおよび第3サイドリップ9dがこの順で一体に、例えば加硫接着されている。
スリンガ15は、例えばシール板7と同等の鋼板から構成されている。スリンガ15は、円環状の鋼板の内縁部がプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、スリンガ15は、円筒部15aと、円筒部15aのインナー側端から径方向外側に向かって延びる円環状の立板部15bと、から構成されている。スリンガ15は、シール板7よりもインナー側に配置され、円筒部15aが内輪4に嵌合されて固定されている。立板部15bは、シール板7を構成している芯金8の支持部8bと軸方向に対向するように配置され、パックシールを構成している。
シール板7を構成しているゴム部材9の第3サイドリップ9dは、その先端がスリンガ10の立板部15bの径方向外側端面よりも径方向外側に配置されている。第3サイドリップ9dの先端は、径方向視で立板部15bの径方向外側端面と重複するように形成されている。つまり、第3サイドリップ9dは、シール板7を構成している芯金8の支持部8bと立板部15bとの間を覆うように形成されている。第3サイドリップ9dは、その径方向内側面と立板部15bの径方向外側端面との間に微小な隙間のラビリンスが構成されている。つまり、第3サイドリップ9dと立板部15bの径方向外側端面とは、ラビリンスシールLaとして構成され、主に車輪用軸受装置1の外部から泥水等の内部への入り込みを防止している。これにより、インナー側シール部材14は、シールリップがスリンガ10に対して摺動可能に構成され、外輪2のインナー側開口部2aからの潤滑グリースの漏れおよび外部からの雨水又は粉塵等の入り込みを防止する。
第3サイドリップ9dとスリンガ10の立板部15bの径方向外側端面との間には所定の大きさのラビリンス隙間GからなるラビリンスシールLaが構成されている。NBR等の弾性体から形成されている第3サイドリップ9dは、泥水Mu等の水圧Pwが加わることで(黒塗矢印参照)、第3サイドリップ9dの径方向内側に配置されている立板部15bの径方向外側端面に向かってたわむ(二点鎖線参照)。これにより、第3サイドリップ9dと立板部15bの径方向外側端面との間のラビリンス隙間Gの大きさは、外力の大きさに応じて変動する。
車輪用軸受装置1は、インナー側シール部材14に外力が加わっていない場合、第3サイドリップ9dがラビリンスシールLaを構成してシール性能を維持しつつ回転トルクを抑制する。インナー側シール部材14に外力として水圧Pwが加わっている場合、車輪用軸受装置1は、第3サイドリップ9dが立板部15bの径方向外側端面に向かってたわむ(二点鎖線参照)。第3サイドリップ9dは、水圧Pwの大きさに応じてラビリンス隙間Gの大きさが変動し、立板部15bの径方向外側端面に接触する接触型のシールに変化する。さらに、第3サイドリップ9dは、立板部15bの径方向外側端面と接触している領域Eとその面圧が変化する。
このように構成される車輪用軸受装置1は、インナー側シール部材14に水圧Pwによる外力が加わって泥水等の入り込む力が増大してもシール性を維持することができる。
なお、本実施形態では、水圧Pwによる外力が加わった場合、軸方向に水平に延びる鍔部10cに第3サイドリップ9dの先端が押し付けられていたが、これに限られない。例えば、インナー側からアウター側に向かうにつれてシールリップ基部9eの内周面9fに近くづくように傾斜して、かつ、第3サイドリップ9dの内周面と平行に延びる鍔部に第3サイドリップ9dの全体が押し付けられてもよい。また、車輪用軸受装置の第一実施形態である車輪用軸受装置1は、複列円錐ころ軸受から構成されているが複列アンギュラ玉軸受等の軸受けである車輪用軸受装置で構成してもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。また、本実施形態において、車輪用軸受装置1は、ハブ輪3の外周に内側軌道面3cが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置1として構成されているがこれに限定するものではなく、ハブ輪3に一対の内輪4が圧入固定された第2世代構造、又は、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受又は複列円すいころ軸受からなる車輪用軸受を嵌合させた第1世代構造であってもよい。第1世代構造又は第2世代構造の車輪用軸受装置の場合、インナー側シール部材に限らず、アウター側シール部材に上述の実施形態に係るシール部材を採用してもよい。
1 車輪用軸受装置
2 外輪
3 ハブ輪
4 内輪
5a インナー側円すいころ
5b アウター側円すいころ
6 インナー側シール部材
7 シール板
9d シールリップ(第3サイドリップ)
10 スリンガ
10a 円筒部
10b 立板部
10c 鍔部
2 外輪
3 ハブ輪
4 内輪
5a インナー側円すいころ
5b アウター側円すいころ
6 インナー側シール部材
7 シール板
9d シールリップ(第3サイドリップ)
10 スリンガ
10a 円筒部
10b 立板部
10c 鍔部
Claims (4)
- 内周に複列の外側軌道面が設けられた外方部材と、
外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、および前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面が設けられた内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材とのそれぞれの軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材と前記内方部材との間をシールするシール部材と、
を備えた車輪用軸受装置において、
前記シール部材は、前記外方部材に嵌合されるシール板と、前記内方部材に嵌合された円筒部と前記円筒部から径方向外側に延びる立板部とを含むスリンガとを有し、
前記シール板は、前記立板部よりも径方向外側に設けられたシールリップを含み、
前記シールリップは、外力によって前記スリンガに押し付けられる、車輪用軸受装置。 - 前記スリンガは、前記立板部から前記シール板に向かって延びる鍔部を更に含み、
前記シールリップは、外力によって前記鍔部に押し付けられる請求項1に記載の車輪用軸受装置。 - 前記シールリップの先端が外力によって前記立板部に押し付けられる請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 前記シールリップと前記スリンガの外周面との間にラビリンス隙間が構成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018010863A JP2019128018A (ja) | 2018-01-25 | 2018-01-25 | 車輪用軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018010863A JP2019128018A (ja) | 2018-01-25 | 2018-01-25 | 車輪用軸受装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2019128018A true JP2019128018A (ja) | 2019-08-01 |
Family
ID=67472058
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019128018A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022191206A1 (ja) * | 2021-03-09 | 2022-09-15 | 内山工業株式会社 | グリース組成物及びそれを用いた密封装置 |
-
2018
- 2018-01-25 JP JP2018010863A patent/JP2019128018A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022191206A1 (ja) * | 2021-03-09 | 2022-09-15 | 内山工業株式会社 | グリース組成物及びそれを用いた密封装置 |
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