JP2008255225A - ビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤およびビニル系重合体 - Google Patents

ビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤およびビニル系重合体 Download PDF

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Abstract

【課題】水性媒体中での塩化ビニル系単量体の分散力に極めて優れるため、少量の使用量で塩化ビニル系単量体の懸濁重合を安定化させる性能を発揮するとともに、重合して得られる塩化ビニル系樹脂中に残留した場合でも樹脂の物性低下が少ないため、塩化ビニル系樹脂を得るための懸濁重合における分散安定剤に要求される機能を十分に満足させる分散安定剤を提供し、また、それを用いて製造した高品質の塩化ビニル系樹脂を提供する。
【解決手段】側鎖に塩素を有する構造単位を含有し、その含有量が0.1〜20モル%である変性ポリビニルアルコール系樹脂からなることを特徴とするビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビニル系単量体の懸濁重合の際に使用する分散安定剤であり、特に塩化ビニル単量体の重合または塩化ビニル単量体と他のビニル系単量体との共重合の際に使用する分散安定剤に関するもので、さらに詳しくは、重合安定性が良好で、優れた物性の塩化ビニル系樹脂が得られる懸濁重合用分散安定剤およびそれを用いて製造される塩化ビニル系樹脂に関するものである。
塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体およびそのケン化物等の塩化ビニル系樹脂の工業的な製造方法は、水性媒体中において分散安定剤の存在下で、塩化ビニル等のビニル系単量体(モノマー)を分散させ、油溶性重合開始剤を用いて重合を行うバッチ式懸濁重合により行われているのが一般的である。塩化ビニル系樹脂の品質を支配する重合プロセスでの因子として、重合率、水性媒体とモノマーの比、重合温度、重合開始剤の種類および量、重合槽の形式、攪拌速度ならびに分散安定剤の種類および量が挙げられるが、中でも分散安定剤の影響が非常に大きい。
塩化ビニル系樹脂を得るための懸濁重合における分散安定剤の役割は、水性媒体中でモノマーを分散させ、安定な液滴を形成し、分散と合一を繰り返す液滴の大きさを均一に整えるとともに、重合した粒子の凝集性をコントロールすることにある。このため、かかる分散安定剤に求められる性能としては、
<1> 得られるビニル系樹脂粒子の粒度分布をシャープにすること、
<2> 得られるビニル系樹脂粒子を多孔質にし、可塑剤吸収性を大きくして成形加工性を良くすること、
<3> 塩化ビニル系樹脂粒子の空隙率を一定の範囲にし、残存モノマーの除去を容易にすること、
<4> 塩化ビニル系樹脂粒子の嵩比重を上げ、塩化ビニル系樹脂の加工性を向上させること、
が挙げられる。
また、分散安定剤は重合を行うためには必須のものであるが、重合終了後は樹脂中に残留するので、上記の<1>〜<4>の性能に加えてさらに分散安定剤に求められる性能として、
<5> 塩化ビニル系樹脂粒子の加工性に悪影響を与えず、シート等に成形された場合にフィッシュアイを生じさせないこと、
<6> 塩化ビニル系樹脂の色相や透明性に悪影響を及ぼさないこと、
が挙げられる。
すなわち、上記の分散安定剤に求められる性能を要約すると、少量で優れた分散力を発揮し、塩化ビニル系樹脂の粒子径、粒子形状等を適正な状態に制御すること(積極的性能)と塩化ビニル系樹脂に残留しても、後の加工時あるいは使用時に悪影響を及ぼさないこと(消極的性能)に大別される。
上記の分散安定剤としては、一般的にポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する)、セルロース誘導体などが単独でまたは適宜組み合わされて使用されており、中でもPVA系樹脂が最も広く使用されているが、上記の要求性能を十分に満たしているとは言えず、様々な検討が続けられているのが、現状である。
例えば、非特許文献1には、塩化ビニルの懸濁重合用分散安定剤として、粘度平均重合度2000、ケン化度88モル%または80モル%の、乳化力の高いとされるPVAや、粘度平均重合度600〜700、ケン化度70モル%前後の、塩化ビニル系樹脂の重合温度では析出するタイプのPVAを使用する方法が記載されている。
また、特許文献1には、アルデヒド類等の存在下で重合して得られたポリ酢酸ビニルをケン化することによって得られたPVAに酢酸ナトリウムを添加し、さらに加熱処理して得られる重合度1500以下、ケン化度90モル%以下でかつ、分子内にカルボニル基、ビニレン基の二連鎖および三連鎖を有するPVAを、塩化ビニル類の懸濁重合用分散安定剤として用いる方法が示されている。
さらに、特許文献2には、分子内のビニレン基含有量を表わす指標である0.1重量%水溶液の波長280nmおよび波長320nmでの吸光度が一定値以上であり、かつその比が一定値以上である特定のPVAが、塩化ビニル類の懸濁重合用分散安定剤として示されている。
その他、エチレン変性PVA(特許文献3)、側鎖に1,2−ジオールを有するPVA(特許文献4)、炭素数2〜20のヒドロキシアルキル基を有するPVA(特許文献5)等に例示されるように、種々の変性PVAが分散安定剤として検討されている。
実際の塩化ビニル系単量体の懸濁重合用には、それらを組み合わせて使用されており、特に非特許文献1に記載されているような平均重合度2000以上で、ケン化度約80モル%の未変性PVAと、特許文献1に記載されているようなビニレン基を有するPVAで、重合度は1000以下で、ケン化度が70モル%前後のものとを併用するのが一般的である。
上記で引用した本出願の発明に関連する先行技術文献情報は、次の通りである。
特公昭58−2962号公報 特開2004−189889号公報 特開平8−259609号公報 特開2006−241448号公報 特開平9−77807号公報 「ポバール」、高分子刊行会、1989年発行。
上記先行技術情報に分散安定剤として開示されているもののうち、非特許文献1に記載のPVAでは、基本的に分散力が十分でないため、懸濁重合の安定性に問題が生じ、重合中に粗粒が生じやすい傾向にあって、得られた塩化ビニル系樹脂の粒度分布がシャープでなく、可塑剤吸収性が悪いという問題がある。特許文献1および2に記載のPVAにおいては、非特許文献1に記載のPVAに比べて、塩化ビニル単量体の分散性は改善されているが、塩化ビニル系樹脂中に残留した該PVAが塩化ビニル系樹脂の色相や透明性に悪影響を与えるという問題があった。また、特許文献3〜5に記載のPVAに代表される種々の変性PVAにおいても、<1>〜<6>の要求性能をすべて満足するものは得られていない。
結局のところ、従来の分散安定剤として提案されているようなPVAは、本質的に塩化ビニル系単量体に対する分散力が不足しているため、少量の使用では、上記<1>〜<4>の要求性能(積極的性能)を十分に満足させることができない。一方、これらのPVAの使用量を増やすと、塩化ビニル系単量体の懸濁重合は安定し、<1>〜<4>の要求性能を満足させることはできるが、塩化ビニル系樹脂中にPVAが多く残留し、<5>〜<6>の要求性能(消極的性能)を満足させることができないという問題を生じる。すなわち、懸濁重合において、塩化ビニル系単量体を水性媒体中で十分に分散させるためには、分散安定剤の添加量を増やす必要があるが、一方で、これらの分散安定剤は、塩化ビニル系樹脂の粒子中に残留し、樹脂の物性に悪影響を及ぼし、分散安定剤の添加量が増えるとこの悪影響が顕著になる。
特に、分散安定剤を用いた懸濁重合で製造される塩化ビニル系樹脂のうち、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体またはそのケン化物からなる樹脂では、ケトン等の溶媒に溶解してインクや塗料のバインダーとして使用される際、樹脂中に残留した分散安定剤やそのグラフト物が溶媒に溶解せず、溶液が濁ることによって品質の低下を招くという問題がある。
このような言わば二律背反の課題を解決するためには、少量で塩化ビニル系単量体を分散させることができるような、本質的に分散力が高い分散安定剤を使用するとともに、懸濁重合して得られる塩化ビニル系樹脂中に残留しても、樹脂の物性に悪影響を与えにくいような構造の分散安定剤を使用する必要がある。しかしながら、従来の分散安定剤として使用されるPVAあるいは変性PVAは、塩化ビニル系単量体の分散力が不足しているとともに、塩化ビニル系樹脂と全く異なる構造を有する高分子であるため、塩化ビニル系樹脂に残留することによる該樹脂の物性低下を避けられないという問題があった。
すなわち、本発明の課題は、水性媒体中での塩化ビニル系単量体の分散力に極めて優れるため、少量の使用量で塩化ビニル系単量体の懸濁重合を安定化させる性能を発揮するとともに、重合して得られる塩化ビニル系樹脂中に残留した場合でも樹脂の物性低下が少ないため、前記の<1>〜<6>の塩化ビニル系樹脂を得るための懸濁重合における分散安定剤に要求される機能を十分に満足させる分散安定剤を提供し、また、それを用いて製造した高品質の塩化ビニル系樹脂を提供することである。
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、側鎖に塩素を有する構造単位を含有し、その含有量が0.1〜20モル%である変性PVA系樹脂をビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤とすることで上記の課題が解決されることを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1] 側鎖に塩素を有する構造単位を含有し、その含有量が0.1〜20モル%である変性ポリビニルアルコール系樹脂からなることを特徴とするビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤、
[2] 変性ポリビニルアルコール系樹脂が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のケン化物であることを特徴とする前項[1]記載の懸濁重合用分散安定剤、
[3] 変性ポリビニルアルコール系樹脂が、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体のケン化物であることを特徴とする前項[1]記載の懸濁重合用分散安定剤、
[4] 変性ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が50〜95モル%、平均重合度が400〜5000であることを特徴とする前項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤、
[5] ビニル系単量体が、塩化ビニル単量体またはこれと共重合し得る他の単量体との混合物であることを特徴とする前項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤、
[6] 前項[1]〜[5]のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤を使用してビニル系単量体を懸濁重合することを特徴とするビニル系重合体の製造方法、および
[7] 前項[1]〜[5]のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤を使用してビニル系単量体を懸濁重合することにより製造される塩化ビニル樹脂あるいは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体またはそのケン化物、
に関する。
本発明のビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤は、水性媒体中での塩化ビニル系単量体の分散力に極めて優れるため、少量の使用で、懸濁重合を優れて安定化させることができる。このため、得られる塩化ビニル系樹脂は、粒度分布がシャープで、嵩比重が高く、多孔質であるため可塑剤吸収性が良く、分散安定剤の使用量が少ないために塩化ビニル系樹脂中に残留する量が少ない。しかも、その残留する分散安定剤は、塩化ビニル系樹脂と構造が類似しているため塩化ビニル系樹脂の品質への悪影響が少なく、フィッシュアイの生成がなく、色相や透明性の低下もない高品質の塩化ビニル系樹脂を製造するために極めて有用である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤(以下、「本発明の分散安定剤」と略すことがある。)として使用される変性PVA系樹脂は、PVAの酢酸ビニル構造単位とビニルアルコール構造単位以外に、側鎖に塩素を有する構造単位を含有することを必須とするもので、この塩素を有する構造単位の含有量は、0.1〜20モル%であり、好ましくは0.5〜15モル%であり、より好ましくは1〜10モル%である。塩素を有する構造単位の含有量が少なすぎると、分散性能(塩化ビニル系単量体を水性媒体中に分散させる性能を意味する)が低くなって本発明の目的とする効果が得られなくなり、一方、その含有量が20モル%を超えると、当該変性PVA系樹脂が水溶性に乏しくなるため、懸濁重合用の分散安定剤として使用することができない。
かかる側鎖に塩素を有する構造単位としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、モノクロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、メタクリル酸クロライド、アクリル酸クロライドおよびメタリルクロライド等の構造単位が挙げられるが、中でも、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが好ましい。したがって、本発明の分散安定剤として用いられる好ましい変性PVA系樹脂の例としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のケン化物、および塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体のケン化物が挙げられる。なお、変性PVA系樹脂は、側鎖に塩素を有する構造単位を1種類だけ含有していてもよく、同時に2種類以上を含有していてもよい。
本発明の分散安定剤として用いられる変性PVA系樹脂の重合度は、特に限定されないが、JIS K 6726で規定されているPVAの平均重合度測定方法により求められる重合度が400〜5000であることが好ましく、より好ましくは500〜3000である。変性PVA系樹脂の重合度が低くなりすぎると、本発明の分散安定剤としての分散性能が低下するおそれがあり、また、重合度が高くなりすぎると、水に溶解した際の水溶液粘度が高くなるため、取扱いにくくなるとともに、懸濁重合の際に分散媒の粘度が高くなりすぎ、重合に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の分散安定剤として用いられる変性PVA系樹脂のケン化度についても、特に制限はないが、JIS K 6726で規定されているPVAのケン化度測定方法により求められるケン化度が50〜95モル%であることが好ましく、より好ましくは70〜90モル%である。ケン化度が低くなりすぎると水に溶解し難く、水性媒体中で分散安定剤として機能しなくなるおそれがあり、一方、ケン化度が高くなりすぎると、本発明の分散安定剤としての分散性能が低下するおそれがある。なお、本発明における該樹脂の水溶性は、ケン化度のみならず、側鎖に塩素を有する構造単位の含有量、重合度、さらには懸濁重合に使用する水性媒体の種類によっても影響を受け得るので、使用する水性媒体に溶解する範囲で、ケン化度、重合度、塩素を有する構造単位の含有量を適宜選択すればよい。
本発明の分散安定剤として用いられる変性PVA系樹脂の製造方法としては、例えば、(1)脂肪酸ビニルエステルと側鎖に塩素を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合し、得られた共重合体をケン化する方法、
(2)適当な溶媒、重合開始剤の存在下で、PVA系樹脂と側鎖に塩素を有するエチレン性不飽和単量体とを加熱混合して、グラフト共重合させる方法、
(3)クロロベンズアルデヒド、クロロ安息香酸またはエピクロロヒドリンなど、PVA系樹脂の水酸基やその他の官能基に対して反応性を有する官能基を有する公知の塩素化合物をPVA系樹脂に付加させる方法、
等が挙げられるが、品質の均一性や製造コストの点から、(1)の方法が好ましく採用される。
上記した(1)および(2)の製造方法で使用される、側鎖に塩素を有するエチレン性不飽和単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、モノクロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、メタクリル酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタリルクロライド等が挙げられるが、化合物の安定性、重合性およびコストの点で、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが好適である。
(1)の製造方法で使用される脂肪酸ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられるが、工業的には酢酸ビニルが好ましい。
(1)および(2)の製造方法で共重合を行う場合、本発明の効果を損なわない範囲で側鎖に塩素を有する単量体以外のエチレン性不飽和単量体を共重合に使用してもよい。かかる側鎖に塩素を有する単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸およびその塩、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル類、アクリルアミドおよびN−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド類、メタクリルアミドおよびN−メチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド類、メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類、フッ化ビニルなどの塩素系以外のハロゲン化ビニル類、酢酸アリルなどのアリル化合物、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはエステル類、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
(1)の製造方法において、共重合体を得るための重合方法としては、例えば塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合が挙げられ、重合度の制御や重合後に行うケン化反応のことを考慮すると、メタノールを溶媒とした溶液重合あるいは水または水/メタノールを分散媒とする懸濁重合が有利であるが、これらに限定されるものではない。
また、該共重合体のケン化方法は特に限定されず、公知の酸ケン化、アルカリケン化を適用することができ、中でも共重合体のメタノール溶液、またはメタノールと水、酢酸メチルおよびベンゼンからなる群より選択される1種以上の溶媒等との混合溶媒溶液に水酸化アルカリを添加して、加アルコール分解する方法が工業的に好ましい。
(2)の製造法において、グラフト共重合体を得る方法としては、公知の均一系あるいは不均一系のグラフト共重合法を利用することができ、例えば、PVAを水に溶解し、アゾ系開始剤の存在下で、側鎖に塩素を有するエチレン性不飽和単量体を添加して、加熱攪拌し、グラフト共重合体を得た後、必要に応じて再沈や遠心分離等によって、側鎖に塩素を有するエチレン性不飽和単量体のホモポリマーを除去する方法等が挙げられる。
また、(3)の製造法において、PVA系樹脂の水酸基やその他の官能基に対して反応性を有する官能基を有する塩素化合物をPVA系樹脂に付加させる方法としては、公知の反応を利用することができ、例えば、PVA水溶液にクロロベンズアルデヒド等のアルデヒド基を有する塩素含有化合物を添加し、酸性下でPVAの水酸基とアルデヒド基を反応せしめる方法を挙げることができる。
上記の(1)〜(3)の製造方法においては、本発明における変性PVA系樹脂の重合度を制御することができる。すなわち、(1)の製造方法では、重合を行う際のモノマー配合比と重合収率を変えることによって、あるいは必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することによって該樹脂の重合度を制御することができ、(2)(3)の製造方法では、原料として使用するPVA系樹脂を所望の重合度のものにすることにより、該樹脂の重合度を制御することができる。
また、本発明における変性PVA系樹脂のケン化度を制御することもできる。すなわち、(1)の製造方法においては、ケン化反応に用いる酸またはアルカリの添加量、温度、濃度、反応時間あるいは溶剤の組成等を変えることによって該樹脂のケン化度を制御することができ、(2)(3)の製造方法においては、原料として使用するPVA系樹脂を所望のケン化度のものにすることによって、該変性PVA系樹脂のケン化度を制御することができる。
次に上記した変性PVA系樹脂からなる本発明の分散安定剤の使用ないしそれを使用したビニル系単量体の懸濁重合によるビニル系重合体の製造方法について説明する。
本発明における懸濁重合とは、水性媒体中にそれに不溶なビニル系単量体と油溶性の重合開始剤を添加し、攪拌することによって、ビニル系単量体からなる微小な液滴を形成せしめ、この液滴中で重合を行う重合様式である。ここで使用できる水性媒体としては、例えば水、各種の添加成分を含有する水溶液、および水と相溶性を有する有機溶剤と水との混合溶媒が挙げられる。
本発明における上記の変性PVA系樹脂は、ビニル系単量体の懸濁重合を行う際に分散安定剤として使用することができるが、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル等の一般的に懸濁重合が適用されるビニル系単量体が対象であり、中でも塩化ビニル系単量体の懸濁重合に好適である。塩化ビニル系単量体としては、塩化ビニル単量体が挙げられ、また、塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る他の単量体との混合物が挙げられる。塩化ビニル単量体に共重合し得る他の単量体としては、例えば、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ビニルアルコキシシラン、マレイン酸、ヒドロキシアルキルアクリレート、アリルスルホン酸およびビニルスルホン酸等の単量体が挙げられる。
したがって、本発明の分散安定剤は、懸濁重合による塩化ビニルの単独重合に好適に用いることができ、また、懸濁重合による塩化ビニルと共重合可能な公知の単量体から選ばれる1種以上と塩化ビニルとの二元ないしそれ以上の多元共重合にも使用することができ、中でも懸濁重合による塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合における分散安定剤として、好適に使用することができる。
ビニル系単量体の懸濁重合における重合開始剤も、公知のものでよく、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシデカノエート等のパーエステル化合物、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどの過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物およびベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイドが挙げられ、さらには、これらに過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて使用することもできる。
ビニル系単量体の懸濁重合における分散安定剤の主な役割としては、ビニル系単量体およびその重合体からなる液滴を安定させ、液滴で生成した重合体粒子同士が液滴間で融着して大きな塊が生成するのを防止することであるが、本発明の分散安定剤は、分散性能に優れているため、少ない使用量で安定した液滴を形成することができ、上記の融着による塊の生成を防止することができる。
なお、液滴が安定するとは、細かくかつほぼ均一なサイズの液滴が懸濁重合の分散媒体中に安定して分散することを意味する。
本発明の分散安定剤の使用量は、特に制限はないが、通常は、ビニル系単量体100重量部に対して5重量部以下であり、0.005〜1重量部が好ましく、0.01〜0.2重量部がさらに好ましい。本発明の分散安定剤も通常の分散安定剤と同様に、ビニル系単量体を仕込む前に、懸濁重合の分散媒体にあらかじめ溶解させて使用することが一般的である。
懸濁重合における分散安定剤としては、本発明の分散安定剤を単独で使用してもよいが、他の分散安定剤を併用してもよく、そのような他の分散安定剤としては、塩化ビニルなどのビニル系単量体を水性媒体中で懸濁重合する際に使用される公知の分散安定剤、例えば、平均重合度100〜4500、ケン化度30〜100モル%のPVAや本発明以外の変性PVA系樹脂、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロースエーテル、ゼラチン等の水溶性ポリマー、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックポリマーなどの油溶性乳化物、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤などが挙げられる。これらの他の分散剤は、それらのうちの1種類を用いてもよく、2種類以上を同時に用いてもよい。
本発明においては、分散安定剤として、重合度、ケン化度が異なる2種類もしくはそれ以上のPVA系樹脂を組み合わせて使用することが好ましく、そのうちの1種類以上を本発明の分散安定剤である変性PVA系樹脂とするのが好ましい。より好ましくは、重合度が1700以上の乳化力の高いPVA系樹脂と重合度が900以下の高温で析出するタイプのPVA系樹脂とを組み合わせて使用し、そのうちの1種以上を、側鎖に塩素を有する構造単位を含有する変性PVA系樹脂とする。
本発明の分散安定剤を用いる懸濁重合においては、公知である種々の分散助剤を併用することも可能であり、かかる分散助剤としては、ケン化度30〜60モル%で平均重合度180〜900の低ケン化度PVAが好適に用いられる。ケン化度が30〜50モル%、平均重合度が200〜500でかつ、側鎖に塩素を有する構造単位を含有する変性PVAを分散助剤として併用することは、さらに好適である。
分散助剤以外にも、連鎖移動剤、重合禁止剤、pH調整剤、スケール防止剤、架橋剤等のビニル系化合物の懸濁重合において公知の各種添加剤を併用しても差し支えない。
懸濁重合における重合温度に制限はなく、使用するビニル単量体の種類や重合条件や目標とする重合収率などに応じて任意に選択可能であるが、30〜80℃であることが好ましい。重合時間も特に制限はなく、目的とする重合体の重合度に応じて適宜設定すればよい。
本発明の製造方法で得られる塩化ビニル系樹脂は、重合体粒子の粒度分布がシャープであり、嵩比重が高く、また可塑剤吸収性がよいため、各種成形品への加工性がよく、また、成形された場合のフィッシュアイが少なく、色相や透明性が良好である。また、本発明の方法で製造した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、ケトン等の溶媒に溶解しても透明性が高く、インクや塗料のバインダーとして好適である。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において「%」および「部」は、特にことわりのない限り、「質量%」および「質量部」を意味する。
合成例1(側鎖に塩素を有する構造単位を含有する変性PVAの製造)
攪拌機、コンデンサー、窒素ガス導入口、モノマー投入口および開始剤投入口を備えた加圧反応槽に、予めメタノール150部および酢酸ビニルモノマー850部を仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素ガスを吹き込み、系内を窒素置換した後、系内を窒素で1.0kg/cmに加圧した。次に、開始剤として予め窒素置換を行った2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1%メタノール溶液を1部添加すると同時に、塩化ビニルモノマーを加え、重合を開始した。
重合中は系を60℃に保持し、窒素加圧を維持し、さらに2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1%メタノール溶液3.5部を重合開始直後から2時間にわたって連続的に加え、また、塩化ビニルモノマー10.5部を重合開始から2.5時間かけて連続的に加えた。
重合開始から3時間後、酢酸ビニルの反応収率が52%になった時点で系を冷却し、重合を終了した。得られた反応物にメタノール蒸気を加えながら、残存する酢酸ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーを留出し、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の40%メタノール溶液を得た。
次に、上記で得られた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の40%メタノール溶液500部に、メタノール120部、ベンゼン20部、水酸化ナトリウムの1%メタノール溶液40部を加えてよく混合し、40℃でケン化反応を行い、得られたゲル状物を粉砕し、メタノールで洗浄した後に乾燥して塩化ビニル変性PVAを得た。
この変性PVAの塩化ビニル単位含有量は3.1モル%、ケン化度は82.6モル%、平均重合度は2470であった。
なお、変性PVA中の塩素を有する構造単位の含有量は、精秤した試料を酸素フラスコ燃焼法で分解し、発生した塩素ガスを過酸化水素水に吸収させ、硝酸銀水溶液で滴定することにより試料中の塩素含有量を求め、塩素を有する構造単位のユニット分子量から含有量をモル%で算出した(以下の合成例2〜7、比較合成例1〜4においても同じ。)。
また、変性PVAのケン化度、平均重合度の測定は、JIS K 6726に準じて行った(以下の合成例2〜7、比較合成例1〜4においても同じ。)。
合成例2〜5(側鎖に塩素を有する構造単位を含有する変性PVAの製造)
メタノール、酢酸ビニルモノマーおよび塩化ビニルモノマーの使用量、重合開始剤、重合時間およびケン化反応に使用する水酸化ナトリウム量を適宜変更した以外は、合成例1と同様にして、下記表2に示すような塩化ビニル単位含有量、ケン化度および平均重合度を有する塩化ビニル変性PVAを得た。
合成例6(側鎖に塩素を有する構造単位を含有する変性PVAの製造)
攪拌機、コンデンサー、窒素ガス導入口、モノマー投入口および開始剤投入口を備えた加圧反応槽に、予めメタノール150部および酢酸ビニル850部を仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素ガスを吹き込み、系内を窒素置換した後、系内を窒素で0.7kg/cmに加圧した。次に、開始剤として予め窒素置換を行った2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1%メタノール溶液を1部添加すると同時に、塩化ビニリデンモノマーを加え、重合を開始した。
重合中は系を60℃に保持し、窒素加圧を維持し、さらに2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1%メタノール溶液4部を重合開始直後から2.5時間にわたって連続的に加え、また、塩化ビニリデンモノマー16部を重合開始から3時間かけて連続的に加えた。
重合開始から3.5時間後、酢酸ビニルの反応収率が54%になった時点で系を冷却し、重合を終了した。得られた反応物にメタノール蒸気を加えながら、残存する酢酸ビニルモノマーと塩化ビニリデンモノマーを留出し、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体の40%メタノール溶液を得た。
次に、上記で得られた塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体の40%メタノール溶液500部に、メタノール100部、ベンゼン20部、水酸化ナトリウムの1%メタノール溶液60部を加えてよく混合し、40℃でケン化反応を行い、得られたゲル状物を粉砕し、メタノールで洗浄した後に乾燥して塩化ビニリデン変性PVAを得た。
この変性PVAの塩化ビニリデン単位含有量は3.0モル%、ケン化度は83.5モル%、平均重合度は2450であった。
合成例7(側鎖に塩素を有する構造単位を含有する変性PVAの製造)
メタノール、酢酸ビニルモノマーおよび塩化ビニリデンモノマーの仕込み量、重合開始剤、重合時間およびケン化反応に使用する水酸化ナトリウム量を変更した以外は、合成例8と同様にして、下記表2に示すような塩化ビニル単位含有量、ケン化度および平均重合度を有する塩化ビニリデン変性PVAを得た。
なお、上記の合成例における重合条件について下記表1に示す。
Figure 2008255225
比較合成例1(PVA系樹脂の製造)
攪拌機、コンデンサー、窒素ガス導入口および開始剤投入口を備えた反応槽に、予めメタノール140部および酢酸ビニルモノマー860部を仕込み、系内に窒素ガスを流通させながら60℃に昇温し、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1%メタノール溶液を0.5部添加し、重合を開始した。
重合中は系を60℃に保持し、系内に窒素ガスを流しつつ常圧とし、さらに2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1%メタノール溶液1.5部を重合開始直後から2時間にわたって連続的に加えた。重合開始から2.5時間後、酢酸ビニルの反応収率が55%になった時点で系を冷却し、重合を終了した。得られた反応物にメタノール蒸気を加えながら、残存する酢酸ビニルモノマーを留出し、ポリ酢酸ビニルの40%メタノール溶液を得た。
次に、上記で得られたポリ酢酸ビニルの40%メタノール溶液500部に、メタノール120部、ベンゼン20部、水酸化ナトリウムの1%メタノール溶液15部を加えてよく混合し、40℃でケン化反応を行、得られたゲル状物を粉砕し、メタノールで洗浄した後に乾燥して、ケン化度80.2モル%、平均重合度2530のPVAを得た。
比較合成例2〜3(PVA系樹脂の製造)
メタノール、酢酸ビニルモノマーの使用量、重合開始剤、重合時間およびケン化反応に使用する水酸化ナトリウム量を変更した以外は、比較合成例1と同様にして、下記表2に示すようなケン化度および平均重合度を有するPVAを得た。
比較合成例4(PVA系樹脂の製造)
攪拌機、コンデンサー、窒素ガス導入口および開始剤投入口を備えた反応槽に、予めメタノール90部、酢酸ビニル880部およびアセトアルデヒド30部を仕込み、系内に窒素ガスを流通させながら60℃に昇温し、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1%メタノール溶液を0.5部添加し、重合を開始した。重合中は系を60℃に保持し、系内に窒素ガスを流しつつ常圧とし、さらに2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の1%メタノール溶液1.5部を重合開始直後から2時間にわたって連続的に添加した。重合開始から2.5時間後、酢酸ビニルの反応収率が85%になった時点で系を冷却し、重合を終了した。得られた反応物にメタノール蒸気を加えながら、残存する酢酸ビニルモノマーを留出し、ポリ酢酸ビニルの50%メタノール溶液を得た。
次に、上記で得られたポリ酢酸ビニルの50%メタノール溶液500部に、メタノール120部、水酸化ナトリウムの1%メタノール溶液12部を加えてよく混合し、40℃でケン化反応を行い、得られたゲル状物を粉砕し、重合度790、ケン化度71.1モル%の部分ケン化PVAを得た。
この部分ケン化PVA100部に、酢酸ナトリウム1部を加えて、よく混合した後、127℃で2時間の加熱処理を行い、特許文献1に記載相当のPVA系樹脂を得た。このPVA系樹脂の分析値は、ケン化度71.4モル%、重合度790で、0.1%水溶液の波長280nmでの吸光度は0.26、波長320nmでの吸光度は0.13で、280nmでの吸光度に対する320nmの吸光度の比は0.50であった。
上記の合成例で得た変性PVAおよび比較合成例で得たPVA系樹脂の特性を下記表2に示す。
Figure 2008255225
以下の実施例および比較例では、上記の合成例で得られた変性PVAおよび比較合成例で得られたPVA系樹脂(以下、それらを総称してPVA系樹脂という)のうちのいずれかを分散安定剤として用いて、塩化ビニルの懸濁重合を行った。
実施例1〜9および比較例1〜4
耐圧のステンレス製重合器に、脱イオン水900部および合成例あるいは比較合成例で得られたPVA系樹脂を、下記表2に示す種類および使用量で仕込んだ。次に、真空ポンプで重合器内を50mmHgとなるまで減圧し、脱気した後、塩化ビニル単量体700部を仕込み、さらに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート0.42部を仕込んだ後、攪拌を行い、昇温を開始した。重合器の内容物の温度を57℃に維持しながら懸濁重合を行い、重合初期の内圧7.0kg/cmが、6.0kg/cm (いずれもゲージ圧)に降下した時点で重合反応を停止した。そして、未反応単量体を減圧トラップにより回収した後、重合体スラリーを重合器から抜き出し、脱水、乾燥して重合体(塩化ビニル樹脂)を得た。
上記の実施例および比較例で使用した分散安定剤の組成を下記表3に示す。なお、上記の各実施例および比較例においては、それぞれ2種類のPVA系樹脂を併用し、PVA系樹脂の種類は、それが得られた合成例または比較合成例の番号で表す。また、PVA系樹脂の使用量は、塩化ビニル単量体の質量を100%とした時の質量%で表す。
Figure 2008255225
また、得られた塩化ビニル樹脂の各種物性(粒度分布、嵩比重、可塑剤吸収性、フィッシュアイ、透明性および初期着色性)を、次のようにして評価した。
<粒度分布>
ロータップ式振動篩(JIS篩を使用)により測定した粒子径分布より、60メッシュオンの粗大粒子と200メッシュパスの微細粒子の含有量を%で表した。粗大粒子、微細粒子の含有量が少ないほど、粒度分布がシャープであることを示す。
<嵩比重>
JIS K−6721に準拠して測定した。嵩比重が大きいほど、押出し速度が向上し、加工性が良いことを示す。
<可塑剤吸収性>
底にグラスファイバーを詰めた円筒状容器に得られた樹脂を入れ、過剰のジオクチルフタレート(以下、DOPと略記する)を加え、30分放置することによって樹脂にDOPを浸透させた後、3000rpmで遠心分離することによって余分なDOPを除去した後樹脂の重量を測定して、重合体100部あたりのDOP吸収量を算出した。DOP吸収量が大きいほど、可塑剤吸収性がよく、成形加工性に優れることを示す。
<フィッシュアイ>
得られた樹脂100部、ジオクチルフタレート30部、三塩基性硫酸鉛1部、ステアリン酸鉛1.5部、二酸化チタン0.2部、カーボンブラック0.1部を150℃で3分間溶融混錬し、厚さ0.3mmのシートを作製し、100mm×100mmあたりのフィッシュアイ(透明粒子)の数を測定した。
<透明性および初期着色性>
得られた樹脂100部、Ba−Zn系複合安定剤2部、エポキシ化大豆油2部、DOP38部を150℃で10分間溶融混錬し、厚さ0.8mmのシートを作製した。次に、このシート片を7枚重ね、180℃で5分間プレスし、厚み5mmの積層シートを得た。この積層シートの透明性および初期着色性を色度・濁度測定器(COH−300A、日本電色工業社製。)を用いて測定し、それぞれヘイズ、黄色度(YI)で評価した。
上記の評価結果を下記表4に示す。
Figure 2008255225
実施例10〜13、比較例5〜6
耐圧のステンレス製重合器に、脱イオン水500部、炭酸ナトリウム0.6部および合成例あるいは比較合成例で得られたPVA系樹脂を、下記表5に示す種類および使用量で仕込んだ。次に、真空ポンプで重合器内を50mmHgとなるまで減圧し、脱気した後、塩化ビニル単量体220部とドデシルメルカプタン1.5部を仕込み、攪拌しながら65℃まで昇温し、さらに酢酸ビニル単量体5部と重合開始剤としてt−ブチルパーオキサイド1部を添加して重合を開始した。重合中は重合器の内容物の温度を65℃に維持して攪拌を行いながら、さらに酢酸ビニル単量体25部を連続的に加え、重合開始から8時間以内に重合器の内圧が0.5kg/cm(ゲージ圧)になった場合、その時点で重合反応を停止した。重合開始から8時間経過した時点で重合器の内圧が0.5kg/cmにならなかった場合は、その時点で重合反応を停止し、重合速度が非常に遅いと判断して重合不良とした。そして、未反応単量体を回収した後、重合体スラリーを重合器から抜き出し、脱水、乾燥して塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を得た。
上記の実施例および比較例で使用した分散安定剤の組成を下記表5に示す。なお、PVA系樹脂の種類は、それが得られた合成例または比較合成例で表し、その使用量は、塩化ビニル単量体および酢酸ビニル単量体の合計質量を100%とした時の質量%で表す。
Figure 2008255225
また、得られた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の物性として、次のようにして、溶媒に溶解した場合の透明性を評価した。
<溶液の透明性>
得られた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂40部、メチルエチルケトン20部、メチルイソブチルケトン20部、トルエン20部を混合し、20℃で1時間、攪拌しながら溶解した。得られた溶液の透明性を目視により、以下の判断基準で判定した。
○:濁りがなく透明である ×:濁っている(不透明)
上記の評価結果を下記表6に示す。
Figure 2008255225
上記の実施例が示すように、本発明の側鎖に塩素を有する構造単位を所定の範囲の量で含有する変性PVA系樹脂からなる分散安定剤は、少ない使用量でビニル系単量体の懸濁重合を安定化することができるため、実施例で得られた塩化ビニル樹脂は、粒度分布がシャープで、嵩比重が高く、可塑剤吸収性も良好で、シート状に加工した場合、フィッシュアイが少なく、透明性、色相に優れることがわかった。また、本発明の分散安定剤を使用した実施例で得られた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂においても、溶剤に溶解したときに溶液が濁るなどの、樹脂中に残留した分散安定剤による物性低下が見られないことがわかった。

Claims (7)

  1. 側鎖に塩素を有する構造単位を含有し、その含有量が0.1〜20モル%である変性ポリビニルアルコール系樹脂からなることを特徴とするビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤。
  2. 変性ポリビニルアルコール系樹脂が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のケン化物であることを特徴とする請求項1記載の懸濁重合用分散安定剤。
  3. 変性ポリビニルアルコール系樹脂が、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体のケン化物であることを特徴とする請求項1記載の懸濁重合用分散安定剤。
  4. 変性ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が50〜95モル%、平均重合度が400〜5000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤。
  5. ビニル系単量体が、塩化ビニル単量体またはこれと共重合し得る他の単量体との混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤を使用してビニル系単量体を懸濁重合することを特徴とするビニル系重合体の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤を使用してビニル系単量体を懸濁重合することにより製造される塩化ビニル樹脂あるいは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体またはそのケン化物。
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