JP2008247722A - セラミックス基複合部材およびセラミックス基複合部材の製造方法 - Google Patents

セラミックス基複合部材およびセラミックス基複合部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コーティング層とCMC基材との熱膨張係数ミスマッチを緩和することができ、コーティング層とCMC基材との密着性を向上させることができるセラミックス基複合部材を提供する。
【解決手段】セラミックス基複合材料からなる基材1と、コーティング層3とを有するセラミックス基複合部材10であって、基材1の被コーティング面1a側に、熱膨張係数が基材1とコーティング層5との間の値である応力緩和材料が含浸されてなる応力緩和層2を有するセラミックス基複合部材10とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、セラミックス基複合部材およびセラミックス基複合部材の製造方法に関し、特に、基材とコーティング層との密着強度に優れたセラミックス基複合部材およびその製造方法に関する。
セラミックス繊維とセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料(Ceramic Matrix Composite:以下、CMCと略称する)は、従来から、ジェットエンジンのシュラウド部品やタービン部品などの材料として用いられている。このような用途の基材としてCMCを用いる場合、一般に、CMC基材の表面に耐環境コーティング(EBC)層が形成される。耐環境コーティング層は、高温ガス環境に対する耐熱性や耐酸化性、耐腐食性(特に耐水蒸気(減肉)性)、快削性を向上させるものであり、例えば、特許文献1〜特許文献4に示すように、希土類酸化物(シリケート)、ハフニア(IVA族金属酸化物)、SAS(Strontium-Almino-Silicate)などからなるものが知られている。
しかし、耐環境コーティング層は、一般に、熱膨張係数が5〜10×10-6/Kであり、熱膨張係数が3×10-6/K程度であるCMC基材との熱膨張係数の差が非常に大きい。このため、従来から、耐環境コーティング層とCMC基材との熱膨張差に起因する残留応力によって、耐環境コーティング層にクラックが発生したり、耐環境コーティング層が剥離したりしてしまうことが問題となっていた。
この問題を解決するために、これまでにさまざまな工夫がなされている。例えば、図20(a)に示すように、耐環境コーティング層15とCMC基材11との間に、熱膨張係数が耐環境コーティング層15とCMC基材11との中間の値である中間層13を形成する方法が挙げられる。中間層13としては、アルミノケイ酸バリウムストロンチウム、ムライト、ハフノンなどからなるものが挙げられる。中間層13を形成することで耐環境コーティング層15とCMC11との熱膨張差によって発生する応力を段階的に緩和できる。図20(a)に示す中間層13は、例えば、CMC基材11の表面にアルミノケイ酸バリウムストロンチウム、ムライト、ハフノンなどの中間層13となる材料を溶射する方法などにより形成される。
この場合、CMC基材11と中間層13との接着力(密着強度)が低い場合、界面で剥離が生じてしまうことが新たな問題となる。図20(a)に示すようにボンド層12としてCMC基材11と中間層13の間にSi、希土類シリサイド、Tiなどの活性金属を形成することにより、化学的な接着力(密着強度)を向上させることができる。ボンド層12はCMC基材11の表面にSi、希土類シリサイド、Tiなどのボンド層となる材料を減圧溶射する方法などにより形成される。
また、上記の問題を解決する他の技術として、図20(b)に示すように、表面に溝11aを有するCMC基材11上に耐環境コーティング層15を形成する方法が挙げられる。CMC基材11の表面に溝11aを設けることで、耐環境コーティング層15とCMC基材11との密着性を向上させるアンカー効果を得ることができ、耐環境コーティング層15とCMC基材11との物理的な接着力を高めることができる。
特開2006−193830号公報 米国特許出願公開第2006/0121295号明細書 特開2006−52126号公報 特開2005−200226号公報
しかしながら、図20(a)に示す方法において、Si、希土類シリサイド、Tiなどの活性金属を用いてボンド層12を形成した場合、形成されたボンド層12を構成するSi、希土類シリサイド、Tiなどの活性金属は、安定な酸化物あるいはシリケートに変化する。この活性金属から酸化物あるいはシリケートへの変化は、体積変化を伴う変化であるため、CMC基材11上の全面にボンド層12を形成すると、中間層13と耐環境コーティング層15の剥離が生じてしまう。しかし、中間層13と耐環境コーティング層15の剥離が生じないように、CMC基材11上の一部にボンド層12を形成しない領域を設けると、CMC基材11を保護のための緻密性が不十分となってしまう。
また、図20(b)に示す方法を用いた場合、耐環境コーティング層15とCMC基材11との熱膨張係数ミスマッチを緩和することができないため、耐環境コーティング層15の密着力のバラツキが大きく、剥離が生じる場合もあり、安定した品質の耐環境コーティング層15を得ることが困難であった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、コーティング層とCMC基材との熱膨張係数ミスマッチを緩和することができ、コーティング層とCMC基材との密着性を向上させることができるセラミックス基複合部材を提供することを目的とする。
また、本発明は、コーティング層とCMC基材との熱膨張係数のミスマッチを緩和することができ、コーティング層とCMC基材との密着性を向上させることができるセラミックス基複合部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のセラミックス基複合部材は、セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料からなり、コーティング層の形成される被コーティング面を有する基材と、前記被コーティング面に形成されたコーティング層とを有するセラミックス基複合部材であって、前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料が含浸されてなる応力緩和層を有することを特徴とする。
上記のセラミックス基複合部材においては、前記基材が複数の気孔を有するものであり、前記気孔のうちの少なくとも前記被コーティング面に露出された前記気孔が、前記応力緩和材料の充填された充填気孔とされており、前記被コーティング面と、前記充填気孔のうち前記被コーティング面から最も深い位置に存在する前記充填気孔に充填された前記応力緩和材料との間が前記応力緩和層とされていることを特徴とするものとすることができる。
上記のセラミックス基複合部材においては、前記応力緩和層に存在する気孔のうち前記充填気孔の割合が、前記コーティング層に近づくに従って増加していることを特徴とするものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記応力緩和層と前記コーティング層との間に、前記応力緩和材料からなり、前記応力緩和層と一体化された中間層を有するものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記応力緩和材料は、熱膨張係数が1〜6[×10−6/K] の範囲のものであることを特徴とするものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記応力緩和材料が、酸化物セラミックスと、前記酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記応力緩和材料が、SiCとYbSiOとを含むものとすることができる。
上記のセラミックス基複合部材においては、前記セラミックス繊維および/または前記セラミックスマトリックスが、SiCからなることを特徴とするものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記コーティング層が、HfOからなるものとすることができる。
また、上記の課題を解決するために、本発明のセラミックス基複合部材の製造方法は、セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料からなり、コーティング層の形成される被コーティング面を有する基材と、前記被コーティング面に形成されたコーティング層とを有するセラミックス基複合部材の製造方法であって、前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料を含浸させて応力緩和層を形成する緩和層形成工程と、前記基材の応力緩和層上に前記コーティング層を形成するコーティング工程とを含むことを特徴とする。
上記のセラミックス基複合部材の製造方法は、前記緩和層形成工程が、前記応力緩和材料を含むスラリー中に前記基材を含浸する工程と、前記基材に付着した前記スラリーを焼結させる工程とを含むことを特徴とする方法とすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材の製造方法は、前記スラリーが、焼結させることにより酸化物セラミックスとなる母材元と前記酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含む原料粉末と、焼結時の酸化物セラミックス粉末の焼結による結合の促進に寄与するゾルと溶媒とからなる分散媒と含むことを特徴とする方法とすることができる。
本発明のセラミックス基複合部材は、前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料が含浸されてなる応力緩和層を有するので、応力緩和層によって、コーティング層と基材との熱膨張係数のミスマッチを緩和することができ、コーティング層と基材との密着性を向上させることができる。
しかも、本発明のセラミックス基複合部材では、応力緩和層が、前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料が含浸されてなるものであるので、応力緩和層によって、コーティング層と基材との密着性を向上させるアンカー効果を得ることができ、コーティング層と基材との物理的な接着力を高めることができる。
また、本発明のセラミックス基複合部材の製造方法は、前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料を含浸させて応力緩和層を形成する緩和層形成工程を含む方法であるので、コーティング層と基材との熱膨張係数のミスマッチを緩和することができ、コーティング層と基材との密着性を向上させるアンカー効果の得られる応力緩和層を有する本発明のセラミックス基複合部材が得られる。
「第1実施形態」
以下、図面を参照して、本発明に係るセラミックス基複合部材およびセラミックス基複合部材の製造方法の一実施形態について説明する。
図1は、本発明のセラミックス基複合部材の一部を拡大して示した概略断面図である。図1に示すセラミックス基複合部材10は、基材1と、応力緩和層2と、中間層3と、コーティング層5とを有するものである。
基材1は、図2に示すセラミックス基複合材料(CMC)20からなるものである。図2に示すCMC20は、セラミックス繊維21とセラミックスマトリックス22とからなるものである。また、CMC20は、熱膨張係数が3[×10−6/K]程度で、複数の気孔(図2においては図示略)を有するものである。本実施形態においては、CMC20の気孔率((気孔の体積/CMCの体積)×100)が5%〜60%、好ましくは20%程度のものが用いられる。
セラミックス繊維21としては、C繊維やSiC繊維などからなる所定の繊維束を軸方向と円周方向に繊維を配向させた2次元織物や、ブレーディング織物、繊維束を互いに直交する3軸方向に配向させた3次元織物が用いられている。ブレーディング織物は、軸方向の繊維と、組糸と呼ばれる完全に周方向ではない少し傾いた軸方向の繊維に絡まる繊維からなる織物であり、組紐と同じ構造を有するものである。また、2次元織物やブレーディング織物は、3〜50層程度積層されたものを用いることが好ましい。
また、セラミックスマトリックス22は、CやSiC、Siなどからなるものであり、セラミックス繊維21に付着されている。このようなCMC20の中でも特に、セラミックス繊維21とセラミックスマトリックス22のいずれもがCからなるものやSiCからなるもの、セラミックス繊維21がCからなり、セラミックスマトリックス22がSiCからなるものなどを用いることが好ましい。
また、図1において、符号1aは、コーティング層5の形成される被コーティング面を示している。基材1の被コーティング面1a側には、後述する応力緩和材料が含浸されてなる応力緩和層2が形成されている。また、基材1の有する複数の気孔のうち、被コーティング面1aに露出された複数の気孔には、応力緩和材料が充填されており、充填気孔1bとされている。そして、図1に示すように、基材1において、被コーティング面1aと、充填気孔1bのうち被コーティング面1aから最も深い位置に存在する充填気孔1bに充填された応力緩和材料との間が応力緩和層2とされている。
応力緩和層2の厚み(被コーティング面1aから最も深い位置に存在する充填気孔1bに充填された応力緩和材料と、被コーティング面1aとの間の距離)は、0.2mm〜30mm程度とされることが好ましく、0.5mm〜10mm程度とされることがより好ましい。応力緩和層2の厚みが上記範囲未満であると、コーティング層5と基材1との密着性を向上させるアンカー効果が十分に得られない場合がある。また、応力緩和層2の厚みが上記範囲を超えると、製造が困難となるため好ましくない。
また、図1に示すセラミックス基複合部材では、応力緩和層2における充填気孔1bの割合は、コーティング層5に近づくに従って増加している。なお、図1においては、図面を見やすくするために、基材1の全体に均一に存在する気孔のうち、応力緩和材料の充填された充填気孔の一部のみを図示し、応力緩和材料の充填されていない気孔の図示を省略している。
また、応力緩和層2とコーティング層5との間には、応力緩和材料からなり、応力緩和層2と一体化された中間層3が設けられている。
中間層3の厚みは、0.005mm〜2mm程度とされることが好ましく、0.01mm〜0.5mm程度とされることがより好ましい。中間層3の厚みが上記範囲未満であると、中間層3を設けることによるコーティング層と基材との物理的な接着力を高める効果が十分に得られない場合がある。また、中間層3の厚みが上記範囲を超えると、中間層に内在する気孔や亀裂が大きくなり中間層の強度が低下する可能性があるため好ましくない。
応力緩和層2および中間層3を構成する応力緩和材料は、熱膨張係数が基材1とコーティング層5との間の値のものであり、具体的には、熱膨張係数が1〜6[×10−6/K] の範囲であることが好ましい。また。応力緩和材料は、高温ガス環境に対する耐熱性、耐酸化性、耐腐食性に優れ、室温〜1400℃の間で結晶相の変化による体積変化を起こさないものであることが好ましい。
本実施形態においては、応力緩和材料として、酸化物セラミックスと酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むもの用いられている。
酸化物セラミックスとしては、耐熱、耐環境性に優れ、熱膨張係数が1〜10[×10−6/K] の範囲にあるものを用いることが好ましい。酸化物セラミックスとしては、具体的には、YbSiO、YbSiO、ErSiO、イットリウムシリケート(YSiO)、エリビウムシリケートのような希土類シリケート、アルミノシリケート、マグネシウムシリケートなどの各種シリケートや、Al、SiOなどの単一の酸化物、ボロシリケートガラス(パイレックスガラス(登録商標))などのガラスなどを用いることができる。これらの酸化物セラミックスの中でも、YbSiO、YSiO、ErSiOのような希土類シリケートは、水蒸気が含まれる高温大気中における分解速度が遅いため、基材1としてSiCを用いたCMCを使用する場合に、水蒸気によるCMCの減肉を抑制することができるため好ましい。特に、熱膨張係数が6.1[×10−6/K]とCMCに近く、CMCの素材として好ましく使用されるSiCと化学的親和性の高い希土類シリケートであるYbSiOなどを用いることが好ましい。
酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材としては、炭化物や窒化物などの非酸化物セラミックスであって、大気中での酸化温度が1000℃以上であって、酸化した後も酸化物セラミックスとして分解したり蒸発したりしないものを用いることが好ましい。具体的には、難焼結材としては、Si、AlN、BNなどの窒化物や、SiC、BC、WCなどの炭化物、CrAlなどのアルミ化物を用いることができる。中でも、特に、CMCの素材として好ましく用いられるSiCを用いることが好ましい。なお、焼結収縮の小さい難焼結材の形状や粒径については、基材1の気孔1bの大きさより小さいものであればよく、特に限定されないが、平均粒径1〜10μm程度のものを好ましく使用できる。
図1に示すように、基材1の被コーティング面1aには、中間層3を介してコーティング層5が形成されている。コーティング層5は、耐熱、耐環境性に優れるHfOによって形成されることが好ましい。
図1に示すセラミックス基複合部材10は、以下に示す方法によって製造できる。
「緩和層形成工程」
本実施形態においては、応力緩和層2の形成と同時に中間層3の形成を行なう場合を例に挙げて説明する。まず、基材1の被コーティング面1aを、応力緩和材料を含むスラリー中に含浸することによって、少なくとも被コーティング面1aに露出された気孔1bに、応力緩和材料を含むスラリーを充填する。ここでの含浸は、例えば、スラリー中の分散媒内で沈殿している原料粉末中に基材1を埋め、スラリーと基材とに超音波などを用いて振動を与えながら行なうことが好ましい。このようにして、気孔1bにスラリーを含浸させることで、基材1の気孔1b内に原料粉末を高濃度で含浸させることができる。また、分散媒内に原料粉末を均一に分散させたスラリー中に基材1を浸し、これを減圧して基材1内の気孔から大気を脱気してスラリーと置換することによっても基材1の気孔1b内に原料粉末を含浸させることができる。さらに、基材1の気孔1bが被コーティング面1aから他の面へ連続した気孔である場合には、分散媒内に原料粉末を均一に分散させたスラリーを被コーティング面1aから加圧注入する、または被コーティング面1a以外の面から減圧するなどして気孔1b内にスラリーを含浸させることができる。この方法では被コーティング面1aと被コーティング面1a以外の面が逆でも良い。
次いで、ディッピングにより被コーティング面1aにスラリーを塗布し、適度に表面に皮膜を形成して乾燥する。このディッピングと乾燥は、中間層3の厚みなどに応じて適宜繰り返して行なうことができる。また、ディッピングにおいて用いるスラリーは、含浸時に用いるスラリーと同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
ディッピングおよび含浸時に用いるスラリーとしては、原料粉末と、分散媒とからなるものなどが用いられる。原料粉末としては、焼結させることにより酸化物セラミックスとなる母材元と、酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むものを用いることが好ましい。さらに、原料粉末には、必要に応じて焼結助剤を添加することができる。
母材元としては、Yb粉末、Y粉末、Er粉末、Al粉末、SiO粉末、MgO粉末、ボロシリケートガラス粉末などが用いられる。また、酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材としては、SiC粉末、Si粉末、AlN粉末、BN粉末、BC粉末、CrAl粉末、WC粉末、CrAl粉末などが用いられる。また、焼結助剤としては、ボロシリケートガラス粉末などが用いられる。
また、分散媒としては、焼結時の酸化反応に寄与するゾルと、スラリーの粘度を調整するための溶媒とからなる分散媒と含むものを用いることが好ましい。
ゾルとしては、シリカゾル、アルミナゾルなどが用いられる。溶媒としては、エタノールなどが用いられる。
ディッピングおよび含浸時に用いるスラリーとして、上記原料粉末と、上記分散媒とからなるものを用いた場合、焼結を行なうことにより、ゾルに含まれるSiOまたは、ゾルと焼結助剤とに含まれるSiOが母材元と反応して応力緩和層2および中間層3を構成する酸化物セラミックスになると同時に、上記原料粉末同士が結合する。なお、原料粉末と分散媒との混合割合は、含浸時の作業性や、ディッピング回数、最終的に得たい中間層3の厚みなどを考慮して適宜決定できる。
また、スラリー中の原料粉末中における難焼結材の体積割合は、30%〜90%の範囲であることが好ましく、40%〜60%の範囲であることがより好ましい。スラリー中の原料粉末中における難焼結材の体積割合が上記範囲未満であると、中間層3を形成する際の焼結による過大な収縮により、中間層3にひび割れが生じたり、中間層3が剥離したりする場合があり、コーティング層5と基材1との接着力を十分に高めることができない恐れがある。スラリー中の原料粉末中における難焼結材の体積割合が上記範囲を超えると、中間層3を形成するための焼結によって得られる結合強度が不十分となり、十分な硬さを有する中間層3が得られなくなる場合がある。
次に、基材1に付着したスラリーをアルゴン雰囲気中で1300℃の温度で1時間程度焼結させることにより、スラリーの充填された気孔が応力緩和材料の充填された充填気孔1bにされて応力緩和層2が形成されるとともに、応力緩和層2と連続して一体化された中間層3が形成される。ここでの焼結は、基材1の強度に悪影響を及ぼすことのないように、1300℃以下の温度で行なうことが好ましい。
「コーティング工程」
緩和層形成工程の後、中間層3上にAPS(大気中溶射)によりコーティング層を形成することにより、図1に示すセラミックス基複合部材10が得られる。
本実施形態のセラミックス基複合部材10は、基材1の複数の気孔のうちの少なくとも被コーティング面1aに露出された気孔が、応力緩和材料の充填された充填気孔1bとされており、応力緩和材料の熱膨張係数が基材1とコーティング層5との間の値であることにより、被コーティング面1aと、充填気孔1bのうち被コーティング面1aから最も深い位置に存在する充填気孔1bに充填された応力緩和材料との間が応力緩和層2とされているので、応力緩和層2によって、コーティング層5と基材1との熱膨張係数の差による熱伸び差に伴う残留応力を低減することができ、コーティング層5と基材1との密着性を向上させることができる。
しかも、本実施形態のセラミックス基複合部材10では、応力緩和層2が、基材1の複数の気孔のうちの少なくとも被コーティング面1aに露出された気孔が充填気孔1bとされたものであるので、応力緩和層2によって、コーティング層5と基材1との密着性を向上させるアンカー効果が効果的に得られ、コーティング層5と基材1との物理的な接着力を高めることができる。
これに対し、例えば、応力緩和層2および中間層3を形成することなく、CMCからなる基材上にHfOからなるコーティング層を形成する場合、HfOの熱膨張係数が9.3[×10−6/K]と非常に高いため、熱膨張係数が3[×10−6/K]程度である基材1との熱膨張係数の差が非常に大きくなってしまう。したがって、基材に接するコーティング層を基材上に形成した場合、コーティング層と基材との密着性を十分に高くすることは困難である。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10では、応力緩和層2が、コーティング層5と基材1との密着性を向上させるアンカー効果の得られるものであるので、酸化物セラミックス単体では応力緩和層2や中間層3を形成できない密着力の弱い酸化物セラミックスであっても、密着力の高い応力緩和層2や中間層3を形成することが可能となる。
また、応力緩和層2および中間層3は、高温環境での使用により徐々に焼結収縮していき、密着力が低下して剥離にいたる。本実施形態のセラミックス基複合部材10では、応力緩和層2を構成する充填気孔1bおよびCMCによって、高温環境における応力緩和層2および中間層3の焼結収縮が妨げられる。その結果、応力緩和層2および中間層3の焼結収縮の速度を低減することができ、密着力の低下を遅くして応力緩和層2および中間層3の剥離までの寿命を延長することができる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10は、応力緩和層2が、基材1の複数の気孔のうちの少なくとも被コーティング面1aに露出された気孔が充填気孔1bとされたものであり、コーティング層5を貫通して酸素や水蒸気が入り込んできたとしても、入り込んできた酸素や水蒸気の拡散経路となる被コーティング面1aに露出された気孔に応力緩和材料が充填されているので、酸素や水蒸気と基材1との接触を防止することができる。よって、基材1の劣化が防止でき、寿命の長いセラミックス基複合部材10となる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10では、応力緩和層2における充填気孔1bの割合が、コーティング層5に近づくに従って増加しているので、応力緩和層2の熱膨張係数が、コーティング層5から離れるに従って徐々に基材1の熱膨張係数に近い値となるようにされている。すなわち、本実施形態のセラミックス基複合部材10では、コーティング層5と基材1との間で熱膨張係数が段階的に変化するものとされており、コーティング層5と基材1との間の熱応力を効果的に緩和することができ、コーティング層5と基材1との間の密着力を効果的に向上させることができる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10では、応力緩和層2とコーティング層5との間に、応力緩和材料からなり、応力緩和層2と一体化された中間層3を有するので、コーティング層5と基材1との熱膨張係数の差をより一層緩和することができ、コーティング層5と基材1との間の密着力をより一層効果的に向上させることができる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10では、応力緩和材料を、酸化物セラミックスと、酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むものとすることで、以下に示すように、コーティング層5と基材1との間の密着力をより一層効果的に向上させることができる。
ここで、例えば、酸化物セラミックスのみからなる中間層を基材上に焼結法により形成した場合を例に挙げて、焼結時における中間層の体積収縮について図面を用いて説明する。図3は、中間層を構成する酸化物セラミックスの焼結による体積収縮を説明するための模式図である。図3(a)は焼結前の酸化物セラミックスの状態を示す図であり、図3(b)は焼結後の酸化物セラミックスの状態を示す図である。
図3(a)および図3(b)に示すように、焼結前の酸化物セラミックス17と焼結後の酸化物セラミックス17aとを比較すると、焼結後の酸化物セラミックス17aでは隣り合う酸化物セラミックス17a同士間の隙間8の占める割合が狭くなっており、焼結により大きく体積が収縮していることがわかる。
このため、酸化物セラミックスのみからなる中間層を基材上に焼結法により形成した場合、焼結時における酸化物セラミックスの大きな体積収縮により、基材から中間層が剥離してしまう恐れがあった。また、中間層の焼結時における酸化物セラミックスの体積収縮を避けるため、溶射法により酸化物セラミックスのみからなる中間層を基材上に形成することもできる。しかし、この場合、得られた中間層中に微細な亀裂や微細粒子が存在するものとなる。そのため、セラミックス基複合部材の初回の熱暴露時に、中間層を構成する材料が焼結し、焼結による大きな体積収縮が発生して、中間層が基材から剥離してしまう恐れがあった。
これに対し、応力緩和材料を酸化物セラミックスと酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むものとした場合の焼結時における応力緩和材料の体積収縮について図面を用いて説明する。図4は、応力緩和材料の焼結による体積収縮を説明するための模式図である。図4(a)は焼結前の応力緩和材料の状態を示す図であり、図4(b)は焼結後の応力緩和材料の状態を示す図である。
図4(a)および図4(b)に示すように、焼結前の酸化物セラミックス7と焼結後の酸化物セラミックス7aとを比較すると、焼結後の酸化物セラミックス7aでは隣り合う酸化物セラミックス7a同士間の隙間8の占める割合が狭くなっている。しかし、図4(b)に示す焼結後の酸化物セラミックス7a同士間では、図3(b)に示す焼結後の酸化物セラミックス17a同士間と比較して隙間8の占める割合が広くなっている。また、図4(b)に示す焼結後の酸化物セラミックス7aでは、酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材6が、酸化物セラミックス7a同士間に部分的に入り込み、焼結による収縮を妨げ、焼結による応力緩和材料の体積収縮を緩和していることがわかる。
このように、応力緩和材料を、酸化物セラミックスと酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むものとすることで、応力緩和層2および中間層3の焼結時や熱暴露時における体積収縮を低減することができ、応力緩和層2および中間層3の剥離を防止することができるので、コーティング層5と基材1との間の密着力をより一層効果的に向上させることができる。
さらに、応力緩和材料に含まれる酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材をSiCとした場合、SiCの熱膨張係数と基材1を構成するCMCの熱膨張係数とが近似するので、基材1と応力緩和層2および中間層3との密着力をより一層向上させることができ、コーティング層5と基材1との間の密着力を効果的に向上させることができる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10において、応力緩和材料に含まれる難焼結材をSiCとし、かつ、セラミックス繊維および/またはセラミックスマトリックスをSiCからなるものとした場合、SiCの熱膨張係数と基材1を構成するCMCの熱膨張係数とが非常に近くなるので、基材1と応力緩和層2および中間層3との密着力をより一層向上させることができ、コーティング層5と基材1との間の密着力をより効果的に向上させることができる。
なお、セラミックス繊維および/またはセラミックスマトリックスがSiCからなるものである場合、高温大気中では基材1を構成するSiCが酸化されてSiOに変化される。そして、大気圧中や加圧大気中において、基材1を構成するSiCの表面にSiOが形成されると、SiOが保護層となり、さらなるSiCの酸化が抑制される。しかし、雰囲気中に水蒸気が含まれていると、保護層を構成するSiOがSiOとして蒸発してしまう。このため、SiOからなる保護層がなくなり、SiCのさらなる酸化が進行し、さらにSiOが形成されてSiOとして蒸発する。その結果、基材1を構成するCMCが減肉してしまう。したがって、ガスタービンのように水蒸気を含む高温大気環境にさらされる部位にSiCを用いたCMCを使用する場合には、SiCの酸化の進行を抑制するとともに、水蒸気によるCMCの減肉を抑制する必要がある。
ここで、応力緩和層2および中間層3を構成する応力緩和材料として、SiCと、YbSiO、YSiO、ErSiOのような希土類シリケートとを含むものを用いた場合、応力緩和層2および中間層3に含まれるSiCは、長時間の高温酸化環境での使用により徐々に酸化されてSiOになる。SiCが酸化されて得られたSiOは、YbSiO、YSiO、ErSiOがそれぞれYbSi2O、YSi2O、ErSi2Oに変化することによって、希土類シリケート中に吸収されて希土類シリケートと一体化される。よって、SiOがSiOとして蒸発することにより、基材1を構成するCMCが減肉することを防止することができる。
また、応力緩和層2および中間層3を構成する応力緩和材料として、SiCと、YbSiO、YSiO、ErSiOのような希土類シリケートとを含むものを用いた場合、長時間の高温酸化環境での使用によりSiCが酸化されてSiOとされると体積が膨張する。一方、長時間の高温酸化環境での使用により、応力緩和層2および中間層3に含まれる希土類シリケートの焼結収縮も徐々に進む。したがって、SiCがSiOに変化することによる体積膨張が、希土類シリケートの焼結収縮によって相殺され、応力緩和層2および中間層3の全体としての体積収縮の抑制に寄与し、長時間の高温酸化環境での使用により徐々に進行する体積収縮に起因する密着力の低下などの悪影響が防止され、寿命を延長することができる。
また、応力緩和材料をYbSiO、YSiO、ErSiOのような希土類シリケートを含むものとすることで、水蒸気を含む高温大気環境にさらされる部位にセラミックス基複合部材10を用いた場合にも、応力緩和層2および中間層3が分解されにくく、耐熱、耐環境性に優れるものとなる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10において、応力緩和材料をSiCとYbSiOとを含むものとすることで、応力緩和層2および中間層3の耐熱、耐環境性に優れるものとなり、ガスタービン等の高温ガス環境中での劣化が少なく、長時間密着力を維持でき、寿命の長いものとなる。さらに、応力緩和材料をSiCとYbSiOとを含むものとすることで、APS(大気中溶射)により形成されたHfOからなるコーティング層5よりも緻密な応力緩和層2および中間層3となる。よって、コーティング層5を貫通して水蒸気などの高温酸化・腐食ガスが入り込んできたとしても、基材1が高温酸化・腐食ガスにさらされるのを効果的に抑制することができ、基材1の強度低下を防止することができる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10において、コーティング層5をHfOからなるものとすることで、耐熱、耐環境性に優れたセラミックス基複合部材10となる。
なお、応力緩和層2および中間層3の形成方法としては、上記の方法に限定されるものではなく、溶射、焼結、CVD、PVD、溶融ガラスのディッピングなどを応力緩和材料の材質などに応じて適宜組み合わせて用いることができる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10においては、基材1の被コーティング面1aに溝などを設けることにより、基材1の被コーティング面1aの密着力を向上させるようにしなくても、十分に高いコーティング層5と基材1との間の密着力が得られるが、基材1の被コーティング面1aに溝を設け、より一層密着力を向上させてもよい。
また、本発明においては、上述したように、応力緩和材料からなる応力緩和層2および中間層3を設けることが好ましいが、中間層3は設けなくてもよい。
また、コーティング層5は、HfOに限定されるものではなく、例えば、高温ガス環境に対する耐熱性、耐酸化性、耐腐食性、快削性の高いLuSiなどの酸化物セラミックスなどを用いることができる。また、コーティング層5の形成方法としては、溶射の他、焼結、CVD、PVD、溶融ガラスのディッピングなどを用いることができ、コーティング層の材質などに応じて適宜決定できる。
(実施例)
次に、本発明の実施例について説明する。
「実験例1」
図5に示すフローチャートに従って基材に応力緩和層および中間層を形成した。
すなわち、以下に示す基材1の被コーティング面1aを、以下に示す原料および製造方法で得られたスラリー中に10分間含浸した(図5に示すS1)。基材1の含浸は、スラリーに含まれる分散媒内で沈殿している原料粉末中に基材1を埋め、スラリーと基材1の入った容器を超音波洗浄器に入れて基材1およびスラリーに振動を与え、基材1にスラリーを含浸させて気孔1bに原料粉末を充填する方法によって行った。次いで、基材1にこびりついた余分なスラリーを取り除き(図5に示すS2)、スラリーの分散媒内に沈殿している原料粉末をすくい取って基材1の被コーティング面1aに盛り付けて塗布(図5に示すS3)を行った。その後、大気中100℃で20分間乾燥(図5に示すS4)して、被コーティング面1aに皮膜を形成した。次に、基材1に付着したスラリーをアルゴン雰囲気中で1300℃の温度で1時間程度焼結(図5に示すS5)させることにより、厚み4mmの応力緩和層2および厚み0.15mmの中間層3を形成した。
「基材」
材質:3次元強化SiC長繊維からなるセラミックス繊維とSiCからなるセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料
気孔率:約40%
寸法:縦10mm、横10mm、厚み4mm
「スラリー」
SiC粉末3.35g、Yb粉末3.78g、ボロシリケートガラス粉末0.89g、シリカゾル1ml、エタノール1mlからなるものを用いた。
(原料)
SiC粉末:平均粒径約4μm、昭和電工株式会社製、グリーンデンシック(商品名)
Yb粉末:平均粒径約1μm、信越化学工業株式会社製
ボロシリケートガラス(パイレックスガラス:商品名(登録商標))粉末:200メッシュ、フルウチ化学株式会社製
シリカゾル:粒子径10〜20nm、日産化学工業株式会社製、スノーテックス(商品名)
エタノール:純度99.5%、昭和化学株式会社製
(スラリーの製造方法)
まず、SiC粉末とYb粉末とボロシリケートガラス粉末とからなる原料粉末を、所定量計り取り混合した。原料を上記の混合割合とすることで、原料粉末中のSiC粉末の体積率が50%となる。すなわち、SiC粉末の体積割合が50%、Yb粉末とボロシリケートガラス粉末との合計の体積割合が50%となる。また、Yb粉末と、ボロシリケートガラス粉末と、分散媒中のシリカゾルとの分量は、ボロシリケートガラス粉末とシリカゾルとに含まれるSiOがYbと反応してYbSiOとなる分量になるように調整した。
次に、シリカゾルとエタノールを所定量計り取り、混合して分散媒とした。次いで、原料粉末と分散媒を混合してスラリーとした。
このようにして応力緩和層2および中間層3の形成された基材1を観察した。その結果、中間層が基材上に固着しており、剥がれ落ちることはなく、クラックも発生していなかった。
また、図6(a)は、応力緩和層2および中間層3の形成された基材1の断面の顕微鏡写真である。また、図6(b)および図6(c)は図6(a)の一部を拡大して示した顕微鏡写真であり、図6(b)は応力緩和層2の顕微鏡写真であり、図6(c)は基材1の被コーティング面1a近傍の顕微鏡写真である。
図6(a)および図6(b)より、基材1の被コーティング面1aに露出された気孔に応力緩和材料であるSiCとYbSiOが充填されて、応力緩和層2を構成する充填気孔1bとされていることが分かる。また、図6(a)より、応力緩和層2上に応力緩和材料であるSiCとYbSiOとからなる中間層3が形成されていることが分かる。また、図6(c)において、中間層3を構成する応力緩和材料中の暗部がYbSiOであり、明部がSiCであり、SiCとYbSiOとが均一に分散していることが分かる。
「実験例2」
実験例1と同様にして得られた応力緩和層2および中間層3の形成された基材1を用意し、中間層3上にAPS(大気中溶射)によりHfOからなる厚み70mmのコーティング層5を形成し、図1に示すセラミックス基複合部材10を得た。
その結果を図7に示す。図7は実験例2のセラミックス基複合部材の写真である。図7に示すように、コーティング層5に亀裂は生じておらず、コーティング層5と基材1との密着性を十分に有することが確認できた。
「実験例3」
スラリー中の原料粉末中におけるSiC粉末の好ましい体積割合を決定するために、以下に示す実験を行なった。
(サンプル1〜サンプル10)
スラリーとして表1に示す配合のものを用いたことと、中間層3の焼結収縮を明確にするために、塗布時に基材1の被コーティング面1aに盛り付けるスラリーの厚みを通常よりも厚い1mmとしたこと以外は、実験例1と同様にして厚み4mmの応力緩和層2および厚み1mmの中間層3の形成された基材1を得た。
なお、原料粉末と分散媒を混ぜたときに分散媒が少なくて流動性を有しない場合には、適宜エタノールを追加して流動性のある液状となるようにした。
また、中間層3の厚みが厚く、乾燥が急激であったため、乾燥後、焼結前にすべてのサンプルにおいて中間層3にひびができていた。
Figure 2008247722
このようにして得られたサンプル1〜サンプル10の応力緩和層2および中間層3の形成された基材1について、以下に示す評価基準に基づいてクラックと硬さの評価を行ない、その結果から以下に示すように総合評価を行なった。その結果を表1に示す。
「クラック(ひび)」
○:焼成後に、乾燥時あったひびの幅の広がりや、乾燥時にはなかった新たなひびの発生は見られなかった
△:焼成後に、乾燥時あったひびの幅が多少広がっていたが、乾燥時にはなかった新たなひびの発生はなかった。
×:焼成後に、乾燥時にあったひびの幅が広くなり、乾燥時にはなかったひびが発生した。
「硬さ」
○:爪で表面が削れない硬さを有する。
△:爪で表面が削り取れる程度の硬さである。
×:中間層としての所定の形状を保てない。
「総合」
○:クラックと硬さの評価のいずれもが○である。
△:クラックと硬さの評価のいずれか一方が△であって、他方が○である。
×:クラックと硬さの評価のいずれかが×である。
また、応力緩和層2および中間層3の形成された基材1の写真を図8〜図11に示す。図8(a)はサンプル1の写真、図8(b)はサンプル2の写真、図8(c)はサンプル3の写真、図9(a)はサンプル4の写真、図9(b)はサンプル5の写真、図10(a)はサンプル6の写真、図10(b)はサンプル7の写真、図11(a)はサンプル8の写真、図11(b)はサンプル9の写真、図11(c)はサンプル10の写真である。
図8〜図11に示すように、すべてのサンプルにおいて、中間層が基材上に固着しており、剥がれ落ちることはなかった。
また、表1より、サンプル1〜サンプル3については、クラックの評価が×となった。これは、サンプル1〜サンプル3ではSiC混合量が少ないため、焼結収縮が大きかったためと考えられる。
また、サンプル4については、クラックの評価が△となり、サンプル5〜サンプル10については、クラックの評価が○となった。このことにより、SiCが40%以上混合されているサンプル4〜サンプル10については、焼結収縮が抑制されたと考えられる。
また、表1より、サンプル1〜サンプル7は、硬さの評価が○となり、サンプル8〜サンプル10では△となった。サンプル8〜サンプル10はSiC混合量が70%以上と多いためYbSiO粉末の焼結による結合強度が弱くなり、爪で削れる程度の硬さしか得られなかったと考えられる。
しかし、SiC混合量が90%であるサンプル10でも、中間層としての所定の形状を保っており、触って崩れるほど粉末同士の結合が弱いということはない。このことから、サンプル10でも、YbSiO粉末の焼結による粉末の結合はなされていると考えられる。
以上の結果より、スラリー中の原料粉末中におけるSiC粉末の好ましい体積割合は、30〜90%であり、さらに40〜60%の範囲では、体積収縮が小さくて、硬い中間層が得られるため、より好ましいことが分かった。
「実験例4」
基材1をスラリー中に浸さずに、スラリーの分散媒内に沈殿している原料粉末を基材1の被コーティング面1aに盛り付けて塗布を行ったこと以外は、実験例1と同様にして中間層の形成された基材1を得た。
このようにして中間層の形成された実験例4の基材1を観察した。その結果、中間層内や基材1と中間層の間にクラックが多数発生しており、中間層が基材上から剥がれ落ちた部分があった。
「実験例5」
図12に示すフローチャートに従って基材に応力緩和層および中間層を形成した。
すなわち、以下に示すように形状の異なるサンプルAおよびサンプルBからなる基材1の被コーティング面1aを、以下に示す含浸用スラリー中に実験例1と同様にして含浸し(図12に示すS1)、実験例1と同様にして基材1にこびりついた余分なスラリーを落とし(図12に示すS2)た。次いで、室温大気中で10分間、100℃の大気中で20分間乾燥(図12に示すS41)した。次いで、以下に示すディッピング用スラリー中に浸漬し、被コーティング面1aにディッピング用スラリーを塗布するディッピング(図12に示すS32)を行った。
その後、ディッピング用スラリーが基材1の表面から自然に流れ落ちるように、基材1と床面や壁面との接触を極力少なくした状態で基材1を設置して、再度、室温大気中で10分間、100℃の大気中で20分間乾燥(図12に示すS41)した。このことにより、ディッピング用スラリー中に含まれる原料粉末を、基材1の表面に薄く付着させた。その後、図12に示すように、ディッピングS32と乾燥S41とを、基材1に付着したスラリーの中の原料粉末の重量が所定の重量となるまで、繰り返し行なった。なお、2回目以降の乾燥時には、前回の乾燥時と基材1の上下方向を反転させて設置し、ディッピング用スラリーの塗布厚が均一になるようにした。
その後、実験例1と同様にして焼結(図12に示すS5)させることにより、厚み4mmの応力緩和層2および厚み10〜30μmの中間層3を形成した。
「基材」
材質:3次元強化SiC長繊維からなるセラミックス繊維とSiCからなるセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料
気孔率:約10%
寸法:縦3mm、横4mm、高さ45mm(サンプルA)
縦35mm、横50mm、厚み3mm(サンプルB)
「含浸用スラリー」
実験例1と同じ原料を用い、実験例1のスラリーと同様にして製造した。配合を以下に示す。
SiC粉末17.76g、Yb粉末32.25g、ボロシリケートガラス粉末3.99g、シリカゾル4.8ml、エタノール4.8mlからなるものを用いた。
「ディッピング用スラリー」
原料は、実験例1と同じものを用いた。配合を以下に示す。
SiC粉末17.76g、Yb粉末32.25g、ボロシリケートガラス粉末3.99g、シリカゾル12.2ml、エタノール12.2mlからなるものを用いた。
(ディッピング用スラリーの製造方法)
まず、SiC粉末とYb粉末とボロシリケートガラス粉末とからなる原料粉末を、所定量計り取り混合した。原料を上記の混合割合とすることで、ディッピング用スラリー中の原料粉末の体積率が30%となる。次に、シリカゾルとエタノールとを所定量計り取り、混合して分散媒とした。次いで、原料粉末と分散媒とを原料粉末の沈殿がなくなるように混合してディッピング用スラリーとした。
このようにして得られた応力緩和層2および中間層3の形成された基材1を観察した。その結果を図13に示す。図13は実験例5の応力緩和層および中間層の形成された基材の写真である。図13(a)はサンプルAの基材の写真であり、図13(b)はサンプルBの基材の写真である。図13(a)および図13(b)に示すように、サンプルA、サンプルBともに、基材を構成するCMCの表面に露出していたセラミックス繊維の織り目間に存在する気孔に応力緩和材料が充填されていることが確認できた。また、サンプルA、サンプルBともに、中間層が基材上に固着しており、剥がれ落ちることはなく、クラックも発生していなかった。
「耐酸化試験」
このようにして得られた応力緩和層2および中間層3の形成された基材1を1300℃の大気中に100時間暴露し、その外観変化を確認した。
その結果、サンプルA、サンプルBともに、中間層が基材上に固着しており、剥がれ落ちることはなく、クラックも発生していなかった。また、サンプルA、サンプルBともに、薄緑色だった中間層3が白色に変化した。これは、耐酸化試験によって、緑色であるSiCの一部または全部が酸化して、白色または透明であるSiOに変化したためと考えられる。
「耐水蒸気試験」
また、基材1の中間層3上にAPS(大気中溶射)によりLuSiからなるコーティング層を形成し、図1に示すセラミックス基複合部材10を得た。このようにして得られたセラミックス基複合部材10を1300℃、全圧9.5atm、水蒸気分圧1.5atmの大気中に2000時間暴露し、その外観変化を確認した。
その結果、サンプルA、サンプルBともに、コーティング層5の剥離やクラックは観察されなかった。
ここで、LuSiからなるコーティング層5は、高温で酸素を透過するものであるので、コーティング層5の下層に配置された応力緩和層2および中間層3は、耐水蒸気試験においても耐酸化試験の場合と同様に、SiCの一部または全部が酸化して、SiOに変化されていると考えられる。したがって、耐水蒸気試験により応力緩和層2および中間層3中に含まれるSiCが酸化されても、コーティング層5には剥離やクラックが発生していないことになる。このことから、応力緩和層2および中間層3が、耐水蒸気試験によって、コーティング層5の密着強度を低下させるような過大な収縮や膨張を起こさないことと、基材1を構成するCMCやコーティング層5の強度を低下させるような化学反応を起こさないこととが確認できた。
耐酸化試験および耐水蒸気試験の結果より、実験例5の応力緩和層2および中間層3を設けることにより、基材1とコーティング層5との間の密着力が十分に得られることが確認できた。
「実験例6」
(サンプル11〜サンプル24)
スラリーとして以下に示す材料からなる表2に示す配合のものを用いたことと、中間層3の焼結収縮を明確にするために、ディッピング時に基材1の被コーティング面1aに盛り付けるスラリーの厚みを通常よりも厚い1mmとしたこと以外は、実験例1と同様にして厚み4mmの応力緩和層2および厚み1mmの中間層3の形成された基材1を得た。
なお、表2に示す配合では、原料粉末中の難焼結材粉末の体積率が50%となる。また、原料粉末と分散媒を混ぜたときに分散媒が少なくて流動性を有しない場合には、適宜エタノールを追加して流動性のある液状となるようにした。また、難焼結材としてWCを用いた場合と、CrAlを用いた場合においては、難焼結材の分解温度が低いため焼結温度を1000℃とした。
また、中間層3の厚みが厚く、乾燥が急激であったため、乾燥後、焼結前にすべてのサンプルにおいて中間層3にひびができていた。
Figure 2008247722
「スラリー」
(原料)
SiC粉末:平均粒径約4μm、昭和電工株式会社製、グリーンデンシック(商品名)
Si粉末(1):平均粒径約1μm、宇部興産株式会社製、SN-E10(商品名)
Si粉末(10):平均粒径約10μm、宇部興産株式会社製、SN-E01(商品名)
AlN粉末:平均粒径約5μm、古河電子株式会社製、FAN-f05(商品名)
BN粉末:平均粒径約7μm、電気化学工業株式会社製、AP650(商品名)
C粉末:平均粒径約2.5μm、H.C.Starck GRADE HP
WC粉末:平均粒径約5μm 、社内調整粉末
CrAl粉末:平均粒径約5μm、社内調整粉末
Yb粉末:平均粒径約1μm 、信越化学工業株式会社製
粉末:平均粒径約1μm 、信越化学工業株式会社製
Er粉末:平均粒径約1μm、信越化学工業株式会社製
Al粉末:平均粒径約0.3μm、住友化学株式会社製、AKP50(商品名)
SiO粉末:平均粒径約6μm、電気化学工業株式会社製、 溶融シリカFS-30(商品名)
MgO粉末:平均粒径約1μm、添川理化学株式会社製
ボロシリケートガラス粉末(パイレックスガラス:商品名(登録商標)):200メッシュ、フルウチ化学株式会社製
シリカゾル:粒子径10〜20nm、日産化学工業株式会社製、スノーテックス(商品名)
アルミナゾル:日産化学工業株式会社製、アルミナゾル100(商品名)
エタノール:純度99.5%、昭和化学株式会社製
このようにして得られたサンプル11〜サンプル24の応力緩和層2および中間層3の形成された基材1について、実験例3と同様にして硬さの評価を行なった。その結果を表2に示す。
また、応力緩和層2および中間層3の形成された基材1の写真を図14〜図19に示す。図14(a)はサンプル11の写真、図14(b)はサンプル12の写真、図14(c)はサンプル13の写真、図15(a)はサンプル14の写真、図15(b)はサンプル15の写真、図15(c)はサンプル16の写真、図16(a)はサンプル17の写真、図16(b)はサンプル18の写真、図17(a)はサンプル19の写真、図17(b)はサンプル20の写真、図18(a)はサンプル21の写真、図18(b)はサンプル22の写真、図19(a)はサンプル23の写真、図19(b)はサンプル24の写真である。
図14〜図19に示すように、すべてのサンプルにおいて、中間層が基材上に固着しており、剥がれ落ちることはなかった。また、焼成後に、乾燥時あったひびの幅の広がりや、乾燥時にはなかった新たなひびの発生は見られなかった。また、粉末同士の結合が弱く触って崩れるということもない。
また、表2より、サンプル12、サンプル13、サンプル15〜サンプル20、サンプル22〜サンプル24では、硬さの評価が○となり、サンプル11、サンプル14、サンプル21では△となった。
硬さの評価が△であるサンプル11、サンプル14、サンプル21では、原料粉末と分散媒とを混ぜた状態で液状のスラリーにするにはエタノールの追加が必要であった上、液状になってもペースト状になり、原料粉末が沈殿にはならなかった。これは、サンプル11で使用したSiやサンプル21で使用したMgOの粒径が小さく、比表面積が大きいため、原料粉末の粒子間を濡らして液状にするのに多くの分散媒が必要であったことと、SiやMgOの粒径が小さいために、沈殿が遅かったことによると考えられる。また、サンプル14で使用したBNは、粒径が7μmであり小さくはないが、板状の形状をしている。このためサンプル14でもサンプル11およびサンプル21と同様、比表面積が大きく、分散媒が多く必要であり、また、沈殿も遅かったと考えられる。その結果、サンプル11、サンプル14、サンプル21では、スラリーがペースト状で、原料粉末が分散媒中に低濃度で分散している状態であった。そのため基材の表面に塗布されたスラリー中の原料粉末の濃度が低く、焼成された中間層中における原料粉末の密度が低くなり、原料粉末の焼結による結合強度が弱く、爪で削れる程度の硬さしか得られなかったと考えられる。
また、実験例6より、難焼結材として、SiCの他に、Si、AlN、BNなどの窒化物や、BC、WCなどの炭化物、CrAlなどのアルミ化物も適用できることが確認できた。
また、酸化物セラミックスとして、YbSiOの他に、イットリウムシリケート、エリビウムシリケート、アルミノシリケート、マグネシウムシリケートなどの各種のシリケートや、Al、SiOなどの単一の酸化物、ボロシリケートガラス(パイレックスガラス(登録商標))などのガラスも適用できることが確認できた。
また、ゾルとしては、シリカゾルの他に、アルミナゾルが適用できることが確認できた。
図1は、本発明のセラミックス基複合部材の一部を拡大して示した概略断面図である。 図2は、本発明のセラミックス基複合部材を構成するセラミックス基複合材料(CMC)の一例を説明するための断面図である。 図3は、中間層を構成する酸化物セラミックスの焼結による体積収縮を説明するための模式図である。 図4は、応力緩和材料の焼結による体積収縮を説明するための模式図である。 図5は、実験例1において応力緩和層および中間層を形成する方法を説明するためのフローチャートである。 図6は、応力緩和層2および中間層3の形成された基材1の断面の顕微鏡写真である。 図7は実験例2のセラミックス基複合部材の写真である。 図8(a)はサンプル1の写真、図8(b)はサンプル2の写真、図8(c)はサンプル3の写真である。 図9(a)はサンプル4の写真、図9(b)はサンプル5の写真である。 図10(a)はサンプル6の写真、図10(b)はサンプル7の写真である。 図11(a)はサンプル8の写真、図11(b)はサンプル9の写真、図11(c)はサンプル10の写真である。 図12は、実験例5において応力緩和層および中間層を形成する方法を説明するためのフローチャートである。 図13は実験例5の応力緩和層および中間層の形成された基材の写真である。 図14(a)はサンプル11の写真、図14(b)はサンプル12の写真、図14(c)はサンプル13の写真である。 図15(a)はサンプル14の写真、図15(b)はサンプル15の写真、図15(c)はサンプル16の写真である。 図16(a)はサンプル17の写真、図16(b)はサンプル18の写真である。 図17(a)はサンプル19の写真、図17(b)はサンプル20の写真である。 図18(a)はサンプル18の写真、図18(b)はサンプル20の写真である。 図19(a)はサンプル21の写真、図19(b)はサンプル22の写真である。 図20は、従来のセラミックス基複合部材の一部を拡大して示した概略断面図である。
符号の説明
1…基材、1a…被コーティング面、1b…気孔、2…応力緩和層、3…中間層、5…コーティング層、8…隙間、7、7a、17、17a…酸化物セラミックス、10…セラミックス基複合部材、20…セラミックス基複合材料(CMC)、21…セラミックス繊維、22…セラミックスマトリックス。

Claims (12)

  1. セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料からなり、コーティング層の形成される被コーティング面を有する基材と、前記被コーティング面に形成されたコーティング層とを有するセラミックス基複合部材であって、
    前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料が含浸されてなる応力緩和層を有することを特徴とするセラミックス基複合部材。
  2. 前記基材が複数の気孔を有するものであり、前記気孔のうちの少なくとも前記被コーティング面に露出された前記気孔が、前記応力緩和材料の充填された充填気孔とされており、
    前記被コーティング面と、前記充填気孔のうち前記被コーティング面から最も深い位置に存在する前記充填気孔に充填された前記応力緩和材料との間が前記応力緩和層とされていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス基複合部材。
  3. 前記応力緩和層に存在する気孔のうち前記充填気孔の割合が、前記コーティング層に近づくに従って増加していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス基複合部材。
  4. 前記応力緩和層と前記コーティング層との間に、前記応力緩和材料からなり、前記応力緩和層と一体化された中間層を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
  5. 前記応力緩和材料は、熱膨張係数が1〜6[×10−6/K] の範囲のものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
  6. 前記応力緩和材料が、酸化物セラミックスと、前記酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
  7. 前記応力緩和材料が、SiCとYbSiOとを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
  8. 前記セラミックス繊維および/または前記セラミックスマトリックスが、SiCからなることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
  9. 前記コーティング層が、HfOからなることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
  10. セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料からなり、コーティング層の形成される被コーティング面を有する基材と、前記被コーティング面に形成されたコーティング層とを有するセラミックス基複合部材の製造方法であって、
    前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料を含浸させて応力緩和層を形成する緩和層形成工程と、
    前記基材の応力緩和層上に前記コーティング層を形成するコーティング工程とを含むことを特徴とするセラミックス基複合部材の製造方法。
  11. 前記緩和層形成工程が、焼結させることにより前記応力緩和材料となるスラリー中に前記基材を含浸する工程と、
    前記基材に付着した前記スラリーを焼結させる工程とを含むことを特徴とする請求項10に記載のセラミックス基複合部材の製造方法。
  12. 前記スラリーが、焼結させることにより酸化物セラミックスとなる母材元と前記酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含む原料粉末と、焼結時の酸化物セラミックス粉末の焼結による結合の促進に寄与するゾルと溶媒とからなる分散媒と含むことを特徴とする請求項11に記載のセラミックス基複合部材の製造方法。
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