JP2008247722A - セラミックス基複合部材およびセラミックス基複合部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セラミックス基複合材料からなる基材1と、コーティング層3とを有するセラミックス基複合部材10であって、基材1の被コーティング面1a側に、熱膨張係数が基材1とコーティング層5との間の値である応力緩和材料が含浸されてなる応力緩和層2を有するセラミックス基複合部材10とする。
【選択図】図1
Description
この場合、CMC基材11と中間層13との接着力(密着強度)が低い場合、界面で剥離が生じてしまうことが新たな問題となる。図20(a)に示すようにボンド層12としてCMC基材11と中間層13の間にSi、希土類シリサイド、Tiなどの活性金属を形成することにより、化学的な接着力(密着強度)を向上させることができる。ボンド層12はCMC基材11の表面にSi、希土類シリサイド、Tiなどのボンド層となる材料を減圧溶射する方法などにより形成される。
また、本発明は、コーティング層とCMC基材との熱膨張係数のミスマッチを緩和することができ、コーティング層とCMC基材との密着性を向上させることができるセラミックス基複合部材の製造方法を提供することを目的とする。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記応力緩和層と前記コーティング層との間に、前記応力緩和材料からなり、前記応力緩和層と一体化された中間層を有するものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記応力緩和材料は、熱膨張係数が1〜6[×10−6/K] の範囲のものであることを特徴とするものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記応力緩和材料が、SiCとYb2SiO5とを含むものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材においては、前記コーティング層が、HfO2からなるものとすることができる。
また、上記のセラミックス基複合部材の製造方法は、前記スラリーが、焼結させることにより酸化物セラミックスとなる母材元と前記酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含む原料粉末と、焼結時の酸化物セラミックス粉末の焼結による結合の促進に寄与するゾルと溶媒とからなる分散媒と含むことを特徴とする方法とすることができる。
しかも、本発明のセラミックス基複合部材では、応力緩和層が、前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料が含浸されてなるものであるので、応力緩和層によって、コーティング層と基材との密着性を向上させるアンカー効果を得ることができ、コーティング層と基材との物理的な接着力を高めることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係るセラミックス基複合部材およびセラミックス基複合部材の製造方法の一実施形態について説明する。
図1は、本発明のセラミックス基複合部材の一部を拡大して示した概略断面図である。図1に示すセラミックス基複合部材10は、基材1と、応力緩和層2と、中間層3と、コーティング層5とを有するものである。
セラミックス繊維21としては、C繊維やSiC繊維などからなる所定の繊維束を軸方向と円周方向に繊維を配向させた2次元織物や、ブレーディング織物、繊維束を互いに直交する3軸方向に配向させた3次元織物が用いられている。ブレーディング織物は、軸方向の繊維と、組糸と呼ばれる完全に周方向ではない少し傾いた軸方向の繊維に絡まる繊維からなる織物であり、組紐と同じ構造を有するものである。また、2次元織物やブレーディング織物は、3〜50層程度積層されたものを用いることが好ましい。
また、セラミックスマトリックス22は、CやSiC、Si3N4などからなるものであり、セラミックス繊維21に付着されている。このようなCMC20の中でも特に、セラミックス繊維21とセラミックスマトリックス22のいずれもがCからなるものやSiCからなるもの、セラミックス繊維21がCからなり、セラミックスマトリックス22がSiCからなるものなどを用いることが好ましい。
また、図1に示すセラミックス基複合部材では、応力緩和層2における充填気孔1bの割合は、コーティング層5に近づくに従って増加している。なお、図1においては、図面を見やすくするために、基材1の全体に均一に存在する気孔のうち、応力緩和材料の充填された充填気孔の一部のみを図示し、応力緩和材料の充填されていない気孔の図示を省略している。
中間層3の厚みは、0.005mm〜2mm程度とされることが好ましく、0.01mm〜0.5mm程度とされることがより好ましい。中間層3の厚みが上記範囲未満であると、中間層3を設けることによるコーティング層と基材との物理的な接着力を高める効果が十分に得られない場合がある。また、中間層3の厚みが上記範囲を超えると、中間層に内在する気孔や亀裂が大きくなり中間層の強度が低下する可能性があるため好ましくない。
応力緩和層2および中間層3を構成する応力緩和材料は、熱膨張係数が基材1とコーティング層5との間の値のものであり、具体的には、熱膨張係数が1〜6[×10−6/K] の範囲であることが好ましい。また。応力緩和材料は、高温ガス環境に対する耐熱性、耐酸化性、耐腐食性に優れ、室温〜1400℃の間で結晶相の変化による体積変化を起こさないものであることが好ましい。
酸化物セラミックスとしては、耐熱、耐環境性に優れ、熱膨張係数が1〜10[×10−6/K] の範囲にあるものを用いることが好ましい。酸化物セラミックスとしては、具体的には、Yb2SiO5、Yb2SiO5、Er2SiO5、イットリウムシリケート(Y2SiO5)、エリビウムシリケートのような希土類シリケート、アルミノシリケート、マグネシウムシリケートなどの各種シリケートや、Al2O3、SiO2などの単一の酸化物、ボロシリケートガラス(パイレックスガラス(登録商標))などのガラスなどを用いることができる。これらの酸化物セラミックスの中でも、Yb2SiO5、Y2SiO5、Er2SiO5のような希土類シリケートは、水蒸気が含まれる高温大気中における分解速度が遅いため、基材1としてSiCを用いたCMCを使用する場合に、水蒸気によるCMCの減肉を抑制することができるため好ましい。特に、熱膨張係数が6.1[×10−6/K]とCMCに近く、CMCの素材として好ましく使用されるSiCと化学的親和性の高い希土類シリケートであるYb2SiO5などを用いることが好ましい。
「緩和層形成工程」
本実施形態においては、応力緩和層2の形成と同時に中間層3の形成を行なう場合を例に挙げて説明する。まず、基材1の被コーティング面1aを、応力緩和材料を含むスラリー中に含浸することによって、少なくとも被コーティング面1aに露出された気孔1bに、応力緩和材料を含むスラリーを充填する。ここでの含浸は、例えば、スラリー中の分散媒内で沈殿している原料粉末中に基材1を埋め、スラリーと基材とに超音波などを用いて振動を与えながら行なうことが好ましい。このようにして、気孔1bにスラリーを含浸させることで、基材1の気孔1b内に原料粉末を高濃度で含浸させることができる。また、分散媒内に原料粉末を均一に分散させたスラリー中に基材1を浸し、これを減圧して基材1内の気孔から大気を脱気してスラリーと置換することによっても基材1の気孔1b内に原料粉末を含浸させることができる。さらに、基材1の気孔1bが被コーティング面1aから他の面へ連続した気孔である場合には、分散媒内に原料粉末を均一に分散させたスラリーを被コーティング面1aから加圧注入する、または被コーティング面1a以外の面から減圧するなどして気孔1b内にスラリーを含浸させることができる。この方法では被コーティング面1aと被コーティング面1a以外の面が逆でも良い。
次いで、ディッピングにより被コーティング面1aにスラリーを塗布し、適度に表面に皮膜を形成して乾燥する。このディッピングと乾燥は、中間層3の厚みなどに応じて適宜繰り返して行なうことができる。また、ディッピングにおいて用いるスラリーは、含浸時に用いるスラリーと同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
母材元としては、Yb2O3粉末、Y2O3粉末、Er2O3粉末、Al2O3粉末、SiO2粉末、MgO粉末、ボロシリケートガラス粉末などが用いられる。また、酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材としては、SiC粉末、Si3N4粉末、AlN粉末、BN粉末、B4C粉末、CrAl粉末、WC粉末、CrAl粉末などが用いられる。また、焼結助剤としては、ボロシリケートガラス粉末などが用いられる。
また、分散媒としては、焼結時の酸化反応に寄与するゾルと、スラリーの粘度を調整するための溶媒とからなる分散媒と含むものを用いることが好ましい。
ゾルとしては、シリカゾル、アルミナゾルなどが用いられる。溶媒としては、エタノールなどが用いられる。
緩和層形成工程の後、中間層3上にAPS(大気中溶射)によりコーティング層を形成することにより、図1に示すセラミックス基複合部材10が得られる。
しかも、本実施形態のセラミックス基複合部材10では、応力緩和層2が、基材1の複数の気孔のうちの少なくとも被コーティング面1aに露出された気孔が充填気孔1bとされたものであるので、応力緩和層2によって、コーティング層5と基材1との密着性を向上させるアンカー効果が効果的に得られ、コーティング層5と基材1との物理的な接着力を高めることができる。
ここで、例えば、酸化物セラミックスのみからなる中間層を基材上に焼結法により形成した場合を例に挙げて、焼結時における中間層の体積収縮について図面を用いて説明する。図3は、中間層を構成する酸化物セラミックスの焼結による体積収縮を説明するための模式図である。図3(a)は焼結前の酸化物セラミックスの状態を示す図であり、図3(b)は焼結後の酸化物セラミックスの状態を示す図である。
このため、酸化物セラミックスのみからなる中間層を基材上に焼結法により形成した場合、焼結時における酸化物セラミックスの大きな体積収縮により、基材から中間層が剥離してしまう恐れがあった。また、中間層の焼結時における酸化物セラミックスの体積収縮を避けるため、溶射法により酸化物セラミックスのみからなる中間層を基材上に形成することもできる。しかし、この場合、得られた中間層中に微細な亀裂や微細粒子が存在するものとなる。そのため、セラミックス基複合部材の初回の熱暴露時に、中間層を構成する材料が焼結し、焼結による大きな体積収縮が発生して、中間層が基材から剥離してしまう恐れがあった。
このように、応力緩和材料を、酸化物セラミックスと酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むものとすることで、応力緩和層2および中間層3の焼結時や熱暴露時における体積収縮を低減することができ、応力緩和層2および中間層3の剥離を防止することができるので、コーティング層5と基材1との間の密着力をより一層効果的に向上させることができる。
また、本実施形態のセラミックス基複合部材10において、応力緩和材料に含まれる難焼結材をSiCとし、かつ、セラミックス繊維および/またはセラミックスマトリックスをSiCからなるものとした場合、SiCの熱膨張係数と基材1を構成するCMCの熱膨張係数とが非常に近くなるので、基材1と応力緩和層2および中間層3との密着力をより一層向上させることができ、コーティング層5と基材1との間の密着力をより効果的に向上させることができる。
また、応力緩和材料をYb2SiO5、Y2SiO5、Er2SiO5のような希土類シリケートを含むものとすることで、水蒸気を含む高温大気環境にさらされる部位にセラミックス基複合部材10を用いた場合にも、応力緩和層2および中間層3が分解されにくく、耐熱、耐環境性に優れるものとなる。
また、本発明においては、上述したように、応力緩和材料からなる応力緩和層2および中間層3を設けることが好ましいが、中間層3は設けなくてもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
「実験例1」
図5に示すフローチャートに従って基材に応力緩和層および中間層を形成した。
すなわち、以下に示す基材1の被コーティング面1aを、以下に示す原料および製造方法で得られたスラリー中に10分間含浸した(図5に示すS1)。基材1の含浸は、スラリーに含まれる分散媒内で沈殿している原料粉末中に基材1を埋め、スラリーと基材1の入った容器を超音波洗浄器に入れて基材1およびスラリーに振動を与え、基材1にスラリーを含浸させて気孔1bに原料粉末を充填する方法によって行った。次いで、基材1にこびりついた余分なスラリーを取り除き(図5に示すS2)、スラリーの分散媒内に沈殿している原料粉末をすくい取って基材1の被コーティング面1aに盛り付けて塗布(図5に示すS3)を行った。その後、大気中100℃で20分間乾燥(図5に示すS4)して、被コーティング面1aに皮膜を形成した。次に、基材1に付着したスラリーをアルゴン雰囲気中で1300℃の温度で1時間程度焼結(図5に示すS5)させることにより、厚み4mmの応力緩和層2および厚み0.15mmの中間層3を形成した。
材質:3次元強化SiC長繊維からなるセラミックス繊維とSiCからなるセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料
気孔率:約40%
寸法:縦10mm、横10mm、厚み4mm
SiC粉末3.35g、Yb2O3粉末3.78g、ボロシリケートガラス粉末0.89g、シリカゾル1ml、エタノール1mlからなるものを用いた。
(原料)
SiC粉末:平均粒径約4μm、昭和電工株式会社製、グリーンデンシック(商品名)
Yb2O3粉末:平均粒径約1μm、信越化学工業株式会社製
ボロシリケートガラス(パイレックスガラス:商品名(登録商標))粉末:200メッシュ、フルウチ化学株式会社製
シリカゾル:粒子径10〜20nm、日産化学工業株式会社製、スノーテックス(商品名)
エタノール:純度99.5%、昭和化学株式会社製
まず、SiC粉末とYb2O3粉末とボロシリケートガラス粉末とからなる原料粉末を、所定量計り取り混合した。原料を上記の混合割合とすることで、原料粉末中のSiC粉末の体積率が50%となる。すなわち、SiC粉末の体積割合が50%、Yb2O3粉末とボロシリケートガラス粉末との合計の体積割合が50%となる。また、Yb2O3粉末と、ボロシリケートガラス粉末と、分散媒中のシリカゾルとの分量は、ボロシリケートガラス粉末とシリカゾルとに含まれるSiO2がYb2O3と反応してYb2SiO5となる分量になるように調整した。
次に、シリカゾルとエタノールを所定量計り取り、混合して分散媒とした。次いで、原料粉末と分散媒を混合してスラリーとした。
図6(a)および図6(b)より、基材1の被コーティング面1aに露出された気孔に応力緩和材料であるSiCとYb2SiO5が充填されて、応力緩和層2を構成する充填気孔1bとされていることが分かる。また、図6(a)より、応力緩和層2上に応力緩和材料であるSiCとYb2SiO5とからなる中間層3が形成されていることが分かる。また、図6(c)において、中間層3を構成する応力緩和材料中の暗部がYb2SiO5であり、明部がSiCであり、SiCとYb2SiO5とが均一に分散していることが分かる。
実験例1と同様にして得られた応力緩和層2および中間層3の形成された基材1を用意し、中間層3上にAPS(大気中溶射)によりHfO2からなる厚み70mmのコーティング層5を形成し、図1に示すセラミックス基複合部材10を得た。
その結果を図7に示す。図7は実験例2のセラミックス基複合部材の写真である。図7に示すように、コーティング層5に亀裂は生じておらず、コーティング層5と基材1との密着性を十分に有することが確認できた。
スラリー中の原料粉末中におけるSiC粉末の好ましい体積割合を決定するために、以下に示す実験を行なった。
(サンプル1〜サンプル10)
スラリーとして表1に示す配合のものを用いたことと、中間層3の焼結収縮を明確にするために、塗布時に基材1の被コーティング面1aに盛り付けるスラリーの厚みを通常よりも厚い1mmとしたこと以外は、実験例1と同様にして厚み4mmの応力緩和層2および厚み1mmの中間層3の形成された基材1を得た。
なお、原料粉末と分散媒を混ぜたときに分散媒が少なくて流動性を有しない場合には、適宜エタノールを追加して流動性のある液状となるようにした。
また、中間層3の厚みが厚く、乾燥が急激であったため、乾燥後、焼結前にすべてのサンプルにおいて中間層3にひびができていた。
○:焼成後に、乾燥時あったひびの幅の広がりや、乾燥時にはなかった新たなひびの発生は見られなかった
△:焼成後に、乾燥時あったひびの幅が多少広がっていたが、乾燥時にはなかった新たなひびの発生はなかった。
×:焼成後に、乾燥時にあったひびの幅が広くなり、乾燥時にはなかったひびが発生した。
○:爪で表面が削れない硬さを有する。
△:爪で表面が削り取れる程度の硬さである。
×:中間層としての所定の形状を保てない。
○:クラックと硬さの評価のいずれもが○である。
△:クラックと硬さの評価のいずれか一方が△であって、他方が○である。
×:クラックと硬さの評価のいずれかが×である。
また、表1より、サンプル1〜サンプル3については、クラックの評価が×となった。これは、サンプル1〜サンプル3ではSiC混合量が少ないため、焼結収縮が大きかったためと考えられる。
また、サンプル4については、クラックの評価が△となり、サンプル5〜サンプル10については、クラックの評価が○となった。このことにより、SiCが40%以上混合されているサンプル4〜サンプル10については、焼結収縮が抑制されたと考えられる。
しかし、SiC混合量が90%であるサンプル10でも、中間層としての所定の形状を保っており、触って崩れるほど粉末同士の結合が弱いということはない。このことから、サンプル10でも、Yb2SiO5粉末の焼結による粉末の結合はなされていると考えられる。
基材1をスラリー中に浸さずに、スラリーの分散媒内に沈殿している原料粉末を基材1の被コーティング面1aに盛り付けて塗布を行ったこと以外は、実験例1と同様にして中間層の形成された基材1を得た。
このようにして中間層の形成された実験例4の基材1を観察した。その結果、中間層内や基材1と中間層の間にクラックが多数発生しており、中間層が基材上から剥がれ落ちた部分があった。
図12に示すフローチャートに従って基材に応力緩和層および中間層を形成した。
すなわち、以下に示すように形状の異なるサンプルAおよびサンプルBからなる基材1の被コーティング面1aを、以下に示す含浸用スラリー中に実験例1と同様にして含浸し(図12に示すS1)、実験例1と同様にして基材1にこびりついた余分なスラリーを落とし(図12に示すS2)た。次いで、室温大気中で10分間、100℃の大気中で20分間乾燥(図12に示すS41)した。次いで、以下に示すディッピング用スラリー中に浸漬し、被コーティング面1aにディッピング用スラリーを塗布するディッピング(図12に示すS32)を行った。
その後、実験例1と同様にして焼結(図12に示すS5)させることにより、厚み4mmの応力緩和層2および厚み10〜30μmの中間層3を形成した。
材質:3次元強化SiC長繊維からなるセラミックス繊維とSiCからなるセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料
気孔率:約10%
寸法:縦3mm、横4mm、高さ45mm(サンプルA)
縦35mm、横50mm、厚み3mm(サンプルB)
実験例1と同じ原料を用い、実験例1のスラリーと同様にして製造した。配合を以下に示す。
SiC粉末17.76g、Yb2O3粉末32.25g、ボロシリケートガラス粉末3.99g、シリカゾル4.8ml、エタノール4.8mlからなるものを用いた。
原料は、実験例1と同じものを用いた。配合を以下に示す。
SiC粉末17.76g、Yb2O3粉末32.25g、ボロシリケートガラス粉末3.99g、シリカゾル12.2ml、エタノール12.2mlからなるものを用いた。
(ディッピング用スラリーの製造方法)
まず、SiC粉末とYb2O3粉末とボロシリケートガラス粉末とからなる原料粉末を、所定量計り取り混合した。原料を上記の混合割合とすることで、ディッピング用スラリー中の原料粉末の体積率が30%となる。次に、シリカゾルとエタノールとを所定量計り取り、混合して分散媒とした。次いで、原料粉末と分散媒とを原料粉末の沈殿がなくなるように混合してディッピング用スラリーとした。
このようにして得られた応力緩和層2および中間層3の形成された基材1を1300℃の大気中に100時間暴露し、その外観変化を確認した。
その結果、サンプルA、サンプルBともに、中間層が基材上に固着しており、剥がれ落ちることはなく、クラックも発生していなかった。また、サンプルA、サンプルBともに、薄緑色だった中間層3が白色に変化した。これは、耐酸化試験によって、緑色であるSiCの一部または全部が酸化して、白色または透明であるSiO2に変化したためと考えられる。
また、基材1の中間層3上にAPS(大気中溶射)によりLu2Si2O7からなるコーティング層を形成し、図1に示すセラミックス基複合部材10を得た。このようにして得られたセラミックス基複合部材10を1300℃、全圧9.5atm、水蒸気分圧1.5atmの大気中に2000時間暴露し、その外観変化を確認した。
その結果、サンプルA、サンプルBともに、コーティング層5の剥離やクラックは観察されなかった。
ここで、Lu2Si2O7からなるコーティング層5は、高温で酸素を透過するものであるので、コーティング層5の下層に配置された応力緩和層2および中間層3は、耐水蒸気試験においても耐酸化試験の場合と同様に、SiCの一部または全部が酸化して、SiO2に変化されていると考えられる。したがって、耐水蒸気試験により応力緩和層2および中間層3中に含まれるSiCが酸化されても、コーティング層5には剥離やクラックが発生していないことになる。このことから、応力緩和層2および中間層3が、耐水蒸気試験によって、コーティング層5の密着強度を低下させるような過大な収縮や膨張を起こさないことと、基材1を構成するCMCやコーティング層5の強度を低下させるような化学反応を起こさないこととが確認できた。
(サンプル11〜サンプル24)
スラリーとして以下に示す材料からなる表2に示す配合のものを用いたことと、中間層3の焼結収縮を明確にするために、ディッピング時に基材1の被コーティング面1aに盛り付けるスラリーの厚みを通常よりも厚い1mmとしたこと以外は、実験例1と同様にして厚み4mmの応力緩和層2および厚み1mmの中間層3の形成された基材1を得た。
なお、表2に示す配合では、原料粉末中の難焼結材粉末の体積率が50%となる。また、原料粉末と分散媒を混ぜたときに分散媒が少なくて流動性を有しない場合には、適宜エタノールを追加して流動性のある液状となるようにした。また、難焼結材としてWCを用いた場合と、CrAlを用いた場合においては、難焼結材の分解温度が低いため焼結温度を1000℃とした。
また、中間層3の厚みが厚く、乾燥が急激であったため、乾燥後、焼結前にすべてのサンプルにおいて中間層3にひびができていた。
(原料)
SiC粉末:平均粒径約4μm、昭和電工株式会社製、グリーンデンシック(商品名)
Si3N4粉末(1):平均粒径約1μm、宇部興産株式会社製、SN-E10(商品名)
Si3N4粉末(10):平均粒径約10μm、宇部興産株式会社製、SN-E01(商品名)
AlN粉末:平均粒径約5μm、古河電子株式会社製、FAN-f05(商品名)
BN粉末:平均粒径約7μm、電気化学工業株式会社製、AP650(商品名)
B4C粉末:平均粒径約2.5μm、H.C.Starck GRADE HP
WC粉末:平均粒径約5μm 、社内調整粉末
CrAl粉末:平均粒径約5μm、社内調整粉末
Y2O3粉末:平均粒径約1μm 、信越化学工業株式会社製
Er2O3粉末:平均粒径約1μm、信越化学工業株式会社製
Al2O3粉末:平均粒径約0.3μm、住友化学株式会社製、AKP50(商品名)
SiO2粉末:平均粒径約6μm、電気化学工業株式会社製、 溶融シリカFS-30(商品名)
MgO粉末:平均粒径約1μm、添川理化学株式会社製
シリカゾル:粒子径10〜20nm、日産化学工業株式会社製、スノーテックス(商品名)
アルミナゾル:日産化学工業株式会社製、アルミナゾル100(商品名)
エタノール:純度99.5%、昭和化学株式会社製
硬さの評価が△であるサンプル11、サンプル14、サンプル21では、原料粉末と分散媒とを混ぜた状態で液状のスラリーにするにはエタノールの追加が必要であった上、液状になってもペースト状になり、原料粉末が沈殿にはならなかった。これは、サンプル11で使用したSi3N4やサンプル21で使用したMgOの粒径が小さく、比表面積が大きいため、原料粉末の粒子間を濡らして液状にするのに多くの分散媒が必要であったことと、Si3N4やMgOの粒径が小さいために、沈殿が遅かったことによると考えられる。また、サンプル14で使用したBNは、粒径が7μmであり小さくはないが、板状の形状をしている。このためサンプル14でもサンプル11およびサンプル21と同様、比表面積が大きく、分散媒が多く必要であり、また、沈殿も遅かったと考えられる。その結果、サンプル11、サンプル14、サンプル21では、スラリーがペースト状で、原料粉末が分散媒中に低濃度で分散している状態であった。そのため基材の表面に塗布されたスラリー中の原料粉末の濃度が低く、焼成された中間層中における原料粉末の密度が低くなり、原料粉末の焼結による結合強度が弱く、爪で削れる程度の硬さしか得られなかったと考えられる。
また、酸化物セラミックスとして、Yb2SiO5の他に、イットリウムシリケート、エリビウムシリケート、アルミノシリケート、マグネシウムシリケートなどの各種のシリケートや、Al2O3、SiO2などの単一の酸化物、ボロシリケートガラス(パイレックスガラス(登録商標))などのガラスも適用できることが確認できた。
また、ゾルとしては、シリカゾルの他に、アルミナゾルが適用できることが確認できた。
Claims (12)
- セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料からなり、コーティング層の形成される被コーティング面を有する基材と、前記被コーティング面に形成されたコーティング層とを有するセラミックス基複合部材であって、
前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料が含浸されてなる応力緩和層を有することを特徴とするセラミックス基複合部材。 - 前記基材が複数の気孔を有するものであり、前記気孔のうちの少なくとも前記被コーティング面に露出された前記気孔が、前記応力緩和材料の充填された充填気孔とされており、
前記被コーティング面と、前記充填気孔のうち前記被コーティング面から最も深い位置に存在する前記充填気孔に充填された前記応力緩和材料との間が前記応力緩和層とされていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス基複合部材。 - 前記応力緩和層に存在する気孔のうち前記充填気孔の割合が、前記コーティング層に近づくに従って増加していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス基複合部材。
- 前記応力緩和層と前記コーティング層との間に、前記応力緩和材料からなり、前記応力緩和層と一体化された中間層を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
- 前記応力緩和材料は、熱膨張係数が1〜6[×10−6/K] の範囲のものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
- 前記応力緩和材料が、酸化物セラミックスと、前記酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
- 前記応力緩和材料が、SiCとYb2SiO5とを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
- 前記セラミックス繊維および/または前記セラミックスマトリックスが、SiCからなることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
- 前記コーティング層が、HfO2からなることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のセラミックス基複合部材。
- セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料からなり、コーティング層の形成される被コーティング面を有する基材と、前記被コーティング面に形成されたコーティング層とを有するセラミックス基複合部材の製造方法であって、
前記基材の前記被コーティング面側に、熱膨張係数が前記基材と前記コーティング層との間の値である応力緩和材料を含浸させて応力緩和層を形成する緩和層形成工程と、
前記基材の応力緩和層上に前記コーティング層を形成するコーティング工程とを含むことを特徴とするセラミックス基複合部材の製造方法。 - 前記緩和層形成工程が、焼結させることにより前記応力緩和材料となるスラリー中に前記基材を含浸する工程と、
前記基材に付着した前記スラリーを焼結させる工程とを含むことを特徴とする請求項10に記載のセラミックス基複合部材の製造方法。 - 前記スラリーが、焼結させることにより酸化物セラミックスとなる母材元と前記酸化物セラミックスよりも焼結収縮の小さい難焼結材とを含む原料粉末と、焼結時の酸化物セラミックス粉末の焼結による結合の促進に寄与するゾルと溶媒とからなる分散媒と含むことを特徴とする請求項11に記載のセラミックス基複合部材の製造方法。
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