JP2008214558A - 無機強化ポリエステル系樹脂組成物及びそれを用いた成形品の表面外観改良方法。 - Google Patents
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Abstract
【達成手段】ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)以外の少なくとも1種のポリエステル樹脂(B)及び無機強化材を含有するポリエステル系樹脂組成物において、該ポリエステル系樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度をTc2M(℃)、前記ポリエステル系樹脂組成物の中で前記ポリエステル樹脂(B)のみを含有しない場合の降温結晶化温度をTc2N(℃)としたとき、下記関係を満足することを特徴とする無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
Tc2N(℃)−Tc2M(℃) ≧ 10(℃)
【選択図】なし
Description
しかしながら ガラス繊維等の無機強化材の添加量が多くなると、ガラス繊維等の無機が成形品の表面に浮き出し、成形品の外観、特に表面光沢が低下し、商品価値が著しく損なわれる場合がある。
そこで成形品外観を向上させる方法として金型温度を極端に高く、例えば120℃以上に設定して成形することが提案されている。
しかし、これらの方法では金型温度を高くするために特別な装置が必要となり、汎用的にどこの成形機でも成形することが出来ないばかりか、金型温度を高温に上げた場合でも金型内でゲートから遠く離れている成形品の末端部分等で、ガラス繊維等の浮きが発生し、良好な成形品外観が得られない場合があったり、成形品のそりが大きくなり、組み付け出来ないなどの不具合を発生する場合があった。
また、近年種々のガラス繊維等の無機強化樹脂材料において高光沢性の成形品が得られるように、金型を改良することが提案されている(特許文献1、2)。この金型改良は金型のキャビテー部分に断熱性の高いセラミックス、例えばジルコニヤセラミックス等を入れ子として装入し、溶融樹脂がキャビテーに充填された直後に急冷されるのを制御し、キャビテー内の樹脂を高温で保持して、表面性の優れた成形品を得ることを目的としている。
しかしながら、これらの方法は金型製造が高価になると共に平板等の単純な製品形状では有効であるが、複雑な形状の製品ではセラミックスの加工が困難で、精度の高い金型製造が出来にくいという問題点がある。
(1)ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)以外の少なくとも1種のポリエステル樹脂(B)及び無機強化材を含有するポリエステル系樹脂組成物において、該ポリエステル系樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度をTc2M(℃)、前記ポリエステル系樹脂組成物の中で前記ポリエステル樹脂(B)のみを含有しない場合の降温結晶化温度をTc2N(℃)としたとき、下記関係を満足することを特徴とする無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
Tc2N(℃)−Tc2M(℃) ≧ 10(℃)
(2)ポリエステル樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂であり、かつポリエステル系樹脂組成物のTc2Mが185℃以下である前記(1)に記載の無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
(3)ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)が、共重合ポリエステル樹脂である前記(1)に記載の無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
(4)ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)が、共重合ポリエステル樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂である前記(1)に記載の無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
(5)共重合ポリエステル樹脂が、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸およびエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合したポリエステル樹脂である前記(3)又は(4)に記載の無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
(6)全ポリエステル樹脂中でポリエステル樹脂(A)を最も多く含有し、かつ全組成物中で無機を最も多く含有する無機強化ポリエステル系樹脂組成物から成形品を得るに際し、ポリエステル系樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度Tc2M(℃)が10℃以上低下するように、組成物中に降温結晶化温度低下剤を含有せしめて成形することを特徴とする無機強化ポリエステル系樹脂組成物成形品の表面外観改良方法。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)とは、本発明の組成物中の全ポリエステル樹脂中で最も含有量が多い主要成分の樹脂であり、無機を強化材として配合して成形品に成形されることが可能な樹脂である。
例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンナフタレートなどのホモポリエステルやこれらのホモポリエステルをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングルコールやポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエラストマーなどの結晶性ポリエステル樹脂である。これらの樹脂は、それ単独でエンジニアリングプラスチックとして使用可能な程度に高い分子量で高い物性、タフネスを有するものが好ましい。
例えば、PBTの場合、還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mLに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定:dL/g)は、0.4〜1.2dL/gの範囲が好ましく、より好ましくは、0.5〜0.8dL/gの範囲である。還元粘度が0.4dL/g以下ではタフネスが低下するため好ましくなく、1.2dL/gを越えると流動性が低下して、目的とする良好な成形品外観が得られないので好ましくない
共重合ポリエステル樹脂(B1)の酸成分としては、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、セバシン酸(SA)、アジピン酸(AA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NPA)、トリメリット酸(TMA)などが挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、1,4−ブタンジオール(BD)、1,2−プロパンジオール(1,2PG)、1,3−プロパンジオール(1,3PG)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(2MG)およびポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ε−カプロラクトン、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。これらの酸成分とグリコール成分との重縮合によって得られるポリエステル共重合体である。
例えば、テレフタル酸とエチレングリコールから重縮合によって得られる代表的な熱可塑性ポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)である。PETの還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mLに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定:dL/g)は、0.4〜1.0dL/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜0.9dL/gの範囲である。還元粘度が0.4dL/g以下ではタフネスが低下するため好ましくなく、1.0dL/gを越えると流動性が低下し、目的とする良好な成形品外観が得られないので好ましくない。
本発明のポリエステル系樹脂組成物における無機強化材(C)の配合量は30〜60質量%であり、好ましくは35〜55質量%である。
Tc2N(℃)−Tc2M(℃) ≧ 10(℃)
Tc2N(℃)−Tc2M(℃)は、好ましくは13(℃)以上、より好ましくは15(℃)以上である。
なお、本発明における降温結晶化温度(Tc2)とは、示差走査型熱量計(DSC)を用い、窒素気流下で20℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の速度で100℃まで降温させることにより得られるサーモグラムの結晶化ピークのトップ温度である。
本発明の無機強化ポリエステル系樹脂組成物は、示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度Tc2M(℃)は、185℃以下が好ましく、180℃以下が好ましい。
また、結晶化速度が速い無機強化樹脂組成物の場合、金型温度を120から130℃と高温にして成形表面の固化を遅延させる方法が考えられるが、この方法では、金型内で射出圧力が高い中心部分では表面光沢が改良されるが、射出圧力が加わりにくい成形品の末端部分では、ガラス繊維等の無機の浮き出しが発生しやすく、成形品全体での良好な外観特性は得られにくい。また、金型から取り出された後の成形品温度が高いため、成形品のそりが大幅に大きくなってしまう欠点がある。
本発明のポリエステル系樹脂組成物では、金型内での結晶化速度が最適となり、金型温度100℃以下の温度で射出成形しても、表面光沢に優れた成形品が得られる。
降温結晶化温度Tc2M(℃)のポリエステル樹脂(A)の降温結晶化温度Tc2N(℃)からの低下温度幅は、好ましくは13℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは17℃以上である。
また、以下の実施例、比較例において示した各特性、物性値は、下記の試験方法で測定した。
・ ポリエステル樹脂の還元粘度(dL/g):
0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mLに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
・ 曲げ強度:ISO−178に準じて測定した。
・ 曲げ弾性率:ISO−178に準じて測定した。
・ シャルピー衝撃強度:JIS K7111に準じて測定した。
(5)降温結晶化温度(Tc2)の測定は示差走査型熱量計(DSC)を用い、各サンプルは水分率0.03以下の乾燥状態でDSC装置に封入し、水分による変動を防止して測定した。すなわち、窒素気流下で20℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の速度で100℃まで降温させることにより得られるサーモグラムの結晶化ピークのトップ温度を求めた。
(6)メルトフローインデックス(MFI):
JIS K−7210に準じて、275℃の温度において荷重2160grをかけ、10分間で流動した樹脂量(gr)である。なお、各サンプルは水分率0.03%以下の乾燥状態で装置に装入し、水分によるMFIの変動を防止して測定した。
100×100×2mmtのシボプレート金型を用い、射出成形機で樹脂温度275〜280℃、金型温度80℃、100℃および120℃で射出成形し、得られた成形品について、目視で次のような評価を行った。
○ :平板全面でのガラス繊維の浮きがなく、表面光沢が優れている。
△ :ゲートから離れた端面でガラス繊維の浮きが観測される。
× :成形品の全面にガラス繊維の浮きが見られ、表面光沢が悪い。
(8)ソリ変形:
片側リブ付きの100×100×2mmtのフィルムゲートの金型を用い、(7)項の成形品と同様な成形条件(金型温度:80℃、100℃、120℃)で、樹脂の流れ方向に対して垂直方向に長さ100mm、高さ1mmで厚み1mmのリブを5本有する成形品を成形し、そのソリ変形量を測定した(図1でAの値、3枚の成形品の平均値)
× : ソリ変形量>3mm
△ : 3≧ソリ変形量≧2mm
○ : ソリ変形量<2mm
(イ)ポリエステル樹脂(A):
・PBT :還元粘度0.70dL/g
(ロ)共重合ポリエステル樹脂(B1成分):
・CoPE−1:TPA//EG/NPG=100//70/30モル%の組成比の共重合体、還元粘度0.83dL/g
・CoPE−2:TPA/IPA//EG/NPG=50/50//50/50モル%の組成比の共重合体、還元粘度0.56dL/g
・CoPE−3:TPA//EG/1,2PG=100//30/70モル%の組成比の共重合体、還元粘度0.56dL/g
・CoPE−7:TPA/IPA//EG=90/10//100モル%の組成比の共重合体、還元粘度1.12dL/g
・PET :東洋紡PET、RE−530A(還元粘度0.72dL/g)
(ニ)無機強化材(C成分)
・ガラス繊維:T−120H(日本電気硝子社製)
・タルク:ミクロン406(林化成株式会社製)
・酸化防止剤:イルガノックス1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)およびシーノックス412S(シプロ化成社製)
・離型剤:WE40(クラリアントジャパン社製)
・黒顔料:PAB8K470(住化カラー社製)
攪拌機及び留出コンデンサーを有する、容積10Lのエステル化反応槽に、テレフタル酸(TPA)2414質量部、エチレングリコール(EG)1497質量部、ネオペンチルグリコール(NPG)515質量部を投入し、触媒として、二酸化ゲルマニウムを8g/Lの水溶液として生成ポリエステルに対してゲルマニウム原子として30ppm、酢酸コバルト4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として生成ポリマーに対してコバルト原子として35ppm含有するように添加した。
その後、反応系内を最終的に240℃となるまで除々に昇温し、圧力0.25MPaでエステル化反応を180分間行った。反応系内からの留出水が出なくなるのを確認した後、反応系内を常圧に戻し、リン酸トリメチルを130g/Lのエチレングリコール溶液として生成ポリマーに対してリン原子として52ppm含有するように添加した。
得られたオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、除々に昇温しながら減圧し最終的に温度が280℃で、圧力が0.2hPaになるようにした。固有粘度に対応する攪拌翼のトルク値が所望の数値となるまで反応させ、重縮合反応を終了した。反応時間は100分であった。得られた溶融ポリエステル樹脂を重合槽下部の抜き出し口からストランド状に抜き出し、水槽で冷却した後チップ状に切断した。
以上のようにして得られた共重合ポリエステルはNMR分析の結果、ジカルボン酸成分はテレフタル酸100モル%、ジオール成分はエチレングリコール70モル%、ネオペンチルグリコール30モル%の組成を有していた。
得られた無機強化ポリエステル系樹脂組成物のペレットは射出成形機でそれぞれの評価サンプルを成形した。
成形条件は強化材が40%以下の場合はシリンダー温度275℃、40%以上の場合は280℃、金型温度は80℃、100℃および120℃である。
評価結果を表1、表2に示した。
一方、比較例1および2では共重合ポリエステル樹脂(B1)を配合しない組成であり、Tc2Mがいずれも190℃以上あり、成形品外観が良くない。特に比較例2では金型温度を120℃まで高めたが、成形品のガラス繊維の浮きを防止することが出来なかった。
表2の実施例5および比較例3ではPET(B2)成分を含まない組成の場合である。この組成でも共重合ポリエステル樹脂(B1)を含有する実施例5ではTc2Mが低く、成形品の外観やソリ変形が良好である。また比較例3ではTc2Mが198℃と異常に高く、成形品の外観やソリ変形が極めて悪い。特に金型温度を120℃まで上げても成形品の外観は悪く、成形品表面にガラス繊維の浮きが観察される。
一方、表1及び2から、金型内の樹脂充填速度に関係するメルトフローインデックス(MFI)は、各実施例、比較例においても、成形品の外観特性、特にガラス繊維等の無機強化材の浮き出し等にはあまり関連がないことが明らかである。
以上より、無機強化材含有ポリエステル系成形品におけるガラス繊維等の無機強化材の浮き出しなどによる外観不良やソリ変形の問題は、共重合ポリエステル樹脂などを配合して組成物の降温結晶化温度(Tc2M)を低下させ、100℃以下の金型温度での成形によって改良可能なことが明らかである。
W:樹脂組成物の流れの直角方向
1:成形品
2:フィルムゲート
3:リブ
A:ソリ変形量
Claims (6)
- ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)以外の少なくとも1種のポリエステル樹脂(B)及び無機強化材を含有するポリエステル系樹脂組成物において、該ポリエステル系樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度をTc2M(℃)、前記ポリエステル系樹脂組成物の中で前記ポリエステル樹脂(B)のみを含有しない場合の降温結晶化温度をTc2N(℃)としたとき、下記関係を満足することを特徴とする無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
Tc2N(℃)−Tc2M(℃) ≧ 10(℃) - ポリエステル樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂であり、かつポリエステル系樹脂組成物のTc2Mが185℃以下である請求項1に記載の無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)が、共重合ポリエステル樹脂である請求項1に記載の無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)が、共重合ポリエステル樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂である請求項1に記載の無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
- 共重合ポリエステル樹脂が、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸およびエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合したポリエステル樹脂である請求項3又は4に記載の無機強化ポリエステル系樹脂組成物。
- 全ポリエステル樹脂中でポリエステル樹脂(A)を最も多く含有し、かつ全組成物中で無機を最も多く含有する無機強化ポリエステル系樹脂組成物から成形品を得るに際し、ポリエステル系樹脂組成物の示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温結晶化温度Tc2M(℃)が10℃以上低下するように、組成物中に降温結晶化温度低下剤を含有せしめて成形することを特徴とする無機強化ポリエステル系樹脂組成物成形品の表面外観改良方法。
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