JP2008204799A - 固体高分子型燃料電池の活性化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池の電極を活性化及び最適化状態にすることで電池性能を向上させる。
【解決手段】アノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配置された高分子電解質膜とを有し、該アノードと該カソードの少なくとも一方がLc値5以上の炭素材料を含有する固体高分子型燃料電池の活性化方法であって、該固体高分子型燃料電池を組み立てる工程と、組み立て後に該アノードと該カソードとの間に1.0〜1.5Vの電圧を印加する工程とを有する。
【選択図】なし
【解決手段】アノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配置された高分子電解質膜とを有し、該アノードと該カソードの少なくとも一方がLc値5以上の炭素材料を含有する固体高分子型燃料電池の活性化方法であって、該固体高分子型燃料電池を組み立てる工程と、組み立て後に該アノードと該カソードとの間に1.0〜1.5Vの電圧を印加する工程とを有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、固体高分子型燃料電池の活性化方法に関する。
高分子電解質膜を有する固体高分子型燃料電池は、小型軽量化が容易であることから、電気自動車等の移動車両や、小型コジェネレーションシステムの電源等としての実用化が期待されている。
固体高分子型燃料電池のアノード及びカソードの各触媒層内における電極反応は、各反応ガスと、触媒と、含フッ素イオン交換樹脂(電解質)とが同時に存在する三相界面(以下、反応サイトという)において進行する。そのため、固体高分子型燃料電池においては、従来より、比表面積の大きなカーボンブラック担体に白金等の触媒金属を担持した金属担持カーボン等の触媒を高分子電解質膜と同種或いは異種の含フッ素イオン交換樹脂で被覆して触媒層の構成材料として使用される。
ところで、燃料電池の発電性能をより一層向上することが求められている。燃料電池の発電性能の向上には、電極のプロトン伝導性抵抗の改善と導電性抵抗の改善が必要であり、本発明者らの考察によれば、これらプロトン伝導性抵抗及び導電性抵抗には下記(1)〜(3)のような抵抗が存在する。
(1)電極触媒間の距離が及ぼす電子伝導性抵抗
(2)電極触媒構造の電解質が及ぼすプロトン伝導性抵抗
(3)電極触媒間の電解質の厚さが及ぼすプロトン伝導性抵抗
(1)電極触媒間の距離が及ぼす電子伝導性抵抗
(2)電極触媒構造の電解質が及ぼすプロトン伝導性抵抗
(3)電極触媒間の電解質の厚さが及ぼすプロトン伝導性抵抗
他方、下記特許文献1においては、ダイレクトメタノール型燃料電池の一般的なエージング方法が開示されている。具体的には、ダイレクトメタノール型燃料電池等のエージングを要する燃料電池のアノード電極にメタノール水溶液等のアノード媒質を供給し、カソード電極に空気等のカソード媒質を供給して、両電極間に燃料電池の発電時における通電と同じ方向へ強制通電を行って燃料電池のエージングをしている。
しかし、特許文献1の発明は、ダイレクトメタノール型燃料電池のセル組み立て直後の発電特性が低く不安定であることに対処する初期慣らし運転の短縮に関するもので、その通電方向も燃料電池の発電時における通電と同じ方向であり、触媒層の微細構造に関わる活性化方法ではない。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、燃料電池の電極を活性化及び最適化状態にすることで電池性能を向上させることを目的とする。
本発明者は、組み立て後の燃料電池に対して特定の活性化処理を行なうことによって、触媒効率を向上させることが可能であることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は、固体高分子型燃料電池の活性化方法の発明である。即ち、アノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配置された高分子電解質膜とを有し、該アノードと該カソードの少なくとも一方がLc値5以上の炭素材料を含有する固体高分子型燃料電池の活性化方法であって、該固体高分子型燃料電池を組み立てる工程と、組み立て後に該アノードと該カソードとの間に1.0〜1.5Vの電圧を印加する工程と、を有することを特徴とする。
印加電圧が1.5Vを越えると発電性能が向上せず、印加電圧が1.0V未満であると電極抵抗を低減できない。このように、本発明では、組み立て後に該アノードと該カソードとの間に1.0〜1.5Vの電圧を印加するが、印加電圧が1.0〜1.2Vであることがより好ましい。
本発明では、電圧を印加する手段として各種パターンが採用できる。具体的には、定電圧で保持する手段(定電圧法)、電圧を段階的に昇圧又は降圧する手段(ステップ法)、一定の電圧幅のサイクルを加える手段(サイクル法)、及びこれらいずれか2手段以上を組み合わせた手段から選択されることが好ましい。
本発明の活性化は、燃料電池の開回路電圧が0.15V以下の状態の際に電圧の印加を行なうことが好ましい。これにより、固体高分子型燃料電池が比較的未活性の時に活性化が行われるので効果的である。
電圧の印加は、燃料電池の発電時における電流方向と同じ電流方向であっても、燃料電池の発電時における電流方向と逆の電流方向であっても良い。この点、燃料電池の発電時における電流方向と同じ電流方向に限られる従来のエージングと異なる。即ち、本発明の活性化は、燃料電池用電極触媒のカーボン担体と高分子電解質量の構造に関するものであり、従来のエージングが初期慣らし運転であることとは技術的意味が全く相違する。
固体高分子型燃料電池の組み立て後に、アノードとカソードとの間に1.0〜1.5V、好ましくは1.0〜1.2Vの電圧を印加することによって、結晶性の高いカーボンを担体とする触媒層を活性化し、上記各抵抗を低減させて、触媒層中に反応ガス、触媒、電解質が会合する三相界面を十分に確保し、触媒効率を向上させることが可能となる。これにより、電極反応を効率的に進行させ、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
本発明の固体高分子型燃料電池の触媒層で担体に担持される触媒金属として、例えば以下の物質が利用可能である。アノードの触媒としては、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、金、銀、ニッケル、コバルト、リチウム、ランタン、ストロンチウム、イットリウムなどが例示され、これらを単独または二種類以上組み合わせて用いることができる。一方、カソードの触媒としては、アノードの触媒と同様のものが用いることができ、上記例示物質を使用することができる。なお、アノードおよびカソードの触媒は同じものを用いても異なるものを用いてもよい。
本発明の触媒層を備えた固体高分子型燃料電池で用いられる高分子電解質は、触媒電極の表面において、触媒金属を担持したカーボンナノホーン集合体と固体電解質膜を電気的に接続するとともに、触媒金属の表面に燃料を到達させる役割を有しており、水素イオン伝導性が要求される。さらに、アノードにメタノール等の有機液体燃料が供給される場合、燃料透過性が求められ、カソードにおいては酸素透過性が求められる。高分子電解質としてはこうした要求を満たすために、水素イオン伝導性や、メタノール等の有機液体燃料透過性に優れる材料が好ましく用いられる。具体的には、スルホン基、リン酸基などの強酸基や、カルボキシル基などの弱酸基などの極性基を有する有機高分子が好ましく用いられる。こうした有機高分子として、スルホン基含有パーフルオロカーボン(ナフィオン(デュポン社製)、アシプレックス(旭化成社製)など)、カルボキシル基含有パーフルオロカーボン(フレミオンS膜(旭硝子社製)など)、ポリスチレンスルホン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸共重合体、架橋アルキルスルホン酸誘導体、フッ素樹脂骨格およびスルホン酸からなるフッ素含有高分子などの共重合体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸のようなアクリルアミド類とn−ブチルメタクリレートのようなアクリレート類とを共重合させて得られる共重合体などが例示される。
更に、高分子電解質として、上記強酸基や弱酸基などの極性基を有する有機高分子を用いることができる。極性基の結合する対象の高分子としては他に、ポリベンズイミダゾール誘導体、ポリベンズオキサゾール誘導体、ポリエチレンイミン架橋体、ポリサイラミン誘導体、ポリジエチルアミノエチルポリスチレン等のアミン置換ポリスチレン、ジエチルアミノエチルポリメタクリレート等の窒素置換ポリアクリレート等の窒素または水酸基を有する樹脂、シラノール含有ポリシロキサン、ヒドロキシエチルポリメチルアクリレートに代表される水酸基含有ポリアクリル樹脂、パラヒドロキシポリスチレンに代表される水酸基含有ポリスチレン樹脂などを用いることもできる。
また、上記の高分子に対して、適宜、架橋性の置換基、例えば、ビニル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、シンナモイル基、メチロール基、アジド基、ナフトキノンジアジド基を導入してもよい。
燃料極および酸化剤極における上記の高分子電解質は、同一のものであっても異なるものであってもよい。
以下、実施例と比較例を示して、本発明を説明する。
[実施例1]
市販カーボンブラックであるKetjenEC(商標名)にPtを50%担持した触媒をナフィオン(商標名)溶液と有機溶媒と導電性材料の混合溶液に分散させ、この分散液を塗布して電極を得た。電極面積1cm2当りのPt触媒の量が0.3mg/cm2となるようにした。
[実施例1]
市販カーボンブラックであるKetjenEC(商標名)にPtを50%担持した触媒をナフィオン(商標名)溶液と有機溶媒と導電性材料の混合溶液に分散させ、この分散液を塗布して電極を得た。電極面積1cm2当りのPt触媒の量が0.3mg/cm2となるようにした。
この電極の両側に拡散層を設置して単セル電極を形成した。この単セルのカソード側の電極に、70℃に加熱したハブラを通過させた加湿空気を1L/min.、アノード側の電極に85℃に加熱したバブラを通過させた加湿水素を0.5L/min.供給し、初期電流電圧特性(活性化処理前)を測定した。活性化前の初期電流電圧特性の測定後、カソード側の電極に70℃に加熱したバブラを通過させた加湿窒素を1L/min.、アノード側の電極に85℃に加熱したバブラを通過させた加湿水素を0.5L/min.供給し、開回路電位が0.1V以下になるまで保持した。
その後、サイクルの最小電圧値0V、最大電圧値を1.0V、電圧変位速度50mV/Sでサイクル印加して、活性化処理を行い、初期電流電圧特性(活性化処理後)を測定した。
なお、担体の物性(Lc値:カーボンブラックの結晶性を表す指標のひとつ〕はXRDで測定し、5以下であることを確認した。具体的には、2θが24°のピークとそのピークの半価幅からLcを算出した。
[比較例1]
実施例1において、活性化処理を行なわなかった。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定した。
実施例1において、活性化処理を行なわなかった。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定した。
[実施例2]
実施例1において、活性化処理において印加する最大電圧を1.2Vとした。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
実施例1において、活性化処理において印加する最大電圧を1.2Vとした。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
[実施例3]
実施例1において、活性化処理を、印加する最大電圧を1.2Vとし、0.005V⇒100mV⇒500mV⇒1.2Vにステップで昇圧印加して行なった。各電位での保持時間は1minであった。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
実施例1において、活性化処理を、印加する最大電圧を1.2Vとし、0.005V⇒100mV⇒500mV⇒1.2Vにステップで昇圧印加して行なった。各電位での保持時間は1minであった。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
[実施例4]
実施例1において、活性化処理を、印加する最大電圧を1.2Vとし、1.2Vで6min保持した。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
実施例1において、活性化処理を、印加する最大電圧を1.2Vとし、1.2Vで6min保持した。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
[実施例5]
実施例1において、印加する最大電圧を1.3Vとして活性化処理を行った。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
実施例1において、印加する最大電圧を1.3Vとして活性化処理を行った。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
[実施例6]
実施例1において、印加する最大電圧を1.5Vとして活性化処理を行った。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
実施例1において、印加する最大電圧を1.5Vとして活性化処理を行った。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
[比較例2]
実施例1において、印加する最大電圧を2.0Vとして活性化処理を行った。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
実施例1において、印加する最大電圧を2.0Vとして活性化処理を行った。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
[比較例3]
実施例1において、印加する最大電圧を3.0Vとして活性化処理を行った。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
実施例1において、印加する最大電圧を3.0Vとして活性化処理を行った。実施例1と同様に活性化処理前の初期電流電圧特性を測定し、活性化処理後の初期電流電圧特性を測定した。
図1に、実施例1〜6及び比較例1〜3の活性化処理後の電圧向上率を示す。また、図2に、実施例1〜6及び比較例1〜3の活性化処理後の電極抵抗を示す。
図1の活性化処理における最大電位と電圧向上率の関係から、最大電位が1.5Vまでであれば活性化効果がみられ電池性能は向上することが分かる。さらに1.0〜1.2Vで最も活性化処理効果が高いことが分かる。これは電極に電圧を印加して微弱な電流を流すことにより、電流の流れる道筋ができたことによって、電極触媒間の距離が及ぼす電子伝導性抵抗、電極触媒構造の電解質が及ぼすプロトン伝導性抵抗、電極触媒間の電解質の厚さが及ぼすプロトン伝導性抵抗がそれぞれ低減されたことが原因であると思われる。また、この活性化処理で電極中の不純物を除去する効果も期待できる。
図2の活性化処理における最大電位と電極抵抗の関係から、最大電位が1.0Vを境に電極抵抗が急激に低減できているのが分かる。ただし、1.5V以上の電位を印加するとカーボン担体の腐食の速度が極めて早くなるため触媒の担体が劣化し、図1に示すように電圧向上効果がみられない。これより、カーボン担体が腐食しにくい印加電圧の範囲でより活性化処理効果があらわれたためと思われる。
本発明によれば、固体高分子型燃料電池の組み立て後に、アノードとカソードとの間に1.0〜1.5Vの電圧を印加することによって、結晶性の高いカーボンを担体とする触媒層を活性化し、抵抗を低減させて、触媒層中に反応ガス、触媒、電解質が会合する三相界面を十分に確保し、触媒効率を向上させることが可能となる。これにより、電極反応を効率的に進行させ、燃料電池の発電効率を向上させることができる。この結果、燃料電池の実用化と普及に貢献する。
Claims (4)
- アノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配置された高分子電解質膜とを有し、該アノードと該カソードの少なくとも一方がLc値5以上の炭素材料を含有する固体高分子型燃料電池の活性化方法であって、該固体高分子型燃料電池を組み立てる工程と、組み立て後に該アノードと該カソードとの間に1.0〜1.5Vの電圧を印加する工程と、を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池の活性化方法。
- 前記印加電圧が1.0〜1.2Vであることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の活性化方法。
- 前記電圧を印加する手段が、定電圧で保持する手段(定電圧法)、電圧を段階的に昇圧又は降圧する手段(ステップ法)、一定の電圧幅のサイクルを加える手段(サイクル法)、及びこれらいずれか2手段以上を組み合わせた手段から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子型燃料電池の活性化方法。
- 開回路電圧が0.15V以下の状態の際に前記電圧の印加を行なうことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池の活性化方法。
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