JP2008171589A - 負極および電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】初回充放電効率およびサイクル特性を向上させると共に膨れ特性を改善することが可能な電池を提供する。
【解決手段】負極14の負極活物質14Bは、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極活物質と、トリアリルイソシアヌレートなどのトリカルボイミドとを含んでおり、そのトリカルボイミドの含有量は負極活物質に対して9質量%以下である。負極14がトリカルボイミドを含まず、あるいは含んでいても含有量が上記した範囲内でない場合と比較して、初回充放電効率が高くなると共に充放電を繰り返した場合においても放電容量が低下しにくくなり、しかも電池が膨れにくくなる。
【選択図】図2
【解決手段】負極14の負極活物質14Bは、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極活物質と、トリアリルイソシアヌレートなどのトリカルボイミドとを含んでおり、そのトリカルボイミドの含有量は負極活物質に対して9質量%以下である。負極14がトリカルボイミドを含まず、あるいは含んでいても含有量が上記した範囲内でない場合と比較して、初回充放電効率が高くなると共に充放電を繰り返した場合においても放電容量が低下しにくくなり、しかも電池が膨れにくくなる。
【選択図】図2
Description
本発明は、負極活物質層を有する負極およびそれを用いた電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(video tape recorder )、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、ポータブル電子機器の電源として、電池、特に軽量で高エネルギー密度を得ることが可能であると共に小型でポータブル機器内のスペースを効率よく使用することが可能な二次電池の開発が進められている。
中でも、充放電反応にリチウム(Li)の吸蔵および放出を利用する二次電池(いわゆるリチウムイオン二次電池)は、鉛電池やニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度および出力密度が得られるため、大いに期待されている。このリチウムイオン二次電池は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極および負極と、電解液とを備えている。
リチウムイオン二次電池では、エネルギー密度が高いため、容量特性の面で利点が得られる一方で、充放電が繰り返されると放電容量が低下しやすいため、サイクル特性の面で改善の余地がある。詳細には、充電時に負極においてリチウムが吸蔵される場合には、その充電時において負極近傍が強い還元雰囲気に晒されるため、電解液が負極と反応して分解しやすくなる。
そこで、サイクル特性を向上させるために、電解液の溶媒として炭酸エチレンなどを用いることにより、負極の表面に被膜を形成して準安定な状態を作り出している。特に、サイクル特性をより向上させたい場合には、炭酸エチレンなどの主溶媒に、それよりも貴な還元電位を有する1種以上の副溶媒を添加剤として加えることにより、強固な被膜を形成している。この副溶媒としては、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、無水コハク酸、エチレンスルフィト、炭酸フルオロエチレンあるいはそれらの誘導体などが用いられている。
なお、リチウムイオン二次電池に関しては、上記したサイクル特性の他にも各種特性を向上させるために、さまざまな工夫がなされている。具体的には、負荷特性および保存特性を向上させるために、架橋樹脂前駆体が溶解された溶液に電極活物質の粉体を分散したのち、その溶液を加熱して架橋樹脂前駆体を架橋させることにより、粉体表面に保護膜を形成している(例えば、特許文献1参照。)。この場合には、正極活物質および負極活物質としてそれぞれリチウム含有複合酸化物および炭素材料などが用いられ、架橋剤としてトリアリルイソシアヌレートなどが用いられている。また、保存特性を向上させるために、電解液にトリカルボイミドを添加している(例えば、特許文献2参照。)。この場合には、トリカルボイミドとしてトリアリルイソシアヌレートなどが用いられている。さらに、保存特性を向上させるために、電解液の溶媒およびバインダ樹脂用溶媒の双方に溶解しない樹脂からなる保護膜によって正極活物質および負極活物質の粉体表面を被覆している(例えば、特許文献3参照。)。
特開2002−352799号公報
特開平07−192757号公報
特開平09−219188号公報
従来のリチウムイオン二次電池では、電池組み立て後の初回充電時において被膜を形成するために電気的反応に関わる電気量が消費されるため、電池容量が低下しやすい傾向にある。詳細には、対極をリチウム金属とした試験電池において炭素材料のリチウム吸蔵放出能力を調べると、リチウム吸蔵に伴う初回充電容量に比べてリチウム放出に伴う初回放電容量が小さくなり、その比率(初回充放電効率(%)=(初回放電容量/初回充電容量)×100)は、負極材料として使用できる炭素材料において80%〜95%となり、使用できない炭素材料においてそれよりも小さくなる。
初回充電容量は充放電反応に関わる活物質の仕込量によって決定されるため、本来的には、初回充電容量は初回放電容量に等しくなるはずである。しかしながら、実際には、上記したように、初回放電容量が初回充電容量よりも小さくなるのが一般的である。このことからすれば、初回充放電効率が小さい電池は、仕込量が十分であるにもかかわらずに実際に使用できる容量が低い電池、すなわち無駄が多い(効率が悪い)電池ということになる。初回充放電効率の低下は、上記した負極における被膜の形成の他、正極における被膜の形成や結晶構造の変化などによっても生じ得るが、負極における被膜の形成によるところが大きい場合が多い。
しかも、従来のリチウムイオン二次電池では、強固な被膜を形成するために電解液に炭酸ビニレンなどの添加剤を加えると、その添加剤が負極だけでなく正極にも働き、正極において副反応(添加剤の酸化分解)が生じるため、電池内部においてガスが発生しやすい傾向にある。この場合には、電極間に滞留するガスの影響を受けてリチウムイオンの移動が妨げられるため、充放電を繰り返すと放電容量が著しく低下しやすくなると共に、そのガスの影響を受けて電池内部の圧力が上昇するため、電池外観が膨れやすくなる。この膨れは、特に、フィルム状の外装部材を用いたラミネートフィルム型などの電池構造を有すると共に高温環境中で保存された場合に顕著となる。
これらのことから、十分な初回充放電効率およびサイクル特性を得ると共に二次電池の膨れを抑えるためには、初回充放電効率およびサイクル特性を向上させる上で正極および負極の双方に働く添加剤ではなく、負極だけに働く添加剤を用いる必要がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、初回充放電効率およびサイクル特性を向上させると共に膨れ特性を改善することが可能な負極および電池を提供することにある。
本発明による負極は、負極活物質とトリカルボイミドとを含む負極活物質層を有し、トリカルボイミドの含有量が負極活物質に対して9質量%以下のものである。また、本発明による電池は、正極および負極と共に電解液を備え、負極が負極活物質とトリカルボイミドとを含む負極活物質層を有し、トリカルボイミドの含有量が負極活物質に対して9質量%以下のものである。
本発明の負極によれば、負極活物質層が負極活物質とトリカルボイミドとを含み、そのトリカルボイミドの含有量が負極活物質に対して9質量%以下であるので、負極活物質層がトリカルボイミドを含まず、あるいは含んでいても含有量が上記した範囲内でない場合と比較して、負極を用いた電池などの電気化学デバイスにおいて初回充放電効率が高くなると共に充放電を繰り返した場合においても放電容量が低下しにくくなり、しかも電気化学デバイスが膨れにくくなる。これにより、本発明の負極を用いた電池では、初回充放電効率およびサイクル特性を向上させると共に膨れ特性を改善することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る負極は、例えば、電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、負極集電体に負極活物質層が設けられたものである。
負極集電体は、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する金属材料により構成されている。この金属材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどが挙げられる。中でも、負極集電体は、銅により構成されているのが好ましい。高い電気伝導性が得られるからである。
負極活物質層は、電極反応に関わる負極活物質と、トリカルボイミドとを含んでおり、そのトリカルボイミドの含有量は、負極活物質に対して9質量%以下である。負極活物質層がトリカルボイミドを含んでいると共にトリカルボイミドの含有量が上記した範囲内であるのは、負極を用いた電気化学デバイスにおいて高い初回充放電効率が得られると共に充放電を繰り返した場合においても放電容量が低下しにくくなり、しかも電気化学デバイスが膨れにくくなるからである。
トリカルボイミドとしては、例えば、化1で表されるトリアリルイソシアヌレートが挙げられる。このトリカルボイミドの含有量は、例えば、負極活物質に対して0.1質量%以上であるのが好ましい。放電容量がより低下しにくくなるため、より高い効果が得られるからである。もちろん、トリカルボイミドは、例えば、トリアリルシアヌレートなどの他の化合物であってもよい。
負極活物質は、電極反応物質(例えばリチウム)を吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでいる。この負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。炭素材料は電極反応物質の吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少なく、高エネルギー密度が得られるので好ましい。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素、あるいは(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。この他、炭素材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類などであってもよい。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成することにより炭素化したものをいう。
炭素材料の平均粒径は、10μm以上30μm以下の範囲内であるのが好ましい。負極が電気化学デバイスとして電池に用いられた場合に、高い電池容量が得られるからである。詳細には、平均粒径が10μmよりも小さいと、負極集電体と負極活物質層との間の密着性が低下するため、結着剤を多く必要とする可能性があり、一方、平均粒径が30μmよりも大きいと、負極活物質の充填性が低下する可能性があることから、いずれの場合においても電池容量の低下を招き得る。
また、炭素材料の比表面積は、0.3m2 /g以上0.7m2 /g以下の範囲内であるのが好ましい。負極が電気化学デバイスとして電池に用いられた場合に、高い電池容量が得られるからである。詳細には、比表面積が0.3m2 /gよりも小さいと、炭素材料の反応性が低下する可能性があり、一方、比表面積が0.7m2 /gよりも大きいと、負極が電解液と共に用いられた場合に、それらの接触面積が増大する可能性があることから、いずれの場合においても電池容量の低下を招き得る。
上記した他、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料が挙げられる。この種の負極材料は高いエネルギー密度が得られるので好ましい。この負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またはそれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。ここで、本発明における合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、本発明における合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などである。このうち、特に好ましいのは、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種である。電極反応物質を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物、スズの単体、合金あるいは化合物、またはそれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
ケイ素の化合物あるいはスズの化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、ケイ素またはスズに加えて、上記した第2の構成元素を含んでいてもよい。
特に、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、そのスズに加えて第2の構成元素と第3の構成元素とを含むものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンからなる群のうちの少なくとも1種である。第2の元素および第3の元素を含むことにより、負極が電気化学デバイスとして電池に用いられた場合に、充放電を繰り返した場合においても放電容量が低下しにくくなるからである。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られると共に放電容量が低下しにくくなるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。容量あるいはサイクル特性がさらに向上するからである。
なお、CoSnC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有しているのが好ましい。また、CoSnC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合しているのが好ましい。放電容量の低下は、スズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化が抑制されるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSでは、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、グラファイトであれば、炭素の1s軌道(C1s)のピークは284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば、炭素が金属元素あるいは半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合している。
なお、XPSでは、例えば、スペクトルのエネルギー軸の補正に、C1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPSにおいて、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
さらに、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物なども挙げられる。この金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどであり、高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどである。
もちろん、上記した一連の負極材料を組み合わせて用いてもよい。
なお、負極活物質層は、上記した負極活物質およびトリカルボイミドと共に、導電剤や結着剤などを併せて含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。この導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。特に、負極活物質が上記した炭素材料である場合には、その炭素材料が導電剤としても機能し得る。また、結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
この負極は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、負極活物質と、トリカルボイミドと、導電剤と、結着剤とを混合した負極合剤を溶剤に分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、負極合剤スラリーを負極集電体に均一に塗布したのち、乾燥させる。最後に、乾燥後の負極合剤スラリーを圧縮成型することにより、負極活物質層を形成する。この場合には、トリカルボイミドの含有量が負極活物質に対して9質量%以下となるようにする。
この負極によれば、負極活物質層が負極活物質とトリカルボイミドとを含み、そのトリカルボイミドの含有量が負極活物質に対して9質量%以下であるので、電気化学デバイスの電気的反応に関わる電気量を消費せずに、トリカルボイミドによって負極の表面に高耐久性の強固な被膜が形成される。この場合には、負極活物質層がトリカルボイミドを含まず、あるいは含んでいても含有量が上記した範囲内でない場合と比較して、電気化学デバイスにおいて初回充放電効率が高くなると共に充放電を繰り返した場合においても放電容量が低下しにくくなる。しかも、負極活物質層中に含有されたトリカルボイミドは、電気化学デバイスにおいて負極が正極と共に用いられた場合においても、その負極だけに働き、正極に働かない(正極において副反応を生じさせない)ため、その電気化学デバイスが膨れにくくなる。したがって、電気化学デバイスの初回充放電効率およびサイクル特性を向上させると共に膨れ特性を改善することができる。
特に、トリカルボイミドの含有量が負極活物質に対して0.1質量%以上であれば、サイクル特性がより向上するため、より高い効果を得ることができる。
次に、上記した負極の使用例について説明する。ここで、電気化学デバイスの一例として電池を例に挙げると、負極は以下のようにして電池に用いられる。
図1は、負極を用いた電池の分解斜視構成を表している。この電池は、例えば、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池であり、正極リード11および負極リード12が取り付けられた巻回電極体10がフィルム状の外装部材20の内部に収納されたものである。この電池構造は、いわゆるラミネートフィルム型と呼ばれている。
正極リード11および負極リード12は、例えば、それぞれ外装部材20の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード11は、例えば、アルミニウムなどの金属材料により構成されている。また、負極リード12は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極リード11および負極リード12を構成するそれぞれの金属材料は、薄板状または網目状になっている。
外装部材20は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。この外装部材20では、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体10と対向していると共に、各外縁部が融着あるいは接着剤によって互いに密着されている。外装部材20と正極リード11および負極リード12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム21が挿入されている。この密着フィルム21は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料により構成されている。この種の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
なお、外装部材20は、上記した3層構造のアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルムにより構成されていてもよいし、またはポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成されていてもよい。
図2は、図1に示した巻回電極体10のII−II線に沿った断面構成を表している。この巻回電極体10は、正極13および負極14がセパレータ15を介して積層されたのちに巻回されたものであり、その最外周部は保護テープ17により保護されている。
正極13は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体13Aの両面に正極活物質層13Bが設けられたものである。正極集電体13Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極活物質層13Bは、例えば、正極活物質として電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでいる。この正極活物質層13Bは、必要に応じて、上記した負極と同様の導電剤や結着剤などを含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウムと遷移金属元素との複合酸化物あるいはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。リチウムと遷移金属元素との複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 :xの値はx≦1である。)、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 :xの値はx≦1である。)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-y Coy O2 :xおよびyの値はそれぞれx≦1、y<1である。)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw O2 :x、vおよびwの値はそれぞれx≦1、0<v<1、0<w<1、v+w<1である。)あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。また、リチウムと遷移金属元素との複合酸化物としては、例えば、上記した複合酸化物に含まれる遷移金属元素の一部を他の金属元素(例えば、アルミニウムあるいはマグネシウムなど)に置換したものや、リチウムコバルト複合酸化物を核にして表面をニッケル、マンガンあるいはフッ素などを含む化合物で被覆したコアシェル型のものなどが挙げられる。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 :uの値はu<1である。)などが挙げられる。これらの他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化鉄、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、硫黄や、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
負極14は、上記した負極と同様の構成を有しており、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体14Aの両面に負極活物質層14Bが設けられたものである。これらの負極集電体14Aおよび負極活物質層14Bの構成は、それぞれ上記した負極における負極集電体および負極活物質層の構成と同様である。
この二次電池では、正極活物質と負極活物質(リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料)との間で量を調整することにより、正極活物質による充電容量よりも負極活物質の充電容量が大きくなっている。これにより、完全充電時においても負極14にリチウム金属が析出しないようになっている。
セパレータ15は、正極13と負極14とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ15は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどからなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多硬質膜により構成されており、それらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は、ショート防止効果に優れ、シャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内でシャットダウン効果を得ることができると共に、電気化学的安定性にも優れているので好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であれば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたものであったり、ブレンド化したものであってもよい。
この二次電池は、液状の電解質(電解液)を備えていてもよいし、ゲル状の電解質(電解質16)を備えていてもよい。図2では、電解質16を備える場合を示している。この電解液は、溶媒と、それに溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒は、例えば、有機溶剤などの非水溶媒の1種あるいは2種以上を含有している。この非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピルなどの炭酸エステル系溶媒が挙げられる。優れた容量特性、保存特性およびサイクル特性が得られるからである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度溶媒と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒とを混合したものが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、より高い効果が得られるからである。
特に、溶媒は、ハロゲン化炭酸エステルを含有しているのが好ましい。サイクル特性が向上するからである。このハロゲン化炭酸エステルとしては、フッ素化炭酸エステルが好ましい。より高い効果が得られるからである。このフッ素化炭酸エステルとしては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
また、溶媒は、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有しているのが好ましい。サイクル特性が向上するからである。この不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレンあるいは炭酸ビニルエチレンなどが挙げられる。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩の1種あるいは2種以上を含んでいる。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )あるいは六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )などが挙げられる。優れた容量特性、保存特性およびサイクル特性が得られるからである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、電解質塩としては、六フッ化リン酸リチウムが好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
溶媒中における電解質塩の含有量は、例えば、0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内である。優れた容量特性が得られるからである。
電解質16は、上記した電解液と、それを保持する高分子化合物とを含んでいる。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に漏液が防止されるので好ましい。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートなどが挙げられる。これらの高分子化合物は、単独で用いられてもよいし、あるいは複数種が混合されて用いられてもよい。特に、電気化学的安定性の点から、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドなどを用いることが好ましい。電解液中における高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、例えば5質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましい。
この場合の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。したがって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極13からリチウムイオンが放出され、電解質16を介して負極14に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極14からリチウムイオンが放出され、電解質16を介して正極13に吸蔵される。
ゲル状の電解質16を備えた二次電池は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、正極13を作製する。すなわち、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合した正極合剤を溶剤に分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極合剤スラリーを正極集電体13Aの両面に均一に塗布して乾燥させたのちに圧縮成型することにより、正極活物質層13Bを形成する。
また、上記した負極の作製手順と同様の手順によって負極集電体14Aの両面に負極活物質層14Bを形成することにより、負極14を作製する。
続いて、電解液と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製し、正極13および負極14のそれぞれに塗布したのちに溶剤を揮発させることにより、ゲル状の電解質16を形成する。続いて、正極集電体13Aに正極リード11を取り付けると共に、負極集電体14Aに負極リード12を取り付ける。続いて、電解質16が形成された正極13および負極14をセパレータ15を介して積層させたのち、長手方向に巻回させると共に最外周部に保護テープ17を接着させることにより、巻回電極体10を形成する。続いて、外装部材20の間に巻回電極体10を挟み込み、その外装部材20の外縁部同士を熱融着などで密着させることにより、巻回電極体10を封入する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材20との間に、密着フィルム21を挿入する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
なお、図1および図2に示した二次電池は、以下のようにして製造されてもよい。まず、正極13および負極14にそれぞれ正極リード11および負極リード12を取り付けたのち、それらの正極13および負極14をセパレータ15を介して積層および巻回させると共に最外周部に保護テープ17を接着させることにより、巻回電極体10の前駆体である巻回体を形成する。続いて、外装部材20の間に巻回体を挟み込み、一辺の外周縁部を除く残りの外周縁部を熱融着などで密着させることにより、袋状の外装部材20の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製し、袋状の外装部材20の内部に注入したのち、外装部材20の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質16を形成する。これにより、二次電池が完成する。
この二次電池によれば、負極14として上記した負極を備えているので、初回充放電効率およびサイクル特性を向上させると共に膨れ特性を改善することができる。特に、電池構造がラミネートフィルム型であり、充放電時に膨れが顕在化しやすいため、著しい効果を得ることができる。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1)
以下の手順により、図1および図2に示したラミネートフィルム型の二次電池を製造した。この際、負極14の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
以下の手順により、図1および図2に示したラミネートフィルム型の二次電池を製造した。この際、負極14の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
まず、正極13を作製した。すなわち、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間に渡って焼成することにより、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤としたのち、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。最後に、帯状のアルミニウム箔(12μm厚)からなる正極集電体13Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層13Bを形成することにより、正極13を作製した。こののち、正極集電体13Aの一端に、アルミニウム製の正極リード11を溶接して取り付けた。
また、負極14を作製した。すなわち、負極活物質として人造黒鉛粉末90質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン10質量部と、添加剤としてトリカルボイミドであるトリアリルイソシアヌレート(TAIC)とを混合して負極合剤としたのち、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。この際、人造黒鉛粉末の平均粒径および比表面積をそれぞれ21μmおよび0.48m2 /gとしたと共に、TAICの含有量を負極活物質に対して0.01質量%とした。続いて、帯状の銅箔(15μm厚)からなる負極集電体14Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層14Bを形成することにより、負極14を作製した。こののち、負極集電体14Aの一端に、ニッケル製の負極リード12を溶接して取り付けた。
次に、電解質16を作製した。すなわち、溶媒として炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)とを60:40の質量比で混合したのち、電解質塩として六フッ化リン酸リチウムを1mol/kgの濃度となるように溶解させることにより、電解液を調製した。続いて、電解液と、高分子化合物としてフッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二成分系共重合体と、希釈溶剤として炭酸ジメチルとを混合して前駆溶液としたのち、正極13および負極14に塗布して希釈溶剤を揮発させることにより、ゲル状の電解質16を形成した。この際、二成分系共重合体中におけるヘキサフルオロプロピレンの共重合量を6.9質量%とした。
次に、正極13と、多孔質ポリエチレンフィルム(10μm厚)からなるセパレータ15と、負極14とをこの順に積層させたのち、長手方向において渦巻状に多数回に渡って巻回させることにより、巻回電極体10を形成した。続いて、外側からナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリ無延伸エチレンフィルムがこの順に貼り合わされた2枚のアルミラミネートフィルムからなる外装部材20の間に巻回電極体10を挟み込んだ。
最後に、減圧環境中において外装部材20の外縁部同士を熱融着して封止することにより、外装部材20との間に密着フィルム21を介して正極リード11および負極リード12が導出されるように巻回電極体10を収納した。これにより、二次電池が完成した。
(実施例1−2〜1−9)
TAICの含有量を0.01質量%に代えて、0.05質量%(実施例1−2)、0.08質量%(実施例1−3)、0.1質量%(実施例1−4)、0.5質量%(実施例1−5)、1質量%(実施例1−6)、2質量%(実施例1−7)、5質量%(実施例1−8)あるいは9質量%(実施例1−9)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
TAICの含有量を0.01質量%に代えて、0.05質量%(実施例1−2)、0.08質量%(実施例1−3)、0.1質量%(実施例1−4)、0.5質量%(実施例1−5)、1質量%(実施例1−6)、2質量%(実施例1−7)、5質量%(実施例1−8)あるいは9質量%(実施例1−9)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−1)
TAICを含有させなかったことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
TAICを含有させなかったことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−2,1−3)
TAICの含有量を0.01質量%に代えて、10質量%(比較例1−2)あるいは12質量%(比較例1−3)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
TAICの含有量を0.01質量%に代えて、10質量%(比較例1−2)あるいは12質量%(比較例1−3)としたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−4〜1−8)
負極14にTAICを含有させる代わりに、電解液にTAIC含有させたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。この際、負極活物質に対するTAICの含有量を0.1質量%(比較例1−4)、1質量%(比較例1−5)、5質量%(比較例1−6)、9質量%(比較例1−7)あるいは12質量%(比較例1−8)とした。
負極14にTAICを含有させる代わりに、電解液にTAIC含有させたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。この際、負極活物質に対するTAICの含有量を0.1質量%(比較例1−4)、1質量%(比較例1−5)、5質量%(比較例1−6)、9質量%(比較例1−7)あるいは12質量%(比較例1−8)とした。
これらの実施例1−1〜1−9および比較例1−1〜1−8の二次電池について初回充放電効率、サイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
初回充放電効率を調べる際には、完成直後の二次電池を充電させることにより充電容量を測定し、引き続き放電させることにより放電容量を測定したのち、初回充放電効率(%)=(放電容量/充電容量)×100を算出した。この際、充電条件としては、充電電流0.2Cで上限電圧4.2Vまで定電流充電したのち、さらに充電開始からの総時間が8時間となるまで4.2Vで定電圧充電し、放電条件としては、放電電流0.2Cで終止電圧3.0Vまで定電流放電した。この「0.2C」とは、理論容量を5時間で放電しきる電流値である。
サイクル特性を調べる際には、以下の手順によって二次電池を繰り返し充放電させることにより、放電容量維持率を求めた。まず、23℃の雰囲気中において1サイクル充放電させることにより、放電容量(1サイクル目の放電容量)を測定した。続いて、同雰囲気中においてサイクルの合計数が500サイクルになるまで充放電させることにより、放電容量(500サイクル目の放電容量)を測定した。最後に、放電容量維持率(%)=(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100を算出した。この際、充電条件としては、充電電流1Cで上限電圧4.2Vまで定電流充電したのち、さらに充電開始からの総時間が2時間半となるまで4.2Vで定電圧充電し、放電条件としては、放電電流1Cで終止電圧3.0Vまで定電流放電した。この「1C」とは、理論容量を1時間で放電しきる電流値である。
膨れ特性を調べる際には、以下の手順によって二次電池を高温保存することにより、膨れ率を求めた。まず、23℃の雰囲気中において、二次電池の厚さ(高温保存前の厚さ)を測定した。続いて、二次電池を充電させた状態において60℃の恒温槽中に30日間に渡って保存したのち、再び二次電池の厚さ(高温保存後の厚さ)を測定した。最後に、膨れ率(%)=[(高温保存後の厚さ−高温保存前の厚さ)/高温保存前の厚さ]×100を算出した。この際、充電条件としては、サイクル特性を調べる場合と同様にした。
表1に示したように、負極14がTAICを含む実施例1−1〜1−9および比較例1−2,1−3では、それを含まない比較例1−1と比較すると、TAICの含有量との関係において以下の傾向が見られた。すなわち、初回充放電効率は、比較例1−1よりも高くなり、特に、TAICの含有量が多くなるにしたがって次第に増加し、その含有量が9質量%以上の範囲において一定(最大)になった。放電容量維持率は、TAICの含有量が多くなるにしたがって増加したのちに減少し、その含有量が9質量%以下の範囲において比較例1−1よりも高くなった。膨れ率は、TAICの含有量が0.05質量%以下の範囲では比較例1−1と同等に一定(最小)であったが、その含有量が多くなるにしたがって次第に増加し、特に、TAICの含有量が12質量%以上の範囲において2%に達した。これらの一連の傾向から、負極14がTAICを含む場合においてそれを含まない場合よりも放電容量維持率を高くすると共に、併せて初回充放電効率をできるだけ大きくすると共に膨れ率をできるだけ小さくするためには、TAICの含有量が9質量%以下の範囲内であればよいことが導き出された。
特に、実施例1−1〜1−9では、TAICの含有量が0.1質量%以上の範囲において、放電容量維持率が最大(82%)になった。
なお、ここでは具体的に実施例を開示していないが、TAICに代えてトリアリルシアヌレートなどの他のトリカルボイミドを用いて製造した二次電池についても初回充放電効率、サイクル特性および膨れ特性を調べたところ、TAICを用いた場合と同様の結果が得られた。
これらのことから、本発明の二次電池では、負極がトリカルボイミドを含み、そのトリカルボイミドの含有量が負極活物質に対して9質量%以下であることにより、初回充放電効率およびサイクル特性が向上すると共に膨れ特性が改善されることが確認された。この場合には、特に、トリカルボイミドの含有量が0.1質量%以上であれば、サイクル特性がより向上するため、より高い効果が得られることも確認された。
なお、負極14がTAICを含む実施例1−4,1−6,1−8,1−9と電解液がTAICを含む比較例1−4〜1−7とを比較すると、初回充放電効率および放電容量維持率は前者において後者よりも高くなり、膨れ率は前者において後者よりも小さくなった。この場合には、特に、前者と後者との間において膨れ率の差が著しく大きくなり、その膨れ率は前者において1%台に留まったが後者において2%以上に達した。これらの結果は、負極14がTAICを含む比較例1−3と電解液がTAICを含む比較例1−8とを比較した場合においても同様に得られた。上記した結果は、比較例1−1よりも比較例1−4〜1−8において初回充放電効率が高くなっていることから明らかなように、電解液がTAICを含んでいても初回充放電効率は高くなるが、その初回充放電効率の増加量は負極14がTACIを含む場合に及ばないことを表している。また、電解液がTAICを含んでいると、そのTAICが負極14だけでなく正極13にまで働き、正極13において副反応が生じるため、初回充放電効率が高くなる一方で放電容量維持率が低下すると共に膨れが増大することを表している。これらのことから、本発明の二次電池では、負極14がトリカルボイミドを含むことにより、電解液がトリカルボイミドを含む場合よりも、初回充放電効率およびサイクル特性が向上すると共に膨れ特性が改善されることが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の負極の使用用途は、必ずしも電池に限らず、電池以外の他の電気化学デバイスであっても良い。他の用途としては、例えば、キャパシタなどが挙げられる。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の電池の電解質として、電解液、あるいは電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質を用いる場合について説明したが、他の種類の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス、イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物と電解液とを混合したものや、他の無機化合物と電解液とを混合したものや、これらの無機化合物とゲル状電解質とを混合したものなどが挙げられる。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の電池として、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明の電池は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分とリチウムの析出および溶解に基づく容量成分とを含み、かつそれらの容量成分の和により表される二次電池についても同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1A族元素やマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの2A族元素やアルミニウムなどの他の軽金属を用いてもよい。この場合においても、負極活物質として、上記した実施の形態で説明した負極材料を用いることが可能である。
また、上記した実施の形態または実施例では、本発明の電池について、電池構造がラミネートフィルム型であると共に電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、本発明の電池は、円筒型、コイン型、ボタン型あるいは角型などの他の電池構造を有する場合や電子素子が積層構造などの他の素子構造を有する場合についても同様に適用可能である。また、本発明の電池は、二次電池に限らず、一次電池などの他の種類の電池についても同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の負極および電池におけるトリカルボイミドの含有量について、実施例の結果から導き出された数値範囲を適正範囲として説明しているが、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、含有量が上記した範囲から多少外れてもよい。
10…巻回電極体、11…正極リード、12…負極リード、13…正極、13A…正極集電体、13B…正極活物質層、14…負極、14A…負極集電体、14B…負極活物質層、15…セパレータ、16…電解質、17…保護テープ、20…外装部材、21…密着フィルム。
Claims (7)
- 負極活物質とトリカルボイミドとを含む負極活物質層を有し、
前記トリカルボイミドの含有量は前記負極活物質に対して9質量%以下である
ことを特徴とする負極。 - 前記トリカルボイミドは、トリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1記載の負極。
- 前記トリカルボイミドの含有量は前記負極活物質に対して0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の負極。
- 正極および負極と共に電解液を備えた電池であって、
前記負極は負極活物質とトリカルボイミドとを含む負極活物質層を有し、
前記トリカルボイミドの含有量は前記負極活物質に対して9質量%以下である
ことを特徴とする電池。 - 前記トリカルボイミドは、トリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項4記載の電池。
- 前記トリカルボイミドの含有量は前記負極活物質に対して0.1質量%以上であることを特徴とする請求項4記載の電池。
- さらに、前記電解液を保持する高分子化合物を備えたことを特徴とする請求項4記載の電池。
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JP2016051698A (ja) * | 2014-08-29 | 2016-04-11 | 三菱化学株式会社 | 非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池 |
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2007
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