JP2008149372A - 材料成形用の型および材料成形法、材料成型装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 材料成形用のキャビティ表面の温度変化をなるべく小さくし、また、型内に適切な温度分布を実現し、ガス等の巻き込み欠陥が少ない健全な製品を経済的に製造できる型およびそれを利用した加工法および装置を提供する。
【解決手段】 キャビティ表面1aに近い位置に、一定温度に保持したい温度付近で潜熱を吸収し溶解する相変化物質2を配置し、この相変化物質を冷却して熱を型外へ放出する。また、必要に応じて、前記相変化物質とキャビティ1の間に流路3を設けておき、被加工材料がキャビティ1を充填した後、前記流路に水や耐熱油などを流して製品取り出し温度まで冷却する。さらに、必要に応じて、融点の異なる相変化物質を型内に分散配置して被加工材料に適切な温度分布を生じさせる。このような型を利用して、空気等の巻き込みが生じない低速度で被加工材料をキャビティに挿入する。
【選択図】図1
【解決手段】 キャビティ表面1aに近い位置に、一定温度に保持したい温度付近で潜熱を吸収し溶解する相変化物質2を配置し、この相変化物質を冷却して熱を型外へ放出する。また、必要に応じて、前記相変化物質とキャビティ1の間に流路3を設けておき、被加工材料がキャビティ1を充填した後、前記流路に水や耐熱油などを流して製品取り出し温度まで冷却する。さらに、必要に応じて、融点の異なる相変化物質を型内に分散配置して被加工材料に適切な温度分布を生じさせる。このような型を利用して、空気等の巻き込みが生じない低速度で被加工材料をキャビティに挿入する。
【選択図】図1
Description
本発明は、鋳造、ダイカスト、射出成形、鍛造、粉末冶金など加熱された被加工材料を型内に挿入して成形する加工法に関するものである。
鋳造、ダイカスト、射出成形、鍛造、粉末冶金など、加熱された被加工材料を型内に流し込みあるいは圧入して成形加工する種々の加工法がある。これらの成形加工法では、型温度を適切に制御あるいは調節することが健全な製品を経済的に製造するために極めて重要である。例えば、型温度が低過ぎると、被加工材料の温度が低下し過ぎて、型への充填が困難になり過大な動力が必要になるし、型温度が高すぎると焼き付きが生じる。また、型温度変化が大きいと寿命が短くなる。
従来の型温度の制御は型内に設けた流路に水や油等を流し、また場合によってはヒータを型内に設置して行われているが、基本的には、被加工材料から型に伝わる熱流入と冷却による熱流出のバランスにより型の温度を調節している。従って、生産速度が一定に管理されている場合には良いが、実際には種々の要因で一定にはならず、最適状態を保つのが困難である。さらに従来方法では以下のような問題がある。
例えば、Al合金のダイカストの場合、上記のような従来の方法では、湯回り不良とガス巻き込みを防ぐためキャビティ表面温度を400℃程度以上の高温にして溶湯を射出・成型することが容易でない。これは、水冷では温度が低下し過ぎて、射出前に型を加熱する時間がかかり過ぎ、冷却が弱過ぎると型温度が上がり過ぎて、焼付きが生じるからである。300℃以上で使用できる流体があれば、水冷の場合よりは容易に高温に保てるが、適切な流体がないし、高温流体を取り扱うことは作業の安全上好ましくない。従って、通常のダイカストでは、型温度を250℃程度以下として、湯回り不良欠陥を防ぐため、溶湯を60MPa程度以上の高圧、数10m/sの高速で射出し、キャビティを短時間で充満させている。しかし、溶湯流速を上げると溶湯がキャビティ内の空気や発生したガスを巻き込んで欠陥となる。また、高圧、大容量の油圧装置が必要で装置も大型化している。この巻き込み欠陥を防ぐため、キャビティを高真空にし、超高速で射出して巻き込んだ気泡を微細にするなどの工夫がなされているが、装置はますます大型化し、保守コストも上がるため問題となっている。
また、低圧鋳造では、湯口部が押し湯となるので、湯口に向かって凝固が進行する指向性凝固が実現されるように、金型温度を制御するが、従来法では温度が変化しやすく一度温度が下がり過ぎると、短時間で回復させることは容易でなく、やはり最適型温度を維持するのが容易でない。
樹脂の射出成形などでは、上記のような高温ではないので、従来法でも型温度を制御できるが、より確実にかつ低コストで制御することが望まれている。また、鍛造や粉末冶金でも型温度を低コストで制御することが望まれている。
材料成形用のキャビティ表面の温度変化をなるべく小さくし、また、型内に適切な温度分布を実現し、ガス等の巻き込み欠陥が少ない健全な製品を経済的に製造できる型およびそれを利用した加工法および装置を提供する。
キャビティ表面に近い位置に、保持したい温度付近で潜熱を吸収し溶解する相変化物質を配置する。必要に応じて、前記相変化物質を水や油、空気等で冷却して熱を型外へ放出する。また、必要に応じて、前記相変化物質とキャビティの間に冷却用の流路を設けておき、被加工材料がキャビティを充填した後、前記流路に水や耐熱油などを流して製品取り出し温度まで冷却する。さらに、必要に応じて、融点の異なる相変化物質を型内に分散配置して型に適切な温度分布を生じさせる。前記相変化物質としては保持温度が200℃程度以上の場合には主に純金属あるいは合金を、200℃程度以下では潜熱蓄熱材料として使用されている非金属物質を主に使用する。このような型を利用して、空気等の巻き込みが生じない低速で被加工材料をキャビティに挿入する。なお、型には主型、中子など全ての構成部品を含む。
まず、発明の原理を図2で説明する。図2は材料を成形する型のキャビティ近傍に前記相変化物質を配置した場合の温度分布をキャビティ面からの距離に対して示したものである。被加工材料がキャビティを充填すると被加工材料の熱エネルギで型温度は上昇する。ある時間経つと(図2で4s後)熱エネルギは前記相変化物質に伝わり、前記相変化物質が潜熱を吸収して溶解するため、前記相変化物質の温度は融点近傍でほぼ一定となる(溶解され液相になった部分の温度は上昇するが、対流が生じるのでほぼ一様な温度分布となる)。さらに時間が経つと(図2で6s後)、被加工材料の温度が低下し、型温度も低下する。一方、前記相変化物質の一端(キャビティと逆側)は冷却されているが(強制冷却しなくても自然対流や金型への熱移動で十分な場合もある)、前記相変化物質は蓄積した凝固潜熱を放出するので凝固が終了するまで温度はほぼ一定となる。従って、型の初期温度を前記相変化物質の融点近傍(ただし、融点以下)としておけば、キャビティ近傍の温度を前記相変化物質の融点前後の温度に保った状態で加熱された被加工材料で型を充満し、製品として取り出すことができる。なお、前記相変化物質に被加工材料の熱が到達するまでは型温度が上昇するので、前記相変化物質をキャビティ面に近い位置に設置するほど温度変化が少ない。
上記の原理を利用することで以下のような種々の効果が得られる。例えば、図1はAl合金のダイカストで、前記相変化物質として工業用純Znを使用した例である。工業用純Znは約410℃で約100kJ/kgの融解潜熱を吸収して溶解するので、前記のようにキャビティ近傍の温度を400℃程度に容易に保つことができる。型温度を400℃程度の高温に保持できると、凝固時間が長くなるので、溶湯を高圧・高速で射出する必要はなく、キャビティ内の空気やガスを巻き込まない低速で充填させることができる。すなはち、プランジャ速度を0.5m/s以下、型内の溶湯速度を数m/s以下(例えば5m/s以下)、溶湯射出圧力を60MPa以下にできる(非特許文献1)。なお、冷却を早くして製品取り出し時間を短縮したい場合には、前記相変化物質とキャビティ面の間に、冷却流路を設けておき、前記相変化物質がある程度溶解した後取り出し時刻まで冷却すれば良い。このような冷却を加えても、前記相変化物質の温度は潜熱を放出するまでは低下しないので、型内温度は低下しにくく、次のサイクルで被加工材料を挿入する際に型温度を上昇する時間とエネルギを節約できる。
図3は融点の異なる3つの相変化物質を、ゲートからもっとも離れた場所には融点が最も低い相変化物質2aを、中間には融点が多少高い相変化物質2bを、ゲート8に近い部分には融点がより高い相変化物質2cを配置して、凝固が製品先端からゲート8に向かって一方向的に進行するようにしたものである。この原理は低圧鋳造にも適用できる。また指向性凝固が実現できれば加圧力が小さくてもひけ巣のない製品を得ることができるので、ダイカストの場合でも油圧駆動ではなく電動サーボモータ駆動による溶湯射出が可能となり装置の小型化、省エネルギが可能となる。また、樹脂の射出成型でも、低加圧で引け巣の少ない健全な製品が得られる。
型温度を高く保持できると、低速でキャビティを充填できるので型への熱及び衝撃負荷が減り、寸法精度が高い製品が製造でき、鋳型寿命も長くなる(ある程度の温度以下であれば型寿命には温度分布の変動が大きく関係する)。また、前記相変化物質の融点が低いので、前記相変化物質中に流路を金属性パイプ等として鋳包むことが容易であり、従来の切削加工による流路形成加工より低コストとなる。さらに、切削加工が困難な場所でも冷却可能となるし、水冷流路に亀裂が発生して冷却水が漏れ、溶湯と反応して爆発するような危険性もない。なお、製品取り出しのサイクルがある程度長ければ、水冷せず前記相変化物質をキャビティ近傍に封入して置くだけでも熱は型を通して放出されるので、例えば、押し出しピンなど、水冷が容易出ない場所にも利用できる。
樹脂の射出成形のような型への熱衝撃が小さい場合でも高寸法精度の製品を製造するには型の温度を一定に保つ方が、熱膨張誤差を小さくできるので望ましい。この場合も前記相変化物質を利用すると従来の場合より容易に温度調節ができる。
鍛造や粉末や金においても、型温度をある程度一定に保てると被加工材料の加工性が上がりより低荷重で加工できるし、型寿命が延びる。また、型内で一定温度に保つ必要がある熱処理を兼ねることが可能になりコスト低減に役立つ。
非特許文献
1 2006日本ダイカスト会議論文集、(2006.11),p.121 (社)日本ダイカスト協会
非特許文献
1 2006日本ダイカスト会議論文集、(2006.11),p.121 (社)日本ダイカスト協会
図1は実施例1における型の側面図であり,キャビティ表面1aから2mm〜50mm以内の位置4箇所に相変化物質2を配置している。各相変化物質中には流路4が設置されており、定常状態では、ほぼ一定の抜熱速度で、被加工材料が型に伝えた熱エネルギを型外へ放出する。もし、製品取り出しまでにキャビティ表面温度が所定の温度に低下するのに時間がかかり過ぎる場合には、前記相変化物質がある程度溶解した後、キャビティ面近くに設置した流路3に水または耐熱油を流して冷却速度を上げる。もし、製品取り出し後、キャビティ面の温度が下がりすぎた場合には、キャビティ面をふく射加熱あるいは高温ガス加熱する。場合によっては、成型加工開始時に流路3、4に温度の高い流体を流して型温度を上げることもできる。
さらに、厚さ1、2mm以下のAl合金やMg合金の薄肉製品をダイカストで製造する場合には、前期相変化物質として例えば工業用純Znを使用してキャビティ表面温度を400℃程度として溶湯射出速度を従来の数10m/s以上ではなく、5m/s以下で射出する。このため従来の油圧駆動ではなく電動サーボモータ駆動により溶湯を射出してもよい。
なお、前記相変化物質の寸法、配置位置は、被加工材料の材質、寸法、形状、キャビティへの挿入・取り出しサイクル、型の材質、許容寿命等を考慮してキャビティ面から2〜400mmの間の適切な範囲に配置する。
さらに、厚さ1、2mm以下のAl合金やMg合金の薄肉製品をダイカストで製造する場合には、前期相変化物質として例えば工業用純Znを使用してキャビティ表面温度を400℃程度として溶湯射出速度を従来の数10m/s以上ではなく、5m/s以下で射出する。このため従来の油圧駆動ではなく電動サーボモータ駆動により溶湯を射出してもよい。
なお、前記相変化物質の寸法、配置位置は、被加工材料の材質、寸法、形状、キャビティへの挿入・取り出しサイクル、型の材質、許容寿命等を考慮してキャビティ面から2〜400mmの間の適切な範囲に配置する。
図3は実施例2で,ゲート8から最も離れたキャビティ近傍に融点の低い相変化物質2aを、中間部には多少融点の高い相変化物質2bを、ゲート近傍には融点が高い相変化物質2cを配置して型に温度分布をつけてプランジャチップ7で材料を挿入したものである。プランジャチップ7を使用せず、ガス圧で溶湯を押し上げてキャビティに溶湯を挿入しても良い。また、プランジャチップは油圧でなくても電動サーボモータで駆動してもよい。
図4は実施例3で、相変化物質を一箇所にまとめ、溶解した相変化物質内での対流抵抗を小さくしてより激しい対流を生じさせ、より一定温度となるようにしたものである。
なお、流路4の固定支持がサポート9では不十分な場合には、流路4と型の一部が常に固相で接続されるような冷却とすることが望ましい。
なお、流路4の固定支持がサポート9では不十分な場合には、流路4と型の一部が常に固相で接続されるような冷却とすることが望ましい。
前記相変化物質としては、融点、潜熱、コスト、型との反応等を考慮して適切なものを選択するが、約200℃以上の融点が必要な場合は、元素の周期律表でIA,IIA,IVBVIII,IB,IIB,IIIA,IVA,VA,VIA族に属する元素の純金属あるいは工業用純金属、あるいは前記の族に含まれる元素を二元素以上組み合わせて、融点を適切にした合金を使用する。同じような融点の場合には、潜熱が大きく、液相線温度と固相線温度の差が小さい合金あるいは純金属(低コストの工業用純金属でよい)を選択する。融点が約200℃以下では、低融点合金を使用してもよいが、潜熱蓄熱材料として利用されているあるいは候補となる有機、無機系物質から上記と同様に選択することができる。前記相変化物質の配置場所は、成形される製品の熱物性値、寸法、製造サイクル等を考慮して適切に決定されるが、型の強度に問題がない範囲でキャビティ面に近い方が良い。また、上記の相変化物質の多くは溶解時に膨張するので、あらかじめ前記相変化物質の周囲に適切な空間を設けて膨張体積を吸収できるようにしておく方が良い。
また、型としては、金属の他にセラミックス型や砂型でも利用できる。ただし、溶解した相変化物質が流出するような砂型などの場合には相変化物質を金属ケース中に収納しておく必要がある。
また、型としては、金属の他にセラミックス型や砂型でも利用できる。ただし、溶解した相変化物質が流出するような砂型などの場合には相変化物質を金属ケース中に収納しておく必要がある。
鋳造、ダイカスト、射出成型、鍛造、粉末や金などの成型加工に利用できる.
1 キャビティ
1a キャビティ表面
2,2a,2b,2c 相変化物質
3 流路
4 流路
5,5’ 金型
6 押し出しピン
7 プランジャチップ
8 ゲート
9 パイプサポート
1a キャビティ表面
2,2a,2b,2c 相変化物質
3 流路
4 流路
5,5’ 金型
6 押し出しピン
7 プランジャチップ
8 ゲート
9 パイプサポート
Claims (7)
- 加熱された被加工材料を型に挿入して成形する加工法において、ある温度以上になると潜熱を吸収して溶解する相変化物質を型内に配置して型の温度調節をすることを特徴とする材料成形用の型(中子を含む)および成形加工法
- 上記請求項1で融点が異なる相変化物質を型内に分散配置して型の温度調節をすることを特徴とする材料成形用の型および成形加工法
- 上記請求項1および2において記載の相変化物質内に流体を流す流路を設けて型の温度調節をすることを特徴とする材料成形用の型および成形加工法
- 上記請求項1から3において記載の相変化物質と型のキャビティ面の間に冷却あるいは加熱のための流路を設けて型の温度調節をすることを特徴とする材料成形用の型および成形加工法
- 上記請求項1から4に記載の相変化物質として、元素の周期律表でIA,IIA,IVBVIII,IB,IIB,IIIA,IVA,VA,VIA族に属する元素で融点が900℃以下の純金属あるいは工業用純金属、あるいは前記の族に含まれる元素を二元素以上組み合わせて、融点を900℃以下とした合金を使用することを特徴とする材料成形用の型およびこの型を使用することを特徴とする成形加工法
- 上記請求項1から4に記載の相変化物質として、KNO3/LiNO3/NaNO3、MgCl2・6H2O、Al2(SO4)3・10H2O、NH4Al(SO4)2・12H2O、KAl(SO4)2・12H2O、Mg(NO3)2・6H2O、Sr(OH)2・8H2O、LiNO3/NH4NO3/NH4Cl、Ba(OH)2・8H2O、Mg(NO3)2・6H2O/Al(NO3)3・9H2O、Mg(NO3)2・6H2O/MgCl2・6H2O、NaCH3COO・3H2Oなどの塩類、珪化物、パラフィン、酢酸ナトリウム、高密度ポリエチレン、エステル、脂肪酸で融点が500℃以下の物質を使用することを特徴とする材料成形用の型およびこの型を使用することを特徴とする成形加工法
- 上記請求項1から6に記載の材料成形用の型を使用することを特徴とする材料成形装置
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JP2006357237A JP2008149372A (ja) | 2006-12-13 | 2006-12-13 | 材料成形用の型および材料成形法、材料成型装置 |
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2006
- 2006-12-13 JP JP2006357237A patent/JP2008149372A/ja active Pending
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