JP2008140763A - 燃料電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発電性能を向上させることが可能な燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】触媒金属を担持した担体と、イオン交換樹脂とを水の中で分散させて、分散液を作製する、分散工程と、該分散工程後に、分散液に有機溶媒を添加して触媒インクを作製する、触媒インク作製工程と、該触媒インク作製工程で作製された触媒インクを、電解質膜又は拡散層に塗布することにより、触媒層を作製する触媒層作製工程と、を備える、燃料電池の製造方法とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池の製造方法に関し、特に、発電性能を向上させることが可能な燃料電池の製造方法に関する。
燃料電池は、電解質層(以下、「電解質膜」という。)と、電解質膜の両面側にそれぞれ配設される電極(アノード及びカソード)とを備える膜電極接合体(以下、「MEA」という。)における電気化学反応により発生した電気エネルギーを、MEAの両側にそれぞれ配設される集電体(例えば、セパレータ等。以下において同じ。)を介して外部に取り出している。燃料電池の中でも、家庭用コージェネレーション・システムや自動車等に使用される固体高分子型燃料電池(以下、「PEFC」ということがある。)は、低温領域での運転が可能である。また、PEFCは、高いエネルギー変換効率を示し、起動時間が短く、かつシステムが小型軽量であることから、電気自動車の動力源や携帯用電源として注目されている。
PEFCの単セルは、含水状態に保たれてプロトン伝導性能を発現する電解質膜と、少なくとも触媒層を備えるカソード及びアノードと、を具備し、その理論起電力は1.23Vである。しかし、かかる低起電力では、電気自動車等の動力源として不十分であるため、通常は、単セルを直列に積層して積層体を形成し、この積層体における積層方向の両端にエンドプレート等を配置して形成されるスタック形態の燃料電池が使用される。
PEFCの運転時には、アノードに水素含有ガス(以下、「水素」という。)が、カソードに酸素含有ガス(以下、「酸素」という。)が、それぞれ供給される。アノードへと供給された水素は、アノードの触媒層(以下、「アノード触媒層」ということがある。)に含まれる触媒上でプロトンと電子へ分離し、水素から生じたプロトンは、アノード触媒層及び電解質膜を通ってカソードの触媒層(以下、「カソード触媒層」ということがある。)へと達する。一方、電子は、外部回路を通ってカソード触媒層へと達し、PEFCでは、かかる過程を経ることにより、電気エネルギーを取り出すことが可能になる。そして、カソード触媒層へと達したプロトン及び電子と、カソード触媒層へと供給される酸素とが、カソード触媒層に含まれる触媒上で反応することにより、水が生成される。
このように、PEFCから電気エネルギーを取り出すには、アノード触媒層に含まれる触媒上へ水素が供給され、当該触媒上における電気化学反応により生じたプロトンがカソード触媒層に含まれる触媒上へと移動し、カソード触媒層に含まれる触媒上へと供給された酸素とプロトン及び電子とが反応する必要がある。したがって、PEFCの発電性能を向上させるためには、水素又は酸素と、触媒と、プロトン伝導性物質との界面(以下、「三相界面」という。)を増加させることが重要であり、当該三相界面における触媒の表面積(以下、「三相界面」又は「三相界面の表面積」ということがある。)を増加させることが重要である。
PEFCを始めとする燃料電池の発電性能を向上させることを目的とした技術は、これまでにいくつか開示されてきている。例えば、特許文献1には、金属触媒に純水、パーフルオロ化されたポリマーイオノマー及び極性有機溶媒を混合して触媒層形成用組成物を製造する段階と、電極支持体上に形成された拡散層上部に前記触媒層形成用組成物をコーティングして、またはコーティングし乾燥して触媒層を形成することによってカソード及びアノードを各々製造する段階と、前記アノードとカソードとの間に電解質膜を介在させる段階と、を含む燃料電池単量体の製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、燃料電池用電極触媒を不活性化させて自発的な酸化反応を防止して触媒を安定化させうる、としている。
また、特許文献2には、(イ)触媒微粒子を界面活性剤の水溶液に分散させて触媒微粒子の分散液を調整する工程、(ロ)上記分散液に弗素樹脂のディスパージョンを加えて触媒微粒子と弗素樹脂の微粒子の混合分散液を調整する工程、(ハ)上記混合分散液に揮発性の少ない有機溶媒を加えて触媒微粒子と弗素樹脂の微粒子を凝集させる工程、を備えることを特徴とする、リン酸型燃料電池用電極触媒層の製造方法が開示されている。また、特許文献3には、低級飽和一価アルコールの水溶液に、イオン交換膜樹脂と貴金属触媒を担持した炭素微粉末とを添加してイオン交換膜樹脂と炭素微粉末触媒の分散液を形成する工程と、この分散液をろ過、乾燥後、粉砕する工程とから得られた炭素微粉末にイオン交換膜樹脂を付与した電池用触媒と、フッ素樹脂で撥水処理した炭素粉末とを混合し、これを導伝性電極基板上に加圧成型したことを特徴とするイオン交換膜燃料電池用電極の製造方法が開示されている。また、特許文献4には、触媒金属が担持された外径15nm以下のカーボン単繊維と、プロトン伝導性物質と、アルコール及び水の混合溶媒とを含む燃料電池電極用触媒組成物が開示されている。さらに、特許文献5には、高度な導電性と撥水性とを有する電池用導電材料に好適なグラファイト粉末とその製造方法に関する技術が開示され、特許文献6には、高出力密度のPEFCに関する技術が開示されている。
特開2003−272640号公報 特開昭63−48753号公報 特開平5−182671号公報 特開2005−166344号公報 特開2004−99355号公報 特開2002−208406号公報
しかし、特許文献1〜特許文献4に記載の技術のように、有機溶媒を含む混合溶媒に触媒金属を担持した担体を分散させると、有機溶媒と触媒金属とが反応する際の発熱により、触媒金属が凝集する。触媒金属が凝集すると、三相界面が減少し、燃料電池の発電性能を向上させることが困難になるため、特許文献1〜特許文献4に記載の技術では、燃料電池の発電性能を向上させ難いという問題があった。また、特許文献5に記載の技術により、カーボンの特性を特定するのみでは、燃料電池の発電特性を向上させ難いという問題があった。さらに、特許文献6に記載の技術により、フッ素イオン交換樹脂の比表面積を特定するのみでは、燃料電池の発電特性を向上させ難いという問題があった。
そこで本発明は、発電性能を向上させることが可能な燃料電池の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明は、触媒金属を担持した担体と、イオン交換樹脂とを水中で分散させて、分散液を作製する、分散工程と、分散工程後に、分散液に有機溶媒を添加して触媒インクを作製する、触媒インク作製工程と、触媒インク作製工程で作製された触媒インクを、電解質膜又は拡散層に塗布することにより、触媒層を作製する触媒層作製工程と、を備えることを特徴とする、燃料電池の製造方法である。
本発明において、「触媒金属」の具体例としては、白金のほか、白金黒粒子、又はこれらの合金等を例示することができる。「担体」の具体例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等に代表される炭素材料のほか、炭化ケイ素等に代表される炭素化合物等を挙げることができる。すなわち、例えば、触媒金属が白金であり、担体がカーボンである場合、「触媒金属を担持した担体」とは、白金担持カーボンを意味する。さらに、「水」とは純水を意味し、より具体的には、積極的に添加物(例えば、各種イオン等)を加えていない、不可避的不純物のみが許容される純水を意味する。すなわち、触媒金属を担持した担体とイオン交換樹脂とが分散される水に、後述する有機溶媒は、実質的に混入していない。加えて、「イオン交換樹脂」とは、プロトン伝導性能を有するアイオノマーを意味し、その具体例としては、パーフルオロスルホン酸系のポリマー等を挙げることができる。さらに、「有機溶媒」とは、触媒インクがスプレー塗布法により塗布される場合には、炭素数が3以下のアルコールを意味し、触媒インクがドクターブレード法により塗布される場合には、ドクターブレード法によるPEFCの触媒層作製時に使用され得る有機溶媒(例えば、炭素数が3以下のアルコールや、プロピレングリコール等。触媒インクの作製に使用されるものであれば、これらに限定されるものではない。)を意味する。「電解質膜」は、プロトンを伝導するポリマー(プロトン伝導性ポリマー)を有していれば特に限定されるものではないが、含フッ素高分子を骨格として少なくともスルホン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基のうち一種を有するポリマーを有することが好ましい(例えば、Nafion等(「Nafion」又は「ナフィオン」は米国デュポン社の登録商標)。このほか、ポリオレフィンのような炭化水素を骨格とするポリマーを有していても良い。さらに、「拡散層」は、PEFCで使用可能なものであれば特に限定されるものではなく、その具体例としては、カーボンペーパー等を挙げることができる。ここに、本発明の燃料電池の製造方法により製造される燃料電池(単セル)は、少なくとも、電解質膜と、アノード触媒層及びカソード触媒層と、集電体と、を備え、さらに、必要に応じて拡散層が備えられる。本発明の燃料電池の製造方法により製造される燃料電池に拡散層が備えられない場合、「触媒インクを、電解質膜又は拡散層に塗布する」とは、触媒インクを電解質膜に塗布することを意味する。
本発明では、上記分散工程、触媒インク作製工程、及び、触媒層作製工程が備えられていれば、他の工程は特に限定されるものではないが、電解質膜の両面側それぞれに触媒層を作製することによりMEAが作製される場合には、例えば、当該MEAを一対の拡散層で狭持して熱圧着する等の方法により、一対の拡散層の間にMEAが備えられる積層体を作製し、その後、当該積層体の両側に集電体を配置する工程等を経ることにより、燃料電池を製造することができる。これに対し、拡散層に触媒インクを塗布することにより触媒層が作製される場合には、例えば、電解質膜の両側に、触媒層付き拡散層をそれぞれ配置し、これらを熱圧着する等の方法によって、一対の拡散層の間にMEAが備えられる積層体を作製し、その後、当該積層体の両側に集電体を配置する工程等を経ることにより、燃料電池を製造することができる。
上記本発明において、触媒インク作製工程が、有機溶媒を添加した後に、分散処理を行わないで、触媒インクを作製する工程であることが好ましい。
本発明において、「有機溶媒を添加した後に、分散処理を行わないで、触媒インクを作製する」とは、有機溶媒を添加した後に、せん断を加えないような方法(例えば、遠心攪拌等)により、分散液と有機溶媒とを混合することを意味し、有機溶媒を添加した後に、せん断を加えるような分散(例えば、ビーズミルや超音波ホモジナイザー等を用いた分散)は行わないことを意味する。
また、上記本発明において、触媒インクの溶媒の質量をM1、触媒インクに含有される有機溶媒の質量をM2、とするとき、20≦100×M2/M1≦50であることが好ましい。
また、上記本発明において、触媒金属が白金又は白金合金であり、担体がカーボンブラックであることが好ましい。
また、担体がカーボンブラックである上記本発明において、カーボンブラックが、下記(1)乃至(4)の少なくとも一以上を充足することが好ましい。(1)カーボンブラックの一次粒子径をR1[nm]とするとき、15≦R1≦30とする。(2)カーボンブラックの一次凝集体の長さをDst[nm]とするとき、80<Dstとする。(3)カーボンブラック100gへのDBPの吸収量をA[ml/100g]とするとき、150<Aとする。(4)ラマン分光法で測定したカーボンブラックのGバンドの半値幅をB[cm−1]とするとき、14≦B<50とする。
ここに、「カーボンブラックの一次粒子径」とは、凝集していないカーボンブラック粒子一個の直径を意味する。さらに、「カーボンブラックの一次凝集体」とは、複数のカーボンブラック粒子が結合することにより形成される一次凝集体を意味する。さらに、「DBP吸収量」とは、JIS K6217−4:2001「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:DBP吸収量の求め方」に規定される方法によって求められるDBP吸収量を意味する。また、本発明において、カーボンブラックの一次凝集体の長さDstの上限値は、特に限定されるものではないが、絡まって分散しにくくなるという観点からは、Dst<1000とすることが好ましい。さらに、本発明において、カーボンブラックのDBP吸収量Aの上限値は、特に限定されるものではないが、絡まって分散しにくくなるという観点からは、A<500とすることが好ましい。
本発明によれば、イオン交換樹脂が分散される溶媒に有機溶媒が含まれないので、三相界面が大きい分散液を作製できる。さらに、当該分散液に有機溶媒を添加して作製される触媒インクを、電解質膜又は拡散層へ塗布することにより、触媒層が作製されるので、電解質膜又は拡散層から剥がれ難く、かつ、三相界面が大きい状態に維持された触媒層を作製できる。したがって、本発明によれば、発電性能を向上させることが可能な燃料電池の製造方法を提供できる。そして、触媒金属として白金を用い、担体としてカーボンブラックを用いた場合に、本発明による上記効果が顕著になる。
本発明において、分散処理を行わないで触媒インクを作製することにより、触媒の熱凝集を抑制することができるので、三相界面が大きい触媒インクを作製できる。さらに、本発明において、20≦100×M2/M1≦50とすることにより、三相界面が大きい触媒インクを作製しやすくなる。加えて、本発明において、カーボンブラックが、上記(1)乃至(4)の少なくとも一以上を充足することにより、高性能の燃料電池を製造可能な、燃料電池の製造方法を提供できる。
燃料電池の発電性能を向上させるためには、電気化学反応の発生頻度を増加させることが重要であり、それには、三相界面の表面積を大きくすることが重要である。一方、電解質膜や拡散層から剥がれ難い触媒インクとする等の観点から、これまで、触媒金属を担持した担体(例えば、白金担持カーボン等。以下において、「Pt/C」ということがある。)とイオン交換樹脂(例えば、Nafion等。以下において、「Nafion」ということがある。)と、を分散させる際に用いられる溶媒として、エタノール等に代表される有機溶媒を含有するものが用いられてきた。ところが、有機溶媒中でPt/CとNafionとを分散させる工程を経て作製された触媒層は、Ptの電気化学的表面積が小さく、三相界面の表面積が小さいという問題があった。それゆえ、燃料電池の発電性能を向上させるためには、従来とは異なる方法で触媒層を作製することが重要である。
本発明は、かかる観点からなされたものであり、その要旨は、Ptの電気化学的表面積が大きい触媒層を備える燃料電池の製造方法を提供することにある。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の燃料電池の製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)の形態例を示すフローチャートである。図2は、触媒金属を担持した担体の凝集体の形態例を示す概念図である。本発明の説明では、「担体」に「触媒金属」が担持された形態のものを、「触媒金属を担持した担体」と表記する。
図1に示すように、本発明の燃料電池の製造方法は、分散工程(工程S1)と、触媒インク作製工程(工程S2)と、触媒層作製工程(工程S3)と、を備え、さらに、積層体作製工程(工程S4)と、集電体配設工程(工程S5)と、を備えている。
<分散工程S1>
工程S1は、純水中で、担体2、2、…(以下、「C」ということがある。)に触媒金属1、1、…(以下、「Pt」ということがある。)が担持された、触媒金属を担持した担体3、3、…(以下、「Pt/C」ということがある。)と、イオン交換樹脂(以下、「Nafion」ということがある。)と、を分散して分散液を作製する工程である。純水中において、いわゆるミセル状で存在するNafionは、その大きさが小さいと考えられるため、複数のPt/Cが集まって凝集体を形成しているPt/C凝集体10の細孔4、4、…へ入り込む割合が高い。当該細孔4、4、…へNafionが入り込むと、細孔4、4、…にNafionが入り込んでいない形態と比較して、Nafionと接触し得るPt量を増加させることができる。そのため、上記工程を経ることで、PtとNafionとの界面の面積が大きい、すなわち、Ptの電気化学的表面積が大きい分散液を作製することができる。
これに対し、従来のように、有機溶媒中でPt/CとNafionとを分散させると、Nafionは有機溶媒中で凝集し易く、有機溶媒中のNafionはその大きさが大きい。そのため、従来の方法で分散させると、Nafionは上記細孔4、4、…へ入り込み難く、Nafionと接触し得るPtの量が増加し難いため、Ptの電気化学的表面積が大きい分散液を作製し難い。このほか、有機溶媒中では、有機溶媒とPtとが反応して反応熱が生じるため、Ptの熱凝集が生じ易い。このようにしてPtの熱凝集が生じると、NafionとPtとの接触界面の面積を大きくすることが困難になるため、従来の方法では、Ptの電気化学的表面積が大きい分散液を作製することが困難である。したがって、Ptの電気化学的表面積の大きい分散液を作製するには、本発明の工程S1のように、Pt/CとNafionとを純水中で分散することが重要である。
本発明において、工程S1は、例えば、カーボンブラックの表面に白金を担持させることにより構成されるPt/Cと、Nafionを分散した溶液(例えば、米国デュポン社製のDE1020やDE1021等)とを、純水中で分散させる形態とすることができる。
<触媒インク作製工程S2>
工程S2は、上記工程S1の後に備えられ、上記工程S1で作製した分散液に有機溶媒(例えば、エタノール等。以下、「エタノール」という。)を添加して触媒インクを作成する工程である。上記工程S1にて作製された分散液を電解質膜又は拡散層に塗布して触媒層を作製すると、後述するように、電解質膜又は拡散層から剥がれ易い触媒層が形成される。このように剥がれ易い触媒層を備える燃料電池を製造すると、触媒層と電解質膜又は拡散層との接触抵抗が大きくなるため、良好な発電性能を有する燃料電池が得られない。また、Pt/Cの歩留まりが悪い等の問題も生じる。したがって、電解質膜又は拡散層から剥がれ難い触媒層を作製するため、本発明の製造方法では、上記工程S1にて作製された分散液にエタノールを添加することにより、触媒インクを作製する。
上記工程S1にて作製された分散液に、エタノールを添加すると、推測ではあるが、分散液に含まれるNafionの状態が変化し、例えば、Pt/C凝集体10の外側表面に存在するNafionが凝集すると考えられる。Pt/C凝集体10の外側表面に存在するNafionが凝集すると、当該Nafionと電解質膜又は拡散層とが密着できるので、電解質膜又は拡散層から剥がれ難い触媒インクを作製できる。一方、Pt/C凝集体10の細孔4、4、…に入り込んだNafionは、エタノールが添加されることで、その大きさが大きくなると、細孔4、4、…の外へ移動し難くなるので、上記工程S1により作製された分散液にエタノールを添加しても、Ptの電気化学的表面積の大きさは変化しないと考えられる。また、水だけよりもエタノールを加えた方が、表面張力が小さく、小さい液滴でスプレー塗布することが可能になるため、電解質膜又は拡散層から剥がれ難い触媒インクを作製できる、とも考えられる。
他方、分散液にエタノールを添加し、分散液に含まれるPtとエタノールとが反応すると、当該反応によって生じた反応熱によりPtの熱凝集が起こり易くなると考えられる。Ptとエタノールとの反応は、分散液にエタノールを添加した後に、せん断を加えるような分散(例えば、ビーズミルや超音波ホモジナイザー等を用いた分散)を行った場合に生じ易くなるため、本発明の触媒インク作製工程では、せん断を加えるような分散処理は行わないことが好ましく、分散液とエタノールとを混合する際には、せん断を加えないような方法(例えば、遠心攪拌等)により、混合することが好ましい。さらに、分散液にエタノールを添加した後に、液温が上昇すると、Ptの熱凝集が生じ易くなると考えられる。Ptが熱凝集すると、Ptの電気化学的表面積が低減するため、Ptの電気化学的表面積が大きい触媒層を作製するには、液温の上昇を抑制することが好ましい。そこで、工程S2では、液温が30℃以上に上昇しないように冷却しながら、遠心攪拌を行うことが好ましく、液温が15℃以上に上昇しないように冷却しながら遠心攪拌を行うことがさらに好ましい。
<触媒層作製工程S3>
工程S3は、上記工程S2の後に備えられる工程であり、上記工程S2で作製した触媒インクを、電解質膜又は拡散層に塗布することにより、電解質膜の表面、又は、拡散層の表面に、触媒層を作製する工程である。ここで、触媒インクを塗布する方法は、特に限定されるものではなく、その具体例としては、刷毛塗りやスプレー塗布のほか、スクリーン印刷、キャスト法等を挙げることができる。
<積層体作製工程S4>
工程S4は、一対の集電体によって狭持される積層体を作製する工程である。当該積層体には、少なくとも、電解質膜とアノード触媒層とカソード触媒層とを有するMEAが備えられ、さらに、水素又は酸素をMEAへ均一に拡散させ得る構成とする等の目的で、単セルに拡散層が備えられる場合には、上記MEAに加え、拡散層が、積層体に備えられる。工程S4は、積層体を作製可能であれば、その形態は特に限定されるものではない。上記工程S3において、電解質膜に触媒インクを塗布することにより触媒層が作製される場合には、電解質膜の一方の面及び他方の面のそれぞれへ触媒層を作製してMEAを作製した後、当該MEAの両側に、例えば、カーボンペーパー等からなる拡散層をそれぞれ配置し、一対の拡散層とMEAとを熱圧着する等の方法により、積層体を作製することができる。このほか、上記工程S3において、拡散層に触媒インクを塗布することにより触媒層が作製される場合には、カーボンペーパー等からなる2つの拡散層それぞれの表面に触媒層を作製することにより、一対の、触媒層付き拡散層を作製し、当該一対の触媒層付き拡散層の間に電解質膜を配置して、例えば、これらを熱圧着する等の方法により、積層体を作製することができる。
<集電体配設工程S5>
工程S5は、上記工程S4の後に備えられる工程であり、上記工程S4で作製した積層体の両側に、集電体をそれぞれ配設する工程である。このように、積層体の両側に集電体をそれぞれ配置する工程を経ることで、燃料電池を製造することができる。ここで、集電体を構成する材料は、導電性を有し、かつ、燃料電池の運転時の環境に耐え得る耐食性を有するものであれば、特に限定されるものではない。集電体構成材料の具体例としては、ステンレス鋼等に代表される金属材料のほか、PEFCのセパレータを構成し得る炭素材料等を挙げることができる。
本発明は、上記工程S1〜工程S3を備えていれば、その形態は特に限定されるものではないが、担体としてカーボンブラックが用いられる場合には、三相界面を増大させやすい形態の触媒インク及び触媒層を作製可能とする観点から、下記(1)乃至(4)の一以上を充足することが好ましい。
(1)カーボンブラックの一次粒子径R1[nm]を、15≦R1≦30とする。
カーボンブラックの一次粒子径(以下「R1」ということがある。)が小さすぎると、カーボンブラック同士が凝集しやすく、一次凝集体や、当該一次凝集体が集まって形成される二次凝集体の多孔度が低下して三相界面が形成され難くなる一方、R1が大きすぎると、触媒インク作製時に使用するカーボンブラックの質量を一定にした場合、触媒インクに含有されるカーボンブラックの表面積が小さくなって、触媒を担持させ難くなる。そこで、一次凝集体や二次凝集体の多孔度の低下を抑制する等の観点から、15nm≦R1とすることが好ましい。さらに、表面に触媒を担持しやすくして、三相界面を増大させやすい形態のカーボンブラックとする等の観点から、R1≦30nmとすることが好ましい。
(2)カーボンブラックの一次凝集体の長さDst[nm]を、80<Dstとする。
燃料電池の性能を向上させるためには、アノード触媒層で生じた電子がカソード触媒層へ伝導される際の抵抗(電気抵抗)を小さくすることが重要である。電気抵抗を小さくするには、アノード触媒層で生じた電子をアノード触媒層から取り出しやすい状態にすること、及び、カソード触媒層の表面に達した電子がカソード触媒層に分散された触媒の下へ伝導されやすい状態にすること、が重要である。アノード触媒層及びカソード触媒層(以下これらをまとめて単に「触媒層」ということがある。)を、電子が伝導されやすい形態とするには、触媒層の厚みの略全体に亘って、導電性物質による電子伝導経路が形成された形態とすることが有効であり、触媒層にカーボンブラックが分散されている場合には、カーボンブラックによって、当該電子伝導経路を構成することができる。かかる観点から、カーボンブラックの一次凝集体の長さ(カーボンブラックの一次粒子が連なった長さ)Dstは、80<Dstとすることが好ましい。一方、絡まって分散しにくくなるという観点からは、Dst<1000とすることが好ましい。より好ましくは、80<Dst<200である。
(3)カーボンブラック100gへのDBPの吸収量A[ml/100g]を、150<Aとする。
DBP吸収量は、カーボンブラックの凝集体に含まれる空隙の量を評価可能な指標であり、カーボンブラックのDBP吸収量Aが大きいほど、カーボンブラックの凝集体に含まれる空隙に触媒及びイオン交換樹脂が入り込みやすく、さらに、反応ガスも拡散しやすい。すなわち、DBP吸収量Aが大きいほど、三相界面が形成されやすい。それゆえ、三相界面が形成されやすい形態の触媒層を形成可能とする観点からは、150<Aとすることが好ましい。一方、絡まって分散しにくくなるという観点からは、A<500とすることが好ましい。より好ましくは、200<A<400である。
(4)ラマン分光法で測定したカーボンブラックのGバンドの半値幅B[cm−1]を、14≦B<50とする。
PEFCの運転時には、MEAが酸性環境に曝されることがあり、酸性環境に曝されると、触媒を担持しているカーボンブラックが腐食して触媒が脱落し、性能が低下する恐れがある。触媒の脱落に起因する性能低下を抑制するには、優れた耐食性を有するカーボンブラックを使用することが好ましい。かかる観点から、ラマン分光法で測定したカーボンブラックのGバンドの半値幅B[cm−1]は、B<50とすることが好ましい。一方、理論的に導出される半値幅Bの最小値は、14[cm−1]である。したがって、14≦B<50とすることが好ましい。より好ましくは、14≦B<40である。
本発明において、担体としてカーボンブラックが用いられる場合、上記(1)乃至(4)の少なくとも一以上を充足することが好ましく、更なる要件として又は単独の要件として、下記(5)を充足することが好ましい。
(5)カーボンブラックの一次凝集体の分布幅ΔDst/Dst>1.0
触媒層に含有されるカーボンブラックは、上記一次凝集体の形態で存在するほか、当該一次凝集体が集まって形成される二次凝集体の形態でも存在すると考えられる。ここで、触媒層に含有されるカーボンブラックの一次凝集体の大きさのバラツキ(一次凝集体の分布幅ΔDst/Dst)が小さいと、絡まって凝集体となりやすい。これに対し、触媒層に含有されるカーボンブラックの一次凝集体の大きさのバラツキ(一次凝集体の分布幅ΔDst/Dst)が大きいと、分散しやすい。そこで、本発明では、分散性を高め、三相界面の面積を大きくするという観点から、1.0<ΔDst/Dstとすることが好ましい。一方、単分散しにくいという観点から、ΔDst/Dst<2.0とすることが好ましい。
また、本発明は上記工程S1〜工程S3を備えていれば、その形態は特に限定されるものではないが、触媒とイオン交換樹脂との馴染みを良くして、Ptの電気化学的表面積を増大させやすい形態の触媒インク及び触媒層を作製可能とする観点からは、上記工程S1と上記工程S2との間に、工程S1で作製した分散液を放置する工程(熟成工程)が備えられることが好ましい。本発明に熟成工程が備えられる場合、当該熟成工程の形態は特に限定されるものではないが、Ptの電気化学的表面積をより増大させやすい形態とする観点からは、室温(例えば20[℃]程度)の分散液を所定時間(例えば20時間程度)に亘って攪拌する工程とすることが好ましい。
以下、実施例の結果を参照しつつ、本発明の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、「N%Pt/C」(Nは自然数)とは、Pt/Cを100質量部とするとき、PtがN質量部であり、かつ、Cが(100−N)質量部の、白金担持カーボンを意味する。
1.燃料電池の作製
1.1.実施例1
0.4gの20%Pt/Cと、10gの純水と、2.6gのナフィオン分散溶液(DE1020、米国デュポン社製)とを混合し、液温が15℃以下となるように冷却しながら超音波ホモジナイザーで分散することにより、分散液を作製した。続いて、当該分散液に、エタノールを2g添加し、液温が30℃以下となるように冷却しながら遠心攪拌を行うことで、実施例1にかかる触媒インクを作製した。その後、電解質膜(Nafion117、米国デュポン社製)の一方の面及び他方の面のそれぞれに、実施例1にかかる触媒インクをスプレー塗布することにより、実施例1にかかるMEAを作製した。その後、実施例1にかかるMEAを、カーボンペーパーからなる一対の拡散層で挟み、120℃の温度条件下で熱圧着することにより、実施例1にかかる積層体を作製し、実施例1にかかる積層体の両側に、セパレータを配設することにより、実施例1にかかる燃料電池を作製した。なお、実施例1にかかるMEAの作製時に、電解質膜へスプレー塗布した実施例1にかかる触媒インクは、電解質膜から脱離しなかった。
1.2.実施例2
1gの30%Pt/Cと、3mlの純水と、10mlのエタノールと、5mlのプロピレングリコールと、5.3mlのナフィオン分散溶液(DE2020、米国デュポン社製)とを混合し、超音波ホモジナイザーで分散することにより触媒インクを作製した。この触媒インクを基材(ニトフロンフィルムNo.900UL、日東電工株式会社製)の上に塗布し乾燥して触媒層を形成した後、120℃の温度条件下で、当該触媒層を電解質膜(Nafion117、米国デュポン社製)の一方の面へ熱圧着して転写することにより、電解質膜の一方の面へ触媒層を形成した。
一方、0.6gの40%Pt/C(以下において「第1のPt/C」ということがある。)と、12mlの純水と、2.4mlのナフィオン分散溶液(DE1020、米国デュポン社製)とを混合し、超音波ホモジナイザーで1時間に亘って分散することにより、分散液を作製した。その後、当該分散液を、室温(約20℃)で、20時間に亘ってスターラーで攪拌した(熟成工程)後、6mlのエタノールを添加し、遠心攪拌で5分間に亘って攪拌することにより、実施例2にかかる触媒インクを作製した。そして、触媒層が形成されていない側の上記電解質膜の表面に、実施例2にかかる触媒インクをスプレー塗布することにより、実施例2にかかるMEAを作製した。その後、実施例2にかかるMEAを、カーボンペーパーからなる一対の拡散層で挟み、120℃の温度条件下で熱圧着することにより、実施例2にかかる積層体を作製し、実施例2にかかる積層体の両側に、セパレータを配設することにより、実施例2にかかる燃料電池を作製した。
1.3.比較例1
0.4gの20%Pt/Cと、10gの純水と、2.6gのナフィオン分散溶液(DE1020、米国デュポン社製)とを混合し、液温が15℃以下となるように冷却しながら超音波ホモジナイザーで分散することにより、分散液を作製した。続いて、当該分散液を、電解質膜(Nafion117、米国デュポン社製)の一方の面及び他方の面のそれぞれに、スプレー塗布することにより、比較例1にかかるMEAを作製した。その後、比較例1にかかるMEAを、カーボンペーパーからなる一対の拡散層で挟み、120℃の温度条件下で熱圧着することにより比較例1にかかる積層体を作製し、比較例1にかかる積層体の両側に、セパレータを配設することにより、比較例1にかかる燃料電池を作製した。なお、比較例1にかかるMEAの作製時に、電解質膜へスプレー塗布した分散液は、電解質膜から脱離した。
1.4.比較例2
0.4gの20%Pt/Cと、8gの純水と、3.7gのエタノールと、1.7gのナフィオン分散溶液(DE2020、米国デュポン社製)とを混合し、液温が15℃以下となるように冷却しながら超音波ホモジナイザーで分散することにより、比較例2にかかる触媒インクを作製した。続いて、電解質膜(Nafion117、米国デュポン社製)の一方の面及び他方の面のそれぞれに、比較例2にかかる触媒インクをスプレー塗布することにより、比較例2にかかるMEAを作製した。その後、比較例2にかかるMEAを、カーボンペーパーからなる一対の拡散層で挟み、120℃の温度で熱圧着することにより、比較例2にかかる積層体を作製し、比較例2にかかる積層体の両側に、セパレータを配設することにより、比較例2にかかる燃料電池を作製した。なお、比較例2にかかるMEAの作製時に、電解質膜へスプレー塗布した比較例2にかかる触媒インクは、電解質膜から脱離しなかった。
1.5.比較例3
1gの30%Pt/Cと、3mlの純水と、10mlのエタノールと、5mlのプロピレングリコールと、5.3mlのナフィオン分散溶液(DE2020、米国デュポン社製)とを混合し、超音波ホモジナイザーで分散することにより触媒インクを作製した。この触媒インクを基材(ニトフロンフィルムNo.900UL、日東電工株式会社製)の上に塗布し乾燥して触媒層を形成した後、120℃の温度条件下で、当該触媒層を電解質膜(Nafion117、米国デュポン社製)の一方の面へ熱圧着して転写することにより、電解質膜の一方の面へ触媒層を形成した。
一方、0.6gの第1のPt/Cと、3mlの純水と、12mlのエタノールと、2.4mlのナフィオン分散溶液(DE1020、米国デュポン社製)とを混合し、超音波ホモジナイザーで1時間に亘って分散することにより、触媒インクを作製した。その後、当該触媒インクを、室温(約20℃)で、20時間に亘ってスターラーで攪拌した(熟成工程)後、触媒層が形成されていない側の上記電解質膜の表面へ、熟成工程を経た触媒インクをスプレー塗布することにより、比較例3にかかるMEAを作製した。その後、比較例3にかかるMEAを、カーボンペーパーからなる一対の拡散層で挟み、120℃の温度条件下で熱圧着することにより、比較例3にかかる積層体を作製し、比較例3にかかる積層体の両側に、セパレータを配設することにより、比較例3にかかる燃料電池を作製した。
1.6.比較例4
1gの30%Pt/Cと、3mlの純水と、10mlのエタノールと、5mlのプロピレングリコールと、5.3mlのナフィオン分散溶液(DE2020、米国デュポン社製)とを混合し、超音波ホモジナイザーで分散することにより触媒インクを作製した。この触媒インクを基材(ニトフロンフィルムNo.900UL、日東電工株式会社製)の上に塗布し乾燥して触媒層を形成した後、120℃の温度条件下で、当該触媒層を電解質膜(Nafion117、米国デュポン社製)の一方の面へ熱圧着して転写することにより、電解質膜の一方の面へ触媒層を形成した。
一方、DBP吸収量の異なる種々のカーボンブラックにPtを担持して調整した40%Pt/Cを0.6gと、6mlの純水と、6mlのエタノールと、3mlのナフィオン分散溶液(DE2020、米国デュポン社製)とを混合し、超音波ホモジナイザーで1時間に亘って分散することにより触媒インクを作製した。次いで、この触媒インクを、カーボンクロスからなる拡散層にスプレー塗布することにより、拡散層の表面に触媒層を形成し、当該触媒層と、上記電解質膜の触媒層が形成されていない側の表面とを、120℃の温度条件下で熱圧着することにより、一方の面に拡散層が接合された比較例4にかかるMEAを作製した。そして、拡散層が接合されていない側の触媒層と、カーボンクロスからなる拡散層とを、120℃の温度条件下で熱圧着することにより、比較例4にかかる積層体を作製し、比較例4にかかる積層体の両側に、セパレータを配設することにより、比較例4にかかる燃料電池を作製した。
2.燃料電池発電試験
実施例1にかかる燃料電池、比較例1にかかる燃料電池、及び、比較例2にかかる燃料電池を、それぞれ80℃に維持し、各燃料電池のアノード側に80℃フル加湿の水素を、カソード側に80℃フル加湿の空気を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、実施例1にかかる燃料電池、比較例1にかかる燃料電池、及び、比較例2にかかる燃料電池を作動させ、発電性能(IV特性)を評価した。結果を図3に併せて示す。図3の縦軸は電圧[V]、横軸は電流密度[A/cm]である。
一方、実施例2にかかる燃料電池、及び、比較例3にかかる燃料電池を、上記実施例1にかかる燃料電池等と同様の条件で作動させ、発電性能(IV特性)を評価した。結果を図4に併せて示す。図4の縦軸は電圧[V]、横軸は電流密度[A/cm]である。
図3より、実施例1にかかる燃料電池は、比較例1にかかる燃料電池及び比較例2にかかる燃料電池と比較して、良好な発電性能を示した。また、図4より、実施例2にかかる燃料電池は、比較例3にかかる燃料電池と比較して、良好な発電性能を示した。したがって、本発明によれば、発電性能を向上させることが可能な燃料電池を製造できる。
3.Ptの電気化学的表面積測定
実施例1にかかる燃料電池、比較例1にかかる燃料電池、及び、比較例2にかかる燃料電池を、それぞれ40℃に維持し、各燃料電池のアノード側に60℃フル加湿の水素を、カソード側に60℃フル加湿の窒素を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、実施例1にかかる燃料電池、比較例1にかかる燃料電池、及び、比較例2にかかる燃料電池について、Ptの電気化学的表面積を測定した。結果を図5に併せて示す。図5の縦軸はPtの電気化学的表面積[m/g−Pt]である。
一方、実施例2にかかる燃料電池、及び、比較例3にかかる燃料電池を、それぞれ40℃に維持し、各燃料電池のアノード側に60℃フル加湿の水素を、カソード側に60℃フル加湿の窒素を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、実施例2にかかる燃料電池、及び、比較例3にかかる燃料電池について、Ptの電気化学的表面積を測定した。結果を図6にあわせて示す。図6の縦軸はPtの電気化学的表面積[m/g−Pt]である。
図5より、実施例1にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積、及び、比較例1にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積は、比較例2にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積よりも大きかった。さらに、図6より、実施例2にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積は、比較例3にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積よりも大きかった。したがって、純水中でPt/Cとイオン交換樹脂とを混合することで、Ptの電気化学的表面積の大きい燃料電池が作製されることが確認された。なお、比較例1にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積は、実施例1にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積と同程度の大きさとなった。ところが、上述のように、比較例1にかかるMEAの作製時に、分散液が電解質膜から剥離したため、比較例1にかかる燃料電池では、電解質膜と触媒層との接触抵抗が大きく、その結果、図3に示すように、比較例1にかかる燃料電池は、実施例1にかかる燃料電池よりも発電性能が低かった。したがって、上記燃料電池発電試験及びPtの電気化学的表面積測定の結果から、良好な発電性能を有する燃料電池を製造するには、本発明の製造方法のように、分散液に有機溶媒を添加して触媒インクを作製する必要があることが確認された。
4.DBP吸収量と発電性能との関係
比較例4にかかる各燃料電池(DBP吸収量の異なるカーボンブラックを用いた各燃料電池)を、それぞれ80℃に維持し、各燃料電池のアノード側に80℃フル加湿の水素を、カソード側に80℃フル加湿の空気を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、比較例4にかかる各燃料電池を作動させ、発電性能(IV特性)を評価した。各燃料電池の電圧が0.6Vの時の電流密度と、DBP吸収量との関係を、図7に示す。図7の縦軸は電流密度[A/cm]、横軸はDBP吸収量[ml/100g]である。
図7より、DBP吸収量が150[ml/100g]を超えるカーボンブラックを担体として用いた燃料電池は、その大部分において、0.6V時の電流密度が大きく、高性能であった。かかる結果は、本発明によって製造した燃料電池においても該当すると考えられる。したがって、図7より、カーボンブラックのDBP吸収量は、150[ml/100g]よりも大きくすることが好ましい。
5.Pt/Cの分散性に及ぼすカーボン担体の結晶性の影響
2200℃で熱処理した5種類のカーボンブラックにPtを担持した、5種類のPt/Cを純水中へ添加し、スターラーを用いて1時間に亘って攪拌し、さらに、超音波ホモジナイザーを用いて1分間に亘って分散した後の、Pt/Cの粒度分布を光散乱法により測定した。使用した5種類のカーボンブラックの性質を表1に、Pt/Cの粒度分布測定結果を表2に、併せて示す。なお、上記「第1のPt/C」は、表1に記載のNo.1のカーボンブラックに、Ptを担持させたPt/Cを意味する。
Figure 2008140763
表1において、「Pt担持密度」は、100質量部のPt/Cに占めるPtの質量比を意味する。さらに、「カーボン表面積」は、比表面積/細孔分布測定装置(Tristar、Micrometritics社製)を用いた窒素吸着測定により求めた、カーボンブラックのBET表面積を意味する。
また、「Gバンドの半値幅」は、ラマン分光法測定により求めた、カーボンブラックのGバンド(1580[cm−1])の半値幅を意味する。
また、「DBP吸収量」は、JIS K6217−4:2001「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:DBP吸収量の求め方」に規定される方法で求めたDBP吸収量を意味する。
また、「Dst」は、界面活性剤を用いてカーボンブラックを純水中に分散させた後、遠心沈降測定機を使用し、ストークスの式により算出した、カーボンブラックの一次凝集体の最頻度径を意味する。
また、「ΔDst」は、界面活性剤を用いてカーボンブラックを純水中に分散させた後、遠心沈降測定機を使用して測定した、カーボンブラックの一次凝集体の粒径分布の半値幅を意味する。さらに、「一次粒子径」は、透過型電子顕微鏡による観察で測定した、カーボンブラック粒子の直径の平均値を意味する。
Figure 2008140763
表2において、「二次凝集体サイズ(D50)」とは、Pt/C二次凝集体の累積質量が50%となる、Pt/C二次凝集体の長さを意味し、「二次凝集体サイズ(D90)」とは、Pt/C二次凝集体の累積質量が90%となる、Pt/C二次凝集体の長さを意味する。
表2に示す二次凝集体サイズ(D90)の値を小さい順に並べると、No.1、No.2、No.5、No.4、及び、No.3となった。したがって、Pt/Cの分散性は、No.1が最も高く、No.3が最も低かった。一般に粒子は、微粒子化するほど表面積が大きくなるため、付着面積増加等により付着性が向上し、分散性が低下する。そのため、今回の結果では、一次粒子径が12[nm]と小さすぎるNo.3や、Dstが50[nm]と小さいNo.4では、Pt/Cの分散性が低下したと考えられる。本発明では、一次粒子径R1[nm]は、15≦R1≦30とすることが好ましく、Dst[nm]は、80<Dstとすることが好ましい。より好ましくは、80<Dst<200である。一方で、カーボン担体は、Ptを高分散に保持担持する必要があり、カーボンの表面積が大きくなるほどPtの分散性が向上する。それゆえ、カーボン表面積が15[m/g]と小さすぎるNo.5は、カーボン担体として適さないと考えられる。他方、No.1及びNo.2の物性値を比較すると(表1参照)、No.1はNo.2よりもDstが大きく(No.1;Dst=99[nm]、No.2;Dst=79[nm])、粒度分布の分布幅ΔDst/Dstが大きいために(No.1;ΔDst/Dst=1.38、No.2;ΔDst/Dst=0.91)、Pt/Cの分散性が良好であったと推定できる。
以上より、本発明では、ΔDst/Dstの大きいカーボンブラックを用いることが好ましく、具体的には、1.0<ΔDst/Dstとすることが好ましい。より好ましくは、1.0<ΔDst/Dst<2.0である。
6.発電特性に及ぼすカーボンブラックの影響
実施例2にかかる燃料電池を作製する際に用いた第1のPt/Cに代えて、表1に記載のNo.2のカーボンブラックにPtを担持して作製した40%Pt/Cを用いたほかは、実施例2にかかる燃料電池の作製手順と同様の手順により燃料電池を作製した(以下において当該燃料電池を「実施例3にかかる燃料電池」という。)。そして、実施例2にかかる燃料電池、及び、実施例3にかかる燃料電池を、それぞれ80℃に維持し、各燃料電池のアノード側に80℃フル加湿の水素を、カソード側に80℃フル加湿の空気を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、実施例2にかかる燃料電池、及び、実施例3にかかる燃料電池を作動させ、発電性能(IV特性)を評価した。結果を図8に併せて示す。図8の縦軸は電圧[V]、横軸は電流密度[A/cm]である。
一方、実施例2にかかる燃料電池、及び、実施例3にかかる燃料電池を、それぞれ40℃に維持し、各燃料電池のアノード側に60℃フル加湿の水素を、カソード側に60℃フル加湿の窒素を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、実施例2にかかる燃料電池、及び、実施例3にかかる燃料電池について、Ptの電気化学的表面積を測定した。結果を図9に併せて示す。図9の縦軸はPtの電気化学的表面積[m/g−Pt]である。
図8に示すように、No.1のカーボンブラックを用いて作製した実施例2にかかる燃料電池の方が、No.2のカーボンブラックを用いて作製した実施例3にかかる燃料電池よりも、良好な発電性能を示した。また、図9に示すように、実施例2にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積は、実施例3にかかる燃料電池におけるPtの電気化学的表面積よりも大きかった。したがって、Pt/Cの分散性を向上させてPt/Cの二次凝集体のサイズを小さくすることで、燃料電池の発電特性を向上させることが可能であり、かつ、Ptとナフィオンとの接触面積(電気化学的表面積)を増大させ得ることが確認された。ここで、燃料電池の発電性能を向上させるためには、アノード触媒層やカソード触媒層における三相界面や電気化学的表面積を増大させることが重要であり、三相界面や電気化学的表面積を増大させるためには、Pt/Cの二次凝集体の中にアイオノマー(例えば、ナフィオン)を入り込ませることが重要であると考えられる。図10に、Pt/Cの二次凝集体及びイオン交換樹脂の形態例を示す。図10に示すように、Pt/Cの二次凝集体20(以下において単に「二次凝集体20」ということがある。)は、複数のPt/C凝集体10、10、10が凝集することにより構成される。そして、二次凝集体20を構成する各Pt/Cとアイオノマー5、5とが接触している。図10に示す二次凝集体20における三相界面や電気化学的表面積を増大させるためには、二次凝集体20の細孔4、4、…へ、アイオノマー5、5を入り込ませることが重要であると考えられる。
図8及び図9に示すように、本発明により、分散性を向上させて二次凝集体のサイズを小さくしたPt/Cを用いて燃料電池を作製すると、性能が向上し、電気化学的表面積が増大する。それゆえ、本発明によれば、Pt/Cの二次凝集体の中にアイオノマーを入り込ませることができたと考えられる。
7.耐久性に与えるカーボン担体の結晶性の影響
7.1.結晶性の評価
熱処理温度を変えて結晶化度の異なるカーボンブラックを作製し、ラマン分光法測定により、各カーボンブラックのGバンド(1580[cm−1])の半値幅を測定した。なお、Gバンドの半値幅を測定したカーボンブラックは5種類であり、当該5種類の内訳は、購入したまま熱処理を施さないカーボンブラック2種、1500℃の温度で熱処理を施したカーボンブラック2種、及び、2200℃の温度で熱処理を施したカーボンブラック1種であった。
7.2.燃料電池の作製
Gバンドの半値幅を測定した上記5種類のカーボンブラックにPtを担持させることにより、5種類の40%Pt/Cを作製した。そして、第1のPt/Cに代えて、当該5種類の40%Pt/Cをそれぞれ用いたほかは、上記実施例2にかかる燃料電池の作製手順と同様の手順により、5つの燃料電池を作製した(以下、熱処理を施さないカーボンブラックを用いて作製した燃料電池を、「実施例4にかかる燃料電池」及び「実施例5にかかる燃料電池」といい、1500℃の温度で熱処理を施したカーボンブラックを用いて作製した燃料電池を、「実施例6にかかる燃料電池」及び「実施例7にかかる燃料電池」といい、2200℃の温度で熱処理を施したカーボンブラックを用いて作製した燃料電池を、「実施例8にかかる燃料電池」という。)。
7.3.耐久試験
実施例4にかかる燃料電池、実施例5にかかる燃料電池、実施例6にかかる燃料電池、実施例7にかかる燃料電池、及び、実施例8にかかる燃料電池を、それぞれ80℃に維持し、各燃料電池のアノード側に80℃フル加湿の水素を、カソード側に80℃フル加湿の空気を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、各燃料電池を作動させ、耐久試験前の発電性能(IV特性)を評価した。そして、耐久試験前の各燃料電池の電位が0.6Vの時における、電流密度の値(以下「Ia」ということがある。)を測定した。
次いで、各燃料電池を80℃に維持し、各燃料電池のアノード側に80℃フル加湿の水素を、カソード側に80℃フル加湿の窒素を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給しながら、カソード電位が1.3Vの状態で2時間に亘って保持する耐久試験を行った。かかる耐久試験終了後に、再び、各燃料電池を80℃に維持し、各燃料電池のアノード側に80℃フル加湿の水素を、カソード側に80℃フル加湿の空気を、背圧0.1MPaでそれぞれ供給することにより、各燃料電池を作動させ、耐久試験後の発電性能(IV特性)を評価した。そして、耐久試験後の各燃料電池の電位が0.6Vの時における、電流密度の値(以下「Ib」ということがある。)を測定した。耐久試験前のIV特性、及び、耐久試験後のIV特性の概念図を図11に示す。
このようにして測定した各燃料電池のIa及びIbから、性能低下率X(X=100×(Ia−Ib)/Ia)を算出した。性能低下率とGバンドの半値幅との関係を、図12に併せて示す。なお、Gバンドの半値幅はカーボンブラックの結晶化度を評価する指標の一つであり、当該半値幅が14[cm−1]に近づくほど、カーボンブラックの結晶化度が高いことを示している。
図12に示すように、Gバンドの半値幅が小さく、カーボンブラックの結晶化度が高いほど、性能低下率が小さくなった。したがって、結晶化度の高いカーボンブラックを用いることで、燃料電池の性能を向上させることが可能になることが確認できた。本発明においては、性能低下率を低減し得る燃料電池を製造する等の観点から、カーボンブラックのGバンドの半値幅は50[cm−1]未満とすることが好ましい。
8.表面積に及ぼす触媒インクの組成の影響
1gの40%Pt/Cと5mlの超純水とを容器に入れ、遠心攪拌した後、ナフィオンの質量:40%Pt/Cを構成するカーボンブラックの質量=4:5となるように秤量したナフィオン分散溶液(DE1020、米国デュポン社製)を添加し、ビーズミルにて30分間に亘って分散することにより、分散液を作製した。その後、当該分散液を、スターラーを用いて攪拌することにより、Pt/Cとナフィオンとを馴染ませた(熟成工程)。その後、溶媒中のアルコールの質量比率が、純水に対して所定の値(0%、25%、50%、70%、85%)となるように秤量したエタノールを、熟成工程を経た分散液に添加し、5分間に亘って遠心攪拌して、5種類の触媒インクを作製した。このようにして作製した5種類の触媒インクを基材に塗布し、乾燥させて溶媒を揮発させることにより5種類の触媒層を形成した後、窒素吸着法によって当該5種類の触媒層の比表面積(単位質量あたりの表面積。ここにいう「表面積」は、触媒層を構成する物質が気体と接触する表面の面積の総和を意味する。)を測定した。結果を図13に併せて示す。図13において、比較例5はアルコール比率が0%の触媒インクを用いて形成した触媒層の結果を、実施例9はアルコール比率が25%の触媒インクを用いて形成した触媒層の結果を、実施例10はアルコール比率が50%の触媒インクを用いて形成した触媒層の結果を、実施例11はアルコール比率が70%の触媒インクを用いて形成した触媒層の結果を、実施例12はアルコール比率が85%の触媒インクを用いて形成した触媒層の結果を、それぞれ示している。
図13に示すように、溶媒中のアルコール比率が変わると触媒層の表面積が変わり、溶媒中のアルコール比率が25%の場合に、触媒層の表面積が最大になった。これは、触媒インクの溶媒の組成に応じて、当該触媒インクに含有されるアイオノマーの形態が変化すると考えられるところ、溶媒中のアルコール比率が25%の場合に、触媒インクを塗布して形成された触媒層を構成するアイオノマーの表面積が最大になったためであると考えられる。すなわち、図13より、触媒インクに含有されるアルコール(有機溶媒)の比率を制御することにより、反応ガスと接触しやすい形態の触媒層を形成できることが確認できた。反応ガスと接触しやすい触媒層が備えられる形態の燃料電池とすることにより、触媒層に分散された触媒と多量の反応ガスとが接触できるので、高性能の燃料電池を提供することができる。本発明において、触媒インクの質量をM1、当該触媒インクに含有される有機溶媒の質量をM2とするとき、20≦100×M2/M1≦50とすることが好ましい。より好ましくは、25≦100×M2/M1≦35である。
本発明の燃料電池の製造方法の形態例を示すフローチャートである。 白金担持カーボン凝集体の形態例を示す概念図である。 IV特性の結果を示す図である。 IV特性の結果を示す図である。 Ptの電気化学的表面積の測定結果を示す図である。 Ptの電気化学的表面積の測定結果を示す図である。 電流密度とDBP吸収量との関係を示す図である。 IV特性の結果を示す図である。 Ptの電気化学的表面積の測定結果を示す図である。 Pt/Cの二次凝集体及びイオン交換樹脂の形態例を示す概念図である。 耐久試験前後のIV特性を示す概念図である。 性能低下率とGバンドの半値幅との関係を示す図である。 触媒インクの組成と触媒層の表面積との関係を示す図である。
符号の説明
1…触媒金属
2…担体
3…触媒金属を担持した担体
4…細孔
5…アイオノマー(イオン交換樹脂)
10…Pt/C凝集体(触媒金属を担持した担体の凝集体)
20…Pt/Cの二次凝集体

Claims (5)

  1. 触媒金属を担持した担体と、イオン交換樹脂とを水の中で分散させて、分散液を作製する、分散工程と、
    前記分散工程後に、前記分散液に有機溶媒を添加して触媒インクを作製する、触媒インク作製工程と、
    前記触媒インク作製工程で作製された前記触媒インクを、電解質膜又は拡散層に塗布することにより、触媒層を作製する触媒層作製工程と、
    を備えることを特徴とする、燃料電池の製造方法。
  2. 前記触媒インク作製工程が、前記有機溶媒を添加した後に、分散処理を行わないで、前記触媒インクを作製する工程であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池の製造方法。
  3. 前記触媒インクの溶媒の質量をM1、前記触媒インクに含有される前記有機溶媒の質量をM2、とするとき、20≦100×M2/M1≦50であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池の製造方法。
  4. 前記触媒金属が白金又は白金合金であり、前記担体がカーボンブラックであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池の製造方法。
  5. 前記カーボンブラックが、下記(1)乃至(4)の少なくとも一以上を充足することを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池の製造方法。
    (1)前記カーボンブラックの一次粒子径をR1[nm]とするとき、15≦R1≦30とする。
    (2)前記カーボンブラックの一次凝集体の長さをDst[nm]とするとき、80<Dstとする。
    (3)前記カーボンブラック100gへのDBP吸収量をA[ml/100g]とするとき、150<Aとする。
    (4)ラマン分光法で測定した前記カーボンブラックのGバンドの半値幅をB[cm−1]とするとき、14≦B<50とする。
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