JP2008138104A - 芳香族炭化水素系イオン交換膜及びその製造方法 - Google Patents

芳香族炭化水素系イオン交換膜及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
炭化水素系高分子固体電解質膜の課題であった触媒電極との接合性の不足を改善するイオン交換膜を提供する。
【解決手段】 芳香族炭化水素系イオン交換膜の一方の表面の表面面配向度と他方の表面の表面面配向度との差が0.8以下であることを特徴とする芳香族炭化水素系イオン交換膜
であり、また、イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマー溶媒溶液を、支持体上に流延した後、溶媒の沸点より100℃以上低い温度で溶媒の蒸発を開始させ、溶媒の沸点の70℃以下までの温度で溶媒を除去させてイオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーの自己支持性膜とした後、得られた膜を酸性液に接触させてイオン性基を酸型に変換することを特徴とする上記の芳香族炭化水素系イオン交換膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子固体電解質膜に関し、さらに詳しくは芳香族炭化水素系イオン交換膜及びその製造方法に関するものである。
高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を挙げることができる。これらに用いられる高分子膜は、カチオン交換膜として高いイオン伝導率を有すると共に化学的、熱的、電気化学的及び力学的に安定であることが要求されるが、これまで、主にパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。しかしながら、現在、固体高分子形燃料電池分野においては、フッ素を含むため廃棄時の環境汚染や、発電時に発生するフッ酸が燃料電池のシステムを腐食するなど燃料電池の実用化に向けた障害として指摘されている。また、メタノール水溶液を用いる燃料電池においても、メタノール膨潤性が大きく耐久性で問題があり、実用化の障害となっている。
一方、パーフルオロカーボンスルホン酸膜に代わる電解質膜として、ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルスルホン、ポリスルホンなどのポリマーにスルホン酸基などイオン性基を導入した、いわゆる炭化水素系高分子固体電解質が近年盛んに検討されている。しかしながら、炭化水素系高分子固体電解質は一般に、パーフルオロカーボンスルホン酸膜と比べて、弾性率が高いため燃料電池として発電するために必要な触媒電極の接合がしにくいと言う問題点があった。
高分子固体電解質膜のイオン伝導性に関しては、膜中でイオン伝導性成分が形成するチャネル構造が極めて重要であると考えられている。非特許文献1では、プロトン伝導膜中に分散している水素イオンが拡散可能な部位(イオン伝導部位)のパーコレーションによってイオン伝導が説明されているが、チャネルを通してイオンが伝導するという視点からは、膜中におけるイオン伝導部位の空間配置が重要になる。このような観点から、低加湿時の高分子固体電解質膜のイオン伝導性を向上させる方法として、高分子固体電解質膜のスルホン酸基濃度を増加させ、イオン伝導部の空間配置を多くすること及び膜厚を薄くすることによる抵抗の低減が考えられる。しかしながら、スルホン酸基濃度の著しい増加は、電解質膜の機械的強度や引裂強さを低下させたり、取扱いの際に寸法変化を起こしたり、長期運転において電解質膜がクリープしやすくなり耐久性を低下させる等の問題が生じる。一方膜厚の低減は、電解質膜の機械的強度及び引裂強さを低下させたり、さらに膜をガス拡散電極と接合させる場合等の加工性・取扱い性を低下させる等の問題が生じる。
高分子固体電解質膜の耐久性を向上させる方法として、ポリマー自体の耐熱性・化学的安定性の向上・補強膜を用いた寸法安定性の向上・触媒電極との接合性の向上等、様々な検討が多くなされている。この中で、パーフルオロカーボンスルホン酸を含有した高分子電解質膜或いは、提案されている複合高分子固体電解質、例えば、延伸多孔ポリテトラフルオロエチレン膜の空隙部にイオン交換樹脂であるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含浸し、一体化した複合高分子固体電解質膜(例えば、特許文献1参照)が、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーの膜内に補強材としてフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンが分散された複合高分子固体電解質膜(例えば、特許文献2参照)が、それぞれ記載されている。さらには、炭化水素系高分子固体電解質と触媒電極との界面に、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を塗布し、接合性を向上させた高分子固体電解質膜も提案されている。しかしながら、元素としてフッ素を含んでいることには変わりなく、廃棄時の環境汚染や、発電時に発生するフッ酸の問題は、依然として解決されていない。
一方、高分子固体電解質を炭化水素系の補強材で補強したものとして、ポリベンゾオキサゾール多孔膜と高分子固体電解質を複合化した高分子固体電解質膜(例えば、特許文献3参照)が記載されている。しかしながら、これらの方法で作成された複合膜は、実際に燃料電池で発電を繰り返すと、補強材である多孔膜と高分子固体電解質の水やメタノール中での膨潤性が異なるため、界面が剥離したことにより起こったと推定される水素ガスやメタノールの透過量の経時的な増加があるため、耐久性は不十分である。
また、多孔性基材中に浸透させたモノマーからイオン伝導性を有するポリマーを重合した電解質膜もある(例えば特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、空隙内をポリマーで完全に充填することが困難で、充填部位と未充填部位の寸法変化が異なり、欠陥等が形成されるため水素ガスリークやメタノール透過を十分抑止できない、さらに未充填部位で、プロトンの伝導が欠落するなどの問題がある。
Edmondson,C.A:AD Report 2000,18 特開平8−162132号公報 特開2001−35508号公報 国際公開第WO00/22684号パンフレット 特開2002−83612号公報
本発明の目的は、芳香族炭化水素系高分子固体電解質膜の課題であった触媒電極との接合性の不足を改善し、燃料電池用としての耐久性の不足を解決する芳香族炭化水素系イオン交換膜及びその製造方法を提供しようとすることである。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、触媒電極との接合性が悪い膜は、カールが発生し、かつ芳香族炭化水素系イオン交換膜表面の表及び裏の面配向度に違いがあることを見出し、この面配向度差を制御することによって上記目的を達成できることを見出したのである。
すなわち本発明は、以下の通りである。

1.芳香族炭化水素系イオン交換膜の一方の表面の表面面配向度と他方の表面の表面面配向度との差が、0.8以下であることを特徴とする芳香族炭化水素系イオン交換膜。


2.表面面配向度が高い方の表面の表面面配向度が2.0以下である、上記1記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。

3.カール度が5%以下である上記1又は2に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。

4.芳香族炭化水素系イオン交換膜が、イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを有し、イオン交換容量が0.3〜3.5meq/gである上記1〜3のいずれかに記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
5.イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーが、一般式(1)及び一般式(2)で示される構成単位を含むポリアリーレンエーテル系化合物である上記1に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
Figure 2008138104
(ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはH及び/または1価のカチオン種、Zはエーテル結合、チオエーテル結合及びアルキレン基から選ばれる少なくとも1種である。)
Figure 2008138104
(ただし、Ar’は2価の芳香族基、Z’はエーテル結合チオエーテル結合及び2価の脂肪族基から選ばれる少なくとも1種である。)
6.イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを溶媒に溶かした溶液を、支持体上に流延した後、前記溶媒の沸点より100℃以上低い温度で溶媒の蒸発除去を開始し、次いで溶媒の沸点より100〜70℃低い温度で溶媒の蒸発除去を行いイオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーの自己支持性膜とした後、得られた自己支持性膜のイオン性基を酸性液に接触させて酸型に変換することを特徴とする上記1に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜の製造方法。。
イオン交換膜の表裏の表面面配向度差を0.8以下とすることで、膜のカール度を5%以下に制御することができる。その結果、触媒電極との接合性が向上させることができ、耐久性に優れた芳香族炭化水素系イオン交換膜が提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、重量とは、質量を意味する。
まず、本発明における芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーについて述べる。
本発明における芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーは、ポリマー主鎖に芳香族あるいは芳香環とエーテル結合、スルホン結合、イミド結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、カーボネート結合及びケトン結合から選択される少なくとも1種以上の結合基を有する構造を持つ非フッ素系のイオン伝導性ポリマーであり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、及びそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。
なお、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボシキル基などの官能基をポリマーに含むことで、ポリマーのイオン伝導性が発現される。この中で特に有効に作用する官能基は、スルホン酸基である。また、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。
上記官能基を含有するポリマーのうち、特に芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族系炭化水素系ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。本発明のイオン性基含有ポリマー、特にイオン伝導性がスルホン酸基であるポリマーを得るためには、これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
また、上記芳香族炭化水素系イオン性基含有ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種に酸性基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基やホスホン酸基を含有するジアミンを用いて酸性基含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られた酸性基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましい。
本発明における芳香族炭化水素系イオン性基含有ポリマーは、スルホン酸基含有ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物、ポリアリーレン系化合物であることがより好ましい。
さらに、これらの下記一般式(1)及び一般式(2)で示される構成単位を含むポリマーが好ましい。

Figure 2008138104
一般式(1)中、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはH及び/または1価のカチオン種、Zは2価の脂肪族基、エーテル結合、チオエーテル結合など芳香環をつなぐ各種結合様式より選択されるが、エーテル結合または/及びチオエーテル結合(OまたはS)が好ましく、その中でもエーテル結合がより好ましい。
Figure 2008138104

一般式(2)中、Ar’は2価の芳香族基、Z’は2価の脂肪族基、エーテル結合、チオエーテル結合など芳香環をつなぐ各種結合様式より選択されるが、エーテル結合または/及びチオエーテル結合(OまたはS)が好ましく、その中でもエーテル結合がより好ましい。
さらに、一般式(3)とともに一般式(4)で示される構成単位を含むことがより好ましい。

Figure 2008138104
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 2008138104
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
上記一般式(4)で示される構成単位は、下記一般式(5)で示される構成単位であることが好ましい。

Figure 2008138104
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
なお、一般式(1)〜(5)における芳香族基としては、ベンゼン環、ピリジン環などの芳香環や、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環芳香族基や、芳香族環が直接結合した基や、少なくとも2つの芳香環がエーテル基、チオエーテル基で連結されている基や、芳香族環が脂肪族基、スルフィド基、パーフルオロアルキル基などで複数連結した基や、芳香環がスルホン基、カルボニル基、スルホニル基などの電子吸引性基で連結した基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、一般式(1)及び(2)における脂肪族基としては、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物においては上記一般式で示される以外の構成単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式で示される以外の構成単位は50重量%以下であることが好ましい。50重量%以下とすることにより、スルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物の特性を活かした組成物とすることができる。
本発明における芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーのイオン性基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基のいずれか1種以上の基を含有することが重要である。ポリマーへのイオン性基の導入は公知の方法を用いることができ、例えばスルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基を有するモノマーからポリマーを重合しても良いし、ポリマーを重合した後、イオン性基を公知の方法で導入しても良い。
本発明における芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、濃度が0.5g/dlのNMP溶液での対数粘度が0.1〜3.0であることが好ましい。0.1よりも小さいと、イオン交換膜としたときに、膜が脆くなりやすくなる。対数粘度は0.3以上であることがより好ましい。さらに好ましくは0.5以上である。一方、対数粘度が3.0を超えると、ポリマー溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくる。対数粘度は2.0以下であることがより好ましい。
本発明の芳香族炭化水素系イオン交換膜は、膜表面の一方の面と他方の面、すなわち、膜の表と裏との表面面配向度の差が、0.8以下であり、好ましくは、0.6以下、より好ましくは0.4以下である。イオン交換膜の表面において、膜の表裏の表面面配向度差が0.8を超えると、膜内に内在する応力の表裏差(歪)が大きいため、膜がカールしやすくなり、膜のカール度が5%を超えてしまうことになる。その結果、膜と触媒電極との接合性が悪くなり、発電時の界面抵抗が大きくなると考えられる。
本発明においては、当該表裏面配向度差を0.8以下に制御することにより、芳香族炭化水素系イオン交換膜のカール度を5%以下にすることができるのみならず、膜と触媒電極とを接合した接合体は、燃料電池に用いて発電時の熱変形安定性及び膨潤変形安定性を大幅に向上させることができる。
本発明において、表面面配向度とは、膜表面から3μm程度の深さまでの芳香環面の膜面に対する配向度合を意味する。具体的には、FT−IR(測定装置:VARIAN社製、FTS−60A/896等)によりダイアモンド結晶を内部反射エレメントに用いた偏光ATR測定を、一回反射ATRアタッチメントをgolden gate Mkll(SPECAC社製)、入射角を45°、分解能を4cm−1、積算回数128回の条件で膜表面について測定を行った場合の1490cm−1及び1456cm−1における各方向の吸収係数(Kx,Ky及びKz)によって定義される配向ファクター(Kx+Ky)/(2×Kz)に基づくものである(但し、KxはMD方向、KyはTD方向、Kzは厚み方向の吸収係数をそれぞれ示す。)
膜の一方の面の表面面配向度と他方の面の表面面配向度の差とは、本発明の芳香族炭化水素系イオン交換膜の表裏のそれぞれについて表面面配向度を測定し、その差の絶対値で表されるものである。
表面面配向度が高い方の面の表面面配向度は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.5以下である。更に好ましくは、1.0以下である。表面面配向度が高い方の面の表面面配向度が2.0より大きくなると、膜表面の表面面配向度の差を所定の範囲に制御しにくくなるとともに、熱や湿度による変形を受け易くなる。
表面面配向度が高い方の面の表面面配向度の下限値は特に限定されないが、膜の平面性の観点からは、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.4以上である。
本発明において、膜のカール度とは、所定の処理を行った後の膜の面方向に対する厚み方向への変形度合を意味し、具体的には、図1に示すように50mm×50mmの試験片を100℃で10分間熱風処理した後に、平面上に試験片を静置し、4隅の平面からの距離(h1、h2、h3、h4:単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、試験片の各頂点から中心までの距離(35.36mm)に対するカール量の百分率(%)であらわされる値である。具体的には、次式によって算出される。
カール量(mm)=(h1+h2+h3+h4)/4
カール度(%)=100×(カール量)/35.36
本発明の芳香族炭化水素系イオン交換膜の製造方法は、イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを溶媒に溶かした溶液を、支持体上に流延した後、溶媒の沸点より100℃以上低い温度で溶媒の蒸発除去する工程、次いで溶媒の沸点より100〜70℃低い温度で溶媒の蒸発除去しイオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーの自己支持性膜を得る工程、次いで得られた自己支持性膜を酸性液に接触させてイオン性基を酸型に変換する工程を含むことを特徴とする。
溶媒を除去する工程において溶媒の除去は、例えば加熱、減圧乾燥、ポリマーを溶解する溶媒と混和できるポリマー非溶媒への浸漬などによって可能であるが、加熱または減圧乾燥で除去することが膜の均一性が得られやすい点で好ましい。より好ましくは、ポリマー溶媒の分解や変質及び塗膜の品位低下を避けるため、減圧下又は常圧下でできるだけ低い温度で初期乾燥を施し、徐々に高温側へシフトするような温度パターンで乾燥することが重要である。このために、溶媒の沸点より100℃以上低い温度で溶媒の蒸発を開始させつつ、最終的には、溶媒の沸点より100〜70℃低い温度で溶媒を除去する。
初期乾燥を溶媒の沸点より100℃以上低い温度で行うことにより、支持体に接触した表面の分子の面方向への配向が抑制されるとともに、膜の支持体側から膜の表面側への(厚み方向への)溶媒の移動がゆっくりであるため、分子の厚み方向への配向も抑制され、かつ膜の表面の塗工時の配向やひずみも緩和されるものと考えられる。
一方、高温で急激に乾燥すると、支持体に接触した表面の分子の面方向への配向が促進されるとともに、膜の支持体側から膜の表面側への(厚み方向への)溶媒の移動が速く、分子の厚み方向への配向も発生し、かつ膜の表面の塗工時の配向やひずみも緩和されず、膜中にひずみが保存されてしまうと考えられる。
イオン性基を酸型に変換する工程においては、膜中のイオン性基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸性溶液、例えば、硫酸、塩酸等を用いて、加熱下或いは非加熱下で酸処理することで、フリーの酸性基に変換することができる。また酸性基に変換する場合、過剰量の酸で処理することが一般的であるので、ポリマーが過剰な酸を含む可能性がある。そのため、酸性基に変換した後、水洗を繰り返すなどして、過剰な酸成分は除去することが望ましい。この際、洗浄に用いる水に塩が含まれていると酸性基が金属塩に再度変換される可能性があるので、少なくとも、イオン交換水のようなイオン除去処理を行った水を使用することが望ましい。また、イオン交換膜のイオン伝導性は、1.0×10−2S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導性が1.0×10−2S/cm以上である場合には、そのイオン交換膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0×10−2S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。
本発明におけるイオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを溶解させる溶媒としては、溶解性や取扱い性、コストの面などからN−メチル−2−ピロリドン(沸点:202℃)、N、N−ジメチルアセトアミド(沸点:165℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの有機極性溶媒が望ましい。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中のポリマー濃度は0.1〜50重量%の範囲であることが好ましい。溶液中のポリマー濃度が0.1重量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50重量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。
イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマー溶媒溶液からキャストする方法としては、例えば、コンマコーター、リップコーター、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、ナイフコーター等の公知の手法を用いることができる。支持体としては、ステンレスなどの金属からなるエンドレスベルトやドラム、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂からなるフィルム、ガラスなどを用いることができるがこれらに限定されるものではない。これらの支持体は、例えば、金属からなる支持体の表面の鏡面処理、樹脂フィルムの表面のコロナ処理等、支持体表面が改質されていてもよい。ポリマー溶媒溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストするとポリマー溶媒溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。
キャストする際のポリマー溶媒溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1500μmであることが好ましい。薄すぎると膜としての形態を保てなくなり、厚すぎると不均一な膜ができやすい傾向にある。より好ましくは50〜500μmである。ポリマー溶媒溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン交換膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、1500μmよりも厚いと不均一なイオン交換膜ができやすくなる傾向にある。ポリマー溶媒溶液のキャスト厚を制御する方法は、公知の方法を用いることができるが、例えば、アプリケーター、ドクターブレード等を用いて、一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。
また、キャストしたポリマー溶媒溶液から膜を得る方法も公知の方法を用いることができる。キャストしたポリマー溶媒溶液は、前記したように、乾燥温度、乾燥条件などを調整して、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には、最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどしてポリマーの凝固速度を調整することができる。
本発明の膜は、目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には、5〜200μmであることが好ましく、5〜50μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが最も好ましい。イオン交換膜の厚みが5μmより薄いとイオン交換膜の取扱いが困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、200μmよりも厚いとイオン伝導度の電気抵抗値が高くなり燃料電池の発電性能が低下する傾向にある。
また、イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマー溶媒溶液のキャスト、乾燥、酸処理は、連続的に行うことも、それぞれ断続的に行うことも可能である。
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<イオン交換膜の評価方法>
以下にイオン交換膜の評価方法を示す。なお評価するに際しては、特別な記載がない限り、厚みや重量を正確に測ることを目的とし、室温が20℃で湿度が30±5RH%にコントロールされた測定室内で評価を行った。なお測定に際してサンプルは、24時間以上、測定室内で静置したものを使用した。
<表面面配向度>
表面面配向度は偏光ATRを用い、入射角45°、分解能4cm−1、積算回数128回で測定を行った。1490cm−1付近に現れるピーク(芳香環環振動)におけるMD方向の吸収係数(Kx)、TD方向の吸収係数(Ky)及び厚み方向の吸収係数(Kz)を芳香族炭化水素系イオン交換膜の表裏それぞれについて求め、次式により表面面配向度を算出した。
表面面配向度=(Kx+Ky)/(2×Kz)
<表面面配向度の差>
また、本発明の芳香族炭化水素系イオン交換膜表裏の表面面配向度の差は次式に示すように、空気面側(A面)と支持体側(B面)との表面面配向度の差の絶対値により算出される。
表面面配向度の差=|A面の表面面配向度―B面の表面面配向度|
装置名;FT−IR(VARIAN社製、FTS−60A/896)
一回反射ATRアタッチメント;golden gate MKII(SPECAC社製)
IRE;ダイアモンド
入射角;45°
<カール度>
50mm×50mmの試験片をアルミナ・セラミック製の平板に設置し、100℃で10分間熱風処理した後の四隅のセラミック板からの距離(h、h、h、h:単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、次式からカール度を算出した。なお、用いたセラミック板自体のカール量は、0.1mm以下である。
カール量(mm)=(h+h+h+h)/4
カール度(%)=100×(カール量mm)/35.36mm
<イオン交換膜の厚み>
イオン交換膜の厚みは、マイクロメーター(Mitutoyo DIGIMATIC MICROMETER 最小読取値:0.001mm)を用いて測定することにより求めた。測定は10箇所行い、その平均値を厚みとした。
<ポリマー対数粘度>
ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/c)で評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
<イオン交換容量(酸型)>
イオン交換容量(IEC)としては、イオン交換膜に存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5cm×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケーター中で30分間放置冷却した後、乾燥重量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/l塩化ナトリウム−超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉したまま、室温で24時間攪拌した。次いで、溶液30mlを取り出し、10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IECを求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml Wsの単位:g)
<イオン伝導性>
イオン伝導性σは次のようにして測定した。
自作測定用プローブ(ポリテトラフルロエチレン製)上で幅10mmの短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を10mmから40mmまで10mm間隔で変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした直線の勾配Dr[Ω/cm]から下記の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルして算出した。
σ[S/cm]=1/(膜幅[cm]×膜厚[cm]×Dr)
<メタノール透過速度及びメタノール透過係数>
プロトン交換膜のメタノール透過速度及びメタノール透過係数は、以下の方法で測定した。
25℃に調整した5モルの濃度(5モル/リットル)のメタノール水溶液(メタノール水溶液の調整には、市販の試薬特級グレードのメタノールと超純水(18MΩ・cm)を使用)に24時間浸漬したプロトン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5モルの濃度のメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、プロトン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフにより測定することで算出した(プロトン交換膜の面積は、2.0cm)。すなわち、超純水を入れたセルのメタノール濃度変化速度[Ct](mmol/L/s)より以下の式を用いて算出した。
メタノール透過速度[mmol/m/s]
=(Ct[mmol/L/s]× 0.1[L])/2×10−4[m
メタノール透過係数[mmol/m/s]
=メタノール透過速度[mmol/m/s]×膜厚[m]
<発電特性>
Pt/Ru触媒担持カーボン(田中貴金属工業社 TEC61E54)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt/Ru触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1になるように加えた。次いで撹拌してアノード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、ガス拡散層となるカーボンペーパー(東レ社製 TGPH−060)に白金の付着量が1.8mg/cmになるようにアプリケーターを用いて均一に塗布・乾燥して、アノード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。また、Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業社 TEC10V40E)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1となるように加え、撹拌してカソード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施したカーボンペーパー(東レ社製 TGPH−060)に白金の付着量が1mg/cmとなるように塗布・乾燥して、カソード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。上記2種類の電極触媒層付きカーボンペーパーの間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。
この接合体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込み、燃料電池発電試験機(株式会社東陽テクニカ製)を用いて発電試験を行った。発電は、セル温度40℃で、アノード及びカソードにそれぞれ40℃に調整した高純度空気ガス(80ml/min)と、5モルの濃度のメタノール水溶液(1.5ml/min)とを供給しながら5時間発電することでエージングを行った。ついで開回路電圧(V)と、100mA/cmで定電流放電試験を行った時の電圧(V)と、電流遮断法により求まる抵抗(mΩ・cm)を調べることで初期性能を評価した。
また100mA/cmで300時間定電流連続放電試験を実施し、電流遮断法により抵抗値(mΩ・cm)の経時変化を調査した。触媒電極と電解質膜接合体における抵抗値が増加する場合、触媒電極と電解質膜の間の接合性が低下したことを示す。発電後の外観からも接合状態を確認し、電解質膜と触媒電極との剥離が見られなかった場合は「○」、剥離が起こった場合を「×」とした。
<実施例1>
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩720.6g、2,6−ジクロロベンゾニトリル585.9g、4,4’−ビフェノール885.0g、炭酸カリウム754.8g、N−メチル−2−ピロリドン5475.5gを入れて、窒素雰囲気下にて150℃で1時間撹拌した後、反応温度を200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約8時間)。放冷の後、水中にストランド状に沈殿させた。
得られたポリマーは、水中で40時間洗浄した後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は1.40を示した。得られたポリマーを、N−メチル−2−ピロリドン(沸点:202℃)を溶媒として用い、ポリマー濃度が26.0重量%となるように溶液を調整した。
調整した溶液をステンレスベルト上にスキージ/ベルト間のギャップが300μmになるよう温度25℃で流延し、4つの熱風式乾燥ゾーンにて、80℃×10分、80℃×10分、80℃×10分、80℃×10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となった膜を支持体より剥離させゲル状膜を得た。その後、イオン性基の金属塩をプロトンに置換するため、60℃で2モル(モル/リットル)の濃度の硫酸に20分間浸漬し、水洗後80℃で12時間乾燥し、厚み55μmのイオン交換膜を得た。得られたイオン交換膜の物性値を表1に示す。
<実施例2、3、比較例1〜3>
実施例1と同様の溶液をステンレスベルト上に流延した後に、4つの熱風式乾燥ゾーンの温度×時間を表1に示した通りにした以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
<実施例4、比較例4>
実施例1と同様の溶液をステンレスベルト上にスキージ/ベルト間のギャップが600μmになるよう温度25℃で流延した後に、4つの熱風式乾燥ゾーンの温度×時間を表1に示した通りにした以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
実施例及び比較例で得られたイオン交換膜の製造条件と形態評価の結果を表1に、性能評価の結果を表2に示す。
これらの評価結果より、比較例では、初期の乾燥温度が120℃と高い状態からの乾燥となっており、その結果、表裏の面配向度の差が0.8以上となり、カール度も5%以上である。実施例、比較例共に単膜特性に顕著な違いは見られないが、触媒電極との接合後の発電特性では、明らかに比較例の乾燥条件で製造した膜は性能が劣っている。
したがって、本発明によれば、膜のカール度を5%未満とすることで触媒電極との接合性が改善され、膜と触媒電極との剥離による燃料電池の性能低下を回避できる優れたイオン交換膜が提供できることがわかる。
Figure 2008138104


Figure 2008138104
本発明の芳香族炭化水素系イオン交換膜は、触媒電極との接合性に優れ、この膜/触媒電極接合体を用いた燃料電池は、長時間の安定した発電特性を示し、燃料電池の用途に好適である。
芳香族炭化水素系イオン交換膜のカール度の測定方法を示した模式図である。(a)は模式上面図であり、(b)は熱風処理前の(a)におけるa−aで示される模式断面図であり、(c)は熱風処理後の(a)におけるa−aで示される模式断面図である。
符号の説明
イ・・・芳香族炭化水素系イオン交換膜の試験片
ロ・・・アルミナ・セラミック板
1、2、3、4・・・試験片の四隅
・・・膜の1の位置でのアルミナ・セラミック板からの距離
・・・膜の4の位置でのアルミナ・セラミック板からの距離

Claims (6)

  1. 芳香族炭化水素系イオン交換膜の一方の表面の表面面配向度と他方の表面の表面面配向度との差が、0.8以下であることを特徴とする芳香族炭化水素系イオン交換膜。
  2. 表面面配向度が高い方の表面の表面面配向度が2.0以下である請求項1記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
  3. カール度が5%以下である請求項1又は2に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
  4. 芳香族炭化水素系イオン交換膜が、イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを有し、イオン交換容量が0.3〜3.5meq/gである請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
  5. イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーが、一般式(1)及び一般式(2)で示される構成単位を含むポリアリーレンエーテル系化合物である芳香族炭化水素系イオン交換膜。
    Figure 2008138104
    (ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはH及び/または1価のカチオン種、Zは、エーテル結合、チオエーテル結合及び2価の脂肪族基から選ばれる少なくとも1種である。)
    Figure 2008138104
    (ただし、Ar’は2価の芳香族基、Z’は、エーテル結合、チオエーテル結合及び2価の脂肪族基から選ばれる少なくとも1種である。)
  6. イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを溶媒に溶かした溶液を、支持体上に流延した後、前記溶媒の沸点より100℃以上低い温度で溶媒の蒸発除去を開始し、次いで溶媒の沸点より100〜70℃低い温度で溶媒の蒸発除去を行いイオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーの自己支持性膜とした後、得られた自己支持性膜のイオン性基を酸性液に接触させて酸型に変換することを特徴とする請求項1に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜の製造方法。
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