JP2008124059A - 蓄電装置とその使用方法及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セパレータ36a〜36cを介して対向する電極対18a〜18c,24a〜24cが形成されている。セパレータ36a〜36cは多孔質であり、その内部を非水系電解液12が移動することができる。蓄電装置10を構成する部材の表面のうちの非水系電解液に直接接する範囲、すなわち電極活物質層16a〜16cの表面に、各々触媒26b、26c、26fが付着しており、電極活物質層20a〜20cの表面に、各々触媒26a、26d、26eが付着している。触媒26a〜fは、非水系電解液は分解しないで水を分解する。
【選択図】 図1
Description
特許文献1に記載されているように、炭素材料よりも高い電子伝導性を有する金属酸化物を電極の材料に用いると、その金属酸化物が非水系電解液に混入した水を分解する触媒として機能することが期待される。しかしながら、炭素材料と金属酸化物を混合して電極を形成すると、触媒として機能する金属酸化物の表面が炭素材料や、炭素材料と触媒を結着させるバインダー等に覆われてしまい、触媒が非水系電解液に混入した水と接する面積が小さくなってしまう。すなわち、蓄電装置内に混入した水を分解するという機能の面から評価すると、電極に使用した触媒の量に見合うだけの効果が得られない。特許文献1に記載されている技術では、触媒として作用する金属酸化物を電極の中に練りこんでしまうために、触媒によって水を分解する能力が低く、蓄電装置の充放電特性が使用とともに低下することを抑制しきれない。蓄電装置を搭載するスペースの大型化が避けられない。
炭素材料よりも低い電気伝導性を有する金属酸化物もある。電気伝導性を有するものの、炭素材料よりも低い電子伝導性を有する金属酸化物を電極の材料に用いると、電極の電気伝導度の低下を引き起こすことがある。すなわち、炭素材料と金属酸化物を混合して電極を形成すると、電気伝導度と水を分解する能力の両者が低下することがある。
本発明では、電気伝導度を低下させることなく、蓄電装置内に混入した水を効率的に分解し、蓄電装置の充放電特性の劣化を抑制する技術を提供する。
ここでいう「蓄電装置を構成する部材」とは、電極のことのみを示すのではなく、蓄電装置を構成する全ての部材、例えば、正電極と負電極を電気的に分離するセパレータ、電極対とセパレータを収容する容器等も含まれる。また、「部材の表面のうちの非水系電解液に直接接する範囲」と示しているように、例えば多孔質部材(電極等)の内部で非水系電解液に接する範囲は、本発明の技術と相違する。多孔質部材の内側は、部材の表面でないからである。本発明は、電極の内部に触媒を練りこんだものと相違し、部材の表面に触媒が付着していることを特徴とする。
上記の蓄電装置によると、触媒が蓄電装置を構成する部材の表面に付着しているため、触媒が非水系電解液に接する面積を大きくすることができる。そのために蓄電装置内に混入した水を触媒によって効率的に分解することができ、水と非水系電解液が反応することを抑制できる。水と非水系電解液が反応して生成された物質が電極表面を覆うことを抑制できるため、蓄電装置の充放電特性が劣化することを抑制できる。蓄電装置を長期間使用しても、内部抵抗が上昇しないので、蓄電装置の充放電特性が長期間に亘って良好なレベルに維持される。すなわち、蓄電装置の充放電特性の劣化を見越して、電極の面積を必要以上に大きくしておく必要をなくすことができる。ひいては、蓄電装置のコンパクト化ができる。また、蓄電装置の充放電特性が長期間劣化しないので、蓄電装置を使用する機器に蓄電装置の劣化を見越して必要以上に大きな蓄電装置を搭載しておく必要をなくすことができる。
上記の蓄電装置によると、電極の表面付近に存在する水が分解されやすくなる。蓄電装置に電圧が印加されている間は、電極の表面付近で水と非水系電解液の反応が起りやすくなる。電極の表面に触媒が付着していると、電極の表面付近の水と非水系電解液の反応が最も起りやすい領域で、水と非水系電解液が反応することを抑制できる。なお、「電極の表面に触媒が付着している」とは、電極の表面に触媒が付着していることのみならず、蓄電装置内で電極の表面に接する位置関係で配置される部材の表面に触媒が付着しており、結果として電極の表面に触媒が付着していることも含む。
金属酸化物は、非水系電解液を分解しないで水を分解する性質を有している。また、金属酸化物は、溶液またはペースト状にして塗布することができるため、簡単な方法で触媒を付着させることができる。
金属酸化物がIrO2、RuO2及びWO3から選択される少なくとも一種の材料であることがより好ましい。
上記の金属酸化物は、非水系電解液を分解しないで水を分解する能力が高い。
この場合、触媒が多く付着している領域を重力方向の上側に配置し、触媒が少なく付着している領域か又は触媒が付着していない領域を重力方向の下側に配置して使用することが好ましい。
ここで「蓄電装置を構成する部材の一方の領域に触媒が多く付着しており、蓄電装置を構成する部材の他方の領域に触媒が少なく付着している」とは、触媒の量(層状に形成されている場合は厚み又は濃度で表すこともできる。)が、「蓄電装置を構成する部材の表面の一方の領域に一定量の触媒が多く付着しており、蓄電装置を構成する部材の他方の領域に一定量の触媒が少なく付着している」ことのみならず、「蓄電装置を構成する部材の表面の一方から他方に向けて連続的に変化する」ことも含む。
蓄電装置内に侵入した水と非水系電解液が反応する現象は、蓄電装置を動作させるとき(蓄電装置の電極に電圧が印加されているとき)に活発化する。蓄電装置を動作させないとき(蓄電装置の電極に電圧が印加されていないとき)には、水と非水系電解液の反応は活発ではない。すなわち、蓄電装置を動作させるときに、蓄電装置内に侵入した水が存在する領域に触媒が付着していることが重要である。本発明の使用方法では、蓄電装置内に侵入した水と触媒がより効率的に接することができる。
本発明の蓄電装置の製造方法は、電極を形成する工程と、電極の表面の所定領域に、非水系電解液は分解しないで水を分解する触媒を付着させる工程と、少なくとも一対の電極の表面をセパレータを介して対向させる工程と、少なくとも一対の電極とセパレータを容器内に収容する工程と、容器内に非水系電解液を収容する工程を有している。
(第1形態) 活性炭とカーボンブラックとカルボキシメチルセルロースを混合して電極活物質層用ペーストを作製し、そのペーストを集電箔の表面に塗布して電極を作製する。
(第2形態) 電極活物質層を乾燥させた後に、その層の表面に触媒を塗布する。
(第3形態) 内部を非水系電解液が移動することが可能なセパレータを介して電極を対向させる。
図面を参照して本実施例の蓄電装置10の構造を説明する。本実施例では、蓄電装置の例として電気二重層キャパシタについて説明する。図1は、蓄電装置10の断面図を示している。図中の矢印は重力方向を示している。+Z方向が重力方向上側を示し、−Z方向が重力方向下側を示している。蓄電装置10は、第1電極対24A,18Aと、第2電極対18B,24Bと、第3電極対24C,18Cを有している。電極24Aは、集電体22aと電極活物質層20aを有している。電極18Aは、集電体14aと電極活物質層16aを有している。電極18Bは、集電体14aと電極活物質層16bを有している。電極24Bは、集電体22bと電極活物質層20bを有している。電極24Cは、集電体22bと電極活物質層20cを有している。電極18Cは、集電体14bと電極活物質層16cを有している。すなわち、集電体14aは、電極18Aと電極18Bによって共用されている。集電体22bは、電極24Bと電極24Cによって共用されている。
図示36a,36b,36cはセパレータであって、多孔質であり内部を非水系電解液12が移動することができる。第1電極対24A,18Aは、セパレータ36aを介して対向することによって、非水系電解液12を介して対向している。第2電極対18B,24Bは、セパレータ36bを介して対向することによって、非水系電解液12を介して対向している。第3電極対24C,18Cは、セパレータ36cを介して対向することによって、非水系電解液12を介して対向している。
集電体14a,14b間は配線38で接続されており、集電体22a,22b間は配線32で接続されている。集電体14a,14bは外部端子30に接続されており、集電体22a,22bは外部端子34に接続されている。外部端子30,34間に電圧を印加することによって蓄電装置10に充電することができる。外部端子30,34間に負荷を接続することによって、蓄電装置10から放電することができる。
電極活物質層20aの表面の+Z側に触媒26aが付着している。電極活物質層16aの表面の+Z側に触媒26bが付着している。電極活物質層16bの表面の+Z側に触媒26cが付着している。電極活物質層20bの表面の+Z側に触媒26dが付着している。電極活物質層20cの表面の+Z側に触媒26eが付着している。電極活物質層16cの表面の+Z側に触媒26fが付着している。本実施例では、触媒26a〜26fは、電極活物質層16a〜16c,20a〜20cの表面の+Z側端部から−Z側に向けて40%の範囲に付着している。
図示28は容器であり、容器28の内部に、第1電極対24A,18Aと、第2電極対18B,24Bと、第3電極対24C,18Cとセパレータ36a〜36cと非水系電解液12が収容されている。なお、非水系電解液12の比重は水よりも大きく、蓄電装置10を使用する際に、触媒26a〜26fが付着している領域を+Z側に配置して使用する。蓄電装置10内に浸入した水は、蓄電装置10内で+Z側に偏って存在する。すなわち、蓄電装置10内では、水が偏って存在する領域に触媒が付着しているので、蓄電装置内に侵入した水を効率的に分解することができる。
図2に、蓄電装置100を示している。蓄電装置100は蓄電装置10の変形例であり、蓄電装置10と実質的に同じ構成については同じ参照番号又は下二桁に同じ参照番号を付すことによって説明を省略する。
電極活物質層116aの表面に触媒126aが付着している。電極活物質層120aの表面に触媒126bが付着している。電極活物質層120bの表面に触媒126cが付着している。電極活物質層116b,116c,120cの表面には触媒が付着していない。蓄電装置100を使用する際に、触媒126a〜126cが付着している電極活物質層116a,120a,120bを+Z側に配置して使用する。
蓄電装置100内に侵入した水は、蓄電装置100内で+Z側に偏って存在する。蓄電装置100内では、水が偏って存在する領域に触媒が付着しているので、蓄電装置内に侵入した水を効率的に分解することができる。
蓄電装置10,100の製造方法について説明する。電極10と電極100は、おおまかに言って、蓄電装置内の電極の向きと、電極活物質層の表面の触媒を付着させる位置が異なるだけである。ここでは、蓄電装置10の製造方法のみ説明する。
まず、活性炭(比表面積:2000m2/g)、カーボンブラック、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと称す)の重量比が8:1:1の割合になるように秤量した後、それらの材料を混ぜ合わせる。次いで、得られた混合物に水を適量(混合物の重量のおよそ半分の重量)加えて混練し、ペースト状にする。ここで、活性炭は電極活物質層の主材料として機能し、カーボンブラックは活性炭の導電性を向上させる材料として機能し、CMCは結合剤として機能する。
次いで電極18A〜Cと電極24A〜Cを完成させる。ここで、電極18A〜Cと電極24A〜Cの製造方法は実質的に同一であり、以下では電極18A〜Cの製造方法のみを説明する。電極24A〜Cの製造方法は、図面の括弧内に参照番号を付すことによって省略する。また、電極18A,18B,18Cの製造方法は実質的に同一であり、以下ではアルファベットの添字を省略する。
図3に示しているように、アルミニウムの集電体14を用意し、ドクターブレードを利用して集電体14の表面に電極活物質層のペーストを塗布し、その後ペーストを95℃で乾燥する。集電体14の表面に電極活物質層16が形成され、電極18が完成する。
次いで図4に示しているように、電極活物質層16の表面の所定領域(ここでは、電極活物質層の一方の端部から他方の端部に向けて40%の範囲)に触媒ペーストを塗布する。その後、触媒ペースト26を120℃で乾燥させ、電極活物質層16の表面に触媒26が付着する。電極活物質層16の表面の所定領域に触媒26が付着している電極18を、複数個製造する。
次いで図5に示しているように、触媒26が付着している面の電極対18,24をセパレータ36を介して対向させる。集電体14a,14b間を配線38で接続し、集電体22a,22b間を配線32で接続した後に容器28内に配置する。その後、容器28内に電解液12を収容し、容器28を密閉することによって、図1に示している蓄電装置10が完成する。
蓄電装置10,100の他の製造方法について説明する。第1製造方法と実質的に同様の工程については説明を省略する。また、第2製造方法でも蓄電装置10の製造方法のみを説明する。
図3に示している電極18を完成させた後に、図6に示しているようにセパレータ36の両面の所定領域に触媒26を付着させる。触媒26を付着させる方法は、第1製造方法と同様である。触媒26を付着させるときには、触媒ペーストをセパレータ36の表面にのみ付着させる。すなわち、触媒ペーストがセパレータ36の表面から裏面にかけて連続しないように触媒ペーストの粘度を調整する。
次いで図5に示しているように、セパレータ36の両面に電極対18,24対向させて配置する。その後の工程は、第1製造方法と同様のため省略する。
第2製造方法では、電極18の表面に電極活物質層を形成する工程と、セパレータ36の表面に触媒26を付着させる工程は、どちらが先でもよいし、同時に行ってもよい。
第1製造方法において、電極活物質層16a〜c,20a〜cの表面に、下記に示している触媒を付着させ、実験例1〜3の蓄電装置10を製造した。また、比較例1として、電極活物質層16a〜c,20a〜cの表面に、全く触媒を付着させない蓄電装置10も製造した。なお、以下では、電極活物質層16a〜c,20a〜c、集電体14a,14b,22a、22b、触媒26a〜fのアルファベットの添字を省略することがある。
実験例1:触媒26としてIrO2を使用
実験例2:触媒26としてRuO2を使用
実験例3:触媒26としてWO3を使用
比較例1:触媒26なし
実験1で製造した実験例1〜3、比較例1の蓄電装置10を使用して、蓄電装置10の内部抵抗上昇率試験を行った。内部抵抗上昇率試験は、恒温恒湿槽(温度40℃、相対湿度95%)内で、蓄電装置10に対して、2.5Vの電圧を定電圧で印加して充電した後、定電流で放電して初期の内部抵抗の測定を行った。その後、蓄電装置10に対して、2.5Vの電圧を電圧で240時間定印加して、240時間経過後の内部抵抗の測定を行った。蓄電装置10の初期の内部抵抗に対して、蓄電装置10の240時間電圧印加後の内部抵抗の増加割合を内部抵抗上昇率とした。なお、内部抵抗の測定は、電子情報技術産業協会規格(JEITA RC−2377)に準拠して実施した。内部抵抗上昇率の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、電極活物質層16,20の表面に実験例1〜3の触媒26を付着させた蓄電装置10では、比較例1の触媒26を付着させない蓄電装置10と比較して、240時間後の内部抵抗上昇率が低くなっている。触媒26が蓄電装置10内の水を分解することによって、蓄電装置10内の水と非水系電解液12の反応が、抑制されたことを示している。
第1製造方法において、電極活物質層16,20の表面にIrO226を付着させ、下記に示している実験例4,5の蓄電装置を製造した。但し、実験例4,5では、電極活物質層16,20の表面に付着させる触媒26の位置が、下記に示すように蓄電装置10とは異なる。
実験例4:電極活物質層16,20の表面の全域に触媒26を付着させる。
実験例5:電極活物質層16,20の表面の−Z側にのみ触媒26を付着させる。
実験例4,5の蓄電装置についても内部抵抗上昇率試験を行った。結果を表1に示している。
表1から明らかなように、実験例4,5ともに、比較例1よりも内部抵抗上昇率が低くなっている。すなわち、触媒26を付着させる位置にかかわらず、電極活物質層16,20の表面に触媒26を付着させると、内部抵抗の上昇が抑制されることを示している。しかしながら、実験例4,5ともに、電極活物質層16,20の表面の+Z側にのみ触媒26を付着させる場合(実験例1)よりは内部抵抗上昇率が大きくなった。電極活物質層16,20の表面の下部にのみ触媒26を付着させると、水が多く偏在する部分(+Z側)に触媒26が付着していないため、触媒26が水を効率的に分解しにくいことを示している。また、電極活物質層16,20の表面の全域に触媒26を付着させると、電極活物質層16,20と非水系電解液12の接触が阻害されるため、内部抵抗上昇率が大きくなる。
集電体14、22の表面の所定領域に触媒26を付着させた後、触媒26が付着している集電体14の表面に電極活物質層16を形成し、集電体22の表面に電極活物質層20を形成して電極を完成した。その電極を使用して、実験1と実質的に同様の蓄電装置(比較例2)を製造した。なお、触媒26を付着させる位置は、実験1と同様の位置にした。すなわち、集電体14,22の表面の+Z側端部から−Z側に向けて40%の範囲にのみ触媒26を付着させた。
比較例2の蓄電装置についても内部抵抗上昇率試験を行った。結果を表1に示している。
表1から明らかなように、比較例2の蓄電装置は、触媒26を付着させない蓄電装置(比較例1)よりも内部抵抗上昇率が高くなる。集電体14と電極活物質層16又は集電体22と電極活物質層20の間に触媒26を付着させると、集電体14と電極活物質層16又は集電体22と電極活物質層20の間で触媒26によって水が分解される。触媒26によって水が分解されて生じたガスが、集電体14と電極活物質層16又は集電体22と電極活物質層20の間に留まってしまい、蓄電装置の内部抵抗を上昇させている。また、触媒26によって水が分解されて生じたガスによって、集電体14又は集電体22から電極活物質層16又は電極活物質層20が剥離することによっても、蓄電装置の内部抵抗が上昇する。
活性炭(比表面積:2000m2/g)、カーボンブラック、CMCの重量比が8:1:1の割合になるように秤量した後、それらの材料を混ぜ合わせ、さらにその混合物に対して5重量%のIrO2を加えて混練し、ペースト状にした。ドクターブレードを利用して集電体14の表面にペーストを塗布し、その後ペーストを120℃で乾燥した。その後の工程は第1製造方法と同様にし、蓄電装置(比較例3)を製造した。
比較例3の蓄電装置についても内部抵抗上昇率試験を行った。結果を表1に示している。
表1から明らかなように、比較例3の蓄電装置は、触媒26を付着させない蓄電装置(比較例1)よりも内部抵抗上昇率が高くなる。実施例2の蓄電装置と同様に、水が分解されることによって生じたガスが、電極活物質層16(22)内に留まってしまい、蓄電装置の内部抵抗を上昇させていることを示している。また、電極活物質層16の表面に露出している触媒26の量が少ないため、触媒26が水を分解する効果が低いことも内部抵抗を上昇させることに影響している。すなわち、電極活物質層16(22)内に触媒を添加しても蓄電装置の内部抵抗上昇率を抑制することができないことを示している。
実験3,4の結果より、蓄電装置を構成する部材の表面のうちの非水系電解液に直接接する範囲に触媒を付着させないと、蓄電装置の内部抵抗の上昇を抑制できないことを示している。換言すると、触媒を集電体と電極活物質層の間に付着させたり、触媒を練りこんで電極活物質層を形成しても蓄電装置の内部抵抗の上昇を抑制できないことを示している。
第1製造方法において、電極活物質層16,20の表面に白金(Pt)触媒26を付着させて比較例4の蓄電装置10を製造した。白金は、水のみならず非水系電解液も分解する特性を有する。
比較例4の蓄電装置10についても内部抵抗上昇率試験を行おうとしたが、蓄電装置10の内部抵抗上昇率を測定することができなかった。蓄電装置10の初期の内部抵抗さえも測定できなかった。これは、白金触媒が、蓄電装置10内の水のみならず、非水系電解液12も分解するからであり、蓄電装置として機能しない(充電することができない)ことを示している。すなわち、非水系電解液は分解しないで水を分解する触媒でなければ、蓄電装置10の内部抵抗の上昇を抑制することができないことを示している。
上記実施例では、蓄電装置の例として電気二重層キャパシタについて説明した。しかしながら、本発明の技術は、二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池等)に適用することもできる。すなわち、非水系電解液を介して対向する電極対を有する蓄電装置であれば、本発明の技術を適用することができる。
例えば、上記実施例では、電極を構成する電極活物質層の表面に触媒を付着させている。しかしながら、触媒を付着させる部位は電極活物質層の表面に限定されない。非水系電解液と触媒が、他の部材を介することなく直接接していればよく、例えば、セパレータの表面に付着させても蓄電装置の内部抵抗の上昇割合を抑制する同様の効果が得られる。また、例えば、容器内壁の表面の非水系電解液と直接接する部分に触媒を付着させることもできる。
また、実験1では、触媒として、IrO2,RuO2及びWO3について示している。しかしながら、上記触媒に限定されるもではなく、非水系電解液は分解しないで水を分解する触媒であればよい。特に金属酸化物が好ましく、上記金属酸化物のほかにも、例えば、IrO2、RuO2、WO3、二酸化ロジウム(RhO2)、二酸化オスミウム(OsO2)及び二酸化タングステン(WO2)から選択される少なくとも一種の金属酸化物を使用することもできる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
12:非水系電解液
14,22:集電体
16,20:電極活物質層
26:触媒
Claims (11)
- 非水系電解液を介して対向する電極対を有する蓄電装置において、
蓄電装置を構成する部材の表面のうちの非水系電解液に直接接する範囲に、非水系電解液は分解しないで水を分解する触媒が付着していることを特徴とする蓄電装置。 - 電極の表面に触媒が付着していることを特徴とする請求項1の蓄電装置。
- 触媒が金属酸化物であることを特徴とする請求項1又は2の蓄電装置。
- 金属酸化物がIrO2、RuO2及びWO3から選択される少なくとも一種の材料であることを特徴とする請求項3の蓄電装置。
- 水よりも比重が大きい非水系電解液を使用しており、蓄電装置を構成する部材の一方の領域に触媒が多く付着しており、蓄電装置を構成する部材の他方の領域に触媒が少なく付着しているか又は付着していないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの蓄電装置。
- 前記蓄電装置が、電気二重層キャパシタであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの蓄電装置。
- 前記蓄電装置が、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの蓄電装置。
- 請求項1〜7の蓄電装置を搭載している自動車。
- 蓄電装置を使用するときに、触媒が多く付着している領域を重力方向の上側に配置し、触媒が少なく付着している領域か又は触媒が付着していない領域を重力方向の下側に配置して使用することを特徴とする請求項5の蓄電装置の使用方法。
- 電極を形成する工程と、
電極の表面の所定領域に、非水系電解液は分解しないで水を分解する触媒を付着させる工程と、
少なくとも一対の電極の表面をセパレータを介して対向させる工程と、
少なくとも一対の電極とセパレータを容器内に収容する工程と、
容器内に非水系電解液を収容する工程を有していることを特徴とする蓄電装置の製造方法。 - 電極を形成する工程と、
セパレータの表面の所定領域に、非水系電解液は分解しないで水を分解する触媒を付着させる工程と、
少なくとも一対の電極の表面をセパレータを介して対向させる工程と、
少なくとも一対の電極とセパレータを容器内に収容する工程と、
容器内に非水系電解液を収容する工程を有していることを特徴とする蓄電装置の製造方法。
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