JP2008114745A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電磁式のアブソーバに2つの電磁モータを有するものを採用し、第2電磁モータが有する複数の通電端子間を相互に導通させるとともに、その状態において、第1電磁モータと電源とを接続するとともにその電磁モータを流れる電流を調整することで、アブソーバが発生させる抵抗力を制御する。ストローク速度が高い場合において、第2電磁モータが起電力に依拠する力を発生させることで、第1電磁モータの発生させる力の低下を補うことができ、ストローク速度が高い場合における減衰力不足を抑制することが可能となる。つまり、本サスペンションシステムは、車両の乗り心地等の悪化が抑えられるという利点を有することで、実用性の高いサスペンションシステムとなる。
【選択図】図5
Description
そのアブソーバを制御する制御装置であって、前記第2電磁モータが有する複数の通電端子間を相互に導通させるとともに、その状態において、前記第1電磁モータと電源とを接続するとともにその第1電磁モータを流れる電流を調整することで、前記アブソーバが発生させる前記抵抗力を制御する特定抵抗力制御を実行可能な制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステム。
前記制御装置が、電源から前記第1電磁モータに電流を供給しつつその第1電磁モータを流れる電流を調整することで、前記アブソーバが発生させる前記推進力を制御する推進力制御を実行可能とされた(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
図1に、請求可能発明の実施例である車両用サスペンションシステム10を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
図4に示すように、各アクチュエータ26の2つのモータ90,92は、それぞれが、コイルがスター結線(Y結線)された3相DCブラシレスモータであり、上述したように、第1モータ90はインバータ146によって制御駆動され、第2モータ92は通電端子間の開閉がスイッチ147によって行われる。そのインバータ146は、図に示すような一般的なものであり、high側(高電位側),low側(低電位側)のそれぞれに対応し、かつ、第1モータ90の3つの相であるU相,V相,W相のそれぞれに対応する6つのスイッチング素子HUS,HVS,HWS,LUS,LVS,LWSを備えている。ECU140のコントローラ142は、モータ54に設けられたレゾルバ184により回転角(電気角)を判断し、その回転角に基づいてスイッチング素子を開閉作動させる。インバータ146は、いわゆる正弦波駆動によって第1モータ90を駆動するのであり、第1モータ90の3つの相の各々に流れる電流量が、それぞれが正弦波状に変化し、その位相差が電気角で120°ずつ異なるように制御される。そして、インバータ146は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってモータ54に通電するようにされており、パルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することで、第1モータ90を流れる電流量(通電電流量)を変更して、第1モータ90が発生させる回転トルクの大きさを変更する。詳しくは、デューティ比が大きくされることで、通電電流量が大きくされて、第1モータ90の発生する回転トルクは大きくなり、逆に、デューティ比が小さくされることで、通電電流量が小さくされて、第1モータ90の発生する回転トルクは小さくされる。
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ26のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある)が実行される。また、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が実行される。上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御は、各制御ごとのアクチュエータ力の成分である振動減衰成分,ロール抑制成分,ピッチ抑制成分を合計して目標アクチュエータ力が決定され、アクチュエータ26がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、総合的に実行される。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
振動減衰制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の振動減衰成分FVが決定される。具体的には、車体のマウント部24に設けられた縦加速度センサ176によって検出される縦加速度から計算される車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上速度VUと、ロアアーム22に設けられた縦加速度センサ178によって検出される縦加速度から計算される車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下速度VLとに基づいて、次式に従って、振動減衰成分FVが演算される。
FV=CU・VU−CL・VL
ここで、CUは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、CLは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、CU,CLは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ26にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ26にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操舵角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ174によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制力成分FRが、次式に従って決定される。
FR=K3・Gy* (K3:ゲイン)
車体の制動時等、減速時に発生する車体のノーズダイブに対しては、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車体の加速時に発生する車体のスクワットに対しては、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合の接近・離間距離を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ172によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制力成分FPが、次式に従って決定される。
FP=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ180によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ182によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
アクチュエータ26の制御は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力に基づいて行われる。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の振動減衰成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定されると、それらに基づき、次式に従って目標となるアクチュエータ力F*が決定される。
F*=FV+FR+FP
アクチュエータ26に発生させるアクチュエータ力は、2つのモータ90,92の発生させる力の和に依存するものであるため、各モータ90,92に発生させる力が制御される。詳しくは、第2モータ92の通電端子間を短絡させるか、あるいは開放させるかが決定され、その場合に第2モータ92が発生する力に応じて、上記の目標アクチュエータ力F*を発生させるように、第1モータ90に発生させる力が制御される。
アクチュエータ26に発生させる力がばね上部とばね下部との相対動作に対する抵抗力となる場合には、ECU140によって、第2モータ92の通電端子間を短絡させるとともに、その状態において、第1モータ90を流れる通電電流が制御されることで、アクチュエータ26が発生させる抵抗力が制御される。つまり、ECU140によって、特定抵抗力制御が実行されるのである。具体的には、スイッチ147が閉状態とされ、第2モータ92の通電端子間が短絡された状態とされる。次いで、その場合に、第2モータ92が発生する抵抗力F2が、ばね上部とばね下部との相対速度であるストローク速度VStに応じて推定される。詳しくは、ECU140のROMには、図5の二点鎖線に示すストローク速度VStをパラメータとする回転トルクTq(抵抗力)のマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して第2モータ92の抵抗力F2が推定されるのである。次いで、その推定された第2モータ92の抵抗力に基づいて、第1モータ90の目標となる通電電流量i1 *が、次式に従って決定されるのである。
i1 *=K5・(F*−F2) (K5:ゲイン)
その決定された目標通電電流量i1 *に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ146に送信される。インバータ146は、その適切なデューティ比の下、目標通電電流量i1 *に応じたモータ力を発生させるように第1モータ90を駆動する。以上のような第1モータ90,第2モータ92の作動制御により、アクチュエータ26は、目標アクチュエータ力F*となるようなアクチュエータ力を発生させることになる。
アクチュエータ26に発生させる力がばね上部とばね下部との相対動作に対する推進力となる場合には、ECU140によって、スイッチ147が開状態とされ、第2モータ92の通電端子間が開放される。その場合には、第2モータ92の発生させる力は0であるため、目標アクチュエータ力F*に基づいて第1モータ90の目標通電電流量i1 *が決定されるのである。
上述のようなアクチュエータ26の制御は、図6にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、イグニッションスイッチ160がON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいてコントローラ142により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、アクチュエータ制御プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ26の各々に対して実行される。以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ26に対しての本プログラムによる処理について説明する。
i)第1変形例
本変形例のシステムは、アクチュエータが有する電磁モータの構成が、上記実施例におけるモータ54の構成とは相違する。図7に、本変形例のシステムが備えるアクチュエータの動力源である電磁モータ200の平面断面図を示す。上記実施例においては、第1モータ90が有する複数のコイル76と、第2モータ92が有する複数のコイル78との両者が、複数のコア74の各々に巻き回されていたが、本変形例においては、第2モータ92が有する複数の第2コイル78の各々が、第1モータ90が有する複数の第1コイル76の各々の間に挟まれて配置されている。詳しくは、モータハウジング70の内周部には、上記実施例と同様に複数のコア202(以下、「第1コア」と呼ぶ場合がある)が設けられ、その複数の第1コア202の各々の間に、その間にあるスペースを利用して第1コア202より小さな複数の第2コア204が設けられている。その第1コア202の各々には、第1モータ90のステータを構成する複数の第1コイル76の1つが巻き回され、第2コア204の各々には、第2モータ92のステータを構成する複数の第2コイル78の1つが巻き回されている。ちなみに、図では、第1コイル76の3つの相(U,V,W)については、○で囲んで表示されており、第2コイル78の3つの相については、△で囲んで表示されている。
また、別の変形例のシステムが備えるアクチュエータの動力源である電磁モータ220の平面断面図を、図8に示す。本変形例の電磁モータ220では、12個のコア222が設けられており、それらのコア222の1つ置きに配置されている6つのものに、第1モータ90のステータを構成する第1コイル76が、それぞれ巻回されており、第1コイル76が巻回されているコア222の間に存在する6つのコア222に、第2モータ92のステータを構成する第2コイル78が、それぞれ巻回されている。つまり、第2モータ92が有する複数の第2コイル78の各々が、第1モータ90が有する複数の第1コイル76の各々の間に挟まれて配置されているのである。なお、本実施例の電磁モータ220のロータは、4つの永久磁石72が配設されており、4極のロータとされている。
さらに、別の変形例のシステムが備えるアクチュエータの動力源である電磁モータ240の正面断面図を、図9に示す。上記実施例および2つの変形例においては、第1モータ90が有する複数の第1コイル76と、第2モータ92が有する複数の第2コイル78とが、軸線方向において同じ位置に配置されているが、本変形例においては、それらが、それぞれ、軸線方向において互いに異なる位置に位置する円周上に配置されている。詳しくは、モータハウジング70の内周部には、それの下方側に複数の第1コイル76が配置され、上方側に複数の第2コイル78が配置されている。なお、本変形例においても、モータ軸58の外周に付設された複数の永久磁石72は、2つのモータ90,92の両者に共通のロータとして機能するものとなっている。
上記3つの変形例においても、前述の実施例と同様に2つのモータ90,92の制御が行われるため、それら3つの変形例のシステム10によれば、前述の実施例と同様に、ストローク速度が高い場合に、第2モータ92が発生させる力によって、第1モータ90が発生させる減衰力の低下を補うことが可能であり、ストローク速度が高い場合における減衰力不足を抑制もしくは防止することが可能である。
Claims (8)
- ばね上部とばね下部との間に配設され、それぞれがばね上部とばね下部との相対動作に伴って動作する第1電磁モータおよび第2電磁モータを有し、それら2つの電磁モータが発生させる力に依拠して、ばね上部とばね下部との相対動作に対する抵抗力を発生させる電磁式のアブソーバと、
そのアブソーバを制御する制御装置であって、前記第2電磁モータが有する複数の通電端子間を相互に導通させるとともに、その状態において、前記第1電磁モータと電源とを接続するとともにその第1電磁モータを流れる電流を調整することで、前記アブソーバが発生させる前記抵抗力を制御する特定抵抗力制御を実行可能な制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステム。 - 前記アブソーバが、ばね上部とばね下部との相対動作に対する推進力をも発生可能とされ、
前記制御装置が、
電源から前記第1電磁モータに電流を供給しつつその第1電磁モータを流れる電流を調整することで、前記アブソーバが発生させる前記推進力を制御する推進力制御を実行可能とされ、
その推進力制御を、前記第2電磁モータが有する前記複数の通電端子間を開放させた状態で実行するように構成された請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。 - 前記制御装置が、前記第2電磁モータが有する前記複数の通電端子間が導通された状態と、それら通電端子間が開放された状態とを切り換える導通・開放状態切換器を有する請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記第1電磁モータと前記第2電磁モータとがともに回転型モータとされ、磁石を有するそれぞれのロータが、ばね上部とばね下部との相対動作に伴って、それら2つのモータの各々の相に対応する複数のコイルを有するそれぞれのステータに対して回転する構造とされ、
前記アブソーバが、前記第1電磁モータのロータと前記第2電磁モータのロータとが一体化された単一のロータを有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。 - 前記第1電磁モータが有する複数のコイルと、前記第2電磁モータが有する複数のコイルとが、それぞれ、軸線方向において互いに異なる位置に位置する円周上に配置された請求項4に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記第1電磁モータが有する複数のコイルと、前記第2電磁モータが有する複数のコイルとが、軸線方向において同じ位置に配置された請求項4に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記第2電磁モータが有する複数のコイルの各々が、前記第1電磁モータが有する複数のコイルのうちの2つのものの間に挟まれて配置された請求項6に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記第1電磁モータが有する複数のコイルの各々が、ロータに向かって突出して設けられた複数のコアの各々に巻き回されており、前記第2電磁モータが有する複数のコイルが、前記複数のコアのうちの複数のものにそれぞれ巻き回された請求項6に記載の車両用サスペンションシステム。
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