JP2008106367A - 二方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インヒビター成分を極力低減した成分組成になる鋼スラブを素材として製造した電磁鋼板について、その地鉄組織を、ミラー指数{100}<001>に集積した二次再結晶粒からなる組織とし、かつコーティングを除いた地鉄表面の酸化物の量を酸素量換算で片面当たり1.0 g/m2以下に抑制する。
【選択図】なし
Description
従来、広く用いられている一方向性電磁鋼板は、ミラー指数{110}<001>で表されるゴス方位を二次再結晶させたもので、圧延方向(以下、L方向という)で良好な磁気特性を示す。
二方向性電磁鋼板を製造する方法としては、AlNをインヒビター成分として含む鋼をクロス冷延する方法や表面エネルギーを利用した二次再結晶による方法等が提案されている。しかしながら、これらの製造方法では、広幅で均質の鋼帯を安価に製造することができないため、大量生産されるまでには至っていない。
従って、かかる電磁鋼板が実際に変圧器や発電機等の鉄心材料に加工されたときの特性については、未だ十分に研究されているとは言い難い。
この理由は、従来から知られている二次再結晶によって作られる二方向性電磁鋼板は、無方向性電磁鋼板よりも結晶粒径がはるかに大きいため、切断や打ち抜き加工の際に端部の変形が生じ易く、大きい歪みが入り易いためである。
この対策として、特開平5−275222号公報では、表面の非磁性の酸化物を酸洗、研磨等で減少させることを提案している。しかしながら、このように表面の非金属物質を減少させるのみでは鋼板同士の絶縁性が低下し、たとえ磁束密度は高くなっても鉄損が増大するため鉄心素材としては好ましくない。また、酸洗や研磨などでは、酸化物が不均一に取り除かれたり、歪みが導入される等して、鉄損に悪影響を及ぼす。
しかしながら、かような張力コーティングを二方向性電磁鋼板に適用すると、L方向、C方向のいずれか一方の磁気特性は向上するものの、他方の磁気特性は劣化するという問題がある。この理由は、工業的に製造された多結晶の二方向性電磁鋼板は結晶粒方位にばらつきがあるため、L方向、C方向のどちらかより<001>軸の集積が大きい方の特性のみが張力によって優先的に改善され、他方の特性はむしろ劣化するためである。
この知見は、従来の一方向性電磁鋼板や結晶粒方位のばらつきの小さい正キューブ方位の単結晶や小さいサイズの切り出し試料を用いた実験結果からは予想できない。
しかしながら、焼鈍温度が高いほど鋼板表面に形成される酸化物が増加し、また焼鈍分離剤が多くなるほど焼鈍分離剤に含まれる水分や酸素によってやはり鋼板表面に形成される酸化物が増加する。
そこで、発明者らは、インヒビター成分を含まないSi含有鋼から正キューブ方位の二次再結晶組織を得る方法を探索するため、Al,O,N,S,Se等のインヒビターを低減した成分の鋼スラブを素材として、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、再結晶焼鈍、仕上げ焼鈍を行う実験を繰り返した。
その結果、正キューブ方位に集積した二次再結晶組織からなる二方向性電磁鋼板の製造方法を開発し、特願平11-289523号明細書(特開2001-107147号公報)において提案した。
その結果、試行錯誤の末に、以下に述べるような、良好な鉄心特性が得られる二方向性電磁鋼板を開発するに至ったのである。
1.C:0.003〜0.08wt%,Si:2.0〜8.0wt%およびMn:0.005〜3.0 wt%を含み、かつAlを0.02wt%以下、S,Se,OおよびNをそれぞれ30ppm 以下に低減し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを素材として製造された二方向性電磁鋼板であって、表面にコーティングをそなえ、地鉄がミラー指数{100}<001>に集積した二次再結晶粒からなり、かつコーティングを除いた地鉄表面の酸化物の量を、酸素量換算で片面当たり1.0 g/m2以下に抑制したことを特徴とする二方向性電磁鋼板。
また、酸化物とコーティングとが鋼板に及ぼす張力の合計を5MPa 以下とすることにより、L方向とC方向の両方の磁気特性が良好な二方向性電磁鋼板を得ることができる。
そして、上記した本発明の良好な磁気特性を示す二方向性電磁鋼板によって、変圧器、モーターおよび発電機等の鉄心の鉄損について、格段に低減することができる。
まず、本発明の二方向性電磁鋼板は、正キューブ方位に集積した二次再結晶粒からなる。これはL、C両方向の磁気特性を良好にするためである。
成分としては、Siを2〜8wt%含有させると交流励磁下での鉄損が効果的に低減するが、含まない場合でも効果がある。板厚としては、0.6mm 以下が交流励磁下での鉄損低減に有利があるが、この板厚に限定されるものではない。
というのは、これらの酸化物量が酸素量換算で1.0 g/m2を超えると切断あるいは打ち抜き加工時の切断面の変形が大きくなり、切断部周辺に大きな歪みが導入され、鉄損の著しい劣化を招くからである。
なお、かかる酸化物は、仕上げ焼鈍の他に、脱炭焼鈍や平坦化焼鈍等の熱処理でも形成されることがあるが、この場合も含めて、最終的に酸素量換算で1.0 g/m2以下に抑制する必要がある。
この鋼板に及ぼす張力を小さくするためには、酸化物およびコーティングの厚さを小さくすること、コーティング材料として焼き付け温度の低いものを適用すること、熱膨張係数が小さいかまたはヤング率が小さいコーティングを適用することが有効である。
素材の成分組成は次のとおりである。
C:0.003 〜0.08wt%
Cを 0.003〜0.08wt%の範囲で含有させることによって、二次再結晶で正キューブ方位を好適に得ることができる。この理由は、明確ではないが、固溶Cの影響で圧延時に変形帯の形成が促進され、正キューブ方位の再結晶核が増加することによるものと推測される。
Siは、電気抵抗を高め、鉄損を改善する有用元素であるが、含有量が 2.0wt%に満たないとその効果に乏しく、またγ変態を生じ、熱延組織が大きく変化する他、最終仕上焼鈍において変態し、良好な磁気特性を得ることができない。一方、Si量が 8.0wt%を超えると、製品の二次加工性が悪化し、さらに飽和磁束密度も低下するので、Si量は 2.0〜8.0 wt%の範囲に制限した。
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005 wt%未満ではその添加効果に乏しく、一方 3.0wt%を超えると二次再結晶が困難になるので、Mn量は 0.005〜3.0 wt%の範囲に制限した。
Alを0.02wt%以下、好ましくは0.01wt%未満にすると、二次再結晶がより低温で発現するので仕上げ焼鈍温度を低下させることができ、コイルの密着防止だけでなく、酸化物生成抑制効果を得ることができる。
これらの元素はいずれも、二次再結晶の発現を阻害し、しかも地鉄中に残存して鉄損を劣化させる有害元素である。そこで、Se,S,OおびNはいずれも30ppm 以下(望ましくは20ppm 以下)に低減するものとした。
スラブは、通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後、加熱せずに直ちに熱延に供してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延を行っても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めてもよい。
スラブ加熱温度は、素材成分にインヒビター成分を含まないので、熱間圧延が可能な最低温度の1100℃程度で十分である。
熱延板焼鈍は、磁気特性の向上に有用である。同様に、中間焼鈍を冷間圧延の間に挟むことは、磁気特性の安定化に有用である。しかしながら、いずれも生産コストを上昇させることになるので、経済的観点および最終冷延前の粒径を適正範囲にする必要から、熱延板焼鈍や中間焼鈍の取捨選択および焼鈍温度と時間が決定される。
また、かかる冷間圧延は 150℃以上の温度で行うことが、正キューブ方位の二次再結晶を生じさせる上で有効である。さらに、クロス圧延や低張力で鋼帯幅が拡大する圧延条件での冷延も適用することができる。
焼鈍条件は、湿水素雰囲気中において 800〜950 ℃, 5〜200 秒間程度が好ましく、この焼鈍によって鋼中のCを磁気時効の生じない 0.003wt%以下まで低減することが好ましい。
ここで、仕上げ焼鈍は、正キューブ方位を二次再結晶させ、十分に成長させるため、800℃以上の温度に加熱する必要があり、この温度域に10時間以上保持することが望ましい。
一方、地鉄表面に形成される酸化物を酸素量換算で片面当たり1g/m2以下とする必要があるので、雰囲気中の水蒸気、酸素濃度はそれぞれ、露点≦10℃、O2≦0.1vol%と十分に低減する必要がある。
また、酸化物の生成を抑制するためには、仕上げ焼鈍温度は1100℃以下、より好ましくは 900℃以下にする必要がある。なお、仕上げ焼鈍温度を 900℃以下に低減するには、前述のように二次再結晶が発生する温度を下げるため、Alを0.01wt%未満に低減することが好ましい。
かかるコーティング被成処理においては、鋼板に及ぼす張力を小さくするために、酸化物およびコーティングの厚さを小さくすること、コーティング材料として焼き付け温度の低いものを適用すること、熱膨張係数が小さいかまたはヤング率が小さいコーティングを適用することが有効である。
なお、かかる有機樹脂コーティングや半有機コーティングの膜厚については、層間絶縁性確保の面から 0.5μm 以上に、また張力低減および占積率低下防止の面から5μm 以下程度とすることが好ましい。
Si:3.1wt%, C:0.012wt%, Mn:0.1wt%, Al:0.009wt%, N:10ppm, O:13ppm,S:5ppmおよびSe:4ppmを含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造にて製造した。ついで、熱間圧延により厚さ:2.7 mmの熱延板としたのち、1140℃、均熱60秒の熱延板焼鈍を行い、冷間圧延を 270℃で行って厚さ:0.35mmの最終板厚に仕上げた。ここに、最終冷延前の平均結晶粒径は 280μm であった。ついで、40%H2−60%N2、露点:50℃の雰囲気中で920℃、均熱30秒の再結晶焼鈍を行い、鋼中Cを0.002wt%まで低減した。
ついで、この鋼板の表面に、シリカ粉末とアルミナ粉末を3:1の割合で混合した焼鈍分離剤を静電塗布し、コイルに巻き取ったのち、仕上げ焼鈍を行った。仕上げ焼鈍は、常温から800℃まで5時間で、800℃から 950℃までは25時間で昇温し、さらに 950℃に36時間保持してから、炉冷することにより行った。ここで、炉内の雰囲気中に導入した水蒸気量を種々に変化させて、鋼板表面に形成される酸化物の量を制御した。
上記の工程により、粒径:約20mmの正キューブ方位に集積した二次再結晶粒からなる二方向性電磁鋼板が得られた。
次に、この鋼板からEI−48形のEIコア試料を打ち抜き加工で製造し、1.5 T、50Hzにおける鉄損特性を測定した。
得られた結果を鋼板表面の酸素目付量との関係で表1に示す。
実施例1と同様にして製造した、表面の酸化物量が酸素量換算で0.4 g/m2の正キューブ方位の二次再結晶粒からなる鋼板に、厚さを変えて無機質のコーティングを被成した。このコーティングは、リン酸アルミニウム、クロム酸カリウム、ホウ酸からなる溶液にコロイダルシリカを混合したものを、800 ℃で焼き付けて厚さ1μm の被膜にしたものである。ここで、コロイダルシリカの含有量を増やすとコーティングの熱膨張係数が小さくなり、鋼板に与える張力が増加する。この鋼板に、0〜6MPa の圧縮応力をかけて磁歪を測定し、磁歪が急激に増加したときの圧縮応力を鋼板にかかっている張力とした。
この鋼板のL方向、C方向に 1.5T、50Hzで励磁したときの鉄損をエプスタイン試験で測定した結果を、表2に示す。
これに対し、付与張力の大きさが5MPa 以下、特に3MPa 以下になると、C方向の鉄損劣化が極めて小さくなり、好適な鉄損特性が得られている。
なお、コロイダルシリカを添加せず 350℃で焼き付けたコーティングや実施例1で用いた半有機コーティングは、鋼板にほとんど張力を与えず、従ってコーティング被成後の鉄損もL方向平均:1.22W/kg、C方向平均:1.45W/kgと良好な結果を得た。
表3に示す成分組成になる鋼スラブを、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、再結晶焼鈍および仕上げ焼鈍の条件を種々に変えて0.35mm厚の電磁鋼板とした後、平坦化焼鈍およびコーティング被成処理を行った。
これらの試料について 1.5T、50Hzにおける鉄損をエプスタイン試験で評価した。なお、エプスタイン試験試料はL方向とC方向に切り出した試料を半量ずつ用いた。
同一成分の鋼から種々の製造条件で得られた試料のうち、最も鉄損の低かったものの測定結果を、表3に示す。
表3の適合例10の成分を基本として、Al含有量のみを変更した鋼の二次再結晶開始温度について調査した。再結晶焼鈍まで行った鋼板から、長さ:400 mm、幅:50mmに切り出した試料を、 800〜1200℃の温度差がある電気炉に装入し、50時間保持したのち、マクロエッチングを行って二次再結晶の有無と対応する温度とを比較することによって、二次再結晶開始温度を評価した。
表4に、得られた結果を示す。
Claims (2)
- C:0.003〜0.08wt%,Si:2.0〜8.0wt%およびMn:0.005〜3.0 wt%を含み、かつAlを0.02wt%以下、S,Se,OおよびNをそれぞれ30ppm 以下に低減し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを素材として製造された二方向性電磁鋼板であって、表面にコーティングをそなえ、地鉄がミラー指数{100}<001>に集積した二次再結晶粒からなり、かつコーティングを除いた地鉄表面の酸化物の量を、酸素量換算で片面当たり1.0 g/m2以下に抑制したことを特徴とする二方向性電磁鋼板。
- 請求項1において、地鉄表面の酸化物とコーティングとが鋼板に及ぼす張力が5MPa 以下であることを特徴とする二方向性電磁鋼板。
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