CCD(Charge−Coupled Device)などの固体撮像素子は、エリアセンサおよびリニアセンサなどに用いられる。これらのセンサは、セラミックやプラスチックを用いた中空パッケージ内に、固体撮像素子が密封状態で収納された構造となっている。このような構造によって、固体撮像素子は、外部から湿気やゴミなどが侵入しない構造となる。
図9(a)〜図9(c)は、従来の固体撮像装置の製造方法を示す概略断面図である。
図9(a)に示すように、この製造方法では、半導体基板であるシリコンウェハ100の表面に、所定のチップ分離領域107・107を適宜設けて複数の固体撮像素子103を形成する。そして、それぞれの固体撮像素子103の周囲に、所定数のアルミパッド(ボンディングパッド)105・105…を形成する。
次に、シリコンウェハ130上に形成された複数の固体撮像素子103を、チップ分離領域107・107においてダイシングソー等により分離し、図9(b)に示すようなチップ102に個片化する。
次に、図9(c)に示すように、個片化したチップ102を、セラミック又はプラスチック等からなるパッケージ基板108に搭載する。そして、パッケージ基板108に設けられている所定数のパッケージ端子108a・108aと、それぞれに対応するアルミパッド105・105とを、ボンディングワイヤ109・109を介して電気的に接続する。さらに、パッケージ基板108に搭載されたチップ102、および、ボンディングワイヤ109・109を覆うように、透光性を有するキャップガラス104を装着する。
このように製造された固体撮像装置101は、キャップガラス104を介して外部から光を取り込み、この光を固体撮像素子103において受光する。固体撮像素子103は、受光した光を所定の電気信号に変換し、ボンディングワイヤ109を介して電気信号を外部へ送出する。また、図9(c)に示すように、固体撮像素子103とキャップガラス104との間の空間を密封状態にすることにより、固体撮像素子103は、外部から湿気及びゴミ等が侵入しない構造となる。
しかし、上述した固体撮像装置101の製造方法では、シリコンウェハ130に固体撮像素子103を形成してから、キャップガラス104を装着するまでの間に、多数の工程が必要となる。すなわち、シリコンウェハ130を複数のチップ102にダイシングする工程,チップ102をパッケージ基板108に搭載するマウンティング工程,チップ102に形成されたアルミパッド105・105とパッケージ基板108に形成されたパッケージ端子108a・108aとをボンディングワイヤ109・109で接続するボンディング工程,キャップガラス104をパッケージ基板108に装着する工程等が必要となる。しかも、これらの各工程において、固体撮像素子103は、むき出しの状態となっている。このため、固体撮像素子103の表面に損傷及びダストの付着が起こりやすい。固体撮像素子103の表面の損傷、および、その表面へのダストの付着は、固体撮像素子103における画素欠陥となり、歩留まりの低下の原因となっていた。
そこで、シリコンウェハをチップに分離するダイシング処理を行う前に、シリコンウェハ上の固体撮像素子に、キャップガラスを装着する方法が行われている(例えば、特許文献1)。
図10(a)〜図10(d)は、別の従来の固体撮像装置の製造方法を示す概略断面図である。
図10(a)に示すように、この製造方法では、半導体基板であるシリコンウェハ200の表面に、所定のチップ分離領域207・207を設けて、複数の固体撮像素子203及び所定数のアルミパッド205・205…を形成する。
次に、図10(b)に示すように、図10(a)のシリコンウェハ200上のそれぞれの固体撮像素子203に、キャップガラス204を貼り付ける。
その後、キャップガラス204を貼り付けたシリコンウェハ200を、チップ分離領域207・207において分離する。これにより、図10(c)に示すようなチップに個片化され、固体撮像装置201が製造される。
最後に、図10(d)に示すように、固体撮像装置201を、パッケージ基板208に搭載する。そして、パッケージ基板208に設けられている所定数のパッケージ端子208a・208aと、それぞれに対応するアルミパッド205・205とを、ボンディングワイヤ209・209を介して電気的に接続する。
一方、図11(a)〜図11(d)は、さらに別の従来の固体撮像装置の製造方法を示す概略断面図である。
この製造方法では、図11(a)に示すように、前述の方法と同様に、半導体基板であるシリコンウェハ300の表面に、所定のチップ分離領域307・307を設けて、複数の固体撮像素子303及び所定数のアルミパッド305・305…を形成する。
次に、図11(b)に示すように、シリコンウェハ300に形成された固体撮像素子303の周囲を囲むように、アルミパッド305・305の内側に凸部306を周設する。そして、その凸部306に、キャップガラス304を装着する。凸部306は、キャップガラス304及び固体撮像素子303を接着するためのものである。
次に、凸部306を介してキャップガラス304が装着されたシリコンウェハ300を、チップ分離領域307・307において分離する。これにより、図11(c)に示すようなチップに個片化され、固体撮像装置301が製造される。
最後に、図11(d)に示すように、固体撮像装置301を、パッケージ基板308に搭載する。そして、パッケージ基板308に設けられている所定数のパッケージ端子308a,308aと、それぞれに対応するアルミパッド305,305とをボンディングワイヤ309,309を介して電気的に接続する。
このようにして製造された固体撮像装置301には、固体撮像素子303の直上に空間53aが設けられている。しかも、この空間303aを凸部306により密封状態にすることにより、固体撮像装置301の製造工程において、固体撮像素子303に対して外部から湿気及びゴミ等の侵入を防止することができる。
このように、これらの製造方法によれば、シリコンウェハ200,300を個々のチップ202,302に個片化する工程以降において、固体撮像素子203,303の表面に損傷及びダストの付着が起こりにくくなる。
しかし、固体撮像装置201では、固体撮像素子203とキャップガラス204とが直接、接するため、固体撮像素子203のマイクロレンズが損傷しやすくなるという欠点がある。また、固体撮像装置301では、複数の固体撮像素子303のそれぞれにキャップガラス304を貼り付ける必要があり、生産性が悪い。
そこで、図12(a)〜図12(e)に示す固体撮像装置401の製造方法では、生産性を高めるために、複数の固体撮像素子403,403に対して1枚のキャップガラス404が装着される。
具体的には、図12(a)に示すように、この製造方法では、前述の方法と同様に、半導体基板であるシリコンウェハ400の表面に、所定のチップ分離領域407・407を設けて、複数の固体撮像素子403及び所定数のアルミパッド405・405…を形成する。
次に、図12(b)に示すように、シリコンウェハ400に形成された、アルミパッド405,405及びそれぞれの固体撮像素子403を隔てるチップ分離領域407,407上に、凸部406を形成する。これにより、固体撮像素子403の形成表面よりも所定領域だけ大きい領域を除いて、シリコンウェハ400の表面に凸部406が形成される。次に、同図に示すように、シリコンウェハ400上の全ての固体撮像素子403を覆うことが可能な大きさのキャップガラス404を、この凸部406に装着する。
さらに、このようなキャップガラス404が装着されたシリコンウェハ400を、チップ分離領域407,407において分離する。これにより、図12(c)に示すようなチップに個片化され、固体撮像装置401が製造される。また、チップ402における凸部406の側面をエッチングして、図12(d)に示すようにアルミパッド405,405をむき出しにする。
次に、図12(e)に示すように、固体撮像装置401を、パッケージ基板408に搭載し、パッケージ基板408に設けられている所定数のパッケージ端子408a,408aと、それぞれに対応するアルミパッド405,405とをボンディングワイヤ409,409を介して電気的に接続する。
このように、この製造方法では、複数の固体撮像素子403,403に対して1枚のキャップガラス404を装着することにより、キャップガラス404の装着工程を短縮することができる。また、固体撮像装置401では、固体撮像素子403の直上に空間403aを設けることができ、この空間403aを凸部406により密封状態にすることにより、固体撮像装置401の製造工程において固体撮像素子403に対して外部から湿気及びゴミ等の侵入を防止することができる。
このような固体撮像装置の製造時には、固体撮像素子を有するシリコンウェハとキャップガラスとを貼付ける。この貼付けは、互いに対向する2つのステージを備えた貼付装置により行う。例えば、図12(d)の場合、固体撮像素子403を有するシリコンウェハ400を保持したステージと、キャップガラス404を保持したステージとを対向させる。そして、各ステージの相対移動によって、シリコンウェハ400上に形成された凸部406と、キャップガラス404とを接触させる。これにより、シリコンウェハ400と、キャップガラス404とが、凸部406を介して貼り付けられる。
ステージを備えた貼付装置によって、シリコンウェハ400とキャップガラス404とを貼付けるには、2つのステージを互いに平行にすることが重要となる。ステージが互いに平行でなければ、シリコンウェハ400とキャップガラス404とを平行に貼り付けられない。しかし、貼付を繰り返すと、ステージの平行度にずれが生じ、シリコンウェハ400とキャップガラス404とを平行に貼り付けられなくなる。
そこで、シリコンウェハ400とキャップガラス404とを平行に貼付けるために、種々の工夫がなされている。
例えば、図13(a)および図13(b)に示すような、ネジ式の平行度調整機構によって、ステージの平行度を調整する。図13(a)は、ネジ式の平行度調整機構を示す上面図であり、図13(b)は、図13(a)の断面図である。図13(a)の平行調整機構は、8対の固定用ボルト504および高さ調整ボルト505を用いる。つまり、テーブル502上の8点で平行調整する。具体的には、このネジ式の平行調整機構は、図13(b)に示すように、ステージ501が、テーブル502とベース503との2重構造となっている。テーブル502は、貼付対象となる基板(シリコンウェハなど)を保持するものであり、ベース503は、テーブル502を支持するためのものである。テーブル502とベース503とは、ステージ501の外周部に設けられた、複数の固定用ボルト504(図の例では8本)によって固定されている。固定用ボルト504は、テーブル502からベース503まで貫通している。そして、各固定用ボルト504を中心として、その外側に、高さ調整ボルト505が、設けられる。固定用ボルト504は、高さ調整ボルト505の中心を貫通している。
図13(a)および図13(b)のネジ式の平行度調整機構は、高さ調整ボルト505によりテーブル502の高さ調整によって、ステージ501の平行度を調整する。すなわち、まず、平行度の調整が必要なポイントの固定用ボルト504を緩める。次に、そのポイントの高さ調整ボルト505のネジを調節して、そのポイントの高さを調整する。高さ調整後の平行度は、ステージ間に感圧紙を挟みこんだときの圧力分布から、確認することができる。
一方、特許文献2には、このような高さ調整ボルトを用いない貼付装置が開示されている。図14は、特許文献2の貼付装置の概略断面図である。図14の貼付装置は、チャンバ608内の真空圧が規定値になった時に、シリンダ609の上昇により、半導体ウェハ601とテープ604とが接触する。そして、シリンダ609の加圧力と球面座610の平行出しの作用により、半導体ウェハ601とテープ604との均一な貼付を可能としている。
特開2004−247486号公報(2004年3月24日公開)
実開昭60−927号公報(1985年8月19日公開)
以下、本発明の実施形態について、図1〜図8に基づいて説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明は、固体撮像素子のウェハと、ガラス基板とを平行に貼付けるために、平行度調整用ピンを用いることを特徴とするものである。本発明の説明に先立ち、固体撮像装置およびその製造方法について説明する。
(1)固体撮像装置
図3(a)および図3(b)は、本発明により製造される固体撮像装置1の概略構成を示す模式図である。図3(a)は、固体撮像装置1の上面図であり、図3(b)は、図3(a)の矢符A−Aにおける断面図である。
図3(a)および図3(b)に示すように、固体撮像装置1は、シリコンウェハ2上に形成された固体撮像素子3に、凸部6を介して、キャップガラス4が貼り付けられた構成である。
固体撮像素子3は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサーからなる。本実施形態では、固体撮像素子3は、シリコンウェハ2に平面視矩形状に形成されている。固体撮像素子3上には、カラーフィルターおよびマイクロレンズ(図示せず)が積層されている。シリコンウェハ2上には、外部端子であるアルミパッド5も形成されている。
キャップガラス4は、凸部6を介して固体撮像素子3に対向して配置されている。キャップガラス4は、外部の湿気,ダスト(ゴミ、切りくず)などから、固体撮像素子3の表面を保護するためのものである。キャップガラス4は、固体撮像素子3に蓋をする蓋部である。キャップガラス4は、ガラスなどの透光性材料から構成される。つまり、キャップガラス4は、透明基板である。
凸部6は、固体撮像素子3よりも外側のシリコンウェハ2上に形成されている。凸部6は、キャップガラス4及び固体撮像素子3を接着するための接着部である。凸部6は、例えば、20μmから100μmの厚さとすることができる。固体撮像装置1の製造時には、凸部6は、シリコンウェハ2またはキャップガラス4上に形成される。凸部6は、感光性樹脂材料を用いフォトリゾグラフィ技術により形成したり、樹脂材料を用い印刷により形成することができる。
図4は、固体撮像装置1をさらに詳細に示す断面図である。図3(a)および図3(b)に示した固体撮像装置1は、パッケージ基板8に搭載される。そして、シリコンウェハ2に形成されたアルミパッド5・5と、それぞれに対応するパッケージ基板8に設けられている所定数のパッケージ端子8a・8aとが、ボンディングワイヤ9・9を介して電気的に接続される。
固体撮像装置1は、固体撮像素子3の表面に配置された受光素子(図示せず)により受光(光検出)をする。つまり、固体撮像装置1は、キャップガラス4を介して外部から光を取り込み、この光を固体撮像素子3において受光する。固体撮像素子3は、受光した光を所定の電気信号に変換し、ボンディングワイヤ9を介して電気信号を外部へ送出する。また、図3(b)および図4に示すように、固体撮像装置1では、固体撮像素子3とキャップガラス4との間の空間は、凸部6およびキャップガラス4により密封(封止)状態となる。このため、固体撮像素子3には、外部から湿気及びゴミ等が侵入しない。
(2)固体撮像装置の製造方法の概略
(固体撮像素子を有する基板の加工工程)
図5は、本発明の実施の形態1にかかる固体撮像素子モジュールの製造方法を示すフローチャートである。まず、図5における、固体撮像素子を有する基板を加工する工程から説明する。本実施形態では、固体撮像素子を有する基板の具体例として、ウェハを例にした、ウェハ加工工程について説明する。このため、図5中の破線内のウェハ加工工程が、固体撮像素子を有する基板加工の工程に相当する。図6(a)および図6(b)は、詳細にウェハ加工工程を示した図である。図6(a)は、図5のウェハ加工工程のフローチャートであり、図6(b)は図6(a)の各工程のうち、主な工程に対応したウェハ等の断面図を示している。
まず、固体撮像素子等形成工程では、例えばシリコン材料からなるウェハ10にCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサーといった既存の技術に基づく固体撮像素子11および端子12を形成する(S1)。このプロセスは公知のものが使用できるため詳細な説明は省略する。
ここで、固体撮像素子11は、フォトダイオード単体を言うものではない。後述する透明基板は複数のフォトダイオードが整列されている領域に対して配置されれば良いので、固体撮像素子11というときには、少なくともフォトダイオードが整列されている領域を含めば良く、その他の制御部分を含むか否かは問わない。
そして、固体撮像素子モジュールの薄型化を図る目的でウェハ10の裏面研磨を行う(S2)。これには公知の研磨技術を用い得るため特には説明しない。研磨された結果、700μm程度あったウェハ10の厚みは100〜300μm程度に薄型化される。
次に、裏面研磨工程(S2)で出てきたダストを除去するため洗浄工程(S3)を行う。その後、ウェハ10の固体撮像素子11形成面のうち、少なくとも固体撮像素子11が形成されている領域全体を覆うように、シール剤13を配置する(S4:シール剤貼付工程)。このシール剤貼付工程は、シール剤13の塗布、或いは、シート状材料からなるシール剤13を貼付けして行う。シール剤13としては、例えば密着性の高いアクリル、エポキシ、ポリイミド系の感光性熱硬化性樹脂などを用いることができる。
そして、ウェハ10にシール剤13をパターンニングするため、公知のフォトリソグラフ技術を用いて露光工程(S5:シール剤露光工程)を行った後、フィルム剥し工程及び現像工程を行う(S6:フィルム剥し現像工程)。この結果、後に個片透明基板を貼りつけるときに個片透明基板と接合される凸状のシール剤13を、各固体撮像素子11の周囲にパターンニングして配置することができる。このシール剤13の形状は、より正確には、固体撮像素子11の外側で且つ外部接続用の端子12の内側に、透明基板20内面が曇ることを防止する迷路状の通気孔を有して形成され、その通気孔以外の部分は密閉されるように略均一な高さに形成される。このようにして固体撮像素子を有する基板の加工工程は終了する。
(透明基板加工工程)
次に、透明基板加工工程について説明する。図7(a)〜図7(c)により詳しい透明基板加工工程を示す。図7(a)は、図5の透明基板加工工程のフローチャートであり、図7(b)は、図7(a)の各工程のうち主な工程に対応した透明基板20等の断面図を示している。
まず、透明基板20をウェハ10に対向させる際に配置し易くするために、ウェハと略同一の外周を有する円形に切断する(S11:形状調整カット工程)。図7(a)および図7(b)中、形状調整カット工程(S11)の前後の透明基板20の様子を斜視した図を図7(c)に示している。図7(c)中、実線より内側が実際に残っている透明基板20であり、破線部が切断される部分である。つまり、この工程により、方形の透明基板20が切断され、円形の透明基板20が形成される。このように、ウェハ10と略同一の形状に透明基板20を切断した結果、汎用的に用いられているチャックや搬送装置などを用いて加工できるため好適である。なお、透明基板20としては、ガラス、石英或いは透明樹脂が例示できる。
次に、切断した透明基板20の縁部の状態を整えるために端面を平坦化する処理を行う(S12:端面処理工程)。そして、固体撮像素子11への赤外線の透過率を減少するためのIRカットコーティング21を、透明基板20に形成する(S13:IRカットコーティング工程)。このIRカットコーティング工程は、例えばスパッタリング蒸着などの公知の技術を用いることが可能である。また、以下ではIRカットコーティングを施したものも含めて透明基板20と記載する場合がある。また、本実施形態のIRカットコーティング工程では、透明基板20と同形状のIRカットコーティングを、透明基板20の全面に、蒸着によって形成した。
次に、サポート部材22をIRカットコーティング21の形成面に貼りつける(S14:サポート部材貼付工程)。この結果、サポート部材22と透明基板20とにIRカットコーティング21が挟まれた状態になる。このサポート部材22には、切断装置23にて切断を行った際に個片状となった透明基板20及びIRカットコーティング21を仮固定状態にして保持する目的がある。
また、サポート部材22としては、例えば300〜1000μm程度の板材をウェハ10と同形状にしたものの両面に粘着部材27を施したものを用いることができる。粘着部材27に用いる粘着剤は、UV光(紫外線光)を照射すれば含有されている発泡材料が発泡して粘着性が低下するものを用いることができる。この粘着部材27としては、例えば日東電工社製リバアルファ(登録商標)が例示できる。なお、この板材に、ガラス、石英或いは透明樹脂やこれらの複合材といった透明材料を用い、粘着部材27に透明のものを用いれば、透明基板20を通してウェハ10のアライメントマークを確認できるので、位置合わせの容易化を図ることができ好適である。なお、ここでいう位置合わせは、水平方向(面方向;XY方向)の位置合わせである。
また、粘着部材27に用いる粘着剤は、UV光を照射すれば含有されている発泡材料が発泡して粘着面の粘着性が低下するものを例示したが、これに限られず、何らかの外力を加えることによって粘着性が低下するものであれば同様に使用できる。他の例としては、熱を加えることによって発泡剤が発泡して粘着性が低下する材料、或は加熱又はUV照射により硬化して粘着力が低下する材料を例示できる。ただし、この熱を用いて粘着力を低下させる材料を用いた場合には、以下に示すUV照射工程を加熱工程に変更する必要がある。なお、以下には、UV光によって粘着性を低下させる場合を例に説明する。
次に、透明基板20とIRカットコーティング21とを切断装置23にて所定の形状に切断し、個片透明基板25を形成する(S15:透明基板切断工程)。ここで、切断装置23としては、ダイサー、スライサー、ワイヤーソー、レーザー等を用いることができる。また、このときの切り込み深さは、透明基板が完全に切断される深さで、かつ粘着部材27を完全に切断されてしまわないような深さに設定する。その結果、サポート部材22の板材は切断されず再利用することが可能となる。また、この切断における所定の形状とは、パターンニングされたシール剤13の外周と同等の大きさを有するものである。
前述のように、本実施形態では、IRカットコーティング工程(S13)において、透明基板20と同形状のIRカットコーティングを、透明基板20に形成している。このため、透明基板切断工程(S15)では、IRカットコーティング21を形成した透明基板20を切断することによって、IRカットコーティング21が形成された個片透明基板25を形成することができる。従って、個片透明基板25の各々に、IRカットコーティング21を形成するよりも、簡便にIRカットコーティング21が形成された個片透明基板25を形成することができる。しかも、透明基板20に、一括してIRカットコーティング21を形成するため、処理スピードの向上、および、歩留まりの向上を実現できる。
次に、透明基板切断工程(S15)により生じたカレットやパーティクルを除去するために、透明基板20を洗浄する(S16:透明基板洗浄工程)。そして、サポート部材22のIRカットコーティング21配置面とは反対側の面に、サポートテープ24を貼りつける(S17:サポートテープ貼付工程)。このようにして、透明基板加工の工程は終了する。なお、サポートテープ24に貼り付けられた透明基板20と同一面には、金属製の枠体であるサポートリング26が設けられている。加工された透明基板20は、サポートリング26の内部に配置される。
なお、このサポートテープ24は、後に行われる貼り合わせ工程が60〜120℃程度の雰囲気中で行われることから、その雰囲気温度に耐えられる材料を用いる。この材料としては、PE(Poly Ethylene)、PP(Poly Propylene)、PET(Poly Ethylene Terephthalate)が例示できるが、温度や外的要因を考慮すればPETが最も好適である。また、上記したサポートテープ24は金属製の枠体であるサポートリング26の内側に固定された状態となっている。サポートテープ24の表面には、サポート部材22と透明基板20とを接着するために説明した材料と同様の材料を用いることもできる。以下ではUV照射により粘着力が低下する材料を例に説明を行う。
(固体撮像素子を有する基板と透明基板との貼り合わせ工程)
次に、ウェハ10(固体撮像素子を有する基板)と透明基板20との貼り合わせ工程(ウエハ−透明基板貼り合わせ工程)等を含むモジュール化工程の説明に移る。図8(a)および図8(b)は、詳細にモジュール化工程を示した図である。図8(a)は、図5のモジュール化工程のフローチャートであり、図8(b)は図8(a)の各工程における主な断面図である。
まず、ウエハ10と透明基板20とを位置合わせして対向させる。このとき、透明基板20のIRカットコーティング21配置面と、ウェハ10の固体撮像素子11配置面とを対向させるとともに、パターンニングされている各シール剤13に、各個片透明基板25が適切に配置されるように位置合わせする(S21:ウエハ−透明基板貼合わせ工程)。この工程では、この位置合わせを高精度に行うことが望ましい。このため、例えば、透明基板20のマーキングと、ウェハ10のマーキングとが合うように、顕微鏡を用いて位置を調整する。これにより、ウエハ10と透明基板20とを高精度に位置合わせして、貼付けることが可能となる。この工程の条件(雰囲気の条件)は、100〜300Paの略真空状態、温度60〜120℃のもと、0.05〜0.5Mpaの圧力を1〜600秒間圧着させて、ウエハ10と透明基板20とを貼付する(S21に含まれる)。本発明は、特に、ウェハ透明基板貼合わせ工程に関するものであり、その詳細は、後述する。
ここで、ウエハ−透明基板貼合わせ工程では、サポートテープ24によって、サポートリング26とサポート部材22とが保持される。このため、サポートリング26とサポート部材22との間のサポートテープ24に伸びが発生し、撓みが発生する。その結果、透明基板20にも撓みが発生し、平行に保持されなくなる。このため、透明基板20の撓みが減少するように、透明基板20が保持されることが好ましい。特に、S21において、ウェハ10(固体撮像素子を有する基板)と透明基板20とを対向させる際には、サポート部材22により、透明基板20は鉛直下向きに保持される。このとき、サポート部材22は、透明基板20が撓まないように(撓みが減少するように)、透明基板20を保持することが好ましい。ここで、「撓み」は実質的に、透明基板20に撓みが生じない程度であればよく、例えば、ウエハ10と透明基板20とを対向させている領域全面に亘っての撓みが、0.1mm以下であることが好ましい。このように、透明基板20を実質的に撓まないように保持すれば、透明基板20の平行度が維持される。このため、サポート部材22によって、透明基板20(透明基板20およびIRカットコーティング21)を、安定して保持できる。さらに、平行度が維持されていれば、ウェハ10全域にわたって、透明基板20とウェハ10との高さ方向(Z方向)の位置合わせを、高精度に行うことができる。つまり、透明基板20とウェハ10との積層方向に、高精度な位置合わせを実現できる。
その後、UV照射を行って、粘着部材27の粘着力を弱くした後、サポートテープ24をサポートリング26とともに剥離し(S22−1:サポートテープ剥離工程)、透明基板20のIRカットコーティング21から粘着部材27を剥離する(S22−2:透明基板・粘着部材剥離工程)。
次に、凡そ120〜170℃の温度で40〜80分間加熱保持してシール剤13を硬化する(S23:シール剤キュア工程)。この結果、固体撮像素子11は、通気孔を除いて周囲がシール剤13によって囲まれた状態になり、対向する面には個片透明基板25が配置された状態となる。
次に、透明基板20の裏面(固体撮像素子11等の形成面と反対の面)に、ダイシングシート31を貼付ける。そして、切断装置32を用いて、ウェハ10のチップ分離領域に沿ってダイシング処理を行い、それぞれ個々のチップに分離する(S25:ウエハダイシング工程)。この切断装置32としては、ダイサーを用いる。図8(c)は、ウェハ10をダイシングした状態の上面図を模式的に示したものである。
そして、配線やチップの端子12と接続する端子を予め施したプリント基板33に、各チップをボンディングし固定する(S26:ダイボンド工程)。その後、プリント基板33側の端子とチップ側の端子12とをワイヤ34にて接続し(S27:ワイヤボンド工程)、チップとプリント基板33とが適切に動作するように導通させる。
さらにその後、プリント基板33側の端子の外側にモジュール筐体35を取り付ける。このモジュール筐体35は、レンズ36を保持しているレンズ筐体37を支える機能を有しており、レンズ36と、透明基板20のIRカットコーティング21配置面とが所定の距離を有して対向した状態に保持される(S28:モジュール組立工程)。そして、プリント基板33を各固体撮像素子モジュール毎に分割して、個々の固体撮像素子モジュールを得る。
上記したように、この製造方法では、透明基板20とウェハ10との貼り合わせ工程より前に、透明基板20を個片状(個片透明基板25)としている。つまり、透明基板20とウェハ10とを同時に切断しないので、切断が容易である。また、ウェハ単位で透明基板20を一括して、ウェハ10に貼り付けるものであるので、製造効率を良好にすることが可能である。
また、透明基板20とサポート部材22との貼付け等、透明基板20やウェハ10と一時的に貼り合わされた後に剥される部材の粘着剤に、UV照射或いは温度が所定値以上になった際に粘着力が低下する材料を用いることにより、一連の工程中で容易に剥すことが可能となるため貼付にともなう不良が発生し難い。
また、この製造方法では、透明基板20が、サポートテープ24により粘着保持される。このため、透明基板20とウェハ10とを同サイズに設定することができる。なお、サポートテープ24は、透明基板20およびウェハ10のうち、対向面が鉛直下向きになる方を、粘着保持することが好ましい。
(3)本発明の固体撮像装置の製造方法・製造装置
本発明の固体撮像装置の製造装置は、ウェハ透明基板貼付け工程(S21)を行うのに、好適である。前述のように、この工程では、ウェハ10と透明基板20とを、ウェハ10上に形成されたシール剤13によって貼付ける。
図1は、本実施形態の固体撮像装置の製造装置における貼付部40を示す概略断面図である。本実施形態の貼付部40は、真空に保持されたチャンバ41内に、1対の対向するステージ(上ステージ42・下ステージ43)を備えている。
上下ステージ42・43の一方は、ウェハ10を、他方は透明基板20をそれぞれ保持する。本実施形態では、上ステージ42が、透明基板20を、下ステージ43が、ウェハ10を保持する。
上ステージ42は、チャンバ41の頂部に固定されている。また、上ステージ42は、チャンバ41の外部から、上ステージ42の透明基板20の保持面に貫通した平行調整用ピン44を備えている。
平行調整用ピン44は、上ステージ42と下ステージ43との平行度を調整するためのものである。平行調整用ピン44は、上ステージ42が透明基板20を保持する領域よりも外側に設けられている。平行調整用ピン44は、平行調整用ピン44に対向する下ステージ43との接触によって、上ステージ42と下ステージ43との平行度を調整する。上ステージ42と下ステージ43との平行度調整については、後述する。
平行調整用ピン44の先端部は、上ステージ42の透明基板20を保持する面から、下ステージ43方向に、突出可能となっている。この保持面から突出した平行調整用ピン44の突出部44aの長さ(突出長さ)は、チャンバ41の外部に設けられたピン調整シリンダ45によって、変更できる。ピン調整シリンダ45は、平行調整用ピン44の突出長さを調節するための荷重を付与する荷重部である。従って、平行調整用ピン44は、ピン調整シリンダ45による圧力に応じて、上ステージ42の透明基板20保持面から、平行調整用ピン44の先端部を突出させることもできるし、突出させないようにすることもできる。
平行調整用ピン44は、少なくとも2本あれば、上ステージ42と下ステージ43との平行度の調整が可能である。しかし、平行調整用ピン44が3本以上であれば、上ステージ42と下ステージ43とを、確実に平行に調整することができる。このため、平行調整用ピン44は、3本以上であることが好ましい。
なお、上ステージ42は、図示しないヒータを内蔵しており、透明基板20を、ベーキングすることができるようになっている。
一方、ウェハ10を保持する下ステージ43は、可動式となっている。下ステージ43は、球体47を介して、チャンバ41の外部に設けられた昇降シリンダ46と連結されている。これにより、下ステージ43は、昇降動作(上下動)が可能となる。つまり、昇降シリンダ46は、下ステージ43の高さを調節するための荷重を付与する荷重部である。従って、下ステージ43は、昇降シリンダ46の圧力に応じて、上ステージ42との距離を変えることができる。さらに、下ステージ43は、昇降動作に加えて、球体47を中心に傾斜させることも可能となっている。すなわち、本実施形態では、下ステージ43のウェハ10保持面が、水平面に対して、傾斜可能となっている。
ここで、貼付部40を用いた固体撮像装置の製造方法について説明する。なお、以下では、特に、上ステージ42と下ステージ43との平行度調整を重点的に説明する。
貼付部40は、平行調整用ピン44によって上下ステージ42・43の平行を保つことにより、ウェハ10と透明基板20とを、平行かつ均一に貼付けることが可能とする。図2(a)〜図2(d)は、貼付部40を用いた貼付動作(貼付工程)を示す断面図である。図2(a)〜図2(d)では、複数の固体撮像素子を有するウェハ10の全面に、1枚の透明基板20(キャップガラス)を、一括して貼付ける。
図2(a)に示すように、上ステージ42に透明基板20を、下ステージ43にウェハ10をそれぞれ保持させる。図2(a)は、下ステージ43が、上ステージ42に対して、傾斜した状態を示している。
具体的には、まず、下ステージ43に、例えば、透明基板20を載置する。そして、透明基板20を位置合わせした後、透明基板20を下ステージ43に真空吸着させる。次に、昇降シリンダ46により下ステージ43を上昇させて、透明基板20を上ステージ42に受け渡す。上ステージ42は、真空吸着によって、透明基板20を保持する。そして、下ステージ43に、ウェハ10を載置した後、位置合わせをする。その後、下ステージ43は、真空吸着によって、ウェハ10を保持する。ここでは、上下ステージ42・43の周囲を100Paから500Paの真空状態とする。
次に、図2(b)に示すように、昇降シリンダ46により、下ステージ43を上昇させる。ここで、上ステージ42に設けられた平行調整用ピン44は、透明基板20よりも、ウェハ10側(下ステージ43側)に突出している。この突出した平行調整用ピン44と下ステージ43とが接触するまで、下ステージ43を上昇させる。このとき、ピン調整シリンダ45の圧力は、昇降シリンダ46の圧力よりも大きく設定する。前述のように、平行調整用ピン44は、透明基板20よりも、下ステージ43の方へ突出している。このため、平行調整用ピン44と下ステージ43との接触時には、ウェハ10と透明基板20とは接触しない。本実施形態では、上ステージ42と下ステージ43との平行度の調整後にウエハ10と透明基板20とを貼付ける。
続いて、全てのピン調整シリンダ45が、同じ圧力となるように設定する。これにより、平行調整用ピン44の下ステージ43方向への突出長さも、同じになる。従って、全ての平行調整用ピン44と、下ステージ43とが接触した時点で、上ステージ42と下ステージ43とが平行となる。なお、ここでは、平行調整時に、平行調整用ピン44の先端部が、上ステージ42に保持された透明基板20を越えて、下ステージ43方向へ突出するようになっている。
ここで、上ステージ42と下ステージ43とが、平行でない場合は、下ステージ43は、上ステージ42に対して斜めに上昇する。このため、下ステージ43を上昇させると、一部の平行調整用ピン44にしか接触しない。しかし、下ステージ43は、球体47を介して昇降シリンダ46に接続されているため、傾けることができる。このため、下ステージ43が一部の平行調整用ピン44にのみ接触した場合、残りの平行調整用ピン44にも接触するまで、下ステージ43を傾斜させる。これにより、全ての平行調整用ピン44と下ステージ43とが接触し、上ステージ42と下ステージ43とが平行となる。このように、下ステージ43と平行調整用ピン44との接触によって、上ステージ42と下ステージ43との平行度を調整することができる。
次に、図2(c)に示すように、図2(b)で調整した平行度を維持して、ウェハ10と透明基板20とが接触するまで、下ステージ43を上昇させる。より詳細には、ピン調整シリンダ45の圧力を、昇降シリンダ46の圧力よりも小さく設定する。これにより、平行調整用ピン44の突出長さが、徐々に短くなる一方、上ステージ42と下ステージ43との距離が縮まる。従って、ピン調整シリンダ45によって平行度を維持しつつ、昇降シリンダ46によって、下ステージ43を上昇させることができる。このように、図2(c)では、ピン調整シリンダ45と昇降シリンダ46との圧力差を利用して、上ステージ42と下ステージ43とを平行に保って、ウェハ10と透明基板20とを接触させることができる。より詳細には、ウェハ10上の接着部(シール剤13)と透明基板20とを接触させることができる。なお、ピン調整シリンダ45に圧力をかけず、昇降シリンダ46だけに圧力をかけても、充分に図2(c)の工程は可能である。
ウェハ10と透明基板20とが接触すれば、図2(d)に示すように、ピン調整シリンダ45の圧力を取り除き、平行調整用ピン44と下ステージ43とを非接触状態とする。そして、昇降シリンダ46に、ウェハ10と透明基板20とを貼付けるための圧力(最終貼付圧力;貼付荷重)を加える。さらに、上ステージ42に内蔵されたヒータによって上ステージ42を介して、透明基板20を加熱する。これにより、透明基板20の熱が、ウェハ10上の接着部に伝導することによって、ウェハ10と透明基板20との貼付けることができる。なお、ヒータによる加熱温度は、ウェハ10上の接着部の材料によって設定すればよい。例えば、加熱温度は、60℃〜150℃とすれば、熱によって固体撮像素子が破損することはない。
このように、本実施形態の固体撮像装置の製造方法では、平行調整用ピン44によって、上ステージ42と下ステージ43との平行度を調整することによって、ウェハ10と透明基板20とを、高い精度で、平行に貼付けることができる。
なお、図2(a)〜図2(d)における、ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46の圧力は、例えば、以下のように設定することができる。ウェハ10と透明基板20とを貼付ける圧力(最終貼付圧力)に、3000N必要であるとした場合、図2(a)の初期状態では、ピン調整シリンダ45に、例えば、合計2000〜2500Nの圧力を加える。これにより、平行調整用ピン44は下降し、透明基板20よりも下ステージ43方向に突出する。図2(b)の平行調整時には、ピン調整シリンダ45に、図2(a)の時と同じ、合計2000〜2500Nの圧力を加え、平行調整用ピン44の突出を維持する。同時に、昇降シリンダ46に、1500N〜2000Nの圧力を加え、下ステージ43を上昇させる。このように、図2(b)の平行調整時には、昇降シリンダ46の圧力は、ピン調整シリンダの圧力以下とする。これにより、図2(b)の平行調整時には、下ステージ43が平行調整用ピン44に接触すると、それ以上、下ステージ43は上昇しない。この結果、下ステージ43が平行調整用ピン44に接触したところで、下ステージ43の平行が、平行調整用ピン44と同じレベルに調整される。このように、図2(b)の平行調整時に、昇降シリンダ46の圧力を、ピン調整シリンダの圧力以下とすれば、ウェハ10と透明基板20とが非接触状態で、上ステージ42と下ステージ43との平行度を調整することができる。
図2(b)の平行調整後は、ピン調整シリンダ45の圧力を解除し、ウェハ10と透明基板20との貼付けに必要な圧力(貼付圧力)である3000Nを、昇降シリンダ46に加えればよい。これにより、図2(b)で調整した平行度を維持して、ウェハ10と透明基板20とを平行に貼付けることができる。
ここで、本実施形態では、固体撮像素子3への衝撃を緩和するため、ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46の圧力は、ウエハ10と透明基板20とを貼付けるための貼付け荷重が、段階的に上昇するように設定されている。具体的には、ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46は、ウエハ10と透明基板20との接触時の初期貼付荷重が、ウエハ10と透明基板20との貼付に必要な最終貼付荷重よりも小さくなるように設定されている。
さらに、本実施形態では、ウェハ10と透明基板20とを、確実かつ高精度に平行に貼付けるために、図2(b)の平行調整後、昇降シリンダ46よりも小さい圧力を、ピン調整シリンダ45に加える。つまり、ピン調整シリンダ45は、ウエハ10と透明基板20との貼付時に、平行調整用ピン44に、貼付方向(下ステージ43が上昇する方向)と反対方向に、最終貼付荷重未満の荷重を加えるようになっている。例えば、図2(b)の平行調整後も、ピン調整シリンダ45の圧力(合計2000〜2500Nの圧力)を維持するとともに、昇降シリンダ46に最終貼付圧力(3000N)を加える。これにより、下ステージ43が、500Nから1000Nの力で、平行調整用ピン44を押し戻しながら上昇する。そして、下ステージ43が上昇し続けると、図2(c)の段階では、ウェハ10のシール剤13と透明基板20とが、最終貼付圧力よりも小さい初期貼付圧力(ここでは、500Nから1000N)で接触する。つまり、ウェハ10と透明基板20とを軽く貼り合わせることができる。その後、図2(d)の段階で、ピン調整シリンダ45の圧力を解除すれば、下ステージ43がさらに上昇する。これにより、ウェハ10と透明基板20とを、最終貼付圧力(3000N)で貼付けることができる。
なお、貼付時間は、貼付状態によって異なるため特に限定されるものではない。例えば、貼付時間を10秒から300秒とすれば、ウェハ10と透明基板20とが仮圧着される。また、貼付圧力も特に限定されるものではなく、例えば、0.8MPaから2MPaの範囲で設定することができる。ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46に、設定した貼付圧力に必要な貼付荷重(押付け力)は、各シリンダの接着面積、および、各シリンダのボア径から算出する。そして、算出した圧力を、例えばロードセルにて検出し、各シリンダのエア圧力を制御する。
このように、初期貼付圧力と初期貼付荷重、および、最終貼付圧力と最終貼付荷重は、それぞれ、各シリンダの面積・内径、平行調整用ピン44の設置数、上ステージ42および下ステージ43の自重などから、換算することができる。
例えば、図2(a)〜図2(d)を用いて、貼付荷重用の昇降シリンダ46および平行調整のピン調整シリンダ45の圧力設定の一例を説明する。この例では、ボア径50mm・シリンダ面積20cm2のピン調整シリンダ45を3本、ボア径100mm・シリンダ面積78.5cm2の昇降シリンダ46、自重55kgの下ステージ43、初期貼付荷重を100kg、最終貼付荷重を400kgの場合の、ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46の圧力設定法について説明する。ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46は、最終貼付圧力(図2(d)時の圧力)から逆算する。すなわち、貼付荷重は、下記式(1)から算出できる。
貼付け荷重(kg)=
昇降シリンダ46の面積(cm2)×エア圧力(kg/cm2)−下ステージ43の自重(kg)・・・(1)
ここで、図2(d)の段階では、前述のように、昇降シリンダ46のみに圧力を加える。すなわち、貼付荷重として最終貼付荷重の400kgを、昇降シリンダ46の面積として78.5cm2、下ステージ43の自重として55kgを、それぞれ代入する。その結果、最終貼付荷重に必要なエア圧力(昇降シリンダ46に必要な圧力)は、5.8(kg/cm2)となる((400+55)/78.5)。
次に、図2(c)の段階では、前述のように、ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46に圧力を加える。初期貼付荷重は、下記式(2)から算出できる。
初期貼付荷重(kg)=
昇降シリンダ46の荷重(kg)−ピン調整シリンダ45の荷重(kg)・・・(2)
ここで、図2(c)では、昇降シリンダ46の荷重を最終貼付荷重としているため、400を、初期貼付荷重には100をそれぞれ代入する。その結果、ピン調整シリンダ45の荷重は、300kgとなる。
また、ピン調整シリンダ45の荷重は、下記式(3)から算出できる。
ピン調整シリンダ45の荷重(kg)=
ピン調整シリンダ45の面積(cm2)×設置数×エア圧力(kg/cm2) ・・・(3)
ここでは、シリンダ面積20cm2のピン調整シリンダ45を3本用いており、(2)式から、ピン調整シリンダ45の荷重は300kgであるので、それぞれ代入する。その結果、図2(c)において、1本のピン調整シリンダ45に必要な圧力は、5(kg/cm2)となる。
最後に、図2(b)の平行調整時には、昇降シリンダ46の荷重を、ピン調整シリンダ45よりも低く設定する。例えば、前述した図2(c)のピン調整シリンダ45の荷重(300kg)の半分(150kg)に設定する。
このように、各シリンダの圧力は、最終貼付圧力から、逆算して設定することができる。
以上のように、本実施形態によれば、平行調整用ピン44によって、上ステージ42と下ステージ43とを平行に保つことができる。このため、上下ステージ42・43に保持されたウェハ10と透明基板20とが均一に接触する。つまり、ウェハ10と透明基板20とが、傾斜して接触しない。このため、ウェハ10と透明基板20とを貼り付けるための接着剤(ここでは、ウェハ10に形成された凸部6)に、潰れが生じない。従って、ウエハ10と透明基板20とを平行に貼付けることができる。
また、本実施形態では、上ステージ42と下ステージ43との平行度の調整後、ウエハ10と透明基板20とを貼付ける。これにより、平行度の調整時に、固体撮像素子3に加わる衝撃を軽減することができる。従って、衝撃から固体撮像素子3を保護することができる。
また、本実施形態では、3本以上の平行調整用ピン44を用いているため、上ステージ42と下ステージ43とを確実に平行にすることができる。
また、本実施形態では、平行調整用ピン44が、上ステージ42から下ステージ43の方向に突出する長さ(突出長さ)を自在に設定できるようになっている。そして、平行調整時に、平行調整用ピン44は、上ステージ42に保持される透明基板20よりも、上ステージ42方向に、突出している。このため、平行調整時には、ウエハ10と透明基板20とが接触しない。これにより、平行度の調整時に、固体撮像素子3に加わる衝撃を軽減することができる。
また、本実施形態では、ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46の荷重量を変化させることによって、下ステージ43の高さ調整および平行調整用ピン44の突出長さ調整が可能となっている。なお、本実施形態では、下ステージ43の高さおよび平行調整用ピン44の突出長さのいずれも調節している。しかし、この調節は、これに限定されるものではなく、貼付部40の構成に応じて、上ステージ42および下ステージ43の少なくとも一方の高さ、および、平行調整用ピン44の突出長さの少なくとも一方を調節すればよい。
また、本実施形態では、ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46の圧力は、ウエハ10と透明基板20とを貼付けるための貼付け荷重が、段階的に上昇するように設定されている。このため、ウエハ10と透明基板20との接触時の荷重が、小さくなる。特に、本実施形態では、ピン調整シリンダ45および昇降シリンダ46は、ウエハ10と透明基板20との接触時の初期貼付荷重が、ウエハ10と透明基板20との貼付に必要な最終貼付荷重よりも小さくなるように設定されている。従って、ウエハ10と透明基板20との接触時に、固体撮像素子3が受ける衝撃を、軽減することができる。
また、本実施形態では、ピン調整シリンダ45は、ウエハ10と透明基板20との貼付時に、平行調整用ピン44に、貼付方向と反対方向に、最終貼付荷重未満の荷重を加えるようになっている。これにより、平行調整用ピン44によって、抵抗を与えながら、ウエハ10と透明基板20とを貼付けることができる。従って、ウエハ10と透明基板20との接触時に、固体撮像素子3が受ける衝撃を、軽減することができる。
また、本実施形態では、平行調整用ピン44の突出長さ、および、下ステージ43の高さを調節するために、エアシリンダを用いている。このため、それらの調節の際に、ゴミなどが発生しないクリーンな環境を作り出すことができる。従って、固体撮像素子3へのゴミなどの侵入を確実に防ぎ、固体撮像装置を製造することができる。また、エアシリンダを用いれば、貼付荷重の制御が容易になる。
なお、エアシリンダ以外にも、例えば、オイルシリンダ(油圧式シリンダ),スプリング,加重物(おもり)などを用いることもできる。オイルシリンダを用いれば、高圧力を簡単に印加できる。
また、本実施形態では、下ステージ43のウェハ10保持面が、水平面に対して、傾斜可能となっている。これにより、上ステージ42および下ステージ43nステージ同士の角度を、自在に変更することができる。従って、貼付動作の繰り返しによって、一方のステージの位置がずれたとしても、他方のステージを傾斜させることによって、互いのステージを平行にすることができる。従って、固体撮像素子を有する基板と封止基板とを、確実に平行に貼付けることができる。
なお、下ステージ43だけに限らず、上ステージ42だけ、または、上ステージ42および下ステージ43の両方が、このように傾斜可能となっていてもよい。
また、本実施形態では、上ステージ42が固定されており、下ステージ43が可動式となっている。製造装置内にダストが発生したとすると、そのダストは重力方向に落下する。本実施形態では、上ステージが固定されているため、落下するダストの上ステージ42への付着を防ぐことができる。
また、本実施形態では、固定された上ステージ42にピン調整シリンダ45が設けられ、可動式の下ステージ43に昇降シリンダ46が設けられている。つまり、平行調整用ピン44を駆動するためのピン調整シリンダ45、および、下ステージ43ステージを駆動するための昇降シリンダ46が、それぞれ別々のステージに設けられている。
上ステージ42および下ステージ43の一方に、昇降シリンダ46とピン調整シリンダ45とを設けようとすると、それらの配置に制約を受ける場合がある。しかし、本実施形態のように、昇降シリンダ46とピン調整シリンダ45とを別々のステージに設ければ、そのような制約を受けずに、各シリンダを配置することができる。
本実施形態の固体撮像装置の製造装置の用途は、前述の実施形態の用途に限定されるものではなく、貼り付け荷重に精度を要する貼付けに用いる貼付け機(貼付装置)の加圧機構としても適用可能である。例えば、複数枚の支持基板又はガラス基板の貼付け,ウェハ状の基板と複数の個片状の基板との貼付け,ガラスやテープによりサポートされた複数の基板の貼付なども、均一に行うことが可能となる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。