JP2008063507A - ポリ乳酸系延伸テープ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムからなることを特徴とする一軸延伸テープに関する。
【選択図】図3
Description
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の1成分であるポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られる延伸テープの耐熱性が劣る虞がある。
<ポリ−D−乳酸>
本発明に係わるポリ乳酸系組成物層の1成分であるポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られる延伸テープの耐熱性が劣る虞がある。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
本発明のポリ乳酸系延伸テープは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下、好ましくは0.1以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸テープである。
本発明のポリ乳酸系延伸テープは、用途に応じて、他の層を積層させてもよい。他の層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の生分解性ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、あるいはその発泡体、若しくは金属、アルミニウム箔、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂からなるフィルムは無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、他の層は1層でも2層以上としても良い。
本発明の上記特性を有するポリ乳酸系延伸テープを得るには、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物として、以下の熱融解特性を有するポリ乳酸系組成物を用意して、延伸することが好ましい。
さらに、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、そのDSCの第2回昇温時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)において得られたDSC曲線の150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)のピーク比(ピーク10/ピーク20)が好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下であるという熱特性を有することが望ましい。これは、この組成物がステレオコンプレックス晶を選択的に形成しているためと考えられる。
ピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5より大きいと、結晶化後にPLLA、PDLA単体結晶の形成量が大きく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが十分に混練されていない虞がある。
ピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5より大きい組成物は結晶化後のα晶(PLLAあるいはPDLAの単独結晶)の形成量が大きいため、延伸しても耐熱性に劣る虞がある。
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCの第2回昇温時における205〜240℃の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が35J/g以上であることが好ましい。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、前記ポリ乳酸系延伸テープの熱融解特性を求めた方法と同様な方法で、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠して求めた。なお、ポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、降温時と第2回昇温時における特性を求めた。
PLLAの量が上記範囲外の組成物は上述の方法で混練しても、得られる組成物を延伸してなるテープはα晶の結晶体を含み、耐熱性が不十分となる虞がある。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物が耐熱性に優れるのは、当該組成物がステレオコンプレックス構造を形成しており、ステレオコンプレックス構造はPLLAとPDLAの等量から構成されるためであると考えられる。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物を得るために、PLLAとPDLAを溶融混練するときの温度は、好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
本発明のポリ乳酸系延伸テープは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物を用いて、押出成形して得られるシートを、好ましくは5倍以上、より好ましくは6〜12倍延伸することにより、耐熱性、透明性に優れる延伸テープが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとテープが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
(1)ポリ乳酸
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA―1):
D体量:1.9% Mw:22.2万(g/モル)、Tm:163℃。
(ロ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―1):
D体量:100.0% Mw:135万(g/モル)、Tm:180℃、インヘレント粘度(溶媒;クロロホルム、測定温度;25℃、濃度;0.1g/dl):7.04(dl/g)。
(2)重量平均分子量(Mw)
(イ)、(ロ)のポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸は以下の方法で測定した。
測定装置;Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置;データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器;示差屈折検出器(RI)
カラム;Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度;40℃
溶離液;クロロホルム
流速;1.0ml/分
注入量;200μL
分子量校正;単分散ポリスチレン
(3)DSC測定
前記記載の方法で測定した。
(4)広角X線測定
測定装置:X線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200)
反射法
X線ターゲット;Cu K―α
出力;40kV×40mA
回転角;4.0度/分
ステップ;0.02度
走査範囲;10〜30度
(5)引張り試験
ポリ乳酸系延伸テープ(長さ:50mm、幅:2mm)を、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、チャック間距離:20mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。
実施例1
<ポリ乳酸系組成物およびポリ乳酸系一軸延伸テープの製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量部)の比で計量し、二軸混練押出機を用い、溶融温度;250℃、回転速度:420rpm、混練時間;6分で、溶融混練してポリ乳酸系組成物を得た後、T−ダイシート成形機で、厚さ約300μmのポリ乳酸系未延伸テープを得た。
かかる未延伸テープのポリ乳酸系組成物の熱融解特性を前記記載の方法で測定した。
次に、当該シートをMD方向に5mm幅、120mm長切り出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、雰囲気温度:70℃でチャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:1000mm/分で6倍に一軸延伸し、幅2mm、長さ600mm、厚さ約120μmの一軸延伸テープを得た。
更に、得られた一軸延伸テープを金枠にクリップで固定し、200℃×15分の条件でヒートセット(熱処理)した後、室温で十分冷やしてポリ乳酸系一軸延伸テープを得た。
表1から明らかなように、実施例1で得られたポリ乳酸系組成物からなるポリ乳酸系一軸延伸テープは、熱融解特性において、150〜200℃の範囲の吸熱ピークは僅かで、205〜240℃の範囲の吸熱ピークは大きく、吸熱量(ΔHm)も47.4J/gと多く、降温した際の発熱量(ΔHc)も28.6J/gある。
また、ポリ乳酸系一軸延伸テープの素材となるポリ乳酸系組成物(シート)の熱融解特性は、第1回降温時の発熱量(ΔHc)が20.3J/gと20J/g以上である。第2回昇温時には、150〜200℃の範囲には吸熱ピークはみられず、205〜240℃の範囲の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)は51.0J/gと35J/g以上である。
本発明のポリ乳酸系一軸延伸テープは、従来のポリ乳酸にはない耐熱性を有するため、製造工程や使用の際に加熱される用途に特に好適であり、アイロンがかけられる用途にも
利用できる。さらに、ポリ乳酸からなるため最終的には微生物を介して生分解されるものである。
Claims (10)
- ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸テープ。
- 205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系延伸テープ。
- DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量が40J/g以上である請求項1または2に記載のポリ乳酸系延伸テープ。
- 広角X線測定における2θが12度、21度および24度近辺のピーク面積の総和(SSC)が全体の面積に対して20%以上であり、かつ2θが17度および19度近辺のピーク面積の総和(SPL)が全体の面積に対して5%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸テープ。
- DSC測定において、250℃で10分間経過後に降温した際の発熱量が20J/g以上のポリ乳酸系組成物を延伸してなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸テープ。
- DSC測定において、第2回昇温時における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)とのピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5以下のポリ乳酸系組成物を延伸してなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸テープ。
- DSC測定において、第2回昇温時における205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が35J/g以上のポリ乳酸系組成物を延伸してなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸テープ。
- ポリ乳酸系組成物が、ポリ−L−乳酸75〜25重量部及びポリ−D−乳酸25〜75重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部)からなる請求項1に記載のポリ乳酸系延伸テープ。
- 少なくとも5倍延伸されてなる請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸テープ。
- 140〜220℃で1秒以上熱処理してなる請求項1〜10のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸テープ。
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