JP2008057030A - Di缶 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%が Si:0.1〜0.5%,Fe:0.3〜0.7%,Cu:0.05〜0.5%,Mn:0.5〜1.5%,Mg:0.4〜2.0%,Cr:0〜0.1%,Zn:0〜0.5%,Ti:0〜0.15%を含有し残部が不可避的不純物を含むアルミニウムからなるアルミニウム合金の板材に絞りしごき加工を施して形成された有底筒状のDI缶10であって、その胴部は、最薄部の肉厚が0.105mm以上0.125mm以下とされるとともに、引張強度と0.2%耐力との差が27.5MPa以上とされていることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
DI缶を製造する場合の材料及び製造方法に関して、DI缶には、例えば、引張強度等の耐圧強度に係る材料強度とピンホール特性が製品特性として要求され、缶体胴部のしごき易さを表す特性(以下、DI成形性という。)とDI缶のネック部の成形し易さを表す特性(以下、ネック成形性という。)がDI缶を容易に製造するための特性として要求され、これらの特性が相互に密接に関連して他の特性の阻害要因となっていることを突き止めた。
このように、加工硬化に関して、耐圧強度とピンホール特性とは相反する特性であるといえ、材料強度自体が増加することは、DI加工性、ネック加工性といった成形性を低下させることになる。
また、耐圧強度を向上させるために材料強度を高くさせ、又は加工硬化を進行させることは、ネック成形性を低下させる結果となる。
以上、得られた知見から、引張強度等の材料強度や材料の加工硬化に基づく耐圧強度とピンホール特性、DI成形性とネック成形性といった、材料特性と成形方法に関してDI缶に要求される特性を、従来の製造技術にとらわれることなく抜本的に見直すことにより画期的な改善を行うこととした。
また、前記アルミニウム合金は、質量%が、Mg:0.4〜1.5%,Cr:0.001〜0.10%,Zn:0.05〜0.30%,Ti:0.05〜0.10%とされていることがより好ましい。
以上より、現行の製造設備をそのまま用いることが可能になるとともに、缶重量を現行同等に維持することが可能になり、製造コストを増大させることなくピンホールの発生を防ぐことができる。
ここで、最終圧下率とは、図3のフロー図に示したように、中間板材(焼鈍を挟むことなく最後に施される冷間圧延の前における板材)の厚さt1と、最終板材(前述の冷間圧延の後における板材)の厚さ(最終板厚)tfとにより、
最終圧下率=((t1−tf)/t1)×100(%)
で算出され、
例えば、図3(A)のように熱間圧延(H)後に、中間焼鈍(IA)と最終の冷間圧延(CF)を施す場合には、熱間圧延(H)が施された段階、すなわち冷間圧延(C1)前の板の厚さがt1とされ、最終の冷間圧延(CF)が終了した段階の板の厚さがtfとされる。この場合、熱間圧延(H)の終了直後の温度が充分高く、中間焼鈍を行わなくとも自然に再結晶が生じる場合には、中間焼鈍を省略する場合もある。また、例えば、図3(B)のように熱間圧延(H)後に、冷間圧延(C1)と焼鈍が施される場合には、最終的に中間焼鈍(IA)が行なわれた段階の板の厚みをt1とし、最終の冷間圧延(CF)が終了した段階の板の厚さtfとされる。この場合、図3(B)において2点鎖線で示したフローが、複数回、例えば、4〜5回行なわれる場合もあるが、その回数には依存しない。
すなわち、最終圧下率80%以下の冷間仕上げ圧延による加工は、加工限度よりも低い加工度合いとされ、このように形成された板材に絞りしごき加工(以下、「DI加工」という)を施しても加工限度を越えることがない。したがって、前述した作用効果のうち、胴部において、加工限度に到達するまでのひずみ量を増大させるのを確実に実現することができる。
また、最終圧下率45%以上の冷間仕上圧延による加工によって形成された板材にDI加工を施すことで、DI加工における加工硬化によって十分な強度とすることができる。
したがって、例えば先鋭体が胴部に衝突した際、即座にこの胴部が破断するのを防ぐことができる。
この板材Wは、JIS3004(AA3004)またはJIS3104(AA3104)などのAl合金の鋳塊に熱間圧延、冷間圧延および焼鈍を施して所定板厚の中間板材が形成された後に、該中間板材に最終圧下率45%〜80%の冷間仕上げ圧延を施すことにより最終板厚(0.24mm以上0.28mm以下)に形成されている。
まず、板材Wを打ち抜いて円板状の板材(ブランク)Wを成形する。
次に、この板材Wをカッピングプレスによって絞り加工することによりカップ状体W1に成形する。
再絞りしごき加工に用いるDI加工装置は、再絞り加工するための円形の貫通孔を有する一枚の再絞りダイと、この再絞りダイと同軸に配列される円形の貫通孔を有する複数枚(例えば、3枚)のアイアニング・ダイ(しごきダイ)と、アイアニング・ダイと同軸とされ、上記それぞれのアイアニング・ダイの各貫通孔の内部に嵌合可能とされ、軸方向に移動自在とされる円筒状のパンチスリーブと、このパンチスリーブの外側に嵌合された円筒状のカップホルダースリーブとを備えている。
この有底筒状体W2は、側壁がしごかれることで冷間加工硬化されて強度が高くなる。
DI加工装置によって形成された有底筒状体W2の開口端部W2aは、その缶軸方向に波打つような凹凸形状とされ不均一であるため、有底筒状体W2の開口端部W2aを切断してトリミングすることにより缶軸方向における側壁の高さを全周に亙って均一にする。このようにして、胴部11と底部12とを有する横断面円形のDI缶10を形成される。
外面塗装は、例えば、ポリエステル系塗料を使用して、DI缶の胴部の外面に印刷、塗装をし、この外面印刷及び外面塗装がされたDI缶を180℃×30秒間以上加熱して行ない、内面塗装は、外面に塗装が施されたDI缶の内面に、例えば、エポキシ系塗料を使用して内面塗装し、200℃×60秒間以上加熱することにより行なう。
ネッキング加工をする場合、例えば、開口端部の外側に同心に配置された円環状のネッキングダイに対して、開口端部側をDI缶10の軸線方向に複数回にわたって押し当てることにより、DI缶10の開口端部を順次縮径して、ネック部13を形成する。
また、カップ状体W1に施される再絞りしごき加工は、有底筒状体W2に形成されたときのしごき率が51.4%以上60.4%以下となるように設定されている。
また、底部12は、図2に示すように、胴部11の缶軸方向における内側に向けて凹むドーム部12aを備えるとともに、このドーム部12aの外周縁部が胴部11の缶軸方向における外側に向けて突出する環状凸部12cとされている。この環状凸部12cの缶軸方向における頂部が、DI缶10が正立姿勢となるように、このDI缶10を接地面L上に配置したときに接地面Lに接する接地部12bとされる。
しごき率=(板材Wの厚さ−胴部11の厚さ)/板材Wの厚さ×100(%)
で算出される。
胴部11の厚さとは、胴部11の最薄部、例えば接地部12bから缶軸方向上方に60mm離れた部分における胴部11の肉厚とされる。そして、この胴部11の厚さは0.105mm以上0.125mm以下とされる。
また、Crを添加する場合には、所望の効果を得るためには、Cr含有量を0.001%以上とし、脆くなり加工性が劣化するのを抑制するためにCr含有量を0.10%以下とすることが好ましい。従って、Crを添加する場合には、Crの含有量を0.001〜0.10%とする。
チタン(Ti)は結晶粒を微細化し、加工性を改善する効果を発揮する。
Tiを添加する場合には、所望の効果を得るためには、含有量を0.05%以上とし、粗大な化合物が形成されることにより加工性が劣化するのを抑制するためには、含有量が0.10%以下であることが好ましい。従って、Tiの適正な含有量は0.05〜0.10%とする。
以上より、現行の製造装置を部品の交換や再調整しないでそのまま用いることが可能になるとともに、缶重量を現行同等に維持することが可能になり、製造コストを増大させることなくピンホールの発生を防ぐことができる。
また、最終圧下率45%以上の冷間仕上圧延による加工によって形成された板材WにDI加工を施すことで、DI加工における加工硬化によって十分な強度とすることができる。したがって、例えば先鋭体が胴部11に衝突した際、即座に胴部11が破断するのを防ぐことができる。
例えば前記実施形態では、厚さが0.24mm以上0.28mm以下、外径が145mm以上155mm以下とされた円板状の板材Wにしごき率51.4%以上60.4%以下で絞りしごき加工を施すことによりDI缶10を形成したが、前記厚さ、外径、およびしごき率を異ならせてDI缶10を形成するようにしてもよい。また、板材Wを最終圧下率45%〜80%の冷間仕上げ圧延を施すことにより最終板厚として形成したが、このような製造方法に限られるものではない。
第1の検証試験では、アフターベーキング耐力が275MPa〜284MPaのAl合金の板材にDI加工をして用いた。ここで、アフターベーキング耐力とは、Al合金素材の評価方法であり、Al合金の板材を210℃×10分間加熱した後の引張り試験による耐力である(以下、同じ。)。
この検証実験における突き刺し強度の測定には、ポリエステル系塗料を使用して、文字情報等の印刷部分も含め、DI缶の胴部の外面を印刷、塗装し、この外面印刷及び外面塗装がされたDI缶を180℃×30秒間加熱することにより50mg/dm2の塗膜を形成させた後に、DI缶の内面にエポキシ系塗料を使用して内面塗装し、200℃×60秒間加熱することにより40mg/dm2の塗膜を形成させた外面印刷、外面塗装及び内面塗装がされたDI缶に、炭酸水を充填して缶蓋を巻き締めて、缶の内圧を、室温20℃において0.245MPaとしたDI缶を用いた。
また、測定に際して、このDI缶の胴部の缶軸方向に接地部から上方に60mm離れた位置(缶軸方向に缶の略中央の位置)の外面に、曲率半径2.25mmの押圧子を胴部の径方向内方に向かって25mm/minで移動させて、缶の胴部に穴があいたときの押圧力の大きさを測定し、それを突き刺し強度とした。
この結果から、しごき率51.4%以上60.4%以下で上記Al合金からなる板材に絞りしごき加工を施し、胴部11の最薄部における肉厚が0.105mm以上0.125mm以下とされたDI缶10では、その重量を11g〜12g、バルジ強度を0.5MPa以上とそれぞれ現行同等に維持しつつ、突き刺し強度を124N以上と大きくすると、すなわちピンホールの発生を防ぐことが可能になることが確認された。
この第2の検証試験では、実施例、比較例とも、アフターベーキング耐力が275MPa〜284MPaのAl合金を用いた。
実施例では、Si:0.30%、Fe:0.43%、Cu:0.27%、Mn:1.00%、Mg:1.25%、Zn:0.10%のAl合金を使用した。この合金の溶湯を常法により脱ガス、介在物除去を行い、半連続鋳造により厚さ550mm、幅1.5m、長さ4.5mのスラブに鋳造した。ついで、スラブに均熱化処理を施した後、厚さが6.5mmになるまで熱間圧延を施し、その後、冷間圧延を施した。そして、加熱速度100℃/秒、530〜550℃の温度範囲に20秒間保持し、冷却速度100℃/秒なる条件で焼鈍を行い、その後、76%の最終圧下率で冷間仕上圧延加工を施し、最終板厚0.27mmとされた実施例1の板材(製品コイル)を得た。なお、均質化処理はいずれも600℃×6時間とした。
また、実施例4では、最終圧下率を78%とする他は全て実施例1の板材と同様にして形成された板材を打ち抜き、直径が約150mmとされた円板の板材Wを得、この板材Wにしごき率55.0%で胴部11の最薄部における肉厚が0.120mmになるまで絞りしごき加工を施してDI缶を形成した。
この検証試験の引張強度TS、0.2%耐力YSの測定には、図6に示すように、DI缶10の胴部11における圧延方向が、胴部11における缶軸方向と45°で交差するDI缶10の周方向位置で缶軸方向に切り出した試験片を用いた。
この検証実験において、実施例1、2で用いた板材の板厚は0.265mm、実施例3で用いた板材の板厚0.270mm、実施例4で用いた板材の板厚は0.267mm、実施例5で用いた板材の板厚は0.257mmであり、突き刺し強度については、前述の条件と同等の条件で測定した。
11 胴部
W 板材
Claims (3)
- 質量%が Si:0.1〜0.5%,Fe:0.3〜0.7%,Cu:0.05〜0.5%,Mn:0.5〜1.5%,Mg:0.4〜2.0%,Cr:0〜0.1%,Zn:0〜0.5%,Ti:0〜0.15%を含有し残部が不可避的不純物を含むアルミニウムからなるアルミニウム合金の板材に絞りしごき加工を施して形成された有底筒状のDI缶であって、
その胴部は、最薄部の肉厚が0.105mm以上0.125mm以下とされるとともに、引張強度と0.2%耐力との差が27.5MPa以上とされていることを特徴とするDI缶。 - 請求項1記載のDI缶において、
前記アルミニウム合金は、質量%が、Mg:0.4〜1.5%,Cr:0.001〜0.10%,Zn:0.05〜0.30%,Ti:0.05〜0.10%とされていることを特徴とするDI缶。 - 請求項1又は請求項2に記載のDI缶であって、
缶の底部の最厚部の肉厚が、0.24mm以上0.28mm以下とされていることを特徴とするDI缶。
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