JP5111807B2 - Di缶の製造方法 - Google Patents
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DI缶を製造する場合の材料及び製造方法に関して、DI缶には、例えば、引張強度等の耐圧強度に係る材料強度とピンホール特性が製品特性として要求され、缶体胴部のしごき易さを表す特性(以下、DI成形性という。)とDI缶のネック部の成形し易さを表す特性(以下、ネック成形性という。)がDI缶を容易に製造するための特性として要求され、これらの特性が相互に密接に関連して他の特性の阻害要因となっていることを突き止めた。
このように、加工硬化に関して、耐圧強度とピンホール特性とは相反する特性であるといえ、材料強度自体が増加することは、DI加工性、ネック加工性といった成形性を低下させることになる。
また、耐圧強度を向上させるために材料強度を高くさせ、又は加工硬化を進行させることは、ネック成形性を低下させる結果となる。
以上、得られた知見から、引張強度等の材料強度や材料の加工硬化に基づく耐圧強度とピンホール特性、DI成形性とネック成形性といった、材料特性と成形方法に関してDI缶に要求される特性を、従来の製造技術にとらわれることなく抜本的に見直すことにより画期的な改善を行うこととした。
また、前記アルミニウム合金は、質量%が、Mg:0.4〜1.5%,Cr:0.001〜0.10%,Zn:0.05〜0.30%,Ti:0.05〜0.10%とされていることがより好ましい。
以上より、現行の製造設備をそのまま用いることが可能になるとともに、缶重量を現行同等に維持することが可能になり、製造コストを増大させることなくピンホールの発生を防ぐことができる。
ここで、最終圧下率とは、図3のフロー図に示したように、中間板材(焼鈍を挟むことなく最後に施される冷間圧延の前における板材)の厚さt1と、最終板材(前述の冷間圧延の後における板材)の厚さ(最終板厚)tfとにより、
最終圧下率=((t1−tf)/t1)×100(%)
で算出され、
例えば、図3(A)のように熱間圧延(H)後に、中間焼鈍(IA)と最終の冷間圧延(CF)を施す場合には、熱間圧延(H)が施された段階、すなわち冷間圧延(C1)前の板の厚さがt1とされ、最終の冷間圧延(CF)が終了した段階の板の厚さがtfとされる。この場合、熱間圧延(H)の終了直後の温度が充分高く、中間焼鈍を行わなくとも自然に再結晶が生じる場合には、中間焼鈍を省略する場合もある。また、例えば、図3(B)のように熱間圧延(H)後に、冷間圧延(C1)と焼鈍が施される場合には、最終的に中間焼鈍(IA)が行なわれた段階の板の厚みをt1とし、最終の冷間圧延(CF)が終了した段階の板の厚さtfとされる。この場合、図3(B)において2点鎖線で示したフローが、複数回、例えば、4〜5回行なわれる場合もあるが、その回数には依存しない。
この場合、DI缶にピンホールが発生することを確実に防ぐことができる。すなわち、最終圧下率80%以下の冷間仕上げ圧延による加工は、加工限度よりも低い加工度合いとされ、このように形成された板材にDI加工(Drawing & Ironing)を施しても加工限度を越えることがない。
また、最終圧下率45%以上の冷間仕上圧延による加工によって形成された板材にDI加工を施すことで、DI加工における加工硬化によって十分な強度とすることができる。
以上より、破断ひずみおよび破断強度の双方が向上されたDI缶を形成することが可能になり、得られたDI缶にピンホールが発生することを防ぐことができる。
DI缶のネック部及びフランジ部をスピンフローネッキング加工により形成させる場合、DI缶の開口端部近傍の側壁を外側と内側から挟み込んで成形させるので、ネッキングに際しての加工硬化が発生し難く、また、材料の成形性が低い場合であっても、成形部分にしわ等が発生するのを抑制しつつ容易にネッキング加工を行なうことができる。
その結果、耐圧強度やピンホール特性を向上させるためにDI成形性とネック成形性が低下した材料に対して、より安定したネッキング加工を施すことができる。
この板材Wは、JIS3004(AA3004)またはJIS3104(AA3104)などのAl合金の鋳塊に熱間圧延、冷間圧延および焼鈍を施して所定板厚の中間板材が形成された後に、該中間板材に最終圧下率45%〜80%の冷間仕上げ圧延を施すことにより最終板厚(0.24mm以上0.28mm以下)に形成されている。
まず、板材Wを打ち抜いて円板状の板材(ブランク)Wを成形する。
次に、この板材Wをカッピングプレスによって絞り加工することによりカップ状体W1に成形する。
再絞り加工及びしごき加工に用いるDI加工装置は、再絞り加工するための円形の貫通孔を有する一枚の再絞りダイと、この再絞りダイと同軸に配列される円形の貫通孔を有する複数枚(例えば、3枚)のアイアニング・ダイ(しごきダイ)と、アイアニング・ダイと同軸とされ、上記それぞれのアイアニング・ダイの各貫通孔の内部に嵌合可能とされ、軸方向に移動自在とされる円筒状のパンチスリーブと、このパンチスリーブの外側に嵌合された円筒状のカップホルダースリーブとを備えている。
この有底筒状体W2は、側壁がしごかれることで冷間加工硬化されて強度が高くなる。
DI加工装置によって形成された有底筒状体W2の開口端部W2aは、その缶軸方向に波打つような凹凸形状とされ不均一であるため、有底筒状体W2の開口端部W2aを切断してトリミングすることにより缶軸方向における側壁の高さを全周に亙って均一にする。このようにして、胴部11と底部12とを有する横断面円形のDI缶10を形成される。
外面塗装は、例えば、ポリエステル系塗料を使用して、DI缶の胴部の外面に印刷、塗装をし、この外面印刷及び外面塗装がされたDI缶を180℃×30秒間以上加熱して行ない、内面塗装は、外面に塗装が施されたDI缶の内面に、例えば、エポキシ系塗料を使用して内面塗装し、200℃×60秒間以上加熱することにより行なう。
ネッキング加工をする場合、例えば、開口端部の外側に同心に配置された円環状のネッキングダイに対して、開口端部側をDI缶10の軸線方向に複数回にわたって押し当てることにより、DI缶10の開口端部を順次縮径して、ネック部13を形成する。
また、カップ状体W1に施される再絞りしごき加工は、有底筒状体W2に形成されたときのしごき率が51.4%以上60.4%以下となるように設定されている。
また、底部12は、図2に示すように、胴部11の缶軸方向における内側に向けて凹むドーム部12aを備えるとともに、このドーム部12aの外周縁部が胴部11の缶軸方向における外側に向けて突出する環状凸部12cとされている。この環状凸部12cの缶軸方向における頂部が、DI缶10が正立姿勢となるように、このDI缶10を接地面L上に配置したときに接地面Lに接する接地部12bとされる。
しごき率=(板材Wの厚さ−胴部11の厚さ)/板材Wの厚さ×100(%)
で算出される。
胴部11の厚さとは、胴部11の最薄部、例えば接地部12bから缶軸方向上方に60mm離れた部分における胴部11の肉厚とされる。そして、この胴部11の厚さは0.105mm以上0.125mm以下とされる。
Feは、含有量が0.3%未満では所望の効果が得られず、一方、Fe含有量が0.7%を越えると脆くなり加工性が劣化する。従ってFeの適正含有量は、0.3〜0.7%と設定する。
また、Crを添加する場合には、所望の効果を得るためには、Cr含有量を0.001%以上とし、脆くなり加工性が劣化するのを抑制するためにCr含有量を0.10%以下とすることが好ましい。従って、Crを添加する場合には、Crの含有量を0.001〜0.10%とする。
チタン(Ti)は結晶粒を微細化し、加工性を改善する効果を発揮する。
Tiを添加する場合には、所望の効果を得るためには、含有量を0.05%以上とし、粗大な化合物が形成されることにより加工性が劣化するのを抑制するためには、含有量が0.10%以下であることが好ましい。従って、Tiの適正な含有量は0.05〜0.10%とする。
以上より、現行の製造装置を部品の交換や再調整しないでそのまま用いることが可能になるとともに、缶重量を現行同等に維持することが可能になり、製造コストを増大させることなくピンホールの発生を防ぐことができる。
以上より、破断ひずみおよび破断強度の双方が向上されたDI缶を形成することが可能になり、得られたDI缶にピンホールが発生することを防ぐことができる。
また、測定に際して、このDI缶の胴部の缶軸方向に接地部から上方に60mm離れた位置(缶軸方向に缶の略中央の位置)の外面に、曲率半径2.25mmの押圧子を胴部の径方向内方に向かって25mm/minで移動させて、缶の胴部に穴があいたときの押圧力の大きさを測定し、それを突き刺し強度とした。
この結果から、しごき率51.4%以上60.4%以下で前記Al合金からなる板材に絞りしごき加工を施し、胴部11の最薄部における肉厚が0.105mm以上0.125mm以下とされたDI缶10では、その重量を11g〜12g、バルジ強度を0.5MPa以上とそれぞれ現行同等に維持しつつ、突き刺し強度を124N以上と大きくすること、すなわちピンホールの発生を防ぐことが可能になることが確認された。
また、熱間仕上げ圧延後の板の厚さを2.96mm、最終圧下率を90%とする他は全て比較例1の板材と同様にして、比較例2の板材を形成した。
また、比較例1の板材と同様に、熱間仕上げ圧延後の板の厚さを1.73mm、最終圧下率を85%として、比較例3の板材を形成した。
また、比較例2の板材を打ち抜いて円板の板材を得、この板材にしごき率62.5%で絞りしごき加工を施して比較例2のDI缶を形成した。
また、比較例3の板材を打ち抜いて円板の板材を得、この板材にしごき率57.0%で絞りしごき加工を施して比較例3のDI缶を形成した。
また、実施例と比較例3とを比較すると、実施例のしごき率が57.4%、比較例3のしごき率が57.0%とされて数値的に近い場合であっても、最終圧下率が80%とされる実施例が、最終圧下率85%の比較例3よりも突き刺し強度が高いことが確認された。
11 胴部
12 底部
12b 接地部
13 ネック部
14 フランジ部
W 板材
Claims (3)
- 質量%が、Si:0.1〜0.5%,Fe:0.3〜0.7%,Cu:0.05〜0.5%,Mn:0.5〜1.5%,Mg:0.4〜2.0%,Cr:0〜0.1%,Zn:0〜0.5%,Ti:0〜0.15%を含有し残部が不可避的不純物を含むアルミニウムからなるアルミニウム合金の板材に、絞り加工及びしごき加工を施し、有底筒状のDI缶を形成するDI缶の製造方法であって、
前記板材は、鋳塊に熱間圧延、冷間圧延および焼鈍を施して所定板厚の中間板材が形成された後に、該中間板材に最終圧下率45%〜80%の冷間仕上げ圧延を施すことにより最終板厚に形成されており、
しごき率51.4%以上59.4%以下で前記アルミニウム合金の板材に絞り加工及びしごき加工を施し、胴部の最薄部における肉厚が0.105mm以上0.110mm以下とされた前記DI缶を成形することを特徴とするDI缶の製造方法。 - 請求項1記載のDI缶の製造方法において、
前記アルミニウム合金は、質量%が、Mg:0.4〜1.5%,Cr:0.001〜0.10%,Zn:0.05〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%とされていることを特徴とするDI缶の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載のDI缶の製造方法において、
前記DI缶のネック部及びフランジ部をスピンフローネッキング加工により形成することを特徴とするDI缶の製造方法。
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