JP2008036777A - 作業補助装置 - Google Patents

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誠文 内原
Iwao Maeda
岩夫 前田
Masaaki Yamaoka
正明 山岡
Hideyuki Murayama
英之 村山
Hidenori Kimura
英紀 木村
Wojtara Tytus
ヴォイタラ ティトゥス
Satoyuki Nakayama
学之 中山
Shingo Shimoda
真吾 下田
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Abstract

【課題】作業者が対象物を移動する作業を補助する作業補助装置を提供する。
【解決手段】作業補助装置100は、把持装置10と、把持装置10を回転軸Qの回りに回転可能に連結する移動装置20を備える。対象物Wは把持装置10と作業者Tにより保持される。作業者Tが対象物Wを回転させると、作業補助装置は、対象物Wの姿勢角と目標姿勢角の偏差が小さくなる方向の回転を対象物に与えると推定される「回転軸の移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値を算出する。第1移動指令値に従って移動装置を移動させる。把持装置10と移動装置20は回転可能に連結されているため、回転軸Qが移動する際の対象物Wの回転は回転軸Qと作業者Tの位置関係で規定される。作業者Tは、回転軸Qが移動する際の対象物Wの回転を理解しやすい。作業補助装置は、作業者Tが理解し易いように対象物Wを移動させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、作業者が対象物の一部を把持して移動させることによって、作業者が対象物を移動する作業を補助する装置に関する。
対象物を作業者とともに把持しながら、作業者の動作に追従して、作業者が対象物を移動する作業を補助する装置が知られている。
作業補助装置は、重力に対して対象物の質量の一部あるいは全部を支える。これによって作業者が対象物を支える負担を軽減することができる。一方、作業補助装置は、作業者の動作に追従して対象物を移動させる。例えば、対処物を所定の方向へ移動させるために作業者が対象物へ操作力を加えると、作業補助装置はその操作力を検出して操作力の方向へ対象物を移動させる。対象物の移動が作業者主体で行えるので、作業環境に柔軟に対応できる。
そのような作業補助装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された作業補助装置は、マニピュレータを備える。作業者が対象物の一部を把持する。マニピュレータが対象物の他の一部を把持する。作業者とマニピュレータによって対象物が保持される。マニピュレータの先端には力センサが設けられている。力センサは、作業者が対象物に加える操作力を検出する。力センサは、作業者の操作力を3自由度の並進力成分と3自由度のトルク成分に分解する。マニピュレータは、自由度ごとにインピーダンス制御される。例えば、作業者が対象物を引っ張るとマニピュレータは対象物を押し出すように動作する。作業者が対象物を回転させるとマニピュレータも同じ回転方向に対象物を回転させるように動作する。マニピュレータをインピーダンス制御することによって、作業補助装置は作業者の動作に追従して動作する。
特開2005−34960号公報
特許文献1に記載された作業補助装置は、操作力の3自由度の並進力成分と3自由度のトルク成分に基づいて、対象物を並進3自由度と回転3自由度の合計6自由度の各方向へ移動させる。
一方作業者は、対象物を移動させる際に、対象物に加える操作力について6自由度の各成分を正確に考慮することはない。作業者が対象物を並進させようとして操作力を加えても、その操作力には並進力成分の他にトルク成分が含まれる場合が多い。逆に作業者が対象物を回転させようとして操作力を加えても、その操作力にはトルク成分の他に並進力成分が含まれる場合が多い。作業補助装置は夫々の自由度ごとの操作力成分に応じて対象物を移動させる。作業補助装置は、能動的に対象物を並進及び回転させるために、対象物を剛に把持している。そのため、操作力に並進力成分とトルク成分が含まれていると、作業補助装置は、把持している対象物に並進と回転の混在した動きをさせてしまう。作業補助装置が能動的に対象物を並進させると同時に回転させると、作業者が意図しない自由度方向への対象物の動きは作業者によって理解し難いものとなる。そのような対象物の動きは作業者を困惑させる。対象物を移動する作業を充分に補助できない。対象物の移動範囲が、平面内、即ち、並進2自由度と回転1自由度の3自由度に限定されていても同様である。
対象物を作業者とともに把持して、作業者が対象物を移動する作業を容易にさせる作業補助装置が求められている。
上述したように、作業補助装置が能動的に対象物を並進させると同時に回転させると、対象物の動きが作業者に理解し難いものとなってしまう。そこで発明者らは、対象物を把持する把持装置と、把持装置を移動させる移動装置を自由回転可能に連結するという着想を得た。移動装置が対象物を把持した把持装置の回転軸を移動させても、移動装置が対象物を能動的に回転させることがない。対象物の回転は、把持装置の回転軸と作業者の位置関係によって従属的に決まる。作業者は、把持装置の回転軸の移動方向と自身の位置から、対象物がどのように回転するかを容易に理解することができる。作業補助装置が対象物を移動させる際、対象物の動きを作業者に理解し易くする作業補助装置を実現することができる。
本発明は、作業者が対象物の一部を把持して移動させることによって、作業者が対象物を移動する作業を補助する装置に具現化できる。この装置は、対象物の他の一部を把持する把持装置と、把持装置を回転可能に連結している移動装置を備える。移動装置は、アクチュエータによって、移動装置に対する把持装置の回転軸を移動させることができる。換言すれば、移動装置は把持装置を並進移動させることができる。
作業補助装置は、対象物の目標姿勢角と、予め設定された平面を記憶している記憶装置を備える。また、作業補助装置は、対象物の姿勢角を検出するセンサを備える。
作業補助装置は、「前記回転軸の前記平面に沿った移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値を算出する第1移動指令値算出装置と、算出された第1移動指令値をアクチュエータへ出力する指令値出力装置を備える。
第1移動指令値算出装置が算出する第1移動指令値は、作業者が対象物を回転させたときに生じる「対象物の姿勢角と目標姿勢角の姿勢角偏差」を減少させる向きの回転を対象物に与えると推定される「前記回転軸の前記平面に沿った移動方向と移動量」を指定する指令値である。
上記の構成において、移動装置は様々な構造で実現可能である。例えば、3つのリニアアクチュエータを直交3軸方向に組み合わせたガントリー型のロボット、XYZステージ型移動装置、車輪で移動するタイプの移動装置などである。あるいは、回転関節型のマニピュレータであってもよい。
把持装置は、対象物の他の一部を把持するものであり、作業者が対象物の一部を把持することによって、重力に対して対象物が保持されるものであればよい。或いは、把持装置は、対象物の全質量を重力に対して保持するように把持するものであってもよい。その場合でも、作業者は、対象物の一部を把持して、対象物を把持装置の回転軸回りに回転させることができる。
記憶装置に記憶される目標姿勢角は経時的に変化するものであってもよい。
上記の作業補助装置において、第1移動指令値算出装置が算出する第1移動指令値は、姿勢角偏差を減少させる向きの回転を対象物に与えると推定される「前記回転軸の前記平面に沿った移動方向と移動量」を指定する指令値である。
ここで、「姿勢角偏差を減少させる向きの回転を対象物に与えると推定される」とは次の意味である。
把持装置と移動装置は回転可能に連結されている。従って、移動装置が把持装置と移動装置の連結部の回転軸を移動させても、対象物が回転するとは限らない。しかし対象物は、その一部を作業者によって把持されている。作業物の一部が作業者によって把持されていることによって、移動装置が回転軸を移動させると、対象物は作業者の把持位置を中心にして回転することが推定される。
上記構成によれば、作業補助装置は対象物を把持しているので、作業者が対象物の全重量を支える必要がなく作業者の負担が軽減できる。
一方、作業補助装置は、対象物を把持する把持装置と、把持装置を移動させるための移動装置を自由回転可能に連結している。把持装置が対象物を把持した状態でも、作業者は対象物を自由に回転させることができる。把持装置に把持された対象物に作業者が操作力を加えると、対象物は、移動装置と把持装置の連結部の回転軸回りに回転する。対象物の姿勢角が変化する。センサによって検出された姿勢角と目標姿勢角に姿勢角偏差が生じる。
第1移動指令値算出装置によって、姿勢角偏差を減少させる向きの回転を対象物に与えると推定される「前記回転軸の前記平面に沿った移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値が算出される。
指令値出力装置が、算出された第1移動指令値を実現するようにアクチュエータへ駆動指令値を出力することによって、移動装置が対象物とともに把持装置を移動させる。
対象物を把持した把持装置と移動装置は回転可能に連結されている。対象物の回転は、把持装置の回転軸と作業者の位置関係によって従属的に決まる。作業補助装置が対象物を移動させている間、作業者は、自身の位置と把持装置の回転軸との位置関係を見るだけで対象物がどのように回転するか容易に把握することができる。作業補助装置が対象物を移動させる際、作業者は対象物の動きを理解し易くなる。作業者が、対象物を所定の方向に回転させると、対象物の姿勢角が変化する。作業補助装置は、対象物の姿勢角と目標姿勢角の姿勢角偏差を減少させる方向の回転を対象物に与えると推定される方向に把持装置の回転軸を移動させる。対象物の姿勢角が目標姿勢角と一致した時点で移動装置が停止する。結果的に、作業補助装置は、対象物の姿勢角を目標姿勢角に一致させたまま、作業者の動きに追従して対象物を平行移動させる。
回転軸の移動方向は、記憶装置が記憶している予め設定された平面に沿った方向である。作業者が対象物を例えば目標位置へ近づける方向へ移動させると、移動装置は平面に沿った方向へ回転軸を移動させる。結果的に、作業補助装置は、対象物の姿勢角を目標姿勢角に一致させたまま、作業者の動きに追従して対象物を目標位置へ近づける方向へ平行移動させる。
作業者に理解し易いように対象物を移動させることができ、作業者が対象物を移動する作業を補助する作業補助装置を実現できる。
記憶装置が記憶している平面は、対象物の初期位置と目標位置を含む平面であることが好ましい。作業者が対象物を回転させると、移動装置は、把持装置の回転軸を平面に沿って移動させる。その平面が対象物の初期位置と目標位置を含んでいれば、作業者は対象物を目標位置に近づける方向に回転させるだけで、作業補助装置は対象物を目標姿勢に維持したまま目標位置の方向へ移動させることができる。
対象物の初期位置と目標位置が予め決まっている場合には、その初期位置と目標位置を含む平面を記憶装置に記憶させればよい。或いは、作業補助装置に対象物の位置を検出するセンサを備えるとともに、対象物の目標位置を記憶装置に記憶させておくことによって、センサによって検出した対象物の初期位置からリアルタイムに前記平面を決定して記憶装置に記憶するように構成してもよい。前者の場合には作業補助装置の構成を簡単にすることができる。後者の場合には、対象物の初期位置が変更された場合にも、作業補助装置は容易に対応できる。
対象とする作業が、対象物を2次元平面内で移動させればよいという作業環境下で行われる場合には、移動装置も回転軸を2次元平面内で移動させればよい。そのような場合には、第1移動指令値算出装置は、前記平面内に設定された直線に沿って回転軸を移動させる第1移動指令値を算出すればよい。直線は、対象物を移動させる平面内に設定すればよい。
ここで、移動装置の構造が、把持装置の回転軸を作業環境内の2次元平面内で移動可能な構造を有しており、回転軸をその2次元平面と直交する方向には移動不可の構造を有している場合には、記憶装置が記憶している平面は、明示的に記憶されている必要はない。記憶装置は、把持装置の回転軸の移動範囲である2次元平面内に設定された直線を記憶していれば、前述した「記憶装置が記憶している平面」は、設定された直線を含んでおり、把持装置の回転軸の移動範囲である2次元平面と交差する方向に伸びる平面を記憶していることと等価だからである。
記憶装置が記憶している直線は、対象物の初期位置と目標位置を通過する直線であることが好ましい。作業者が対象物を回転させると、移動装置は、把持装置の回転軸を直線に沿って移動させる。その直線が対象物の初期位置と目標位置を含んでいれば、作業者は対象物を目標位置に近づける方向に回転させるだけで、作業補助装置は、対象物を目標姿勢に維持したまま目標位置の方向へ移動させることができる。
第1移動指令値算出装置は、把持装置の回転軸を、記憶装置に記憶された平面に沿って移動させる移動方向と移動量を指定する第1移動指令値を算出する。従って第1移動指令値算出装置によって算出される回転軸の移動方向は、記憶装置に記憶されている平面に沿った方向に限定される。
作業環境によっては、記憶されている平面と直交する方向に対象物を移動させたい場合もある。そのような場合には、作業補助装置は以下の特徴を有することが好ましい。即ち、作業装置は、前記平面と直交する方向へ前記回転軸を移動させる移動量を指定する第2移動指令値を算出する第2移動指令値算出装置を備える。指令値出力装置は、算出された第2移動指令値を移動装置のアクチュエータへ出力する。
上記の特徴を有することによって、記憶装置に記憶された平面と直交する方向へも対象物を移動させることができる。
第2出力装置が出力する第2移動指令値は、例えば次の様に求めることができる。即ち、作業者が対象物に加える操作力の前記直交方向の操作力成分を検出する力センサを備えており、第2移動指令値算出装置は、力センサによって検出された操作力成分に基づいて第2移動指令値を算出する。
或いは次の様に求めることもできる。即ち、作業補助装置に、対象物の位置を検出するセンサを備えておく。そして記憶装置には、対象物の目標位置を記憶しておく。第2移動指令値算出装置は、検出された対象物の位置と記憶された目標位置の前記直交方向の距離を減少させる方向に回転軸を移動させる第2移動指令値を算出する。
前者の場合は、例えばインピーダンス制御を利用することによって、検出された操作力成分に対応する第2移動指令値を算出すればよい。そうすることで、作業者が対象物に対して前記直交方向に操作力を加えるだけで、把持装置の回転軸を前記直交方向に移動させることができる。即ち、把持装置によって把持された対象物を前記直交方向に移動させることができる。直線方向のみのインピーダンス制御は作業者にとって利用しやすい。前記直交方向に対しても作業者の動作に追従して対象物を移動させる作業補助装置を実現できる。
後者の場合は、対象物を目標位置へ位置決めする場合に有効である。前記直交方向については作業補助装置が自律的に位置決めを行うからである。作業者は、記憶装置に記憶された平面に沿った方向についてのみ、対象物を目標位置に位置決めする作業に専念することができる。目標位置に目標姿勢で位置決めするように対象物を移動する作業について、作業者の負担を軽減する作業補助装置を実現できる。
後者の場合には、さらに、前記直交方向に関して、検出された対象物の位置と記憶された目標位置の位置偏差が小さくなるほど小さくなる許容範囲が設定されており、第2移動指令値算出装置は、対象物の位置が許容範囲内となるように回転軸を移動させる第2移動指令値を算出することが好ましい。そのように構成することによって、作業補助装置は、対象物が目標位置へ近づくにつれて、前記直交方向の位置偏差が徐々にゼロとなるように対象物を移動させる。作業補助装置が対象物を移動させる際の軌跡を滑らかにすることができる。
作業補助装置は、対象物の位置を検出するセンサと移動装置に対する把持装置の回転を規制する回転規制装置を備えており、記憶装置は対象物の目標位置を記憶しており、第1移動指令値算出装置は、算出した第1移動指令値が、対象物の位置と目標位置の位置偏差を大きくする方向である場合には、回転規制装置へ把持装置の回転を規制するトルク指令値を出力することが好ましい。
上記構成によって、作業補助装置は、作業者が誤って目標位置から遠ざける方向に対象物を回転させることを抑制することができる。そうすることによって、対象物を目標位置に近づける方向に対象物を回転させるように作業者を誘導することができる。
本発明によれば、作業者が対象物を移動する作業に対して、対象物の自重の一部或いは全部を支持しながら、作業者の動きに追従して対象物を移動させる作業補助装置を実現することができる。特に、作業補助装置が対象物を移動させる際の対象物の動きが作業者に理解し易い作業補助装置を実現することができる。さらに、作業者が、目標位置に目標姿勢で位置決めするように対象物を移動させる作業を補助する作業補助装置を実現することができる。
以下に実施例の主要な特徴を列記する。
(第1形態)第1移動指令値算出装置は、移動装置が回転軸を移動させるときの対象物の「仮想的な回転中心」が予め設定されており、「仮想的な回転中心」に対して、作業者が対象物を回転させたときに生じる姿勢角偏差を減少させる向きの回転を対象物に与えると推定される「回転軸の前記平面に沿った移動方向と移動量を指定する第1移動指令値を算出する。
(第2形態) 第1移動指令値算出装置は、姿勢角偏差がゼロとなるまで第1移動指令値を算出する。
(第3形態) 作業者が把持装置の移動方向を入力するための入力装置を備えており、第2移動指令値算出装置は、入力された移動方向に基づいて第2移動指令値を算出する。
第2移動指令値を作業者が明示的に与える構成とすることで、「直交方向」について、対象物を確実に作業者の意図通りに移動させることができる。
本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。
<第1実施例> 図1は、第1実施例に係る作業補助装置100の平面図である。図1(A)は、作業者Tが対象物Wを、W1に示す位置からW2に示す位置まで回転させた状態を示す図である。図1(B)は、対象物の回転に応じて、作業補助装置100の移動装置20が把持装置10を移動させた状態を示す図である。なお、本実施例では、説明を簡単にするため、対象物を、図1に示すXYZ座標系のXY平面内で移動する作業を例とする。XY平面は水平面である。
本実施例において、作業者が行うべき作業は、長方形の対象物Wを、図1(A)、(B)に示すWdの位置へ移動する作業である。対象物Wの目標位置は、対象物W上に予め設定された基準点Pの目標位置Pdとして定義される。以下では、対象物W上に設定された基準点Pの位置を単に対象物の位置Pと称する。基準点Pの目標位置Pdを対象物Wの目標位置Pdと称する。
また本実施例の作業では、作業者は、Wdにおける対象物の目標姿勢を、対象物Wの長辺がY軸と平行となる姿勢に合わせることが要求されている。Y軸と対象物Wの長辺がなす各を姿勢角θと定義する。図1(A)より、本実施例における目標姿勢角θdの値はゼロとなる。また、目標姿勢角θdの値がゼロであるため、対象物Wの姿勢角θの値がそのまま対象物Wの姿勢角と目標姿勢角の姿勢角偏差dθに相当する。なお、目標姿勢角θdは、任意の直線と対象物Wの長辺がなす角として定義してもかまわない。
本実施例で対象とする作業は、対象物Wを目標姿勢角θdで目標位置Pdに移動する作業ということができる。
なお、図1(A)、(B)において、対象物W、その位置P、及び作業者Tの符号に添えた数字は夫々の経時的な位置を表す。例えば、対象物Wは初期状態ではW1の姿勢で位置P1に配置されており、作業者TはT1の位置で対象物Wを把持していることを表している。
作業補助装置100の構造について説明する。
作業補助装置100は、把持装置10と把持装置10をZ軸回りに自由回転可能に連結する移動装置20とコントローラ60を備える。
対象物Wの一部を作業者Tが把持する。対象物Wの他部を把持装置10が把持する。把持装置10は、移動装置20によって、鉛直方向、即ちZ軸方向に支持されている。作業者Tと作業補助装置100によって、対象物Wは重力に対して鉛直方向に保持されている。即ち、作業者Tは、重力に対して対象物Wを保持するために、対象物Wの質量の半分を負担するだけで良い。作業補助装置100によって、作業者Tが対象物Wを重力に対して保持するための負荷が軽減される。
移動装置20は、リンク22、リンク24、リンク26を有している。リンク22は絶対座標系に対して固定されている。
リンク24は、第1直動関節30によってリンク22と連結されている。第1直動関節30には第1アクチュエータ40が内蔵されており、第1アクチュエータ40によって、リンク24をリンク22に対して相対的にY軸方向に並進移動させることができる。
リンク26の一端は、第2直動関節32によって、リンク24と連結されている。第2直動関節32には第2アクチュエータ42が内蔵されており、第2アクチュエータ42によって、リンク26をリンク24に対して相対的にX軸方向に並進移動させることができる。
リンク26の他端には、回転関節34を介して把持装置10が連結されている。回転関節34は、Z軸に平行な回転軸Qを有している。回転関節34によって、把持装置10は、回転軸Qの回りに自由に回転することができる。把持装置10は対象物Wの一端を把持している。作業者Tが対象物Wの他端を把持している。作業者Tは、回転軸Qを中心にして対象物Wを自由に回転させることができる。
回転関節34には、把持装置10の回転を規制するためのブレーキ56を内蔵している。ブレーキ56は回転関節34に加えるブレーキトルクを制御可能である。
第1直動関節30には、第1リンク22に対する第2リンク24の位置を検出する第1センサ50が備えられている。第2直動関節32には、第2リンク24に対する第3リンク26の位置を検出する第2センサ52が備えられている。回転関節34には、第3リンク26に対する把持装置10の回転軸Q回りの回転角を検出する第3センサ54が備えられている。第1センサ50、第2センサ52、第3センサ54の検出値はコントローラ60へ送られる。コントローラ60は、送られたセンサの検出値から、対象物Wの位置P、及び対象物Wの姿勢角dθを求めることができる。以下では、第1センサ50、第2センサ52、第3センサ54を総称して位置・姿勢角センサと称することがある。
コントローラ60は、位置・姿勢角センサの検出値が入力される。コントローラ60は、入力された位置・姿勢角センサの検出値に基づいて、第1アクチュエータ40と第2アクチュエータ42を駆動するための指令値を出力する。第1アクチュエータ40と第2アクチュエータ42を駆動することによって、移動装置20は把持装置10の回転軸QをXY平面内で自由に移動させることができる。コントローラ60の内部の構成は後述する。
把持装置10には、力センサ36が備えられている。力センサ36は、作業者Tが対象物Wに加える操作力を検出する。
図3に作業補助装置100のブロック図を示す。コントローラ60は、記憶装置62と、第1移動指令値算出装置64と第2移動指令値算出装置68と指令値出力装置66を有する。
記憶装置62には、対象物Wの目標位置Pd及び目標姿勢角θdと、絶対座標系に対して定義されており、予め設定された直線のデータを記憶している。予め設定された直線を基準線と称する。ここで、基準線に沿った方向が、対象物Wの姿勢角θと目標姿勢角θdの姿勢角偏差dθに応じて把持装置10の回転軸Qを移動させる移動方向となる。本実施例では、X軸に沿って伸びる直線が基準線として記憶されている。即ち、作業補助装置100は、姿勢角偏差dθに応じて把持装置10の回転軸Qを基準線、即ちX軸に沿った方向へ移動させる。
なお、本実施例では、作業環境をXY平面の2次元平面とした。従って記憶装置62が基準線を記憶していることは、記憶装置が、基準線を含み、XY平面と交差する平面を記憶していることと等価である。
また、基準線、即ちX軸に沿って伸びる直線は、回転軸Q、即ち対象物Wを目標位置Pdへ接近させる方向に伸びている。
第1移動指令値算出装置64には、位置・姿勢角センサ(即ち、第1センサ50と第2センサ52と第3センサ54)の検出値が入力される。第1移動指令値算出装置64は、位置・姿勢角センサの検出値に基づいて、対象物Wの位置Pと姿勢角θを算出する。第1移動指令値算出装置64は、記憶装置62から、対象物Wの目標姿勢角θdと、基準線を読み込む。第1移動指令値算出装置64は、基準線、即ちX軸に沿った方向であり、姿勢角θと目標姿勢角θdの姿勢角偏差dθを減少させる方向に把持装置10の回転軸Qを移動させる第1移動指令値を算出する。算出された第1移動指令値は指令値出力装置66へ送られる。このように第1移動指令値算出装置64が算出可能である回転軸Qの移動方向は、X軸に沿った方向に限定されている。
第1移動指令値算出装置64はまた、姿勢角偏差dθを減少させるための回転軸Qの移動方向が、即ち把持装置10の移動方向が、対象物Wの位置Pを目標位置Pdから遠ざける方向であると判断した場合には、移動装置20が備える回転関節34のブレーキ56に対して、姿勢角偏差dθが大きくなる方向への把持装置の回転を規制するブレーキトルク指令値を出力する。
指令値出力装置66は、第1指令値算出装置64から送られた第1移動指令値を第2アクチュエータ42への駆動指令値に変換する。変換した駆動指令値を第2アクチュエータ42に出力する。第2アクチュエータ42は把持装置10の回転軸QをX軸に沿って移動させるアクチュエータである。第2アクチュエータ42は、指令値出力装置66から出力された指令値に基づいて、第3リンク26をX軸に沿って移動させる。第3リンク26には把持装置10が連結されており、第3リンク26が移動すると、把持装置10の回転軸Qも移動する。回転軸Qの移動に伴って把持装置10も移動する。
一方、把持装置10の有する力センサ36によって検出された作業者Tの操作力は、コントローラ60内の第2移動指令値算出装置68へ送られる。第2移動指令値算出装置68は、検出された操作力のY軸方向の成分を算出する。
第2移動指令値算出装置68は、算出されたY軸方向の操作力成分に応じて、把持装置10の回転軸QをY軸方向へ移動させる第2移動指令値を算出する。第2移動指令値は、例えばインピーダンス制御則に基づいて、Y軸方向の操作力成分を回転軸Qの移動量に変換することによって求められる。第2移動指令値算出装置68によって算出される第2移動指令値が指定する回転軸Qの移動方向は、Y軸に沿った方向である。Y軸に沿った方向は、記憶装置62に記憶された基準線と直交する方向である。第2移動指令値算出装置68は、記憶装置62から基準線を読み込むことによって、基準線と直交する方向、即ちY軸に沿った方向を、第2移動指令値が指定すべき回転軸Qの移動方向に設定する。
なお、本実施例では、作業環境をXY平面に限定しているため、対象物WのZ軸方向の移動は考慮する必要がない、従って、X軸と直交するY軸方向が基準線と直交する方向であると特定できる。
第2移動指令値算出装置68によって算出された第2移動指令値は、指令値出力装置66へ送られる。指令値出力装置66は、第2移動指令値を第1アクチュエータ40の駆動指令値に変換する。変換した駆動指令値を第1アクチュエータ40に出力する。第1アクチュエータ40は第2リンク24をY軸に沿った方向へ移動させるアクチュエータである。駆動指令値に基づいて第2アクチュエータ42が駆動されると、第2リンク24とともに把持装置10の回転軸QもY軸に沿った方向に並進移動する。
記憶装置62は具体的にはハードディスク装置や、メモリ装置で構成される。また、第1移動指令値算出装置64、第2移動指令値算出装置68、指令値出力装置66の一部或いは全部は、夫々独立した装置で実現されてもよいし、コンピュータが実行するソフトウエアで実現されてもよい。その場合、第1移動指令値算出装置64として行う処理を実行している際のコンピュータが第1移動指令値算出装置64に相当する。第2移動指令値算出装置68として行う処理を実行している際のコンピュータが第1移動指令値算出装置68に相当する。指令値出力装置66として行う処理を実行している際のコンピュータが指令値出力装置66に相当する。
図1に戻り、作業補助装置100の動作について説明する。
図1(A)に示すように、対象物Wは、初期には位置P1に位置している。作業者Tが位置T1で対象物Wを目標位置Pdに近づける方向に操作力を対象物Wに加えると、対象物Wは、回転関節34の回転軸Qを中心に回転する。対象物の位置はP2の位置となる。対象物の姿勢角偏差はdθとなる。図1(A)には、Y軸と平行な直線Lが描いてある。姿勢角偏差dθは、Y軸に平行な直線Lと対象物Wの長辺がなす角である。
コントローラ60の第1移動指令値算出装置64には、位置・姿勢角センサの値が入力される。第1移動指令値算出装置64は、入力されたセンサの値から対象物の位置P2と姿勢角θを求める。第1移動指令値算出装置64は、対象物Wの姿勢角θと、記憶装置62に記憶された目標姿勢角θdの姿勢角偏差dθを算出する。第1移動指令値算出装置64は、記憶装置62に記憶された基準線(本実施例の場合はX軸)に沿った方向であって、姿勢角偏差dθを減少させる方向へ把持装置の回転軸Qを移動させるための第1移動指令値を算出する。換言すれば、第1移動指令値算出装置64は、姿勢角偏差dθを減少させる向きの回転を対象物Wに与える「回転軸Qの基準線に沿った移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値を算出する。
ここで、対象物Wを把持する把持装置10と移動装置20は回転軸Qの回りに回転自在に連結されている。従って、移動装置20が回転軸Qを移動させても、把持装置10に把持された対象物Wは回転するとは限らない。前述した『姿勢角偏差dθを減少させる向きの回転を対象物Wに与える「回転軸Qの基準線に沿った移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値』は、厳密には『姿勢角偏差dθを減少させる向きの回転を対象物Wに与えると推定される「回転軸Qの基準線に沿った移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値』と表現される。「回転軸Qの基準線に沿った移動方向」は次のように求める。
第1移動指令値算出装置64には、対象物Wに対して仮想的な回転中心が予め設定されている。仮想的な回転中心は、位置・姿勢角センサによって検出された対象物Wの位置Pに設定されている。図1(A)の仮想線(2点鎖線)で示された状態では、仮想的な回転中心は対象物Wの位置P2である。第1移動指令値算出装置64は、位置P2を中心に設定し、基準線に沿った方向、即ちX軸の正の方向と負の方向に、回転軸Qを微小移動させたときの姿勢角偏差dθの変化率を算出する。変化率がdθを減少させる場合のX軸の方向が、姿勢角偏差dθを減少させる向きの回転を対象物Wに与えると推定される「回転軸Qの基準線に沿った移動方向」であると判断する。対象物Wが図1(A)に仮想線で示されている位置P2と姿勢角偏差dθの場合には、位置P2を中心に対象物Wが回転するものと仮定すると、X軸の正の方向が、姿勢角偏差dθを減少させる向きの回転を対象物Wに与えると推定される「回転軸Qの基準線に沿った移動方向」であると判断できる。
なお、仮想的な回転中心は、例えば、作業者の位置であってもよい。或いは、作業者が対象物の一部を把持しているときの、その把持部分であってもよい。
第1移動指令値が指定する回転軸Qの移動量について説明する。回転軸Qの移動方向はX軸の正の方向であると判断された。姿勢角偏差dθに対して、X軸の正方向への回転軸Qの移動量dXを次の(1)式で算出する。

dX=Gp・dθ+Gi・∫dθ+Gd・{d(dθ)/dt} ・・・(1)

(1)式において、Gpは比例ゲインである。Giは積分ゲインである。Gdは微分ゲインである。{d(dθ)/dt}は、姿勢角偏差dθの時間微分を表す。(1)式の右辺第2項は、対象物の仮想的な回転中心に設定された位置Pを中心にして、回転軸QをX軸の正の方向へ移動させたときの積分値を表す。(1)式の右辺第3項は、対象物の仮想的な回転中心に設定された位置Pを中心にして、回転軸QをX軸の正の方向へ所定の速度で移動させたときの姿勢角偏差dθの時間変化率を表す。即ち、回転軸Qの移動量dXは、姿勢角偏差dθをゼロに収束させるPID制御によって算出される。
第1移動指令値算出装置64は、以上の処理を行うことによって、作業者Tが対象物Wを回転させたときに生じる姿勢角偏差dθを減少させる向きの回転を対象物Wに与えると推定される「回転軸Qの基準線に沿った移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値を算出される。対象物Wが図1(A)に仮想線で示されている位置P2と姿勢角偏差dθの場合には、移動方向はX軸の正の方向に指定される。移動量は(1)式によって求められたdXに指定される。
第1移動指令値算出装置64によって算出された第1移動指令値に従って、移動装置20が把持装置10の回転軸QをX軸の正方向へ移動させるように第2アクチュエータ42が駆動される。把持装置10の回転軸QはX軸と平行にX軸の正の方向へdXだけ移動する。作業補助装置100は、上記の処理を姿勢角偏差dθがゼロとなるまで繰り返す。
作業者Tが位置T1から位置T2まで移動し対象物WがW2の位置で姿勢角偏差がdθとなるまで回転させた後、その付近で静止していると、把持装置10の回転軸QがX軸の正方向へ並進移動するにつれて、姿勢角偏差dθは小さくなる。図1(B)に示すように、姿勢角偏差dθがゼロ、即ち、対象物Wが位置P3で対象物Wの長辺とY軸が平行となった時点で作業補助装置100は回転軸Qの移動を停止する。その結果、図1(B)に示すように、対象物Wは当初の位置P1から、位置P3へ移動する。対象物Wは、基準線であるX軸に沿った方向に、当初位置P1から図1(B)に示す距離dXだけ目標位置Pdに近づく。対象物Wの姿勢角θは位置P3において、目標姿勢角θdと一致している。即ち、作業補助装置100は、作業者Tの動きに追従して、対象物Wをその姿勢角θを目標姿勢角θdに維持したまま、目標位置Pdへ近づけることができる。
把持装置10は移動装置20に対して回転可能に連結されている。作業補助装置100は、対象物Wに特定の回転移動を強制しない。移動装置20が把持装置10の回転軸Qを移動させている間の対象物Wの姿勢角θは、回転軸Qと作業者Tの位置関係で決まる。作業者Tは、自身の位置と回転軸Qの位置関係から、対象物Wがどのように回転するか容易に把握することができる。作業補助装置100は、対象物Wの動きを作業者Tに理解し易くすることができ、かつ作業者Tの動作に追従して対象物Wを移動させることができる。
本実施例における作業環境は、対象物WをXY平面(2次元平面)で移動させる環境である。即ち、作業環境における対象物Wの並進自由度は2である。作業補助装置100は、姿勢角偏差dθに基づいて第1移動指令値算出装置64が算出する回転軸Qの移動方向を基準線に沿った方向に限定している。即ち、第1移動指令値算出装置64が算出する回転軸Qの移動方向は、作業環境における対象物の並進自由度に対して1自由度少ない並進自由度に限定される。そのため、作業者Tは、回転軸Qの移動方向まで事前に認識することができ、回転軸Qの移動に伴う対象物Wの回転を一層理解し易くなる。
回転軸Qは、X軸に沿った方向へ移動するため、図1(A)に示す作業者Tが対象物Wを回転させた直後の位置T2と、図1(B)に示す回転軸Qの移動停止後の作業者Tの位置T3は異なる。しかし作業補助装置100は、例えばミリ秒のオーダーの制御サンプリング周期で上記の動作を繰り返す。即ち、作業者Tが対象物Wをわずかに回転させると、その回転による姿勢角θの変化に応じて、姿勢角偏差dθを小さくすると推定される方向に回転軸Qを移動させる。従って、作業補助装置100は、作業者Tと協調してあたかも対象物WをX軸の正方向へ平行移動させるかのごとく動作する。図1(A)に示す作業者Tの位置T2と図1(B)に示す作業者Tの位置T3の差はわずかであり、作業者Tの負担とはならない。
作業者Tが引き続き目標位置Pdへ近づける方向の操作力を対象物Wに加えると、作業補助装置100は上記と同様の動作を繰り返す。対象物Wはさらに目標位置Pdに近づく。
本実施例の作業補助装置100では、第1移動指令値算出装置64が出力する第1移動指令値が指定する回転軸Qの移動方向は基準線、即ちX軸に沿った方向に限定される。図1(B)に示すように、対象物の位置P3と目標位置PdとはY軸方向にも位置偏差を有している。作業者Tは、対象物Wを基準線と直交する方向、即ちY軸方向へも移動させなければならない。次に対象物WをY軸方向へ移動させる動作について説明する。
図2は、対象物WをY軸方向へ移動させる動作を説明する図である。把持装置10には力センサ36(図1参照)が備えられている。図2では対象物WはW3の位置、即ち位置P3に位置している。このとき、作業者Tは位置T3に位置している。この状態で作業者Tが対象物Wに操作力FIを加える。作業者Tは、対象物Wを目標位置Pdに移動させたいので、操作力FIは図2において下方を向いている。
把持装置10に備えられた力センサ36は、操作力FIのY軸方向成分を検出する。今、操作力FIはY軸と平行であると仮定するとFIそのものが操作力のY軸方向成分と一致する。検出された操作力のY軸方向成分FIはコントローラ60内の第2移動指令値算出装置68(図3参照)へ送られる。第2移動指令値算出装置68は、次の(2)式に示すインピーダンス制御則に基づいて回転軸QのY軸方向の移動量dYを指定する移動指令値(第2移動指令値)を算出する。

FI=Mp・{d(dY)/dt}+Dp・dY ・・・(2)

ここで、Mpはインピーダンス制御における仮想的な質量を表す定数である。Dpはインピーダンス制御における仮想的な減衰定数である。{d(dY)/dt}は移動量dYの時間微分を表す。(2)式を変形して次の(3)式を得る。

{d(dY)/dt}=(FI−Dp・dY)/Mp ・・・(3)

(3)式の微分方程式を解いて移動量dYを指定する第2移動指令値を求める。求められた第2移動指令値は、指令値出力装置66(図3参照)へ送られる。指令値出力装置66は、算出された第2移動指令値に従って、移動装置20が回転軸QをY軸方向へ移動させるように第1アクチュエータ40を駆動する。回転軸QはY軸に沿った方向で移動量dYだけ移動する。こうして図2に2点鎖線で示すように、操作力FIが加わる前には位置P3に位置していた対象物Wは、Y軸と平行に距離dYだけ離れた位置P4へ移動する。
作業者Tは、対象物Wに加える操作力FIについて、その方向を厳密に意識しているわけではないので、操作力FIの方向はY軸と平行にならない場合もある。しかし力センサ36は、操作力のY軸方向成分のみを検出するため、作業者Tが加える操作力はY軸と平行でなくともよい。作業者Tが加える操作力がY軸と平行でなくとも、作業補助装置100は、操作力のY軸方向成分に基づいて回転軸QをY軸に沿った方向に並進移動させるからである。ここで、力センサ36は操作力の大きさと方向を検出できればよい。力センサ36が、操作力の大きさと方向を検出できれば、幾何学的な計算により操作力のY軸方向成分を求めることができる。なお、Y軸に沿った方向は、記憶装置62(図3参照)に記憶された基準線と直交する方向である。
次に上記説明した作業補助装置100の動作をフローチャート図を用いて説明する。図4は、対象物Wの姿勢角に応じて回転軸Qを移動させる処理のフローチャート図である。図5は、作業者Tが対象物Wに加える操作力に応じて回転軸Qを移動させる処理のフローチャート図である。
図4について説明する。ステップS100では、位置・姿勢角センサによって対象物の位置Pと姿勢角θを検出する。次にステップS102では、検出した姿勢角θと目標姿勢角θdの姿勢角偏差dθを算出する。ステップS104では、算出された姿勢角偏差dθに応じた回転軸Qの移動方向と移動量を指定する第1移動指令値が算出される。第1移動指令値の算出方法は前述した通りである。算出された第1移動指令値は、ステップS106で第2アクチュエータ42へ出力される。以上のステップが実行されることによって、作業者Tが対象物Wを回転させると、作業補助装置100は、基準線、即ちX軸に沿った方向であって対象物Wの姿勢角偏差dθを減少させる方向へ回転軸Qを移動させる。
図5について説明する。ステップS200では作業者Tが対象物Wに加えた操作力のY軸方向成分を検出する。ステップS202では、検出された操作力のY軸方向成分に基づいて回転軸Qを移動させるための第2移動指令値を算出する。第2移動指令値の具体的な算出方法は前述した通りである。算出された第2移動指令値は、ステップS204によって、第1アクチュエータ40へ出力される。以上のステップが実行されることによって、作業者Tが対象物Wに加えた操作力に応じて回転軸Q、即ち対象物WをY軸に沿った方向へ移動させることができる。
次に、図1に示した回転関節34に備えられたブレーキ56を制御する動作について説明する。前述したように、第1移動指令値算出装置64は、回転軸Qの移動方向であって、姿勢角偏差dθを減少させる向きの回転を対象物Wに与えると推定される方向を判断する。その際、回転軸Qの移動方向が目標位置Pdから遠ざかる方向である場合には、姿勢角偏差dθが大きくなる方向への把持装置の回転を規制するブレーキトルクをブレーキ56に指令する。ブレーキトルクτの大きさは具体的には次の第4式で算出される。

τ=Ga・dθ+Gb・{d(dPh)/dt} ・・・(4)

(4)式で、Ga、Gbは定数である。Phは、対象物の位置Pと目標位置Pdの位置偏差を表す。{d(dPh)/dt}は位置偏差の時間微分を表す。
作業補助装置100が回転関節34に配置されたブレーキ56へのトルク指令値τを指令する処理のフローチャートを図6に示す。
まずステップS300では、対象物Wの位置Pと姿勢角θを検出する。次にステップS302では、第1移動指令値算出装置64が基準線、即ちX軸に沿った方向で姿勢角偏差dθを減少させる回転を対象物Wに与えると推定される回転軸Qの移動方向を判断する。この判断の具体的方法は前述した通りである。次にステップS304では、対象物Wの位置Pと目標位置Pdを参照して、判断された回転軸Qの移動方向が対象物Wを目標位置Pdから遠ざかる方向であるか否か判断する。ここで、回転軸Qの移動方向が対象物Wを目標位置Pdから遠ざかる方向でない場合(ステップS304:NO)の場合には何もせずに処理を終了する。一方、回転軸Qの移動方向が対象物Wを目標位置Pdから遠ざける方向である場合(ステップS304:YES)にはステップS306に処理が移る。ステップS306では、ブレーキ56へのトルク指令値τを算出する。トルク指令値τの具体的な算出方法は前述した通りである。最後にステップS308では、算出されたトルク指令値τをブレーキ56へ出力する。
対象物Wを目標位置から遠ざかる方向へ回転し難くすることによって、作業補助装置100は作業者Tに対して、目標位置へ近づけるために対象物Wを回転させる方向を示唆することができる。作業者Tは、対象物Wを回転させ易い方向へ回転させるだけで、対象物Wを目標位置Pdへ近づけることができる。
なお、ブレーキ56が請求項の回転規制装置の一態様に相当する。回転規制装置はブレーキの他に、作業者Tが対象物Wを回転させる際に回転関節34の回転抵抗を可変に出来る装置であればよい。
本実施例の作業補助装置100では、対象物Wを把持する把持装置10と、把持装置10を移動させる移動装置20が回転軸Qの回りに自由回転可能に連結されている。作業者Tは、対象物Wに操作力を加えることによって、対象物Wを自由に回転させることができる。
第1移動指令値算出装置64は、対象物Wの姿勢角に応じて把持装置10の回転軸Qを移動させる方向と移動量を指定する第1移動指令値を算出する。第1移動指令値算出装置64が算出し得る回転軸Qの移動方向は、予め設定された基準線の方向、即ちX軸に沿った方向に限定している。
一方、第2移動指令値算出装置68は、作業者Tが対象物Wに加える操作力の基準線と直交する方向(即ちY軸方向)の成分に応じて回転軸Qを前記直交方向(Y軸方向)と平行な方向へ移動させる移動量を指定する第2移動指令値を算出する。
算出された第1移動指令値と第2移動指令値は指令値出力装置66によって移動装置20の各アクチュエータ40、42へ出力される。その結果、作業補助装置100は、作業対象物に加える作業者Tの動作に追従して対象物Wを移動させることができる。
第1移動指令値算出装置64が基準線に沿った方向への回転軸Qの移動方向と移動量を指定する第1移動指令値を算出する。第2移動指令値算出装置68が基準線に直交する方向への回転軸Qの移動量を指定する第2移動指令値を算出する。第1移動指令値と第2移動指令値によって、作業補助装置100は、対象物Wを把持する把持装置10の回転軸Qを作業平面(図1に示すXY平面)内で自由に移動させることができる。作業補助装置100は、作業者が望む方向へ対象物Wを移動することができる。作業者が対象物Wを移動する作業について、作業補助装置100は、作業者の動きに追従しながら、作業者に理解しやすいように対象物Wを移動させることによって、作業者の作業を効果的に補助することができる。特に、対象物Wを目標姿勢で目標位置に移動する作業について、対象物Wの初期位置と初期姿勢角が目標位置と目標姿勢角とどのような関係であっても、作業者の作業を効果的に補助することができる。
回転軸Q、即ち対象物Wを移動させる方向のうち、基準線に沿った方向については、作業者Tが対象物Wに操作力を加えて対象物Wを回転させると、作業補助装置100が、対象物Wの姿勢角偏差dθが減少すると推定される方向に回転軸Qを移動させる。把持装置10と移動装置20は回転軸Qの回りに自由回転可能に連結されているため、移動装置20によって回転軸Qが移動される際、対象物Wの姿勢角の変化は、回転軸Qの位置と作業者Tの位置関係で決定される。換言すれば、作業補助装置100は、対象物Wに対して特定の回転を強制的に与えない。移動装置20によって回転軸Qが移動される際の対象物Wの姿勢角の変化は、作業者Tに理解し易いものとなる。作業者Tは、作業補助装置100がどのように対象物Wを移動させるか、及びその結果、対象物Wがどのように回転するかを容易に把握できる。作業者Tが対象物Wを移動する作業を補助する装置において、作業補助装置100がどのように対象物Wを移動させるか理解し易くなるので、作業者Tの作業の負担を軽減することができる。
本実施例では、作業環境が2自由度の並進自由度を有するにも関わらずに姿勢角偏差dθに応じて回転軸Qを移動させる方向を基準線に沿った方向に限定している。即ち、作業補助装置100は、姿勢角偏差dθに応じて回転軸Qを移動させる並進自由度の数を、作業環境が有する並進自由度の数よりも1自由度少なく限定している。姿勢角偏差dθに応じて回転軸Qを移動させる方向を限定することによって、作業補助装置100が回転軸Qを移動させた結果として生じる対象物Wの動きを作業者に一層理解させ易くなる。
また本実施例では、第1移動指令値算出装置64が算出可能な回転軸Qの移動方向、即ち基準線に沿った方向に対して直交する方向に対象物Wを移動させる第2移動指令値算出装置68を備えている。本実施例では、基準線の方向はX軸と平行な方向であり、前記直交方向はY軸と平行な方向である。
第2移動指令値算出装置68は、作業者Tが対象物に加えた操作力の前記直交方向成分に基づいて回転軸Qを直交方向に移動させる第2移動指令値を算出する。第2移動指令値算出装置68は、前記直交方向にいわゆる力制御を行う。作業者Tが対象物Wを移動する際、前記直交方向への操作力を適宜調整することによって、対象物Wの前記直交方向に沿った方向の位置の微調整を行うことができる。
作業補助装置100の移動装置20が、対象物Wを把持する把持装置10の回転軸Qを移動させても、対象物Wの姿勢角θが目標姿勢角θdに一致するか否かは、作業者Tの位置に依存する。作業補助装置100は、どこまで回転軸Qを移動させれば姿勢角θが目標姿勢角θdと一致するかは判断しない。対象物Wの姿勢角θが目標姿勢角θdに一致する位置は、回転軸Qと作業者Tの位置関係で決まる。即ち、作業補助装置100が対象物Wをどこまで移動させるかは作業者Tが主体的に決定することができる。作業補助装置100は、作業者Tの動きに追従して対象物Wを移動させるので、対象物Wを目標位置Pdへ目標姿勢θdで自動的に移動させる全自動機械よりも状況に柔軟に対応することができる。
このことは、換言すれば、対象物を並進移動させて目標位置へ移動する作業は作業者が主体的に行うことができる一方で、対象物の姿勢角を目標姿勢角に一致させる作業は作業対象物が自律的に行うことを意味する。本実施例の作業補助装置100は、作業者が対象物を目標姿勢で目標位置へ移動する作業について、作業を対象物の並進方向の移動作業(即ち並進方向の位置決め作業)と回転方向の姿勢合わせ作業に分解し、並進方向の移動作業は作業者主体で行い、姿勢合わせ作業は作業補助装置が自律的に行う装置ということができる。そうすることによって、作業者は対象物の並進方向の移動作業に集中することができる。作業補助装置は、作業者の作業負担を軽減することができる。
対象物を目標姿勢で目標位置に移動する作業を、対象物の並進方向の移動作業と、姿勢合わせ作業に分解し、並進方向の移動作業は作業者主体で行うことができ、姿勢合わせ作業は作業補助装置が自律的に行うことは、対象物を把持する把持装置を移動装置に対して自由回転可能に連結することによって実現することができる。
また、本実施例の作業補助装置100は、作業者Tが対象物Wを回転させる際、その回転方向が、結果的に対象物Wを目標位置Pdから遠ざける方向である場合には、その回転方向へは回転させ難くするブレーキトルクを回転関節34に加える。そうすることによって、作業者Tは誤って目標位置Pdから遠ざける方向へ対象物Wを回転させ難くすることができる。作業者Tは、対象物Wを回転させる際の負荷が大きくなったことを感じることによって、その回転方向が目標位置Pdから対象物Wを遠ざける方向であることを知覚することができる。換言すれば、作業補助装置100は、作業者Tが、目標位置Pdに対象物Wを近づけるための動作を行うように誘導することができる。
<第2実施例> 次に本発明の第2実施例について説明する。この実施例は、記憶装置が記憶している基準線に沿った方向、即ち、第1移動指令値が示し得る回転軸Qの移動方向と直交する方向には自律的に対象物Wの位置Pを目標位置Pdへ近づけることができる。
本実施例において、作業者が行うべき作業は第1実施例と同じである。本実施例に係る作業補助装置の構成は、図1に示した第1実施例の作業補助装置100と同様であるので説明を省略する。但し、本実施例における作業補助装置は、図1に示した力センサ36は備えていない。本実施例における作業補助装置のブロック図も図3に示した第1実施例のブロック図と同様なので説明を省略する。
本実施例の作業補助装置は、力センサ36を備えていないことと図3に示した第2移動指令値算出装置68での処理が第1実施例とは異なる。従って、本実施例における第2移動指令値算出装置68の処理について説明する。
図7は、第2実施例における第2移動指令値算出装置(図3の第2移動指令値算出装置68に相当する)の動作を説明する図である。
本実施例の作業補助装置も第1実施例の作業補装置100と同様に、基準線に沿った回転軸Qの移動方向、即ち、第1移動指令値算出装置64(図3参照)が算出可能な回転軸Qの移動方向はX軸に平行な方向に限定されている。第1移動指令値算出装置64が算出可能な回転軸Qの移動方向に対して直交する方向は図7のY軸に平行な方向である。
図7には、目標位置Pdを通りX軸と平行な直線L2と、目標位置Pdを通る直線L3が描かれている。直線L2は、位置偏差のY軸方向成分がゼロとなる位置の集合となる。本実施例では、対象物Wの位置Pと目標位置PdのY軸方向の位置偏差に対して位置偏差許容範囲が設けられている。直線L2と直線L3で挟まれた領域が位置偏差許容範囲Dである。位置偏差許容範囲Dは、対象物Wの位置偏差が小さくなるほど狭くなるように設定されている。
本実施例の第2移動指令値算出装置は、対象物WのY軸方向の位置を位置偏差許容範囲D内に移動させるための第2移動指令値を算出する。例えば図7において、対象物Wが位置P5に位置しているとする。位置P5におけるX軸方向の位置偏差はPx5である。この位置におけるY軸方向に設定された位置偏差許容範囲は、直線L2からY軸の正方向に距離D1の範囲である。作業者Tが対象物Wを回転させると、第1移動指令値算出装置64(図3参照)が、X軸に平行な方向で姿勢角偏差を減少させる回転を対象物に与えると推定される「回転軸Qの移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値を算出する。第1移動指令値によって、回転軸QはX軸方向の位置偏差がPx6となる位置へ移動する。図7に示すように、X軸方向の位置偏差Px6に対応するY軸方向の位置偏差許容範囲はD2である。このとき、本実施例の第2移動指令値算出装置は、対象物Wの位置偏差のY軸方向成分が位置偏差許容D2内となる位置へ回転軸QをY軸と平行に移動させる第2移動指令値を算出する。X軸に沿った方向であって姿勢角偏差を減少させる回転を対象物に与えると推定される「回転軸Qの移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値と、Y軸に平行な方向であってY軸方向の位置偏差がD2となる位置へ回転軸Qを移動させる第2移動指令値の両者によって、本実施例の作業補助装置は対象物Wを位置P6に移動させる。対象物Wの位置はP5からP6へ移動する。即ち、X軸方向の位置偏差が小さくなるにつれて対象物WのY軸方向の位置偏差も小さくなる。ここで、対象物WのX軸方向の移動は、作業者Tが対象物Wを回転させることによって行われる。即ち、対象物WのX軸方向の移動は作業者Tが主体的に行うことができる。
一方、回転軸QのY軸方向の移動は、本実施例の作業補助装置が自律的に行う。その動作は、作業者Tが対象物WをX軸方向で目標位置Pdに近づけるに従って徐々に位置偏差のY軸方向成分を小さくする動作となる。対象物WのX軸方向の移動については作業者Tが主体的に移動させることができる一方で、Y軸方向の対象物Wの移動については作業補助装置が自律的に目標位置Pdへ位置合わせする。作業者Tが対象物Wを目標姿勢で目標位置へ移動させる作業を一層容易にすることができる。
上記の実施例では、対象物Wの移動範囲をXY平面内に限定した。上記の実施例に示した作業補助装置100は容易に3次元空間に拡張することができる。図1で説明した作業を3次元に拡張した場合を説明する。対象物Wの目標位置PdがZ軸方向に所定の高さPdzであるとする。対象物Wの初期位置P1はPdzより低いP1zであるとする。移動装置20は把持装置10をZ軸方向へ移動可能な関節とリンクをさらに備えている。回転関節34は、Z軸回りの他にX軸回りにも自由回転可能に構成されている。X軸方向の回転軸を回転軸Q2とする。コントローラ60の記憶装置62は、X軸とZ軸を含む平面を記憶している。
作業者Tは、対象物WをZ軸の正方向に持ち上げる操作力を加える。対象物Wは、回転関節34のX軸方向の回転軸Q2を中心に回転する。対象物WのX軸回りの姿勢角が変化する。作業補助装置は、記憶された平面に沿った方向であり、対象物の姿勢角と目標姿勢角の姿勢角偏差を減少させる方向に対象物を回転させると推定される「回転軸Q2の移動方向とその方向への移動量」を指定する第1移動指令値を算出する。その方向は回転軸Q2をZ軸の正の方向に並進移動させる方向となる。第1移動指令値に従って移動装置20が回転軸Q2を移動させることによって、対象物Wの位置偏差のZ軸方向成分を小さくすることができる。
ここで、姿勢角偏差を減少させる方向に対象物を回転させると推定される「回転軸Q2の移動方向」の判断について説明する。
第1移動指令値算出装置64には、対象物Wに対して仮想的な回転中心が予め設定されている。仮想的な回転中心は、位置・姿勢角センサによって検出された対象物Wの位置Pに設定されている。第1移動指令値算出装置64は、位置Pを中心に設定し、Z軸の正の方向と負の方向に回転軸Q2を微小移動させたときの姿勢角偏差の変化率を算出する。変化率が姿勢角偏差を減少させる場合のZ軸の方向が、姿勢角偏差を減少させる向きの回転を対象物Wに与えると推定される「回転軸Q2の移動方向」であると判断する。
即ち、図1に示した第1実施例において、姿勢角偏差dθに基づいて回転軸QをX軸に沿った方向へ移動させる処理と同じ処理をZ軸方向についても行えばよい。
作業者は対象物を回転軸Qと回転軸Q2に対して同時に回転させてもよい。その場合には、回転軸Qについての移動方向の判断と回転軸Q2についての移動方向の判断を個別に、或いは同時に行えばよい。回転軸QのX軸に沿った移動方向と、回転軸Q2のZ軸に沿った移動方向を判断することによって、XZ平面に沿っており、姿勢角偏差を減少させる方向に対象物を回転させると推定される「回転軸Q及び回転軸Q2の移動方向」を求めることができる。
XZ平面と直交する方向、即ちY軸方向については、第1実施例或いは第2実施例と同様の方法で移動装置を制御すればよい。
上記の実施例では、第1移動指令値算出装置は、移動装置が回転軸を移動させるときの対象物の「仮想的な回転中心」が予め設定されており、「仮想的な回転中心」に対して、作業者が対象物を回転させたときに生じる姿勢角偏差を減少させる向きの回転を対象物に与えると推定される「回転軸の前記平面に沿った移動方向と移動量を指定する第1移動指令値を算出する。
移動装置と把持装置は、回転軸回りに回転可能に連結されている。従って、移動装置が把持装置の回転軸を移動させても、把持装置自体が回転するとは限らない。即ち、把持装置に把持された対象物が回転するとは限らない。作業補助装置は、移動装置が把持装置の回転軸を移動させた際に、結果的に対象物が回転するか否かは判断しない。移動装置が把持装置の回転軸を移動させた結果、姿勢角偏差が減少するかはわからない。
そこで、対象物に対して仮想的な回転中心を予め設定する。仮想的な回転中心を設定することで、第1移動指令値算出装置は、把持装置の回転軸を並進移動させた際に、仮想的な回転中心に対象物がどの方向に回転するかを判断できる。「仮想的な回転中心」に対して、姿勢角偏差を減少させる向きの回転を対象物に与えると推定される「回転軸の前記平面に沿った移動方向と移動量を指定する第1移動指令値を算出することができる。
仮想的な回転中心は、例えば、センサによって検出される対象物の位置であってもよいし、作業者の位置であってもよい。或いは、作業者が対象物の一部を把持しているときの、その把持部分であってもよい。
なお、上記実施例の説明において、「X軸に沿った方向」は、X軸と略平行な方向であればよい。「基準線に沿った方向」や「平面に沿った方向」についても同様である。
上記の実施例では、第1移動指令値算出装置は、姿勢角偏差がゼロとなるまで第1移動指令値を算出する。
前述したように、移動装置が把持装置の回転軸を移動させても、対象物が回転するか否か、或いは対象物がどの程度回転するかは、回転軸と作業者の位置関係で決まる。作業補助装置は、対象物の姿勢角を目標姿勢角に一致させる作業を担当する。第1移動指令値算出装置が、姿勢角偏差がゼロとなるまで第1移動指令値を算出することによって、対象物の姿勢角を目標姿勢角に維持することができる。
次に、上記実施例の変形例について説明する。
第1実施例では、作業者Tが誤って対象物Wを目標位置から遠ざかる方向へ回転してしまうことを防止するために、ブレーキ56を備えた。そして、作業者Tが対象物Wを目標位置から遠ざかる方向へ回転したことを検出するために、対象物Wの位置・姿勢を検出するセンサ(第1センサ50と第2センサ52と第3センサ54)を備えるとともに、記憶装置62に対象物Wの目標位置Pdを記憶させた。
作業補助装置は、ブレーキ56を備えなくともよい。その場合には、記憶装置62には、対象物Wの目標位置Pdを記憶させなくともよい。作業者Tが対象物Wの移動先を知っているからである。またその場合には、作業補助装置は、対象物Wの位置を検出するセンサを備えなくともよい。作業者Tが対象物Wを回転させると、作業補助装置は対象物Wの姿勢を目標姿勢に一致させるように動作する。結果的に作業補助装置は、作業者Tの意図する方向へ対象物Wを移動させることができる。このとき、作業補助装置は対象物Wの位置を認識する必要がないからである。以上のように、作業補助装置は、ブレーキ56と、対象物Wの位置を検出するセンサを有さず、記憶装置62に対象物Wの目標位置を記憶させない構成とすることができる。そのように構成することによって、作業補助装置を簡易化することができる。簡易化した作業補助装置によっても、作業者Tが対象物Wを移動する作業について、作業者Tの動作に追従しながら、作業者Tに理解しやすく対象物Wを移動させることができる。
また、第1実施例では、基準線と直交する方向へ対象物を移動させる際に、(2)式及び(3)式に基づくインピーダンス制御則を用いた。(2)式の右辺に「+K・eY」という弾性項を付加することも好適である。ここで、Kは弾性係数である。eYは、基準線と直交する方向における対象物Wの位置と目標位置Pdの距離差である。この弾性項は、基準線と直交する方向において、対象物Wを目標位置Pdに近づけやすくする効果を奏する。この弾性項を付加することによって、作業者Tは、基準線と直交する方向について、より小さな操作力で対象物Wを目標位置Pdへ移動させることができる。
また、第1実施例では、力センサ36を把持装置10に配置した。力センサ36は、回転関節34或いは回転関節34に連結されている第2リンクに配置してもよい。力センサ36をいずれの部品に配置しても、適切な変換式によって、把持装置10に加わる操作力を検出できるからである。
また、記憶装置が記憶している平面を、対象物Wの初期位置と目標位置を含む平面に設定することも好適である。或いは、第1実施例で説明した基準線を、対象物Wの初期位置と目標位置を通る直線に設定することも好適である。
このことを図7を利用して説明する。図7において、位置P5が対象物の初期位置であるとする。目標位置はPdである。図7において、直線L3は、対象物Wの初期位置P5と目標位置Pdを結ぶ直線である。直線L3を、第1実施例における基準線に設定する。
第1移動指令値算出装置64(図3参照)は、把持装置10の回転軸Qを図7に示す直線L3に沿った方向に並進移動させる第1移動指令値を算出する。このとき、作業者Tが対象物Wを目標位置Pdに近づける方向へ回転させると、回転軸Qは直線L3と平行に移動する。従って、対象物WのX軸方向の位置偏差がゼロとなった時点で、対象物Wは目標姿勢で目標位置Pdに一致する。以上の通り基準線を設定することによって、作業者が対象物を回転させるだけで対象物Wを目標位置に目標姿勢で位置決めする作業を補助する作業補助装置を実現できる。このことは対象物を3次元空間内で移動させる作業補助装置へも容易に拡張できる。
作業補助装置が備える第2移動指令値算出装置に対して、作業者が把持装置の移動指示を入力するための入力装置を備えることも好適である、第2移動指令値算出装置へ明示的に移動指示を与えることによって、「直交方向」について、対象物を確実に作業者の意図通りに移動させることができる。
姿勢角偏差に基づいて第1移動指令値が示し得る回転軸の移動方向を、作業空間或いは作業平面の並進自由度より少ない自由度に限定することによって、作業補助装置が対象物を移動させる際の対象物の回転を作業者に一層理解させ易くすることができる。
その際、第1移動指令値が示し得る回転軸の方向を、対象物の目標位置に近づく方向に伸びる平面或いは直線に設定することがよい。
前述した実施例では、作業者と把持装置で重力に対して対象物を保持する構成とした。把持装置は、単体で重力に対して対象物を保持する構成とすることも好適である。その場合でも、把持装置と移動装置は、それらを連結する連結部の回転軸Qの回りに自由回転可能に連結する。把持装置が対象物を把持した状態でも作業者は対象物を自由に回転させることができる。そのように構成することによって、作業者が重力に対して対象物を保持する負荷を軽減することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
図1は第1実施例の作業補助装置の平面図である。図1(A)は、作業者が対象物を回転させた状態を示す図である。図1(B)は、対象物の回転に応じて作業補助装置が把持装置の回転軸を移動させた状態を示す図である。 対象物をY軸方向へ移動させる動作を説明する図である。 第1実施例の作業補助装置のブロック図である。 対象物の姿勢角に応じて把持装置の回転軸を移動させる処理のフローチャート図である。 作業者が対象物に加える操作力に応じて把持装置の回転軸を移動させる処理のフローチャート図である。 回転関節に配置されたブレーキへのトルク指令値を指令する処理のフローチャート図である。 第2実施例の作業補助装置の動作を説明する図である。
符号の説明
10:把持装置
20:移動装置
22:第1リンク
24:第2リンク
26:第3リンク
30:第1直動関節
32:第2直動関節
34:回転関節
36:力センサ
40:第1アクチュエータ
42:第2アクチュエータ
50:第1センサ
52:第2センサ
54:第3センサ
56:ブレーキ
60:コントローラ
62:記憶装置
64:第1移動指令値算出装置
66:指令値出力装置
68:第2移動指令値算出装置
100:作業補助装置

Claims (10)

  1. 作業者が対象物の一部を把持して移動させることによって、対象物を移動する作業を補助する装置であり、
    対象物の他の一部を把持する把持装置と、
    把持装置が回転可能に連結されており、アクチュエータによって把持装置の回転軸を移動させる移動装置と、
    対象物の目標姿勢角と、予め設定された平面を記憶している記憶装置と、
    対象物の姿勢角を検出するセンサと、
    作業者が対象物を回転させたときに生じる「対象物の姿勢角と目標姿勢角の姿勢角偏差」を減少させる向きの回転を対象物に与えると推定される「前記回転軸の前記平面に沿った移動方向と移動量」を指定する第1移動指令値を算出する第1移動指令値算出装置と、
    算出された第1移動指令値をアクチュエータへ出力する指令値出力装置と、
    を備えることを特徴とする作業補助装置。
  2. 前記平面は、対象物の初期位置と目標位置を含む平面であることを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
  3. 第1移動指令値算出装置は、前記平面内に設定された直線に沿って回転軸を移動させる第1移動指令値を算出することを特徴とする請求項1に記載の作業補助装置。
  4. 前記直線は、対象物の初期位置と目標位置を通過する直線であることを特徴とする請求項3に記載の作業補助装置。
  5. 前記平面と直交する方向へ前記回転軸を移動させる移動量を指定する第2移動指令値を算出する第2移動指令値算出装置を備え、
    指令値出力装置は、算出された第2移動指令値を移動装置のアクチュエータへ出力することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の作業補助装置。
  6. 作業者が対象物に加える操作力の前記直交方向の操作力成分を検出する力センサを備えており、
    第2移動指令値算出装置は、力センサによって検出された操作力成分に基づいて第2移動指令値を算出することを特徴とする請求項5に記載の作業補助装置。
  7. 対象物の位置を検出するセンサをさらに備えており、
    前記記憶装置は、対象物の目標位置を記憶しており、
    第2移動指令値算出装置は、検出された対象物の位置と記憶された目標位置の前記直交方向の距離を減少させる方向に回転軸を移動させる第2移動指令値を算出することを特徴とする請求項5に記載の作業補助装置。
  8. 前記直交方向に関して、検出された対象物の位置と記憶された目標位置の位置偏差が小さくなるほど小さくなる許容範囲が設定されており、第2移動指令値算出装置は、対象物の位置が許容範囲内となるように回転軸を移動させる第2移動指令値を算出することを特徴とする請求項7に記載の作業補助装置。
  9. 移動装置に対する把持装置の回転を規制する回転規制装置を備えており、
    第1移動指令値算出装置は、算出した第1移動指令値が、対象物の位置と目標位置の位置偏差を大きくする方向である場合には、回転規制装置へ把持装置の回転を規制するトルク指令値を出力することを特徴とする請求項7又は8に記載の作業補助装置。
  10. 対象物の位置を検出するセンサをさらに備えており、
    前記記憶装置は、対象物の目標位置を記憶しており、
    移動装置に対する把持装置の回転を規制する回転規制装置を備えており、
    第1移動指令値算出装置は、算出した第1移動指令値が、対象物の位置と目標位置の位置偏差を大きくする方向である場合には、回転規制装置へ把持装置の回転を規制するトルク指令値を出力することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の作業補助装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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