以下、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置について添付図面を参照して説明する。図1はこの液晶表示装置の回路構成を概略的に示す。液晶表示装置はOCBモードの液晶表示パネルDP、表示パネルDPを照明するバックライトBL、および表示パネルDPおよびバックライトBLを制御する表示制御部CNTを備える。液晶表示パネルDPは一対の電極基板であるアレイ基板1および対向基板2間に液晶層3を挟持した構造である。液晶層3は例えばノーマリホワイトの表示動作のために予めスプレイ配向からベンド配向に転移される液晶を液晶材料として含む。ベンド配向からスプレイ配向への逆転移は黒表示に対応した駆動電圧を液晶層3に周期的に印加することにより阻止される。
アレイ基板1は、例えばガラス等の透明絶縁基板上に略マトリクス状に配置される複数の画素電極PE、複数の画素電極PEの行に沿って配置される複数のゲート線Y(Y1〜Ym)、複数の画素電極PEの列に沿って配置される複数のソース線X(X1〜Xn)、並びにこれらゲート線Yおよびソース線Xの交差位置近傍に配置され各々対応ゲート線Yを介して駆動されたときに対応ソース線Xおよび対応画素電極PE間で導通する複数の画素スイッチング素子Wを有する。各画素スイッチング素子Wは例えば薄膜トランジスタからなり、薄膜トランジスタのゲートがゲート線Yに接続され、ソース−ドレインパスがソース線Xおよび画素電極PE間に接続される。
対向基板2は例えばガラス等の透明絶縁基板上に配置される赤,緑,青の着色層からなるカラーフィルタ、および複数の画素電極PEに対向してカラーフィルタ上に配置される共通電極CE等を含む。各画素電極PEおよび共通電極CEは、光透過型のディスプレイの場合は例えばITO等の透明電極材料からなり、互いに平行にラビング処理される配向膜でそれぞれ覆われ、画素電極PEおよび共通電極CEからの電界に対応した液晶分子配列に制御される液晶層3の一部である画素領域と共にOCB液晶画素PXを構成する。
複数のOCB液晶画素PXは、画素電極PE、共通電極CE、及び画素電極PEと共通電極CEとの間に挟持される液晶層3とによって構成される液晶容量CLCを有する。複数の補助容量線C1〜Cmは各々対応行の液晶画素PXの画素電極PEに容量結合して補助容量Csを構成する。
表示制御部CNTは、さらに複数のスイッチング素子Wを行単位に導通させるように複数のゲート線Y1〜Ymを順次駆動するゲートドライバYD、各行のスイッチング素子Wが対応ゲート線Yの駆動によって導通する期間において画素電圧Vsを複数のソース線X1〜Xnにそれぞれ出力するソースドライバXD、バックライトBLを駆動するバックライト駆動部LD、およびゲートドライバYD、ソースドライバXDおよびバックライト駆動部(インバータ)LDを制御する制御回路5を備える。
制御回路5は電源源投入時に共通電圧Vcomを変化させて比較的大きな駆動電圧を液晶層3に印加することにより液晶分子をスプレイ配向からベンド配向に転移させる初期化処理を行うように構成されている。制御回路5は、外部信号源SSから入力される同期信号に基づいて発生される制御信号CTYをゲートドライバYDに出力し、外部信号源SSから入力される同期信号に基づいて発生される制御信号CTX、および外部信号源SSから入力される映像信号または黒挿入用の非映像信号をソースドライバXDに出力し、さらに対向電極CEに印加される共通電圧Vcomを対向基板CTの共通電極CEに対して出力する。制御回路では、外部信号源SSから入力される同期信号に基づき、1フレーム期間内に第1期間、およびこの第1期間とは異なる長さであって第1期間と重複しないの第2期間が設定される。第1期間は複数の液晶画素PXに対して黒挿入として非映像信号を書込むために用いられ、第2期間は複数の液晶画素PXに対して映像信号を書込むために用いられる。第1期間および第2期間の合計時間長は1フレーム期間に等しい。
ゲートドライバYDは制御信号CTYの制御により第1期間において複数の液晶画素PXの行を黒挿入走査として順次選択するように複数のゲート線Y1〜Ymを順次駆動し、この第1期間に続く第2期間において複数の液晶画素PXの行を映像信号書込走査として順次選択するように複数のゲート線Y1〜Ymを順次駆動する。他方、ソースドライバXDは第1期間においてゲート線Y1〜Ymの各々が駆動される間に1行分の非映像信号を黒レベルの画素電圧Vsとして出力し、さらに第2期間においてゲート線Y1〜Ymの各々が駆動される間に1行分の映像信号を映像レベルの画素電圧Vsとして出力することにより並列的に複数のソース線X1〜Xnを駆動する。1行分の画素電圧Vsは対応画素スイッチング素子Wを介して選択行の液晶画素PXに印加される。ここで、全液晶画素PXに対する画素電圧Vsは、フレーム反転駆動の場合には全画素列で同じ極性に設定される。フリッカの影響等を防止するため、カラム反転駆動の場合には画素列毎に共通電圧を基準として逆極性に設定される。また、全液晶画素PXに対する画素電圧Vsは、液晶材料の劣化を防止するためにフレーム期間毎に共通電圧を基準として極性反転される。
この液晶表示装置では、制御回路5による制御が各水平走査期間の前半を利用して全液晶画素PXに対する黒挿入書込みを順次行なう一方で各水平走査期間の後半を利用して全液晶画素PXに対する映像信号書込みを順次行うことにより黒挿入書込みと映像信号書込みとを交互に繰り返すようにゲートドライバYDおよびソースドライバXDを制御する従来の方式とは異なっている。すなわち、制御回路5は図2に示すように第1期間を利用して全液晶画素PXに対する黒挿入書込みを順次行いこの第1期間に続く第2期間を利用して全液晶画素PXに対する映像信号書込みを順次行う。つまり、黒挿入書込みと映像信号書込みとを交互に繰り返さないようにゲートドライバYDおよびソースドライバXDを制御する。この場合、ソース線電位は図2に示すように少なくとも黒挿入走査において変化しない。図2では、ソース線電位が信号書込走査においても変化しないように描かれているが、画素毎に異なる映像信号の画素電圧レベルに依存している。しかし、この信号書込走査においても、ソース線電位が極性反転を伴って変化することはない。このため、黒挿入駆動による動画視認性の向上と消費電力の低減とを両立させることができる。
また、第1期間および第2期間はこれらの合計時間長が1フレーム期間を越えないようにする必要があるが、1フレーム期間の時間長に対する第1期間の時間長の割合は、黒挿入率として任意に変更可能である。第1期間および第2期間を1フレーム期間の前半および後半にそれぞれに割当てるように設定することもできる。この場合の黒挿入率は50%となる。尚、制御回路5は第1期間および第2期間の長さを自身で決定するように構成されているため、黒挿入走査と信号書込走査との走査期間をそれぞれ1/4フレーム期間と等しくした場合は、黒挿入率は25%から75%の範囲で適宜可変することができる。黒挿入走査と信号書込走査との走査期間は、それぞれ異ならしめることもできるが、回路構成上は同一とすることが望ましい。また、黒挿入走査と信号書込走査との走査期間は、黒挿入率の可変幅を大きくするためには短いことが望ましく、1/4フレーム期間以下であることが望ましい。
この黒挿入率は、逆転移を効果的に防止するために使用環境の温度変化に合わせて変更されてもよく、また環境照度に合わせて変更されるものであってもかまわない。
図2では、第1期間が1フレーム期間の1/4(25%)程度の長さに設定され、第2期間が1フレーム期間の残り3/4(75%)程度の長さに設定されている。黒挿入走査と信号書込走査の走査速度は同じであり、黒挿入走査は第1期間(1/4フレーム期間)内に完了し、信号書込走査は第1期間に続く第2期間において最初の1/3(1フレーム期間の1/4:1/4フレーム期間)程度の期間に完了する。第2期間のうちの残り2/3(1フレーム期間の2/4:2/4フレーム期間)では、映像レベルの画素電圧Vsが各液晶画素PXにおいて継続的に保持される。ちなみに、信号書込走査は第1期間の直後に開始されるが、黒挿入走査により各行の液晶画素PXに書込まれた黒レベルの画素電圧Vsは信号書込走査により映像レベルの画素電圧Vsが対応行の液晶画素PXに書込まれるまでの期間保持される。また、次の黒挿入走査は第2期間直後に開始されるが、信号書込走査により各行の液晶画素PXに書込まれた映像レベルの画素電圧Vsは黒挿入走査により黒レベルの画素電圧Vsが対応行の液晶画素PXに書込まれるまでの期間保持される。
上述の第1期間(=25%)および第2期間(=75%)の関係は一例にすぎないが、第1期間を第2期間よりも短くすることで、より高い光利用効率を得ることができる。
尚、黒挿入走査および信号書込走査の各々を1フレーム期間の1/4(25%)程度の期間に完了させるためには、走査速度を従来の4倍にする必要がある。このため、画素スイッチング素子Wとして、例えば多結晶シリコン(p-Si)薄膜トランジスタ等を使用することで、開口率を低減することなく、走査速度の速い書き込みに対応することが出きる。
また、走査速度との兼ね合いから、高解像度の液晶表示パネルに適用するよりも、モバイル製品で使用される程度の解像度(走査線数が例えば500本以下)の液晶表示パネルには容易に適用できる。
また、上述の実施形態では、カラム反転駆動およびフレーム反転駆動のどちらでも適用可能であるが、消費電力の観点からはフレーム反転駆動の方が有利である。
フレーム反転駆動が有利である理由は次の通りである。
(1)一般にドット反転用あるいはカラム反転用のソースドライバでは、ソース線負荷の充放電に必要な電力以外に消費する電力(スタティック電力)がライン反転あるいはフレーム反転用のソースドライバに比べて大きい。
(2)フレーム反転では、各フレーム期間において全ての画素列に対する画素電圧の極性が同じである。また、画素電圧Vsに対して共通電圧Vcomを変化させるコモン反転を組み合わせることにより、ドライバ動作に必要な電圧振幅を低減してソースドライバの電力消費を低減することができる。
、フレーム反転のみにする場合には、表示品質の観点で好ましくないフリッカ(ちらつき)が目立つことがあるが、フレーム周波数を調整する等によって解決することができる。尚、フレーム反転のタイミングは、必ずしもフレーム期間毎である必要はなく、フリッカとの関係で複数フレーム期間毎であってもかまわない。
さらに、ドット反転(またはライン反転)とカラム反転(またはフレーム反転)の中庸として、例えばk画素ライン(k=2,3,4,5,6,…)毎に極性反転させるような駆動方式を採用することもできる。この駆動方式は、純粋なカラム反転(またはフレーム反転)のような消費電力の低減効果を期待できないが、フリッカを低減することができるという利点を有する。但し、極性反転直後の画素ラインで画素電圧の書込特性が他の画素ラインと異なることによって表示画面上に横筋が現れるおそれがある。このようなことから、極性反転直後の画素ラインにおける画素電圧を調整する等が望ましい。
本実施形態では、全画素PXに対する非映像信号(黒レベルの画素電圧Vs)の書込みと全画素PXに対する映像信号(映像レベルの画素電圧Vs)の書込みとのオーバラップによって生じる極性反転の繰返しを無くして消費電力を低減できる。さらに、映像信号表示に対する非映像信号表示の割合を最適化するために第1期間および第2期間の長さを互いに調整することも可能である。従って、少ない消費電力を維持して表示品質を向上させることができる。
以下、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置について説明する。この液晶表示装置は、以下に述べる事項を除いて第1実施形態と同様に構成される。図3はこの液晶表示装置の動作において得られる走査ダイアグラムおよびソース線電位波形を示す。以下の説明では、図1と同様な構造部分を同一参照符号で表し、詳細な説明を省略する。
この液晶表示装置では、制御回路5が液晶表示パネルDP側の動作に同期してバックライトBLを点滅させるようにバックライト駆動部LDを制御する。具体的には、第1期間が1フレーム期間の1/4(25%)程度の長さに設定され、第2期間が1フレーム期間の残り3/4(75%)程度の長さに設定される。そして、黒挿入走査が一括して行われ、1/4フレーム期間、全ての液晶画素PXに非映像信号(黒レベルの画素電圧Vs)が印加される。第1期間に続く第2期間における最初の1/3(1フレーム期間の1/4:1/4フレーム期間)程度の期間に信号書込走査が行われ、液晶画素PXのそれぞれに対応する映像信号が印加される。そして、第2期間のうちの残り2/3(1フレーム期間の2/4:2/4フレーム期間)では、映像レベルの画素電圧Vsが各液晶画素PXにおいて継続的に保持される。そして、全ての液晶画素PXに映像レベルの画素電圧Vsが保持される状態である期間、即ち2/4フレーム期間に対応してバックライトBLを点灯させ、それ以外の期間、すなわち黒挿入走査および信号書込走査の期間に消灯させる。
このような制御には、次のような利点がある。
(1)映像レベルの画素電圧Vsが全液晶画素PXに保持されてからバックライトBLが点灯するため、バックライトBLの光利用効率を改善できる。時間的な光利用効率は図2に示す動作において75%となるが、図3に示す動作において実質的に100%となる。
(2)図3に示す動作は、バックライトBLが消灯する1フレーム期間の50%だけ画面を黒表示にし、1フレーム期間の残り50%だけ画面を映像信号表示にする。この場合の輝度プロファイルは、図2に示す動作のように1フレーム期間の25%だけ画面を黒表示にし残りの75%だけ画面を映像信号表示とする場合よりもインパルス型に近くなり、動画視認性を向上させることができる。この動画視認性はMPRT(Motion Picture Response Time)を指標として表されるが、このMPRT値が減少する。
(3)バックライトBLの点灯期間においては、信号書込走査が行われないため、ソース線電位を変化させる必要がないため、一定値にしておくことができる。従って、カラム反転またはフレーム反転駆動の場合でも、ソース線Xおよび画素電極PE間の容量結合や薄膜トランジスタ内のオフリーク電流に起因する縦クロストーク、輝度傾斜のような問題がほとんど発生しない。
(4)バックライトBLは黒挿入走査および信号書込走査の期間中消灯しているため、黒挿入走査および信号書込走査の走査速度は同じである必要が無い。このため、図3に示すように黒挿入走査を全液晶画素PXの行について一括して行い、これに対して映像レベルの画素電圧Vsを書込むために十分な時間を確保するように信号書込走査を行うことが可能になる。これにより、映像レベルの画素電圧Vsの書込特性が向上する。ちなみに、図2に示す動作では、バックライトBLが常時点灯状態にあるため、黒挿入走査と信号書込走査とが同じ速度で行われない場合に、フレーム期間内の信号表示期間が画面内の場所によって異なり、これが輝度傾斜として観察される恐れがあるが、この実施形態ではこのような問題が生じることはない。
この実施形態によれば、信号書込走査の走査期間を1/4フレーム期間としており、このため黒挿入率は5%から75%の範囲で適宜可変することができる。そして、この黒挿入率は、逆転移を効果的に防止するために使用環境の温度変化に合わせて変更されてもよく、また環境照度に合わせて変更されるものであってもかまわない。
以下、本発明の第3実施形態に係る液晶表示装置について説明する。この液晶表示装置は、以下に述べる事項を除いて第1および第2実施形態と同様に構成される。図4はこの液晶表示装置の動作において得られる走査ダイアグラムおよびソース線電位波形を示す。以下の説明では、図1と同様な構造部分を同一参照符号で表し、詳細な説明を省略する。
この液晶表示装置では、制御回路5が第2実施形態と同様に液晶表示パネルDP側の動作に同期してバックライトBLを点滅させるようにバックライト駆動部LDを制御する。すなわち、全ての液晶画素PXに映像レベルの画素電圧Vsが保持される状態となる期間、即ち2/4フレーム期間に対応してバックライトBLを点灯させ、それ以外の期間、すなわち黒挿入走査および信号書込走査の期間に消灯させる。制御回路5はさらに複数の液晶画素PXの行(ライン)を少なくとも第1および第2グループに区分し黒挿入走査および信号書込走査をこれらグループに対応して繰り返すようにゲートドライバYDおよびソースドライバXDを制御する。ここでは、複数の液晶画素PXが1,3,5,7,…行の液晶画素PXからなる奇数ライングループと2,4,6,8,…行の液晶画素PXからなる偶数ライングループに区分され、黒挿入走査および信号書込走査の各々が2回に分けて行われる。
この制御により、ゲートドライバYDは第1期間において複数の液晶画素PXの奇数行を奇数ライン黒挿入走査として選択するように奇数番目のゲート線Y1,Y3,Y5,…を一括駆動し、さらに複数の液晶画素PXの偶数行を偶数ライン黒挿入走査として選択するように偶数番目のゲート線Y2,Y4,Y6,…を一括駆動する。ソースドライバXDはゲート線Y1,Y3,Y5,…が奇数ライン黒挿入走査によって一括駆動される間に1行分の非映像信号を黒レベルの画素電圧Vsとして出力し、ゲート線Y2,Y4,Y6,…が偶数ライン黒挿入走査によって一括駆動される間に1行分の非映像信号を奇数行の液晶画素PXに対する黒レベルの画素電圧Vsとは逆極性にした黒レベルの画素電圧Vsとして出力する。
また、ゲートドライバYDは第1期間に続く第2期間において複数の液晶画素PXの奇数行を奇数ライン信号書込走査として順次選択するように奇数番目のゲート線Y1,Y3,Y5,…を順次駆動し、さらに複数の液晶画素PXの偶数行を偶数ライン信号書込走査として順次選択するように偶数番目のゲート線Y2,Y4,Y6,…を順次駆動する。ソースドライバXDはゲート線Y1,Y3,Y5,…の各々が奇数ライン信号書込走査によって駆動される間に1行分の映像信号を映像レベルの画素電圧Vsとして出力し、ゲート線Y2,Y4,Y6,…の各々が偶数ライン信号書込走査によって駆動される間に1行分の映像信号を奇数行の液晶画素PXに対する映像レベルの画素電圧Vsとは逆極性にした映像レベルの画素電圧Vsとして出力する。
このような動作では、1水平走査期間(1H)毎にソース線電位の極性を変化させない点でカラム反転またはフレーム反転駆動に近い形式で、擬似的にドットまたはライン反転駆動を行うことが可能である。
従って、本実施形態では、ソース線Xの充放電に伴う消費電力を低減しながらフリッカについても抑制することができる。第1実施形態の説明においてフレーム反転駆動が消費電力の低減においてカラム反転駆動よりも有利であるが、フリッカの影響を受けやすいことを言及した。これに対して、本実施形態のように黒挿入走査および信号書込走査を、それぞれ2回に分ける方式を第2実施形態と同様なバックライトBLの点滅に加えて採用することにより、擬似的なライン反転表示による顕著なフリッカの抑制効果を得ることができる。
尚、上述の奇数および偶数ライングループに限らず、複数の液晶画素PXの行を、例えば2行単位で、1,2,5,6,9,10,…行の液晶画素PXからなる第1グループおよび3,4,7,8,11,12,…行の液晶画素PXからなる第2グループに区分して2回の走査を行うようにしてもよい。また、1,4,7,…行の液晶画素PXからなる第1グループ、2,5,8,…行の液晶画素PXからなる第2グループ、3,6,9,…行の液晶画素PXからなる第3グループに区分して3回の走査を行うようにしてもよい。
ところで、第3実施形態は、消費電力の低減とフリッカの抑制を両立できるという利点があるものの、極低温などで液晶の応答が遅くなった場合に横筋が発生しやすい。この横筋は図5に示すような場合に発生する。例えば1行目(奇数行)と2行目(偶数行)の液晶画素PXに注目したとき、これら画素PXに対する書込開始タイミングは奇数ライン信号書込走査と偶数ライン信号書込走査との時間差だけずれる。ここで、液晶の応答に遅れがあると、画素透過率の遷移がバックライトBLの点灯前に完了せず、奇数行の画素PXと偶数行の画素PXとの間に透過率の差が生じ、この差による輝度差が横筋として観察されることになる。この輝度差を目立たなくさせるためには、例えばバックライトBLの点灯タイミングを走査完了のタイミングよりも若干遅らせることが考えられる。しかしながら、この場合は全体的な画面の明るさが低下するため、バックライトBLの輝度を高めておくこと等が望ましい。
以下、本発明の第4実施形態に係る液晶表示装置について説明する。この液晶表示装置は、以下に述べる事項を除いて第1実施形態と同様に構成される。図6はこの液晶表示装置に適用される複数の画素電極PEと複数のゲート線Yとの接続関係を示す。以下の説明では、図1と同様な構造部分を同一参照符号で表し、詳細な説明を省略する。
この液晶表示装置では、制御回路5は第3実施形態の場合と同様に液晶表示パネルDP側の動作に同期してバックライトBLを点滅させるようにバックライト駆動部LDを制御し、さらに複数の液晶画素PXの行(ライン)を少なくとも第1および第2グループに区分し黒挿入走査および信号書込走査をこれらグループに対応して繰り返すようにゲートドライバYDおよびソースドライバXDを制御する。第3実施形態との違いは、画素電極PE用のスイッチング素子Wのゲート接続先となるゲート線Yを隣接列(カラム)間で上下逆にすることにある。この構成であると、全カラムで画素電圧Vsの極性が同じになるフレーム反転駆動に奇数ライングループおよび偶数ライングループに分けて行われる飛び越し走査を併用した場合に、奇数ラインの画素PXおよび偶数ラインの画素PXがそれぞれ走査の前半および後半において上下に別れて駆動される。すなわち、仮に液晶応答の遅れによる輝度差があったとしても、これが横筋状に比べて目立ちにくい市松状の明暗輝度パターンとなることから、表示品質を向上させることができる。
この方式は、ソースドライバXDのスタティック電力およびソース線Xの充放電に伴う消費電力について最も有利なフレーム反転に近い駆動を行いながら、最もフリッカを抑制できるドット反転表示を実現できることから極めて優れている。ここで、各画素電極PEはスイッチング素子Wのゲート接続先について1列単位に逆にすることに限られず、例えば2列単位、あるいは3列単位に逆にするようにしてもよい。
以下、本発明の第5実施形態に係る液晶表示装置について説明する。この液晶表示装置は、以下に述べる事項を除いて第1および第2実施形態と同様に構成される。図7はこの液晶表示装置の動作において得られる走査ダイアグラムおよびソース線電位波形を示す。この液晶表示装置は、図2および図3に示す動作と同様に黒挿入走査および信号書込走査をそれぞれ第1期間および第2期間において全液晶画素PXの行について行う。この液晶表示装置では、特に信号書込走査が第2期間内で2回行われ、1回目の信号書込走査と同じ信号が2回目の信号書込走査で書込まれる。ソースドライバXDはゲート線Y1〜Ymに対応する行の液晶画素PXに対する一連の映像信号の出力を2回繰り返す動作を行い、ゲートドライバYDはソースドライバXDの映像信号出力に同期してゲート線Y1〜Ymの走査を2回繰り返す動作を行う。図7では、黒挿入走査が全液晶画素PXの行について一括して行われているが、全液晶画素PXの行について順次行われてもよい。
本実施形態の方式を採用することにより、1行あたりの信号書込み時間を実質的に2倍にすることができ、信号書込み不足による悪影響(例えば輝度の低下)を防ぐことができる。本発明の第1実施形態を高解像度の液晶表示パネルに適用することは困難であるかもしれない旨をその説明で述べたが、本発明の第5実施形態は高解像度の液晶表示パネルへの適用も十分可能となる。
尚、信号書込走査は2回である必要は無く、3回、4回、・・・、と繰り返しても構わない。また、図7では2回目の走査をバックライトBLの点灯期間中に行っているが、別に2回目以降の走査が完了した後にバックライトBLの点灯を開始しても構わない。このような信号書込走査の回数、あるいはバックライトBLの点灯タイミングに関しては、ソースドライバYDにかかる負担や必要輝度等を勘案した上で適当な条件を採用すればよい。
尚、上述の第1〜第5実施形態に関し、特にフレーム反転駆動をする場合に、ソース線Xから印加された画素電極PE上の画素電圧Vsの極性に対して逆位相で共通電極CE上の共通電圧Vcomを変化させることが、ソースドライバXDのドライバ動作に必要な電圧振幅を低減して電力消費を低減できることから好ましい。
また、第1および第2実施形態で懸念されるフリッカについては、フレーム周波数を一般的な60Hzから90Hzあるいは120Hzに高めることによっても低減することができる。但し、この場合には、従来の駆動で用いられる走査速度の6〜8倍という高速な走査速度が必要になる。
実際に、30人の被験者を対象にしてフリッカ(ちらつき)に関する主観評価を実施した。これら被験者は、フレーム周波数を一般的な60Hzより上げた状態で画像を表示するために駆動された第1および第2実施形態の液晶表示パネルDPを観察し、フリッカが気になるか否かを主観的に判定した。ちなみに、液晶表示パネルDPとして対角4.3インチ、画素数480×272のパネルを用いた。駆動方式としてはカラム反転またはフレーム反転が望ましい旨を上述したが、ここでは消費電力を重視してフレーム反転方式を選択した。また、表示画像はフリッカが最も視認されやすい中間調ラスタ表示とした。図8は被験者全員から得られた回答を集計した結果を示す。フレーム周波数が70Hz以下である場合、フリッカが気になる被験者が第1および第2実施形態の液晶表示パネルDPのいずれについても存在する。これに対して、フレーム周波数が75Hz以上である場合、フリッカが気になる被験者は存在しない。この集計結果により、第1および第2実施形態にてフレーム反転駆動を行う場合には、フレーム周波数を75Hz以上にすることが望ましいことが判る。
さらに、第1〜第5実施形態において、図5に示すような液晶応答の遅れに起因して画面の上端行と下端行との透過率応答が異なるために輝度傾斜が生じることもある。このような輝度傾斜は複数の画素PXの行を選択する垂直走査方向を、例えば奇数フレームで上端行から下端行に向って走査し偶数フレームで下端行から上端行に向って走査するような形式で1フレーム期間毎に逆にすることにより抑制できる。
ちなみに、本発明は、OCBモードの液晶表示パネルを利用して液晶のベンド配向からスプレイ配向への逆転移を防止できるという効果もある。
尚、OCB以外の液晶モード、例えばTN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-plane Switching)モード、VA(Vertically Aligned)モードにおいては、第1〜第4実施形態の駆動を適用してもOCBモードのような優れた動画視認性は得られない。例えば図2の駆動の場合、OCBでは黒挿入書込みを行った直後すぐに液晶配向が黒状態まで移行して安定する(すなわち液晶配向状態にリセットがかかる)が、他のモードでは液晶の応答が遅いため次の信号書込み開始時点になってもまだ安定状態にならず、前フレームの液晶配向状態を引きずったまま信号書込みが行われることになり、前フレームの画像が残像として残るためである。また強誘電性液晶や反強誘電性液晶は高速スイッチングが可能ではあるが、2値スイッチング特性を有するため階調表示が困難という課題がある。よって本発明の第1〜第5実施形態においては、印加電圧の大小によって階調表示が可能であり、且つ応答速度が速い、例えば応答速度(立上り応答+立下り)10msec以下、より好ましくは8msec以下の液晶、例えばOCB液晶を用いることで最大の効果を発揮するといえる。尚、この実施形態に用いられるOCB液晶は、応答速度(立上り応答+立下り)が7msecに設定されており、十分な効果が得られた。
尚、第2〜第5実施形態において用いるバックライトBLは、LEDバックライトや短残光タイプのCCFL(冷陰極型蛍光ランプ)のように残光の少ない(すなわちOFFからONへの切換え、あるいはONからOFFへの切換えでの輝度の立ち上がり、立ち下がりが急峻な)ものが望ましい。また、第1〜第5実施形態の駆動を行うにあたり、液晶表示装置は1フレーム分の映像信号を記憶するためのメモリ(フレームメモリ)を備えていることが望ましい。このフレームメモリは、ソースドライバXDの中に組み込まれていてもよいし、制御回路5の中に組み込まれていてもよい。
以下、本発明の第6実施形態に係る液晶表示装置について説明する。
図9はこの液晶表示装置における駆動タイミングを示す。本実施形態の特徴は、[i]これまでの第1〜4実施形態と異なり、第1期間(黒挿入期間)と第2期間(信号書込期間+ホールド期間)が部分的にオーバラップすること、および[ii]第2期間の始まるタイミング、すなわち信号書込走査の開始タイミングを温度に応じて制御することにある。
第1期間と第2期間のオーバラップする部分では、例えば図10に示すように1水平周期単位で交互に黒挿入走査と信号書込走査を行うものとする。
本方式におけるタイミング設定の考え方は以下のとおりである。
まず1個の画素に黒挿入用の非映像信号あるいは映像信号を書き込むために十分な基本水平周期(図10においてTHで示した書込み期間。この期間は黒挿入書込み用と映像信号書込み用とで同じ長さにする必要は無いがここでは簡単のため同じとする)を決定する。そうすると、黒挿入書込みあるいは映像信号書込みにて画面上から下まで(あるいは下から上まで)走査するのに必要な時間が2×TH×走査線数として算出される。図9では、このようにして求めた走査時間が1フレームの50%以下である36%である場合を例にとって示してある。
次に、黒挿入走査と信号書込走査の相対的な時間関係は次のようにして決定される。いま、黒挿入走査の開始のタイミングを図9のようにフレーム期間の先頭に固定すると、信号書込走査の開始タイミングを変化させることで相対的な時間関係を変えることができる。黒挿入走査開始(すなわちフレーム期間の先頭)から信号書込み走査開始までの時間(これをTBとする)を小さくすればするほどホールド期間を長く確保することができ輝度を大きくすることができるが、小さすぎるとOCB液晶が逆転移を起こしてしまう。そこで、TBは逆転移が発生しない範囲でできる限り小さな値に設定するものとする。一般に逆転移は高温で発生しやすく低温では発生しにくいため、温度に応じて、高温ではTBを大きく設定し、低温ではTBを小さく設定するものとする。図9では、逆転移が発生しない条件として室温(〜20℃)では1フレームの13%、低温(−20℃)では1フレーム期間の1%に設定した場合を例にとって示してある。
バックライトBLの点灯開始は、信号書込走査が完了するタイミングとし、点灯終了は次フレームの黒挿入が始まるタイミングとする(勿論、必ずしも厳密に一致させる必要は無く、多少のずれはあってもよい)。点灯開始のタイミングは温度に応じて制御することになり、本例でのバックライト点灯時間は室温にて100%−(36%+13%)=51%、低温にて100%−(36%+1%)=63%となる。
尚、本発明の第5実施形態でも行ったように、必要に応じてバックライト点灯期間中に2回目の補助的な信号書込走査(1回目と同じ映像信号を書き込む)を行ってもよい。この2回目の走査により、信号書込み不足による悪影響(例えば輝度の低下)を防ぐことができる。
図11は上述のタイミング制御を実施する本実施形態の液晶表示装置のブロック図である。この液晶表示装置の構成は図1に示す構成を発展させたものであり、制御回路5が温度センサTSによって検知される温度情報に応じて、上述の方法で駆動タイミングを制御する点に特徴がある。尚、図1では特に明記していなかったが、制御回路5はゲートドライバYD、ソースドライバXD、およびバックライト駆動部LDの駆動タイミングを制御するタイミング制御部TCおよび映像情報を記憶しておくための第1および第2フレームメモリFM1,FM2から構成されている。
ここで、フレームメモリFM1,FM2の信号転送について図12を用いて説明しておく。外部信号源SSは映像信号を時系列で液晶表示装置に転送するが、このうちの2フレーム分(フレーム[n]、およびフレーム[n+1]と表記)について示してある。
まず、フレーム[n]期間内に外部信号源SSは1フレーム分の映像信号を出力するが、この期間内にわたってフレームメモリFM1は映像信号を受け取り、フレーム[n]期間の最後にはフレームメモリFM1において1フレーム分すべての映像信号が蓄積される。その直後、すなわちフレーム[n+1]の最初にフレームメモリFM1の映像信号は一括でフレームメモリFM2に転送される。そしてフレーム[n+1]の期間中、画面上で走査が行われるタイミングに同期させてフレームメモリFM2からソースドライバXDに映像信号が順次転送され、各画素にフレーム[n]に対応する画像の信号が書き込まれる。以上の動作をフレーム周期で繰り返すことにより、画面上に1フレーム遅れで動画を表示することができる。
本発明の第1〜4実施形態においては黒挿入走査と信号書込走査が時間的に分離されていたため、黒挿入走査の開始から信号書込走査の開始までの時間(図9のTBに相当する時間)を画面上で上から下まで黒挿入走査をするのに要する時間以下に設定することはできなかったが、第6実施形態においては黒挿入走査と信号書込走査がオーバラップしているためこの制限が無く、逆転移防止によって既定される下限値まで短縮することができる。これによりバックライトの点灯時間を稼ぐことができ、第1〜4実施形態よりもさらに高輝度を得ることが可能になる。
さらに、OCBは低温にて逆転移が発生しにくくなるという事実を有効活用すれば、低温にてよりバックライト点灯時間を長くすることができる。一般に低温になるほどバックライトBLの輝度は暗くなり、また液晶の応答速度も遅くなるため、表示画像の輝度も暗くなる傾向があるが、第6の実施形態によればこのような低温での輝度低下を補償することが可能となり、低温でも十分に明るい映像を得ることが可能になる。
また第6の実施形態においては、図10に示すようTH毎に黒挿入書込みと信号書込みを切り替えているため、フレームメモリFM2からソースドライバXDへの信号転送の速度は第1〜4実施形態の場合の半分程度でよく、制御回路5側の負担が小さい(すなわち制御回路5の動作周波数を下げることができ、回路規模の縮小や消費電力の低減が可能)という利点もある。
尚、本方式においてはソースドライバ出力をTH毎に切り替えるため信号線充放電に係わる消費電力は若干増加する。したがって、消費電力に対する要求はそれほど厳しくないが高輝度(特に低温も含めて)が要求されるような分野(例えば車載用ディスプレイなど)に適した駆動方法である。
ところで、図10では黒挿入走査、信号書込走査いずれも1回の走査につき各ゲート線を1回だけ駆動しているが、図13のように複数回駆動することも可能である(図13では黒挿入走査、信号書込走査ともに3回駆動させる場合を図示)。こうすれば書き込み特性を改善することができ、書き込み不足による輝度の低下を防ぐことができるという利点が得られる。
さらに、図14に示すように駆動用ゲートパルスが数水平周期(H)の範囲で離して出力されるようにゲートドライバ出力をスイッチングさせてもよい。こうすると継続する2回のスイッチングの間の期間での液晶過渡応答による書き込み増強効果(液晶分子が電圧に対して過渡応答して印加電界方向の誘電率が増大し、同じ印加電圧でもより多くの電荷量が蓄積され、見かけ上書き込み特性が向上する)が得られ、同じスイッチング回数でも図13より高い書き込み特性が得られる。一般にゲート消費電力はゲートのスイッチング回数に比例して増加するが、図14の方式ならば図13と同じ消費電力でより高い書き込み特性を得られることになる。
上記した各実施形態の液晶表示装置は光透過型を例にとって説明したが、半透過型の液晶表示装置等であってもかまわない。
1…アレイ基板、2…対向基板、3…液晶層、DP…液晶表示パネル、CNT…表示制御部、5…制御回路、YD…ゲートドライバ、XD…ソースドライバ、LD…バックライト駆動部、BL…バックライト、PX…液晶画素、PE…画素電極、CE…共通電極、W…画素スイッチング素子、Y…ゲート線、X…ソース線。