JP2007291575A - アクリル系収縮性繊維およびそれを用いたパイル布帛 - Google Patents

アクリル系収縮性繊維およびそれを用いたパイル布帛 Download PDF

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Abstract

【課題】高い延伸倍率を付与する条件で延伸処理し、かつ染色処理を施しても、高い収縮機能を有する、横断面形状が扁平であるアクリル系収縮性繊維、および該繊維を短パイル部を構成する繊維として用いたパイル布帛を提供する。
【解決手段】アクリル系共重合体(A)を含んでなる合成繊維であって、80℃以下の温度で染色可能であり、かつ染色した後も乾熱130℃で収縮率10〜40%の範囲で収縮する機能を有し、さらに繊維横断面の下記式で表される扁平率RAが3〜20であることを特徴とし、好ましくは、繊維を構成する重合体が、アクリル系共重合体(A)30〜99重量%と、アクリル酸エステルとその他共重合可能な他のビニル系モノマーとからなる共重合体(B)1〜70重量%とを混合してなるアクリル系収縮性繊維およびそれを用いたパイル布帛は、前記課題を解決したものとなる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アクリル系収縮性繊維およびそれを用いたパイル布帛に関する。更に詳しくは、アクリル系収縮性繊維、並びに長パイル部および短パイル部からなり、短パイル部を構成する繊維として前記アクリル系収縮性繊維を用いたパイル布帛に関する。
アクリル系繊維は、獣毛様風合いを有することから玩具、衣料等の立毛商品に用いられている。前記立毛商品のなかでも、パイル布帛の分野では、天然毛皮に近い外観や触感を付与するために、天然毛皮のダウンヘアー部に相当する短パイル部を収縮性繊維で、ガードヘアー部に相当する長パイル部を非収縮性繊維で構成する例が多い。
このようなパイル布帛に関し、短パイル部に繊維断面形状が扁平である収縮性繊維を用いることにより、パイル布帛の立毛感や毛さばき感等を良好にして、より天然毛皮に近い外観や触感を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、従来の収縮性繊維は、染色すると染色時の熱で収縮するため、染色後にはそれ以上収縮できないものとなる。従って、従来の収縮性繊維を染色した後に、パイル布帛の短パイル部を構成する繊維として用いた場合には、該繊維が本来収縮性能を発現すべきパイル布帛製造のテンター工程において、もはや収縮しないため、長パイル部と短パイル部の段差を生じさせることができなくなる問題があった。一方、テンター工程で収縮性を発現させるために、染色時に収縮しない程度の温度で処理した場合には、染料が吸尽せず、十分な発色が得られない問題があった。
上記の理由より、従来の収縮性繊維は、十分な染色をすることができないため、紡糸工程であらかじめ着色することによる、限られた色のものしか市場に提供することができなかった。このことは、意匠性が重視されるパイル布帛の分野では、致命的な欠点であった。
また、収縮性繊維を染色可能にする方法として、易染性ポリマーを含有するポリマーを混合することにより、低温染色性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、このような方法では、扁平断面を有する染色可能な収縮性繊維を作成することができないといった問題があった。
その理由として、収縮性繊維の収縮性を、染色後にも高い状態で残すためには、染色時に収縮する量を考慮した従来よりも高い収縮性を付与する必要がある。しかし、高い収縮性を繊維に付与するためには、紡糸工程における延伸工程を、低い温度で、かつ高い延伸倍率を付与する条件で処理を行い、繊維に大きな歪みを与える必要がある。
しかしながら、上記のような条件で繊維横断面形状が扁平である繊維に延伸処理を施すと、該繊維が扁平断面の短軸方向に割れてしまい、繊維の強度が弱くなり、糸切れを起こしやすくなり、製造工程の安定的な操業が困難となり、不良品の発生が増大する問題があった。さらには、繊維の繊度においてもバラツキが発生するため、安定した品質のパイル布帛を得ることができなかった。
国際公開第04/009891号パンフレット 国際公開第05/064050号パンフレット
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、高い延伸倍率を付与する条件で延伸処理し、かつ染色処理を施しても、高い収縮機能を有する、横断面形状が扁平であるアクリル系収縮性繊維、および該繊維を短パイル部を構成する繊維として用いたパイル布帛を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ガラス転移点の低い、アクリル酸エステルからなる共重合体とアクリル系共重合体とを混合して収縮繊維を作成することにより、繊維の靭性が高くなり、歪みが大きくかかる低い温度で高い延伸倍率の延伸処理を施し、かつ繊維の横断面形状を所定の扁平率となる扁平断面としても、繊維が扁平断面の短軸方向に割れないものとできることを見出した。
すなわち、本発明は、アクリル系共重合体(A)を含んでなる合成繊維であって、80℃以下の温度で染色可能であり、かつ染色した後も乾熱130℃で収縮率10〜40%の範囲で収縮する機能を有し、さらに繊維横断面の下記式で表される扁平率RAが3〜20であることを特徴とするアクリル系収縮性繊維に関する。
扁平率RA=WL/WS
ここに、WLは、繊維の横断面形状における長軸の長さ、WSは短軸の長さを示す。また、RAは、無作為に抽出した10本の繊維からの扁平率の平均値を示す。
また、繊維を構成する重合体が、前記アクリル系共重合体(A)30〜99重量%と、アクリル酸エステルとその他共重合可能な他のビニル系モノマーとからなる共重合体(B)1〜70重量%とを混合してなることが好ましい。
さらに、前記共重合体(B)が、アクリロニトリル5〜70重量%、アクリル酸エステル20〜94重量%およびスルホン酸含有ビニル系モノマー1〜40重量%からなることが好ましい。
さらに、60℃以上80℃以下で染色したときの相対飽和値が0.8以上であることが好ましい。
また、本発明は、長パイル部と短パイル部とからなるパイル布帛であって、前記短パイル部を構成する繊維として、前記アクリル系収縮性繊維を用いることを特徴とするパイル布帛に関する。
さらに、長パイル部と短パイル部の段差が明確であることが好ましい。
以上にしてなる本発明のアクリル系収縮性繊維は、繊維の横断面形状が扁平であって、任意の色に染色した後も高い収縮機能を有するものとなる。
また、前記アクリル系収縮性繊維を短パイル部を構成する繊維に用いたパイル布帛は、毛さばき性が良好で、かつ任意の色にすることができるものとなり、天然毛皮のような触感および外観を有するものとなる。
本発明のアクリル系収縮性繊維は、前述のとおり、アクリル系共重合体(A)を含んでなる合成繊維であって、80℃以下の温度で染色可能であり、かつ染色した後も乾熱130℃で収縮率10〜40%の範囲で収縮する機能を有し、さらに繊維横断面の扁平率RAが3〜20であることを特徴とする。
本発明でいう収縮率とは、染色処理を施した後の収縮性繊維が、パイル布帛の加工工程におけるテンター工程でどれだけ収縮するかという指標であり、次式により求められる。ここでいうテンター工程とは、パイルの毛抜けを防止するため、パイルの裏面に接着剤を付着させ、その付着剤を所定の温度で乾燥させる工程である。
収縮率(%)=((Ld−Lds)/Ld)×100
ここに、Ldは、任意の温度で染色した後の繊維の長さであり、Ldsは、均熱オーブンを用いて130℃で5分間処理した後の繊維の長さである。
本発明のアクリル系収縮性繊維を、パイル布帛の短パイル部を構成する繊維として用いる場合には、後に詳述するように、パイル布帛の加工工程におけるテンター工程で収縮させる。テンター工程は、通常、乾熱130℃前後で行われるため、前記収縮率は乾熱130℃で測定するものとする。
本発明のアクリル系収縮性繊維は、染色後の繊維の収縮率が10%未満になると、該繊維を短パイル部に用いてパイル布帛を加工する際に、長パイル部と短パイル部の段差が小さくなるため段差が明確にならず、天然毛皮のような、高い意匠性のある外観特性を有するパイル布帛が得られない。「段差が明確」であるとの判定は、外観の風合い評価によるものであるが、これを長パイル部と短パイル部の段差を数値で表せば、前記段差が1mm以上であることが目安となる。一方、染色後の繊維の収縮率が40%を超えると、該繊維を短パイル部に用いてパイル布帛を加工する際に、短パイル部の密度が高くなりすぎるため、パイル布帛の風合いが堅くなり、天然毛皮のようなパイル布帛が得られない。そのため、本発明のアクリル系収縮性繊維において、染色後の乾熱130℃の収縮率は10〜40%とする。
本発明でいう扁平率RAとは、繊維横断面形状における長軸の長さと短軸の長さとの比で表される。ここで、長軸とは、繊維横断面形状に外接する長方形の長辺のことをいい、短軸とは前記長方形の短辺のことをいう。より詳細には、扁平率RAは次のようにして求められる。すなわち、無作為に抽出した繊維の横断面形状における長軸の長さWLと、短軸の長さWSとを測定し、下記式に基づき、扁平率Rを求める。ここで、扁平率RAは、無作為に抽出した10本の繊維からそれぞれ求めた扁平率Rの平均値である。
A=WL/WS
本発明のアクリル系収縮性繊維の横断面形状は、パイル布帛に加工した時の毛さばき性を良好にするために、扁平であって、扁平率RAが3〜20であり、より好ましくは5〜18である。扁平率RAが3未満では、パイル布帛に加工した時の毛さばき性が不良になり、天然毛皮のような風合いを有するパイル布帛が得られない。一方、扁平率RAが20を超えると、繊維のコシが無くなり、パイル布帛に加工した時の立毛感がなくなる。
本発明に用いる前記アクリル系共重合体(A)とは、アクリロニトリルを30〜98重量%と、アクリロニトリルと共重合可能な他のビニル系モノマーを70〜2重量%、およびこれらと共重合可能なスルホン酸基含有ビニルモノマー0〜10重量%よりなる共重合体である。アクリロニトリルの含有量が30重量%未満では、耐熱性が低下し、パイル加工性が低下する傾向にある。一方、アクリロニトリルの含有量が98重量%を超えると、紡糸工程における延伸性が低くなり、高い延伸倍率で延伸することが困難となって高い収縮性が得られにくくなる。
前記アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニルおよび臭化ビニリデン等に代表されるハロゲン含有ビニルおよびハロゲン含有ビニリデン類、アクリル酸やメタクリル酸に代表される不飽和カルボン酸類およびこれらの塩類、メタクリル酸メチルに代表されるメタクリル酸エステル類、グリシジルメタクリレート等に代表される不飽和カルボン酸のエステル類、酢酸ビニルや酪酸ビニルに代表されるビニルエステル類、アクリルアミドやメタクリルアミドに代表されるビニル系アミド類、ビニルピリジンやその他メチルビニルエーテル,メタクリロニトリル等公知のビニル化合物が挙げられ、これらのモノマーを単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
前記アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーの含有量が2重量%より小さいと、染色性が悪くなる傾向にある。一方、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーの含有量が70重量%を超えると、パイル布帛や繊維に加工した後の風合いが悪くなる。また、前記スルホン酸基含有ビニルモノマーは、繊維の染色性を高めるために共重合させることが好ましいが、前記スルホン酸基含有ビニルモノマーの含有量が10重量%を超えると、共重合体(A)の親水性が高くなりすぎ、繊維への加工が困難になる。
前記アクリル系共重合体(A)において、前記アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーとしてアクリル酸エステルを共重合させる場合、アクリル酸エステルの共重合量が20重量%以上となると、アクリル系収縮性繊維の耐熱性が低くなりすぎ、パイル布帛への加工が困難になるため、前記アクリル系共重合体における前記アクリル酸エステルの含有量は、20重量%未満とし、より好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは0重量%とする。
本発明のアクリル系収縮性繊維は、前述のとおり、横断面形状を扁平とし、かつ染色後においても高い収縮機能を有するものとするため、紡糸工程において高い延伸倍率で延伸する必要があるが、このような延伸処理を施した際に繊維が割れることを防止するために、繊維の靭性を向上させる必要がある。繊維の靭性を向上させる方法としては、該繊維の基幹となるアクリル系共重合体(A)に、ガラス転移点の低い成分を共重合させることが考えられる。しかしながら、アクリル系共重合体(A)にガラス転移点の低い成分を共重合させると、繊維自体のガラス転移点が大きく低下するため、熱に敏感になり、低い温度で染色を行っても大きく収縮してしまい、パイル布帛を製造するテンター工程において、もはや収縮が発現しなくなる。さらには、繊維の耐熱性が低下するため、パイル加工工程において、繊維が焦げたり、繊維同士が融着するためにパイル布帛の風合いが不良になる。
そこで、本発明のアクリル系収縮性繊維(A)には、該繊維を構成する重合体として、前記アクリル系共重合体(A)に、ガラス転移点の低い成分であるアクリル酸エステルと、その他共重合可能なビニル系モノマーとからなる共重合体(B)(以下、単に「アクリル酸エステルを含む共重合体」という場合がある。)を、混合して用いることが好ましい。このように、本発明のアクリル系収縮性繊維は、前記アクリル系共重合体(A)に、ガラス転移点の低い成分を共重合させるのではなく、混合することにより、前記アクリル系共重合体(A)自体が有するガラス転移点を大きく変化させずに、繊維全体としてのガラス転移点を低くすることができる。従って、繊維の耐熱性を低下させずに、繊維の靭性を向上させることが可能となる。
前記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が好ましく、これらのモノマーを単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)における前記アクリル酸エステルの含有量は、ガラス転移点を下げるために、20〜94重量%とすることが好ましい。前記共重合体(B)におけるアクリル酸エステルの含有量が20重量%より小さいとガラス転移点が下がらず繊維の靭性が上がらない。一方、アクリル酸エステルの含有量が94重量%を超えると、アクリル酸エステルを含む共重合体(B)と前記アクリル系共重合体(A)との親和性が悪くなり、緻密な繊維が得られない。本発明のアクリル系収縮繊維は、繊維が緻密でなく空隙を有する構造をとると、収縮性が悪くなり、染色した場合に、空隙で光が乱反射するために白ぼけた発色となるため、繊維構造は緻密なほうが良い。
前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)において、前記アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系モノマーとしては、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等に代表されるハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類、アクリル酸、メタクリル酸に代表される不飽和カルボン酸類及びこれらの塩類、メタクリル酸メチルに代表されるメタクリル酸エステル、グリシジルメタクリレート等に代表される不飽和カルボン酸のエステル類、酢酸ビニルや酪酸ビニルに代表されるビニルエステル類、スチレンスルホン酸、パラスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、パラメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸に代表されるスルホン酸含有ビニル系モノマーまたはこれらの金属塩類およびアミン塩類、アクリルアミドやメタクリルアミドに代表されるビニル系アミド類、ビニルピリジンやその他メチルビニルエーテル、メタクリロニトリル等公知のビニル化合物があり、これらのモノマーを単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
前記アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系モノマーのうちの1つとして、アクリロニトリルを用いることが好ましく、該アクリロニトリルの含有量は、前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)中に、5〜70重量%とすることが好ましい。このようにアクリロニトリルを用いることにより、前記共重合体(B)と、前記アクリル系共重合体(A)との親和性をより向上させることができる。アクリロニトリルの含有量を、5重量%以上とすることで、前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)と前記アクリル系共重合体(A)との親和性をより向上させることができる。一方、アクリロニトリルの含有量が70重量%を超えると、前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)のガラス転移点が高くなり、アクリル系収縮性繊維の靭性を向上させることができない。
前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)には、染色性を向上させるために、スルホン酸含有ビニル系モノマーを1〜40重量%共重合させることが好ましい。アクリル酸エステルを含む共重合体(B)におけるスルホン酸含有ビニル系モノマーの含有量が1重量%より小さいと、十分な染色性が得られにくくなる傾向にあり、一方、スルホン酸含有ビニル系モノマーの含有量が40重量%を超えると、親水性が高くなりすぎ、アクリル酸エステルを含む共重合体(B)と前記アクリル系共重合体(A)との親和性が悪くなるため、緻密な繊維が得られない。
このように、本発明におけるアクリル酸エステルを含む共重合体(B)、すなわちアクリル酸エステルとその他共重合可能なビニル系モノマーからなる共重合体(B)は、アクリロニトリル5〜70重量%、アクリル酸エステル20〜94重量%およびスルホン酸含有ビニル系モノマー1〜40重量%からなる共重合体であることが好ましい。
本発明のアクリル系収縮性繊維を構成する重合体は、前記アクリル系共重合体(A)30〜99重量%と、アクリル酸エステルを含む共重合体(B)1〜70重量%を混合してなることが好ましい。前記繊維を構成する重合体として、前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)を、1重量%より少なく混合すると、繊維の靭性が上がらず、延伸工程で繊維が扁平断面の短軸方向に割れてしまう。一方、70重量%を超えて混合すると、繊維の耐熱性が低下し、繊維加工工程で繊維同士が融着してしまう。そのため、前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)は、前記繊維を構成する重合体として、1〜70重量%混合することが好ましく、より好ましくは4〜40重量%混合する。
本発明のアクリル系収縮性繊維は、以下のようにして製造される。すなわち、前記アクリル系共重合体(A)と前記アクリル酸エステルを含む共重合体(B)を、有機溶剤、例えば、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはジメチルスルホキシド等に溶解、混合させて紡糸原液とする。前記紡糸原液には、酸化チタン、水酸化アルミニウム又は複数の顔料、着色剤、防錆、着色防止、耐光性等の効果のある安定剤を、紡糸に支障をきたさない限り使用することも可能である。前記紡糸原液を通常、湿式あるいは、乾式の紡糸法でノズルより紡出し、その後1次延伸、乾燥を行う。得られた糸条を70〜140℃で1.2〜4.0倍に2次延伸することで、高収縮率の繊維を得ることができる。本発明のアクリル系収縮繊維は、染色後にも高い収縮性を得るために、染色工程の熱での収縮を考慮して、通常の収縮繊維よりも高い収縮性を必要とする。そのためには、製造過程で繊維に高い歪みを与える必要がある。高い歪みを与える手段としては、上記の2次延伸工程において、低い温度でかつ、高い延伸倍率の延伸を与えることが考えられ、好ましくは、100〜120℃で1.5〜2.0倍に2次延伸を行う。
本発明のアクリル系収縮性繊維は、上記のように紡糸工程で紡糸した後、さらに染色工程において染色した後も、高い収縮機能を有するものとするために、前記染色工程における処理温度は、100℃以下とする必要がある。アクリル系収縮性繊維は、パイル布帛の製造に用いる際には、パイル布帛加工におけるテンター工程で収縮機能を発現する。アクリル系収縮繊維を染色した後も、前記テンター工程においてさらに収縮させるためには、テンター工程で受ける熱量よりも、小さい熱量を付与する条件で染色を行う必要がある。通常、染色は、繊維を水に浸漬させて行うが、水の熱伝導率が高いことと、繊維に対して可塑化効果を有することより、100℃の水が繊維に与える熱量は、乾熱130℃で処理した際の熱量に相当する。通常、アクリル繊維は水に浸漬させた状態で、100℃において染色するが、上記理由より、100℃で染色するとテンター工程でもはや収縮しなくなるため、染色後にもテンター工程で収縮させるためには100℃未満で染色する必要がある。さらに、天然毛皮のような、意匠性のある外観特性をもつパイル布帛を得るためには、80℃以下で染色する必要がある。
本発明のアクリル系収縮繊維は、80℃以下で染色可能とするために、親水性が高く、かつ染料と結合する部位を有するスルホン酸含有ビニル系モノマーを繊維中に0.8〜2.0重量%含まれていることが好ましい。
また、本発明のアクリル系収縮性繊維は、60℃以上80℃以下で染色したときの相対飽和値が0.8以上であることが好ましい。ここでいう相対飽和値とは、繊維の染色能力の指標であり、繊維を任意の温度で60分間、過飽和な量のMalachite Greenを用いて染色して飽和染着量を求め、該飽和染着量より求めたものである。前記飽和染着量および相対飽和値は下記の式より求められる。
飽和染着量=((Ao−A)/Ao)×2.5)
A:染色後の染浴の吸光度(618nm)
Ao:染色前の染浴の吸光度(618nm)
相対飽和値=飽和染着量×400/463
上記吸光度の測定は、紫外可視分光光度計(株式会社、島津製作所製、UV−2550)を用いて行った。
アクリル系繊維、例えば「カネカロン(登録商標)」SE 3.3dtex 38mm(株式会社カネカ製)がMaxilon Red GRL(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製) 0.5%omf程度の染料を吸尽した場合の発色を淡色、1%omf程度の染料を吸尽した場合の発色を中濃色、2%omf程度の染料を吸尽した場合の発色を濃色とした場合、本発明のアクリル系収縮性繊維は60℃以上で染色したときの相対飽和値が0.8以上で濃色に染色可能となり、市場で使用されているほとんどの色に染色可能となる。従って、60℃以上80℃以下で染色したときの相対飽和値は0.8以上が好ましい。尚、ここにいう「%omf」とは、出来上がった繊維中の「重量%」を意味する。
本発明のパイル布帛は、長パイル部と短パイル部とからなるパイル布帛であって、前記短パイル部を構成する繊維として、前記アクリル系収縮性繊維を用いることを特徴とする。また、長パイル部を構成する繊維としては、例えば通常のアクリル系繊維等といった、従来の非収縮性繊維を用いることができる。
本発明のパイル布帛は、以下のようにして製造される。すなわち、所定長さにカットした前記アクリル系収縮性繊維と従来の非収縮性繊維とを混綿・調湿した後、オープナー、カードを用いてスライバーを作成し、次いでパイル編織機でスライバーニッティングを行い、シャーリングマシーンでパイル部をカットしてパイル長を一定に揃える。さらに、パイルの裏面に接着剤を付着させ、テンターを用いて例えば130℃、5分で接着剤を乾燥させると共に収縮性繊維を収縮させる。その後、ポリッシャーマシーン及びシャーリングマシーンでポリッシャー仕上げ及びシャーリングを行って、長パイル部と短パイル部とからなる、段差を有するパイル布帛が得られる。
このようにして製造された本発明のパイル布帛は、毛さばき性が良好であり、かつ立毛感があるものとなる。
ここでいう毛さばき性が良好なパイル布帛とは、パイル布帛の立毛部(すなわち、パイル部)を構成する繊維が、絡み合わず、1本1本独立して存在する状態にあり、立毛部に息を吹きかけたとき、立毛部を構成する繊維が、天然の毛皮のように、風になびく状態にあるものをいう。例として、天然毛皮のチンチラは、非常にけさばき性が良好である。逆に、毛さばき性が不良なパイル布帛とは、パイル布帛の立毛部を構成する繊維が、互いに絡み合い、収束した状態にあり、立毛部に息を吹きかけても、風になびかない状態にあるものをいう。立毛部を構成する繊維の毛さばき性が良好なほうが、天然毛皮のような風合いと外観が得られるため好ましい。さらには、立毛部を構成する繊維の横断面形状が扁平であるほうが、繊維同士が互いに絡みにくくなる傾向にあるため、横断面形状が扁平の繊維を用いたパイル布帛の毛さばき性は良好になる。
また、ここでいう立毛感があるパイル布帛とは、パイル布帛の立毛部を構成する繊維が、基布に対して略垂直に立っている状態のものをいう。例として、天然のチンチラは、非常に立毛感がある。逆に、立毛感がないパイル布帛とは、パイル布帛の立毛部を構成する繊維が寝ている状態のものをいう。パイル布帛に立毛感があるほうが、天然調の風合いと外観が得られるため好ましい。立毛感を付与するためには、横断面形状が扁平の繊維を用いてパイル布帛を作成することが好ましいが、扁平率が高すぎると、コシが無くなりパイル布帛に加工した時に、立毛感が得られにくくなる。
以下、実施例を記すが、実施例中の部および%は、特記しない限り重量部および重量%を意味する。
(1)アクリル系収縮性繊維の製造例
(製造例1)
内容積20Lの耐圧重合反応装置にイオン交換水12000g、ラウリル硫酸ナトリウム54g、亜硫酸25.8g、亜硫酸水素ナトリウム13.2g、硫酸鉄0.06g、アクリロニトリル(以下、ANと記す。)294g、塩化ビニル(以下、VCと記す。)3150gを投入し、窒素置換した。重合機内温を50℃に調整し、開始剤として過硫酸アンモニウム2.1gを投入し、重合を開始した。途中、AN2526g、スチレンスルホン酸ナトリウム(以下、3Sと記す。)30g、過硫酸アンモニウム13.8gを追加しながら、重合時間5時間10分で重合した。その後、未反応VCを回収し、ラテックスを重合機より払い出し、塩析、熱処理、ろ過、水洗、脱水、乾燥し、アクリル系共重合体(A)である重合体1を得た。次に、内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン1400g、水933g、AN150g、アクリル酸メチル(以下、MAと記す。)540g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ(以下、SAMと記す。)300g、メタリルスルホン酸ソーダ(以下、MXと記す。)10gを投入し、窒素置換した。重合機内温度を55℃に調整し、開始剤として2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5gを投入し重合を開始した。途中、アゾビス10gを追加しながら16時間重合し、その後70℃に昇温し6時間重合させ重合体濃度30%のアクリル酸エステルを含む共重合体(B)である重合体2の溶液を得た。前記重合体1が30%になるようにアセトンを加え溶解した該重合体1の溶液に、前記重合体2の溶液を加え、繊維を構成する重合体中に、該重合体2が4重量%となるように、つまり前記重合体1が96重量%となるように混合したものを紡糸原液とした。得られた紡糸原液を短軸が0.04mm、長軸が0.55mmの長方形型の500孔の口金を通して25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.0倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に105℃で1.8倍に2次延伸した7.8dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例2)
製造例1の紡糸原液を、短軸が0.04mm、長軸が0.24mmの長方形型の500孔の口金を通して、25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した3.3dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例3)
製造例1の紡糸原液を、短軸が0.04mm、長軸が0.55mmの長方形型の500孔の口金を通して、25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した7.8dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例4)
製造例1の紡糸原液を、短軸が0.055mm、長軸が0.88mmの長方形型の500孔の口金を通して、25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した17dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例5)
内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン1867g、水466g、AN300g、MA550g、SAM150gを投入し窒素置換した後は、製造例1における重合体2と同様の方法で作成し、アクリル酸エステルを含む共重合体(B)である重合体3を得た。次いで、製造例1で得た重合体1を30%になるようにアセトンを加え溶解した該重合体1の溶液に、前記重合体3の溶液を加え、繊維を構成する重合体中に、該重合体3が10重量%となるように、つまり前記重合体1が90重量%となるように混合したものを紡糸原液とした。得られた紡糸原液を短軸が0.04mm、長軸が0.55mmの長方形型の500孔の口金を通して25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した7.8dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例6)
内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン2100g、水233g、AN400g、MA550g、SAM50gを投入し、窒素置換した後は、製造例1における重合体2と同様の方法で作成し、アクリル酸エステルを含む共重合体(B)である重合体4を得た。次いで、製造例1で得た重合体1を30%になるようにアセトンを加え溶解した該重合体1の溶液に、前記重合体4の溶液を加え、繊維を構成する重合体中に、該重合体4が40重量%となるように、つまり前記重合体1が60重量%となるように混合したものを紡糸原液とした。得られた紡糸原液を短軸が0.04mm、長軸が0.55mmの長方形型の500孔の口金を通して25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した7.8dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例7)
内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン2100g、水233g、AN400g、アクリル酸エチル(以下EAと記す。)550g、SAM50gを投入し、窒素置換した後は、製造例1における重合体2と同様の方法で作成し、アクリル酸エステルを含む共重合体(B)である重合体5を得た。次いで、製造例1で得た重合体1を30%になるようにアセトンを加え溶解した該重合体1の溶液に、前記重合体5の溶液を加え、繊維を構成する重合体中に、該重合体5が40重量%となるように、つまり前記重合体1が60重量%となるように混合したものを紡糸原液とした。得られた紡糸原液を短軸が0.04mm、長軸が0.55mmの長方形型の500孔の口金を通して25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した7.8dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例8)
内容積5Lの耐圧重合反応装置にアセトン2100g、水233g、AN400g、メタクリル酸メチル(以下MMAと記す。)550g、SAM50gを投入し、窒素置換した後は、製造例1における重合体2と同様の方法で作成し、アクリル酸エステルを含む共重合体(B)である重合体6を得た。次いで、製造例1で得た重合体1を30%になるようにアセトンを加え溶解した該重合体1の溶液に、前記重合体6の溶液を加え、繊維を構成する重合体中に、該重合体6が40重量%となるように、つまり前記重合体1が60重量%となるように混合したものを紡糸原液とした。得られた紡糸原液を短軸が0.04mm、長軸が0.55mmの長方形型の500孔の口金を通して25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した7.8dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例9)
製造例1で得た重合体1を30%になるようにアセトンを加え溶解した物を紡糸原液とした。得られた紡糸原液を短軸が0.04mm、長軸が0.55mmの長方形型の500孔の口金を通して25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した7.8dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例10)
製造例1の紡糸原液を、短軸が0.025mm、長軸が0.80mmの長方形型の500孔の口金を通して、25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した7.8dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例11)
製造例1の紡糸原液を、直径0.08mmの円形の500孔の口金を通して、25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸した4.4dtexの収縮性繊維を得た。
(製造例12)
製造例1で得た紡糸原液を短軸が0.04mm、長軸が0.55mmの長方形型の500孔の口金を通して25℃、30%のアセトン水溶液中に吐出し、さらに25℃、20%アセトン水溶液中で2.9倍に1次延伸した後60℃で水洗した。ついで130℃で乾燥、更に120℃で1.9倍に2次延伸し、その後、緊張状態で145℃で5分間熱処理し、7.8dtexの収縮性繊維を得た。
製造例1〜12で得られた収縮性繊維の重合体組成を表1に示す。
Figure 2007291575
(2)収縮性繊維の染色
収縮性繊維の染色は、オーバーマイヤー染色機を用いて行った。まず、染色機に収縮繊維1kgと水10Lを仕込み、2℃/minのペースで昇温し、40℃になったところで、染料(Maxilon Red GRL(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製))0.5%omfを添加した。さらに、2℃/minのペースで70℃まで昇温し、70℃で60min保持した。その後、冷水で30℃まで冷却し、染色液を排水した後、綿を染色機より取り出し、脱水機にて、脱水処理して、40℃で乾燥した。
(3)パイル布帛の作成
製造例1〜12で製造し、さらに前記(2)の手順で染色した収縮性繊維と、後述する非収縮繊維を後述する割合で混合し、混綿・調湿した後、Kodama Tech Co.Ltd.製オープナー、Howa Machinery Ltd.Nagoya製カードを用いてスライバーを作成した。次いでMayer社製ハイパイル編織機でスライバーニッティングを行い、岩倉精機社製シャーリングマシーンでパイル部をカットしてパイル長を一定に揃えた後、パイルの裏面にアクリル酸エステル系接着剤を付着させ、Hirano Tecseed社製テンターを用いて130℃、5分で接着剤を乾燥させると共に収縮性繊維を収縮させた。その後、岩倉精機社製ポリッシャーマシーン、シャーリングマシーンでポリッシャー仕上げおよびシャーリングを行ってパイル布帛に仕上げた。
(4)扁平断面が割れている度合いの評価
上記のように、扁平断面を有する繊維は、扁平断面の短軸方向に割れやすい。ここでは、扁平断面が割れている度合いの評価方法を示す。その評価方法は、作成した繊維から100本の繊維を無作為に抽出し、それぞれの繊度を測定する。その時、繊維を作成する時の目標とする繊度に対して1/2以下の繊度を有する繊維の本数を計測する。その本数より判定を行い、15本以下を良好(○)、16本以上を不良(×)とする。
目標とする繊度に対して、1/2以下の繊度を有する繊維の本数が16本以上になると、糸切れを起こし製造工程の安定性が悪くなる。さらには、安定した品質のパイル布帛を得ることができない。従って、目標とする繊度に対して、1/2以下の繊度を有する繊維の本数は15本以下が好ましい。
(5)パイル布帛の外観と風合いの評価
(3)のようにして作成した段差を有するパイル布帛に対し、「段差の効果」、「毛さばき性」、「立毛感」をそれぞれ視覚的及び感覚的な観点から、3段階評価による官能的評価を行い、以下の基準で評価した。尚、評価結果は評価者5名の平均値とした。
(5−1)「段差の効果」の評価
○:長パイル部と短パイル部の段差が明確な外観特性を有する。
△:長パイル部と短パイル部の段差がやや明確な外観特性を有する。
×:長パイル部と短パイル部の段差が明確でない外観特性を有する。
長パイル部と短パイル部の段差が明確なパイル布帛とは、外観特性により評価するが、長パイル部と短パイル部の段差が1mm以上あることが目安となり、段差が明確でないパイル布帛とは、長パイル部と短パイル部の段差が1mm未満であることが目安となる。
(5−2)「毛さばき性」の評価
○:非常に毛さばき性が良い(非常に天然毛皮のチンチラに近い)
△:やや毛さばき性がよい(やや天然毛皮のチンチラに近い)
×:毛さばき性が悪い(天然毛皮のチンチラに劣る)
(5−3)「立毛感」の評価
○:非常に立毛感がある(非常に天然毛皮のチンチラに近い)
△:やや立毛感がある(やや天然毛皮のチンチラに近い)
×:立毛感がない(天然毛皮のチンチラに劣る)
(6)平均パイル長の測定
パイル布帛中のパイル部を構成している繊維を毛並みが揃うように垂直に立たせ、ノギスを用いることで、パイル部を構成している繊維の根元から長パイル部の先端までの長さ(パイル布帛裏面からの長さではない)の測定を10ヶ所について行い、その平均値を平均パイル長とした。
(実施例1〜8)
製造例1〜8で得られた収縮性繊維について、扁平断面が割れている度合いの評価、70℃で染色した時の相対飽和値、70℃で染色した後の収縮率、扁平率RAを評価、測定した結果を表2に示す。尚、相対飽和値、収縮率、扁平率RAの測定方法は、既に説明したとおりである。
Figure 2007291575
さらに、製造例1〜8で得られた収縮性繊維を染色し、染色後の収縮繊維と市販の非収縮繊維であるアクリル系繊維「カネカロン(登録商標)」AH(R/W)3.3dtex、38mm(株式会社カネカ製)をそれぞれ60%/40%の重量比率で混綿し、パイル長12mmのハイパイル布帛を作成した。それぞれ作成したハイパイルについて、段差効果、毛さばき性、立毛感を評価した結果を表2に示す。
製造例1〜8で得られた収縮性繊維の物性を評価した結果は、どの収縮性繊維についても良好で、扁平断面が割れている度合いが低く、染色性も良好であり、かつ染色後にも高い収縮率が得られた。さらに、それらの収縮性繊維を用いて作成したパイル布帛について、「段差効果」、「毛さばき性」および「立毛感」について評価したところ、良好な結果が得られた。
(比較例1)
製造例9で得られた収縮繊維について、扁平繊維が割れている度合いの評価、70℃で染色した時の相対飽和値、70℃で染色した後の収縮率、扁平率RAを評価、測定した結果を表2に示す。
結果は、70℃で染色した後の収縮率は良好であるが、アクリル酸エステルを含む共重合体(B)を含んでいないために、繊維の靭性が低く、扁平断面が割れている度合いが高い。さらには、70℃で染色した時の相対飽和値も不良であった。
さらに、製造例9で得られた収縮性繊維を染色し、染色後の収縮繊維と市販の非収縮繊維であるアクリル系繊維「カネカロン(登録商標)」AH(R/W)3.3dtex、38mm(株式会社カネカ製)をそれぞれ60%/40%の重量比率で混綿し、パイル長12mmのハイパイル布帛を作成した。それぞれ作成したハイパイルについて、段差効果、毛さばき性、立毛感を評価した結果を表2に示す。その結果、「段差効果」は良好であったが、扁平断面が割れていることから、外観が低下し「毛さばき性」と「立毛感」が不良なパイル布帛が得られた。
(比較例2)
製造例10で得られた収縮繊維について、扁平繊維が割れている度合いの評価、70℃で染色した時の相対飽和値、70℃で染色した後の収縮率、扁平率RAを評価、測定した結果を表2に示す。
その結果、扁平断面が割れている度合いが低く、染色性も良好であり、かつ染色後にも高い収縮率が得られた。
さらに、製造例10で得られた収縮性繊維を染色し、染色後の収縮性繊維と市販の非収縮繊維であるアクリル系繊維「カネカロン(登録商標)」AH(R/W)3.3dtex、38mm(株式会社カネカ製)をそれぞれ60%/40%の重量比率で混綿し、パイル長12mmのハイパイル布帛を作成した。それぞれ作成したハイパイルについて、段差効果、毛さばき性、立毛感を評価した結果を表2に示す。その結果、「段差効果」と「毛さばき性」は良好であったが、収縮性繊維の扁平率RAが大きすぎるために、収縮性繊維のコシがなくなり「立毛感」が不良なパイル布帛が得られた。
(比較例3)
製造例11で得られた収縮繊維について、70℃で染色した時の相対飽和値、70℃で染色した後の収縮率、扁平率RAを評価、測定した結果を表2に示す。尚、円形断面のため、「扁平断面が割れている度合いの評価」は行っていない。)
その結果、染色性も良好であり、かつ染色後にも高い収縮率が得られた。
さらに、製造例11で得られた収縮性繊維を染色し、染色後の収縮性繊維と市販の非収縮繊維であるアクリル系繊維「カネカロン(登録商標)」AH(R/W)3.3dtex、38mm(株式会社カネカ製)をそれぞれ60%/40%の重量比率で混綿し、パイル長12mmのハイパイル布帛を作成した。それぞれ作成したハイパイルについて、段差効果、毛さばき性、立毛感を評価した結果を表2に示す。その結果、「段差効果」と「立毛感」は良好であったが、収縮性繊維の断面が円形であるため、収縮性繊維同士が収束しやすく、「毛さばき性」が不良なパイル布帛が得られた。
(比較例4)
製造例12で得られた収縮繊維について、扁平繊維が割れている度合いの評価、70℃で染色した時の相対飽和値、70℃で染色した後の収縮率、扁平率RAを評価、測定した結果を表2に示す。
その結果、扁平断面が割れている度合いが低く、染色性も良好であったが、染色後の収縮率が5%と低い値を示した。
さらに、製造例12で得られた収縮性繊維を染色し、染色後の収縮性繊維と市販の非収縮繊維であるアクリル系繊維「カネカロン(登録商標)」AH(R/W)3.3dtex、38mm(株式会社カネカ製)をそれぞれ60%/40%の重量比率で混綿し、パイル長12mmのハイパイル布帛を作成した。それぞれ作成したハイパイルについて、段差効果、毛さばき性、立毛感を評価した結果を表2に示す。その結果、「毛さばき性」と「立毛感」は良好であったが、収縮性繊維の収縮率が低いために、収縮性繊維との段差が小さく、「段差効果」が不良なパイル布帛が得られた。

Claims (6)

  1. アクリル系共重合体(A)を含んでなる合成繊維であって、80℃以下の温度で染色可能であり、かつ染色した後も乾熱130℃で収縮率10〜40%の範囲で収縮する機能を有し、さらに繊維横断面の下記式で表される扁平率RAが3〜20であることを特徴とするアクリル系収縮性繊維。
    扁平率RA=WL/WS
    ここに、WLは、繊維の横断面形状における長軸の長さ、WSは短軸の長さを示す。また、RAは、無作為に抽出した10本の繊維からの扁平率の平均値を示す。
  2. 繊維を構成する重合体が、前記アクリル系共重合体(A)30〜99重量%と、アクリル酸エステルとその他共重合可能な他のビニル系モノマーとからなる共重合体(B)1〜70重量%とを混合してなる請求項1に記載のアクリル系収縮性繊維。
  3. 前記共重合体(B)が、アクリロニトリル5〜70重量%、アクリル酸エステル20〜94重量%およびスルホン酸含有ビニル系モノマー1〜40重量%からなる請求項1または2に記載のアクリル系収縮性繊維。
  4. 60℃以上80℃以下で染色したときの相対飽和値が0.8以上である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系収縮性繊維。
  5. 長パイル部と短パイル部とからなるパイル布帛であって、前記短パイル部を構成する繊維として、請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル系収縮性繊維を用いることを特徴とするパイル布帛。
  6. 長パイル部と短パイル部の段差が明確である請求項5に記載のパイル布帛。
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