はじめに、図6と図7を参照して、本発明が適用される手法のひとつ(以下、単に本発明の手法と称する)について説明する。なお、本発明が適用される他の手法については後述する。
ここで説明する本発明の手法は、モノパルス式により、前方中心方向近傍の探知対象物の探知を行うことを前提とする。かかる探知は、図6と図7に示されるモノパルス式レーダ51により実行される。
なお、ここでいう前方とは、モノパルス式レーダ51にとっての前方、即ち、図6と図7とでは図中上方向を指す。ただし、モノパルス式レーダ51が搭載される自車に着目すれば、[背景技術]で上述したように、モノパルス式レーダ51の搭載場所によって、ここでいう前方は、自車にとっての前方となったり後方となったりする。
モノパルス式レーダ51は、従来と同様のアンテナに加えて、即ち、2つの受信アンテナ62−L,62−Rおよび送信アンテナ61−W(図6)に加えて、さらに、送信アンテナ61−Wよりも指向性の半値角が狭角の送信アンテナ61−N(図7)を有している。即ち、モノパルス式レーダ51は、指向性の半値角がθwである送信アンテナ61−Wと、指向性の半値角がθn(θn<θw)である送信アンテナ61−Nとを有しており、送信アンテナ61−W,61−Nの切替が自在にできるように構成されている。
なお、以下、送信アンテナ61−Wを広角送信アンテナ61−Wと称し、送信アンテナ61−Nを狭角送信アンテナ61−Nと称する。
このモノパルス式レーダ51は、まず、図6に示されるように、広角送信アンテナ61−Wを用いて、前方中心方向近傍の探知対象物の探知(以下、広角探知と称する)を行う。より正確には、後述するように実際の探知は狭角送信アンテナ61−Nを用いて行われるので、広角探知では、前方中心方向近傍の探知対象物の存在可能性の有無が判断されることになる。
例えば本実施の形態の広角探知では、受信アンテナ62−L,62−Rに受信信号が受信され、その受信信号に対するモノパルス式の検知角度が閾値(例えば図7のθnよりも小さい角度)以下の場合には、前方中心方向近傍の探知対象物の存在可能性が有ると判断される。これに対して、それ以外の場合、即ち、受信アンテナ62−L,62−Rに受信信号が受信されない場合や、受信信号が受信されても、その受信信号に対するモノパルス式の検知角度が閾値を越えている場合には、前方中心方向近傍の探知対象物の存在可能性は無いと判断される。
ただし、広角探知の手法は、本実施の形態の手法に特に限定されず、モノパルス式を利用する手法であれば任意の手法でよい。例えば、モノパルス式レーダ51が探知対象物の角度のみならずその相対速度や距離も測定可能な場合、例えば後述する図10のように構成されている場合には、角度のみならず相対速度や距離も考慮して前方中心方向近傍の探知対象物の存在可能性の有無を決定する、という手法を採用することもできる。
このような広角探知により、前方中心方向近傍の探知対象物の存在可能性を検出した場合、さらに、モノパルス式レーダ51は、図7に示されるように、狭角送信アンテナ61−Nを用いて、前方中心方向近傍の探知対象物の探知(以下、狭角探知と称する)を行う。
本実施の形態の狭角探知では、上述した広角探知の本実施の形態の手法と同様の手法が適用されている。即ち、本実施の形態の狭角探知では、受信アンテナ62−L,62−Rに受信信号が受信され、その受信信号に対するモノパルス式の検知角度が閾値(例えば本実施の形態では広角探知の閾値と同一角度)以下の場合には、前方中心方向近傍の探知対象物を探知したと判断される。これに対して、それ以外の場合、即ち、受信アンテナ62−L,62−Rに受信信号が受信されない場合や、受信信号が受信されても、その受信信号に対するモノパルス式の検知角度が閾値を越えている場合には、前方中心方向近傍の探知対象物は探知せずと判断される。
ただし、狭角探知の手法は、本実施の形態の手法に特に限定されず、モノパルス式を利用する手法であれば任意の手法でよい。例えば、広角探知自体は終了しているので、単に受信信号の有無のみで、前方中心方向近傍の探知対象物の探知の有無を決定する、という手法を採用することもできる。また例えば、モノパルス式レーダ51が探知対象物の角度のみならずその相対速度や距離も測定可能な場合、例えば後述する図10のように構成されている場合には、角度のみならず相対速度や距離も考慮して前方中心方向近傍の探知対象物の探知の有無を決定する、という手法を採用することもできる。
また、本実施の形態では、広角探知で利用される閾値と、狭角探知で利用される閾値とは同一角度とされている。ただし、両者の閾値はそれぞれ別の角度を採用することも可能である。
このように、モノパルス式レーダ51は、広角探知により前方中心方向近傍の探知対象物を探知したとき、その探知を最終探知結果とせずに、さらに狭角探知を行い、狭角探知でも前方中心方向近傍の探知対象物を探知したときにはじめて、その探知を最終探知結果として採用する。これにより、より一段と正確な最終探知結果を得ることが可能になる。
換言すると、従来、ここでいう広角探知のみが行われ、その探知結果がそのまま最終探知結果として採用されていた。しかしながら、上述したように、そのような広角の探知結果は、実際に前方の探知対象物が存在するための正しい探知結果であるのか、それとも、左右前方に1つずつ探知対象物が存在するための誤探知結果であるのかの特定は困難であった。特に、左右前方に1つずつ存在する探知対象物の相対速度が同一の場合、その特定は非常に困難なものとなる。
これに対して、モノパルス式レーダ51は、狭角探知の探知結果を利用することで、広角の探知結果は、実際に前方の探知対象物が存在するための正しい探知結果であったのか、それとも、左右前方に1つずつ探知対象物が存在するための誤探知結果であったのかを正確に特定することが可能になる。
具体的には例えば、図6に示されるように、左前方に探知対象物2が存在する他、さらに、右前方に探知対象物3が存在するような場合、広角送信アンテナ61−Wを用いる広角検知が行われると、図5を用いて上述したように、0度に近い角度が検知されてしまうことになる。その結果、実際には前方中心方向近傍には何も存在しないにもかかわらず、あたかも探知対象物4が存在するように検知されてしまう。即ち、幻影でしかない探知対象物4が探知されてしまう。
そこで、このような場合、図7に示されるように、モノパルス式レーダ51は、さらに、狭角送信アンテナ61−Nを用いる狭角検知を行う。このとき、探知対象物2の相対速度v1と探知対象物3の相対速度v2にはかかわらず、即ち、相対速度v1と相対速度v2とが同一のときであっても、狭角送信アンテナ61−Nからの送信信号は探知対象物2と探知対象物3とには到達しないので、受信アンテナ62−L,62−Rには受信信号が受信されなくなる。その結果、モノパルス式レーダ51は、探知対象物2の相対速度v1と探知対象物3の相対速度v2にはかかわらず、即ち、相対速度v1と相対速度v2とが同一のときであっても、前方中心方向近傍には探知対象物は存在しないと判断すること、即ち、広角探知で探知した探知対象物4は幻影にすぎなかったと判断することが可能になる。
これに対して、後述する図14と図15に示されるように、前方中心方向近傍に実際の探知対象物(図14や図15の例では探知対象物5)が存在する場合には、その探知対象物に対して、広角送信アンテナ61−Wからの送信信号も、狭角送信アンテナ61−Nからの送信信号も到達する。その結果、広角探知でも狭角探知でも、その実際の探知対象物は探知されることになる。
以上説明した広角探知と狭角探知とを行う手法が、本発明の手法のひとつである。
かかる本発明の手法が適用されたモノパルス式レーダ51の機能を示す機能ブロック図が図8に示されている。
図8の例のモノパルス式レーダ51においては、上述したアンテナ、即ち、広角送信アンテナ61−W、狭角送信アンテナ61−N、受信アンテナ62−L、および、受信アンテナ62−Rが設けられている。さらに、モノパルス式レーダ51においては、送信信号生成部63乃至前方ターゲット探知部68が設けられている。
送信信号生成部63は、送信信号を生成して切替部64に提供する。
送信信号生成部63により生成される送信信号の形態は、広角送信アンテナ61−Wおよび狭角送信アンテナ61−Nから送信可能な形態であれば特に限定されない。送信信号の具体例については図10を参照して後述する。
切替部64は、後述する切替制御部67の制御に基づいて、送信信号生成部63からの送信信号の出力先を、広角送信アンテナ61−W側と狭角送信アンテナ61−N側とのうちの何れか一方の側に切り替える。
即ち、切替部64の出力先が広角送信アンテナ61−W側に切り替えられている場合には、送信信号生成部63からの送信信号は広角送信アンテナ61−Wから出力され、図6を用いて上述した広角探知が行われる。
一方、切替部64の出力先が狭角送信アンテナ61−N側に切り替えられている場合には、送信信号生成部63からの送信信号は狭角送信アンテナ61−Nから出力され、図7を用いて上述した狭角探知が行われる。
広角送信アンテナ61−Wまたは狭角送信アンテナ61−Nからの送信信号は、探知対象物が存在する場合には、その探知対象物において反射し、その反射信号が受信信号として受信アンテナ62−L,62−Rのそれぞれに受信される。
モノパルス式レーダ51が位相モノパルス式を採用している場合、図中実線で示されるように、受信信号抽出部65−Lは、受信アンテナ62−Lに受信された受信信号を抽出し、さらに必要に応じて、後述する角度演算部66で利用可能な別の形態に適宜変換して、それを出力信号として角度演算部66に提供する。また、受信信号抽出部65−Rは、受信アンテナ62−Rに受信された受信信号を抽出し、さらに必要に応じて、後述する角度演算部66で利用可能な別の形態に適宜変換して、それを出力信号として角度演算部66に提供する。
一方、モノパルス式レーダ51が振幅モノパルス式を採用している場合、図中実線と点線とで示されるように、受信信号抽出部65−Lは、受信アンテナ62−Lに受信された受信信号と受信アンテナ62−Rに受信された受信信号との和信号を抽出し、さらに必要に応じて、後述する角度演算部66で利用可能な形態に適宜変換して、それを出力信号として角度演算部66に提供する。また、受信信号抽出部65−Rは、受信アンテナ62−Lに受信された受信信号と受信アンテナ62−Rに受信された受信信号との差信号を抽出し、さらに必要に応じて、後述する角度演算部66で利用可能な形態に適宜変換して、それを出力信号として角度演算部66に提供する。
角度演算部66は、受信信号抽出部65−R,65−Lの各出力信号を利用して、位相モノパルス式または振幅モノパルス式に従って角度を演算する。角度演算部66の演算結果は、前方ターゲット探知部68に通知される。
切替制御部67は、後述する前方ターゲット探知部68からの切替指令に従って、切替部64の出力先を切り替える制御を行う。
前方ターゲット探知部68は、角度演算部66から通知された角度に基づいて、上述した広角探知または狭角探知を行う。そして、前方ターゲット探知部68は、広角探知後の狭角探知において、前方中心方向近傍の探知対象物を探知したと判断したときには、その探知を示す信号を外部に出力する。また、前方ターゲット探知部68は、広角探知から狭角探知に切り替えるとき、または、狭角探知から広角探知に切り替えるとき、切替指令を切替制御部67に対して発行する。なお、以下、前方ターゲット探知部68から出力される信号を、ターゲット探知信号と称する。また、この呼称に伴い、前方中心方向近傍の探知対象物を前方ターゲットとも称する。
なお、切替制御部67と前方ターゲット探知部68とは省略可能である。即ち、モノパルス式レーダ51では、あくまでも角度検知のみを行うことが可能である。ただしこの場合、切替制御部67と前方ターゲット探知部68とが有する機能については、図示せぬ外部の信号処理装置等に委譲する必要がある。
かかる図8の機能的構成を有するモノパルス式レーダ51の処理例が図9のフローチャートに示されている。
図9のステップS1において、切替部64は、切替制御部67の制御に基づいて、その出力先を広角送信アンテナ61−W側に切り替える。
ステップS2において、広角送信アンテナ61−Wは、送信信号生成部63から切替部64を介して提供されてきた送信信号を送信する。
ステップS3において、角度演算部66は、受信信号が受信されたか否かを判定する。
受信信号抽出部65−L,65−Rの各出力信号が提供されてこない間は、ステップS3において、受信信号が受信されていないと判定されて、処理はステップS1に戻され、それ以降の処理が繰り返される。なお、この場合には、切替部64の出力先は既に広角送信アンテナ61−W側に切り替えられているので、ステップS1の処理は実質実行されずに処理はステップS2に進む。
その後、図6の±θwの範囲内に他車等の探知対象物が1つ以上進入してきた場合、ステップS2の処理で送信された送信信号は1つ以上の探知対象物でそれぞれ反射し、それぞれの反射信号が受信アンテナ62−L,62−Rに受信される。すると、上述したように、受信信号抽出部65−L,65−Rの各出力信号が角度演算部66に提供されてくる。そこで、ステップS4において、角度演算部66は、受信信号抽出部65−L,65−Rの各出力信号を用いて、位相モノパルス式または振幅モノパルス式に従って角度を演算し、その演算結果を前方ターゲット探知部68に通知する。
ステップS5において、前方ターゲット探知部68は、角度演算部66から通知された角度に基づいて、前方ターゲットの存在可能性があるか否かを判定する。上述したように、本実施の形態では、前方ターゲット探知部68は、角度演算部66から通知された角度が閾値(例えば図7のθnよりも小さい角度)以下であるか否かに基づいて、前方ターゲットの存在可能性があるか否かを判定する。
ステップS5において、前方ターゲットの存在可能性がないと判定された場合、即ち、本実施の形態では角度が閾値を超えている場合、処理はステップS1に戻され、それ以降の処理が繰り返される。なお、この場合には、切替部64の出力先は既に広角送信アンテナ61−W側に切り替えられているので、ステップS1の処理は実質実行されずに処理はステップS2に進む。
これに対して、ステップS5において、前方ターゲットの存在可能性があると判定された場合、即ち、本実施の形態では角度が閾値以下の場合、前方ターゲット探知部68から切替指令が切替制御部67に対して発行され、処理はステップS6に進む。
ステップS6において、切替部64は、切替指令を受けた切替制御部67の制御に基づいて、その出力先を狭角送信アンテナ61−N側に切り替える。
ステップS7において、狭角送信アンテナ61−Nは、送信信号生成部63から切替部64を介して提供されてきた送信信号を送信する。
ステップS8において、角度演算部66は、受信信号が受信されたか否かを判定する。
具体的には例えば、図8には矢印等の図示はないが、角度演算部66は、ステップS7の送信信号の送信タイミングを送信信号生成部63から取得できるとする。この場合、その送信タイミングから所定の時間が経過しても受信信号抽出部65−L,65−Rの各出力信号が提供されてこないとき、角度演算部66は、ステップS8において、受信信号が受信されていないと判定する。すると、その判定結果が前方ターゲット探知部68に通知され、その通知を受けて、前方ターゲット探知部68から切替指令が切替制御部67に対して発行され、処理はステップS1に戻される。そして、ステップS1において、切替部64の出力先が広角送信アンテナ61−W側に切り替えられて、ステップS2以降の処理が実行される。
これに対して、送信信号の送信タイミングから所定の時間が経過するよりも前に、受信信号抽出部65−L,65−Rの各出力信号が提供されてきたとき、角度演算部66は、ステップS8において、受信信号が受信されたと判定する。そして、ステップS9において、角度演算部66は、受信信号抽出部65−L,65−Rの各出力信号を用いて、位相モノパルス式または振幅モノパルス式に従って角度を演算し、その演算結果を前方ターゲット探知部68に通知する。
ステップS10において、前方ターゲット探知部68は、角度演算部66から通知された角度に基づいて、前方ターゲットを探知したか否かを判定する。上述したように、本実施の形態では、前方ターゲット探知部68は、角度演算部66から通知された角度が閾値以下であるか否かに基づいて、前方ターゲットを探知したか否かを判定する。
なお、ステップS10の処理で利用される閾値は、上述したように、本実施の形態ではステップS5の処理で利用される閾値と同一角度とされているが、それぞれ別の角度を採用することもできる。
ステップS10において、前方ターゲットを探知しなかったと判定された場合、即ち、本実施の形態では角度が閾値を超えている場合、前方ターゲット探知部68から切替指令が切替制御部67に対して発行され、処理はステップS1に戻される。そして、ステップS1において、切替部64の出力先が広角送信アンテナ61−W側に切り替えられて、ステップS2以降の処理が実行される。
これに対して、ステップS10において、前方ターゲットを探知したと判定した場合、即ち、本実施の形態では角度が閾値以下の場合、前方ターゲット探知部68は、ステップS11において、ターゲット探知信号を出力する。
ステップS12において、前方ターゲット探知部68は、処理の終了が指示されたか否かを判定する。
ステップS12において、処理の終了が指示されたと判定された場合、モノパルス式レーダ51の処理は終了となる。
これに対して、ステップS12において、処理の終了がまだ指示されていないと判定された場合、前方ターゲット探知部68から切替指令が切替制御部67に対して発行され、処理はステップS1に戻される。そして、ステップS1において、切替部64の出力先が広角送信アンテナ61−W側に切り替えられて、ステップS2以降の処理が実行される。
このように、本発明が適用されたモノパルス式レーダ51は、広角探知において、前方ターゲットを探知したとき、直ちにターゲット探知信号を出力せずに、その探知は存在可能性を示しているに過ぎないと判断して、さらに狭角探知を行う。そして、モノパルス式レーダ51は、その狭角探知においても前方ターゲットを探知したときにはじめて、ターゲット探知信号を出力する。
即ち、モノパルス式レーダ51は、狭角探知を行うことで、その前に行った広角探知は、実際に前方ターゲットが存在するための正しい探知であったのか、それとも、左右前方に1つずつ別のターゲットが存在するための誤探知であったのかを判定する。そして、モノパルス式レーダ51は、正しい探知であったと判定したときにはじめて、ターゲット探知信号を出力する。
これにより、このターゲット探知信号を利用して自車と他車との衝突を回避する処理を行う図示せぬ信号処理部では、その処理を正確に実行できるようになる。即ち、衝突の誤検知等を格段に低減できるようになる。
ところで、上述した一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)、例えば上述した図9のフローチャートに従った処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。
その一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)をハードウエアにより実行させる場合には、モノパルス式レーダ51は、例えば図10に示されるように構成することができる。即ち、図10は、振幅モノパルス式を採用したモノパルス式レーダ51のハードウエア構成例を示している。
図10の例では、送信信号生成部63は、2周波CW発振部71、変調部72、および増幅部73を含むように構成されている。
2周波CW発振部71は、例えば周波数f1のCW(Continuous Wave)と周波数f2のCWとを時分割で切り替えた結果得られる信号(以下、2周波CWと称する)を搬送波として発振し、変調部72に提供する。
変調部72は、2周波CWを例えばAM(Amplitude Modulation)変調し、その結果得られる信号を増幅部73に提供する。なお、AMは単なる例示に過ぎず、変調部72による変調方式は任意でよい。
増幅部73は、変調部72により変調された2周波CWに対して増幅処理等の各種処理を適宜施し、その結果得られる信号を出力信号として切替部64に提供する。この増幅部73の出力信号は、切替部64を介して広角送信アンテナ61−Wまたは狭角送信アンテナ61−Nに提供され、送信信号として電波の形態で出力される。
この送信信号は探知対象物で反射し、その反射信号が受信信号として受信アンテナ62−L,62−Rのそれぞれに受信され、受信号抽出部65−L,65−Rの両者に提供される。
かかる受信信号抽出部65−Lは、和信号生成部81−L、増幅部82−L、ミキシング部83−L、LPF部84−L、A/D変換部85−L、およびFFT部86−Lを含むように構成されている。
和信号生成部81−Lは、受信アンテナ62−Lに受信された受信信号と受信アンテナ62−Rに受信された受信信号との和信号を生成し、増幅部82−Lに提供する。
増幅部82−Lは、和信号生成部81−Lからの和信号に対して増幅処理等の各種処理を適宜施し、その結果得られる信号を出力信号としてミキシング部83−Lに提供する。
ミキシング部83−Lは、増幅部82−Lの出力信号と送信信号生成部63からの送信信号とをミキシングし、その結果得られる信号を出力信号としてLPF部84−Lに提供する。LPF部84−Lは、ミキシング部83−Lの出力信号に対してLPF(Low Pass Filter)処理を施し、その結果得られる信号を出力信号としてA/D変換部85−Lに提供する。A/D変換部85−Lは、LPF部84−Lの出力信号に対してA/D変換(Analog to Digital)処理を施し、その結果得られるデジタル信号を出力信号としてFFT部86−Lに提供する。
FFT部86−Lは、A/D変換部85−Lの出力信号、即ち、デジタルの和信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)解析処理を施し、その和信号のFFT解析結果を角度演算部66と相対速度/距離演算部69とに提供する。
このような構成の受信信号抽出部65−Lに対して、受信信号抽出部65−Rは次のように構成されている。即ち、受信信号抽出部65−Rは、差信号生成部81−R、増幅部82−R、ミキシング部83−R、LPF部84−R、A/D変換部85−R、およびFFT部86−Rを含むように構成されている。
差信号生成部81−Rは、受信アンテナ62−Lに受信された受信信号と受信アンテナ62−Rに受信された受信信号との差信号を生成し、増幅部82−Rに提供する。
増幅部82−R、ミキシング部83−R、LPF部84−R、A/D変換部85−R、およびFFT部86−Rのそれぞれは、上述した増幅部82−L、ミキシング部83−L、LPF部84−L、A/D変換部85−L、およびFFT部86−Lのそれぞれと基本的に同様の構成と機能を有している。従って、これらの各部の個別説明については省略する。
このような構成の受信信号抽出部65−Rからは、結局、差信号のFFT解析結果が出力されて、角度演算部66と相対速度/距離演算部69とに提供される。
このようにして、角度演算部66には、和信号と差信号との各FFT解析結果がそれぞれ提供される。具体的には図10の例では、角度演算部66は、振幅演算部91と角度決定部92とを含むように構成されている。これらのうちの振幅演算部91に和信号と差信号との各FFT解析結果がそれぞれ提供される。
振幅演算部91は、和信号と差信号との各FFT解析結果に基づいて、図4を用いて上述した和信号と差信号との両者の信号強度の比を演算し、その演算結果を角度決定部92に提供する。
角度決定部92は、例えば図4の利得特性のデータを予め保持しており、その図4のデータと振幅演算部91の演算結果を比較することで角度を決定し、その角度を前方ターゲット探知部68に提供する。
また、図10の例では、相対速度/距離演算部69も設けられており、この相対速度/距離演算部69にも、和信号と差信号との各FFT解析結果が提供される。そこで、相対速度/距離演算部69は、和信号と差信号との各FFT解析結果等を利用して、探知対象物との相対速度と距離とのうちの少なくとも一方を演算し、その演算結果を前方ターゲット探知部68に提供する。
なお、本実施の形態では、相対速度/距離演算部69は、探知対象物との相対速度と距離との両者を演算するとする。この場合の探知対象物との相対速度と距離との演算手法は特に限定されないが、例えば本実施の形態では次のような2周波CW方式による演算手法が適用されている。
即ち、図10の例では、送信信号の搬送波は、上述したように周波数f1とf2とが時分割で切り替えられる2周波CWが採用されている。即ち、図10の例では、送信信号は、2つの周波数f1,f2を有しているといえる。
繰り返しになるが、この送信信号は探知対象物において反射し、その反射信号が受信信号としてモノパルス式レーダ51に受信される。
このとき、モノパルス式レーダ51と探知対象物との間に相対速度vが存在すれば、送信信号の周波数f1,f2のそれぞれに対してドップラ周波数△f1,△f2のそれぞれが発生し、その結果、受信信号の周波数は、周波数f1+△f1,f2+△f2のそれぞれとなる。
換言すると、2つの周波数f1+△f1,f2+△f2を有する2周波CWが搬送波として、変調された結果得られる信号が、受信信号と等価な信号となる。
そこで、相対速度/距離演算部69は、和信号と差信号との各FFT解析結果からドップラ周波数△f1または△f2を算出して、次の式(2)または式(3)の演算を行うことで、モノパルス式レーダ51に対する探知対象物の相対速度vを求めることができる。
v = c * △f1 / (2*f1) ・・・(2)
v = c * △f2 / (2*f2) ・・・(3)
なお、cは光速を表している。
また、相対速度/距離演算部69は、ドップラ周波数△f1のドップラ信号の位相φ1と、ドップラ周波数△f2のドップラ信号の位相φ2との差、即ち、位相差φ1−φ2を、和信号と差信号との各FFT解析結果から算出して、次の式(4)の演算を行うことで、モノパルス式レーダ51と探知対象物との間の距離Lを求めることができる。
L = c * (φ1 − φ2) / 4π * (f1 − f2) ・・・(4)
このような演算手法が、2周波CW方式による演算手法である。
このような2周波CW方式による演算手法が適用された相対速度/距離演算部69の演算結果、即ち、探知対象物との相対速度vや距離Lは、前方ターゲット探知部68に提供される。従って、前方ターゲット探知部68は、角度演算部66からの角度の他、さらに、これらの相対速度vや距離Lも考慮して、前方ターゲットの探知有無を判断することができる。
即ち、図10の例では、図9の例のステップS5の処理の判断基準として、角度が閾値以下であるか否かだけではなく、これらの相対速度vと距離Lとのうちの少なくとも一方を利用することが可能になる。同様に、図9の例のステップS10の処理の判断基準として、角度が閾値以下であるか否かだけではなく、これらの相対速度vと距離Lとのうちの少なくとも一方を利用することが可能になる。
このように、図10の例の前方ターゲット探知部68は、角度だけではなく、相対速度vや距離Lも考慮した前方ターゲットの探知ができるので、より一段と正確にターゲット探知信号を出力することが可能になる。
以上、上述した一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)をハードウエアにより実行させる場合の一実施の形態について説明した。
一方、上述した一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)をソフトウエアにより実行させる場合には、モノパルス式レーダ51またはその一部分は、例えば、図11に示されるようなコンピュータで構成することができる。
図11において、CPU(Central Processing Unit)101は、ROM(Read Only Memory)102に記録されているプログラム、または記憶部108からRAM(Random Access Memory)103にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM103にはまた、CPU101が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
CPU101、ROM102、およびRAM103は、バス104を介して相互に接続されている。このバス104にはまた、入出力インタフェース105も接続されている。
入出力インタフェース105には、キーボード、マウスなどよりなる入力部106、ディスプレイなどよりなる出力部107、ハードディスクなどより構成される記憶部108、および、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部109が接続されている。通信部109は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置との通信処理を行う。さらにまた、通信部109は、広角送信アンテナ61−Wまたは狭角送信アンテナ61−Nから送信信号を送信させたり、その送信信号に対する受信信号を受信アンテナ62−L,62−Rに受信させるための送受信処理も行う。
入出力インタフェース105にはまた、必要に応じてドライブ110が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア111が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部108にインストールされる。
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
このようなプログラムを含む記録媒体は、図11に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア(パッケージメディア)111により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM102や、記憶部108に含まれるハードディスクなどで構成される。
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本発明は、上述したモノパルス式レーダ51のみならず、様々な構成の装置やシステムに適用可能である。なお、ここに、システムとは、複数の処理装置や処理部により構成される装置全体を表すものである。
即ち、以上説明した本発明の手法とは、従来のモノパルス式レーダとの比較を容易にするために、モノパルス式レーダへの適用を前提とした手法である。しかしながら、本発明の目的のひとつは、前方の対象物を探知したとき、その探知は、実際に前方の対象物が存在するための正しい探知であるのか、それとも、左右前方に1つずつ対象物が存在するための誤探知であるのかを正確に特定できるようにすることである。従って、かかる目的を達成するためには、以上説明した本発明の手法に特に限定されず、例えば次のような手法であれば足りる。
即ち、複数のアンテナを用い、これらのうちの2以上のアンテナで受信された受信信号に基づいて前方に存在する対象物を探知する手法であって、2以上のアンテナに受信された各受信信号を用いて対象物の位置を特定し、特定された位置が所定範囲である場合にはその対象物の存在を確認する、といった手法であれば、上述した目的を達成できる。換言すると、かかる手法こそが本発明の手法であり、その一例が、上述したモノパルス式レーダへの適用を前提とした手法である。
従って、本発明が適用される電波探知装置は、上述したモノパルス式レーダ51以外にも、例えば次のような装置としても実現可能である。
即ち、上述したモノパルス式レーダ51は、第1の送信信号に対応する2以上の受信信号を用いるモノパルス式に従って角度を演算し、その角度に基づいて対象物の位置を確定した。また、モノパルス式レーダ51は、その角度が第1の閾値以下のときに対象物の位置が所定範囲であると判断し、上述した第1の送信信号に対して指向性が狭角である第2の送信信号を送信して、その第2の送信信号に対応する2以上の受信信号を用いるモノパルス式に従って角度を再演算し、その角度が第2の閾値以下のとき対象物が存在すると確認し、それ以外の場合には存在しないと確認した。
ただし対象物の位置の特定するためやその存在を確認するために利用する角度の演算手法は、モノパルス式に特に限定されず、例えば、CAPON法、MUSIC法、SPACE法等を採用することができる。
さらに、対象物の確認を行う確認手法は、上述した角度を用いる手法に特に限定されず、様々な手法を採用することができる。
例えば、送信出力を変化させることで有効な送信電波出力を生じさせて角度範囲をコントロールする、といった確認手法を採用することができる。即ち、広角送信アンテナが使用される期間に相当する第1の期間では角度範囲を広くさせる一方、狭角送信アンテナが使用される期間に相当する第2の期間では角度範囲を狭くさせ、この第2の期間において対象物の確認を行う、といった確認手法を採用することができる。
例えば、移相器を用いることで指向性をコントロールする、といった確認手法を採用することができる。即ち、広角送信アンテナが使用される期間に相当する第1の期間では指向性を広くさせる一方、狭角送信アンテナが使用される期間に相当する第2の期間では指向性を狭くさせ、この第2の期間において対象物の確認を行う、といった確認手法を採用することができる。
また例えば、上述した2周波CWセンサ等の距離レーダにおいては、近距離と遠距離とにそれぞれ同一相対速度vの物体があるとき、その中間点が対象物体の位置として検出されてしまう。そこで、送信アンテナの送信電力を変化させることで、一定範囲内にのみ電波が到達するようにし、その範囲に対象が存在するか否かの確認を行う、といった確認手法を採用することができる。なお、かかる手法を別の視点から把握した手法については、図22等を参照して後述する。
さらに、例えば、狭角送信アンテナの代わりに、超音波センサ等を設け、この検出信号に基づいて対象物の確認を行う、といった確認手法を採用することができる。
例えば、狭角送信アンテナの代わりに、前方を撮影するカメラを設け、このカメラにより撮影された画像に基づいて対象物の確認を行う、といった確認手法を採用することができる。なお、ここでいう画像とは、静止画像のみならず動画像も含む広義な概念である。
ここで、狭角送信アンテナの代わりに、カメラや超音波センサ等をまとめて対象物確認部と称すると、次のような装置もまた、本発明が適用される装置の一実施の形態である。
即ち、装置は、第1の送信信号に対応する2以上の受信信号を用いるモノパルス式に従って角度を演算し、その角度に基づいて対象物の位置を確定する。また、装置は、その角度が第1の閾値以下のときに対象物の位置が所定範囲であると判断し、対象物確認部が、対象物の存在の有無を確認する。このような一連の処理を実行する装置が、本発明が適用される装置の一実施の形態である。以下、かかる装置を、対象物確認部付モノパルス式レーダと称する。
図12は、対象物確認部付モノパルス式レーダの機能を示す機能ブロック図である。
図12において、図8に対応する箇所には同一の符号を付している。これらの箇所の説明は、図8で上述したので、ここでは適宜省略する。
図12の例の対象物確認部付モノパルス式レーダ201には、図8のモノパルス式レーダ51の狭角送信アンテナ61−Nの代わりに、対象物確認部212が設けられている。即ち、図12の例の対象物確認部付モノパルス式レーダ201には、送信アンテナは広角送信アンテナ61−Wのみが設けられているので、送信信号生成部63は切替部64の出力側に設けられており、これに伴い、切替部64の入力側には動作指令発行部211が設けられている。
従って、図12の例では、切替部64は、切替制御部67の制御に基づいて、動作指令発行部211からの動作指令の出力先を、送信信号生成部63側と対象物確認部212側とのうちの何れか一方の側に切り替える。
即ち、切替部64の出力先が送信信号生成部63側に切り替えられている場合には、動作指令発行部211からの動作指令が送信信号生成部63に発行され、送信信号生成部63からの送信信号が広角送信アンテナ61−Wから出力されて、図6を用いて上述した広角探知が行われる。
一方、切替部64の出力先が対象物確認部212側に切り替えられている場合には、動作指令発行部211からの動作指令が対象物確認部212に発行され、対象物確認部212による対象物確認動作が行われる。対象物確認部212の処理結果、即ち、対象物の存在有無は、前方ターゲット探知部68に提供される。即ち、図12の例の対象物確認部付モノパルス式レーダ201においては、図8の例のモノパルス式レーダ51で行われていた狭角探知の代わりに、対象物確認部212による対象物確認動作が行われる。
なお、図12の例の対象物確認部付モノパルス式レーダ201のそれ以外の機能的構成は、図8の例のモノパルス式レーダ51の機能的構成と基本的に同様である。
かかる図12の機能的構成を有する対象物確認部付モノパルス式レーダ201の処理例が図13のフローチャートに示されている。
なお、図13のステップS41乃至S45までの処理は、図9のステップS1乃至S5までの処理と基本的に同様であるので、ここではその説明については省略する。
ただし、ステップS41の処理でいう「広角送信アンテナに切り替える」とは、図12の切替部64の出力先が送信信号生成部63側に切り替えられることを意味する。
ステップS45において、前方ターゲットの存在可能性があると判定された場合、即ち、本実施の形態では角度が閾値以下の場合、前方ターゲット探知部68から切替指令が切替制御部67に対して発行され、処理はステップS46に進む。
ステップS46において、切替部64は、切替指令を受けた切替制御部67の制御に基づいて、図12の対象物確認部212側に切り替える。
すると、上述したように、動作指令発行部211からの動作指令が対象物確認部212に発行され、対象物確認部212による対象物確認動作、即ち、前方ターゲットの確認動作が行われる。対象物確認部212の処理結果、即ち、前方ターゲットの存在有無は、前方ターゲット探知部68に提供される。
そこで、ステップS47において、前方ターゲット探知部68は、対象物確認部212が前方ターゲットを探知したか否かを判定する。
ステップS47において、前方ターゲットを探知しなかったと判定された場合、即ち、対象物確認部212の処理結果が対象物は存在しないという結果であった場合、前方ターゲット探知部68から切替指令が切替制御部67に対して発行され、処理はステップS41に戻される。そして、ステップS41において、切替部64の出力先が送信信号生成部63側に切り替えられて、ステップS42以降の処理が実行される。
これに対して、ステップS47において、前方ターゲットを探知したと判定した場合、即ち、対象物確認部212の処理結果が対象物が存在するという結果であった場合、前方ターゲット探知部68は、ステップS48において、ターゲット検出信号(ターゲット探知信号)を出力する。
ステップS49において、前方ターゲット探知部68は、処理の終了が指示されたか否かを判定する。
ステップS49において、処理の終了が指示されたと判定された場合、対象物確認部付モノパルス式レーダ201の処理は終了となる。
これに対して、ステップS49において、処理の終了がまだ指示されていないと判定された場合、前方ターゲット探知部68から切替指令が切替制御部67に対して発行され、処理はステップS41に戻される。そして、ステップS41において、切替部64の出力先が送信信号生成部63側に切り替えられて、ステップS42以降の処理が実行される。
このように、本発明が適用された対象物確認部付モノパルス式レーダ201は、広角探知において、前方ターゲットを探知したとき、直ちにターゲット探知信号(ターゲット検出信号)を出力せずに、その探知は存在可能性を示しているに過ぎないと判断して、さらに対象物確認部212による対象物(前方ターゲット)確認動作を行う。そして、対象物確認部付モノパルス式レーダ201は、その対象物確認部212により実際に前方ターゲットが確認されたときにはじめて、ターゲット探知信号(ターゲット検出信号)を出力する。
即ち、対象物確認部付モノパルス式レーダ201は、対象物確認部212による対象物(前方ターゲット)確認動作を行うことで、その前に行った広角探知は、実際に前方ターゲットが存在するための正しい探知であったのか、それとも、左右前方に1つずつ別のターゲットが存在するための誤探知であったのかを判定する。そして、対象物確認部付モノパルス式レーダ201は、正しい探知であったと判定したときにはじめて、ターゲット探知信号(ターゲット検出信号)を出力する。
これにより、このターゲット探知信号(ターゲット検出信号)を利用して自車と他車との衝突を回避する処理を行う図示せぬ信号処理部では、その処理を正確に実行できるようになる。即ち、衝突の誤検知等を格段に低減できるようになる。
このような対象物確認部付モノパルス式レーダ201が実行する一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)、例えば上述した図13のフローチャートに従った処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。
例えば図示はしないが、ハードウエアにより実行させる場合には、カメラや超音波センサ等を対象物確認部212として用意し、また、適当な回路で構成される動作指令発行部211を用意して、これらを図10の類似の構成のハードウエアに搭載させることで、対象物確認部付モノパルス式レーダ201の実現が可能になる。なお、図10の類似の構成とは、切替部64や送信信号生成部63等の配置を、図12に対応する配置となるように変更した構成をいう。
また例えば図示はしないが、ソフトウエアにより実行させる場合には、カメラや超音波センサ等を対象物確認部212として用意して、図11の入出力インタフェース105等に接続させ、CPU101に動作指令発行部211の処理を実行させることで、対象物確認部付モノパルス式レーダ201の実現が可能になる。
ここで改めて、モノパルス式レーダに適用した本発明の手法のひとつである広角探知と狭角探知とについて、別の側面から捉えてみる。
図14に示されるように、角度0度の位置に探知対象物5のみが存在するとする。この場合の広角探知のモノパルス式の検知角度は0度となる。この広角探知の結果は、上述した図6に示される場合の結果(複数の探知対象物2,3が存在する故の幻影でしかない探知対象物4の角度0度)と同一である。
これに対して、図15に示されるように、角度0度の位置に探知対象物5のみが存在する場合の狭角探知のモノパルス式の検知角度は、やはり0度となる。この狭角探知の結果は、上述した図7に示される場合の狭角探知の結果(角度検知できずという結果)とは異なる。
即ち、モノパルス式の角度検知においては、1回の角度検知(上述した例では広角探知)の結果だけでは、1つの探知対象物(図14の例では探知対象物5)のみが存在する場合の正しい結果であるのか、それとも、複数の探知対象物(図6の例では2つ探知対象物2,3)が存在するが故の誤った結果であるのかについての判断が実質上できない。
そこで、本発明が適用されるモノパルス式レーダでは、送信アンテナの指向性を変えて(上述した例では、狭角送信アンテナ61−Nに切り替えて)、2回目の角度検知を行い(上述した例では、狭角探知を行い)、その2回目の検知結果と1回目の検知結果とを比較し、両者が一致していると判断できる場合(上述した例では、図14と図15に示される場合)には、1回目の検知結果は、1つの探知対象物(図14の例では探知対象物5)のみが存在する場合の正しい結果であったと判断する一方、それ以外の場合(上述した例では、図6と図7に示される場合)には、1回目の結果は、複数の探知対象物(図6の例では2つ探知対象物2,3)が存在するが故の誤った結果の可能性があると判断することができる。
なお、ここで「一致していると判断できる場合」と記載したのは、1回目の探知結果と2回目の探知結果とは時間間隔が開いた結果である以上、その開いた時間中に、探知対象物の実角度が変わる場合もあるし、また、各回の探知結果自身にも誤差が含まれている可能性があるので、両者の探知結果が厳密に一致することは稀だからである。ただし、以下、説明の簡略上、「一致していると判断できる場合」を単に「一致している場合」と表現し、「それ以外の場合」を「不一致の場合」と表現する。
また、「誤った結果の可能性がある」と表現したのは、正しい結果の可能性もあるからである。ただし、以下、このような場合、説明の簡略上、誤った結果であると表現するときもある。
即ち、上述した例では、2回目の角度検知(狭角探知)により1回目の角度検知(広角探知)の結果が正しかったと判断された場合には、ターゲット探知信号が出力され、2回目の角度検知(狭角探知)により1回目の角度検知(広角探知)の結果が誤りであったと判断された場合には、ターゲット探知信号の出力が禁止される、と把握することもできる。
以上の内容をまとめると、モノパルス式の角度検知として、送信アンテナの指向性を第1の指向性とした場合の1回目の角度検知の結果の正当性を判断するためには、次のような手法を採用すればよい。即ち、送信アンテナの指向性を第1の指向性から第2の指向性に変化させて2回目の角度検知を行い、1回目の結果と2回目の結果とを比較し、両者が一致した場合には1回目の結果は正しい結果であると判断し、両者が不一致の場合には1回目の結果は間違った結果であると判断する、という手法を採用することができる。
換言すると、かかる手法こそが、上述した本発明の手法を別の側面から捉えた場合の手法である。以下、かかる手法を、特に、送信アンテナ指向性変化手法と称する。
なお、送信アンテナの指向性を第1の指向性から第2の指向性に変化させるとは、1つの送信アンテナを用いて、その指向性を第1の指向性から第2の指向性に変化させることの他、第1の指向性を有する第1の送信アンテナと、第2の指向性を有する第2の送信アンテナとを別々に用意し、1回目では第1の送信アンテナを使用して、2回目では第2の送信アンテナを使用することも含む概念である。また、前者についていう「第1の指向性から第2の指向性に変化させる」とは、送信アンテナの指向性の半値角を第1の角度から第2の角度に変化させる(特性を変化させる)ことの他、送信アンテナの向き(配置位置)を、第1の向きから第2の向きに変化させる(物理的な配置を変化させる)ことも含む概念である。また、上述した例が、後者の場合の例であって、広角送信アンテナ61−Wが第1のアンテナに相当し、狭角送信アンテナ61−Nが第2のアンテナに相当する。
この送信アンテナ指向性変化手法は、モノパルス式の角度検知といった測定のみならず、その他の様々な測定にも適用可能である。例えば、2周波CW方式の距離測定に対しても、送信アンテナ指向性変化手法は適用可能である。
そこで、以下、送信アンテナ指向性変化手法が適用された2周波CW方式の距離測定について説明する。
2周波CW方式の距離測定とは、次のような測定をいう。即ち、上述したように、周波数f1,f2を有する2周波CWが送信信号として送信され、探知対象物で反射されると、周波数f1+△f1,f2+△f2を有する2周波CWが受信信号として受信される。そこで、この受信信号から、FFT等の周波数分離抽出処理により、ドップラ周波数△f1,△f2が抽出され、また、位相φ1,φ2が抽出される。そして、上述した式(4)に示されるように、抽出された位相φ1,φ2の差分、即ち位相差φ1−φ2を用いて、探知対象物の距離Lが測定される。
ここで、例えば複数の探知対象物a乃至zが存在する場合を考える。
この場合、送信信号が複数の探知対象物a乃至zのそれぞれで反射され、それぞれの反射信号が合成された結果得られる信号が受信信号となる。
ドップラ周波数△f1,△f2は、上述した式(2)や式(3)から明らかなように、探知対象物の相対速度vに依存することを考慮すると、複数の探知対象物a乃至zが存在する場合であっても、それぞれの相対速度vが異なる場合、複数の探知対象物a乃至zのそれぞれの反射信号について、ドップラ周波数△f1a乃至△f1zはそれぞれ異なるし、ドップラ周波数△f2a乃至△f2zもそれぞれ異なることになる。従って、受信信号から、ドップラ周波数△f1a乃至△f1zのそれぞれ対応する位相φ1a乃至φ1zの抽出も可能であるし、ドップラ周波数△f2a乃至△f2zのそれぞれ対応する位相φ2a乃至φ2zの抽出も可能である。従って、探知対象物a乃至zのそれぞれの距離La乃至Lzのそれぞれについても、位相差(φ1a−φ2a)乃至(φ1z−φ2z)をそれぞれ用いることで、正しい測定が可能になる。
これに対して、複数の探知対象物a乃至zの相対速度vが同一の場合には、ドップラ周波数△f1a乃至△f1z,△f2a乃至△f2zは全て同一のドップラ周波数△f1,△f2となるが、位相φ1a乃至φ1zや位相φ2a乃至φ2zはそれぞれ異なることになる。従って、受信信号からは、同一のドップラ周波数△f1,△f2と、それぞれに対応する位相φ1,φ2とが抽出されることになるが、この位相φ1,φ2のそれぞれは、位相φ1a乃至φ1zや位相φ2a乃至φ2zとは異なる全く別の値になってしまう。その結果、位相差φ1−φ2にも狂いが生じてしまい、このような狂いが生じた位相差φ1−φ2を用いて測定された距離Lは、誤った結果となってしまう、という問題が発生することになる。換言すると、詳細については図16を用いて後述するが、異なる距離の複数の探知対象物a乃至zが実際に存在する場合であっても、それらの相対速度vが同一であると、探知対象物a乃至zは探知されずに、幻影でしかない1つの探知対象物が距離Lにあたかも存在する、とした誤探知がなされてしまう、という問題が発生する。
この場合、送信アンテナ指向性変化手法を2周波CW方式の距離測定に適用することで、かかる問題を解決することができる。
以下、送信アンテナ指向性変化手法を適用した2周波CW方式の距離測定の原理について、図16乃至図19を参照して説明する。
なお、図16乃至図19の例では、2周波CWセンサ401が、送信アンテナ指向性変化手法を適用した2周波CW方式の距離測定を行う。この2周波CWセンサ401は、モノパルス式レーダ51と同様の広角送信アンテナ61−W(図16や図18参照)と狭角送信アンテナ61−N(図17や図19参照)とを有しており、広角送信アンテナ61−Wと狭角送信アンテナ61−Nとの切替が自在にできるように構成されている。
この2周波CWセンサ401は、まず、図16に示されるように、広角送信アンテナ61−Wを用いて、2周波CW方式の1回目の距離測定を行う。
ここで、広角送信アンテナ61−Wの指向性の範囲内(即ち図6等でいう角度θwの範囲内)において、図16に示されるように、実距離L1の位置に探知対象物301が存在し、かつ、実距離L2の位置に探知対象物302が存在したとする。
この場合、上述したように、広角送信アンテナ61−Wからの送信信号は、探知対象物301と探知対象物302とのそれぞれで反射され、それぞれの反射信号が合成された結果得られる信号が受信信号として、2周波CWセンサ401に受信されることになる。
このとき、探知対象物301と探知対象物302との相対速度vが同一であると、それぞれのドップラ周波数△f1−301と△f1−302とは同一のドップラ周波数△f1となり、かつ、それぞれのドップラ周波数△f2−301と△f2−302とは同一のドップラ周波数△f2となるが、位相φ1−301,φ1−302や位相φ2−301,φ2−302はそれぞれ異なることになる。従って、受信信号からは、同一のドップラ周波数△f1,△f2と、それぞれに対応する位相φ1,φ2とが抽出されることになるが、この位相φ1は、位相φ1−301,φ1−302とは異なる値となり、また、位相φ2も、位相φ2−301,φ2−302とは異なる値となる。即ち、位相差φ1−φ2もまた、位相差(φ1−301)−(φ2−301)や、位相差(φ1−302)−(φ2−302)とは異なる値となる。従って、このような位相差φ1−φ2を用いた距離測定の結果は、距離L1や距離L2とは異なる距離L3となってしまう。換言すると、2周波CWセンサ401は、探知対象物301の距離L1や探知対象物302の距離L2は測定できずに、あたかも、幻影でしかない1つの探知対象物303の距離L3を測定してしまったことになる。
しかしながら、2周波CWセンサ401は、この1回目の測定結果である距離L3が、実際に存在する探知対象物の距離なのか、即ち正しい測定結果であるのか、或いは、相対速度vが同一の探知対象物301と探知対象物302とが存在することによる誤った測定結果であるのかを判断できない。
そこで、2周波CWセンサ401は、図17に示されるように、狭角送信アンテナ61−Nを用いて、即ち、送信アンテナの指向性を変化させて、2周波CW方式の2回目の距離測定を行う。
この場合、狭角送信アンテナ61−Nの指向性の範囲(即ち図7等でいう角度θn)は、広角送信アンテナ61−Wの指向性の範囲(即ち図6等でいう角度θwの範囲内)に比べて狭いので、図17に示されるように、実距離L2の位置に存在する探知対象物302のみが狭角送信アンテナ61−Nの指向性の範囲内となり、探知対象物301は狭角送信アンテナ61−Nの指向性の範囲外となる。即ち、狭角送信アンテナ61−Nからの送信信号は、探知対象物302には到達するが、探知対象物301には到達しない。
従って、狭角送信アンテナ61−Nからの送信信号は、探知対象物302のみで反射され、その反射信号が受信信号として、2周波CWセンサ401に受信されることになる。これにより、受信信号からは、ドップラ周波数△f1−302,△f2−302と、それぞれに対応する位相φ1−302,φ2−302とが抽出される。その結果、位相差(φ1−302)−(φ2−302)を用いて2回目の距離測定が行われることになり、その結果は、距離L2となる。
従って、2周波CWセンサ401は、この2回目の測定結果である距離L2と、1回目の測定結果である距離L3とは一致しないことから、1回目の測定結果は、複数の探知対象物が存在したための誤った結果であると判断する。
これに対して、広角送信アンテナ61−Wの指向性の範囲内(即ち図6等でいう角度θwの範囲内)において、図18に示されるように、実距離L2の位置に探知対象物302のみが存在したとする。
この場合も、2周波CWセンサ401は、まず、図18に示されるように、広角送信アンテナ61−Wを用いて、2周波CW方式の1回目の距離測定を行う。
今度は、広角送信アンテナ61−Wからの送信信号は、探知対象物302のみで反射され、その反射信号が受信信号として、2周波CWセンサ401に受信されることになる。これにより、受信信号からは、ドップラ周波数△f1−302,△f2−302と、それぞれに対応する位相φ1−302,φ2−302とが抽出される。その結果、位相差(φ1−302)−(φ2−302)を用いて1回目の距離測定が行われることになり、その結果は、距離L2となる。
ただし、2周波CWセンサ401は、この1回目の測定結果である距離L2が、実際に存在する探知対象物302の距離なのか、即ち正しい測定結果であるのか、或いは、相対速度vが同一の複数の探知対象物が存在することによる誤った測定結果であるのかを判断できない。
そこで、2周波CWセンサ401は、図19に示されるように、狭角送信アンテナ61−Nを用いて、即ち、送信アンテナの指向性を変化させて、2周波CW方式の2回目の距離測定を行う。
この場合も、狭角送信アンテナ61−Nからの送信信号は、探知対象物302のみで反射され、その反射信号が受信信号として、2周波CWセンサ401に受信されることになる。これにより、受信信号からは、ドップラ周波数△f1−302,△f2−302と、それぞれに対応する位相φ1−302,φ2−302とが抽出される。その結果、位相差(φ1−302)−(φ2−302)を用いて2回目の距離測定が行われることになり、その結果は、距離L2となる。
従って、2周波CWセンサ401は、この2回目の測定結果である距離L2は、1回目の測定結果である距離L2と一致することから、1回目の測定結果は、正しい結果であると判断することができる。
以上の一連の処理例をまとめると、例えば図20のフローチャートに示されるようになる。
即ち、ステップS61において、2周波CWセンサ401は、使用する送信アンテナを広角送信アンテナ61−Wに切り替える。
ステップS62において、2周波CWセンサ401は、広角送信アンテナ61−Wから送信信号を送信する。
ステップS63において、2周波CWセンサ401は、受信信号が受信されたか否かを判定する。
ステップS63において、受信信号が受信されていないと判定された場合、処理はステップS61に戻され、それ以降の処理が繰り返される。なお、この場合には、既に広角送信アンテナ61−Wに切り替えられているので、ステップS61の処理は実質実行されずに処理はステップS62に進む。
これに対して、ステップS63において、受信信号が受信されたと判定された場合、ステップS64において、2周波CWセンサ401は、その受信信号から距離を演算する。
即ち、ステップS61乃至S64により、広角送信アンテナ61−Wによる1回目の距離測定が行われる。そこで、次のステップS65乃至S68により、狭角送信アンテナ61−Nによる2回目の距離測定が行われる。
即ち、ステップS65において、2周波CWセンサ401は、使用する送信アンテナを狭角送信アンテナ61−Nに切り替える。
ステップS66において、2周波CWセンサ401は、狭角送信アンテナ61−Nから送信信号を送信する。
ステップS67において、2周波CWセンサ401は、受信信号が受信されたか否かを判定する。
ここで、受信信号が受信されない場合には、2回目の距離測定ができない。即ち、2回目の距離測定の結果は「測定不能」となり、1回目の距離測定の結果と一致しないことになる。そこで、このような場合には、ステップS67において、NOであると判定されて、処理はステップS61に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
これに対して、ステップS67において、受信信号が受信されたと判定された場合、ステップS68において、2周波CWセンサ401は、その受信信号から距離を演算する。
ステップS69において、2周波CWセンサ401は、複数の前方ターゲット(探知対象物)による幻像の距離の可能性があるか否かを判定する。
ステップS64の処理で演算された距離に対して、ステップS68の処理で演算された距離が変化した場合、即ち、1回目の距離測定結果と2回目の距離測定結果とが不一致の場合、ステップS69において、複数の前方ターゲット(探知対象物)による幻像の距離の可能性があると判定されて、処理はステップS61に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
これに対して、ステップS64の処理で演算された距離に対して、ステップS68の処理で演算された距離が変化しない場合、即ち、1回目の距離測定結果と2回目の距離測定結果とが一致している場合、ステップS69において、複数の前方ターゲット(探知対象物)による幻像の距離の可能性がないと判定されて、即ち、1回目の距離測定結果は正しい結果であると判定されて、処理はステップS70に進む。ステップS70において、2周波CWセンサ401は、距離を出力する。
ステップS71において、2周波CWセンサ401は、処理の終了が指示されたか否かを判定する。
ステップS71において、処理の終了が指示されたと判定された場合、2周波CWセンサ401の処理は終了となる。
これに対して、ステップS71において、処理の終了がまだ指示されていないと判定された場合、処理はステップS61に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
このような図20の2周波CW距離測定処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。
図20の2周波CW距離測定処理をハードウエアにより実行させる場合には、2周波CWセンサ401は、例えば上述した図10の構成を取ることができる。一方、図20の2周波CW距離測定処理(或いはそのうちの一部分の処理)をソフトウエアにより実行させる場合には、2周波CWセンサ401またはその一部分は、例えば、上述した図11のコンピュータで構成することができる。
即ち、2周波CWセンサ401は、モノパルス式レーダ51と同様に送信アンテナの指向性を変える機能を有する装置として構成することができる。
勿論、2周波CWセンサ401は、モノパルス式レーダ51と同様の装置として構成する必要はなく、図12の対象物確認物付モノパルス式レーダ201と同様の装置として構成してもよいし、単体で構成してもよい。
また、送信アンテナ指向性変化手法が適用された2周波CWセンサは、2周波CWセンサ401に特に限定されず、即ち、送信アンテナとして広角送信アンテナ61−Wと狭角送信アンテナ61−Nとが搭載された2周波CWセンサ401に特に限定されず、送信アンテナの指向性を変化させる機能を有する2周波CWセンサであれば足りる。
ここに、送信アンテナの指向性を変化させる機能とは、1つの送信アンテナを搭載し、その指向性を変化させることができる機能の他、それぞれ異なる指向性を有する複数の送信アンテナを搭載し、使用するアンテナを切り替えることができる機能を含む。また、前者についていう「その指向性を変化させる」とは、送信アンテナの指向性の半値角を変化させる(特性を変化させる)ことの他、送信アンテナの向き(配置位置)を変化させる(物理的な配置を変化させる)ことも含む概念である。また、2周波CWセンサ401が、後者の機能を有する2周波CWセンサの一例である。
さらに、送信アンテナ指向性変化手法の説明として、送信アンテナの指向性を第1の指向性から第2の指向性に変化させると説明したが、指向性の変化回数は2回に特に限定されない。即ち、3回以上指向性を離散的に変化させてもよいし、指向性を連続的に変化させてもよい。
また、送信アンテナ指向性変化手法は、上述した例では、モノパルス式レーダや2周波CWセンサに適用されたが、その他、送信信号の探知対象物における反射信号に対するドップラ信号を用いる方式(以下、ドップラ方式と称する)の電波探知装置であれば適用可能である。
さらにまた、送信アンテナ指向性変化手法をより一般的な手法に言い換えると、次のような手法になる。即ち、ドップラ方式の電波探知として、送信アンテナの電波の到達範囲(探知範囲)を第1の範囲R1とした場合の1回目の探知結果の正当性を判断する手法であって、具体的には次のような手法となる。即ち、電波探知装置は、送信アンテナの到達範囲(探知範囲)を第1の範囲R1から第2の範囲R2に変化させて、2回目の探知を行う。この場合、電波探知装置は、1回目の探知結果と2回目の探知結果とを比較し、その比較結果から次のような判断を行う。即ち、1回目と2回目の探知結果が一致している場合には、第1の範囲R1と第2の範囲R2との共通部分に対応する領域(以下、領域R1+R2と称する)に、単一の探知対象物が存在すると判断する。1回目と2回目の探知結果が一致しない場合には(ただし、2回目の探知結果が、探知対象物が存在せずという結果の場合は除く)、電波探知装置は、第2の範囲R2の中で第1の範囲R1を除いた部分に対応する領域(以下、領域R2−R1と称する)と、第1の範囲R1の中で第2の範囲R2を除いた部分に対応する領域(以下、領域R1−R2と称する)の両方に1以上の(即ち複数または単数の)探知対象物が存在すると判断する。また、2回目の探知結果が、探知対象物が存在せずという結果の場合、電波探知装置は、領域R1−R2に、単一の探知対象物が存在すると判断する。以下、かかる手法を、送信アンテナ探知範囲変化手法と称する。
この送信アンテナ探知範囲変化手法において、送信アンテナの探知範囲を変化させる手法自体は、特に限定されず、例えば送信アンテナの指向性を変化させることでその探知範囲の角度を変化させる手法を採用してもよいし、送信アンテナからの電波の到達距離を変化させる手法を採用してもよい。
即ち、送信アンテナの探知範囲を変化させる手法として、送信アンテナの指向性を変化させることでその探知範囲の角度を変化させる手法を採用した場合の送信アンテナ探知範囲変化手法の一例が、上述した送信アンテナ指向性変化手法である。
この場合、上述したように、送信アンテナの指向性の変化させる手法も、様々な手法を採用可能であり、指向性(半値角)の異なる2つのアンテナ(例えば上述した図16や図17等の広角送信アンテナ61−Wや狭角送信アンテナ61−N等)を用意して、これら2つのアンテナを切り替える手法を採用してもよいし、或いは、図21に示されるように、1つの送信アンテナを用いてその指向性を変化させる(ずらす)手法を採用してもよい。
換言すると、図21は、送信アンテナの探知範囲を変化させる手法として、1つの送信アンテナの指向を変化させる(ずらす)手法を採用した場合の例を示している。
図21の例では、かかる手法が、例えば、ドップラ方式による距離測定を行う電波探知装置511に適用されているとする。また、この電波探知装置511は自車501の前部に取り付けられており、その自車501の前方には、探知対象物301,302としての他車が、同一の相対速度vで走行しているとする。
この場合、図21の左側の図に示されるように、電波探知装置511は、先ず、送信アンテナ(図示せず)の指向性を正面に向けて、即ち、探知範囲を第1の範囲R1として、1回目のドップラ方式の距離測定を行う。
この場合、探知対象物301,302が同一の相対速度vで走行しているので、図16を用いて説明したように、電波探知装置511は、幻影でしかない探知対象物303aの距離L3aを測定してしまうことになる。即ち、1回目の探知の結果は、幻影でしかない探知対象物303aがあたかも距離L3aの位置に存在する、といった探知結果となる。
しかしながら、電波探知装置511は、この1回目に探知された探知対象物303aが、実際に存在する単一の探知対象物なのか、即ち正しい探知結果であるのか、或いは、図21に示されるように相対速度vが同一の探知対象物301と探知対象物302とが存在することにより生じた幻影であるのか、即ち誤った探知結果であるのかを判断できない。
そこで、電波探知装置511は、図21の右側の図に示されるように、送信アンテナの指向性をずらし、即ち、送信アンテナの探知範囲の方向(角度)を変化させて第2の範囲R2として、2回目の探知を行う。この場合、1回目に比較して、送信アンテナから実際の探知対象物301,302へ照射される電波バランスが変化することになり、その結果、2回目の距離は、1回目の距離L3aとは異なる距離L3bとなる。即ち、2回目の探知結果は、幻影でしかない探知対象物303bがあたかも距離L3bの位置に存在する、といった探知結果となる。
このように、1回目と2回目の探知結果が異なり、かつ、2回目の探知結果では幻影ではあるが探知対象物303bが探知されているので、電波探知装置511は、領域R2−R1と領域R1−R2の両方に1以上の(即ち複数または単数の)探知対象物が存在すると判断する。即ち、電波探知装置511は、1回目(および2回目)の探知結果は、信頼できない不正な結果であると判断する。
なお、不正な結果であると判断した後の電波探知装置511の処理については、特に限定されない。例えば、電波探知装置511は、送信アンテナの指向性をさらにずらして、3回目の探知、或いは、それ以上の回数の探知を行うようにしてもよいし、或いは、送信アンテナの指向性を元に戻して、1回目の探知のやり直しをしてもよい。
これに対して、図示はしないが、1回目と2回目の探知結果が変化しなかった場合、即ち、測定距離がほぼ同一であった場合、領域R1+R2に単一の探知対象物が存在することになる。従って、このような場合、電波探知装置511は、1回目または2回目の探知結果を正として、その後の処理を実行をすればよい。
このような図21の例に対して、図22は、送信アンテナの探知範囲を変化させる手法として、送信アンテナからの電波の到達距離を変化させる手法を採用した場合の例を示している。
図22の例では、かかる手法が、例えば、ドップラ方式による距離測定を行う電波探知装置512に適用されているとする。また、この電波探知装置512は自車501の前部に取り付けられており、その自車501の前方には、探知対象物301,302としての他車が、同一の相対速度vで走行しているとする。
この場合、図22の左側の図に示されるように、電波探知装置512は、先ず、送信アンテナ(図示せず)からの電波の到達距離を長距離として、即ち、探知範囲を第1の範囲R1として、1回目のドップラ方式の距離測定を行う。
この場合、第1の範囲R1に存在する探知対象物301,302が同一の相対速度vで走行しているので、図16を用いて説明したように、電波探知装置512は、幻影でしかない探知対象物303の距離L3を測定してしまうことになる。即ち、1回目の探知の結果は、幻影でしかない探知対象物303があたかも距離L3の位置に存在する、といった探知結果となる。
しかしながら、電波探知装置512は、この1回目に探知された探知対象物303が、実際に存在する単一の探知対象物であるのか、即ち正しい探知結果であるのか、或いは、図22に示されるように相対速度vが同一の探知対象物301と探知対象物302とが存在することにより生じた幻影であるのか、即ち誤った探知結果であるのかを判断できない。
そこで、電波探知装置512は、図22の右側の図に示されるように、送信アンテナの送信電力を弱める等をすることで、その送信アンテナからの電波の到達距離を短距離として、即ち、探知範囲を第2の範囲R2として、2回目の探知を行う。この場合、図22の例では、送信アンテナからの電波は探知対象物301に到達しないので、その結果、2回目の距離は、1回目の距離L3とは異なる距離L2、即ち、探知対象物302の実距離L2となる。即ち、2回目の探知結果は、探知対象物302が距離L2の位置に存在する、といった探知結果となる。
このように、1回目と2回目の探知結果とが異なり、かつ、2回目の探知結果では探知対象物302が探知されているので、電波探知装置512は、領域R2−R1と領域R1−R2の両方に1以上の(即ち複数または単数の)探知対象物が存在する可能性があると判断する。即ち、電波探知装置512は、1回目(および2回目)の探知結果は、信頼できない不正な結果であると判断する。
なお、不正な結果であると判断した後の電波探知装置512の処理については、特に限定されない。例えば、電波探知装置512は、送信アンテナからの電波の到達距離をさらに短距離にして、3回目の探知、或いは、それ以上の回数の探知を行うようにしてもよいし、或いは、送信アンテナからの電波の到達距離を元に戻して、1回目の探知のやり直しをしてもよい。
これに対して、図示はしないが、1回目と2回目の探知結果が変化しなかった場合、即ち、測定距離がほぼ同一であった場合、領域R1+R2に単一の探知対象物が存在することになる。従って、このような場合、電波探知装置512は、1回目または2回目の探知結果を正として、その後の処理を実行をすればよい。
以上、本発明の送信アンテナ探知範囲変化手法が適用されたドップラ方式の電波探知装置の一例として、図21の電波探知装置511と図22の電波探知装置512とについて説明した。ただし、本発明の送信アンテナ探知範囲変化手法は、ドップラ方式の電波探知装置であれば適用可能である。そこで、図23のフローチャートを参照して、より一般的に、本発明の送信アンテナ探知範囲変化手法が適用されたドップラ方式の電波探知装置の処理例について説明する。
即ち、ステップS91において、電波探知装置は、送信アンテナの探知範囲を第1の範囲R1に切り替える。
ステップS92において、電波探知装置は、送信アンテナから送信信号を送信する。
ステップS93において、電波探知装置は、受信信号が受信されたか否かを判定する。
ステップS93において、受信信号が受信されていないと判定された場合、処理はステップS93に戻され、それ以降の処理が繰り返される。なお、この場合には、既に送信アンテナの探知範囲は第1の範囲R1に切り替えられているので、ステップS91の処理は実質実行されずに、処理はステップS92に進む。
これに対して、ステップS93において、受信信号が受信されたと判定された場合、ステップS94において、電波探知装置は、その受信信号から探知判断量を演算する。
ここに、探知判断量とは、例えば、電波探知装置が2周波CWセンサ等のように距離測定を行う場合には、距離をいい、電波探知装置がモノパルス式センサ等のように角度測定を行う場合には、角度をいう。
即ち、ステップS91乃至S94により、第1の範囲R1を探知範囲とする1回目の探知が行われる。そこで、次のステップS95乃至S99により、第2の範囲R2を探知範囲とする2回目の探知が行われる。
即ち、ステップS95において、電波探知装置は、送信アンテナの探知範囲を第2の範囲R2に切り替える。
ステップS96において、電波探知装置は、送信アンテナから送信信号を送信する。
ステップS97において、電波探知装置は、受信信号が受信されたか否かを判定する。
ここで、受信信号が受信されない場合には、2回目の探知判断量の演算ができない。即ち、2回目の探知結果は、「探知対象物が存在せず」という結果となり、1回目の探知結果と一致しないことになる。そこで、このような場合には、ステップS97において、NOであると判定されて、処理はステップS98に進む。ステップS98において、電波探知装置は、領域R1−R2に探知対象物が存在することを示す検出信号を出力する。これにより、処理はステップS103に進む。ただし、ステップS103以降の処理については後述する。
これに対して、ステップS97において、受信信号が受信されたと判定された場合、ステップS99において、電波探知装置は、その受信信号から探知判断量を演算する。
ステップS100において、電波探知装置は、ステップS99の処理で演算された探知判断量(2回目の探知結果)と、ステップS94の処理で演算された探知判断量(1回目の探知結果)とを比較することで、探知判断量が変化したか否かを判定する。
ステップS94の処理で演算された探知判断量に対して、ステップS99の処理で演算された探知判断量が変化していない場合、即ち、1回目と2回目の探知結果が一致している場合、ステップS100において、NOであると判定されて、処理はステップS101に進む。ステップS101において、電波探知装置は、領域R1+R2に探知対象物が存在することを示す検出信号を出力する。これにより、処理はステップS103に進む。ただし、ステップS103以降の処理については後述する。
これに対して、ステップS94の処理で演算された探知判断量に対して、ステップS99の処理で演算された探知判断量が変化した場合、即ち、1回目と2回目の探知結果が不一致の場合、上述したように、領域R2−R1と領域R1−R2の両方に1以上の(即ち複数または単数の)探知対象物が存在すると判断されることになる。従って、このような場合、ステップS100の処理でYESであると判定されて、次のようなステップS102の処理が実行される。即ち、ステップS102において、電波探知装置は、判定不能を示すエラー信号を出力する。
このようにして、ステップS98,S101,S102のうちの何れかの処理が実行されると、処理はステップS103に進む。ステップS103において、電波探知装置は、処理の終了が指示されたか否かを判定する。
ステップS103において、処理の終了が指示されたと判定された場合、このドップラ方式の電波探知装置の処理は終了となる。
これに対して、ステップS103において、処理の終了がまだ指示されていないと判定された場合、処理はステップS91に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
このような図23のドップラ方式の電波探知装置の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。
図23の処理をハードウエアにより実行させる場合には、その電波探知装置は、例えば図10の構成とすることができる。一方、図23の処理(或いはその一部分の処理)をソフトウエアにより実行させる場合には、その電波探知装置またはその一部分は、例えば、上述した図11のコンピュータで構成することができる。
何れの構成であっても、探知判断量としては、2周波CW方式により測定された距離を採用することもできるし、モノパルス式により測定された角度を採用することもできる。
勿論、電波探知装置は、モノパルス式と2周波CW方式との両機能を有する装置として構成する必要はなく、何れか一方の機能を有する装置や、他の機能を併せ持つ装置として構成することもできる。
また、送信アンテナ探知範囲変化手法の説明として、送信アンテナの探知範囲を第1の範囲R1から第2の範囲R2に変化させると説明したが、探知範囲の変化回数は2回に特に限定されない。即ち、3回以上探知範囲を離散的に変化させてもよいし、探知範囲を連続的に変化させてもよい。