JP2007262469A - 鋼管およびその製造方法 - Google Patents

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Akihiro Matsuzaki
明博 松崎
Toru Hayashi
透 林
Nobutaka Kurosawa
伸隆 黒澤
Yasuhiro Omori
靖浩 大森
Seishi Uei
清史 上井
Takaaki Toyooka
高明 豊岡
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Abstract

【課題】従来よりも疲労強度を一層向上させた鋼管を提案する。
【解決手段】C:0.3〜0.1mass%、Si:3.0mass%以下およびMn:2.0mass%を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、少なくとも一部分に焼入れを施した鋼管において、該焼入れ組織を、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下かつ、最大粒径が平均粒径の4倍以下であるものとする。
【選択図】図3

Description

本発明は、少なくとも部分的に高周波焼入れによる硬化部をそなえる、鋼管およびその製造方法に関するものである。
従来、例えば自動車用ドライブシャフトは、熱間圧延棒鋼に、熱間鍛造、さらには切削、冷間鍛造などを施して所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ−焼戻しを行うことにより、ドライブシャフトとしての重要な特性であるねじり疲労強度、曲げ疲労強度、転動疲労強度およびすべり転動疲労強度等の疲労強度を確保しているのが一般的である。
他方、近年、環境問題から自動車用部品に対する軽量化への要求が強く、この観点からドライブシャフトを中実の棒鋼品から中空の鋼管に代替することが検討されている。
ドライブシャフトに供する鋼管としては、電縫鋼管、圧接鋼管及び鍛接鋼管等の利用が考えられる。これらの鋼管をドライブシャフトに採用するには、自動車の急発進に伴ってドライブシャフトに繰り返し加わる負荷に対しての耐性、特に優れた疲労強度が要求される。
ここに、電縫鋼管を用いた中空ドライブシャフトについて、特許文献1には、高周波焼入れによって高強度化することが開示されている。例えば、ねじり疲労強度を向上させるためには、高周波焼入れによる焼入れ深さを増加させることが考えられる。しかしながら、焼入れ深さを増加してもある深さで疲労強度は飽和する。従って、単に高周波焼入れをすることでは、近年の自動車部品の疲労強度に対する要求には十分に応えられないところに問題を残していた。
また、特許文献2には、ドライブシャフトに供する鋼管の疲労強度を向上するために、MnSにより粒成長を抑制させて疲労強度を向上させるために、熱間圧延に供する際の鋳片の加熱温度を1350℃〜1420℃とすることが開示されている。しかしながら、やはり、近年のねじり疲労強度に対する要求には十分に応えることができなかった。
特開2004−162125号公報 特開2003−321713号公報
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、従来よりも疲労強度を一層向上させた鋼管を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、前記した疲労特性を効果的に向上させるべく、特に高周波焼入れ組織について鋭意検討を行った。
その結果、高周波焼入れ組織の旧オーステナイト粒の粒径に着目し、旧オーステナイト粒の平均粒径を微細化することにより、ねじり疲労強度、曲げ疲労強度および転動疲労強度などの疲労特性が改善することを見出すに到った。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)C:0.3〜1.5mass%、
Si:3.0mass%以下および
Mn:2.0mass%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、さらに高周波焼入れによる硬化部を有し、該硬化部は旧オーステナイト粒の平均径が12μm 以下かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下であることを特徴とする、疲労特性に優れた鋼管。
(2)前記鋼管は、さらに、
Al: 0.25mass%以下
を含有することを特徴とする上記(1)に記載の鋼管。
(3)前記鋼管は、さらに、
Cr:2.5mass%以下、
Mo:1.0mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Ni:2.5mass%以下、
Co:1.0mass%以下、
V:0.5mass%以下および
W:1.0mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の鋼管。
(4)前記鋼管は、さらに、
Ti:0.1mass%以下、
Nb:0.1mass%以下、
Zr:0.1mass%以下、
B:0.01mass%以下、
Ta:0.5mass%以下、
Hf:0.5mass%以下および
Sb:0.015mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)、(2)または(3)に記載の鋼管。
(5)前記鋼管は、さらに
S:0.1mass%以下、
Pb:0.1mass%以下、
Bi:0.1mass%以下、
Se:0.1mass%以下、
Te:0.1mass%以下、
Ca:0.01mass%以下、
Mg:0.01mass%以下および
REM:0.1mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の鋼管。
(6)微細なベイナイト組織および微細なマルテンサイト組織のいずれか一方または両方を合計で10体積%以上含有する鋼管を素材として、該鋼管の少なくとも一部分に、昇温速度400℃/s以上かつ到達温度1000℃以下の高周波加熱を1回以上施すことを特徴とする鋼管の製造方法。
(7)上記(6)において、前記素材は、800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工工程と、該熱間加工工程後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却する冷却工程と、さらに、該冷却工程の前に700〜800℃未満の温度域で20%以上の加工を施すか、あるいは該冷却工程の後にA変態点以下の温度域で20%以上の加工を施す第2加工工程と、を経て製造することを特徴とする鋼管の製造方法。
(8)上記(6)または(7)において、1回の高周波加熱における800℃以上の滞留時間を5秒以下とすることを特徴とする鋼管の製造方法。
(9)上記(6)乃至(8)のいずれかにおいて、前記鋼管が、
C:0.3〜1.5mass%、
Si:3.0mass%以下および
Mn:2.0mass%以下
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする鋼管の製造方法。
(10)上記(9)において、前記鋼管が、さらに、
Al:0.25mass%以下
を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。
(11)上記(9)または(10)において、前記鋼管が、さらに、
Cr:2.5mass%以下、
Mo:1.0mass%以下、
Cu:1.0mass%以下、
Ni:2.5mass%以下、
Co:1.0mass%以下、
V:0.5mass%以下および
W:1.0mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。
(12)上記(9)、(10)または(11)において、前記鋼管が、さらに、
Ti:0.1mass%以下、
Nb:0.1mass%以下、
Zr:0.1mass%以下、
B:0.01mass%以下、
Ta:0.5mass%以下、
Hf:0.5mass%以下および
Sb:0.015mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。
(13)上記(9)乃至(12)のいずれかにおいて、前記鋼管が、さらに
S:0.1mass%以下、
Pb:0.1mass%以下、
Bi:0.1mass%以下、
Se:0.1mass%以下、
Te:0.1mass%以下、
Ca:0.01mass%以下、
Mg:0.01mass%以下および
REM:0.1mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。
本発明によれば、ねじり疲労特性をはじめとして、曲げ疲労特性、転動疲労特性およびすべり転動疲労特性等の全ての疲労特性に優れた鋼管を安定して得ることができ、その結果、自動車用部品の軽量化等の要求に対し偉効を奏する。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の鋼管は、自動車用のドライブシャフト、インプットシャフト、アウトプットシャフトおよびクランクシャフト等として適用でき、特に疲労強度が要求される部分または全部に焼入れを施した硬化層を有し、この硬化層の焼入れ組織は、旧オーステナイトの粒径が12μm以下であることが肝要である。
以下に、この知見を得るに到った研究結果について説明する。
下記a鋼またはb鋼に示す成分組成の鋼素材を150kg真空溶解炉にて溶製し、該鋼素材に種々の熱間加工条件に従って熱間圧延を施して68mm幅の鋼帯とした後、該鋼帯を成形ロールで管状に成形し、管状となった鋼帯のエッジ部を加熱するとともに、加圧ロールを用いてエッジ部相互を突き合わせることによって両エッジ部を溶接して、電縫鋼管を製造した。ついで、この電縫鋼管を所定の長さに切断後、表面切削加工と一部冷間での転造加工を加えて径を調整すると同時に、スプライン部の転造加工を施して、図1に示す寸法および形状になるスプライン部2を有する管状の試験片1を作製した。

[a鋼]C:0.48mass%、Si:0.55mass%、Mn:0.78mass%、P:0.011mass%、S:0.019mass%、Al:0.024mass%、N:0.0043mass%、残部Feおよび不可避不純物。
[b鋼]C:0.48mass%、Si:0.51mass%、Mn:0.79mass%、P:0.011mass%、S:0.021mass%、Al:0.024mass%、N:0.0039mass%、Mo:0.45mass%、Ti:0.021mass%、B:0.0024mass%、残部Feおよび不可避不純物。
ついで、この試験片に、周波数:10〜200kHzの高周波焼入れ装置を用いて、種々の条件下で加熱、焼入れを行った後、加熱炉を用いて170℃×30分の条件で焼もどしを行い、その後ねじり疲労強度について評価した。
なお、ねじり疲労強度は、試験片のねじり疲労試験において破断繰り返し数が1×105回の時のトルク値(N・m)で評価した。ねじり疲労試験は、油圧式疲労試験機を用い、図2(a)に示すように、スプライン部2a,2bをそれぞれ円盤状のつかみ具3a,3bに組み込み、つかみ具3a,3bとの間に周波数:1〜2Hzで繰り返しねじりトルクを負荷することにより行った。
また、同じ試験片について、その硬化層の組織を、光学顕微鏡を用いて観察し、旧オーステナイト粒平均径および最大旧オーステナイト粒径を求めた。
旧オーステナイト平均粒径の測定は、光学顕微鏡により、400倍(1視野の面積:0.25mm×0.225mm)から1000倍(1視野の面積:0.10mm×0.09mm)で、表面から硬化層厚の1/5位置、1/2位置および4/5位置のそれぞれの位置について5視野の観察を行い、各位置おける旧オーステナイト粒平均径を測定し、その最大値を旧オーステナイト粒平均径とした。なお、硬化層厚は、表面からマルテンサイト組織の面積率が98%に減少するまでの深さ領域とした。
一方、最大旧オーステナイト粒径は、400倍(1視野の面積:0.25mm×0.225mm)で硬化層厚さ方向の上記各位置で5視野相当、計15視野相当の面積について測定し、全視野内の粒度分布から下記式で求められる値を最大粒径とした。
最大粒径=平均粒径+3σ(σ:標準偏差)
なお、旧オーステナイト粒の測定は、硬化層の厚さ方向に切断した断面について、水500gに対しピクリン酸:50gを溶解させたピクリン酸水溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:11g、塩化第1鉄:1gおよびシュウ酸:1.5gを添加したものを腐食液として作用させ、旧オーステナイト粒界を現出させて行った。
まず、図3に平均旧オーステナイト粒径とねじり疲労強度との関係を示す。図3(a)に示すように、平均粒径が小さくなる程、疲労強度が増加することが認められた。しかし、旧オーステナイト粒径が12μm以下と小さい場合、粒径が同程度の場合であっても疲労強度に差が生じることがあり、この原因が、粒径分布、特に最大の粒径に依存することを見出した。この点についてさらに鋭意検討を重ねた結果、最大粒径が平均粒径の4倍以下となると、平均粒径を微細化することによる疲労強度の向上効果が顕著となることがわかった。図3(a)に示した、各プロットを最大粒径/平均粒径が4以下の場合を白抜きの四角または菱形、最大粒径/平均粒径が4超の場合を黒塗りの四角または菱形としてプロットし直したものを図3(b)に示す。
このように、平均粒径および最大粒径が疲労強度に影響を及ぼす要因としては以下のように推定される。
疲労破壊の原因となる不純物元素は旧オーステナイト粒界に偏析し易い。従って、旧オーステナイト粒界の粒径が微細になるほど偏析する面積が増加し、個々の偏析箇所における不純物の濃度が減少し、破壊強度が増加する。また、切り欠き等による旧オーステナイト粒界への応力集中も粒径が微細となると分散され、個々の粒界へ作用する応力が減少し、結果として疲労強度が増加する。このような効果は平均粒径に影響されるだけでなく、最大粒径にも影響されると推定される。すなわち、大きな粒の近傍では、粒界の面積が少ないため、不純物の濃化も進み易い。さらに応力の分散も生じにくいと考えられる。
かように、平均粒径の4倍を超えるような大きな粒が存在すると、上記のような作用により疲労強度を低下させる可能性が増加するものと推定される。
特に、旧オーステナイト粒の最大粒径は20μm以下であると、広範囲の部品形状において大きな疲労強度の向上が安定して期待できる。より好ましくは、平均粒径を5μm以下とする。さらに好ましくは平均粒径を4μm以下とする。
次に、図4は、ねじり疲労強度に及ぼす、硬化層の平均旧オーステナイト粒径と、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径との影響を示すグラフである。平均旧オーステナイト粒径が12μm以下である場合に、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径が4以下とすることにより、疲労強度が格段に向上できることがわかる。また、平均オーステナイト粒径を5μm以下、さらには3μm以下とすると、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径が4以下であることによる疲労強度向上効果がさらに顕著になることがわかる。
図5に、ねじり疲労強度に及ぼす、冷間の加工率および高周波加熱時の最高到達温度(加熱温度)および昇温速度の影響を示す。図5より、冷間の加工率が25%以上、高周波焼入れ時の最高到達温度が1000℃以下および昇温速度が400℃/s以上の条件下で優れた疲労特性が得られることがわかる。
なお、上述の図3〜5を得るのに用いた試験結果を表1に示す。
Figure 2007262469
ここで、旧オーステナイト粒の平均粒径を12μm以下、さらに最大粒径を平均粒径の4倍以下とするためには、高周波焼入れ前の組織に、均一微細なベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を含有させておく方法が有利である。以下に、この方法について説明する。
すなわち、高周波焼入れ前組織に関しては、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織の組織分率を10vol%以上、好ましくは25vol%以上とする。焼入れ前組織にベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織が多いと、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織は炭化物が微細に分散した組織であるため、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイトであるフェライト/炭化物界面の面積が増加し、生成したオーステナイトは微細化するため、焼入れ硬化層の旧オーステナイト粒径を微細化するのに有効に寄与する。焼入れ加熱時にオーステナイト粒径が微細化することで粒界強度が上昇し、疲労強度は向上する。
均一微細なベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織の組織分率を10vol%以上とするには、後述する成分組成の鋼を800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工を施し、この熱間加工後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却するとよい。なぜなら、800〜1000℃での総加工率が80%未満であると、十分に均一微細なベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織が得られないからである。また、熱間加工後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却しないと、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を合計で10vol%以上とできない。
なお、ここでいう熱間加工は、造管用素材となる鋼板の製造工程における熱間圧延時の仕上圧延が好適に用いられる。
さらに、高周波焼入れ後の硬化層について、旧オーステナイトの平均粒径および、最大粒径を微細化するためには、高周波焼入れ前に800℃未満の温度域で20%以上の加工を施す(第2加工工程)必要がある。800℃未満の温度域での加工は、熱間加工工程で、前記冷却速度の冷却前(700〜800℃未満の温度域)に行ってもよいし、冷却後に別途冷間加工を施すか、あるいはA1変態点以下の温度で再加熱して温間加工を施しても良い。800℃未満での加工率は、30%以上とする事がより好ましい。
なお、加工法としては、例えば造管後の縮径加工、引き抜き加工、転造加工、ショット等が挙げられる。
次に、このような前組織を得るための好適な鋼成分について説明する。
C:0.3〜1.5mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.3mass%に満たないと、必要とされる疲労強度を確保するために焼入れ硬化層深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、またベイナイト組織も生成し難くなるため、0.3mass%以上を添加する。一方、1.5mass%を越えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度も低下し、また切削性、冷間鍛造性および耐焼割れ性も低下する。このため、Cは0.3〜1.5mass%の範囲に限定した。好ましくは0.4〜0.6mass%の範囲である。
Si:3.0mass%以下
Siは脱酸剤として作用するだけでなく、強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が3.0mass%を超えると、被削性および鍛造性の低下を招くため、Si量は3.0mass%以下が好ましい。
なお、強度向上のためには0.05mass%以上とすることが好ましい。
Mn:2.0mass%以下
Mnは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化層深さを確保する上で有用な成分であるため添加する。含有量が0.2mass%未満ではその添加効果に乏しいので、0.2mass%以上が好ましい。より好ましくは0.3mass%以上である。一方、Mn量が2.0mass%を超えると焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは2.0mass%以下が好ましい。なお、Mnは含有量が多いと、母材の硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるので、1.2mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは1.0mass%以下である。
さらに、上記基本成分に加えて、以下のAlを添加することができる。
Al:0.25mass%以下
Alは、脱酸に有効な元素である。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって焼入れ硬化層の粒径を微細化する上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が0.25mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、Alは0.25mass%以下の範囲で含有させることが好ましい。より好ましくは0.001乃至0.10mass%の範囲である。
以上、基本成分およびAlについて説明したが、本発明ではその他にも、以下に述べる6成分のうちの1種または2種以上を適宜含有させることができる。
Cr:2.5mass%以下
Crは、焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用な元素である。しかし、過度に含有されると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有は極力低減することが望ましいが、2.5mass%までは許容できる。好ましくは1.5mass%以下である。
Mo:1.0mass%以下
Moは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには0.05mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Moは1.0mass%以下とすることが好ましい。
Cu:1.0mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。さらに、炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0mass%を超えると熱間加工時に割れが発生するため、1.0mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5mass%以下である。なお、0.03mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.03mass%以上含有させることが望ましい。
Ni:2.5mass%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、2.5mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、2.5mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上で含有させることが望ましい。さらに、好ましくは0.1〜1.0mass%である。
Co:1.0mass%以下
Coは、炭化物の生成を抑制して、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Coは極めて高価な元素であり、1.0mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、1.0mass%以下の添加とする。なお、0.01mass%未満の添加では、粒界強度の低下抑制効果が小さいため、0.01mass%以上は添加することが望ましい。より好ましくは0.02〜0.5mass%である。
V:0.5mass%以下
Vは、鋼中でCおよびNと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、0.5mass%以下とすることが好ましい。なお、0.01mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいため、0.01mass%以上で添加することが望ましい。さらに好ましくは0.03〜0.3mass%である。
W:1.0mass%以下
Wは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには0.005mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Wは1.0mass%以下とすることが好ましい。
さらに、本発明では、Ti:0.1mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下、B:0.01mass%以下、Ta:0.5mass%以下、Hf:0.5mass%以下およびSb:0.015mass%以下のうちから選んだ1種または2種異常を含有させることができる。
Ti:0.1mass%以下
Tiは、不可避不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が焼失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。この効果を得るためには、0.005mass%以上で含有することが好ましいが、0.1mass%を超えて含有されるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くため、Tiは0.1mass%以下とすることが好ましい。好ましくは0.01〜0.07mass%の範囲である。
Nb:0.1mass%以下
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.01〜0.05mass%である。
Zr:0.1mass%以下
Zrは、焼入れ性向上効果があるだけでなく、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに、好ましくは0.01〜0.05mass%である。
B:0.01mass%以下
Bは、粒界強化により疲労特性を改善するだけでなく、強度を向上させる有用な元素であり、好ましくは0.0003mass%以上で添加するが、0.01mass%を超えて添加しても、その効果は飽和するため、0.01mass%以下に限定した。
Ta:0.5mass%以下
Taは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.5mass%を超えて含有量を増加させても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.5mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Hf:0.5mass%以下
Hfは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.5mass%を超えて含有量を増加させても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.5mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Sb:0.015mass%以下
Sbは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.015mass%を超えて含有量を増加させると靭性が劣化するので、0.015mass%以下、好ましくは0.010mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.005mass%以上とすることが好ましい。
さらにまた、本発明では、S:0.1mass%以下、Pb:0.1mass%以下、Bi:0.1mass%以下、Se:0.1mass%以下、Te:0.1mass%以下、Ca:0.01mass%以下、Mg:0.01mass%以下およびREM:0.1mass%以下を含有させることができる。
S:0.1mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる有用元素であるが、0.1mass%を超えて含有させると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、Sは0.1mass%以下に制限した。好ましくは0.04mass%以下である。
Pb:0.1mass%以下
Bi:0.1mass%以下
PbおよびBiはいずれも、切削時の溶融、潤滑および脆化作用により、被削性を向上させるので、この目的で添加することができる。しかしながら、Pb:0.1 mass%、Bi:0.1 mass%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、成分コストが上昇するため、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Pbは0.01mass%以上、Biは0.01mass%以上含有させることが好ましい。
Se:0.1mass%以下
Te:0.1mass%以下
SeおよびTeはそれぞれ、Mnと結合してMnSeおよびMnTeを形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、含有量が0.1 mass%を超えると、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、いずれも0.1 mass%以下で含有させるものとした。また、被削性の改善のためには、Seの場合は 0.003mass%以上およびTeの場合は 0.003mass%以上で含有させることが好ましい。
Ca:0.01mass%以下
REM:0.1mass%以下
CaおよびREMはそれぞれ、MnSと共に硫化物を形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、CaおよびREMをそれぞれ、0.01mass%および0.1mass%を超えて含有させても、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Caは0.0001mass%以上およびREM は0.0001mass%以上含有させることが好ましい。
Mg:0.01mass%以下
Mgは、脱酸元素であるだけでなく、応力集中源となって被削性を改善する効果があるので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰に添加すると効果が飽和する上、成分コストが上昇するため、0.01mass%以下で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Mgは0.0001mass%以上で含有させることが好ましい。
以上説明した元素以外の残部はFeおよび不可避不純物であることが好ましく、不可避不純物としてはP,OおよびNが挙げられ、それぞれ、P:0.10mass%、N:0.01mass%、O:0.008mass%までを許容できる。
次に、本発明の製造方法について、図6を参照して説明する。
上記した所定の成分組成に調整した鋼素材、例えば鋼鋳片を加熱炉で所定温度に加熱してから、熱間圧延で一定幅の鋼帯とする。そして、図6に示すように、この鋼帯11を、一群の成形ロール12に鋼帯面を水平にして一定速度で送り込む。この成形ロール12としては、例えば、入側から順次、鋼帯幅方向の両端を上方に曲げていくエッジ・ベンド・ロール13、中央部分を曲げるセンタ・ベンド・ロール14、端部成形用のケージ・ロール15、仕上げ成形のためのフィンパス・ロール16が直列に配置されている。これら成形ロール12で円筒状にされた鋼帯11は、引き続き、その突き合わされた幅方向端部(以下、単に突き合わせ部またはエッジ部という)を誘導コイル等17で加熱し、スクイズ・ロール18で押さえて圧着、溶接し、一応の管体19とされる。その管体19は、上記溶接で内外面に生じたビード(図示していないが、通常の溶着部に生じた数珠状物)をビード切削手段20で切削除去する。さらに、超音波探傷器21での疵検査、シーム・アニラー22なる焼鈍装置で熱処理して溶接部(シーム部ともいう)を焼鈍し、次いで水噴射ノズル23での冷却が順次施される。その後、ストレッチ・レデューサやサイザーのような絞り圧延機24で寸法を整えてから、払い出し用の搬送ライン上でカッタ25により所望される長さに切断されて、所望特性を有する電縫鋼管となる。
さらに、以上述べた工程の後に、必要に応じて、熱間での減径減肉圧延もしくは冷間引き抜き等を実施する場合もある。
また、上記溶接に代え、圧接あるいは鍛接を施すと、圧接鋼管や鍛接鋼管になる。
最後に、かくして得られる鋼管の少なくとも一部に加熱温度:800〜1000℃の条件下で高周波焼入れを施す。この少なくとも一部を疲労強度が要求される部位とする。
この一連の工程において、(1)800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工を行い、該熱問加工後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却し、さらに、A変態点以下の温度域で20%以上の加工を施す加工・冷却履歴を経るか、あるいは(2)800〜1000℃での総加工率が80%以上、700〜800℃未満での総加工率が20%以上の熱間加工を施し、該熱間加工後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却する加工・冷却履歴を経て、製造された鋼管に対して、以下に後述する高周波焼入れ条件を採用することにより、旧オーステナイト粒径が12μm以下の焼入れ組織とすることが可能となる。
上記の熱間加工は、上述の熱間圧延が好適に採用でき、特に熱間圧延工程における仕上圧延が最も好適である。また、A変態点以下の温度域での加工は、上述の絞り圧延機24により加工、あるいは、必要に応じて行われる減径減肉圧延や冷間引き抜きが好適に採用できる。
以下、熱延鋼板を素材として電縫鋼管を製造する場合を例にとって、各規制について詳しく説明する。
[加工条件]
加工条件については以下に説明する(1)(2)のうちのいずれかを採用する必要がある。
(1)熱間加工、具体的には造管用の素材となる熱延鋼板を製造する際の、熱間圧延時に800〜1000℃での総加工率を80%以上とする。総加工率の調整は圧下率を制御することで行える。好適には、仕上圧延時に仕上圧延機入側温度および仕上圧延機出側温度を800〜1000℃の範囲として、仕上圧延機入側板厚と仕上板厚とを圧下率が80%以上となるように設定すればよい。熱間圧延後は、700〜500℃の温度域の冷却速度を0.2℃/s以上とし巻取温度を500℃以下として巻き取る。このようにして得られた熱延鋼板を素材として、上述の工程にて電縫鋼管を製造する。次いで、図6に示したように、管体19とした後の絞り圧延機24で20%以上の加工を行うか、あるいは、上述の減径減肉圧延をA変態点以下の温度域で20%以上として行う。絞り圧延機24による圧延と滅径減肉圧延との合計の総加工率が20%以上としてもよい。以上の熱間圧延時の加工条件、造管後の加工条件を採用することにより、均一的なベイナイトおよび/またはマルテンサイト組織とすることができ、その後の高周波焼入の加熱時にオーステナイト粒が微細化する。なお、A変態点以下の温度域での加工として、転進加工、ショット等を採用してもよい。
(2)熱間加工、具体的には造管用の素材となる熱延鋼板を製造する際の、熱間圧延時に800〜1000℃での総加工率を80%以上、700〜800℃での総加工率を20%以上とする。総加工率の調整は圧下率を制御することで行える。好適には、仕上圧延時に仕上圧延機入側温度を1000℃〜800℃とし、仕上圧延機列の前段スタンド(例えば7スタンドからなる連続仕上圧延機では第1〜第5スタンド)で80%以上の圧下率の圧延を行う。そして、後段スタンド(例えば7スタンドからなる連続仕上圧延機では第6、第7スタンド)で700〜800℃で20%以上の圧下率の圧延を行う、後段スタンドでは前段スタンドよりも低い温度で圧延する必要があるため、スタンド間冷却装置を用いて後段スタンドの圧延が700〜800℃で行えるようにする。圧延後には700〜500℃の温度域の冷却速度を0.2℃/s以上とし巻取温度を500℃以下として巻き取る。このようにして得られた熱延鋼板を素材として、上述の工程にて電縫鋼管を製造する。以上の熱間圧延時の加工条件を採用することにより均一微細なベイナイトおよび/またはマルテンサイト組織とすることができ、その後の高周波焼入の加熱時にオーステナイト粒が微細かつ均一化する。
[高周波焼入条件]
加熱温度を800〜1000℃とし、600〜800℃を400℃/s以上の昇温速度で昇温する。加熱温度が800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不十分となり、硬化層を得ることができない。一方、加熱温度が1000℃を超えると、オーステナイト粒の成長速度が著しく増加し、平均粒径が増加すると同時に、急成長する温度域においては個々の粒成長速度にも著しい差が生じ易いため、最大粒径が平均粒径の4倍超となり疲労強度の低下を招く。
また、600〜800℃の昇温速度が400℃/s未満の場合にもオーステナイト粒の成長が促進されると同時に粒の大きさのばらつきが大きくなり、最大粒径が平均粒径の4倍超となり、疲労強度の低下を招く。これは、昇温速度が遅いとより低い温度でフェライトからオーステナイトへの逆変態が開始し、場所により不均一な粒成長を生じ易いためと推定される。
なお、加熱温度は800〜950℃とすることが好ましく、600〜800℃の昇温速度は700℃/s以上であることが好ましい。より好ましくは1000℃/s以上である。
また、高周波加熱時において800℃以上の滞留時間が長くなると、オーステナイト粒が成長して、結果として最大粒径が平均粒径の4倍超となり易くなるので、800℃以上の滞留時間は5秒以下とすることが好ましい。
本発明の鋼管として、自動車のドライブシャフト、アウトプットシャフト、インプットシャフトを模擬したシャフトを製造した。すなわち、表2に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは300×400mmであった。この鋳片を、熱間圧延により、熱延鋼板とした。この際、仕上圧延時の800〜1000℃の温度域の圧下率を表3に示す通りとし、700〜500℃の温度域の冷却速度を表3に示す通りとし、次に冷却した後に、500℃以下で巻き取った。得られた熱延鋼板を素材として、前述の造管工程にて管状に成形した。
ついで、この管体を、冷間での転造加工および切削加工により、図1に示す寸法・形状になる管状試験片を作製した。試験片の平行部に対する冷間加工率は、表3に示す通りである。ここで、加工率は、断面減少率である。
この鋼管(管状試験片)に、周波数:15kHzの高周波焼入れ装置を用いて、表3に示す条件下で焼入れを行った後、加熱炉を用いて170℃×30分の条件で焼もどしを行い、その後ねじり疲労強度について調査した。ここで、一部の管状試験片については、焼もどしを省略して、ねじり疲労強度の調査を行った。
なお、ねじり疲労強度は、シャフトのねじり疲労試験において破断繰り返し数が1×10回の時のトルク値(N・m)で評価した。ねじり疲労試験は、油圧式疲労試験機を用い、図2に示すようにスプライン部2a,2bをそれぞれ円盤状のつかみ具3a,3bに組み込み、つかみ具3a,3bとの間に周波数1〜2Hzで繰り返しねじりトルクを負荷することにより行った。
また、同じシャフトについて、その硬化層をピクリン酸を主成分とした腐食液(水:500gに対しピクリン酸:50gを溶解させたピクリン酸水溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:11g、塩化第1鉄:1gおよびシュウ酸:1.5gを添加したもの)にてエッチング後、その組織を光学顕微鏡を用いて観察し、旧オーステナイト粒の平均粒径を求めた。平均粒径の測定は、前述した方法と同様とした。
さらに、同じシャフトについて、耐焼割れ性についても調査した。
この耐焼割れ性は、高周波焼入れ後のスプライン部のC断面5ヶ所を切断・研磨し、光学顕微鏡(倍率:100〜200倍)で観察した時の焼割れ発生個数で評価した。
得られた結果を表3に併記する。
Figure 2007262469
Figure 2007262469
Figure 2007262469
表3から明らかなように、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下である、焼入れ組織を有するシャフトはいずれも、高いねじり疲労強度および焼割れ個数:0という優れた耐焼割れ性を得ることができた。
これに対し、旧オーステナイト粒の平均粒径が12μm以下となっていない焼入れ組織を有するシャフトはいずれも疲労強度が低い。
代表的なシャフトの正面図である。 シャフトのねじり疲労試験の要領を示す図である。 旧オーステナイト粒平均径とねじり疲労強度との関係を示すグラフである。 ねじり疲労強度に及ぼす、硬化層の平均旧オーステナイト粒径と、最大旧オーステナイト粒径/平均旧オーステナイト粒径との影響を示すグラフである。 ねじり疲労強度に及ぼす、冷間の加工率および高周波加熱時の最高到達温度(加熱温度)および昇温速度の影響を示すグラフである。 電縫鋼管の製造手順を示す図である。
符号の説明
1 試験片
2 スプライン部
3a、3b つかみ具

Claims (13)

  1. C:0.3〜1.5mass%、
    Si:3.0mass%以下および
    Mn:2.0mass%以下
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、さらに高周波焼入れによる硬化部を有し、該硬化部は旧オーステナイト粒の平均径が12μm 以下かつ最大粒径が平均粒径の4倍以下であることを特徴とする、疲労特性に優れた鋼管。
  2. 前記鋼管は、さらに、
    Al: 0.25mass%以下
    を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼管。
  3. 前記鋼管は、さらに、
    Cr:2.5mass%以下、
    Mo:1.0mass%以下、
    Cu:1.0mass%以下、
    Ni:2.5mass%以下、
    Co:1.0mass%以下、
    V:0.5mass%以下および
    W:1.0mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管。
  4. 前記鋼管は、さらに、
    Ti:0.1mass%以下、
    Nb:0.1mass%以下、
    Zr:0.1mass%以下、
    B:0.01mass%以下、
    Ta:0.5mass%以下、
    Hf:0.5mass%以下および
    Sb:0.015mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の鋼管。
  5. 前記鋼管は、さらに
    S:0.1mass%以下、
    Pb:0.1mass%以下、
    Bi:0.1mass%以下、
    Se:0.1mass%以下、
    Te:0.1mass%以下、
    Ca:0.01mass%以下、
    Mg:0.01mass%以下および
    REM:0.1mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鋼管。
  6. 微細なベイナイト組織および微細なマルテンサイト組織のいずれか一方または両方を合計で10体積%以上含有する鋼管を素材として、該鋼管の少なくとも一部分に、昇温速度400℃/s以上かつ到達温度1000℃以下の高周波加熱を1回以上施すことを特徴とする鋼管の製造方法。
  7. 請求項6において、前記素材は、800〜1000℃での総加工率が80%以上となる熱間加工工程と、該熱間加工工程後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却する冷却工程と、さらに、該冷却工程の前に700〜800℃未満の温度域で20%以上の加工を施すか、あるいは該冷却工程の後にA変態点以下の温度域で20%以上の加工を施す第2加工工程と、を経て製造することを特徴とする鋼管の製造方法。
  8. 請求項6または7において、1回の高周波加熱における800℃以上の滞留時間を5秒以下とすることを特徴とする鋼管の製造方法。
  9. 請求項6乃至8のいずれかにおいて、前記鋼管が、
    C:0.3〜1.5mass%、
    Si:3.0mass%以下および
    Mn:2.0mass%以下
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする鋼管の製造方法。
  10. 請求項9において、前記鋼管が、さらに、
    Al:0.25mass%以下
    を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。
  11. 請求項9または10において、前記鋼管が、さらに、
    Cr:2.5mass%以下、
    Mo:1.0mass%以下、
    Cu:1.0mass%以下、
    Ni:2.5mass%以下、
    Co:1.0mass%以下、
    V:0.5mass%以下および
    W:1.0mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。
  12. 請求項9、10または11において、前記鋼管が、さらに、
    Ti:0.1mass%以下、
    Nb:0.1mass%以下、
    Zr:0.1mass%以下、
    B:0.01mass%以下、
    Ta:0.5mass%以下、
    Hf:0.5mass%以下および
    Sb:0.015mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。
  13. 請求項9乃至12のいずれかにおいて、前記鋼管が、さらに
    S:0.1mass%以下、
    Pb:0.1mass%以下、
    Bi:0.1mass%以下、
    Se:0.1mass%以下、
    Te:0.1mass%以下、
    Ca:0.01mass%以下、
    Mg:0.01mass%以下および
    REM:0.1mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする鋼管の製造方法。

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