JP7276641B1 - 電縫鋼管およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

自動車や建設機械、産業機械の部品に用いられる機械構造用鋼管に好適な、高強度かつ、加工性および靭性に優れた電縫鋼管を提供する。所定の成分組成を含み、母材部の肉厚中央の鋼組織を、マルテンサイトの体積率を90%以上として残部をフェライト、ベイナイト、パーライトおよびオーステナイトのうちの1種または2種以上とし、さらに平均結晶粒径:10μm以下、粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率を40%以下の電縫鋼管とする。

Description

本開示は、電縫鋼管およびその製造方法に関する。
近年、自動車や建設機械、産業機械においては、燃費の向上や設備の小型化のため部材の高強度化が求められている。また、これらに用いられる機械構造用鋼管には、用途に合わせて曲げ成形、液圧バルジ成形、管端の口広げ成形等の加工が施されるため高い加工性も要求される。さらに、前記の自動車や建設機械、産業機械は、寒冷地で使用される場合があることから高い低温靭性も必要とされる。
しかし、部材を高強度化すると加工性や靭性が低下してしまい、目的の用途に使用できないという問題があった。
上記の問題を解決すべく、例えば、特開2019-112705号公報(特許文献1)では、旧オーステナイト粒の大きさが、結晶粒度番号で9.0以上である組織を有し、引張強さが700MPa以上であり、伸びが25%以上である継目無鋼管が提案されている。
また、国際公開第2020/075297号(特許文献2)では、焼戻しマルテンサイトの旧オーステナイト粒のアスペクト比が小さいことを特徴とした、管軸方向の引張強さが750~980MPaである、曲げ成形性の高いトーションビーム用電縫鋼管が提案されている。
特開2019-112705号公報 国際公開第2020/075297号
しかしながら、特許文献1および2に記載の鋼管は、旧オーステナイトの平均粒径や形状を制御することにより高靭性や高加工性を確保しているが、これらの方法だけでは、局所的な粗大粒の存在による靭性や加工性の低下を抑制することが困難であった。
また、管の加工形態としては曲げ加工が施される場合が多い。このとき、曲げ外側においては破断、曲げ内側においては座屈をそれぞれ抑制することにより、加工性を向上させることが可能であるが、特許文献1および2では、そうした観点からの検討はなされておらず、更なる改善の必要があった。
本開示は上記の事情を鑑みてなされたものであって、自動車や建設機械、産業機械の部品に用いられる機械構造用鋼管に好適な、高強度かつ、加工性および靭性に優れた電縫鋼管およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本開示でいう「高強度」とは、管軸方向の降伏応力が650MPa以上であり、かつ引張強さが750MPa以上であることを指す。好ましくは、降伏応力は700MPa以上であり、引張強さは800MPa以上である。
本開示でいう「高加工性」または「加工性に優れる」とは、管軸方向の降伏比(=(降伏応力/引張強さ)×100)が93%以下であり、かつ管軸方向の全伸びが20%以上であり、さらに、へん平試験(JIS G 3441)における割れ発生時の荷重P(N)が以下の(1)式を満たすことを指す。なお、管軸方向の降伏比は、好ましくは、90%以下である。また、管軸方向の全伸びは、好ましくは25%以上である。
P≧1.5×TS×t×L/D ・・・(1)
ただし、(1)式において、TSは引張強度(MPa)、Dは外径(mm)、tは鋼管の肉厚(mm)、Lは管軸方向の長さ(mm)である。
本開示でいう「高靭性」または「靭性に優れる」とは、-60℃におけるシャルピー衝撃値が60J/cm以上であることを指す。好ましくは、70J/cm以上である。
本発明者らは、前記課題に関し鋭意検討を行った。その結果、一部の旧オーステナイトが粗大であると、そこから生成したマルテンサイトも粗大となるために、靭性および加工性が低下することを見出した。
かように組織が粗大であると、脆性破壊の障壁となる大角粒界の割合が低下するため靭性が低下する。また、平均粒径が小さくても、粗大粒が一定の割合で存在すると、そこが脆性破壊の起点となるためやはり靭性は低下する。
すなわち、本発明者らは、旧オーステナイトを均一に微細とすることで、粗大なマルテンサイトの生成を抑制し、均一に微細なマルテンサイトを得ることができ、靭性および加工性を向上させることができるものと考えた。
また、かように均一に微細なマルテンサイトは、焼戻し条件を適切に制御し、可動転位密度を適切に制御することによって、高強度と低降伏比の両立が可能であることを併せて見出した。加えて、均一で微細なマルテンサイトにより、一様伸びがより大きくなり、変形時の肉厚分布のばらつきが小さくなり、加工性がより向上することが判明した。
本開示は、かかる知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本開示の要旨は次のとおりである。
1.母材部と、溶接部を有する電縫鋼管であって、成分組成が、質量%で、C:0.150%以上0.500%以下、Si:0.05%以上1.00%以下、Mn:0.10%以上2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.0200%以下、Al:0.005%以上0.100%以下、N:0.0100%以下、Cr:0.10%以上1.00%以下およびB:0.0002%以上0.0050%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記母材部の肉厚中央の鋼組織が、マルテンサイトの体積率:90%以上であって、残部がフェライト、ベイナイト、パーライトおよびオーステナイトのうちの1種または2種以上を含み、平均結晶粒径:10μm以下であって、粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率が40%以下である電縫鋼管。
2.前記成分組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1.00%以下、Ni:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Nb:0.150%以下、V:0.150%以下、Ti:0.150%以下およびCa:0.0100%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含む前記1に記載の電縫鋼管。
3.前記1または2に記載の電縫鋼管の製造方法であって、前記成分組成が、質量%で、P:0.002%以上0.050%以下、S:0.0002%以上0.0200%以下およびN:0.0010%以上0.0100%以下である前記1に記載の電縫鋼管。
4.前記1から3の何れか一つに記載の電縫鋼管の製造方法であって、鋼素材を、加熱温度:1100℃以上1300℃以下に加熱した後、粗圧延終了温度:850℃以上1150℃以下、仕上圧延終了温度:750℃以上900℃以下、かつ、930℃以下での合計圧下率:50%以上である熱間圧延を施す熱間圧延工程と、該熱間圧延工程の後に、板厚中心の平均冷却速度:5℃/s以上30℃/s以下、かかる板厚中心の冷却停止温度:400℃以上650℃以下とする冷却を施す冷却工程と、該冷却工程の後に、400℃以上650℃以下で巻取り、熱延鋼板とする巻取り工程と、前記熱延鋼板を、冷間ロール成形により円筒状に成形し、電縫溶接を施して鋼管素材とする造管工程と、前記鋼管素材を、周長が3.0%以下の割合で減少する縮径を行うサイジング工程と、該サイジング工程の後に、850℃以上1050℃以下の温度範囲で100s以上1000s以下の間加熱し、次いで肉厚中心温度で、少なくとも800℃から400℃の間の肉厚中心の平均冷却速度を40℃/s以上とし、100℃以下まで冷却する焼入れ工程と、該焼入れ工程の後に、450℃以上600℃以下の温度範囲で70s超の間加熱する焼戻し工程とを含む電縫鋼管の製造方法。
5.前記焼戻し工程における450℃以上600℃以下の温度範囲の加熱時間を100s以上1000s以下の間とする前記4に記載の電縫鋼管の製造方法。
本開示によれば、自動車や建設機械、産業機械の部品に用いられる機械構造用鋼管に好適な、高強度かつ、加工性および靭性に優れた電縫鋼管およびその製造方法を提供することができる。
電縫鋼管の電縫溶接部の管周方向断面(管軸方向垂直断面)の模式図である。
図1には、本開示に係る電縫鋼管の管軸方向における垂直断面を示している。本開示の電縫鋼管は、母材部1と、溶接部(後述する溶接熱影響部2およびボンド部3)とを有する。本開示の電縫鋼管の母材部1は、質量%で、C:0.150%以上0.500%以下、Si:0.05%以上1.00%以下、Mn:0.10%以上2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.0200%以下、Al:0.005%以上0.100%以下、N:0.0100%以下、Cr:0.10%以上1.00%以下、B:0.0002%以上0.0050%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、母材部1の肉厚中央の鋼組織は、マルテンサイトの体積率が90%以上であり、残部がフェライト、ベイナイト、パーライトおよびオーステナイトのうちの1種または2種以上を含み、平均結晶粒径が10μm以下であり、粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率が40%以下である。
以下に、本開示の電縫鋼管およびその製造方法について説明する。
まず、本開示において、電縫鋼管の母材部1の成分組成について説明する。本明細書において、特に断りがない限り、成分組成を示す「%」は「質量%」である。
(C:0.150%以上0.500%以下)
Cは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。また、Cは、焼入れ性を高めてマルテンサイトの生成に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.150%以上のCを含有する。一方、C含有量が0.500%を超えると、強度が高くなり過ぎて加工性および靱性が低下し、また溶接性も悪化する。このため、C含有量は0.150%以上0.500%以下とする。C含有量は、好ましくは0.180%以上であり、より好ましくは0.200%以上である。一方、C含有量は、好ましくは0.480%以下であり、より好ましくは0.460%以下である。
(Si:0.05%以上1.00%以下)
Siは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。また、Siは、焼入れ性を高めてマルテンサイトの生成に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上のSiを含有する。一方、Si含有量が1.00%を超えると、強度が高くなり過ぎて加工性および靱性が低下する。また、電縫溶接部に酸化物が生成しやすくなり、溶接部特性が低下する。このため、Si含有量は0.05%以上1.00%以下とする。Si含有量は、好ましくは0.08%以上であり、より好ましくは0.10%以上である。一方、Si含有量は、好ましくは0.80%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
(Mn:0.10%以上2.00%以下)
Mnは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。また、Mnは、焼入れ性を高めてマルテンサイトの生成に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上のMnを含有することが必要である。一方、Mn含有量が2.00%を超えると、強度が高くなり過ぎて加工性および靱性が低下する。また、電縫溶接部に酸化物が生成しやすくなり、溶接部特性が低下する。このため、Mn含有量は0.10%以上2.00%以下とする。Mn含有量は、好ましくは0.20%以上であり、より好ましくは0.30%以上である。一方、Mn含有量は、好ましくは1.50%以下であり、より好ましくは1.20%以下である。
(P:0.050%以下)
Pは、粒界に偏析し材料の不均質を招くため、不可避的不純物としてできるだけ低減することが好ましいが、0.050%までは許容できる。このため、本開示ではP含有量を0.050%以下とする。P含有量は、好ましくは0.020%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。なお、特にPの下限は規定しないが、過度の低減は製錬コストの高騰を招くため、P含有量は0.002%以上とすることが好ましい。
(S:0.0200%以下)
Sは、鋼中では通常、MnSとして存在するが、MnSは、熱間圧延工程で薄く延伸され、延性および靭性に悪影響を及ぼす。このため、本開示では不可避的不純物としてSをできるだけ低減することが好ましいが、0.0200%までは許容できる。このため、S含有量は0.0200%以下とする。S含有量は、好ましくは0.0100%以下であり、より好ましくは0.0080%以下である。なお、特にSの下限は規定しないが、過度の低減は製錬コストの高騰を招くため、Sは0.0002%以上とすることが好ましい。
(Al:0.005%以上0.100%以下)
Alは、強力な脱酸剤として作用する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上のAlを含有することが必要である。一方、Al含有量が0.100%を超えると溶接性が悪化するとともに、アルミナ系介在物が多くなり、表面性状が悪化する。また溶接部の靱性も低下する。このため、Al含有量は0.100%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.010%以上であり、より好ましくは0.015%以上である。一方、Al含有量は、好ましくは0.080%以下であり、より好ましくは0.070%以下である。
(N:0.0100%以下)
Nは、不可避的不純物であり、転位の運動を強固に固着することで延性および靭性を低下させる作用を有する元素である。本開示の母材部1では、Nは不純物としてできるだけ低減することが望ましいが、Nの含有量は0.0100%までは許容できる。このため、N含有量は0.0100%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0080%以下である。なお、特にNの下限は規定しないが、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、Nは0.0010%以上とすることが好ましい。
(Cr:0.10%以上1.00%以下)
Crは、焼入れ性を高めてマルテンサイトの生成に寄与し、鋼の強度を上昇させる元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上のCrを含有することが必要である。一方、Cr含有量が1.00%を超えると、強度が高くなり過ぎて加工性および靱性が低下する。また、電縫溶接部に酸化物が生成しやすくなり、溶接部特性が低下する。このため、Cr含有量は0.10%以上1.00%以下とする。Cr含有量は、好ましくは0.15%以上であり、より好ましくは0.20%以上である。一方、Cr含有量は、好ましくは0.80%以下であり、より好ましくは0.60%以下である。
(B:0.0002%以上0.0050%以下)
Bは、焼入れ性を高めてマルテンサイトの生成に寄与し、鋼の強度を上昇させる元素である。このような効果を得るためには、0.0002%以上のBを含有することが必要である。一方、B含有量が0.0050%を超えると、強度が高くなり過ぎて加工性および靱性が低下する。このため、B含有量は0.0002%以上0.0050%以下とする。B含有量は、好ましくは0.0003%以上であり、より好ましくは0.0005%以上である。一方、B含有量は、好ましくは0.0040%以下であり、より好ましくは0.0030%以下である。
残部はFeおよび不可避的不純物である。ただし、不可避的不純物として、Oを0.0050%以下含有してもよい。なお、本開示でのOは、酸化物としてのOを含むトータル酸素のことを指す。
上記の成分が本開示における電縫鋼管の基本の成分組成である。
さらに、必要に応じて、Cu:1.00%以下、Ni:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Nb:0.150%以下、V:0.150%以下、Ti:0.150%以下およびCa:0.0100%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することができる。
(Cu:1.00%以下)
Cuは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有することができる。上記した効果を得るため、Cuを含有する場合には、Cu含有量は0.01%以上とすることが好ましい。一方、1.00%を超えるCuの含有は、靱性の低下および溶接性の悪化を招くおそれがある。よって、Cuを含有する場合には、Cu含有量は1.00%以下とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは、0.05%以上であり、さらに好ましくは、0.10%以上である。一方、Cu含有量は、より好ましくは0.70%以下であり、さらに好ましくは0.50%以下である。
(Ni:1.00%以下)
Niは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有することができる。上記した効果を得るため、Niを含有する場合には、Ni含有量は0.01%以上とすることが好ましい。一方、1.00%を超えるNiの含有は、靱性、加工性の低下および溶接性の悪化を招くおそれがある。よって、Niを含有する場合には、Ni含有量は1.00%以下とすることが好ましい。Ni含有量は、より好ましくは、0.05%以上であり、さらに好ましくは、0.10%以上である。一方、Ni含有量は、より好ましくは0.70%以下であり、さらに好ましくは、0.50%以下である。
(Mo:1.00%以下)
Moは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を上昇させる元素であり、必要に応じて含有することができる。上記した効果を得るため、Moを含有する場合には、Mo含有量は0.01%以上とすることが好ましい。一方、1.00%を超えるMoの含有は、靱性、加工性の低下および溶接性の悪化を招くおそれがある。よって、Moを含有する場合には、Mo含有量は1.00%以下とすることが好ましい。Mo含有量は、より好ましくは0.05%以上であり、さらに好ましくは0.10%以上である。一方、Mo含有量は、より好ましくは0.70%以下であり、さらに好ましくは0.50%以下である。
(Nb:0.150%以下)
Nbは、鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成することで鋼の強度向上に寄与し、また、熱間圧延中のオーステナイトの粗大化を抑制することで組織の微細化にも寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。上記した効果を得るため、Nbを含有する場合は、0.002%以上のNbを含有することが好ましい。一方、Nb含有量が0.150%を超えると靱性および加工性が低下する。このため、Nbを含有する場合は、Nb含有量は0.150%以下とすることが好ましい。Nb含有量は、より好ましくは0.005%以上であり、さらに好ましくは0.010%以上である。一方、Nb含有量は、より好ましくは0.100%以下であり、さらに好ましくは0.080%以下である。
(V:0.150%以下)
Vは、鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成することで鋼の強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。上記した効果を得るため、Vを含有する場合は、0.002%以上のVを含有することが好ましい。一方、V含有量が0.150%を超えると靱性および加工性が低下する。このため、Vを含有する場合は、V含有量は0.150%以下とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは0.005%以上であり、さらに好ましくは0.010%以上である。一方、V含有量は、より好ましくは0.100%以下であり、さらに好ましくは0.080%以下である。
(Ti:0.150%以下)
Tiは、鋼中で微細な炭化物、窒化物を形成することで鋼の強度向上に寄与し、熱間圧延中のオーステナイトの粗大化を抑制することで組織の微細化にも寄与する元素であって、必要に応じて含有することができる。また、Nとの親和性が高いため鋼中のNを窒化物として無害化し、鋼の靭性向上にも寄与する元素である。上記した効果を得るため、Tiを含有する場合は、0.002%以上のTiを含有することが好ましい。一方、Ti含有量が0.150%を超えると降伏比が高くなり靱性が低下する。このため、Ti含有量は0.150%以下とするのが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.005%以上であり、さらに好ましくは0.008%以上である。一方、Ti含有量は、より好ましくは0.130%以下であり、さらに好ましくは0.110%以下である。
(Ca:0.0100%以下)
Caは、熱間圧延工程で薄く延伸されるMnS等の硫化物を球状化することで鋼の靱性向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。上記した効果を得るため、Caを含有する場合は、0.0005%以上のCaを含有することが好ましい。一方、Ca含有量が0.0100%を超えると、鋼中にCa酸化物クラスターが形成され、靱性が悪化する。このため、Caを含有する場合は、Ca含有量を0.0100%以下とすることが好ましい。Ca含有量は、より好ましくは0.0008%以上であり、さらに好ましくは0.0010%以上である。一方、Ca含有量は、より好ましくは0.0080%以下であり、さらに好ましくは0.0060%以下である。
次に、本開示の電縫鋼管の鋼組織について説明する。
本開示の電縫鋼管における母材部1の肉厚中央における鋼組織は、マルテンサイトの体積率が90%以上であり、残部がフェライト、ベイナイト、パーライトおよびオーステナイトのうちの1種または2種以上を含み、平均結晶粒径が10μm以下であって、粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率が40%以下であることが必要である。
(マルテンサイトの体積率:90%以上)
マルテンサイトは硬質な組織であり、本開示で必要とする強度を得るためには、体積率で90%以上のマルテンサイトが必要である。マルテンサイトの体積率は、好ましくは93%以上であり、より好ましくは95%以上である。一方、加工性の観点から、マルテンサイトの体積率は、好ましくは99%以下であり、より好ましくは98%以下である。
[残部:フェライト、ベイナイト、パーライトおよびオーステナイトのうちの1種または2種以上]
電縫鋼管の母材部1の肉厚中央における残部は、フェライト、ベイナイト、パーライトおよびオーステナイトのうちの1種または2種以上とする。これらの組織はそれぞれマルテンサイトとは異なる強度を有しており、マルテンサイトと混合させることで降伏比を低下させ、全伸びを増加させることができる。一方で、これらの組織とマルテンサイトの界面においては、強度差に起因する応力集中により破壊が生じやすいため、これらの組織が多くなると靭性が低下する。そのため、これらの各組織の合計の体積率は、かかる位置の同一視野における組織全体に対して10%以下とし、好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。なお、これらの組織は、焼入れ工程において完全に生成を抑制することが困難であり、かつ加工性を確保するため、その下限として1%程度は許容される。
本開示の電縫鋼管では、母材部1の肉厚中央(肉厚の1/2の厚みの位置)を中心として肉厚方向に±0.20mmの範囲内に、少なくとも上述の鋼組織が存在していればよい。このように鋼組織が存在していれば、母材部1の肉厚方向の他の位置においても本開示の範囲内の鋼組織が得られるので、本開示の効果は同様に得られる。焼入れ工程における冷却速度は、肉厚中央において最も低くなるためである。そのため、本開示において「肉厚中央における鋼組織」とは、肉厚中央を中心として肉厚方向に±0.20mmの範囲のいずれかに存在する所定の面積(0.10mm以上が好ましい)の鋼組織を意味する。
鋼組織の観察は以下のようにして行う。まず、組織観察用の試験片を、観察面が母材部1の管長手方向の垂直断面かつ肉厚中央となるように採取し、研磨した後、ナイタール腐食して作製する。次いで、組織観察は、光学顕微鏡(倍率:1000倍)および/または走査型電子顕微鏡(SEM、倍率:1000倍)を用いて、上記試験片の組織を観察し、撮像する。かくして得られた光学顕微鏡像および/またはSEM像から、マルテンサイトおよび残部(フェライト、パーライト、ベイナイト、オーステナイト)の面積率を求める。各組織の面積率は、5視野以上で観察を行い、各視野で得られた値の平均値として算出する。なお、本開示では、上記の組織観察により得られる面積率を、各組織の体積率とする。
ここで、フェライトは拡散変態による生成物のことであり、転位密度が低くほぼ回復した組織を呈する。ポリゴナルフェライトおよび擬ポリゴナルフェライトがこれに含まれる。
ベイナイトは、転位密度が高いラス状のフェライトとセメンタイトの複相組織である。
パーライトは、鉄と鉄炭化物の共析組織(フェライト+セメンタイト)であり、線状のフェライトとセメンタイトが交互に並んだラメラ状の組織を呈する。
マルテンサイトは、転位密度が極めて高いラス状の低温変態組織である。SEM像では、フェライトやベイナイトと比較して明るいコントラストを示す。
なお、前記光学顕微鏡像およびSEM像では、マルテンサイトとオーステナイトとの識別が難しい。そのため、得られるSEM像からマルテンサイトあるいはオーステナイトとして観察された組織の面積率を算出し、その面積率から以下の方法で測定するオーステナイトの体積率を差し引いた値を、マルテンサイトの体積率とする。
ここで、かかるオーステナイトの体積率は、前記試験片と同様の方法で作製した試験片を用いて、X線回折により行う。かかるX線回折により得られたfcc鉄の(200)、(220)、(311)面とbcc鉄の(200)、(211)面の積分強度から求めた体積率である。
(平均結晶粒径:10μm以下)
母材部1の肉厚中央における鋼組織の結晶粒の平均結晶粒径が10μm超の場合、亀裂伝播の障害となる結晶粒界の総面積が小さいため、所望の靱性が得られない。よって、本開示の母材部1では、上記結晶粒の平均結晶粒径は、10μm以下とする。上記結晶粒の平均結晶粒径は、好ましくは8.0μm以下であり、より好ましくは6.0μm以下である。なお、平均結晶粒径が小さすぎると、加工性が低下するため、かかる平均結晶粒径は3.0μm以上であることが好ましい。
本開示において平均結晶粒径とは、隣り合う結晶の方位差が15°以上の境界で囲まれた領域を結晶粒としたときの、該結晶粒の平均円相当径とする。また、円相当径(結晶粒径)とは、対象となる結晶粒と面積が等しい円の直径とする。
平均結晶粒径の測定としては、まず、母材部1の管長手方向および肉厚方向の両方に平行な断面を鏡面研磨し、肉厚中央において、SEM/EBSD法を用いて、粒径分布のヒストグラム(横軸:粒径、縦軸:各粒径での存在割合としたグラフ)を算出し、粒径の算術平均を求めて、平均結晶粒径とする。測定条件として、加速電圧は15kV、測定領域は500μm×500μm、測定ステップサイズ(測定分解能)は0.5μmとする。なお、結晶粒径解析においては、結晶粒径が2.0μm未満のものは測定ノイズとして解析対象から除外する。平均結晶粒径の測定は5視野以上で行い、各視野で得られた値の平均値として算出する。
(粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率が40%以下)
母材部1の肉厚中央の鋼組織における旧オーステナイトのうち、粒径が50μm以上の旧オーステナイト(以下、「粗大な旧オーステナイト」とも呼ぶ。)の旧オーステナイトの体積率が40%超となり粗大粒の割合が高くなると、粗大粒を介して亀裂が容易に伝播するため、所望の靭性が得られない。また、加工中に粗大粒にひずみが集中し、破断が早期に生じるため、所望の加工性が得られない。よって、本開示の母材部1では、粗大な旧オーステナイトの体積率は、40%以下とする。粗大な旧オーステナイトの体積率は、好ましくは35%以下であり、より好ましくは30%以下である。
なお、粗大な旧オーステナイトの体積率の測定は以下のように行う。まず、母材部1の管長手方向および肉厚方向の両方に平行な断面を研磨した後、ピクリン酸飽和水溶液で腐食して旧オーステナイト粒界を現出させ、光学顕微鏡(倍率:400倍)を用いて、肉厚中央における組織を5視野以上で撮像し、各視野において旧オーステナイト粒径分布のヒストグラムを算出し、円相当径が50μm以上の面積率を求め、これを粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率とする。
また、前記のピクリン酸飽和水溶液による腐食の代わりに、SEM/EBSD法を用いて、方位差が20°以上50°以下の境界を旧オーステナイト粒界として描画し、これを用いて旧オーステナイト粒径分布のヒストグラムを算出することもできる。
かかる旧オーステナイト粒径分布のヒストグラムは、画像処理ソフトウェア(例えば、ImageJ 1.52p)を用いて、各旧オーステナイト粒の面積を算出することで求めることができる。
なお、本開示の電縫鋼管は、母材部1と溶接部とからなるが、かかる電縫鋼管の溶接部の成分組成および鋼組織は、母材部1と同様である。
次に、本開示の一実施形態における電縫鋼管の製造方法を説明する。
本開示の電縫鋼管の製造方法は、例えば、上記した成分組成を有する鋼素材を、加熱温度:1100℃以上1300℃以下に加熱した後、粗圧延終了温度:850℃以上1150℃以下、仕上圧延終了温度:750℃以上900℃以下、かつ、930℃以下での合計圧下率:50%以上である熱間圧延を施して熱延板とする熱間圧延工程と、該熱間圧延工程後、かかる熱延板の板厚中心で平均冷却速度:5℃/s以上30℃/s以下、冷却停止温度:400℃以上650℃以下とした冷却を施す冷却工程と、該冷却工程後、400℃以上650℃以下で巻取り熱延鋼板とする巻取り工程と、冷間ロール成形によって前記熱延鋼板を円筒状に成形し、電縫溶接を施して鋼管素材とする造管工程と、該造管工程後、周長が3.0%以下の割合で減少するように前記鋼管素材を縮径するサイジング工程と、該サイジング工程後、前記鋼管素材を850℃以上1050℃以下の温度で100s以上1000s以下の間加熱し、次いで肉厚中心温度で、少なくとも800℃から400℃の間の肉厚中心の平均冷却速度を40℃/s以上とし、100℃以下まで冷却する焼入れ工程と、該焼入れ工程後、前記鋼管素材を450℃以上600℃以下の温度で70s超の間加熱する焼戻し工程と、を含む。
なお、前記熱延鋼板には、熱延板、熱延鋼帯も含むものとする。
また、以下の製造方法の説明において、温度に関する「℃」表示は、特に断らない限り、鋼素材、鋼板(熱延板)、鋼管素材および鋼管の表面温度とする。これらの表面温度は、放射温度計等で測定することができ、鋼板板厚中心や鋼管肉厚中心等の温度は、鋼板や鋼管等の断面内の温度分布を伝熱解析により計算し、その結果を鋼板や鋼管等の表面温度によって補正することで求めることができる。
本開示において、鋼素材(鋼スラブ)の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉、真空溶解炉等の公知の溶製方法のいずれもが適合する。鋳造方法も特に限定されないが、連続鋳造法等の公知の鋳造方法により、所望寸法に製造される。なお、連続鋳造法に代えて、造塊-分塊圧延法を適用しても何ら問題はない。溶鋼にはさらに、取鍋精錬等の二次精錬を施してもよい。
〔熱間圧延工程〕
(加熱温度:1100℃以上1300℃以下)
加熱温度が1100℃未満である場合、被圧延材の変形抵抗が大きくなり圧延が困難となる。一方、加熱温度が1300℃を超えると、オーステナイト粒が粗大化し、後の圧延(粗圧延、仕上圧延)において微細なオーステナイト粒が得られず、熱延鋼板の組織が粗大化する。その結果、焼入れ工程の加熱時におけるオーステナイトの核生成サイトが減少するため、焼入れ工程において生成したオーステナイト(電縫鋼管の旧オーステナイト)が粗大化し、本開示で目的とする電縫鋼管の鋼組織の平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率が得られない。加熱温度は、より好ましくは1120℃以上である。一方、加熱温度は、より好ましくは1280℃以下である。
なお、本開示の製造方法では、鋼スラブ(スラブ)を製造した後、一旦室温まで冷却し、その後再度加熱する従来法に加え、室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に装入する、あるいは、わずかの保熱を行った後に直ちに圧延する、これらの直送圧延の省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
(粗圧延終了温度:850℃以上1150℃以下)
粗圧延終了温度が850℃未満である場合、後の仕上圧延中に鋼板表面温度がフェライト変態開始温度以下になって、粗大なフェライトが生成し、後の焼入れ工程において粗大な旧オーステナイトが過剰に生成する原因となる。その結果、本開示で目的とする電縫鋼管の鋼組織の平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率が得られない。一方、粗圧延終了温度が1150℃を超えると、オーステナイト未再結晶温度域での圧下量が不足し、鋼素材のオーステナイトが粗大化し、熱延鋼板の組織が粗大化し、後の焼入れ工程において粗大な旧オーステナイトが生成する原因となる。その結果、本開示で目的とする電縫鋼管の鋼組織の平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率が得られない。粗圧延終了温度は、より好ましくは880℃以上である。一方、粗圧延終了温度は、より好ましくは1100℃以下である。
本開示における仕上圧延開始温度は、800℃以上950℃以下の範囲であることが好ましい。仕上圧延開始温度が800℃未満である場合、仕上圧延中に鋼板表面温度がフェライト変態開始温度以下になり、粗大なフェライトが生成することで、後の焼入れ工程において粗大な旧オーステナイトが生成する原因となる。その結果、本開示で目的とする電縫鋼管の鋼組織の平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率が得られないおそれがある。一方、仕上圧延開始温度が950℃を超えると、オーステナイト未再結晶温度域での圧下量が不足することで、鋼素材のオーステナイトが粗大化し、熱延鋼板の組織が粗大化してしまい、後の焼入れ工程において粗大な旧オーステナイトが生成する原因となる。その結果、本開示で目的とする電縫鋼管の鋼組織の平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率が得られないおそれがある。なお、仕上圧延開始温度は、より好ましくは820℃以上である。一方、仕上圧延開始温度は、より好ましくは930℃以下である。
(仕上圧延終了温度:750℃以上900℃以下)
仕上圧延終了温度が750℃未満である場合、仕上圧延中に鋼板表面温度がフェライト変態開始温度以下になって、粗大なフェライトが生成してしまい、後の焼入れ工程において粗大な旧オーステナイトが生成する原因となる。その結果、本開示で目的とする電縫鋼管の鋼組織の平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率が得られない。一方、仕上圧延終了温度が900℃を超えると、オーステナイト未再結晶温度域での圧下量が不足することで、鋼素材のオーステナイトが粗大化してしまい、熱延鋼板の組織が粗大化し、後の焼入れ工程において粗大な旧オーステナイトが生成する原因となる。その結果、本開示で目的とする電縫鋼管の鋼組織の平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率が得られない。仕上圧延終了温度は、より好ましくは770℃以上である。一方、仕上圧延終了温度は、より好ましくは880℃以下である。
(930℃以下における合計圧下率:50%以上)
本開示の製造方法では、熱間圧延工程においてオーステナイト中のサブグレインを微細化し、熱延鋼板の組織を微細化することで、目的とする平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率を有する電縫鋼管の組織が得られる。また、焼入れ工程の加熱時には、主に方位差の大きい粒界からオーステナイトが生成する。よって、焼入れ工程前の組織を微細化することにより、オーステナイトの核生成サイトとなる結晶粒界の面積が増加し、焼入れ工程において生成するオーステナイトを微細化することができる。
熱間圧延工程においてオーステナイト中のサブグレインを微細化するためには、オーステナイト未再結晶温度域での圧下率を高くし、十分な加工ひずみを導入する必要がある。これを達成するため、本開示の製造方法では、熱間圧延工程における930℃以下の圧延の合計圧下率を50%以上とする。
なお、上記合計圧下率は、930℃以下の温度域になっている各圧延パスの圧下率の合計を指す。
上記合計圧下率が50%未満であると、熱間圧延工程において十分な加工ひずみを導入することができないため、本開示で目的とする平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率を有する電縫鋼管の組織が得られない。上記合計圧下率は、好ましくは55%以上である。
なお、特にかかる合計圧下率の上限は規定しないが、80%を超えると圧下率の上昇に対する靱性および加工性向上の効果が小さくなり、設備負荷が増大するのみとなる。このため、上記合計圧下率は80%以下が好ましい。より好ましくは70%以下である。
〔冷却工程〕
本開示の製造方法では、前記熱間圧延工程の後の冷却工程で、熱延板に冷却処理を施す。かかる冷却工程では、冷却停止温度までの熱延板の板厚中心の平均冷却速度を5℃/s以上30℃/s以下、熱延板の板厚中心の冷却停止温度を400℃以上650℃以下として冷却する。
(冷却開始から冷却停止(冷却終了)までの平均冷却速度:5℃/s以上30℃/s以下)
熱延板の板厚中心で、冷却開始から後述する冷却停止までの温度域における平均冷却速度が5℃/s未満では、核生成頻度が減少し、熱延鋼板の組織が粗大化するため、本開示で目的とする平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率を有する電縫鋼管の組織が得られない。一方、かかる平均冷却速度が30℃/sを超えると、多量のマルテンサイトが生成し、延性および靱性が低下する。そのため、後の造管工程における成形が困難となる。
上記平均冷却速度は、好ましくは10℃/s以上である。一方、上記平均冷却速度は、好ましくは25℃/s以下である。
なお、本開示の製造方法では、冷却前の熱延板表面におけるフェライトの生成を抑制するため、仕上圧延終了後直ちに冷却を開始することが好ましい。
(冷却停止温度:400℃以上650℃以下)
熱延板の板厚中心で、冷却停止温度が400℃未満では、多量のマルテンサイトが生成し、延性および靱性が低下するため、後の造管工程における成形が困難となる。一方、かかる冷却停止温度が650℃を超えると、核生成頻度が減少し、熱延鋼板の組織が粗大化するため、本開示で目的とする平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率を有する電縫鋼管の組織が得られない。冷却停止温度は、好ましくは430℃以上である。一方、冷却停止温度は、好ましくは620℃以下である。
なお、本開示において、平均冷却速度は、((冷却前の熱延板の板厚中心温度-冷却後の熱延板の板厚中心温度)/冷却時間)で求められる値(冷却速度)とする。
また、冷却方法は、ノズルからの水の噴射等の水冷や、冷却ガスの噴射による冷却等が挙げられる。本開示の製造方法では、熱延板の両面が同条件で冷却されるように、熱延板両面に冷却操作(処理)を施すことが好ましい。
〔巻取り工程〕
前記冷却工程後、巻取り工程で、熱延板をコイル状に巻取り、その後放冷する。巻取り温度が400℃未満では、多量のマルテンサイトが生成し、延性および靱性が低下するため、後の造管工程における成形が困難となる。一方、巻取り温度が650℃を超えると、核生成頻度が減少し、熱延鋼板の組織が粗大化するため、本開示で目的とする平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率を有する電縫鋼管の組織が得られない。巻取り温度は、好ましくは430℃以上である。一方、巻取り温度は、好ましくは620℃以下である。なお、本開示では、熱延板をコイル状に巻取ったものを熱延鋼板と呼称する。
〔造管工程〕
巻取り工程後に、造管工程で熱延鋼板に造管処理を施す。かかる造管工程では、熱延鋼板を連続的に払い出しながら、冷間ロール成形により円筒状のオープン管(丸型鋼管)に成形し、該オープン管の周方向突合せ部を高周波電気抵抗加熱により溶融させながら、スクイズロールによるアプセットで圧接接合して電縫溶接し、鋼管素材とする。
前記電縫溶接時のアプセットの量(以下、アプセット量と記す)は、靱性低下の原因となる酸化物や窒化物等の介在物を溶鋼とともに排出できるように、板厚の20%以上とすることが好ましい。ただし、アプセット量を板厚の100%超にすると、スクイズロール負荷が大きくなり過ぎる。そのため、アプセット量は、板厚の20%以上100%以下とすることが好ましい。アプセット量は、より好ましくは、板厚の40%以上である。一方、アプセット量は、より好ましくは、板厚の80%以下である。
なお、アプセット量は、電縫溶接前の鋼管(オープン管)の外周長と、電縫溶接後の鋼管の外周長の差として求められる。
〔サイジング工程:鋼管素材を、周長が3.0%以下の割合で減少するように縮径する〕
造管工程後のサイジング工程では、鋼管素材に対して上下左右に配置されたロールにより該鋼管素材を縮径し、外径および真円度を所望の値に調整する。
かかるサイジング工程において、鋼管周長が合計で3.0%超の割合で減少するように縮径すると、各結晶粒の転位密度のばらつきが大きくなって、後の焼入れ工程においてひずみ誘起粒界移動が生じ、粗大な旧オーステナイトが生じる原因となる。そのため、鋼管周長が3.0%以下の割合で減少するように縮径することが肝要である。好ましくは2.5%以下である。一方、外径の精度および真円度を向上させるため、鋼管周長が合計で0.5%以上の割合で減少するように鋼管素材を縮径することが好ましい。より好ましくは、1.0%以上である。
〔焼入れ工程:鋼管素材を850℃以上1050℃以下の温度範囲で100s以上1000s以下の間加熱〕
焼入れ工程における加熱温度が850℃未満または加熱時間が100s未満の場合、組織が完全にオーステナイト化しないため、所望のマルテンサイトの体積率が得られない。一方、焼入れ工程における加熱温度が1050℃超または加熱時間が1000s超の場合、オーステナイトが粗大化してしまい、本開示で目的とする電縫鋼管の鋼組織の平均結晶粒径および粗大な旧オーステナイトの体積率が得られない。焼入れ工程における加熱温度は、好ましくは880℃以上であり、好ましくは1000℃以下である。また、焼入れ工程における加熱時間は、好ましくは200s以上であり、好ましくは800s以下である。
(肉厚中心温度で、少なくとも800℃から400℃の間の肉厚中心の平均冷却速度が40℃/s以上)
本開示の製造方法では、焼入れ工程における平均冷却速度を規定する温度範囲を、少なくとも800℃から400℃の間に規定する。フェライト、パーライトおよびベイナイトは、この温度範囲において生成するためである。
また、焼入れ工程における鋼管素材の肉厚中心の平均冷却速度が40℃/s未満である場合、所望のマルテンサイト分率が得られない。好ましくは50℃/s以上である。特にかかる平均冷却速度の上限は規定しないが、150℃/sを超えると冷却速度の上昇に対する強度上昇の効果が小さくなり、設備負荷が増大するのみとなる。よって、かかる平均冷却速度は150℃/s以下が好ましい。より好ましくは130℃/s以下である。
ここで、当該焼入れ工程における冷却後の肉厚中心温度が100℃超である場合、所望のマルテンサイト分率が得られない。よって、本開示の焼入れ工程における冷却後の肉厚中心温度は、100℃以下まで低下させることが肝要である。なお、焼入れ工程における冷却後の肉厚中心温度は、好ましくは60℃以下である。
〔焼戻し工程:鋼管素材を450℃以上600℃以下の温度範囲で70s超の間加熱〕
焼戻し工程における加熱温度が450℃未満または加熱時間が70s以下の場合、転位の回復が不十分となるため、所望の靭性および加工性が得られない。さらに、可動転位の回復が不十分となって、可動転位が過剰に残るため、応力緩和量が増加して、降伏応力が低下し、所望の降伏応力が得られない。一方、焼戻し工程における加熱温度が600℃超の場合、可動転位が過剰に回復してしまうため、応力緩和量が過剰に減少してしまい、降伏応力や降伏比が上昇することで、加工性が低下する。焼戻し工程における加熱温度は、好ましくは480℃以上であり、好ましくは570℃以下である。
また、焼戻し工程における加熱時間は、1000s超の場合、可動転位が過剰に回復してしまうため、応力緩和量が過剰に減少してしまい、降伏応力や降伏比が上昇することで、加工性が低下する場合がある。
よって、かかる加熱時間は、好ましくは1000s以下である。より好ましくは800s以下である。一方、かかる加熱時間は、好ましくは100s以上であって、より好ましくは200s以上である。
なお、焼戻し工程における加熱後の冷却方法は、空冷、水冷、炉冷等のいずれも可能であって、特にその条件も限定されず、室温まで冷却される。
以上の工程を経て、本開示の電縫鋼管が製造される。なお、本開示の電縫鋼管は、高強度であり、優れた加工性および靭性も兼ね備える。
さらに、本開示の電縫鋼管は、降伏応力の40%の応力における応力緩和量が降伏応力の0.50%以上5.00%以下であることが好ましい。
前記の応力緩和量は可動転位密度に対応する値であり、この値が大きいほど可動転位が多く、低い応力で塑性変形が可能となるため、降伏応力が低下し、降伏比が低下し、加工性が高くなる。
降伏応力の40%の応力における応力緩和量が降伏応力の0.50%未満である場合、可動転位密度が低くなりすぎるため、降伏応力および降伏比が高くなって、所望の加工性が得られない場合がある。一方、降伏応力の40%の応力における応力緩和量が降伏応力の5.00%超である場合、可動転位密度が高くなりすぎるため、所望の降伏応力が得られない場合がある。
また、本開示の電縫鋼管は、へん平試験における割れ発生時の荷重P(N)が(1)式を満たす。
P≧1.5×TS×t×L/D ・・・(1)
ただし、(1)式において、TSは引張強度(MPa)、Dは外径(mm)、tは肉厚(mm)、Lは管軸方向の長さ(mm)である。
管が曲げ変形を受ける際、管周断面は真円から楕円へと変形し、曲げ内側で座屈または曲げ外側で破断する。曲げ内側での座屈は管周断面の楕円変形が大きいと早期に生じる。一方、曲げ外側での破断は降伏比が高く、伸びが小さいと早期に生じる。
また、へん平試験における割れ発生時の荷重Pが大きいほど、管周断面の楕円変形に対する抵抗が大きく、楕円変形が生じにくくなる。その結果、曲げ内側での座屈が生じにくく、加工性に優れる電縫鋼管になる。
従来材を用いた予備実験により、へん平試験における割れ発生時の荷重Pは、TSに比例し、Dに反比例し、tの2乗に比例し、Lに比例することを見出した。
よって、(1)式を満足した電縫鋼管は、従来材よりも一層さらに加工性に優れた電縫鋼管であることを意味する。
本開示の電縫鋼管は、管軸方向と垂直かつ溶接部(電縫溶接部)を含む断面を研磨後、腐食液により腐食し、光学顕微鏡で観察すると、溶接部(電縫溶接部)のボンド部3の管周方向の幅が、管全厚にわたり1.0μm以上1000μm以下である。
ここで、腐食液は鋼成分、鋼管の種類に応じて適切なものを選択すればよい。また、ボンド部3は、腐食後の上記断面を図1に模式で示すように、図1において母材部1および熱影響部2と異なる組織形態やコントラストを有する領域として視認できる。例えば、炭素鋼および低合金鋼の電縫鋼管のボンド部3は、ナイタールで腐食した上記断面において、光学顕微鏡で白く観察される領域として特定できる。また、炭素鋼および低合金鋼のUOE鋼管のボンド部3は、ナイタールで腐食した上記断面において、光学顕微鏡でセル状またはデンドライト状の凝固組織を含有する領域として特定できる。なお、本開示において溶接部とは、上記ボンド部3および熱影響部2である。
本開示の電縫鋼管は、好ましくは肉厚が1.5mm以上20mm以下である。また、本開示の電縫鋼管は、好ましくは外径が20mm以上250mm以下である。
上述されていない鋼管にかかる製造方法の条件に関しては、いずれも常法に依ることができる。
以下、実施例に基づいて、本開示をさらに説明する。なお、本開示は以下の実施例に限定されない。
表1に示す成分組成を有する溶鋼を溶製し、スラブとした。得られたスラブに対し、表2に示す条件の熱間圧延工程、冷却工程、巻取り工程を施して、熱延鋼板とした。なお、鋼管の番号は、全ての表で、同一の番号は同一の試験(実施例)を意味する。
巻取り工程後、熱延鋼板をロール成形により円筒状の丸型鋼管に成形し、その突合せ部分を電縫溶接した。その後続けて、丸型鋼管の上下左右に配置したロールにより表2に示した縮径率による縮径を加えるサイジング工程を施したのち、表2に示した条件の焼入れ・焼戻し工程を経て、表2に示した外径D(mm)および肉厚t(mm)の電縫鋼管を得た。
かくして得られた電縫鋼管から各種試験片を採取して、以下に示す組織解析、引張試験、応力緩和試験、シャルピー衝撃試験およびへん平試験を実施した。組織解析、引張試験、応力緩和試験およびシャルピー衝撃試験の試験片は、電縫溶接部から管周方向に90°離れた母材部から採取した。また、へん平試験片は管軸方向の長さLが100mmの環状試験片とした。
Figure 0007276641000001
Figure 0007276641000002
〔組織観察〕
組織観察用の試験片は、観察面が管長手方向および肉厚方向の両方に平行な断面かつ肉厚中央となるように採取し、鏡面研磨した後、ナイタール腐食して作製した。
組織観察は、光学顕微鏡(倍率:1000倍)および走査型電子顕微鏡(SEM、倍率:1000倍)を用いて、肉厚中央における組織を観察することで実施し、光学顕微鏡像およびSEM像を撮像した。得られた光学顕微鏡像およびSEM像から、フェライト、ベイナイト、パーライトおよび残部(マルテンサイト、オーステナイト)の面積率を求めた。各組織の面積率は、5視野で観察を行い、各視野で得られた値の平均値として算出した。ここでは、組織解析により得られた面積率を、各組織の体積率とした。
なお、光学顕微鏡像およびSEM像ではマルテンサイトとオーステナイトの識別が難しいため、得られたSEM像からマルテンサイトあるいはオーステナイトとして観察された組織の面積率を測定し、以下の方法で測定したオーステナイトの体積率を差し引いた値をマルテンサイトの体積率とした。
すなわち、オーステナイトの体積率の測定は、転位解析用の試験片と同様にして作製した試験片を用いて、X線回折により行った。かかる測定にはMoのKα線を使用し、fcc鉄の(200)、(220)、(311)面とbcc鉄の(200)、(211)面の積分強度をそれぞれ求め、それぞれの値を理論強度値で除した規格化積分強度が各相の体積率に比例するものとして、オーステナイトの規格化積分強度の割合を求めることによってオーステナイトの体積率を求めた。
平均結晶粒径の測定においては、まず、SEM/EBSD法を用いて、粒径分布のヒストグラム(横軸:粒径、縦軸:各粒径での存在割合としたグラフ)を算出し、粒径の算術平均を求めた。具体的に、結晶粒径は、隣接する結晶粒の間の方位差を求め、方位差が15°以上の境界を結晶粒(結晶粒界)として、結晶粒の円相当径を測定し、平均円相当径を平均結晶粒径とした。このとき、円相当径とは、対象となる結晶粒と面積が等しい円の直径とした。
上記の測定条件として、加速電圧は15kV、測定領域は500μm×500μm、測定ステップサイズは0.5μmとした。なお、結晶粒径解析においては、結晶粒径が2.0μm以下のものは測定ノイズとして解析対象から除外し、得られた面積率が体積率と等しいとした。
〔引張試験〕
引張試験は、引張方向が管長手方向と平行になるように、JIS12A号の引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して実施した。降伏応力YS(MPa)、引張強度TS(MPa)、全伸びEL(%)を測定し、(YS/TS)×100で定義される降伏比YR(%)を算出した。
〔応力緩和試験〕
応力緩和試験は、引張方向が管長手方向と平行になるように、JIS12A号の引張試験片を採取し、JIS Z 2276の規定に準拠して実施した。初期応力は引張試験で求めた降伏応力の40%の応力とした。変位の保持時間は500sとし、その間の応力低下量を応力緩和量とした。
〔シャルピー衝撃試験〕
シャルピー衝撃試験は、得られた電縫鋼管の母材部の肉厚中央から試験片長手方向が管軸方向と平行になるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠して-60℃において実施し、吸収エネルギーを求めた。
上記シャルピー衝撃試験の試験本数はそれぞれ3本とし、得られた衝撃値の平均値を熱延鋼板および電縫鋼管の母材部のシャルピー衝撃値とした。
〔へん平試験〕
へん平試験は、得られた電縫鋼管から、管軸方向の長さLが100mmの環状試験片を採取し、溶接部の管外面側は金属光沢が出るように研磨し、JIS G 3441に記載の方法に準拠して実施した。圧縮速度は10mm/minとし、割れが発生した時点で圧縮を停止し、その時点での荷重を割れ発生時の荷重P(N)とした。
これらの試験により得られた結果をそれぞれ表3に示す。
Figure 0007276641000003
表3中、No.1~5、17、18は本開示に係る実施例であり、No.6~16、19は比較例である。
実施例の電縫鋼管における母材部の肉厚中央の鋼組織は、マルテンサイトの体積率が90%以上であり、平均結晶粒径が10μm以下であり、粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率が40%以下であった。
また、これらの実施例の電縫鋼管の機械的特性は、いずれも降伏応力が650MPa以上、引張強度が780MPa以上、降伏比が93%以下、全伸びが20%以上であって、-60℃におけるシャルピー衝撃値が60J/cm以上であり、へん平試験における割れ発生時の荷重P(N)が前記(1)式を満たしていた。
これに対し、比較例の鋼管No.6は、Cの含有量が高かったため、降伏比、全伸び、-60℃におけるシャルピー吸収エネルギーおよびへん平試験における割れ発生時の荷重Pが所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.7は、Cの含有量が低かったため、マルテンサイトの体積率が本開示の範囲を下回ってしまい、降伏応力および引張強度が所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.8は、SiおよびMnの含有量が高かったため、降伏比、全伸び、-60℃におけるシャルピー吸収エネルギーおよびへん平試験における割れ発生時の荷重Pが所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.9は、SiおよびMnの含有量が低かったため、マルテンサイトの体積率が本開示の範囲を下回ってしまい、降伏応力および引張強度が所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.10は、Crの含有量が高かったため、降伏比、全伸び、-60℃におけるシャルピー吸収エネルギーおよびへん平試験における割れ発生時の荷重Pが所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.11は、Crの含有量が低かったため、マルテンサイトの体積率が本開示の範囲を下回ってしまい、降伏応力および引張強度が所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.12は、Bの含有量が高かったため、降伏比、全伸び、-60℃におけるシャルピー吸収エネルギーおよびへん平試験における割れ発生時の荷重Pが所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.13は、Bの含有量が低かったため、マルテンサイトの体積率が本開示の範囲を下回ってしまい、降伏応力および引張強度が所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.14は、冷却工程における平均冷却速度が遅かったため、平均結晶粒径が本開示の範囲を上回ってしまい、全伸び、-60℃におけるシャルピー吸収エネルギーが所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.15は、熱間圧延工程における930℃以下における合計圧下率が低かったため、粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率が本開示の範囲を上回ってしまい、降伏比、全伸び、-60℃におけるシャルピー吸収エネルギーおよびへん平試験における割れ発生時の荷重Pが所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.16は、焼戻し工程における温度が高かったため、応力緩和量が小さくなり、降伏比が所望の値に達しなかった。
比較例の鋼管No.19は、焼戻し工程における時間が短かったため、応力緩和量が大きくなり、降伏応力が所望の値に達しなかった。
1 母材部
2 溶接熱影響部(溶接部)
3 ボンド部(溶接部)

Claims (5)

  1. 母材部と、溶接部を有する電縫鋼管であって、
    成分組成が、質量%で、
    C:0.150%以上0.500%以下、
    Si:0.05%以上1.00%以下、
    Mn:0.10%以上2.00%以下、
    P:0.050%以下、
    S:0.0200%以下、
    Al:0.005%以上0.100%以下、
    N:0.0100%以下、
    Cr:0.10%以上1.00%以下および
    B:0.0002%以上0.0050%以下
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    前記母材部の肉厚中央の鋼組織が、
    マルテンサイトの体積率:90%以上であって、
    残部がフェライト、ベイナイト、パーライトおよびオーステナイトのうちの1種または2種以上を含み、
    平均結晶粒径:10μm以下であって、
    粒径:50μm以上の旧オーステナイトの体積率が40%以下である
    電縫鋼管。
  2. 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
    Cu:1.00%以下、
    Ni:1.00%以下、
    Mo:1.00%以下、
    Nb:0.150%以下、
    V:0.150%以下、
    Ti:0.150%以下および
    Ca:0.0100%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含む請求項1に記載の電縫鋼管。
  3. 前記成分組成が、質量%で、
    P:0.002%以上0.050%以下、
    S:0.0002%以上0.0200%以下および
    N:0.0010%以上0.0100%以下
    である請求項1に記載の電縫鋼管。
  4. 請求項1から3の何れか1項に記載の電縫鋼管の製造方法であって、
    鋼素材を、加熱温度:1100℃以上1300℃以下に加熱した後、粗圧延終了温度:850℃以上1150℃以下、仕上圧延終了温度:750℃以上900℃以下、かつ、930℃以下での合計圧下率:50%以上である熱間圧延を施す熱間圧延工程と、
    該熱間圧延工程の後に、板厚中心の平均冷却速度:5℃/s以上30℃/s以下、かかる板厚中心の冷却停止温度:400℃以上650℃以下とする冷却を施す冷却工程と、
    該冷却工程の後に、400℃以上650℃以下で巻取り、熱延鋼板とする巻取り工程と、
    前記熱延鋼板を、冷間ロール成形により円筒状に成形し、電縫溶接を施して鋼管素材とする造管工程と、
    前記鋼管素材を、周長が3.0%以下の割合で減少する縮径を行うサイジング工程と、
    該サイジング工程の後に、850℃以上1050℃以下の温度範囲で100s以上1000s以下の間加熱し、次いで肉厚中心温度で、少なくとも800℃から400℃の間の肉厚中心の平均冷却速度を40℃/s以上とし、100℃以下まで冷却する焼入れ工程と、
    該焼入れ工程の後に、450℃以上600℃以下の温度範囲で70s超の間加熱する焼戻し工程と
    を含む電縫鋼管の製造方法。
  5. 前記焼戻し工程における450℃以上600℃以下の温度範囲の加熱時間を100s以上1000s以下の間とする請求項4に記載の電縫鋼管の製造方法。
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