JP5589335B2 - 高靭性鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、靭性に優れた鋼材の製造方法に関し、特に、造船、海洋構造物、建設機械、建築、橋梁、タンク、鋼管、水圧鉄管などの溶接鋼構造物に利用する厚鋼板、形鋼、棒鋼など種々の形状の鋼の製造方法として好適なものに関する。
脆性破壊を起こす可能性のある大型の溶接構造物として使用される厚鋼板への要求性能は、高強度化に加え高い靭性や溶接性の確保などますます過酷化する傾向にある。鋼板の強度や板厚が増加すると、一般的に靭性は低下する傾向にあるので、厚鋼板の靭性の向上技術としては、これまで、特許文献1および特許文献2には制御圧延や制御冷却、さらには、特許文献3には直接焼入れ-焼戻し技術などのTMCP技術や圧延後に行うオンラインの熱処理技術の適用などが行われてきた。
靭性の向上には、結晶粒の微細化が有効であることが従来から知られており、様々な検討がなされている。合金設計や圧延時の加熱温度や圧延温度などを工夫することによる細粒化も検討されているが、現状、圧延−冷却で得られる厚鋼板のオーステナイト粒径は20〜30μm程度が限界であり、圧延後の再加熱焼入れなどで得られる結晶粒径に比べても大きく、圧延−冷却ままあるいは、圧延−冷却−焼戻しプロセスでの靭性の向上には限界がある。
特開昭57−134518号公報 特開昭59−83722号公報 特開昭63−223125号公報
上述したように、これまでの厚板製造プロセスを用いた靭性向上には限界があり、更なる靭性の向上が望まれている。本発明は、再加熱焼入れを必要としない、圧延−加速冷却ままあるいは、直接焼入れ−焼戻しプロセスにおいて、微細なオーステナイト粒径を得ることにより、靭性を大幅に向上させる製造方法を得ることを目的とする。
本発明者等は、上記問題点を解決するため、オーステナイト粒径に及ぼす圧延時の加熱・冷却・圧下パターンに着目して鋭意検討を行った結果、高強度鋼において、
(1)初めにオーステナイト再結晶温度域圧延を実施し、
次に、
(2)次にオーステナイト未再結晶温度域圧延と、それに引き続いてのオーステナイト再結晶温度域への急速加熱とからなる工程を2回以上実施する、
ことにより微細なオーステナイトが得られ、その後の圧延および/または冷却条件の組合せにより、優れた靭性が得られることを知見した。
すなわち、圧延時の加熱温度を適正化し、オーステナイト再結晶温度域圧延により初期オーステナイト粒径の粗大化を防止して均一なオーステナイト粒を得た上で、その後、所定量の累積圧下率を確保した未再結晶温度域圧延を実施して、その後、フェライト変態を生じさせることがないようにAr変態点以上の温度から再結晶温度域に短時間で加熱することにより、微細な再結晶オーステナイトが得られること、さらにその後、その微細なオーステナイト粒に対して未再結晶温度域圧延を行い、再結晶温度域に急速加熱を行う工程を1回あるいはそれ以上行うことにより、組織の一層の微細化が図られ、その一層の微細化組織を加速冷却後、または直接焼入れ−焼戻し後に優れた強度および靭性が得られることを知見した。本発明の要旨はつぎのとおりである。
第一の発明は、質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.003〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の第一の圧延を行った後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で加熱し、続いてオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の第二の圧延を終了後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で再加熱し、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却することを特徴とする高強度高靭性鋼の製造方法である。
第二の発明は、前記第二の圧延終了後にオーステナイト再結晶温度域まで加熱昇温した後に、さらにオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の圧延を実施する圧延工程と、該圧延終了後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で再加熱する加熱工程とからなる圧延・加熱工程を一回以上行った後に、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却することを特徴とする第一の発明に記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
第三の発明は、鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜9.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%、Ti:0.005〜0.20%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする第一の発明または第二の発明に記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
第四の発明は、600℃以下に加速冷却した後に、さらに、Ac変態点以下の温度に焼戻す工程を有することを特徴とする第一の発明乃至第三の発明のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
第五の発明は、前記累積圧下率35%以上のオーステナイト未再結晶温度域圧延を行う前のオーステナイト再結晶温度域圧延中または同オーステナイト再結晶温度域圧延後に水冷を実施し、オーステナイト未再結晶温度域まで空冷よりも速い速度で冷却する工程を有することを特徴とする第一の発明乃至第四の発明のいずれかに記載の高靭性鋼の製造方法である。
第六の発明は、前記加速冷却の直前に実施されるオーステナイト再結晶温度域への加熱時の、平均オーステナイト粒径が15μm以下であることを特徴とする第一の発明乃至第五の発明のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
本発明によれば、再結晶域圧延と累積圧下率35%以上の未再結晶域の第一の圧延の後に、再結晶温度域への急速加熱を行い、さらに、累積圧下率35%以上の未再結晶域の第二の圧延の後に、再結晶温度域への急速加熱を行うプロセスを有することにより、未再結晶域での第二の圧延に続く再結晶温度域への急速加熱をしたままの状態で15μm以下のオーステナイト粒径が得られ、最終的に得られる金属組織も微細化するため、本プロセスを適用しない場合と比較して、破面遷移温度を指標として約20℃以上の靭性向上が認められ、強度−靭性バランスが向上し、産業上極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.成分組成について
成分組成における%は全て質量%とする。
C:0.01〜0.30%
Cは鋼板の強度を確保するため、少なくとも0.01%の添加が必要であり0.30%を超えて添加すると、著しく溶接性を低下させ、また母材靱性を低下させるため、C量は、0.01〜0.30%の範囲とする。
Si:0.01〜0.80%
Siは脱酸に必要な元素であるが、0.01%未満ではその効果は少なく、0.80%を超えて添加すると溶接性および母材靭性を著しく低下させるため、Si量は0.01〜0.80%の範囲とする。
Mn:0.20〜2.50%
MnはCと同様に鋼板の強度を確保するために必要であるが、過剰に添加すると溶接性を損なう問題があるため、Mn量は0.20〜2.50%の範囲とする。
P:0.020%以下、S:0.0070%以下
P、Sは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼母材や、溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、経済性を考慮して可能な範囲で低減することが好ましく、P量、S量はそれぞれ0.020%以下、0.0070%以下とする。
Al:0.003〜0.100%
Alは脱酸元素であり、0.003%未満ではその効果は十分ではなく、過剰に添加すると靭性の劣化をもたらすため、Al量は0.003〜0.100%の範囲とする。
本発明の基本成分組成は以上であるが、更に所望の特性を向上させる場合は、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、B、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を選択元素として添加することができる。
Cu:0.01〜2.0%
Cuは強度を増加させるために添加することができる元素で0.01%以上添加するとその効果を発揮し、2.0%を超えて添加すると、熱間脆性により鋼板表面の性状を劣化するため、添加する場合、その量は0.01〜2.0%の範囲とすることが好ましい。
Ni:0.01〜9.0%
Niは母材の強度を増加させつつ靭性も向上させることが可能な元素である。0.01%以上の添加で効果を発揮し、9.0%超えでは効果が飽和し経済的に不利であるので、Niを添加する場合は、その量は0.01〜9.0%の範囲とすることが好ましい。
Cr:0.01〜3.0%
Crは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上添加するとその効果を発揮し、3.0%を超えて添加すると、靭性を劣化させるため、Crを添加する場合、その量は0.01〜3.0%の範囲とすることが好ましい。
Mo:0.01〜2.0%
Moは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上添加するとその効果を発揮し、2.0%を超えて添加すると、著しく靭性を劣化させるとともに経済性を損なうため、Moを添加する場合、その量は0.01〜2.0%の範囲とすることが好ましい。
Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%
Nb、Vは母材の強度と靭性を向上させる元素であり、いずれも0.003%以上の添加で効果を発揮する。またそれぞれ0.1%、0.5%を超えるとかえって靭性の低下を招くおそれがある。従って、これらの元素を添加する場合、Nb量は0.003〜0.1%の範囲、V量は0.003〜0.5%の範囲とすることが好ましい。
Ti:0.005〜0.20%
Tiは母材の靭性確保や溶接熱影響部での靭性確保に効果があるので添加することができ、この効果は、0.005%以上の含有で生じる。しかし0.20%を超えて添加すると靭性が劣化するため添加する場合には、0.005〜0.20%の範囲とすることが好ましい。
B:0.0005〜0.0040%
Bは鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、この効果によって強度を増加させることができる。この効果は0.0005%以上の添加で顕著になり、0.0040%を超えて添加しても効果は飽和するため、Bを添加する場合、その量は0.0005〜0.0040%の範囲とすることが好ましい。
Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%
Ca、Mg、REMは鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.0001%以上の添加で効果がある。しかし、それぞれ0.0060%、0.0060%、0.0200%を超えて添加すると鋼中の介在物量が増加し靭性をかえって劣化させる。従って、これらの元素を添加する場合、Ca量は0.0001〜0.0060%、Mg量は0.0001〜0.0060%、REM量は0.0001〜0.0200%の範囲とすることが好ましい。
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
2.製造条件について
上記した組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、溶製方法、鋳造法については上記した方法に限定されるものではない。その後、性能所望の形状に圧延し、圧延中または圧延後に、冷却および加熱を行う。
(1)加熱温度
鋳造後、鋼素材温度が室温まで低下してから、あるいは高温の状態で、鋼素材を加熱炉に挿入して鋼素材加熱温度は1000℃以上とする。鋼素材加熱温度は、靭性確保の観点からはより低温が好ましいが、1000℃未満では鋼素材の厚さ中央部付近に未圧着ザクが残存して、板厚1/2部の性能を劣化させる可能性があることと、Nb,Vなどを添加した場合には十分に固溶しないため、1000℃以上とする。また、過度の高温に加熱するとこの段階でのオーステナイト粒(後工程におけるオーステナイト量との比較のため初期オーステナイト粒とも称する)が粗大化し、これに伴い最終的に得られる金属組織も粗大化して、靭性が劣化するので、通常、鋼素材加熱温度は1300℃以下で実施され、1150℃以下であることが好ましい。
(2)オーステナイト再結晶温度域圧延
加熱された鋼素材に対して、オーステナイト再結晶温度域で1パス以上の圧下を行う圧延を実施する。オーステナイト再結晶温度域圧延は加熱時のオーステナイト粒をある程度まで均一微細化するのに必要であり、1パス以上、好ましくは累積圧下率が15%以上の圧延を行う。
(3)オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延
引き続き、オーステナイト未再結晶温度域で累積圧下率35%以上の圧延を行う。このオーステナイト未再結晶温度域圧延は、圧下率が小さいと、その後に実施する急速加熱後のミクロ組織微細化効果が発揮できないため、累積圧下率35%以上を確保する。また、圧下率は高い方が好ましいが、工業的には80%程度が上限となる。
なお、前記オーステナイト再結晶温度域圧延の後、オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延を開始するまでの間は、空冷で待ってもよいが、オーステナイト再結晶温度域圧延中あるいは同オーステナイト再結晶温度域圧延後に水冷により冷却を行い、オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延までの時間を空冷よりも短縮する方が効率的にも好ましく、また、空冷の場合に比べて水冷による冷却の方が再結晶オーステナイトの成長を抑制する効果があり、組織の微細化に対して、より有効である。
(4)オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延の後の急速加熱
オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延の後、温度がAr変態点を下回ることのない温度域から、オーステナイト再結晶温度域までを2℃/sec以上の昇温速度で加熱する。加熱方法は特に限定しないが、高周波誘導加熱が好ましい。
加熱開始温度がAr変態点を下回れば、フェライト変態が起こり、再加熱時に逆変態によりオーステナイトは微細化されるが、その後の加熱時の加熱温度代が大きくなり効率および経済性を損なうとともに、Nb炭化物などの析出・粗大化が促進され、混粒組織となりやすく靭性低下の原因となるので、Ar変態点以上の温度から昇温を開始する必要がある。この場合の最高加熱温度はオーステナイト再結晶温度域内であることが必要であり、その中でも「オーステナイト再結晶温度の下限+100℃」以下の低温域が好ましい。必要以上に温度を上げるとオーステナイト粒の成長が起こり、オーステナイトの微細化効果が得られないためである。
また、昇温速度は、2℃/sec以下では、再結晶の前に加工組織の回復や、NbやTiなどの炭化物の加工誘起析出が起こり、靭性を劣化させるため、2℃/sec以上とする。加熱後の保持は行ってもよいが、再結晶が完了するとその後に粒成長が起こるため、必要以上の保持は行うべきではなく、60秒以内が好ましい。ここで、昇温速度とは、加熱開始温度と加熱後の最高到達温度との差を、加熱開始温度から最高到達温度までの所要時間で割ったものとする。また、鋼材温度は、鋼材の表面と中心部との平均温度を示している。
(5)オーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延
前記オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延の後の急速加熱後は、ミクロ組織の一層の微細化やオースフォーム効果を得ることを目的として、さらにオーステナイト未再結晶温度域で第二の圧延を行う必要がある。その効果を発揮するには、この温度域で35%以上の累積圧下率が必要である。
(6)オーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延の後の急速加熱
前記オーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延の後の急速加熱は、オーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延の後、温度がAr変態点を下回ることのない温度域から、オーステナイト再結晶温度域までを2℃/sec以上の昇温速度で加熱する。
加熱開始温度がAr変態点を下回れば、フェライト変態が起こり、再加熱時に逆変態によりオーステナイトは微細化されるが、その後の加熱時の加熱温度代が大きくなり効率および経済性を損なうとともに、Nb炭化物などの析出・粗大化が促進され、混粒組織となりやすく靭性低下の原因となるので、Ar変態点以上の温度から昇温を開始する必要がある。
この場合の最高加熱温度はオーステナイト再結晶温度域内であることが必要であり、その中でも「オーステナイト再結晶温度の下限+100℃」以下の低温域が好ましい。必要以上に温度を上げるとオーステナイト粒の成長が起こり、オーステナイトの微細化効果が得られないためである。
また、昇温速度は、2℃/sec以下では、再結晶の前に加工組織の回復や、NbやTiなどの炭化物の加工誘起析出が起こり、靭性を劣化させるため、2℃/sec以上とする。加熱後の保持は行ってもよいが、再結晶が完了するとその後に粒成長が起こるため、必要以上の保持は行うべきではなく、60秒以内が好ましい。
(7)オーステナイト未再結晶温度域での圧延およびその後の急速加熱の追加について
上記の(5)および(6)からなる工程を更に1回または複数回実施することにより、オーステナイト粒の一層の微細化を図ることができる。
以上(1)から(7)において説明したように、初期オーステナイト粒径を制御した上で「オーステナイト未再結晶温度域圧延および引き続いてのオーステナイト再結晶温度域への急速加熱」を少なくとも合計で2回以上行うことにより、オーステナイトの微細化が達成される。条件を整えることにより、結晶粒径が15μm以下や10μm以下のオーステナイト粒が得られる。
なお、前記オーステナイト再結晶温度域に加熱時のオーステナイト粒径の形態は、冷却後あるいはさらに焼戻し後、オーステナイト粒界を優先的に腐食する腐食液で腐食して、金属組織を観察することにより、旧オーステナイト粒界として観察することができる。よって、この組織観察結果から線分法や画像処理などの方法により求められる、旧オーステナイト粒の円相当径を以って、前記加熱時のオーステナイト粒径を把握することができる。
(8)加速冷却
加速冷却は、上述の製造プロセスのうち、オーステナイト再結晶温度域への最後の急速加熱を実施した鋼に対して行い、Ar変態点以上の温度から600℃以下の温度まで行う。Ar変態点未満の温度から行った場合には一部フェライトが生成するため、所定の強度が得られない。また、600℃以上で冷却を停止した場合も、同様に一部フェライトが生成するため、所定の強度が得られない。冷却速度は、空冷以上の冷却速度が必要であり、10℃/secの強冷却が好ましい。冷却方法は特に限定しないが、水冷による冷却が好ましい。
(9)焼戻し
加速冷却後、必要に応じ、焼戻しを行う。焼戻しは、主として、加速冷却により焼入れを行った鋼材に対して、強度・靭性バランスの適正化、残留応力の軽減などの目的で行われ、実施する場合はAc変態点以下の温度で行う。昇温速度、保持時間は特に限定しないが、圧延ライン上の高周波誘導加熱装置などの急速加熱装置で実施することが、靭性および効率の点で好ましい。
なお、焼入れ焼戻しプロセスによらず、加速冷却ままの状態で製品となるいわゆる非調質鋼の場合には、通常、焼戻しを実施しない。
ここで、本発明における鋼材温度は、鋼材の表面と中心部との平均温度を示している。Ar、Ac変態点は鋼成分によって異なる。Ar、Ac変態点は下記式によって求めることができる。但し、各式において、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
Ar=910−273C−74Mn−56Ni−16Cr−9Mo−5Cu
Ac=751−26.6C+17.6Si−11.6Mn−169Al−23Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo+233Nb−39.7V−5.7Ti−895B
一方、オーステナイト再結晶温度域の下限温度は、鋼組成のほか、結晶粒径や加工履歴や歪量などの影響を受けるが、概ね800〜950℃の範囲にある。事前に予備試験をして調査することにより、前記下限温度を推測することができる。
本発明は厚鋼板、形鋼、棒鋼など種々の形状の鋼製品に適用可能である。本発明で「厚鋼板」とは、板厚6mm以上の鋼板を指すものとする。
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法で250mm厚のスラブ(鋼素材)とし、表2、表3および表4に示す熱間圧延条件により10〜40mm厚の鋼板を作製した。なお、再結晶温度域圧延の圧下率は、いずれの場合も15%以上であった。表1において、鋼種A−13はSiが本発明範囲外となっている。
Figure 0005589335
Figure 0005589335
Figure 0005589335
Figure 0005589335
得られた厚鋼板について、板厚方向1/2の位置から板幅方向を試験片の長手方向として、平行部直径6mmφの引張試験片を採取した。JIS Z 2241(1998)の規定に準拠して引張試験を実施し、引張強さTSおよび0.2%耐力YSを求めた。
また、板厚方向1/2の位置から板幅方向を試験片の長手方向として、JIS Z 2202(1998)の規定に準拠して、Vノッチ標準寸法のシャルピー衝撃試験片を採取した。JIS Z 2242(1998)の規定に準拠して衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrsを求めた。
更に、板厚方向1/2の位置から圧延方向断面を観察面として、組織観察用試験片を採取し、オーステナイト粒界を優先的に腐食する腐食液で腐食後、光学顕微鏡により平均旧オ−ステナイト粒径(円相当径)を線分法にて測定した。これは、高温時のオーステナイトの粒界に相当する部分を腐食により現出するものであるが、観察時にはベイナイトやマルテンサイトなど、他の相に変態した後の状態なので、観察時に現存する組織と区別するために、「旧オーステナイト(粒径)」などと称するものである。
表5および表6に試験結果を示す。
Figure 0005589335
Figure 0005589335
ここでは、引張強度800MPa以上で、シャルピー衝撃試験における脆性破面遷移温度(vTrs)が−40℃以下、旧オーステナイト粒径は15μm以下を発明例とした。
成分組成、製造条件の規定のいずれかが本発明範囲外となった鋼板No.4〜5、No.8〜11、No.14、No.33〜34、No.37〜38、No.40、No.42〜43は、本発明例鋼板No.1〜3、No.6〜7、No.12〜13、No.15〜32、No.35〜36、No.39、No.41と比較して靱性が劣っている。
なお、鋼板No.4は、オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延およびその後の加熱、ならびにオーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延を実施したが、その後に加熱がない条件であったので、靭性が低下した例である。
また、鋼板No.5はオーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延のみを実施したが、その累積圧下率が本発明の範囲よりも小さく、かつ、その後の加熱も、第二の圧延や加熱もない条件であったので、靭性が低下した例である。
鋼板No.8および34はオーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延時における累積圧下率が、本発明の範囲外になったため、旧オーステナイト粒の微細化が図れず、靭性が低下した例である。
鋼板No.9はオーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延時における累積圧下率が、本発明の範囲外になったため、旧オーステナイト粒の微細化が図れず、靭性が低下した例である。
鋼板No.10および11はオーステナイト未再結晶温度域での圧延後の加熱開始温度が本発明の範囲外になったため、混粒組織となり、靭性が低下した例である。
鋼板No.14はオーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延後の加熱速度が本発明の範囲外になったため、靭性が低下した例である。
No.37およびNo.40は、オーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延の後の再加熱を実施しなかったため、旧オーステナイト粒の微細化が図れず、靭性が低下した例である。No.38は、オーステナイト未再結晶温度域での圧延・加熱工程を1回しか実施しなかったため、旧オーステナイト粒の微細化が図れず、靭性が低下した例である。
No.42は、オーステナイト未再結晶温度域での圧延・加熱工程を1回も実施しなかったため、旧オーステナイト粒の微細化が図れず、靭性が低下した例である。
No.43は、オーステナイト未再結晶温度域での第三の圧延までを実施したもののその後にオーステナイト再結晶温度域への加熱を実施しなかったため、旧オーステナイト粒の微細化が図れず、靭性が低下した例である。
一方、発明例のうち、No.15〜18、No.35〜36は、オーステナイト未再結晶域での圧延および再結晶温度域への急速加熱からなる圧延・加熱工程を3回あるいは4回実施したことにより、旧オーステナイト粒が更に微細化し、最終の金属組織も微細化して、靭性が極めて向上した例である。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.003〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の第一の圧延を行った後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で加熱し、続いてオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の第二の圧延を終了後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で再加熱し、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却することを特徴とする高強度高靭性鋼の製造方法。
  2. 前記第二の圧延終了後にオーステナイト再結晶温度域まで加熱昇温した後に、さらにオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の圧延を実施する圧延工程と、該圧延終了後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で再加熱する加熱工程とからなる圧延・加熱工程を一回以上行った後に、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却することを特徴とする請求項1記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
  3. 鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜9.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%、Ti:0.005〜0.20%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
  4. 600℃以下に加速冷却した後に、さらに、Ac変態点以下の温度に焼戻す工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
  5. 前記累積圧下率35%以上のオーステナイト未再結晶温度域圧延を行う前のオーステナイト再結晶温度域圧延中または同オーステナイト再結晶温度域圧延後に水冷を実施し、オーステナイト未再結晶温度域まで空冷よりも速い速度で冷却する工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高靭性鋼の製造方法。
  6. 前記加速冷却の直前に実施されるオーステナイト再結晶温度域への加熱時の、平均オーステナイト粒径が15μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
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