JP2007230405A - 重荷重用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カーカス層を構成するカーカスコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含み、該コードの最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexであり、かつ前記カーカスコードと略直交する形でタイヤ内部に配置される緯糸コードが実質的に存在しないことを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤである。
【選択図】なし
Description
また、初期引張抵抗度が高いコードとして、ポリケトン繊維よりなるコードが知られており、従来のポリオレフィン繊維に比べて融点が高く、高強度を有することが知られており、この優れた物性を生かしして産業資材用途、タイヤやベルト、ホースなどのゴム補強材料として展開が期待されている。
特に、小型トラックやトラック・バス用空気入りラジアタイヤは、カーカコードにスチールコードを使用するのが一般的であり、そのためタイヤ重量は高重量となる。
近年、特に、環境保護の点から、タイヤの軽量化が強く求められており、スチールコードに比べて軽量な高強度有機繊維が注目され、ポリケトン繊維コードをカーカスに適用したタイヤは、高荷重耐久性及び操縦安定性がバランス良く改善されている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、最近では高熱収縮応力を有するポリケトン繊維の開発がおこなわれている(例えば、特許文献3参照)。
特に、有機繊維材料をゴム補強材として使用する場合には、通常、繊維を撚糸後、接着剤を付与して簾状織物としてゴム材料中に埋設する。
最近、ポリケトンコードを経糸に用いた簾状織物に関する技術が開示され(例えば、特許文献4参照)、(イ)「ポリケトン繊維およびポリケトン繊維コードからなるコードは摩擦係数が小さく、簾織物の経糸として用いると、緯糸との間に滑りが生じて経糸の打ち込み間隔が不均一になる、いわゆる「目ずれ」が起こりやすい。」(ロ)「高強度及び高弾性を有するポリケトン繊維およびポリケトン繊維コードからなるコードは熱収縮応力が高く、簾織物に製織後の熱収縮によって簾織物が歪んで平坦性が損なわれる。」などの問題点を挙げ、その解決手段として経糸と緯糸との繊維−繊維間静止摩擦係数(μs)を上げることが開示されている。
しかしながら、タイヤの軽量化と共に高速耐久性及び操縦安定性に優れた高性能タイヤを開発するニーズが拡大してきており、上記問題点を克服して、非常に強い熱収縮応力を有するポリケトン繊維コードの特性を生かした、該ポリケトン繊維をベルトコードに適用する技術の開発が必要になってきている。
すなわち、本発明は、
(1) 一対のビードコアと、少なくとも該ビードコアに固定されるカーカスコードを含むカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向内側に配設されたインナーライナー層と、該カーカス層のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配設された少なくとも2枚のベルト層を有するベルト部と、該ベルト部のタイヤ半径方向外側に配設されたトレッド部と、該トレッド部の左右に配置された一対のサイドウォール部を具備してなる重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、前記カーカス層を構成するカーカスコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含み、該コードの最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexであり、かつ前記カーカスコードと略直交する形でタイヤ内部に配置される緯糸コードが実質的に存在しないことを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤ、
(2) 前記カーカスコードに少なくとも50質量%含まれるポリケトン繊維原糸の引張強度が10cN/dtex以上、弾性率が200cN/dtex以上、かつ接着剤処理(Dip処理)後のコードとして、150℃にて30分間乾熱処理時の熱収縮率が1〜5%である上記(1)の重荷重用空気入りラジアルタイヤ、
(3) 隣接するカーカスコード間隔(隙間)の最小値が0.4mmである上記(1)又は(2)の重荷重用空気入りラジアルタイヤ、
(4) 前記カーカスコードの繊度が3000〜17000dtex、及び該コード1dtex当たりの19.8mN時の伸び率が5.0%未満である上記(1)〜(3)の重荷重用空気入りラジアルタイヤ、
(5) ポリケトン繊維を構成するポリケトンが、下記一般式(I)
(6) 前記式(I)中のAがエチレン基である上記(5)の重荷重用空気入りラジアルタイヤ、
(7) 前記ポリケトン繊維を少なくとも50質量%コードの下記式(II)で定義される下撚り係数N1が0.35〜0.70、下記式(III)で定義される上撚り係数N2が、0.50〜0.95である上記(1)〜(7)の重荷重用空気入りラジアルタイヤ、
N1=n1×(0.125×D1/ρ)1/2×10-3 ・・・ (II)
N2=n2×(0.125×D2/ρ)1/2×10-3 ・・・ (III)
[式(II)及び(III)において、n1は下撚り数(回/10cm);n2は上撚り数(回/10cm);D1は下撚り糸のdtex;D2はトータルdtex;ρは上記ポリケトンコードの比重(g/cm3)である。]
を提供するものである。
本発明に用いられるポリケトン繊維コードの原料であるポリケトンは、上記式(I)で表される繰り返し単位から実質的になるポリケトンが好ましい。また、該ポリケトンの中でも、繰り返し単位の97モル%以上が1−オキソトリメチレン[−CH2−CH2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンがさらに好ましく、100モル%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。繰り返し単位中の1−オキソトリメチレンの割合が高いほど分子鎖の規則性が向上し、高結晶性で高配向度の繊維が得られる。
該熱延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、加熱ロールや過熱プレート上に糸を走行させる方法等を採用することができる。ここで、熱延伸温度は110℃〜(ポリケトンの融点)の範囲が好ましく、総延伸倍率は、10倍以上であることが好ましい。
ここで、熱延伸されたポリケトン繊維の急冷却方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法採用することができ、具体的には、ロールを用いた冷却方法が好ましい。なお、こうして得られるポリケトン繊維は、弾性歪の残留が大きいため、通常、緩和熱処理を施し、熱延伸後の繊維長より繊維長を短くすることが好ましい。ここで、緩和熱処理の温度は、50〜100℃の範囲が好ましく、また、緩和倍率は0.980〜0.999倍の範囲が好ましい。
また、ポリケトン繊維の高い熱収縮特性を最も効果的に活用するには、加工時の処理温度や使用時の成型品の温度が、最大熱収縮応力を示す温度(以下最大熱収縮温度という)と近い温度であることが望ましい。
タイヤコードやベルト等のゴム補強用繊維材料として用いられる場合、RFL処理温度や加硫温度等の加工温度が100〜250℃であること、また、繰返し使用や高速回転によってタイヤやベルト等の材料が発熱した際の温度は100〜200℃にもなること等から最大熱収縮温度は100〜250℃の範囲であり、より好ましくは150〜240℃であることが望ましい。
ポリケトン繊維の割合を上記範囲内にすることによって、コードの優れた熱収縮性、強度、寸法安定性、耐熱性、及びゴムとの接着性などを得ることができる。
高熱収縮応力、高強度及び高弾性率を有する少なくともポリケトン繊維を50質量%含むコード経糸とし、緯糸を有する簾織物から緯糸を除くことによって、簾織物としてゴム引きされた後タイヤ製造時の加熱により、ポリケトン繊維の収縮に起因し、緯糸に由来するカーカスコード配列の乱れが生じることが無く、タイヤのユニフォミティ性能の優れた、より改良された高速耐久性及び操縦安定性を有する空気入りラジアルタイヤを得ることができる。
具体的には、特開平5−269890に技術開示された、テキスタイルコードの横糸処理装置等でゴム引き前に緯糸を除去したり、1本、または複数本の接着処理済みコードにコーティングゴムをインシュレーションしたコード・ゴム複合材料をタイヤ成型機上でならべたりすることで、 カーカスプライの緯糸が実質的に存在しないタイヤを製造することができる。
本発明に用いられるポリケトン繊維コードの熱収縮応力は110℃を超えると急激に増加する。高速走行でタイヤ温度が上昇するにつれて熱収縮応力は増加し、高速走行によるショルダーの迫り出しを抑え、優れた高速時の操縦安定性を示す。すなわち、タイヤの温度上昇にともなって熱収縮応力は増加する。
ポリケトン繊維コードの収縮は、コードが室温になるともとに戻り、高温になると再度発現する。この現象は可逆的に起こり、タイヤを走行させるごとに繰り返し行なわれる。
本発明において、カーカス層を形成するポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードは、繊度が3000〜17000dtex、好ましくは6000〜12000dtexであることが望ましい。繊度を上記範囲にすることによって、重荷重用空気入りラジアルタイヤとして必要なカーカス強度を確保し、コード径が大きくなりすぎることによる、カーカス端からのセパレーションを抑制することができる。
さらに、前記コード1dtex当たりの19.8mN時の伸び率が5.0%未満、より好ましくは3.5%未満であることが望ましい。コード1dtex当たりの19.8mN時の伸び率上記範囲にすることによって、タイヤの走行成長を抑制することができる。
ここで、本発明においては、カーカス層5に埋設されているカーカスコード(図示せず)は、上述したポリケトン繊維を少なくとも50質量部含むコードが適用されている。
<コード物性評価>
1.引張強度、引張弾性率
JIS−L−1013に準じて測定した。引張弾性率は伸度0.1%における荷重と伸度0.2%における荷重から算出した初期弾性率の値を採用した。
2.乾熱収縮率
オーブン中で150℃にて30分間の乾熱処理を行い、熱処理前後の繊維長を、1/30(cN/dtex)の荷重をかけて計測して下式により求めた。乾熱収縮率(%)=(Lb−La)/Lb×100(ただし、Lbは熱処理前の繊維長、Laは熱処理後の繊維長である。)
3.最大熱収縮応力
接着剤処理(Dip処理)を施した、加硫前のポリケトン繊維コードを25cmの長さに固定したサンプルを5℃/分の昇温スピードで加熱し、コードに発生する応力を測定した。得られた温度−応力カーブから最大の熱収縮応力を読み取って得られた値である。
1.ドラム耐久試験
ドラム条件:JATMA条件に準拠し、内圧700kPa、ステップ荷重[最大荷重×(66%、84%、100%、110%)×6時間]、速度65km/hでドラム試験機によるタイヤ耐久性テストをおこなった。タイヤが故障するまでの走行距離を測定し従来例のタイヤの走行距離を100として指数で表した。数値の大きいほうがタイヤ耐久性が良いことを示す。
常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.3のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度8質量%のドープを得た。
このドープを80℃に加温し、20μm焼結フィルターでろ過した後に、80℃に保温した紡口径0.10mmφ、50ホールの紡口より10mmのエアーギャップを通した後に5重量%の塩化亜鉛を含有する18℃の水中に吐出量2.5cc/分の速度で押出し、速度3.2m/分で引きながら凝固糸条とした。
引き続き凝固糸条を濃度2重量%、温度25℃の硫酸水溶液で洗浄し、さらに30℃の水で洗浄した後に、速度3.2m/分で凝固糸を巻取った。
この凝固糸にIRGANOX1098(Ciba Specialty Chemicals社製)、IRGANOX1076(Ciba Specialty Chemicals社製)をそれぞれ0.05重量%ずつ(対ポリケトンポリマー)含浸せしめた後に、該凝固糸を240℃にて乾燥後、仕上剤を付与して未延伸糸を得た。
なお、仕上剤としては、オレイン酸ラウリルエステル/ビスオキシエチルビスフェノールA/ポリエーテル(プロピレンオキシド/エチレンオキシド=35/65:分子量20000)/ポリエチレンオキシド10モル付加オレイルエーテル/ポリエチレンオキシド10モル付加ひまし油エーテル/ステアリルスルホン酸ナトリウム/ジオクチルリン酸ナトリウム=30/30/10/5/23/1/1(質量%比)の組成のものを用いた。
この繊維は強度15.6cN/dtex、伸度4.2%、弾性率347cN/dtexと高物性を有していた。
上記によって製造されたポリケトン繊維を第1表に示すそれぞれのコード構造のコードを作成してカーカスコードとして用いた。
<試供タイヤの製造(タイヤサイズ225/80R17.5)>
前記ポリケトン繊維100質量%からなるコードに、該コードを被覆するコーティングゴムをインシュレーションした後、得られる材料を必要幅に裁断しタイヤ成型機上で、タイヤ断面各位置でほぼ並行になるよう配設してカーカス層を1層形成した。
上記カーカス層を用いて1プライ構造のタイヤを試作した。なお、ベルト層は、(1×6)×0.30mm構造のスチールコードベルトを3枚配置し、得られたタイヤについて、タイヤの室内ドラムテストを行い故障までの走行距離を従来例のタイヤを100として指数で表した。数値の大きいほうがタイヤ耐久性能が優れていることを示す。結果を第1表に示す。
なお、従来例のタイヤはスチールコード(1×3+9×0.175mmの層撚り構造)をカーカスコードとして用いた。カーカス層以外は前記試供タイヤと同じである。なお、スチールコードにはカーカスコーティングゴムとの接着を確保するために真鍮メッキが施されている。
また、比較例1のカーカスコードはポリケトン繊維を経糸とした簾織物を用いた。なお、緯糸については、材質が綿の紡績糸を用いた。(繊度:420dtex、引張り強力:250g、切断伸度:5.5%、コード間隔:30mm)
比較例2のタイヤはビードコア周りのカーカスコードの間隔(隙間)が0であり、該ビード周りのセパレーションによりタイヤ耐久性が従来例対比大幅に低下している。
また、比較例3のタイヤは、カーカスコード径が大きくプライエンドからのセパレーションが発生し、タイヤ耐久性の低下幅が従来例対比かなり大きくなっている。さらに上撚り係数及び下撚り係数の共に小さなタイヤは比較例3のタイヤ同様タイヤ耐久性の低下が見られる。
それに対して、実施例1〜3に示す本発明のタイヤは、タイヤ耐久性が従来例対比大幅に向上していることがわかる。また、実施例4のタイヤのタイヤ耐久性は従来例対比同等なるも、カーカスコードに緯糸が存在する比較例1のタイヤ対比ではタイヤ耐久性は改善されている。
2 ビードコア
3 サイド部
4 トレッド部
5 カーカス層
6 ベルト
7 インナーライナー層
Claims (7)
- 一対のビードコアと、少なくとも該ビードコアに固定されるカーカスコードを含むカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向内側に配設されたインナーライナー層と、該カーカス層のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配設された少なくとも2枚のベルト層を有するベルト部と、該ベルト部のタイヤ半径方向外側に配設されたトレッド部と、該トレッド部の左右に配置された一対のサイドウォール部を具備してなる重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、前記カーカス層を構成するカーカスコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含み、該コードの最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexであり、かつ前記カーカスコードと略直交する形でタイヤ内部に配置される緯糸コードが実質的に存在しないことを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記カーカスコードに少なくとも50質量%含まれるポリケトン繊維原糸の引張強度が10cN/dtex以上、弾性率が200cN/dtex以上、かつ接着剤処理(Dip処理)後のコードとして、150℃にて30分間乾熱処理時の熱収縮率が1〜5%である請求項1に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 隣接するカーカスコード間隔(隙間)の最小値が0.4mmである請求項1又は2記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記カーカスコードの繊度が3000〜17000dtex、及び該コード1dtex当たりの19.8mN時の伸び率が5.0%未満である請求頁1〜3のいずれかに記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記式(I)中のAがエチレン基である請求項5記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ポリケトン繊維を少なくとも50質量%コードの下記式(II)で定義される下撚り係数N1が0.35〜0.70、下記式(III)で定義される上撚り係数N2が、0.50〜0.95である請求項1〜7のいずれかに記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
N1=n1×(0.125×D1/ρ)1/2×10-3 ・・・ (II)
N2=n2×(0.125×D2/ρ)1/2×10-3 ・・・ (III)
[式(II)及び(III)において、n1は下撚り数(回/10cm);n2は上撚り数(回/10cm);D1は下撚り糸のdtex;D2はトータルdtex;ρは上記ポリケトンコードの比重(g/cm3)である。]
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