JP2007217204A - 磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板1は、内部に非化学強化層(引張り応力層)2が形成され、内周端面1cに化学強化層3c(圧縮応力層)が形成され、外周端面1dに化学強化層3dが形成されている。主表面(上面1a及び下面1b)には化学強化層は形成されていない。このように基板の端面に化学強化層が形成されていることで、基板内部における引張り応力と圧縮応力とのバランスがとれるため、ガラス基板の破壊強度を高めることができる。また、上面1a及び下面1bには化学強化層が形成されていないため、上面1a又は下面1bの上に形成されるニッケル合金層とガラス基板との密着強度を高めることが可能となる。
【選択図】図1
Description
この発明の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の概略構成について図1を参照して説明する。図1は、この発明の実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の概略構成を示す図であり、図1(a)は基板の斜視図、図1(b)は基板の断面図である。
次に、この実施形態に係る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について説明する。
まず、ガラス素材を溶融し(ガラス溶融工程)、溶融したガラスを平面形状の金型に流し込み、その金型で溶融ガラスを挟むことによりプレス成形し、円盤状のガラス基板を作製する(プレス形成工程)。このプレス成形工程により作製された半製品のガラス基板を「ブランクス材」と称する。
結晶化処理後のブランクス材の中央に内径6[mm]の穴をダイヤモンドコアドリルで開ける。このプロセスを経て、外径66[mm]、内径19[mm]、板厚1.1[mm]のドーナツ状の穴開きブランクス材を得る。
ステップS03にて作製された穴開きブランクス材を、ダイヤモンドペレットが貼り付けられたプレートを保持した両面研削機にて研削を行い、板厚を0.8[mm]に加工する。その後、内径と外径とを同時に加工できる加工装置にて、外径65[mm]、内径20[mm]に加工する。その後、さらに、上記両面研削機にて、厚さが0.67[mm]になるまで穴空きブランクス材を研削する。この研削加工まで終了したガラス基板がRTPガラス基板と称される。
硝酸ナトリウムと硝酸カリウムとを混合した混合液(溶融塩)を用いて、上記RTPガラス基板に対して化学強化処理を行う。以下、混合液(溶融塩)の混合比率と温度を示す。
混合液(溶融塩):硝酸ナトリウムと硝酸カリウムを3対1の重量比率で混合した。
混合液(溶融塩)の温度:380℃
次に、研削加工が施されたガラス基板の主表面を研磨する。この研磨では、両面研磨機を用いて2回に分けて研磨を行う。以下、第1の研磨処理と第2の研磨処理の条件を説明する。
研磨機として、スピードファム社製の16Bタイプの研磨機を用いた。1回あたりの処理枚数は100枚である。研磨機の上下のプレートには発泡ポリウレタンからなる研磨布(ロデール製MHC14)が貼られている。研磨材には、酸化セリウムを主成分とする研磨材(三井金属製E−21)を水に含ませて100g/L程度のスラリー濃度に調整した研磨スラリーを用いた。
研磨機は、上記第1の研磨処理で用いた研磨機(スピードファム社製の16Bタイプの研磨機)を用いた。カネボウ製のスエード研磨布を上下のプレートに接着させて使用した。研磨材には、酸化セリウムを主成分とする微細な研磨材(昭和電工製V2104)を水に含ませて100g/L程度のスラリー濃度に調整した研磨スラリーを用いた。
板を研磨した。ガラス基板を研磨することで、片面で約2[μm]、両面合わせて約4[μm]を研磨した。
まず、RTPガラス基板に対して化学強化処理を施すことにより、図2(a)に示すように、ガラス基板の全表面に化学強化層3(圧縮応力層)を形成する。このガラス基板は、内部に非化学強化層2(引張り応力層)が存在し、その周りが化学強化されて化学強化層3(圧縮応力層)が形成されている。
次に、このガラス基板の主表面(上面1a及び下面1b)に形成された化学強化層(圧縮応力層)を研磨することにより、図2(b)に示すように、磁気記録媒体用ガラス基板1を作製する。ここでは、この研磨工程により主表面(上面1a及び下面1b)に形成された化学強化層(圧縮応力層)を完全に除去し、主表面(上面1a及び下面1b)に化学強化層を残存させない。ガラス基板の主表面のみを研磨し、内周端面1c及び外周端面1dを研磨していないため、内周端面1cには内部に化学強化層3cが残存し、外周端面1dには内部に化学強化層3dが残存する。
次に、研磨処理後のガラス基板を洗浄する。ここでは、PVA製のスポンジブラシでスクラブ洗浄を行い、その後、超音波浸漬槽内で洗剤を用いて洗浄する。そして、IPAの蒸気中で洗浄後のガラス基板を乾燥する。
以上の工程を経て作製された磁気記録媒体用ガラス基板に、無電解めっき法によってニッケル合金層を形成する。磁気記録媒体用ガラス基板1の主表面(上面1a及び下面1b)には化学強化層が形成されていないため、基板とニッケル合金層との密着強度を高めることが可能となる。ニッケル合金層の形成方法は公知の方法と同じであるが、脱脂、感受性化、活性化の処理を行った後、無電解めっきを施してニッケル合金層を形成する。
脱脂処理:磁気記録媒体用ガラス基板を、パーカコーポレーション製のアルカリ洗剤PK−LCG22(5%水溶液、50℃)に15分間浸漬し、その後水洗を実施した。
感受性化処理:試薬の塩化第1スズ(SnCl)の0.1g/L水溶液中に5分間浸漬し、その後水洗を実施した。
活性化処理:試薬の塩化パラジウム(PdCl)の0.1g/L水溶液中に5分間浸漬し、その後水洗を実施した。
無電解めっき:上記脱脂、感受性化、活性化の処理を行った後、上村工業製のニッケル−リンめっき液に浸漬し、20μmのニッケル−リン合金層を形成した。
ベーキング:無電解めっきを施した後、150℃で2時間のベーキングを行った。
ここで、化学強化層の厚さの測定方法について説明する。化学強化処理を施したガラス基板を分割し、ガラス基板の断面を偏光顕微鏡で観察すると、内部応力の差を着色度で観測できる。また、断面を深さ方向にEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)でイオン分析すると、ナトリウムとカリウムのイオン分布を定量的に評価することができる。ナトリウムイオン濃度は、最表面から内部に向かって次第に低下するが、ガラス組成に含有されるベースにまで減少するとそれ以上は減少しない。表面からこの一定値に至った厚さを化学強化層の厚さとする。
ステップS07でニッケル合金層が形成された磁気記録媒体用ガラス基板に対して、剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、ニッケル合金層の密着強度の評価を行った。
2.5インチ基板を搭載するランプロードタイプの東芝製ハードディスク装置にステップ06までの処理で得られたガラス基板を1枚搭載し、高さ2mから鉄板上へ自由落下させた。そして、10枚のガラス基板について落下試験を行い、破損したガラス基板の枚数によって破壊強度を評価した。
次に、具体的な実施例と、その実施例に対する比較例を説明する。
実施例1に用いたガラス基板の条件を以下に示す。
ガラスの種類:アルミノシリケートガラス(石塚ガラス製IG−93)
外径:65[mm]
内径:20[mm]
厚さ:0.635[mm]
内周端面1c及び外周端面1dに形成された化学強化層の厚さ:25[μm]
ガラス基板の主表面(上面1a及び下面1b)の化学強化層は除去されている。
主表面(上面1a及び下面1b)の化学強化層が除去された磁気記録媒体用ガラス基板1に対して無電解めっき法を施すことによりニッケル−リン合金層を形成し(ステップS07)、ニッケル合金層とガラス基板表面との密着強度を評価した。
評価結果:上記剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、ニッケル合金層とガラス基板との密着強度が高いことが分かった。
ステップS06までで作製された磁気記録媒体用ガラス基板1をハードディスク装置に搭載し、上記落下試験を行った。ここでは、10枚のガラス基板に対して落下試験を行った。
割れ枚数:0枚(10枚中)
このように、ガラス基板の破壊強度が高いことが分かった。
比較例1に用いたガラス基板の条件を以下に示す。
ガラスの種類:アルミノシリケートガラス
外径:65[mm]
内径:20[mm]
厚さ:0.635[mm]
ガラス基板の表面に形成された化学強化層の厚さ:25[μm]
主表面(上面及び下面)は研磨されていないため、内周端面及び外周端面のみならず、主表面(上面及び下面)にも化学強化層が残存している。
このガラス基板に対して無電解めっき法を施すことによりニッケル−リン合金層を形成し、ニッケル合金層とガラス基板表面との密着強度を評価した。
評価結果:上記剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、ニッケル合金層とガラス基板との密着強度が低いことが分かった。
ステップS06までで作製されたガラス基板をハードディスク装置に搭載し、上記落下試験を行った。ここでは、10枚のガラス基板に対して落下試験を行った。
割れ枚数:0枚(10枚中)
このように、ガラス基板の破壊強度が高いことが分かった。
比較例2に用いたガラス基板の条件を以下に示す。
ガラスの種類:アルミノシリケートガラス
外径:65[mm]
内径:20[mm]
厚さ:0.635[mm]
このガラス基板に対して無電解めっき法を施すことによりニッケル−リン合金層を形成し(ステップS07)、ニッケル合金層とガラス基板表面との密着強度を評価した。
評価結果:上記剥離テスト(JIS K5400 8.15)を実施し、ニッケル合金層とガラス基板との密着強度が高いことが分かった。
比較例2に係るガラス基板をハードディスク装置に搭載し、上記落下試験を行った。ここでは、10枚のガラス基板に対して落下試験を行った。
割れ枚数:8枚(10枚中)
このように、ガラス基板の破壊強度が低いことが分かった。
1a 上面
1b 下面
1c 内周端面
1d 外周端面
2 非化学強化層(引張り応力層)
3 化学強化層(圧縮応力層)
Claims (6)
- 表面及び前記表面の周囲に端面を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記端面から内部の所定範囲に亘って化学強化層が形成されていることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。 - 前記表面に金属層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- 前記金属層は、無電解めっき法により析出されたニッケル合金で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
- 円盤状のガラス基板の表面及び前記表面の周囲に対して化学強化処理を施す化学強化処理工程と、
前記表面を研磨することにより、前記表面に形成された化学強化層を除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。 - 前記研磨後の表面に金属層を形成する金属層形成ステップを更に含むことを特徴とする請求項4に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 前記金属層形成ステップでは、無電解めっき法によりニッケル合金からなる金属層を前記研磨後の表面に形成することを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
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