JP2007186073A - 車両用スタビライザシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】アクチュエータによってスタビライザバーの剛性をアクティブに制御可能な車両用スタビライザシステムの実用性を向上させる。
【解決手段】車両が非旋回状態であってフリー制御が実行されている場合のモータ回転角θに基づいてスプリング失陥を検出し、失陥輪側のスタビライザ装置について、失陥に起因する車体の傾斜を抑制すべく、補正量θ0を加算してアクティブ制御を実行する(S10)。さらに、失陥輪が後輪である場合には、前輪側のスタビライザ装置について、ロール抑制力を正常時に比較して減少させて(1より小さい値に設定されたゲインKを積算して)制御を実行し(S10)、失陥輪が前輪である場合には、後輪側のスタビライザ装置がロール抑制力を発揮しないように制御を実行して(S17)、ロール剛性配分のずれを抑制する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、車体のロールを抑制するための車両用スタビライザシステムに関し、特に、アクチュエータを有してスタビライザバーの発生させるロール抑制力を変更可能に構成された車両用スタビライザシステムに関する。
今日では、いわゆるアクティブスタビライザシステムが実用化され始めている。アクティブスタビライザシステムは、下記特許文献に記載されたようなシステムであり、スタビライザバーとそのスタビライザバーの発揮するロール抑制力を変更するアクチュエータとを備えたスタビライザ装置を備え、車両の旋回状態に応じたロール抑制力をスタビライザバーに発揮させるべく、アクチュエータをアクティブに制御可能とされている。
特表2002−518245号公報
車両は、各車輪ごとにサスペンションスプリング(以下、単に「スプリング」という場合がある)を備えており、それらスプリングのいずれかが失陥して機能しなくなった場合には、車体が傾斜するといった現象が発生する。したがって、上記アクティブスタビライザシステムによってスプリングの失陥に対処することができれば、スタビライザシステムの実用性を向上させることが可能となる。本発明は、そのような観点に基づいてなされたものであり、実用性の高い車両用スタビライザシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用スタビライザシステムは、いわゆるアクティブスタビライザシステムであって、左右のサスペンションスプリングの一方の失陥時に、その失陥に起因する車体の傾斜を抑制するように構成されたことを特徴とする。
本発明のスタビライザシステムは、スプリングの失陥によって生じる車体の傾斜を、スタビライザバーが発揮するロール抑制力によって抑制するように構成されたものであり、本発明のシステムによれば、スプリングの失陥時においても車体の傾斜が抑制されることから、スプリング失陥時の違和感が緩和されることになる。その点において、本発明の車両用スタビライザシステムは実用性の高いシステムとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、下記各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項ないし(4)項を合わせたものが請求項2に、(6)項が請求項3に、(7)項が請求項4に、それぞれ相当する。
(1)両端部の各々が左右の車輪の各々を保持する車輪保持部材に連結されたスタビライザバーと、
そのスタビライザバーが発揮するロール抑制力を変化させるアクチュエータと、
そのアクチュエータの作動を制御することで前記スタビライザバーが発揮するロール抑制力を制御する制御装置と
を備えた車両用スタビライザシステムであって、
前記制御装置が、左右のサスペンションスプリングの一方の失陥時において、その失陥に起因する車体の傾斜を抑制すべく前記アクチュエータを制御するスプリング失陥時制御部を有する車両用スタビライザシステム。
本項に記載の「スプリング失陥時制御部」が実行する制御によれば、スプリングの失陥に起因する車体の傾斜を、スタビライザバーが発揮するロール抑制力によって抑制することができる。したがって、スプリング失陥時制御部を備えた本項のスタビライザシステムによれば、スプリング失陥時において、車体が傾斜することによる違和感を緩和あるいは解消することが可能となる。その意味において、本項のスタビライザシステムは、スプリングの失陥に対処できることで、実用性の高いシステムとされているのである。
本項でいう「サスペンションスプリングの失陥」とは、主に、スプリングの機能を十分にあるいは全く発揮し得ない状況を意味し、その状況は、具体的には、例えば、スプリングがコイルスプリングである場合においてそれが破断するとか、エアスプリングである場合にエア室(ダイヤフラム)がバーストするといった状況が相当する。このような状況では、車体が比較的大きく傾くことから、車両の搭乗者に対して違和感を与えることになる。本項の態様では、その違和感を解消あるいは緩和することが可能である。なお、本項の態様において、スプリング失陥時制御部は、スプリングの失陥による車体の傾斜を全くあるいは殆どなくすように制御するものであってもよく、また、その傾斜の一部をなくす、つまり、その傾斜を減少させるように制御するものであってもよい。
本項に記載の車両用スタビライザシステムの具体的構成、特に、上記スタビライザバーと上記アクチュエータとを含んでなる「スタビライザ装置」のハード構成が特に限定されるものではなく、既に公知のハード構成を有するアクティブスタビライザシステムが広く対象となる。例えば、後に説明するように、スタビライザバーを、中央部で2つに分離して1対のスタビライザバー部材によって構成し、それら1対のスタビライザバー部材の間にアクチュエータを配設して、そのアクチュエータがそれら1対のスタビライザバー部材を相対回転させるようなあるいは相対回転させる力を発生するような構成であってもよく、また、スタビライザバーの一方の端部と車輪保持部材との間にアクチュエータを配設して、そのアクチュエータがその一方の端部と車輪保持部材との間隔を変更するようなあるいは変更する力を発生させるような構成であってもよい。さらに、アクチュエータは、どのような力に基づいて動作するものであってもよい。例えば、油圧等によって作動する流体式のアクチュエータであってもよく、また、後に説明するように、電動モータ等を駆動源として備えた電磁式のアクチュエータであってもよい。なお、本項に記載の「制御装置」は、後に説明するアクティブ制御を司る装置であり、例えば、コンピュータを主体として構成することが可能である。
(2)前記制御装置が、車両非旋回状態を基準として、車両旋回によって車体が受けるロールモーメントの増加に応じて前記スタビライザバーが発揮するロール抑制力を増加させるように、前記アクチュエータを制御するものとされた(1)項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項は、当該スタビライザシステムが、車体が受けるロールモーメントに応じてロール抑制力を変更する制御(以下、この制御を「アクティブ制御」という場合がある)を実行するものであることを明確にした項である。アクティブ制御を実行することで、車体のロール量を効果的に抑制することが可能である。具体的には、車体に発生する横加速度,ヨーレート,車速と操舵量との関係等、旋回によって車体が受けるロールモーメントを直接的にあるいは間接的に示す何らかの指標量(以下、「ロールモーメント指標量」という場合がある)に基づいて、アクチュエータの作動が制御される。この制御される作動は、アクチュエータの発揮する力(以下、「アクチュエータ力」という場合がある)であってもよく、アクチュエータの動作量であってもよい。具体に言えば、例えば、アクチュエータ力に応じたロール抑制力をスタビライザバーが発揮する構造のスタビライザ装置では、スプリングとスタビライザバーとの両者によって発揮すべきロール抑制力のうちのスタビライザバーが分担すべきロール抑制力を、目標ロール抑制力とし、それをロールモーメント指標量に基づいて決定し、その目標ロール抑制力が発揮されるようにアクチュエータ力が制御されてもよく、また、アクチュエータの動作量に応じたスタビライザバーの剛性(見かけ上の剛性である)が得られるようなスタビライザ装置では、車両の旋回状態に応じた剛性を得るべくロールモーメント指標量に基づいて目標となるアクチュエータ動作量を決定し、アクチュエータの動作量がその目標動作量となるような制御が実行されてもよい。つまり、前者の制御は、ロール抑制力を直接の目標とする制御であり、後者の制御は、スタビライザバーの剛性を変化させることによって、間接的に、車両の旋回状態に応じた適切なロール抑制力を発揮させる制御である。
さらに言えば、上記「車両非旋回状態」(車両が直進しているかあるいは車両が走行していない状態)においては、車体は車両旋回に起因するロールモーメントを受けておらず、その状態から車両が旋回した場合に、その旋回の状態に応じて車体が受けるロールモーメントが増加する。本項の態様のアクティブ制御では、そのロールモーメントの増加につれてロール抑制力が大きくされる。この場合、ロールモーメントの増加に対するスタビライザバーが発揮するロール抑制力の増加割合(以下、この割合を「スタビライザ装置のロール剛性」という場合がある)を比較的高くすることにより、車体のロールを抑制する効果が大きくなり、その割合を比較的低くすることにより、ロール抑制効果は低くなる。
(3)前記制御装置が、サスペンションスプリングが失陥していない場合に、車両非旋回状態において前記スタビライザバーがロール抑制力を発揮しないように前記アクチュエータを制御するものとされた(1)項または(2)項に記載の車両用スタビライザシステム。
先に説明したように、車両非旋回状態では、車体は旋回に起因するロールモーメントを受けていない。そのことに鑑みて、本項に記載の態様では、スプリングが失陥していない場合に、スタビライザバーが発揮するロール抑制力が0となるアクティブ制御が実行される。
(4)前記スプリング失陥時制御部が、車両非旋回状態において車体が傾斜しないようなロール抑制力である失陥時基準ロール抑制力を前記スタビライザバーが発揮するように前記アクチュエータを制御するものとされた(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、スプリングの失陥時における車体の傾斜の抑制の程度に関して、具体的な限定を加えた態様である。本項に記載の態様によれば、車両非旋回状態において車体が傾斜しないことから、乗員が抱く違和感を大幅に軽減することが可能となる。なお、本項の態様は、先に説明した態様と組み合わせ、上記「失陥時基準ロール抑制力」を基準として、ロール抑制力を旋回に起因するロールモーメントの増加に応じてその失陥時基準ロール抑制力から増加させるようなアクティブ制御を実行する態様で実施することも可能である。その場合、例えば、右輪のスプリングが失陥した場合において、車両が右旋回するようなときには、失陥時基準ロール抑制力が負の値となるとして、その値から右旋回に起因するロールモーメントに応じて正側に向かって増加させるような制御が実行される。
(5)当該スタビライザシステムが、
前記アクチュエータの動作量に応じて前記スタビライザバーのロール抑制力を変化させるように構成されるとともに、前記スタビライザバーがロール抑制力を発揮していない場合に前記アクチュエータの自由な動作を許容し得る構成とされ、
そのアクチュエータの動作量に基づいてサスペンションスプリングの失陥を検出するスプリング失陥検出部を備えた(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、スプリングの失陥をスタビライザシステムが自らの有する構成要素によって検出する態様である。上記のようにスタビライザバーがロール抑制力を発揮していない場合にアクチュエータの自由な動作を許容すれば、アクチュエータの動作量は、左右各々の車輪と車体との離間距離差に応じたものとなる。したがって、例えば、車両非旋回状態等においてスプリングが失陥した場合の上記離間距離差が既知のものであれば、それに応じたアクチュエータ動作量も既知であり、実際のアクチュエータ動作量が、その既知の動作量となる場合に、スプリングが失陥していると認定することが可能である。本項に記載の態様は、そのようにして アクチュエータ動作量に基づいてスプリングの失陥を検出する態様で実施することが可能である。本項の態様によれば、ストロークセンサ等、特別なセンサを必要とせずに、簡便にスプリングの失陥を検出することができる。
(6)当該スタビライザシステムが、前輪側,後輪側のそれぞれに、前記スタビライザバーおよび前記アクチュエータを備え、前記制御装置が、車両非旋回状態を基準として、車両旋回によって車体が受けるロールモーメントの増加に応じて前輪側,後輪側の各々の前記スタビライザバーが発揮するロール抑制力を増加させるように前輪側,後輪側の各々の前記アクチュエータを制御するものとされ、
前記スプリング失陥時制御部が、
前輪側と後輪側との一方の左右のサスペンションスプリングの一方の失陥時において、その失陥に起因する車体の傾斜を抑制すべく前記前輪側と後輪側との一方の前記アクチュエータを制御するとともに、サスペンションスプリングが失陥していない前輪側と後輪側との他方の前記スタビライザバーのロールモーメントの増加に対するロール抑制力の増加割合をサスペンションスプリングが失陥していない場合と比較して小さくするように、その他方の前記アクチュエータを制御するものとされた(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
本項の態様は、前輪側,後輪側の各々にスタビライザ装置が配設されたスタビライザシステムに関する態様であり、簡単にいえば、前輪側,後輪側のスプリングが失陥した側(以下、「失陥輪側」という場合がある)のスタビライザ装置によって、その失陥に起因する車体の傾斜を抑制する一方、前輪側,後輪側のスプリングが失陥していない側(以下、「正常輪側」という場合がある)のスタビライザ装置のロール剛性を低くする態様である。
一般に、車両は、車両の操縦安定性等に鑑みて旋回特性をアンダーステア気味にするといった理由から、前輪側と後輪側とのロール剛性の配分(以下、単に「ロール剛性配分」という場合がある)が適切な値に調整されている。前輪側,後輪側の一方の左右における一方のスプリングが失陥した場合には、その失陥に起因してスプリングが分担すべきロール剛性が大きく低下し、その失陥輪側のロール剛性が減少する。そのことにより、ロール剛性が、上記適切に調整されたロール剛性配分からずれることとなる。本項に記載の態様は、そのことに考慮したものであり、前輪側,後輪側の一方においてスプリングが失陥した場合に、正常輪側のスタビライザ装置のロール剛性を低くすることで、上記ロール剛性配分のずれを抑制するような制御を実行する態様である。したがって、本項に記載の態様によれば、車両の操縦安定性等の悪化を軽減させることが可能である。
(7)前記スプリング失陥時制御部が、前輪側の左右のサスペンションスプリングの一方の失陥時において、その失陥に起因する車体の傾斜を抑制すべく前輪側の前記アクチュエータを制御するとともに、後輪側の前記スタビライザバーがロールモーメントの増加によってもロール抑制力を発揮しないように、後輪側の前記アクチュエータを制御するものとされた(6)項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項の態様は、正常輪側のスタビライザ装置のロール剛性を低くする態様の一態様である。アンダーステア気味の旋回特性を得ようとする場合、ロール剛性配分の後輪側への偏りをできるだけ抑制することが望ましい。本項に記載の態様は、そのことに鑑みた態様であり、前輪側のスプリングが失陥した場合に、正常輪側である後輪側のスタビライザ装置の剛性をなくすような制御を行う態様である。したがって、本項に記載の態様によれば、後輪側へのロール剛性配分の偏りを可及的に小さくすることが可能であり、そのことによって、車両の操縦安定性の低下をより確実に軽減させることが可能である。
(8)前記スタビライザバーが、
それぞれが、車幅方向に延びる1つの軸線上に配設されるトーションバー部と、そのトーションバー部に連続してそのトーションバー部と交差して延びるとともに先端部において前記車輪保持部材に連結されるアーム部とを有する1対のスタビライザバー部材を含んで構成され、
前記アクチュエータが、前記1対のスタビライザバー部材のトーションバー部を前記軸線のまわりに相対回転させるものである(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、スタビライザ装置の具体的構造に関する限定を加えた態様である。本項の態様によれば、スタビライザバーが発揮するロール抑制力を効率的に変更可能であり、例えば、上述したアクティブ制御を容易に実行することが可能である。
(9)前記アクチュエータが、ハウジングと、それぞれがそのハウジングに支持されて配設された電動モータおよびその電動モータの回転を減速させる減速機とを含んで構成され、前記1対のスタビライザバー部材の一方のトーションバー部が前記ハウジングに相対回転不能に接続され、他方のトーションバー部が前記減速機の出力部に相対回転不能に接続された(8)項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項に記載の態様は、上記構造のアクティブスタビライザシステムにおいて、アクチュエータを電動のものとした態様、つまり、電動のアクティブスタビライザシステムにおいて具体的な構造を限定した態様である。本項の態様においては、電動モータへ供給される電力を制御することにより、容易にロール抑制力を変更することができることから、本項の態様によれば、制御性の良好なアクティブスタビライザシステムが実現する。
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
≪スタビライザシステムの構成≫
図1に、請求可能発明の一実施例である車両用スタビライザシステム10を概念的に示す。本スタビライザシステム10は、車両の前輪側、後輪側の各々に配設された2つのスタビライザ装置14を含んで構成されている。スタビライザ装置14はそれぞれ、両端部において左右の車輪16を保持する車輪保持部材の各々に連結部材としてのリンクロッド18を介して連結されたスタビライザバー20を備えている(図2参照)。そのスタビライザバー20は、中央部で分割されており、一対のスタビライザバー部材、すなわち右スタビライザバー部材22と左スタビライザバー部材24とを含む構成のものとされている。それら一対のスタビライザバー部材22,24がアクチュエータ30を介して相対回転可能に接続されており、大まかにいえば、スタビライザ装置14は、アクチュエータ30が、左右のスタビライザバー部材22,24を相対回転させることによって(図の矢印,点線矢印を参照のこと)、スタビライザバー20全体の見かけ上の剛性を変化させて車体のロール抑制を行う。
図2には、一方のスタビライザ装置14の車幅方向の中央から一方側の車輪16にかけての部分が概略的に示されている。本スタビライザシステム10が装備される車両は、それぞれが4つの車輪16の各々に対して設けられた4つの独立懸架式のサスペンション装置38を含んで構成されている。このサスペンション装置38は、一般によく知られたダブルウィシュボーン式のものであり、一端部が車体に回動可能に連結されるとともに他端部が車輪16に連結された車輪保持部材としてのアッパアーム42およびロアアーム44を備えている。それらアッパアーム42およびロアアーム44は、車輪16と車体との接近離間(相対的な上下動の意味)に伴い、上記一端部(車体側)を中心に回動させられ、上記他端部(車輪側)が車体に対して上下させられる。また、サスペンション装置38は、ショックアブソーバ46と、サスペンションスプリング48(本装置では「エアばね」である)とを備えている。それらショックアブソーバ46およびスプリング48は、それぞれ、それらの一端部が車体側のマウント部に、他端部がロアアーム44に連結されている。このような構造から、サスペンション装置38は、車輪16と車体とを弾性的に相互支持するとともに、それらの接近離間に伴う振動に対する減衰力を発生させる機能を果たすものとなっている。
スタビライザ装置14は、先に説明した一対のスタビライザバーである右スタビライザバー部材22と左スタビライザバー部材24とを備える(図2には、右スタビライザバー部材22および左スタビライザバー部材24の一方が示されている)。各スタビライザバー部材22,24は、それぞれ、略車幅方向に延びるトーションバー部60と、トーションバー部60と一体化されてそれと交差して概ね車両前方あるいは後方に延びるアーム部62とに区分することができる。各スタビライザバー部材22,24のトーションバー部60は、アーム部62に近い箇所において、車体の一部であるスタビライザ装置配設部64に固定的に設けられた支持部材66によって回転可能に支持され、互いに同軸に配置されている。それらトーションバー部60の端部(車幅方向における中央側の端部)の間には、上述のアクチュエータ30が配設されており、後に詳しく説明するが、各トーションバー部60の端部は、それぞれ、そのアクチュエータ30に接続されている。一方、アーム部62の端部(トーションバー部60側とは反対側の端部)は、リンクロッド18を介して上述のロアアーム44に設けられたスタビライザバー連結部68に連結されている。
アクチュエータ30は、図3に模式的に示すように、電動モータ70と、電動モータ70の回転を減速する減速機72とを含んで構成されている。これら電動モータ70および減速機72は、アクチュエータ30の外殻部材であるハウジング74内に設けられている。ハウジング74は、ハウジング保持部材76によって、回転可能かつ軸方向(略車幅方向)に移動不能に、車体に設けられたスタビライザ装置配設部64に保持されている。図2から解るように、ハウジング74の両端部の各々には、2つの出力軸80,82の各々が延び出すように配設されている。それら出力軸80,82のハウジング74から延び出した側の端部が、それぞれ、各スタビライザバー部材22,24の端部と、セレーション嵌合によって相対回転不能に接続されている。また、図3から解るように、一方の出力軸80は、ハウジング74の端部に固定して接続されており、また、他方の出力軸82は、ハウジング74内に延び入る状態で配設されるとともに、ハウジング74に対して回転可能かつ軸方向に移動不能に支持されている。その出力軸82のハウジング74内に存在する一方の端部が、後に詳しく説明するように、減速機72に接続され、その出力軸82は、減速機72の出力軸を兼ねるものとなっている。
電動モータ70は、ハウジング74の周壁の内面に沿って一円周上に固定して配置された複数のステータコイル84と、ハウジング74に回転可能に保持された中空状のモータ軸86と、モータ軸86の外周においてステータコイル84と向きあうようにして一円周上に固定して配設された永久磁石88とを含んで構成されている。電動モータ70は、ステータコイル84がステータとして機能し、永久磁石88がロータとして機能するモータであり、3相のDCブラシレスモータとされている。
減速機72は、波動発生器(ウェーブジェネレータ)90,フレキシブルギヤ(フレクスプライン)92およびリングギヤ(サーキュラスプライン)94を備え、ハーモニックギヤ機構(ハーモニックドライブ機構(登録商標),ストレイン・ウェーブ・ギヤリング機構等とも呼ばれる)として構成されている。波動発生器90は、楕円状カムと、それの外周に嵌められたボール・ベアリングとを含んで構成されるものであり、モータ軸86の一端部に固定されている。フレキシブルギヤ92は、周壁部が弾性変形可能なカップ形状をなすものとされており、周壁部の開口側の外周に複数の歯が形成されている。このフレキシブルギヤ92は、先に説明した出力軸82に接続され、それによって支持されている。詳しく言えば、出力軸82は、モータ軸86を貫通しており、それから延び出す端部にフレキシブルギヤ92の底部が固着されることで、フレキシブルギヤ92と出力軸82とが接続されているのである。リングギヤ94は、概してリング状をなして内周に複数(フレキシブルギヤの歯数よりやや多い数、例えば2つ多い数)の歯が形成されたものであり、ハウジング74に固定されている。フレキシブルギヤ92は、その周壁部が波動発生器90に外嵌して楕円状に弾性変形させられ、楕円の長軸方向に位置する2箇所においてリングギヤ94と噛合し、他の箇所では噛合しない状態とされている。波動発生器90が1回転(360度)すると、つまり、電動モータ70のモータ軸86が1回転すると、フレキシブルギヤ92とリングギヤ94とが、それらの歯数の差分だけ相対回転させられる。
以上の構成から、車両の旋回等によって、車体に左右の車輪16の一方と車体との距離と左右の車輪16の他方と車体との距離とを相対変化させる力、すなわちロールモーメントが作用する場合、右スタビライザバー部材22と左スタビライザバー部材24とを相対回転させる力、つまり、アクチュエータ30に対する外部入力が作用する。その場合、電動モータ70が発生する力であるモータ力(電動モータ70が回転モータであることから、回転トルクと考えることができるため、回転トルクと呼ぶ場合がある)によって、アクチュエータ30がその外部入力に釣り合う力をアクチュエータ力として発揮しているときには、それら2つのスタビライザバー部材22,24によって構成された1つのスタビライザバー20が捩じられることになる。この捩りにより生じる弾性力は、ロールモーメントに対抗する力、すなわち、ロール抑制力となる。そして、モータ力によってアクチュエータ30の出力軸80,82の相対回転位置、つまり、アクチュエータ30の回転位置(動作位置のことである)を変化させることで、右スタビライザバー部材22と左スタビライザバー部材24との相対回転位置を変化させれば、車体が同じロールモーメントを受けている場合、言い換えれば、同じロール抑制力を発生させている場合であっても、車体のロール量を変化させることが可能となる。本スタビライザ装置14は、そのようにして、スタビライザバー20の見かけ上の剛性、すなわち、スタビライザ剛性を変化させることが可能な装置とされているのである。
なお、アクチュエータ30には、ハウジング74内に、モータ軸86の回転角度、すなわち、電動モータ70の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ100が設けられている。モータ回転角センサ100は、本アクチュエータ30ではエンコーダを主体とするものであり、左右のスタビライザバー部材22,24の相対回転角度(相対回転位置)、言い換えれば、アクチュエータ30の動作位置すなわち回転位置を指標するものとして、アクチュエータ30の制御、つまり、スタビライザ装置14の制御に利用される。
アクチュエータ30が備える電動モータ70には、図1に示すように、電源としてのバッテリ102から電力が供給される。本スタビライザシステム10では、そのバッテリ102と、2つのスタビライザ装置14の各々との間に、それぞれ、インバータ104が設けられている。それらインバータ104は駆動回路として機能するものであり、2つのスタビライザ装置14の各々が有する電動モータ70には、2つのインバータ104の各々を介して電力が供給される。なお、電動モータ70は定電圧駆動されることから、供給電力量は、供給電流量を変更することによって変更され、電動モータ70は、その供給電流量に応じた力を発揮することとなる。ちなみに、供給電流量は、インバータ104がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。
本スタビライザシステム10は、図1に示すように、スタビライザ装置14、詳しくは、アクチュエータ30の作動を制御する制御装置であるスタビライザ電子制御ユニット(ECU)110(以下、単に「ECU110」という場合がある)を備えている。そのECU110は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されており、ECU110には、上記モータ回転角センサ100とともに、操舵量としてのステアリング操作部材の操作量であるステアリングホイールの操作角を検出するための操作角センサ120,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ122,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ124が接続されている。(図1では、それぞれ「θ」,「δ」,「v」,「Gy」と表されている)。また、ECU110は、インバータ104にも接続され、ECU110は、インバータ104を制御することで、アクチュエータ30の回転位置を制御するものとされている。ECU110のコンピュータが備えるROMには、後に説明するスタビライザ制御プログラム、スタビライザ装置14の制御に関する各種のデータ等が記憶されている。
≪スタビライザシステムにおいて実行される制御等≫
本スタビライザシステム10では、原則として、車両の旋回状態に基づいてアクチュエータ30の目標動作量を決定し、アクチュエータ30の実際の動作量がその目標動作量となるようにアクチュエータ30を制御することにより、スタビライザ剛性を変化させる。つまり、車体が受けるロールモーメント等に応じて車体のロール抑制効果すなわち車体のロール量をアクティブに制御することが可能とされている(以下、この制御を「アクティブ制御」と呼ぶ場合がある)。なお、このアクティブ制御においては、特に、車両が停止しているかまたはほぼ直進している状態、すなわち非旋回状態である場合に、スタビライザバー20がロール抑制力を発揮しないようにアクチュエータ30を制御するフリー制御を実行するようにされている。本スタビライザシステム10では、上記フリー制御の実行中に、モータ回転角センサ100の検出値に基づいて、スプリング48の失陥に起因する車体の傾斜を検出するスプリング失陥検出処理を実行するようにされている。そして、スプリング失陥が認定された場合には、そのスプリング失陥に対応した制御(以下、この制御を「スプリング失陥時制御」と呼ぶ場合がある)が実行される。
(A)アクティブ制御
アクティブ制御では、車体が受けるロールモーメントを指標するロールモーメント指標量に基づいて、スタビライザバー20の捩れ剛性を適正なものとすべく、アクチュエータ30の目標動作量である目標回転位置が決定され、アクチュエータ30の回転位置がその目標回転位置となるように制御される。つまり、ロールモーメント指標量に基づき、車体のロール量が適切な量となるようなロール抑制力を発生させるために、1対のスタビライザバー部材22,24を適正な角度だけ相対回転させるようにアクチュエータ30が制御される。なお、ここでいうアクチュエータ30の回転位置とは、車体にロールモーメントが全く作用しない状態である基準状態でのアクチュエータ30の回転位置を中立位置とした場合において、その中立位置からの回転量を意味する。つまり、アクチュエータ30の動作位置の中立位置に対する変位量である対中立位置変位量を意味する。また、アクチュエータ30の回転位置と電動モータ70の回転角であるモータ回転角とは対応関係にあるため、実際の制御では、アクチュエータ30の回転位置に代えてモータ回転角が使用される。
アクティブ制御をより具体的に説明すれば、本実施例においては、上記ロールモーメント指標量としての横加速度に基づいて、アクチュエータ30の目標回転位置(目標動作量の一種である)としての目標モータ回転角θ*が決定される。詳しく言えば、ステアリングホイールの操作角と車両走行速度に基づいて推定された推定横加速度Gycと、実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr
ここで、K1,K2はゲインであり、そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、目標モータ回転角θ*が決定される。そして、その目標モータ回転角θ*と実際のモータ回転角である実モータ回転角θとの偏差に基づくフィードバック制御手法に従って、電動モータ70への目標供給電流i*が決定され、つまり、アクチュエータ30の回転位置を目標回転位置に近づけるべく、あるいは、目標回転位置に維持すべく、適切な電力がアクチュエータ30の電動モータ70に供給されるのである。
アクティブ制御の実行中において、車両が一定時間以上継続して非旋回状態である場合に、フリー制御が実行される。フリー制御では、電動モータ70の各相への通電が遮断された通電形態とされる。そのことによって、あたかも、電動モータ70の各相とインバータ104との結線が切断されたに近い状態とされる。フリー制御では、概ね電動モータ70に起電力が発生せず、電動モータ70による制動効果が殆ど得られないことになる。したがって、フリー制御を実行すれば、スタビライザバー20が剛性を殆ど発揮し得ない状態となり、車両はスタビライザを備えていないに近い状態となる。
なお、通常時、つまり、前輪側、後輪側のいずれにおいてもサスペンションスプリング48が失陥していない場合には、前輪側、後輪側とも上述のアクティブ制御が実行される。
(B)スプリング失陥検出処理
スプリング失陥検出処理は、前後左右のいずれか1輪のサスペンションスプリング48がエア室のバースト等により失陥した場合に、その失陥に伴う車体の傾斜を検出することにより、どの車輪が失陥したかを検出する処理である。図4に、一例として、左前輪16flに対して設けられたスプリング48が失陥した場合における失陥輪側(この場合は前輪側)のスタビライザ装置14およびサスペンション装置38を正面から見た図を示す。この図からわかるように、スプリング48が失陥すれば、バウンドストッパが機能するまで車体と車輪16flとが接近し、それに伴って車体が傾斜させられる。図に破線で示す通常の車体の姿勢から、実線で示すように車体が傾斜するのである。ここで車両が非旋回状態であって上述のフリー制御が実行されている場合には、通常はアクチュエータ30の動作位置はほぼ中立位置となるが、スプリング失陥時には、車体の傾斜(左右各々の車輪と車体との離間距離差)に伴って、アクチュエータ動作位置が中立位置からはずれたものとなる。スプリング48が失陥した場合の車体と車輪との離間距離差は車種によって既知のものであり、それに応じたアクチュエータ動作位置も既知である。そこで本スタビライザシステム10においては、設定時間継続してフリー制御が実行されている場合に、スプリング失陥検出処理を実行し、アクチュエータ30の動作位置(具体的には、それに対応する実モータ回転角θの絶対値)が設定閾値を超えている場合にスプリング48が失陥状態であることを認定するようにされている。さらに、実モータ回転角θの中立位置からの回転方向によって左右のいずれの車輪16のスプリング48が失陥したかについて認定可能とされている。このスプリング失陥検出処理は、前輪側と後輪側とのそれぞれについて実行される。
(C)スプリング失陥時制御
スプリング失陥が検出されれば、失陥輪側のスタビライザ装置14について、その傾きを抑制するとともに、旋回時に発生するロールモーメントを抑制するロール抑制力を発揮させる制御が実行される(以下、この制御を「失陥輪側制御」と呼ぶ場合がある)。一方、正常輪側のスタビライザ装置14について、ロール剛性を低減させるように制御が実行される(以下、この制御を「正常輪側制御」と呼ぶ場合がある)。
(i)失陥輪側制御
上述のように、スプリング48が失陥した場合の車体の傾斜の大きさは既知であり、それに対応して、本実施例においては、車両が非旋回状態である場合の車体の傾斜を解消する大きさのロール抑制力が失陥時基準ロール抑制力として予め設定されている。失陥輪側制御では、通常のアクティブ制御において車両の旋回状態に応じて決定されるロール抑制力に、その失陥時基準ロール抑制力を加算したロール抑制力をスタビライザバー20が発揮するようにアクチュエータ30の制御が実行される。具体的には、失陥時基準ロール抑制力に対応するモータ回転角の補正量θ0が予め設定されており、上述のアクティブ制御において決定された目標モータ回転角θ*に、その補正量θ0を加算した値を新たな目標モータ回転角θ*として制御が実行される。失陥輪側のスタビライザ装置14は、失陥による車体の傾斜を解消しつつ、旋回に起因するロールモーメントを抑制するように制御が実行されるのである。
(ii)正常輪側制御
前輪側と後輪側とのロール剛性配分は、予め適切に調整された状態とされている。一般的には、駆動源が前方に配置されたいわゆるFF(フロントエンジンフロントドライブ)またはFR(フロントエンジンリヤドライブ)の車両について、旋回特性をアンダーステア気味にすると言った理由から、前輪側のロール剛性配分が大きくされており、具体的には、前輪側と後輪側とのロール剛性配分は、前輪側が60〜65%に対して後輪側が40〜35%となるように調整されている。しかし、4つの車輪のいずれかに対応するサスペンション装置38のスプリング48が失陥すれば、その失陥した側のサスペンション装置38のロール剛性が減少し、その失陥輪側のサスペンション装置38とスタビライザ装置14とが共同して発揮するロール剛性が減少する。このような状態において、正常輪側のスタビライザ装置14について、全てのスプリング48が正常である場合と同様の制御を実行すれば、正常輪側のロール剛性配分が増加することとなり、前輪側と後輪側とのロール剛性配分が、適切に調整された状態からずれることとなる。そこで、正常輪側については、失陥輪側のロール剛性の減少に応じてスタビライザ装置14のロール剛性を小さくすることにより、ロール剛性配分のずれを抑制するように制御を実行して、操縦安定性を確保することとされている。
ちなみに、正常輪側制御では、正常輪側が前輪側であるか、後輪側であるかによって制御が異なるようにされている。正常輪側が前輪側である場合、つまり、後輪側においてスプリング48が失陥している場合、前輪側は、通常のアクティブ制御において決定された目標モータ回転角θ*に、1より小さい値であるゲインK’を積算することにより、新たな目標モータ回転角θ*が決定され、その目標モータ回転角θ*を実現するように電動モータ70が制御される。詳しく言えば、図5にグラフで示すように、ロール抑制力の目標値(すなわち目標モータ回転角θ*)は、ロールモーメント指標量である制御横加速度Gy*の増加に応じて増加させられる。スプリング失陥がない場合の通常のアクティブ制御においては、そのロール抑制力を増加させる割合であるゲインKが1とされている。これに対して、後輪側のスプリング48が失陥した場合の正常輪側である前輪側のスタビライザ装置14は、このゲインKを1より小さいゲインK’とすることにより、ロール抑制力の増加割合が小さくなるような、つまり、スタビライザバー20のロール剛性を減少させるような制御が実行されるのである。
正常輪側が後輪側である場合、つまり、前輪側においてスプリング48が失陥している場合、後輪側は、スタビライザバー20のロール剛性を0とする制御が実行される。詳しく言えば、上述のように前輪側のロール剛性配分が予め大きくされている場合には、後輪側の左右いずれかのスプリング48が失陥したと仮定すると、後輪側はもともとロール剛性配分が小さいので、失陥によりロール剛性が減少する割合も小さく、それに応じて正常輪側である前輪側のロール剛性を低減させる割合も少なくて済む。それに対して、前輪側の左右のいずれかのスプリング48が失陥した場合には、前輪側のロール剛性配分が大きいので、前輪側の失陥によるロール剛性配分のずれを抑制するためには、後輪側のスタビライザ装置14のロール剛性を可及的に小さくことが望ましく、そのことを考慮して、スタビライザバー20がロール抑制力を発揮しないように制御される。具体的には、後輪側のスタビライザ装置14については、上述のフリー制御が実行される。
≪スタビライザ制御プログラム≫
本スタビライザシステムの制御は、図6にフローチャートを示すスタビライザ制御プログラムが、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数m〜数十msec)をおいてスタビライザECU110により繰り返し実行されることによって行われる。なお、図6に示すフローチャートは、前輪側と後輪側との一方に対して実行されるプログラムであり、実際には、前輪側および後輪側のスタビライザ装置14のそれぞれについて、そのプログラムが実行される。以下に、スタビライザ制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、詳しく説明するが、説明の冗長化を避けるべく、前輪側、後輪側を共通して説明しすることとする。つまり、スプリング失陥時においては、正常輪側,スプリング48が失陥している車輪側を並行して説明することとする。
スタビライザ制御プログラムでは、まず、ステップ1(以下、単に「S1」と略す。他のステップについても同様とする)において、目標モータ回転角θ*を補正するための補正量θ0およびゲインKが特定される。補正量θ0は初期値が0とされており、ゲインKは初期値が1とされている。これらの値は、後に別の値が決定された場合には、その決定された値とされる。次に、S2において、車速vとステアリングホイールの操作角δとが、それぞれ車速センサ122および操作角センサ120の検出値に基づいて取得される。
次に、S3,S4において、車両の旋回状態が判断される。S3では、車速vが設定閾値v1より大きいか否かが判定され、S4では、ステアリングホイールの操作角δが設定閾値δ1より大きいか否かが判定される。車速vおよび操作角δのいずれもが、設定閾値v1,δ1より大きい場合には、車両が旋回している状態であると判断されてS5に進む。
S5において、時間カウンタtが0とされる。この時間カウンタtは、車両の非旋回状態が継続している時間を表すカウンタであり、車両が旋回状態であると判断された場合には初期値0に戻されるのである。次に、S6において、S2において取得された車速vおよび操作角δに基づいて推定横加速度Gycが推定される。ECU110には、車速vと操作角δとをパラメータとする推定横加速度Gycに関するマップデータが格納されており、推定横加速度Gycは、そのマップデータを参照することによって推定される。続いて、S7において、車体に実際に発生する横加速度である実横加速度Gyrが、横加速度センサ124の検出値に基づいて取得される。続くS8において、制御横加速度Gy*が、上述のように推定横加速度Gycと実横加速度Gyrとから決定され、S9において、その制御横加速度Gy*に基づき、目標モータ回転角θ*が決定される。ECU110内には、制御横加速度Gy*をパラメータとする目標モータ回転角θ*のマップデータが格納されており、S9では、そのマップデータを参照して、目標モータ回転角θ*が決定される。
次に、S10において、目標モータ回転角θ*がS1において特定された補正量θ0およびゲインKに基づいて補正される。なお、補正量θ0が0であり、かつ、ゲインKが初期値である1とされている場合には、実質的には補正は行われない。つまり、前輪側、後輪側ともスプリング48が失陥していない場合には、通常のアクティブ制御を実行するための目標モータ回転角θ*として決定されるのである。それに対して、スプリング48が失陥している場合には、後述するように、失陥検出プログラムにおいて失陥輪側のスタビライザ装置14について補正量θ0が失陥時基準ロール抑制力を発揮する値に設定されており、正常輪側のスタビライザ装置14については、ロール剛性を減少させるようにゲインKが設定され、それに基づいた補正が実行される。具体的に言えば、後輪側のスプリングが失陥した場合には、前輪側のスタビライザ装置14のゲインKが、前述の1より小さい値であるK’(≠0)に決定され、正常輪側である前輪側のスタビライザバー20のロール剛性がその値に応じた大きさに低下させられることになる。また、前輪側のスプリング48が失陥した場合には、後輪側のスタビライザバー20がロール抑制力を発揮しないような制御を実行させるため、便宜上ゲインKが0に設定される。ゲインKが0とされた場合には、続くS11の判定の結果、S17に進み、目標モータ回転角θ*の値に拘わらずフリー制御が実行される(実際には、フリー制御状態とするための指令がインバータ104に出力される)。また、失陥輪側のスタビライザ装置14については、補正量θ0に応じた失陥時基準ロール抑制力が上乗せされた目標モータ回転角θ*となるため、スプリング48の失陥による車体の傾斜が抑制されることになる。
S11の判定において、ゲインKが0でない場合には、S12およびS13に進んで、S9において決定された目標モータ回転角θ*に基づくアクティブ制御が実行される。具体的には、S12において、先に説明したように、目標モータ回転角θ*に基づいて目標供給電流i*が決定され、S13において、その目標供給電流i*についての制御信号がインバータ104に出力される。以上で、本プログラムの1回の実行が終了する。
先に説明したS3およびS4において、車速vまたは操作角δのいずれかが設定閾値v1,δ1以下である場合、すなわち、車両が停止しているか、または、車両が走行していてもほぼ直進状態であるとみなせる場合には、S14に進んでフリー制御を実行すべきか否かが判断される。まず、S14において補正量θ0が初期値0であるか否かが判定される。補正量θ0が0でない場合とは、スタビライザバー20がスプリング失陥に対応する失陥時基準ロール抑制力を加算したロール抑制力を発揮するように補正量θ0の値が設定されている場合であるので、車両が非旋回状態であっても、S5以下に進んで、補正量θ0を加算した目標モータ回転角θ*に基づくアクティブ制御が実行される。
一方、4つの車輪16の全てのスプリング48が正常であり、補正量θ0が0に設定されている場合には、S15およびS16に進んで車両が設定時間継続して非旋回状態であるか否かが判断される。具体的には、S15において車両の非旋回状態が継続している時間を示す時間カウンタtに1が加算され、S16においてその時間tが設定値Tより大きいか否かが判定される。時間カウンタtが設定値T以下である場合には、S16の判定がNOとなりS6以下の制御が実行される。時間tが設定時間Tより大きい場合には、S17に進んでフリー制御が実行される。具体的には、先に説明したフリー制御に基づいて電動モータ70が作動する旨の指令が、インバータ104に発せられる。以上で本プログラムの1回の実行が終了する。
≪失陥検出プログラム≫
サスペンション装置38のスプリング失陥検出処理は、図7にフローチャートを示す失陥検出プログラムが、前輪側と後輪側とのスタビライザ装置14のそれぞれについて、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数m〜数十msec)をおいてECU110により繰り返し実行されることによって行われる。なお、このプログラムは、先のスタビライザ制御プログラムと並行して行われるが、いずれかの車輪16に対して設けられたスプリング48が一旦失陥したと認定された後には、実行されないようにされている。以下に、スプリング失陥検出処理のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、詳しく説明する。
失陥検出プログラムでは、まずS21において、現在フリー制御が実行中であるか否かが判断される。フリー制御が実行されていない場合には、失陥検出処理は行われない。すなわち、S22において、フリー制御が継続して実行されている時間を示す時間カウンタtFが0とされて、本プログラムの1回の実行が終了する。
フリー制御が実行中である場合には、S23に進んで、時間カウンタtFに1が加算される。次にS24において、その時間カウンタtFの値が設定値TFを超えているか否かが判断される。時間カウンタtFの値が設定値TF以下である場合には、S24の判定がNOとなり、本プログラムの1回の実行が終了する。フリー制御が設定値TFに対応する時間を超えて連続して実行されている場合には、S25以降に進んで、失陥検出処理が実行される。
S25において、モータ回転角センサ100の検出値に基づいて実モータ回転角θが取得される。続くS26において、実モータ回転角θの絶対値が設定閾値θ’以上であるか否かが判断される。実モータ回転角θの絶対値が設定閾値θ’より小さい場合には、その電動モータ70を備えるスタビライザ装置が設けられている側の左右のスプリング48がいずれも失陥していないと判断されて、本プログラムの1回の実行が終了する。S26において実モータ回転角θの絶対値が設定閾値θ’以上である場合には、S27に進んで左右のいずれのスプリング48が失陥していることが認定される。実モータ回転角θの符号に基づいて(中立位置からの回転方向に基づいて)左右のいずれのスプリング48が失陥しているかを含めて認定が行われる。次にS28において、失陥輪側のスタビライザ装置14に対する目標モータ回転角θ*の補正量θ0の値と、正常輪側のスタビライザ装置14に対するゲインKの値とがが決定される。補正量θ0は、予め定められた大きさであって、左右のいずれのスプリング48が失陥しているかによって符号が異なる値とされている。正常輪側のスタビライザ装置14のゲインKは、前輪側の左右のいずれかのスプリング48が失陥した場合には0とされ、後輪側のいずれかのスプリング48が失陥した場合には、上述のゲインK’とされる。以上で本プログラムの1回の実行が終了する。
≪制御装置の機能構成≫
以上のようなスタビライザ制御プログラムが実行されて機能する本スタビライザシステム10の制御装置であるECU110は、図8に示すように、S1〜S17の処理を実行する機能部としてアクティブ制御部130を、そのアクティブ制御部130のうち特にS1およびS10の処理を実行する機能部としてスプリング失陥時制御部132を、S21〜S28の処理を実行する機能部としてスプリング失陥検出部134を、それぞれ有している。
実施例のスタビライザシステムの全体構成を示す模式図である。 図1のスタビライザシステムが備えるスタビライザ装置を示す概略図である。 図1のスタビライザ装置を構成するアクチュエータを示す概略断面図である。 図1のスタビライザシステムを備えた車両のスプリング失陥状態を概念的に示す図である。 図1のスタビライザ装置の発揮するロール抑制力を示すグラフである。 図1のスタビライザシステムにおいて実行されるスタビライザ制御プログラムを示すフローチャートである。 図1のスタビライザシステムにおいて実行される失陥検出プログラムを示すフローチャートである。 制御装置としてのスタビライザ電子制御ユニットの機能を示すブロック図である。
符号の説明
10:車両用スタビライザシステム 14:スタビライザ装置 18:リンクロッド 20:スタビライザバー 22:右スタビライザバー部材 24:左スタビライザバー部材 30:アクチュエータ 60:トーションバー部 62:アーム部 70:電動モータ 72:減速機 74:ハウジング 104:インバータ(駆動回路) 110:スタビライザ電子制御ユニット(ECU)(制御装置) 120:操作角センサ 122:車速センサ 124:横加速度センサ 130:アクティブ制御部 132:スプリング失陥時制御部 134:スプリング失陥検出部

Claims (4)

  1. 両端部の各々が左右の車輪の各々を保持する車輪保持部材に連結されたスタビライザバーと、
    そのスタビライザバーが発揮するロール抑制力を変化させるアクチュエータと、
    そのアクチュエータの作動を制御することで前記スタビライザバーが発揮するロール抑制力を制御する制御装置と
    を備えた車両用スタビライザシステムであって、
    前記制御装置が、左右のサスペンションスプリングの一方の失陥時において、その失陥に起因する車体の傾斜を抑制すべく前記アクチュエータを制御するスプリング失陥時制御部を有する車両用スタビライザシステム。
  2. 前記制御装置が、車両非旋回状態を基準として、車両旋回によって車体が受けるロールモーメントの増加に応じて前記スタビライザバーが発揮するロール抑制力を増加させるように、かつ、サスペンションスプリングが失陥していない場合に、車両非旋回状態において前記スタビライザバーがロール抑制力を発揮しないように、前記アクチュエータを制御するものとされ、
    前記スプリング失陥時制御部が、車両非旋回状態において車体が傾斜しないようなロール抑制力である失陥時基準ロール抑制力を前記スタビライザバーが発揮するように前記アクチュエータを制御するものとされた請求項1に記載の車両用スタビライザシステム。
  3. 当該スタビライザシステムが、前輪側,後輪側のそれぞれに、前記スタビライザバーおよび前記アクチュエータを備え、前記制御装置が、車両非旋回状態を基準として、車両旋回によって車体が受けるロールモーメントの増加に応じて前輪側,後輪側の各々の前記スタビライザバーが発揮するロール抑制力を増加させるように、前輪側,後輪側の各々の前記アクチュエータを制御するものとされ、
    前記スプリング失陥時制御部が、
    前輪側と後輪側との一方の左右のサスペンションスプリングの一方の失陥時において、その失陥に起因する車体の傾斜を抑制すべく前記前輪側と後輪側との一方の前記アクチュエータを制御するとともに、サスペンションスプリングが失陥していない前輪側と後輪側との他方の前記スタビライザバーのロールモーメントの増加に対するロール抑制力の増加割合をサスペンションスプリングが失陥していない場合と比較して小さくするように、その他方の前記アクチュエータを制御するものとされた請求項1または請求項2に記載の車両用スタビライザシステム。
  4. 前記スプリング失陥時制御部が、前輪側の左右のサスペンションスプリングの一方の失陥時において、その失陥に起因する車体の傾斜を抑制すべく前輪側の前記アクチュエータを制御するとともに、後輪側の前記スタビライザバーがロールモーメントの増加によってもロール抑制力を発揮しないように、後輪側の前記アクチュエータを制御するものとされた請求項3に記載の車両用スタビライザシステム。
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