JP2007185319A5 - - Google Patents
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Description
本発明はプレフィルドシリンジに関する。さらに詳しくは、バレル内がガスケットにより区画され薬液もしくは溶解液および粉末薬剤が保存され、注射針が着脱可能に取り付けられるノズル部を備えるプレフィルドシリンジに関する。
従来の薬液の調製は、使用直前までアンプルやバイアルなどに別々に保存しておき、用時に開封して使い捨てシリンジや移注針などを用いて調製し使用していた。しかし、この方法は操作が煩雑であるため調製に手間と時間を要する上に、空中浮遊細菌の侵入のおそれがあり、またアンプルにおけるガラス片や、バイアルにおけるゴム片などのような異物が混入(コアリング)するおそれが高かった。これらの課題を解決するものとして、製剤や薬液の保存時の安定性を確保した容器兼用注射器としてのプレフィルドシリンジが市販され、利便性に優れるため、多くの病医院で採用されるようになってきている。
従来のプレフィルドシリンジとしては、特許文献1が挙げられる。特許文献1中、Fig.1に示されるように、両端の開口した筒体11の先端および基端にストッパー17,12が、液密かつ摺動自在に挿入されると共に、前記ストッパー17,12間に薬液が充填されて安全に保管することができるようになっている。そして、前記筒体11の先端には注射針13を取り付けられた針ホルダー18が液密に嵌着され、筒体11の後端にはフィンガグリップ16が嵌着されている。前記針ホルダー18の基端側の内部は、前記先端ストッパー17の外径より若干大きい内径を有し、かつ先端ストッパー17の長さより若干長い軸長を有する先端ストッパー収容部を有しており、内壁には基端から先端の注射針13の内孔までを連絡する1本または複数本のみぞ穴22が設けられており、前記筒体11の後端から挿入して前記基端ストッパー12に接続したプランジャーロッド15を介して前記基端ストッパー12を前進させると、先端および基端ストッパー17,12間の筒体11内に保管されていた薬液が前方へ移動し、先端ストッパー17が先端ストッパー収容部に入り込むことによって、密閉が解除されて筒体11内の薬液がみぞ穴22を通って前記注射針13の内孔に流れて、注射できるようになっている。
前記プレフィルドシリンジでは、前記プランジャーロッド15を押すまでは筒体11内に保管されている薬液は外部の細菌からも遮断されているため安全であり、事前に注射針13を取り付けておけば利便性も良くプレフィルドシリンジの構造として最も適したものということができる。
ところで、このような構造のプレフィルドシリンジでは、コアリングの危険性を解消することはできるものの、注射をするにあたり、前記先端ストッパー17を前記筒体11から針ホルダー18の先端ストッパー収容部内に前進させて注射の準備を進める際、筒体11内に保管してあった薬液の中に残留していた気泡を先行して外部へ放出する必要があるが、前記先端ストッパー17の後面や基端ストッパー12の前面が筒体11の軸に垂直な平滑面であるために、先端ストッパー17が前記先端ストッパー収容部に入り込んだ後、更に基端ストッパー12を前進させて薬液を押圧しても、該筒体11内の気泡が先端ストッパー17の後面で滞留し外部に放出し難いという問題があった。また、前記先端および基端ストッパー17,12はゴム製であるために、筒体11を形成するガラスやプラスチックス等と比べて前記気泡が周囲面に付着しやすく、この点からも前記気泡が前記針ホルダ18に取り付けられた注射針13から外部へ放出し難いという問題があった。
この課題を解消するものとして、特許文献2が挙げられる。特許文献2中のFIG.1に示されるように、先端及び基端が開口した円筒状のアンプル11と、該アンプル11内を前室及び後室に液密に区画する分離ストッパー23と、該分離ストッパー23よりも基端側に位置し前記アンプル11内を密封するプランジャ12と、該プランジャ12の基端に接続されるプランジャーロッド18と、前記分離ストッパー23よりも先端側に位置し前記アンプル11内を密封するシールストッパー20と、前記アンプル11の先端に液密に係合されて注射針15が取り付けられるニードルホルダ13と、前記アンプル11の基端部に設けられたプランジャーロッド18とを備え、前記アンプル11の分離ストッパー23とシールストッパー20の間には径方向外側に膨出する膨大部24が形成されている。
分離ストッパー23とプランジャ12の間のアンプル11内は後室を形成し溶解液が、分離ストッパー23とシールストッパー20の間のアンプル11内には前室を形成し粉末製剤が保管されている。前記ニードルホルダ13の基端側の内部は、前記シールストッパー20の外径より若干大きい内径を有し、かつシールストッパー20の長さより若干長い軸長を有するシールストッパー収容部を有しており、内壁には基端から先端の注射針15の内孔までを連絡する1本または複数本の溝孔27が設けられており、前記アンプル11の後端から挿入して前記シールストッパー20に接続したプランジャーロッド18を介して前記プランジャ12を前進させると、分離ストッパー23およびプランジャ12間のアンプル11内に保管されていた溶解液が前方へ移動し、分離ストッパー23の後端がアンプル11の膨大部24の後端に達すると、該膨大部24を介して溶解液が分離ストッパー23とシールストッパー20内にある前室内に流れ込み、薬剤を溶解する。このものは、前室の殆どが気体であり、溶解調製のために場合によっては激しく振とうする必要があるために、シールストッパー20の後面に気泡が付着し、外部への気泡の排出がし難いが、シールストッパー20後面の周端縁に数個の切欠29を設けることで、外部への気泡の排出をし易くしている(この他、例えば、特許文献3)。
しかしながら、前記シールストッパー20の後面の周端縁に設けられる切欠29は側面におよぶため、シール部の気密性を低下させてしまうし、溶解調整時にシールストッパー20が前進してもニードルホルダ13の基端側の内部にあるシールストッパー収容部に完全に収容される直前に切欠29を介して通液するため、ニードルホルダ13の内部にあるシールストッパー20の前方部分に若干のギャップが出来、患者への投与にあたりプランジャーロッド18を最後まで押し込む時に滑らかに移動せず違和感が生じるといった問題がある。また、薬剤と溶解液を溶解させるために振とうさせると、切欠29を介して溶解不充分なままの薬液がシールストッパー20の外周にあるシール間の凹みに入り込んで液噛みを生じ、通常、残液を極力少なくするために切欠29が小さく、前室に戻り難いといった問題もある。更には、プレフィルドシリンジの内容量が大きく内径が大きくなる場合など切欠29同士の距離が一定以上間隔を隔てた場合、操作者が切欠29の位置が上になるようにしていなければ、気泡がシールストッパー20の後面に付着し滞ったままになり、外部に気泡が排出されないおそれがあり、操作によるばらつきがあるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、プレフィルドシリンジによる注射の準備において、容器内に保存あるいは溶解調製される薬液の中の気泡を注射針を通して容易に外部へ放出することが可能になると共に、2室式のプレフィルドシリンジにおいては、溶解調製のための振とう時に薬液の溶解むらが生じるのを防止することが出来るプレフィルドシリンジを提供することを目的とする。
そこで本発明者は前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に想到した。すなわち本発明は、
(1)先端及び基端が開口したバレルと、該バレル内の基端側に位置し前記バレル内を液密に摺動自在な基端ガスケットと、前記バレル内の先端側に位置し前記バレル内を液密に摺動自在な先端ガスケットと、前記バレルの先端に設けられたノズル部とを備えるプレフィルドシリンジであって、前記ノズル部は、先端ガスケットを収容可能な先端ガスケット収容部と、該先端ガスケット収容部に前記先端ガスケットを収容した際に薬液が通過可能な内周壁に軸方向に延びる通液路を含むとともに、該通液路の先端の断面積は、基端の断面積よりも小さいことを特徴とするプレフィルドシリンジ;
(2)前記バレル内の先端ガスケットと前記基端ガスケットの間に位置し、前記バレル内を前室及び後室に液密に区画する中間ガスケットと、前記バレルの該中間ガスケットと先端ガスケットの間には径方向外側に膨出するバイパスが形成されている、(1)に記載のプレフィルドシリンジ;
(3)通液路の断面積は、基端から先端に向かい漸次小さくなることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のプレフィルドシリンジ;
(4)前記先端ガスケットの後端面の外周縁には、半径方向内方へ凹む凹状部が少なくとも一つ以上設けられている前記(1)〜(3)に記載のプレフィルドシリンジ;
(5)前記中間ガスケットは、前記バレルの内壁と接触し前記前室と後室を液密に区画する環状のシール部と、前記バイパスと協同して前記前室と前記後室とを連通する外壁に形成された螺旋状の溝であるバイパス連通路を含んでなる前記(2)〜(4)に記載のプレフィルドシリンジ。
(1)先端及び基端が開口したバレルと、該バレル内の基端側に位置し前記バレル内を液密に摺動自在な基端ガスケットと、前記バレル内の先端側に位置し前記バレル内を液密に摺動自在な先端ガスケットと、前記バレルの先端に設けられたノズル部とを備えるプレフィルドシリンジであって、前記ノズル部は、先端ガスケットを収容可能な先端ガスケット収容部と、該先端ガスケット収容部に前記先端ガスケットを収容した際に薬液が通過可能な内周壁に軸方向に延びる通液路を含むとともに、該通液路の先端の断面積は、基端の断面積よりも小さいことを特徴とするプレフィルドシリンジ;
(2)前記バレル内の先端ガスケットと前記基端ガスケットの間に位置し、前記バレル内を前室及び後室に液密に区画する中間ガスケットと、前記バレルの該中間ガスケットと先端ガスケットの間には径方向外側に膨出するバイパスが形成されている、(1)に記載のプレフィルドシリンジ;
(3)通液路の断面積は、基端から先端に向かい漸次小さくなることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のプレフィルドシリンジ;
(4)前記先端ガスケットの後端面の外周縁には、半径方向内方へ凹む凹状部が少なくとも一つ以上設けられている前記(1)〜(3)に記載のプレフィルドシリンジ;
(5)前記中間ガスケットは、前記バレルの内壁と接触し前記前室と後室を液密に区画する環状のシール部と、前記バイパスと協同して前記前室と前記後室とを連通する外壁に形成された螺旋状の溝であるバイパス連通路を含んでなる前記(2)〜(4)に記載のプレフィルドシリンジ。
本発明によれば、従来のプレフィルドシリンジによる薬液の調製操作の利便性、および保管性を損なうことなく、注射の準備に際してプレフィルドシリンジ内の薬液中の気泡を注射針を通じて外部に排出し易くすることが出来る。また、プレフィルドシリンジの内容量の増加に伴い内径が大きくなってもプレフィルドシリンジ内の薬液中の気泡を操作によるばらつきがなく確実に外部に排出し易くすることが出来る。更には、薬剤と溶解液を混合して溶解調製する様な2室式のプレフィルドシリンジにおいて、溶解調整時の浸とうによる薬液の溶解むらが生じるのを防止することが出来るプレフィルドシリンジを提供することができる。また、ノズル部材の構造も内壁面に凹状の通液路を設けるだけであるなど比較的簡単であり、金型設計に無理が無く、容易に製造することができる。
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は本発明の実施例1である2室式のプレフィルドシリンジを示す図である。図1はその横断面図であり、図2〜4は実施例1のプレフィルドシリンジの使用状況を説明する縦断面図である。図2は溶解調製する前の状態、および先端、中間ガスケットの位置を示す図であり、図3は溶解調製のためにプレフィルドシリンジを振とうしている状態、および先端、中間ガスケットの動作位置を示す図であり、図4は注射の準備として前室内の気泡を排出している状態、および先端、中間ガスケットの動作位置を示す図である。
図5は本発明の実施例2である1室式のプレフィルドシリンジを示す横断面図である。
図1〜図4は本発明の実施例1である2室式のプレフィルドシリンジを示す図である。図1はその横断面図であり、図2〜4は実施例1のプレフィルドシリンジの使用状況を説明する縦断面図である。図2は溶解調製する前の状態、および先端、中間ガスケットの位置を示す図であり、図3は溶解調製のためにプレフィルドシリンジを振とうしている状態、および先端、中間ガスケットの動作位置を示す図であり、図4は注射の準備として前室内の気泡を排出している状態、および先端、中間ガスケットの動作位置を示す図である。
図5は本発明の実施例2である1室式のプレフィルドシリンジを示す横断面図である。
本発明の一実施態様であるプレフィルドシリンジAは、上記特徴のうち、(1)、(2)、(3)および(5)を有し、さらに(4)を有することが好ましい。具体的には、図1〜図4に示すように、プレフィルドシリンジAは、先端及び基端が開口したバレル1と、該バレル1内を前室及び後室に液密に区画する中間ガスケット6と、該中間ガスケット6よりも基端側に位置し前記バレル1内を密封する基端ガスケット4と、該基端ガスケット4の基端に接続されるプランジャーロッド6と、前記中間ガスケット6よりも先端側に位置し前記バレル1内を密封する先端ガスケット8と、前記バレル1の先端に液密に係合されて注射針9が着脱可能に取り付けられるノズル部材2と、前記バレル1の基端部に設けられたフランジ部3とを備え、前記バレル1の中間ガスケット6と先端ガスケット8の間には径方向外側に膨出するバイパス11が形成されている2室式のプレフィルドシリンジであって、前記ノズル部材2は、先端ガスケット8を収容可能な先端ガスケット収容部23と、該先端ガスケット収容部23に前記先端ガスケット8を収容した際に薬液が通過可能な内周壁に少なくとも2つ以上軸方向に延びる通液路21を含むとともに、該通液路の先端の断面積が基端の断面積よりも小さくなるようになる通液路の拡幅部22を含んだ構成よりなる。
ノズル部材2は薬液LDを排出可能なノズル24を先端に有する、基端が開放された筒状部材であり、基端にはバレル1を液密に嵌着可能である。そして、その内部には後述する先端ガスケット8を収容可能な先端ガスケット収容部23が形成されている。また、図2に示すように、先端ガスケット収容部23の内壁には該先端ガスケット収容部23に先端ガスケット8を収容した際に薬液LDが通過可能な通液路21が形成されている。この通液路21は先端ガスケット収容部23の側壁と天面に凹設された溝であり、その一端はノズル24の内腔に繋がっているとともに、他端はバレル1と連通することができる。なお、通液路21の軸方向の長さは先端ガスケット8の軸方向の長さよりも長くなくてはならず、短いと薬液LDを排出することができない。また通液路21は、側壁の先端の断面積で見た場合に、側壁の基端の断面積よりも小さくなるように、側壁の基端で幅が拡がるような拡幅部22を備えている。また、ノズル24は図2に示すように注射針9を接続可能なようなオスルアーとすることができる。
ノズル部材2の形成材料としては、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、ポリアミド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリトリフルオルクロルエチレン、ポリエステル、ナイロン、それらの混合物、それらの積層体が挙げられるが、医療器具材料としての使用実績がありバレル1内に収容される薬剤と相互作用せず薬剤への溶出等のおそれがなければその素材は特に限定されない。
尚、ノズル24には通常、注射針9が取り付けられている方が好ましく、この場合には図1に示すように、注射針9は針プロテクタ10が装着されている。針プロテクタ10の形成材料としては、医療器具材料としての使用実績があり外部からの荷重に対し注射針9を曲げたり破損させるおそれがない剛性があればその素材は特に限定されない。
ノズル24に注射針9が取り付けられていない場合には、キャップ(図示していない)がノズル24を密閉するように冠着されている。その形成材料としては例えばブチルゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー、シリコンエラストマー等の弾性材料が好適に採用可能であるが、医療器具材料としての使用実績がありノズル24を密閉可能であればその素材は特に限定されない。
バレル1は先端及び基端が開放された筒状部材であり、その基端には指掛け用のフランジ部3が備えられているとともに、その先端は前記ノズル部材2に液密に嵌着される。バレル1の先端はバレル1内を先端ガスケット8により液密に封止され、基端は基端ガスケット4により液密に封止される。そして、バレル1内には中間ガスケット6が挿入されており、前記バレル1内は該中間ガスケット6によって前室7及び後室5に液密に区画される。さらに、前室7の壁には径方向外側に膨出するようにバイパス11がバレル1の軸方向に形成されている。バレル1の形成材料としては例えばガラス、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、ポリアミド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリトリフルオルクロルエチレン、ポリエステル、ナイロン、それらの混合物、それらの積層体が挙げられるが、医療器具材料としての使用実績がありバレル1内に収容される薬剤と相互作用せず薬剤への溶出等のおそれがなければその素材は特に限定されない。
後室5には、溶解液Lが収容されている。後室5に収容される溶解液としては生理食塩水、ブトウ糖液のような溶解液又は薬液のような液剤が収容されることが望ましい。そして前室7には粉末薬剤Mが収容されている。前室7に収容される薬剤としては、後室5の液剤Lと溶解すると不安定な粉末薬剤、例えば抗生物質等の凍結乾燥製剤が望ましいが前室7に収容される薬剤の剤形は特に限定されず、使用直前に混合する必要のある液状の薬剤であってもよい。
先端ガスケット8、基端ガスケット4及び中間ガスケット6はいずれも弾性体からなる筒状部材であり、側面にバレル1の内壁と液密に接触して周方向に形成される環状リブ41、61、81を数条有し、バレル1内を摺動可能である。また中間ガスケット6は、図1の様に、 先端側にバレル1の内壁と液密に接触して周方向に形成される環状リブ61と、環状リブ61の基端側に隣接して周方向に凹設された周溝62と、該周溝62と後室5とを連絡する螺旋状の連絡路63とから構成されていてもよい。この構成では、長さを適当に長くすることで打栓時の傾きを回避しながら、最も先端から最も基端までの環状リブ61間の距離である有効シール長を短くすることが出来るので、後室5と前室7がバイパス11を介して連通するために必要な中間ガスケット6の移動距離を小さくすることが出来、溶解調製する際に中間ガスケット6の前進により前室7の内圧が上昇して前室7内が圧縮空気ばねのようになり、溶解液Lがバイパス11を介して前室7に流入したときに先端ガスケット8が勢い良く前進して先端ガスケット収容部23へ入り込み、薬液LDがその勢いで注射針9の針先91から飛び出すことを防ぐ効果がある。
また、環状リブ61、周溝62、および連絡路63、および基端ガスケット4の長さを適当に設定することで、プレフィルドシリンジ内の薬液LDを全て排出した際に基端ガスケット4の最も基端にある環状リブ42がバイパス11の基端を超えて前進してしまうおそれを回避することが出来るので、毒性の強い薬液などの場合に、薬液LDがバレル1の基端側から外部に漏出するのを防止することが出来る。その形成材料としては例えばブチルゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー、シリコンエラストマー等の弾性材料が好適に採用可能であるが、医療器具材料としての使用実績がありバレル1内に収容された薬剤と相互作用を起こさないものであれば、その素材は特に限定されない。
基端ガスケット4の基端には、プランジャーロッド12が接続される。プランジャーロッド12は予め接続されていてもよいし、使用時に接続してもよい。接続方法としては、嵌合、螺合等が挙げられる。プランジャーロッド12の形成材料としては、合成樹脂等が挙げられるがその素材は特に限定されない。
次いで、実施例1(図1)のプレフィルドシリンジAの使用方法について説明する。実施例1のプレフィルドシリンジAを注射する際には、まず、プレフィルドシリンジAを注射針91を上に向けた状態とする。手指でフランジ部3を支えながらプランジャーロッド12を先端方向へ押し進めると後室5の内圧が上昇し、それに伴い中間ガスケット6も前進する。中間ガスケット6の環状リブ61がバイパス11の基端を越えた時点で、後室5内の溶解液Lが連絡路63及び周溝62を通って前室7に流入する。これに伴い、前室7内の内圧が上昇して先端ガスケット8が前進し、ノズル部材2の先端ガスケット収容部23内に入り込み、先端ガスケット8による密閉が解除されるので、基端ガスケット4の先端面が中間ガスケット6の基端面に当接する、即ち、前室7内にある気体が後室5の溶解液Lの全量が移動するまで、前室7内の気体は注射針の針先91から外部に排出される。
次に、プレフィルドシリンジを、粉末薬剤Mの分散性に応じた力加減で振とうし、粉末薬剤Mを液剤Lに溶解し薬液LDとする。先端ガスケット収容部23の基端は通液路が拡幅22されているので、振とうの際に液面が波打ち、先端ガスケット収容部23の内周壁と先端ガスケット8の側面の間に薬液が溶解調製不充分のまま入り込んだとしても、すぐに前室7内に回帰する。
プレフィルドシリンジAをこのまま同じ状態に保ちながら、更にプランジャーロッド12を先端方向へゆっくり押し進めると、バレル1内の先端ガスケット8の基端面に集まり浮遊している薬液LD中の僅かな量の気泡は、先端ガスケット収容部23の側壁の通液路が、断面積で見て基端よりも先端の方が小さくなっているので、捕捉し易く、かつ滞留することが無いし、また、流速が増すため、薬液LDよりも先に外部へ排出されるようになっている。
次に、針プロテクタ10を外し、患者の目的部位に注射針の針先91を穿刺し、プランジャーロッド12をゆっくり押し込んで薬液LDの注射を行う。この状態から、更にプランジャーロッド12を強く押すと、先端、中間、および基端ガスケット4、6、8が各々弾性変形し、プレフィルドシリンジA内の薬液LDを残すことなく注射することができる。
本発明の一実施態様であるプレフィルドシリンジBは、上記特徴のうち、(2)、および(3)を有し、さらに(4)を有することが好ましい。具体的には、図5に示すように、プレフィルドシリンジBは、先端及び基端が開口したバレル1と、該バレル1内の基端に液密かつ摺動可能に取り付けられる基端ガスケット4と、該基端ガスケット4の基端に接続されるプランジャーロッド6と、前記バレル1内の先端に液密かつ摺動可能に取り付けられる先端ガスケット8と、前記バレル1の先端に液密に係合されて注射針9が着脱可能に取り付けられるノズル部材2と、前記バレル1の基端部に設けられたフランジ部3とを備えてなる1室式のプレフィルドシリンジであって、前記ノズル部材2は、先端ガスケット8を収容可能な先端ガスケット収容部23と、該先端ガスケット収容部23に前記先端ガスケット8を収容した際に薬液が通過可能な内周壁に少なくとも2つ以上軸方向に延びる通液路21を含むとともに、該通液路の先端の断面積が基端の断面積よりも小さくなるようになる通液路の拡幅部22を含んだ構成よりなる。
ノズル部材2は薬液LDを排出可能なノズル24を先端に有する、基端が開放された筒状部材であり、基端にはバレル1を液密に嵌着可能である。そして、その内部には後述する先端ガスケット8を収容可能な先端ガスケット収容部23が形成されている。また、図7に示すように、先端ガスケット収容部23の内壁には該先端ガスケット収容部23に先端ガスケット8を収容した際に薬液LDが通過可能な通液路21が形成されている。この通液路21は先端ガスケット収容部23の側壁と天面に凹設された溝であり、その一端はノズル24の内腔に繋がっているとともに、他端はバレル1と連通することができる。なお、通液路21の軸方向の長さは先端ガスケット8の軸方向の長さよりも長くなくてはならず、短いと薬液LDを排出することができない。また通液路21は、側壁の先端の断面積で見た場合に、側壁の基端の断面積よりも小さくなるように、側壁の基端で幅が拡がるような拡幅部22を備えている。また、ノズル24は図2に示すように注射針9を接続可能なようなオスルアーとすることができる。
ノズル部材2の形成材料としては、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、ポリアミド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリトリフルオルクロルエチレン、ポリエステル、ナイロン、それらの混合物、それらの積層体が挙げられるが、医療器具材料としての使用実績がありバレル1内に収容される薬剤と相互作用せず薬剤への溶出等のおそれがなければその素材は特に限定されない。尚、ノズル部材2はバレル1と一体としたノズル部とすることも可能である。
尚、ノズル24には通常、注射針9が取り付けられている方が好ましく、この場合には図1に示すように、注射針9は針プロテクタ10が装着されている。針プロテクタ10の形成材料としては、医療器具材料としての使用実績があり外部からの荷重に対し注射針を曲げたり破損させるおそれがない剛性があればその素材は特に限定されない。
ノズル24に注射針9が取り付けられていない場合には、キャップ(図示していない)がノズル24を密閉するように冠着されている。その形成材料としては例えばブチルゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー、シリコンエラストマー等の弾性材料が好適に採用可能であるが、医療器具材料としての使用実績がありノズル24を密閉可能であればその素材は特に限定されない。
バレル1は先端及び基端が開放された筒状部材であり、その基端には指掛け用のフランジ部3が備えられているとともに、その先端は前記ノズル部材2に液密に嵌着される。バレル1の先端はバレル1内を先端ガスケット8により液密に封止され、基端は基端ガスケット4により液密に封止され薬液室5を形成している。バレル1の形成材料としては例えばガラス、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、ポリアミド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリトリフルオルクロルエチレン、ポリエステル、ナイロン、それらの混合物、それらの積層体が挙げられるが、医療器具材料としての使用実績がありバレル1内に収容される薬剤と相互作用せず薬剤への溶出等のおそれがなければその素材は特に限定されない。
尚、薬液室5には、薬液LDが収容されている。
尚、薬液室5には、薬液LDが収容されている。
先端ガスケット8、および基端ガスケット4はいずれも弾性体からなる筒状部材であり、側面にバレル1の内壁と液密に接触して周方向に形成される環状リブ41、81を数条有し、バレル1内を摺動可能である。その形成材料としては例えばブチルゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー、シリコンエラストマー等の弾性材料が好適に採用可能であるが、医療器具材料としての使用実績がありバレル1内に収容された薬剤と相互作用を起こさないものであれば、その素材は特に限定されない。
基端ガスケット4の基端には、プランジャーロッド12が接続される。プランジャーロッド12は予め接続されていてもよいし、使用時に接続してもよい。接続方法としては、嵌合、螺合等が挙げられる。プランジャーロッド12の形成材料としては、合成樹脂等が挙げられるがその素材は特に限定されない。
次いで、実施例2(図5)のプレフィルドシリンジBの使用方法について説明する。実施例2のプレフィルドシリンジBを注射する際には、まず、プレフィルドシリンジBを注射針91を上に向けた状態とする。手指でフランジ部3を支えながらプランジャーロッド12を先端方向へ押し進めると、バレル1内の先端ガスケット8の基端面に集まり浮遊している薬液LD中の僅かな量の気泡は、先端ガスケット収容部23の側壁の通液路が、断面積で見て基端よりも先端の方が小さくなっているので、捕捉し易く、かつ滞留することが無いし、また、流速が増すため、薬液LDよりも先に外部へ排出されるようになっている。
次に、針プロテクタ10を外し、患者の目的部位に注射針の針先91を穿刺し、プランジャーロッド12をゆっくり押し込んで薬液LDの注射を行う。
この状態から、更にプランジャーロッド12を強く押すと、先端、および基端ガスケット4、8が各々弾性変形し、プレフィルドシリンジB内の薬液LDを残すことなく注射することができる。
A,B プレフィルドシリンジ
LD 薬液
L 溶解液
M 粉末薬剤
1 バレル
2 ノズル部材
21 通液路
22 通液路の拡幅部
23 先端ガスケット収容部
24 ノズル
3 フランジ部
4 基端ガスケット
41 環状リブ
42 最も基端側の環状リブ
5 後室、薬液室
6 中間ガスケット
61 環状リブ
62 周溝
63 連絡路
7 前室
8 先端ガスケット
9 注射針
91 注射針の針先
11 バイパス
12 プランジャーロッド
LD 薬液
L 溶解液
M 粉末薬剤
1 バレル
2 ノズル部材
21 通液路
22 通液路の拡幅部
23 先端ガスケット収容部
24 ノズル
3 フランジ部
4 基端ガスケット
41 環状リブ
42 最も基端側の環状リブ
5 後室、薬液室
6 中間ガスケット
61 環状リブ
62 周溝
63 連絡路
7 前室
8 先端ガスケット
9 注射針
91 注射針の針先
11 バイパス
12 プランジャーロッド
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