JP2007125831A - 平版印刷用原版 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期にわたって印刷する場合にも、印刷経時で非画線部に汚れが発生することのない、主として樹脂からなる親水層を有する印刷版およびその印刷版に用いられる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】基板上に直接又は他の層を介して形成された親水層を有し、該親水層が主として有機化合物からなり、かつ、該親水層内部が微細な空隙を有し、該有機化合物親水層層が印刷時に非画線部として機能する平版印刷用原版。
【選択図】図1

Description

本発明は平版印刷用原版、特に湿し水を用いる平版印刷用原版に関するものであり、さらに詳しくは、有機化合物が主成分であり印刷時に非画線部として機能する親水層を有する平版印刷用原版に関するものである。
平版印刷用版とは平版印刷に用いられる印刷版であり、印刷版の表面はインクを付着する画線部と、インクを付着せずに反発する非画線部とからなっている。通常、非画線部は水を吸着し保持する表面になっており、実際の印刷ではまず非画線部に水を与えることにより非画線部がインクを反発するようになる。したがって、平版印刷版において、非画線部は親水性材料からなっており、この親水性材料の特性は平版印刷版の性能を大きく左右する。
平版印刷として最も普及している印刷版は、通常PS版と呼ばれている。PS版は、表面を砂目立てした陽極酸化アルミニウム板を親水性材料とし、この陽極酸化アルミニウム板の上にインク付着性の感光性材料からなる層を形成している。このPS版は、画像に従い露光を行い、画線部以外の感光層材料を除去し、下地の親水性アルミニウム表面を露出させることにより、印刷版上に画線部と非画線部からなる画像を形成する。
露光後に感光層を除去するプロセスは現像と呼ばれるが、通常アルカリ性の溶液や、有機溶媒が用いられるので、現像液の廃液の処分が印刷操作における大きな負担となっている。特に近年では、環境問題への意識の高まりと共に、環境に完全に無害な状態で廃液を処理することが要求されている。また、現像には専用の装置が必要であり、この装置導入による高コスト化や、充分な作業スペース確保の必要性等の問題もあり、現像を必要としない印刷版が求められている。
一方で、親水性材料である陽極酸化アルミニウムは平版の親水性材料として実用上優れており、この為、広く使用されている。現像工程を不要化する為の一つの手段として、陽極酸化アルミニウムと同等以上の印刷適正を有し、安価で簡易に製造できる有機化合物を主成分とする層を非画線部として用いた印刷版が種々検討されている。
非画線部が有機化合物を主成分とする親水層で形成された版として、具体的には、例えば、特許文献1(特開平8−282142号公報)に、非画線部が親水性膨潤層からなる版が開示されている。なお、この版は、親水性膨潤層を成膜してから感光性物質をこの親水性膨潤層に吸収させて感光性を持たせている。そして、画像部は、露光により親水性膨潤層中の感光性物質が反応して親水性を失う。この方式においては、非画像部に不要な感光性物質が残っているため、露光後に非画像部の感光性物質を洗い流すリンス処理の工程を必要とするが、上記のPS版で必要とされる現像工程は不要となる。
また、特許文献2(特開平7−1850号公報)には、熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と親水性バインダーポリマーと光反応開始剤とを含有する版が開示されている。また、本出願人は、親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物、あるいは親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び疎水性ポリマーからなる感光性樹脂組成物を架橋した親水性樹脂感光層からなる平版印刷用の版を特許文献3(国際公開第01/083234号)に開示している。これらの版は、光の照射により表面が親水性から親インク性に変化する性質を有しており、露光後の現像操作や拭き取り操作が不要な、所謂完全無現像版である。
上記の親水性樹脂感光層、即ち有機化合物を主成分とする非画線部となる親水層を有する平版印刷用原版はいずれも、その親水性において更に改善されることが望まれていた。これらの印刷版においては、親水性が十分でないことに由来し、印刷経時で徐々に親水性が損なわれてゆき、非画線部に地汚れが発生する場合があり、耐刷能力に関して更なる改良が求められていた。
また同じく本出願人らは、有機物を主成分とする親水層を有し、その親水層の表面が多孔質である平版印刷版を特許文献4(特開2001−18547号公報)に開示している。該印刷版は、その表面が多孔質であることにより、親水性層の表面積を増やし、版面への水の吸水スピードを向上させ、親水層の親水性を向上させる試みがなされている。しかしながら該印刷版においても、印刷経時での親水能力の持続は十分ではなく、耐刷能力に関して更なる改良が求められていた。また該印刷版は、版面に直接レーザー光で描画を行った際の画線形成においても十分であるとは言い難く、その点においても改良が望まれていた。
さらに、特許文献5(特開2001−109141号公報)には、親水層に水溶性高分子化合物を添加した印刷版が開示されている。該印刷版は、水溶性高分子化合物が印刷中に徐々に溶け出してゆくことにより、親水層表面の親水性を保持させる試みがなされている。しかしながらこの機構においては、印刷中に水溶性高分子化合物が全て溶出してしまうとその効果がなくなるという欠点を有している。さらに、該印刷版はレーザーを照射した親水層について、熱エネルギーによりその部分の親水層を化学反応(燃焼、溶解、分解、気化、爆発)や物理変化を生じさせ、結果としてレーザー照射部について親水層の密着性を低下させ、そのレーザー照射部を選択的に除去するという所謂アブレーション機構を取るものであり、この為、水を含ませたパッド等による拭き取り操作を必要とするという問題点を有しており、該印刷版自体は親水性から親インク性に変化する性質を有し得ない。
特開平8−282142号公報 特開平7−1850号公報 国際公開第01/083234号 特開2001−18547号公報 特開2001−109141号公報
親水性材料である陽極酸化アルミニウムは平版の親水性材料として実用上優れており、この為、広く使用されている。現像工程を不要化する為の一つの手段として、陽極酸化アルミニウムと同等以上の印刷適正を有し、安価で簡易に製造できる樹脂を用いた印刷版用親水性材料が種々検討されているが、インクと同じく有機化合物を主成分として構成された親水層は該して、その親水性が陽極酸化アルミニウムと比べ劣る傾向にある。この為、印刷初期は良好な印刷物を得ることができても、長期の印刷にわたって良好な印刷画像を得ることが困難、すなわち耐刷能力が不十分である場合がある場合が往々にして発生しがちであることがわかった。
したがって本発明の課題は、有機化合物を主成分とする親水層が非画線部として機能し、該非画線部が長期にわたって印刷した際にも、親水性が良好であり、地汚れを発生することのない良好な印刷画像を得ることができる平版印刷用原版を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、有機化合物を主成分として構成された非画線部となる親水層を有する平版印刷用原版において、その親水層内部が微細な特定の大きさの空隙を有する構造であることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、以下に記述するものである。
(1)親水層内部に直径が平均値にして10nm以上1000nm以下である空隙を5%〜60%有し、該親水層が有機化合物を主成分として形成され、平版印刷において非画線部となることを特徴とする平版印刷用原版。
(2)有機化合物を主成分とした親水層が相分離構造を形成し、且つ1時間の印刷後および/または純水に10℃〜30℃の状態で24時間浸水した後に、親水層内部に直径が平均値として10nm以上1000nm以下である空隙を5%〜60%形成し、平版印刷において非画線部となることを特徴とする平版印刷用原版。
(3)親水層内部の空隙が、10〜35%である(1)又は(2)記載の平版印刷用原版。
(4)親水層が、光又は熱エネルギーの照射によって表面が親インク性に変化する性質を有するものである(1)〜(3)記載の平版印刷用原版。
(5)親水層を形成する親水性樹脂組成物が、少なくとも下記一般式(1)(化1)及び/または(2)(化2)で示されるN−アルキルまたはN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド系化合物を用いて反応して得られる親水性樹脂を含むものである、(1)〜(4)記載の平版印刷用原版。
(式中Rは、水素原子またはメチル基、R、Rは、水素原子、低級アルキルまたは低級アルコキシ基を表す。)
(式中Rは、水素原子またはメチル基、Aは、(CH2)n(但し、nは4〜6の整数を示す)または(CH2O(CH2を表す。)
(6)(1)〜(5)記載の平版印刷用原版に光又は熱エネルギーを照射して得られた平版印刷用版。
本発明の平版印刷用原版を用いれば、長期にわたって印刷する場合にも非画線部に地汚れの発生することのない印刷版を提供することができる。また、印刷時の水量を低減することができ、これにより、良好な画像の印刷物を得ることができる。さらには、現像や拭き取り等の工程が不要な印刷版であって、長期にわたって印刷する場合にも非画線部に地汚れの発生することのない印刷版を提供することができる。
以下、本発明に係る平版印刷用原版およびその製造方法について、詳細に説明する。本発明の平版印刷用原版は、支持体の上に直接、又は下地層を介して構成された有機化合物を主成分として形成された親水層を有するものである。本発明において親水層とは、親水層に水を加えた際、あるいは水により洗浄した際に、親水層から溶出して水に溶解する成分の質量が親水層の質量に対し、60%以下程度であることが好ましく、ある程度は水に不溶であることで、この親水層は、印刷時に非画線部として機能するものである。
なお、所謂機上現像方式の印刷版は、印刷時にインキおよび湿し水を利用し、主として有機化合物からなる層を剥ぎ取ることで、その下の層を親水層として用いるものであるが、この機上現像方式において上記の性能を発現する為に、有機化合物層は水に溶解する性質を有するものであり、本発明において特徴となる親水層とは異なるものである。もちろん、本発明の親水層の上にさらに有機化合物層を付与することで、本発明の親水層を非画線部として機能させ機上現像方式の版として用いることも可能である。
本発明において親水層は、その内部に微細な空隙を有することを特徴とする。空隙が印刷版の内部に形成されていることにより、本発明の印刷版は版内部で保水することができ、この効果により、印刷時の水量を低減することができ、また、持続的な親水能力を維持することができ、長期にわたって印刷する場合にも非画線部の地汚れの発生を阻止することができる。
本発明における親水層の、空隙部分の直径の平均値は、10nm以上1000nm以下、好ましくは20nm以上500nm以下、さらに好ましくは50nm以上350nm以下の大きさである。なお、ここで示した空隙部分の直径とは、円相当径、すなわち空隙部分の面積から、その面積が円に相当する際の直径として算出して求める値を意味するものとする。また、この空隙部分の直径の平均値は、印刷版断面についての走査型電子顕微鏡等の観察により得られる版断面観察画像を画像解析装置等により解析することにより求めることができる。空隙のサイズが小さいことにより、印刷版を深さ方向に見た時、より多くの空隙を有することができ、これにより、より良好な保水効果を得ることができる。また、空隙の直径が上記範囲よりも大きいと、空隙を有する部分と有さない部分の差が明確になりすぎて、すなわち均一な空隙を形成することが困難となり、空隙を有さない部分において部分的にインキ汚れ付着してしまうおそれがある。同様に版断面を観察した際に、空隙部分の面積率は下限が5%以上、好ましくは10%以上である。空隙部分の面積率が上記範囲以上であることにより、十分な保水効果を得ることができる。また、上限は60%以下、好ましくは50%以下、更に好ましくは35%以下である。空隙部分の面積率が上記範囲以下であることにより、版自体の強度を十分なものとすることができる。また、同じ空隙率であった場合にも、微細な空隙が多く存在している方が、大きな空隙が少なく存在しているよりも、上述した空隙部分の均一性の観点、および版自体の強度の観点から良好な性能とすることができる。
また、本発明において親水層は、親水層が相分離構造を形成し、且つ、一時間の印刷後および/または純水に10℃〜30℃で24時間浸水した後に、親水層内部に前記範囲の大きさを有する微細な空隙を形成することがより好ましい。これを測定するための印刷方法としては、湿し水を用いる印刷方式を用いたものであれば、特に印刷機やインキや湿し水の種類に限定されない。また、純水に24時間浸水させる際には、印刷版の非画線部の一部を切り出し、切り出した版全体が十分に純水に浸るようにした状態で、室温(約10℃〜30℃)で放置しておけばよく、その際の攪拌等の操作は特に必要としない。印刷後の版や純水に浸水した後の版は、室温(約10℃〜30℃)で放置することで版面を自然乾燥させた後、親水層の内部構造の観察に供しても良いし、また版面を軽く布ウエス等によって拭き取った後に、同じく自然乾燥させ、観察に供与しても良い。
親水層が、一時間の印刷後および/または純水に10℃〜30℃の状態で24時間浸水した後に、親水層内部に微細な空隙を形成する構造を有している場合には、該空隙部位に存在していたと考えられる水溶性の化合物が、親水層表面にブリードしてゆき、その結果として微細な空隙が形成されるものと考えられる。この場合には、微細な空隙を形成していることによる保水性向上効果に加え、印刷時に(湿し)水により、版表面にブリードしてきた水溶性の化合物が、版表面の(湿し)水の濡れ性を向上させる効果をももたらすと考えられ、これにより、更に版表面の親水性向上効果も付与することができると考えられる。
したがって本発明において、親水層は相分離構造を形成していることが好ましく、相分離構造は水に溶出し得る水溶性化合物を主成分とする相とそれ以外の相で構成されていることが好ましい。上述の通り、水に溶出し得る水溶性化合物を主成分とする相により、微細な空隙が形成されることとなる。したがって、本発明で特定する微細な空隙のサイズは、相分離構造を制御することによってコントロールすることができる。より具体的には後述する各種原料化合物の種類、組成、分子量、粘度、および各種原料化合物の組み合わせ、配合比を変化させること、あるいは相溶性を制御する相溶化剤等の添加により制御することができる。また、各種原料配合時の温度や、後述する感光液塗工後の硬化工程によっても制御もすることができる。
本発明における好ましい相分離構造(空隙の大きさや面積率)の制御方法の一例として、より具体的には、親水層を形成する親水性樹脂組成物に、少なくとも2種以上の親水性樹脂を用い、これらの配合比を変化させることにより行う。一般的に、2種以上の樹脂を配合した場合、その組成や構造の違いから、適当な配合比率下において配合物は相分離構造を形成するが、本発明においても2種以上の親水性樹脂は、相分離構造を形成し得る適正な配合比率下で、感光層を構成させる必要がある。2種以上の親水性樹脂として、より具体的には一種はビニル系親水性ポリマーを用い、もう一種は環状構造を有する親水性ポリマーを用いることがより好ましい。ここでこれら2種以上の親水性樹脂は、混合時や加熱時に、互いに反応性を有さないことが好ましい。反応性を有する際には、反応を経由して親水性樹脂間の相溶性が良化してしまい、目的とする海島状の相分離構造が得られなくなることがある為である。一方で、これら2種以上の親水性樹脂の少なくとも1種は、感光層を前述程度水に不溶化させる為に、架橋反応性を有する架橋剤であることが好ましい。
2種以上の親水性樹脂に由来する相分離構造は、更に後述する有機微粒子を同時に存在させることにより該有機微粒子が相溶化剤の役割を担い、既述の大きさの細孔に相当する、比較的小さな相分離構造を形成することができる。より具体的に説明すると、有機微粒子は後述の通り微細な粒子の状態で水中に分散し得る水分散有機微粒子である為、有機微粒子表面も親水性を有している。この有機微粒子表面に、2種以上の親水性樹脂の内、少なくとも1種が集合してゆき、相分離構造の海層を形成することとなる。なお、既述の通り、感光層を上述程度水に不溶化させる為に、この海層を形成する側の親水性樹脂は、架橋反応性を有する架橋剤であることが好ましい。更にもう一方の親水性樹脂成分は、上記架橋剤に比べ、より親水性の高いものを用い、またそれ自身は自己架橋性を有さないものを用いることが好ましい。これにより、島層は水に溶出し得る層となり、感光層は空隙を形成することができる。感光層中で有機微粒子は均一に分散しており、かつ該有機微粒子を核とした海層の隙間に上記自己架橋性を有さない、より親水性の強い水溶性化合物が島層として存在する為、島層のサイズは比較的小さいものとなり得る。また、空隙部分は上述の通り、より親水性の強い水溶性化合物により形成された島層に由来して形成される為、空隙部分の面積率は、上記水溶性化合物の量比に概ね対応することとなる。
また、水溶性化合物を主成分とする相から形成された空隙の際には、空隙の外壁がより親水化された状態となり、これによって空隙部は、より保水しやすい状態を保つことができる。なお、ここで示す相分離構造とは、水に溶出し得る水溶性化合物を主成分とする相とそれ以外の相で構成されている相分離構造を意味しており、後述する有機微粒子を用いた親水層の際に形成される、有機微粒子とその他の成分との相分離構造とは、当然異なるものである。
ここで示した水に溶出し得る水溶性の化合物は、持続的なブリード効果を得る為、およびブリードされた化合物が良好な親水性能を発揮する為に、親水性樹脂であることが好ましく、したがって親水層は親水性樹脂を含有することが好ましい。親水性樹脂とは、親水基として、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、オキシメチレン基、オキシエチレン基等、更にカルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基やこれら酸性基のアルカリ金属塩やアミン塩等を有する樹脂であり、水に対する溶解性を有する樹脂である。水に対する溶解度は具体的には、25℃において、水に50質量%以上溶解することが好ましく、更に好ましくは80質量%以上であり、完全に溶解することがより更に好ましい。
本発明の親水性樹脂のより具体的な例としては、例えばポリ酢酸ビニルのけん化物類、セルロース類、ゼラチン、前記した親水性基を有する不飽和単量体類やN―ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、ビニルエーテル等を重合、共重合してなる樹脂及びその加水分解樹脂等である。
この中でも、本発明において好ましく用いられる親水性樹脂は、少なくとも下記一般式(1)及びまたは(2)で示される(メタ)アクリルアミドを含むN−アルキルまたはN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを用いて反応して得られるアクリルアミド系樹脂であることが好ましい。もちろん、これらの化合物は2種以上を用いることができる。
(式中Rは、水素原子またはメチル基、R、Rは、水素原子、低級アルキルまたは低級アルコキシ基を表す。)
(式中Rは、水素原子またはメチル基、Aは、(CH2)n(但し、nは4〜6の整数を示す。)または(CH2O(CH2を表す。)
一般式(1)及び(2)中、低級アルキル基とは具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、低級アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。より好ましくは、上記化合物(1)のRはメチル基またはエチル基であり、Rは、水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基である。
上記の中でも、アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン等から選ばれた1種または2種以上のモノマーを主成分とするポリマーであることがより好ましい。さらには、これら親水性ポリマーの中で、アクリルアミドを75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは96質量%以上用いて重合または共重合して得られるポリマーが特に好ましい。上記化合物を使用することにより、本発明の平版印刷用原版の親水層は良好な親水性を発揮することができる。
該親水性樹脂は、さらに、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸カリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウム、メタリルスルホン酸塩アンモニウムから選ばれる1種以上の化合物をモノマーとして用いて得られるものであることが好ましく、特にメタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウムを用いることが好ましい。これらのモノマーの使用量は、親水性樹脂の全使用量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは、0.2〜3質量%である。上記化合物を用いることにより、親水性樹脂の親水性を更に良好なものとすることができる。
なお、後述する好ましい架橋剤である、エポキシ樹脂やメラミン樹脂は、水酸基やカルボキシル基との反応性が高い為、これらの架橋剤を用いる場合、相溶性を制御する為、本発明において用いる親水性ポリマーは、水酸基および/またはカルボキシル基を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、本発明の効果を損なわない範囲、即ち、親水性ポリマーを構成する単量体単位中で、水酸基および/またはカルボキシル基を含有する単量体からなる部分のモル比が、1.5モル%以下程度であることが好ましい。
なお、水酸基および/またはカルボキシル基を含有する親水性ポリマーとは、上記親水性基を有する化合物と、水酸基および/またはカルボキシル基を有する不飽和化合物とを、共重合させることにより得ることができる。水酸基および/またはカルボキシル基を有する不飽和化合物は、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートやメチロール(メタ)アクリルアミド;アクリル酸およびメタアクリル酸等が挙げられる。なお、本明細書中の記載において「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの両者を含む意味である。
また、本発明における平版印刷用原版の親水層は、光又は熱エネルギーの照射によって表面が親インク性に変化する性質を有することが好ましい。この効果を発現するために、および同時に既述の通り、微細な相分離構造を形成させる為に、親水層には好ましくは、有機微粒子を含有することが好ましい。
本発明の親水層に含有することのできる有機微粒子とは、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を加えることにより、あるいは樹脂自身の極性構造により、微細な粒子の状態で水中に分散し得る、水分散有機微粒子を意味する。該有機微粒子は必要に応じて該粒子を覆う保護剤からなるものでも良い。
該有機微粒子を得る方法としては、例えば、水中で不飽和モノマーを適宜、乳化剤あるいは分散剤等を使用/あるいは不使用して、重合させ得る方法、より具体的には、乳化重合、ソープフリー乳化重合、沈殿重合、分散重合、不飽和モノマーを懸濁重合することによって得る方法、親水化原料を用いて樹脂骨格中に親水成分を直接導入して自己乳化型あるいはアイオノマー型として得る方法、樹脂を適宜必要に応じて分散助剤や界面活性剤を加え、機械的に強制乳化させることで得る方法、樹脂を可溶な有機溶剤にあらかじめ溶解させた後に水中に分散させる所謂、溶解懸濁法により得る方法、あるいはこれらを適宜複合させ得る方法等をあげることができるが、どのような方法によって得たものであっても良い。
該有機微粒子は、より具体的には例えば、水性分散型ビニルポリマー、共役ジエンポリマー系ラテックス、アクリル系エマルション、水性分散型ポリウレタン樹脂、水性分散型ポリエステル樹脂、水性分散型エポキシ樹脂等が挙げられ、またこれら水性分散型ポリマー(樹脂)の混合物、あるいはこれら水性分散型ポリマー粒子の存在下に、例えば、乳化重合等の手法により、異種のポリマー成分を生成させることにより調製した複合粒子等を挙げることができる。
本発明の親水層に上記有機微粒子を含有することにより、本発明の親水層は、熱エネルギーの照射によって親水層表面が親インク性に変化する性質を有するものとなり得る。また、上記有機微粒子と後述する光吸収剤を含有することにより、本発明の親水層は、光の照射によって親水層表面が親インク性に変化する性質を有するものとなり得る。熱エネルギーにより、また、光を照射させた場合には、光吸収剤が光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換した際に発生した熱により、有機微粒子が熱的に溶融・融着することで、光照射部表面の親水性を親インク性に変化させるものと推定される。このような機能を有する親水層であることにより、本発明の平版印刷用版は、光の照射後に現像や拭き取り等の工程を不要とする、所謂現像レス版あるいは完全無現像版を提供することができる。
このような性質を引き出す為に、有機微粒子の平均粒子径は0.005〜0.5μmであることが好ましい。更に好ましい平均粒子径は、0.01〜0.2μmである。この粒子径の範囲内であれば、発生した熱で有機微粒子が溶融・融着しやすく、感度に優れ、また感光層非画線部の親水性が低下することもない。なお、ここで平均粒子径は、動的光散乱法等により測定し得る重量平均粒子径であり、例えば大塚電子株式会社製のLPA3100等により測定することができる。
また、良好な着インク性を発現する為に、水分散有機微粒子は、アクリル系エマルション、水分散ポリウレタン樹脂、水分散ポリエステル樹脂、水分散エポキシ樹脂を用いることがより好ましく、水分散ポリウレタン樹脂、水分散ポリエステル樹脂を用いることが更に好ましい。これらの樹脂の中で、主鎖骨格中に芳香族等の環状構造を有しているものが特に良好な着インク性能と親水性のバランスを有するため、特に主鎖骨格中に環状構造を有した水分散ポリウレタン樹脂、水分散ポリエステル樹脂、水分散エポキシ樹脂が好ましい。
本発明において、親水層は有機化合物を主成分として構成されるものであり、前述程度に水に不溶であることが好ましい。水に不溶とする為に、親水層には更に触媒の存在下あるいは非存在下で熱あるいは光等を受けて架橋反応を生じ得る、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤の架橋反応は、適当な官能基を有する架橋剤以外の化合物と行っても良いし、また自己架橋する特性を有する架橋剤を用いても良いが、より好ましくは自己架橋する特性を有する架橋剤である。ここで自己架橋する特性を有する架橋剤とは、化合物が有する同一官能基、または化合物が有する他の官能基と反応して結合することが可能な化合物を指すものとする。好ましい具体例としては、メチロール基やイミノ基を含有する化合物、エポキシ基を含有する化合物等が挙げられる。これらの化合物は、感光層の親水性を維持したまま強い架橋物を作ることができるため好ましい。また、メチロール基やイミノ基を含有する化合物は水酸基との反応性が良好であり、また、エポキシ基を含有する化合物は、水酸基やカルボキシル基との反応性が良好である。この為、本発明で好ましく用いられる親水性である、(メタ)アクリルアミドを含むN-アルキルまたはN-アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを用いて反応して得られるアクリルアミド系樹脂との反応性は低く、したがって、これらの親水性樹脂を用いた際に、該樹脂が水に溶出しやすい状態で親水層内部に存在することができる。
架橋剤として使用可能なエポキシ基を含有する化合物は、エポキシ基同士で架橋することが知られている。また、カルボキシル基や水酸基との反応によっても結合を生じる。更には、エポキシ基の反応により、水酸基が発生するため、架橋が進んでも感光層の親水性を保持することが可能である架橋剤である。
エポキシ基を含有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルやポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリコールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。かかる化合物の市販品の例としては、例えば、ナガセケムテックス株式会社製のエポキシ化合物「デナコールTM」シリーズ等が挙げられる。
エポキシ基を含有する化合物を用いた場合、これらの化合物の硬化促進のために、助剤を用いることも可能である。エポキシ化合物を硬化する助剤の具体例として、トリエチルアミンやジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン、2−メチルイミダゾールや2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、ピペラジン等のルイス酸、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミン、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンのような芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジドのようなポリアミン、ドデセニル無水琥珀酸、ポリアゼライン酸無水物等の脂肪族系酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸等の脂肪族酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸のような芳香族酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン、イソシアネート、カルボン酸含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、エポキシ基を含有する化合物と反応するアンモニア、モノエタノールアミンのような1級アミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミンのような2級アミンも使用することが可能である。より好ましいものは1級、2級、3級アミンである。これらの化合物の沸点は、蒸発にくい100℃以上であることが好ましい。硬化促進助剤の添加量は、親水層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂成分を100質量%とした時に、0.01質量%から10.0質量%程度が好ましい。この範囲である方が硬化促進効果が十分に得られ、印刷時の地汚れ等の問題を引き起こす可能性が低く好ましい。
本発明において好ましい架橋剤であるメチロール基やイミノ基を含有する化合物としては、メラミン樹脂やフェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、良好な親水性と耐刷性のバランスを付与し得るものとして、メラミン樹脂が好ましい。置換基は完全にメチル化やブチル化したメチロールアミノ化合物の場合自己縮合しにくいが、イミノ基とメチロール基を含有するアミノ樹脂は反応して自己縮合を起こしやすい為好ましい。自己縮合すると親水性感光層内の網目構造が密になり機械強度が増すことができる。
使用可能な市販品の例としては、日本サイテックインダストリーズ株式会社製のメラミン系架橋剤である、サイメル(登録商標)の300、301、303、350、370、771、325、327、703、712、701、385、266、267、285、232、235、236、238、272、212、253、254、202、207、マイコート(登録商標)の506、508、ベンゾグアナミン系架橋剤であるサイメル(登録商標)の1123、1123−10、1128、マイコート(登録商標)の102、105、106、130、グリコールウリル系架橋剤であるサイメル(登録商標)の1172、1170、尿素系架橋剤であるUFR(登録商標)の65、300、カルボキシ変成アミノ樹脂系架橋剤であるサイメル(登録商標)の1141、1125−80、マイコート(登録商標)の101、132等が挙げられる。
メラミン樹脂を用いる場合は、架橋を促進する触媒としてパラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、塩化アンモニウム等の酸性化合物を併用しても良い。これら触媒の添加量は、親水層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂成分を100質量%とした時に、0.001質量%から5質量%程度が好ましい。上記範囲内であると、硬化促進効果が十分得られ、また親水性樹脂組成物の保存安定性も良好であるため好ましい。また、本発明において親水層に含まれる架橋剤は2種類以上混合しても良い。また、架橋剤は、1分子あたり架橋し得る官能基を3個以上含有する化合物であることが、充分な膜強度を得る為に好ましい。
本発明における親水層は、更に光吸収剤を含有していることが好ましい。この光吸収剤は、光を吸収して熱を生じるものあり、光の照射に際しては光吸収剤が吸収する波長域の光を適宜用いることが好ましい。光吸収剤の具体例としては、シアニン系色素、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アントラシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ系色素、ベンゾキノン系色素、ナフトキノン系色素、ジチオール金属錯体類、ジアミンの金属錯体類、ニグロシン等の各種色素、及びカーボンブラック等が挙げられる。
これらの色素に於いては、明室での取り扱い性、露光機に用いる光源の出力や使い易さの点から750〜1100nmの領域の光を吸収する色素が好ましく、より具体的には、最大吸収波長λmaxが750〜900nmである色素が好ましい。色素の吸収波長域に関しては置換基やπ電子の共役系の長さ等により変えることが出来る。また、光熱変換を効果的に行う為に、最大吸収波長における吸光係数εmaxは1×105 L mol-1 cm-1以上であることが好ましく、より好ましくは2×105 L mol-1 cm-1以上である。これらの光吸収剤は親水層樹脂組成物が含まれる水溶液に溶解していても、又分散していても良いが、親水層中に該光吸収剤を含有し、版に充分な親水性を付与する為に、前記した光吸収剤の中で本発明に於いては、親水性の光吸収剤が好ましい。具体的は、水への溶解性が1質量%以上の光吸収剤が好ましい。
本発明における親水層には、印刷条件に対する安定性を広げるため、更に種々の界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤等が挙げられる。また、感光性樹脂組成物水溶液の塗布性を良化するため、ハジキ防止剤、レベリング剤等の添加剤を添加しても良い。これらの界面活性剤の添加量は、親水性樹脂、架橋剤および有機微粒子の合計100重量部に対して、0.001〜15重量部であることが好ましい。また、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物等に代表される無機微粒子も本発明の効果を損ねない程度に含有することも可能である。
本発明における親水層は、上記の有機化合物からなる感光性組成物を架橋してなるものであるが、その感光性組成物の組成割合は以下の範囲であることで良好な印刷版を提供することができる。感光性樹脂組成物における、有機微粒子の量は光照射部の親インク化の点からは多い方が好ましいが、多くなり過ぎると版の親水性が低下し、印刷において地汚れを起こす可能性がある。また、少なくなると版の着インク性が低下する場合もある。これらの観点から本発明に於ける感光性樹脂組成物中の有機微粒子量は、親水性樹脂、架橋剤、有機微粒子を合計100重量部とした時に、固形分として好ましくは15〜70重量部、更に好ましくは20〜60重量部の範囲にあることが好ましい。更により好ましくは、25〜55重量部である。
また、本発明における感光性樹脂組成物中の架橋剤量は、親水性樹脂、架橋剤、有機微粒子を合計100重量部とした時に、10〜70重量部の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは15〜50重量部である。より好ましくは、15〜40重量部である。架橋剤量が該範囲内にあることにより、本発明の平版印刷用版において、良好な親水性と良好な耐刷性能を発揮することができる。
さらに、感光性樹脂組成物における親水性樹脂の配合量は、親水性樹脂、架橋剤、有機微粒子を合計100重量部とした時に、10〜60重量部の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、15〜50重量部の範囲であることが好ましい。更により好ましくは、20〜40重量部である。
光吸収剤の量は、版の耐刷性や親水性に悪影響を及ぼさず、また、光吸収剤の効果を十分得るために、本発明の感光性樹脂組成物における光吸収剤の配合比は、親水性樹脂、架橋剤、有機微粒子を合計100重量部とした時に、光吸収剤2〜40重量部であることが好ましく、2〜30重量部であることがより好ましい。このように感光性組成物の各成分をコントロールすることにより、物理形状としての親水効果も高められ、かつ、化学的な、すなわち組成としての親水性も良好なものとし得ると考えられる。
本発明の平版印刷用原版においては、支持体に直接または他の層を介して親水層を設けるが、その際用いる支持体の具体例としては、アルミ板、鋼板、ステンレス板、銅板等の金属板やポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂等のプラスチックフィルムや紙、アルミ箔ラミネート紙、金属蒸着紙、プラスチックフィルムラミネート紙等が挙げられる。これらの支持体(基材)の厚さは特に制限はないが通常100〜400μm程度である。又、これらの基材は密着性の改良等のために酸化処理、クロメート処理、サンドブラスト処理、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。また、支持体と親水層との密着性を高める等の目的で支持体と親水層との間にプライマー層(下地層)を設けることもできる。プライマー層としては、特に制限はないが、上記有機微粒子を用いることが好ましい。
本発明の平版印刷用原版に形成される親水層は、親水性樹脂、架橋剤、有機微粒子および光吸収剤を含有する感光性樹脂組成物が含まれる溶液を基板に塗布し、乾燥、硬化すればよい。塗布する方法としては塗布する溶液の粘度や塗布速度等によって異なるが、通常例えば、ロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンフローコーター、ダイコーターやスプレー法等を用いれば良い。塗布溶液を塗布した後、加熱して乾燥及び親水性樹脂の架橋を行う。加熱温度は通常50〜200℃程度である。親水層の膜厚は特に制限はないが、通常0.5〜10μm程度が好ましい。
本発明の平版印刷用原版においては、親水性樹脂からなる親水層を形成した後、カレンダー加工したり、又該親水層を保護するために親水層の上にフィルムを積層しても良い。
本発明の平版印刷用原版は、光吸収剤の吸収波長域の光、例えば750〜1100nmの領域の光を照射すると、光吸収剤が該光を吸収して発熱し、この発熱により親水層の光照射部は、有機微粒子が熱融着して親水性が失われ親インク化し、平版印刷用原版は、平版印刷用版を得ることができる。この際、光の照射量を大きくし過ぎたり、又光吸収剤を多量に添加したりすると親水層が分解、燃焼等によって除去、融除されてしまい、照射部の周辺に分解物が飛散するので、このようなことは避けなければならない。
このように本発明の平版印刷用原版は光を照射した部分の親水層の親水性が親インク性に特性が変化し、現像や拭き取り操作をしなくても光の照射部にはインクが付着し、印刷が可能となる。
本発明における平版印刷用原版の光の照射に用いられる光の波長は特に限定はなく、光吸収剤の吸収波長域に合致しする光を用いればよい。照射に際しては照射速度の点から収束光を高速で走査するのが好ましく、使用し易く、且つ高出力の光源が適しており、この点から照射する光としてはレーザー光、特に750〜1100nmの波長域の発振波長を有するレーザーの光が好ましく、例えば830nmの高出力半導体レーザーや1064nmのYAGレーザーが用いられる。これらのレーザーを搭載した露光機は所謂サーマル用プレートセッター(露光機)として既に市場に供されている。
上述のように本発明の平版印刷用原版は、光を照射した部分の親水層の親水性が親インク性に特性が変化し、現像や拭き取り操作をしなくても光の照射部にはインクが付着し、印刷が可能となる、現像レスの印刷版として用いることができ、またこのように用いることが最も好ましいが、この方式以外にも、別途親水層の上に画像形成層を設けて、印刷用原版として用いることもできる。本発明の構成によれば、非画線部の親水性に優れ、また、有機化合物で構成された画像形成層と密着性に優れる為、画像部の良好な耐久性を得ることができる。
また、本発明における親水性層は有機化合物を主成分として構成されており、この為、断熱性に優れたものとなる。これにより、赤外線レーザーによる画像形成層に適用した場合、レーザー光が効率よく画像形成必要な熱エネルギーとして利用され、高感度、高解像度の画像形成が可能であるという利点をも有する。適用可能な画像形成層としては、例えば、紫外線による画像形成可能なポジタイプ、ネガタイプ、フォトポリマータイプ、赤外線レーザーで画像記録するサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、さらに、現像処理を印刷機上で行う、機上現像タイプ等が挙げられる。また、親油性素材を直接、親水層に付与することで画線を形成する方式も好ましく用いられる。親油性素材直接、親水層に付与することで画像を形成する方式として、具体的には熱転写方式のプリンタを用いて、サーマルヘッドにより熱溶融性インク層を有するインクリボンから熱溶融性インクを親水性層表面に画像様に転写させる熱転写方式や、公知のインクジェット方式を用いる方法が挙げられる。
本発明においては、親水層が有機化合物を主成分として構成されたものであることにより、インク汚れの回復性が良化すること、充分な材料強度が得られることに加え、画線部をインクジェット方式等により形成する際、すなわち親水層上に何らかの有機化合物を付着させることにより画線を形成する際に、画線を形成するのに用いられる有機化合物との密着性が向上される効果があり好ましい。更には、前述のように現像レスの印刷版を提供するにあたって、良好な画線形成を生じ得る効果があるため好ましい。
以下、実施例により更に詳細に本発明について説明するが、本発明はこの実施例に限定されることはない。
実施例1
(感光性樹脂組成物水溶液の調整)
下記組成にて、親水性樹脂水溶液、架橋剤、有機微粒子および光吸収剤を室温にて混合し、感光性樹脂組成物の水溶液を得た。以下に示す「部」はそれぞれの樹脂または化合物の、固形分についての重量部を示す。なお、動的光散乱法(大塚電子株式会社製LPA3100)により測定したウレタン微粒子UD350の重量平均粒子径は0.03μmであった。また、ポリアクリルアミド水溶液ホープロンH520B(固形分20部)の25℃におけるブルックフィールド粘度は6800センチポイスであった。
親水性樹脂;ポリアクリルアミド樹脂(三井化学(株)製、ホープロンTM H520B 35部
架橋剤;メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製、サイメルTM385) 30部
有機微粒子;ウレタン微粒子(三井化学(株)製、エマルジョンオレスターTMUD350) 35部
光吸収剤;シアニン色素(メタノール溶液中でのλmax 784nm, εmax 2.43×10Lmol−1cm−1) 15部
界面活性剤;アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオコールTMYSK) 2.0部
界面活性剤;パーフルオロアルキルベタイン(セイミケミカル(株)製、サーフロンTMS―131)0.25部
(現像レス平版印刷用原版の作成・描画・平版印刷版の製造)
厚さ0.24mmのアルミニウム板に、水分散ウレタン樹脂水溶液(三井化学(株)製、オレスターTMUD350、固形分40重量%)を、ワイヤーバーを用いて塗布した後、150℃10分間乾燥し、下地層を成膜した。次いで、下地層の上に、上記組成からなる感光性樹脂組成物の水溶液を、ワイヤーバーを用いて塗布した後、150℃で30分間乾燥し、膜厚約2μmの感光層を成膜して現像レス平版印刷原版を作成した。この原版に波長830nmの半導体レーザー光を270mJ/cmの照射エネルギー密度となるように集光しながら走査照射して、175線/インチの画像情報の描画を行った。
(印刷評価)
この描画した版を、湿し水を用いるオフセット印刷機(小森コーポレーション製SPRINT26)にセットし、インクとして大日本インキ(株)製のバリウスTMG-N、湿し水として(株)日研化学研究所製のH液アストロマーク3の1.5%水溶液を使用し、毎時9000枚の印刷速度で印刷を行い、良好な印刷画像を得た。なお、この際の印刷時の水量は、20ポイントであった。その後継続して5万枚の印刷を行った後にも非画線部の汚れは発生しておらず、良好な非画線部耐刷性を確認した。
(形態観察および画像解析)
上記の手法により得られた描画前の印刷版の一部を切り出し、25℃に調節されて純水に24時間つけた後、これを取り出し、25℃に調節された室内にて放置し、自然乾燥させた。該印刷版の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図1に示す微細な空隙を有する版断面となっていることを確認した。なお、浸水前の印刷版も同様にSEM観察したところ、空隙は確認されなかった。また、上記5万枚印刷後の版を同様にSEM観察したところ、浸水処理をした印刷版と同様な空隙を有する版断面となっていることを確認した。さらに上記の手法により得られた印刷版を8千枚印刷し、その後同様にSEM観察したところ、浸水処理をした版および5万枚印刷後の版と同様な空隙を有する版断面となっていることを確認した。また、上記の純水に24時間つけた後の印刷版切片のSEM観察画像の空隙部を画像処理ソフト(Planetron Image-Pro Plus)を用いて画像解析した。空隙部分の直径(円相当径)の平均値は201nmで、親水層全体に対する空隙部分の割合(空隙部分の面積率)は、29%であった。
実施例2
(感光性樹脂組成物水溶液の調整)
下記組成にて、親水性樹脂水溶液、架橋剤、有機微粒子および光吸収剤を室温にて混合し、感光性樹脂組成物の水溶液を得た。
親水性樹脂;ポリアクリルアミド樹脂(三井化学(株)製、ホープロンTM H520B) 30部
架橋剤;メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製、サイメルTM385)25部
有機微粒子;ウレタン微粒子(三井化学(株)製、エマルジョンオレスターTMUD350) 45部
光吸収剤;シアニン色素(メタノール溶液中でのλmax 784nm, εmax 2.43×10Lmol−1cm−1)12部
界面活性剤;アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオコールTMYSK) 5部
界面活性剤;パーフルオロアルキルベタイン(セイミケミカル(株)製、サーフロンTMS―131)0.25部
(現像レス平版印刷用原版の作成・描画・平版印刷版の製造)
厚さ0.24mmのアルミニウム板に、水分散ウレタン樹脂水溶液(三井化学(株)製、オレスターTMUD350、固形分40重量%)を、ワイヤーバーを用いて塗布した後、140℃10分間乾燥し、下地層を成膜した。次いで、下地層の上に、上記組成からなる感光性樹脂組成物の水溶液を、ワイヤーバーを用いて塗布した後、160℃で30分間乾燥し、膜厚約2μmの感光層を成膜して現像レス平版印刷原版を作成した。この原版に波長830nmの半導体レーザー光を300mJ/cmの照射エネルギー密度となるように集光しながら走査照射して、175線/インチの画像情報の描画を行った。
(印刷評価)
この描画した版を、湿し水を用いるオフセット印刷機(小森コーポレーション製SPRINT26)にセットし、インクとして大日本インキ(株)製のバリウスTMG-N、湿し水として(株)日研化学研究所製のH液アストロマーク3の1.5%水溶液を使用し、毎時9000枚の印刷速度で印刷を行い、良好な印刷画像を得た。なお、この際の印刷時の水量は、20ポイントであった。その後継続して5万枚の印刷を行った後にも非画線部の汚れは発生しておらず、良好な非画線部耐刷性を確認した。
(形態観察および画像解析)
上記の手法により得られた描画前の印刷版の一部を切り出し、25℃に調節されて純水に24時間つけた後、これを取り出し、25℃に調節された室内にて放置し、自然乾燥させた。該印刷版の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、微細な空隙を有する版断面となっていることを確認した。なお、浸水前の印刷版も同様にSEM観察したところ、空隙は確認されなかった。また、上記5万枚印刷後の版を同様にSEM観察したところ、浸水処理をした印刷版と同様な空隙を有する版断面となっていることを確認した。さらに、上記の純水に24時間つけた後の印刷版切片のSEM観察画像における空隙部分を画像処理ソフト(Planetron Image-Pro Plus)を用いて画像解析した。空隙部分の直径(円相当径)の平均値は152nmで、親水層全体に対する空隙部分の割合(空隙部分の面積率)は、25%であった。
実施例3
(感光性樹脂組成物水溶液の調整)
下記組成にて、親水性樹脂水溶液、架橋剤、有機微粒子および光吸収剤を室温にて混合し、感光性樹脂組成物の水溶液を得た。
親水性樹脂;ポリアクリルアミド樹脂(三井化学(株)製、ホープロンTM H520B) 20部
架橋剤;メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製、サイメルTM385)35部
有機微粒子;ウレタン微粒子(三井化学(株)製、エマルジョンオレスターTMUD350) 45部
光吸収剤;シアニン色素(メタノール溶液中でのλmax 784nm, εmax 2.43×10Lmol−1cm−1)12部
界面活性剤;アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオコールTMYSK) 1.5部
界面活性剤;パーフルオロアルキルベタイン(セイミケミカル(株)製、サーフロンTMS―131)0.15部
(現像レス平版印刷用原版の作成・描画・平版印刷版の製造)
厚さ0.24mmのアルミニウム板に、水分散ウレタン樹脂水溶液(三井化学(株)製、オレスターTMUD350、固形分40重量%)を、ワイヤーバーを用いて塗布した後、150℃10分間乾燥し、下地層を成膜した。次いで、下地層の上に、上記組成からなる感光性樹脂組成物の水溶液を、ワイヤーバーを用いて塗布した後、155℃で30分間乾燥し、膜厚約2μmの感光層を成膜して現像レス平版印刷原版を作成した。この原版に波長830nmの半導体レーザー光を300mJ/cmの照射エネルギー密度となるように集光しながら走査照射して、175線/インチの画像情報の描画を行った。
(印刷評価)
この描画した版を、湿し水を用いるオフセット印刷機(小森コーポレーション製SPRINT26)にセットし、インクとして大日本インキ(株)製のバリウスTMG-N、湿し水として(株)日研化学研究所製のH液アストロマーク3の1.5%水溶液を使用し、毎時9000枚の印刷速度で印刷を行い、良好な印刷画像を得た。なお、この際の印刷時の水量は、20ポイントであった。その後継続して5万枚の印刷を行った後にも非画線部の汚れは発生しておらず、良好な非画線部耐刷性を確認した。
(形態観察および画像解析)
上記の手法により得られた描画前の印刷版の一部を切り出し、25℃に調節されて純水に24時間つけた後、これを取り出し、25℃に調節された室内にて放置し、自然乾燥させた。該印刷版の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、微細な空隙を有する版断面となっていることを確認した。なお、浸水前の印刷版も同様にSEM観察したところ、空隙は確認されなかった。また、上記5万枚印刷後の版を同様にSEM観察したところ、浸水処理をした印刷版と同様な空隙を有する版断面となっていることを確認した。さらに、上記の純水に24時間つけた後の印刷版切片のSEM観察画像における空隙部分を画像処理ソフト(Planetron Image-Pro Plus)を用いて画像解析した。空隙部分の直径(円相当径)の平均値は210nmで、親水層全体に対する空隙部分の割合(空隙部分の面積率)は、11%であった。
実施例4
(親水性ポリマーP-1の合成)
純水335gをフラスコに仕込み、窒素をバブリングして溶存酸素を除去した後、80℃に昇温した。窒素ガスを上記フラスコに流しながら、そこにアクリルアミド74.25g、純水75g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.75g、過硫酸カリウム0.75gを溶解した開始剤/モノマー水溶液を、内温を80℃に維持しながら、2時間に渡り連続滴下した。滴下終了後80℃で3時間重合を続けた後、冷却し、重合溶液をフラスコより抜き出した。該重合溶液の固形分は15%であった。得られた親水性樹脂P−1の分子量は、Mwが39万であった。また、該親水性樹脂P−1水溶液の25℃におけるブルックフィールド粘度は600センチポイスであった。
(感光性樹脂組成物水溶液の調整)
下記組成にて、親水性樹脂水溶液、架橋剤、有機微粒子および光吸収剤を室温にて混合し、感光性樹脂組成物の水溶液を得た。
親水性樹脂;P−1 35部
架橋剤;メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製、サイメルTM385)35部
有機微粒子;ウレタン微粒子(三井化学(株)製、エマルジョンオレスターTMUD350) 30部
光吸収剤;シアニン色素(メタノール溶液中でのλmax 784nm, εmax 2.43×10Lmol−1cm−1)15部
界面活性剤;アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオコールTMYSK) 2.5部
界面活性剤;パーフルオロアルキルベタイン(セイミケミカル(株)製、サーフロンTMS―131)0.25部
(現像レス平版印刷用原版の作成・描画・平版印刷版の製造)
厚さ0.24mmのアルミニウム板に、水分散ウレタン樹脂水溶液(三井化学(株)製、オレスターTMUD350、固形分40重量%)を、ワイヤーバーを用いて塗布した後、140℃10分間乾燥し、下地層を成膜した。次いで、下地層の上に、上記組成からなる感光性樹脂組成物の水溶液を、ワイヤーバーを用いて塗布した後、150℃で30分間乾燥し、膜厚約2μmの感光層を成膜して現像レス平版印刷原版を作成した。この原版に波長830nmの半導体レーザー光を300mJ/cmの照射エネルギー密度となるように集光しながら走査照射して、175線/インチの画像情報の描画を行った。
(印刷評価)
この描画した版を、湿し水を用いるオフセット印刷機(小森コーポレーション製SPRINT26)にセットし、インクとして東洋インキ製造(株)製のバリウスTMG-N、湿し水として(株)日研化学研究所製のH液アストロマーク3の1.5%水溶液を使用し、毎時9000枚の印刷速度で印刷を行い、良好な印刷画像を得た。なお、この際の印刷時の水量は、20ポイントであった。その後継続して5万枚の印刷を行った後にも非画線部の汚れは発生しておらず、良好な非画線部耐刷性を確認した。
(形態観察および画像解析)
上記の手法により得られた描画前の印刷版の一部を切り出し、25℃に調節されて純水に24時間つけた後、これを取り出し、25℃に調節された室内にて放置し、自然乾燥させた。該印刷版の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、微細な空隙を有する版断面となっていることを確認した。なお、浸水前の印刷版も同様にSEM観察したところ、空隙は確認されなかった。また、上記5万枚印刷後の版を同様にSEM観察したところ、浸水処理をした印刷版と同様な空隙を有する版断面となっていることを確認した。さらに、上記の純水に24時間つけた後の印刷版切片のSEM観察画像における空隙部分を画像処理ソフト(Planetron Image-Pro Plus)を用いて画像解析した。空隙部分の直径(円相当径)の平均値は312nmで、親水層全体に対する空隙部分の割合(空隙部分の面積率)は、31%であった。
比較例1
(親水性樹脂P-2の合成)
純水335gをフラスコに仕込み、窒素をバブリングして溶存酸素を除去した後、80℃に昇温した。窒素ガスを上記フラスコに流しながら、そこにアクリルアミド63.75g、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート11.25g、純水300gからなるモノマー溶液と過硫酸カリウム0.225gを純水40gに溶解した開始剤の水溶液を、内温を80℃に維持しながら、別々に2時間に渡り連続滴下した。滴下終了後、80℃で3時間重合を続けた後、冷却し、重合溶液をフラスコより抜き出した。該重合溶液の固形分は10%であった。
(感光性樹脂組成物水溶液の調整)
下記組成にて、親水性樹脂水溶液、架橋剤、有機微粒子および光吸収剤を室温にて混合し、感光性樹脂組成物の水溶液を得た。
親水性樹脂;親水性樹脂P−2 35部
架橋剤;メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製、サイメルTM385) 30部
有機微粒子;ウレタン微粒子(三井化学(株)製、エマルジョンオレスターTMUD350) 35部
光吸収剤;シアニン色素(メタノール溶液中でのλmax 784nm, εmax 2.43×10Lmol−1cm−1) 12部
界面活性剤;アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオコールTMYSK) 1.5部
界面活性剤;パーフルオロアルキルベタイン(セイミケミカル(株)製、サーフロンTMS―131)0.25部
(現像レス平版印刷用原版の作成・描画・平版印刷版の製造)
塗布した感光性樹脂組成物水溶液を上記組成に変更した以外は実施例1と同様に、現像レス平版印刷用原版の作成・描画・平版印刷版の製造を行った。
(印刷評価)
実施例1と同様の条件で印刷を実施したところ、水量を35ポイントとすることで、絡みのない良好な画像を得ることができた。この水量で継続して印刷を行ったところ、5万枚の印刷の後には、非画線部に汚れが発生していた。
(形態観察)
実施例1と同様に描画前の印刷版の一部を切り出し、25℃に調節されて純水に24時間つけた後、これを取り出し、25℃に調節された室内にて放置し、自然乾燥させた。該印刷版の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。版断面に空隙は確認されなかった。なお、浸水前の印刷版、および上記5万枚印刷後の版も同様にSEM観察したところ、やはり空隙は確認されなかった。
比較例2
(感光性樹脂組成物水溶液の調整)
下記組成にて、親水性樹脂水溶液、架橋剤および光吸収剤を室温にて混合し、感光性樹脂組成物の水溶液を得た。
親水性樹脂;ポリアクリルアミド樹脂(三井化学(株)製、ホープロンTM H520B) 55部
架橋剤;メチル化メラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ(株)製、サイメルTM385) 45部
光吸収剤;シアニン色素(メタノール溶液中でのλmax 784nm, εmax 2.43×10Lmol−1cm−1) 12部
界面活性剤;アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオコールTMYSK) 1.5部
界面活性剤;パーフルオロアルキルベタイン(セイミケミカル(株)製、サーフロンTMS―131)0.25部
(現像レス平版印刷用原版の作成・描画・平版印刷版の製造)
塗布した感光性樹脂組成物水溶液を上記組成に変更した以外は実施例1と同様に、現像レス平版印刷用原版の作成・描画・平版印刷版の製造を行った。
(印刷評価)
実施例1と同様の条件で印刷を実施したところ、水量20ポイントでは、非画線部に地汚れが発生した。非画線部の汚れを解消する為に、順次水量を上げていったところ、水量を55ポイントとすることで、非画線部に地汚れのない印刷物を得ることができた。しかしながら、この時、画像部への着インキ性は不良であり、良好な印刷物を得ることはできなかった。
(形態観察)
実施例1と同様に描画前の印刷版の一部を切り出し、25℃に調節されて純水に24時間つけた後、これを取り出し、25℃に調節された室内にて放置し、自然乾燥させた。該印刷版の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、2〜5μm程度の島部を有する海島状の相分離構造が確認されたが、空隙の形成は確認されなかった。
良好な耐刷性を示す親水層を有する平版印刷用原版およびその原版から得られる平版印刷用版、更には、近赤外領域の光に感光し、版に直接レーザー光で描画でき、且つ現像や拭き取り操作が不要で、良好な耐刷性を示す感光性親水層を有する平版印刷用原版およびその原版から得られる平版印刷用版を提供する。
実施例1で作製した印刷版の断面SEM写真である。(純水に24時間つけた後の状態)

Claims (6)

  1. 親水層内部に直径が平均値にして10nm以上1000nm以下である空隙を5%〜60%有し、該親水層が有機化合物を主成分として形成され、平版印刷において非画線部となることを特徴とする平版印刷用原版。
  2. 有機化合物を主成分とした親水層が相分離構造を形成し、且つ1時間の印刷後および/または純水に10℃〜30℃の状態で24時間浸水した後に、親水層内部に直径が平均値として10nm以上1000nm以下である空隙を5%〜60%形成し、平版印刷において非画線部となることを特徴とする平版印刷用原版。
  3. 親水層内部の空隙が、10〜35%である請求項1又は2記載の平版印刷用原版。
  4. 親水層が、光又は熱エネルギーの照射によって表面が親インク性に変化する性質を有するものである請求項1〜3記載の平版印刷用原版。
  5. 親水層を形成する親水性樹脂組成物が、少なくとも下記一般式(1)(化1)及び/または(2)(化2)で示されるN−アルキルまたはN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド系化合物を用いて反応して得られる親水性樹脂を含むものである、請求項1〜4記載の平版印刷用原版。
    (式中Rは、水素原子またはメチル基、R、Rは、水素原子、低級アルキルまたは低級アルコキシ基を表す。)
    (式中Rは、水素原子またはメチル基、Aは、(CH2)n(但し、nは4〜6の整数を示す)または(CH2O(CH2を表す。)
  6. 請求項1〜5記載の平版印刷用原版に光又は熱エネルギーを照射して得られた平版印刷用版。
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