次に、図面を参照して、本発明の第1〜第6の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、以下に示す第1〜第6の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子は、図1に示すように、(0001)面で、六方晶系SiC単結晶からなるクラッド層11と、ウルツ鉱構造で、禁制帯幅Eg=1.8eV以上、3.1eV未満のZnO系化合物半導体混晶からなり、クラッド層11とヘテロ接合をなす発光層12とを備える。クラッド層11は、不純物密度6×1017cm-3〜1×1019cm-3程度のp型SiC単結晶からなるp型クラッド層であるが、図1では、2H−SiC,4H−SiC,6H−SiC,又は8H−SiC等のp型SiC単結晶基板11から構成されることが可能である。発光層12を構成するZnO系化合物半導体混晶は、(0001)面のSiC単結晶からなるクラッド層11の上にエピタキシャル成長した不純物密度1×1016cm-3〜1×1018cm-3程度のn型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)である。そして、発光層12の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している。オーミックコンタクト層14には、インジウム(In)、In/金(Au)、Au/ゲルマニウム(Ge)等のカソード(カソード電極)15が設けられている。図1では、オーミックコンタクト層14の左側の一部にカソード15が設けられているが、単なる例示であり、例えば平面図上矩形のオーミックコンタクト層14の周辺を周回するような額縁状の形状等他の形状でも構わない。或いは、錫(Sn)をドープした酸化インジウム(In2O3)膜(ITO)、インジウム(In)をドープした酸化亜鉛(ZnO)膜(IZO)、ガリウム(Ga)をドープした酸化亜鉛膜(GZO)、酸化錫(SnO2)、耐酸性を付与するためにフッ素をドープした酸化亜鉛膜(FTO)等の透明電極を介して、カソード15を設けても構わない。一方、p型SiC単結晶基板11からなるp型クラッド層の裏面には、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)/Ni、Al/チタン(Ti)、Al/タンタルシリサイド(TaSi2)、炭化チタン(TiC)/Al等のアノード(アノード電極)18が設けられている。
図1に示す第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、p型クラッド層11の厚さは、0.1mm〜1mm、好ましくは0.2mm〜0.8mm程度の値が採用可能であるが、具体的には市販されているp型SiC単結晶基板の厚さ(例えば0.3mm〜0.6mm程度)をそのまま適用しても良い。又、発光層12の厚さは、5nm〜400nm、好ましくは50nm〜200nm程度に選べば良く、n型クラッド層13の厚さは、20nm〜800nm、好ましくは200nm〜500nm程度に選べば良く、オーミックコンタクト層14の厚さは、10nm〜100nm、好ましくは10nm〜30nm程度に選べば良い。更に、カソード15及びアノード18の厚さは、100nm〜2μm、好ましくは0.5μm〜2μm程度に選べば良い。
本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造を図2に示す。図2(d)の左側及び図2(a)には、p型クラッド層11に対応する禁制帯幅Eg=3.26eVのp型SiCのエネルギーバンド構造を、図2(d)の中央及び図2(b)には、発光層12に対応する禁制帯幅Eg=2.8eV(青色)のn型Zn0.92Cd0.08Oのエネルギーバンド構造を、図2(d)の右側及び図2(c)には、n型クラッド層13に対応する禁制帯幅Eg=3.65eVのn型Mg0.1Zn0.9Oのエネルギーバンド構造を示している。又、図2の説明では、ヘテロ接合の特性を理解し易くするため、ヘテロ接合界面に界面準位が存在しない場合の理想的な半導体ヘテロ接合のエネルギー準位について例示している。図2中、SiCの電子親和力をχSiC=4.2eV、Zn0.92Cd0.08Oの電子親和力をχZnCdO=4.12eV、Mg0.1Zn0.9Oの電子親和力をχMgZnO=3.83eVとしている。
図2に示すように、p型SiCとn型Zn0.92Cd0.08Oとの接合界面の伝導帯には、両者の電子親和力χの違いからバンド不連続量ΔEcが存在し、その関係は下記の式(1)のように示すことができる。
ΔEc=χSiC−χZnCdO=0.08eV …(1)
更に、p型SiCとn型Zn0.92Cd0.08Oとの接合界面の荷電子帯には、
ΔEv=EgSiC+ΔEc−EgZnCdO=0.54eV …(2)
バンド不連続量ΔEvが存在する。
一方、図2のn型Zn0.92Cd0.08Oとn型Mg0.1Zn0.9Oとの接合界面の伝導帯には、両者の電子親和力χの違いからバンド不連続量(エネルギー障壁)ΔEcが存在するが図示を省略している。そのバンド不連続量ΔEcは下記の式(3)のように示すことができる。
ΔEc=χZnCdO−χMgZnO=0.29eV …(3)
更に、p型SiCとn型Zn0.92Cd0.08Oとの接合界面の荷電子帯には、
ΔEv=EgZnCdO+ΔEc−EgMgZnO=−0.56eV …(4)
バンド不連続量ΔEvが存在する。
図3に示すように、室温におけるウルツ鉱構造Zn1-xCdxO薄膜のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルはCd組成xが増加するに応じてZnOの3.28evからx=0.7の1.73eVまで低エネルギー側へシフトする。Cd組成x=0〜0.7の範囲における、すべてのスペクトルにおいて深い準位からの発光は観察されない。このことから、ウルツ鉱構造Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)薄膜からの発光は近紫外から可視域全般をカバーしており、半導体発光素子として有用であることが理解できる。Zn1-xCdxO薄膜の結晶構造はXRD測定から0≦x≦0.7の範囲でウルツ鉱構造c軸に強く配向し、(0002)ピークはCd組成が増加するに従って低角度側へシフトする。Cd組成が0.7より大きくなると(0002)ピークは消え、CdOに由来する岩塩構造の(220)、(111)ピークが現れる。
図4は、室温におけるZn1-xCdxO(0≦x≦0.7)薄膜のCd組成と、光学吸終端より求めた禁制帯幅(バンドギャップエネルギー)及びPL発光エネルギーより求めた禁制帯幅(バンドギャップエネルギー)との関係を示している。光学吸収端はCd組成の増加に応じて直線的に低エネルギー側へシフトする。ZnO(x=0)におけるPLピークは吸収端と同じエネルギーを示したが、混晶Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)はストークスシフトし、吸収端より低エネルギー側に発光ピークが示される。図4に示すように、ウルツ鉱構造Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)混晶のバンドギャップエネルギーは、1.8eVから3.3eVまでの広範囲波長において任意に制御できることが分かる。
MgOはバンドギャップエネルギー7.8eVで、結晶構造は岩塩構造の酸化物半導体である。Mg2+のイオン半径は0.057nmで、Zn2+のイオン半径0.06nmと非常に近い。MgzZn1-zOはZnOにMgを加えた三元混晶化合物半導体で、ZnOからMgOまでMgの組成zを制御することで図5に示すように、禁制帯幅(バンドギャップエルギー)、格子定数を変化させることができる。図5にはジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第38巻(1999年)L603頁に記載された松本らの結果(○)、アプライド・フィジックス・レター(Appl. Phys. Lett)第79巻(2001年)2022頁に記載されたパーク(W.I.Park)らの結果(▼)及びジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第42巻(2003年)L401頁に記載された高木らの結果(□)も合わせて示している。
図6はc軸方向の格子定数と禁制帯幅との関係をMgzZn1-zO混晶とZn1-xCdxO混晶について示している。牧野らはMgzZn1-zO/Zn1-xCdxO(系においてa軸長の変化はどちらの混晶においてもわずかに大きくなると報告している(アプライド・フィジックス・レター(Appl. Phys. Lett)第76巻(2000年)3549頁参照。)。図6を見れば、MgzZn1-zO/Zn1-xCdxO(系ヘテロ構造成長では格子整合成長を行うことができると理解でき、格子不整合がストレインやピエゾ電界をもたらすことを考慮に入れると、In1-xGaxN/Al1-xGaxN系ヘテロ構造と比較して有利であることが分かる。
本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、室温で、赤色(1.8eV)から紫色(3.1eV)まで更に紫外光(3.3eV)の広いスペクトル範囲での発光が可能で、熱的に安定でしかも資源的枯渇のおそれの少ない半導体発光素子を提供できる。特に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)の組成xを変えることにより、フルカラー発光を可能にしているので、フルカラーのスペクトル帯域を、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる複数の(一群の)半導体発光素子を提供できるので、フルカラーをカバーする複数の(一群の)半導体発光素子それぞれの動作電圧の差が、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくするようにできる。
<リモートプラズマ励起MOCVD装置>
本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、発光層12となるZn1-xCdxO薄膜中に熱力学的固溶限界を越えるCdを導入し、Cdの組成を任意に制御するためには、反応過程にラジカルを導入し表面反応を促進し、低温での非平衡度の高い結晶成長を行う必要がある。
この反応過程にラジカルを導入し有機金属の分解を促進し、低温での結晶成長を可能にする方法の一例として、リモートプラズマ励起MOCVD法を説明する。即ち、図1に示したp型SiC単結晶基板11上に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)発光層12を成長する際に、図7に示すリモートプラズマ励起MOCVD装置を用い、低温で、非平衡度の高い結晶成長を行い、Zn1-xCdxO薄膜中に熱力学的固溶限界を越えるCdを導入する。
従来のMOCVD法では熱で原料を分解する必要があるために、原料により基板温度が決められ、低温化には限界がある。リモートプラズマ励起MOCVD装置では、従来あるMOCVD装置にプラズマ生成部と輸送部を加えて、反応過程にラジカルを導入し有機金属の分解を促進し、低温での結晶成長を可能にしている。即ち、リモートプラズマ励起MOCVD装置では、酸素(O2)や水素(H2)等をプラズマ化し、そのうち必要な励起種、例えば中性原子ラジカルを取り出して薄膜成長反応に用いる。このリモートプラズマ励起MOCVD装置は、一般に行われているMOCVD法では成長圧力は常圧から減圧(数hPa)であるのに対し、これよりも一桁以上小さい10Pa−1Paの圧力範囲に保つことで、気相中での反応を制御することができることが特徴である。
このため、図7に示すように、反応容器となるステンレスチャンバー66とは別の場所にプラズマジェネレータ61を配置し、このプラズマジェネレータ61で酸素、水素、ヘリウム(He)をプラズマ化し、発生するイオン、電子、ラジカル、光の内、比較的寿命が長い中性原子ラジカル(酸素ラジカル、水素ラジカル、ヘリウムラジカル)をステンレスチャンバー66へ輸送し、原料の分解反応に使用する。図7に示される様に、縦型のステンレスチャンバー66の内部には、ステンレスチャンバー66の上部を封止するフランジ67を介して、石英ガラス製のガス流案内管65が取り付けられている。ステンレスチャンバー66は、冷却水68により水冷されている。p型SiC単結晶基板11は、SiCコートのカーボンサセプタ72上に搭載され、原料気体の導入口より下方約10cmの位置に水平におかれている。カーボンサセプタ72を搭載する基板ホルダ69には、抵抗加熱ヒータ73が内蔵されており、p型SiC単結晶基板11に対し反対側に設けられた熱電対により温度制御を行う。この基板ホルダ69には回転機構が備えられており、例えば、p型SiC単結晶基板11を約25rpmで回転させながら成長を行う。図示を省略していうるが、リモートプラズマ励起MOCVD装置はロードロック機構を備え、ステンレスチャンバー66は常に外気と遮断されている。
プラズマジェネレータ61には、例えば、φ35mmのホウケイ酸ガラス又は石英ガラス管のホローカソード(Hollow-cathode)−ジェット(jet)型タイプのプラズマジェネレータが採用可能である。但し、プラズマジェネレータ61としては、図7に示すホローカソード方式以外に誘導結合プラズマ(ICP)方式、マイクロ波誘導プラズマ(MIP)方式、レーザ誘起プラズマ(LIP)方式や平行平板方式でも良い。プラズマジェネレータ61は、例えば、p型SiC単結晶基板11からおよそ20cmのところに配置すれば良い。そして、プラズマジェネレータ61には、例えば、13.56MHzの高周波を10W以上のパワーで印加してプラズマを発生せて、輸送管を通してp型SiC単結晶基板11上にラジカルが導入される。ステンレスチャンバー66とラジカル輸送管はメタルフランジで接続されているが、ラジカルが再結合して消滅するのを防ぐためにフランジ内に石英ガラスの内管を設けて、輸送中のラジカルが直接金属表面に触れることのない様に設計するのが好ましい。
Zn1-xCdxOのエピタキシャル成長には、原料として、II族原料にはジエチル亜鉛(DEZn)とジメチルカドミウム(DMCd)を、VI族原料には酸素ガスを使用する。一方、MgzZn1-zOのエピタキシャル成長には、原料として、II族原料にはジエチル亜鉛(DEZn)とビスエチルシクロペンタジニエルマグネシウム(EtCp2Mg)を、VI族原料には酸素ガスを使用する。MOCVD法においてMgプリカーサー原料にCp2MgやMeCp2Mgが用いられている例があるが、EtCp2Mgを用いてMgzZn1-zOを作製している例はないが、本発明の第1の実施形態では、安定な成長法として採用している。有機原料であるDEZn、EtCp2Mg、DMCdは常温で液体である。このため、DEZn、EtCp2Mg、DMCdは、キャリアガスでバブリングを行うことにより、チャンバー上部のフランジ67に設けられた輸送管を介して、ステンレスチャンバー66内に導入している。EtCp2Mg原料ラインにはラインヒータを設け、原料輸送中に輸送管中で固化を防止している。又、DEZn、DMCdとは稼働温度が異なるため、チャンバー導入には別ライン(輸送管)をEtCp2Mg用に用意している。Zn1-xCdxO薄膜の組成xの制御はII族原料の流量の操作により可能であり、その組成xはEPMAで同定すれば良い。EPMAの同定時の組成測定の参照には、ZnメタルとCdTe結晶を用いれば良い。
成長中の成長速度は、ステンレスチャンバー66に取り付けられた石英窓64bよりHe−Neレーザ等の光源62からの光を照射して、p型SiC単結晶基板11表面と膜表面で反射した光をフォトダイオードセル等の光検出器63で受光し、その干渉を用いてインシツ(in-situ)で測定を行う。膜厚の校正は成長後の触針式表面形状測定装置を用いて膜厚を測定する。成長中のプラズマ状態を観察するために、チャンバー上部のフランジ67に取り付けられた石英製ののぞき窓(観察窓)64aからプラズマ種の発光をスペクトロメーターを用いて観察する。
<第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法>
次に、図8を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法を説明する。尚、以下に述べる半導体発光素子の製造方法は、一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。例えば、以下の説明では、p型SiC単結晶基板11上のZn1-xCdxO薄膜作製で、熱力学的固溶限界を越えてCdを導入するために、図7に示すリモートプラズマ励起MOCVD装置を用いた場合を説明するが、Zn1-xCdxO薄膜作製時の反応過程に導入するラジカルは、紫外線励起等、リモートプラズマ励起MOCVD装置以外の他の手法によっても構わない。
(イ)先ず、面方位(0001)面のp型SiC単結晶基板11をアセトン、メタノール等の有機溶媒で洗浄する。その後、超純水で超音波洗浄した後、高純度窒素等でブローし、乾燥させる。その後、融解したNaOH(500度)でp型SiC単結晶基板11の表面をエッチングし、純水で洗浄(リンス)する。そして、5%〜100%(好ましくは5〜20%)の希釈フッ酸でエッチング(酸化層をエッチング)し、純水で洗浄後、更に図7に示すステンレスチャンバー66内に設けられたSiCコートのカーボンサセプタ72上に搭載される。カーボンサセプタ72は、原料気体の導入口より下方約10cmの位置になるように、基板ホルダ69に搭載されている。
(ロ)p型SiC単結晶基板11をカーボンサセプタ72上にセットしたのちステンレスチャンバー66の内部を10-2Pa〜10-8Pa程度に真空排気し、基板温度600℃にまで加熱する。そして、基板温度600℃で、チャンバー内圧力が13Pa〜1.3Paとなるように、水素(H2)ガスを導入し、水素雰囲気中、少なくとも45分以上、好ましくは1時間程度、水素ラジカルを照射し、水素ラジカルにより、p型SiC単結晶基板11の表面をクリーニングする。
(ハ)その後、基板温度を、300℃から600℃程度の最適基板温度に設定し(場合により300℃以下でも可)、p型SiC単結晶基板11の表面にDEZnガスを導入しZn原料を供給し、水素ラジカル照射でZnの原子層をp型SiC単結晶基板11の表面に、少なくとも一原子層、好ましくはほぼ一原子層成長する。
(ニ)その後、水素ラジカルの照射を停止し、Zn原料(DEZn)、Cd原料(DMCd)をp型SiC単結晶基板11の表面に導入し、酸素ラジカルを照射し、p型SiC単結晶基板11の表面に、発光層12となるZn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)を図8(a)に示すように成長する。Cd組成xは、Zn原料(DEZn)とCd原料(DMCd)の流量比を変化させることにより制御できる。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)膜の成長は、Zn原料(DEZn)とCd原料(DMCd)は基板表面(化学反応領域)で同一のラインに合流させて、水素ガスの雰囲気中に酸素ラジカルと合流して化学反応させる。このとき、酸素ラジカル用酸素流量5cc/minに対して水素ガス10cc/min以上とすることが好ましい。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)膜の電気電導度(抵抗率)は、基板温度に限らず、モル数でVI族原料/II族原料比を60以下とすれば抵抗率が減少する。一方、VI族原料/II族原料比を80以上とすれば、高抵抗化する。60<VI族原料/II族原料<80の領域では、電気電導度(抵抗率)は基板温度で制御可能である。例えば、基板温度400℃では、300Ω-cm(不純物密度5×1015cm-3 )程度、基板温度500℃では、30Ω-cm(不純物密度2×1017cm-3 )、基板温度600℃では、0.1Ω-cm(不純物密度3×1018cm-3 )のように制御可能であるので、第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法では、基板温度400℃で成長する。
(ホ)更に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)を成長した後、基板温度400℃で、Zn原料(DEZn)、Mg原料(EtCp2Mg)をZn1-xCdxO(0≦x≦0.7)膜の表面に導入し、酸素ラジカルを照射し、発光層12の表面に、n型クラッド層13となるMgzZn1-zO(0≦z≦1)を成長する。MgzZn1-zO(0≦z≦1)薄膜の組成zは、Zn原料(DEZn)とMg原料(EtCp2Mg)の流量比を変化させることにより制御できる。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)膜の成長と同様に、MgzZn1-zO(0≦z≦1)膜の成長でも、酸素ラジカル用酸素流量5cc/minに対して水素ガス10cc/min以上とすることが好ましい。更に、n型クラッド層13となるMgzZn1-zO(0≦z≦1)を成長した後、基板温度を600℃に上昇し、Zn原料(DEZn)、Mg原料(EtCp2Mg)をn型クラッド層13の表面に導入し、酸素ラジカルを照射し、n型クラッド層13の表面に、図8(b)に示すように、オーミックコンタクト層14となるMgzZn1-zO(0≦z≦1)を成長する。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)膜の成長と同様に、MgzZn1-zO(0≦z≦1)膜の成長でも、電気電導度(抵抗率)は基板温度で制御可能であるので、基板温度を600℃に上昇することにより、不純物密度2×1018cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)膜が成長できる。更に、モル数でVI族原料/II族原料比を60以下として、抵抗率を減少させても良い。
(ヘ)次に、フォトレジスト16をオーミックコンタクト層14の表面の全面に塗布後、通常のフォトリソグラフィ技術によりフォトレジスト16をパターニングし、リフトオフ・マスクを形成する。このリフトオフ・マスク16を介して、図8(c)に示すように、In、In/Au、Au/Ge等の金属膜17を真空蒸着法、スパッタリング法等により堆積する。そして、リフトオフ・マスク16を除去すれば、図1に示すようなカソード(カソード電極)15がパターニングされる。一方、p型SiC単結晶基板11の裏面の全面にも、Ni、Al/Ni、Al/Ti、Al/TaSi2、TiC/Al等の金属膜を、真空蒸着法、スパッタリング法等により堆積する。図1では、アノード(アノード電極)18が左側に局在するようにパターニングされているが、p型SiC単結晶基板11の裏面側から光を取り出さないのであれば、p型SiC単結晶基板11の裏面の全面に金属膜を堆積し、広い面積のアノード18を形成すれば良い。その後、熱処理(シンタリング)して、カソード15及びアノード18のコンタクト抵抗を低減する。最後に、300μm×300μm〜1.5mm×1.5mm等の所定の大きさの矩形形状に劈開、若しくはダイアモンドブレード等で切断すれば、図1に示す半導体発光素子が完成する。尚、市販されている0.3mm〜0.6mm程度の厚さのp型SiC単結晶基板11を研磨により0.1mm〜0.2mm程度に薄くしてからアノード18を形成しても良い。
本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法によれば、室温で、赤色(1.8eV)から紫色(3.1eV)まで、更に紫外光(3.3eV)の広いスペクトル範囲での発光が可能で、熱的に安定でしかも資源的枯渇のおそれの少ない半導体発光素子が簡単に製造できる。特に、リモートプラズマ励起MOCVD法を用い、反応過程にラジカルを導入し表面反応を促進し、低温での非平衡度の高い結晶成長を行っているので、Zn原料(DEZn)とCd原料(DMCd)の流量比を変化させることにより、発光層12となるZn1-xCdxO薄膜中に熱力学的固溶限界を越えるCdを導入し、Cdの組成を任意に制御できる。この様に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)の組成xを制御することにより、フルカラー発光を可能にする複数の(一群の)半導体発光素子を製造できる。この結果、フルカラーのスペクトル帯域を、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる複数の(一群の)半導体発光素子で実現でき、フルカラーをカバーする複数の(一群の)半導体発光素子のそれぞれの動作電圧の差を、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくすることが容易であるため、回路構成が簡単になる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る半導体発光素子は、図9に示すように、六方晶系SiC単結晶からなるクラッド層11と、ウルツ鉱構造で、禁制帯幅Eg=1.8eV以上、3.1eV未満のZnO系化合物半導体混晶からなり、クラッド層11とヘテロ接合をなす発光層21とを備える。第1の実施の形態に係る半導体発光素子と同様に、クラッド層11は、面方位(0001)面で、不純物密度6×1017cm-3〜1×1019cm-3程度のp型SiC単結晶基板からなるp型クラッド層であり、図9では、2H−SiC,4H−SiC,6H−SiC,8H−SiC等のp型SiC単結晶基板11から構成されている。
しかし、発光層21を構成するZnO系化合物半導体混晶は、不純物密度1×1016cm-3〜1×1018cm-3程度のn型Zn1-xCuxO(0≦x≦1)である点で、第1の実施の形態に係る半導体発光素子とは異なる。その他の構成上の特徴、即ち、発光層21の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点、オーミックコンタクト層14には、インジウム(In)、In/金(Au)、Au/ゲルマニウム(Ge)等のカソード(カソード電極)15が設けられている点、更に、p型SiC単結晶基板11からなるp型クラッド層の裏面には、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)/Ni、Al/チタン(Ti)、Al/タンタルシリサイド(TaSi2)、炭化チタン(TiC)/Al等のアノード(アノード電極)18が設けられている点等は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子と同様である。又、発光層21の厚さ等、各層の厚さは、第1の実施の形態に係る半導体発光素子と同様であるので、重複した記載を省略する。更に、本発明の第2の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造は、基本的に図2と同様であるので、重複した記載を省略する。
本発明の第2の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、CuOの室温における禁制帯幅Egは約1.2eVであるので、Cuの組成xを変えることにより、室温で、赤色(1.8eV)から紫色(3.1eV)まで更に紫外光(3.3eV)の広いスペクトル範囲での発光が可能で、熱的に安定でしかも資源的枯渇のおそれの少ない半導体発光素子を提供できる。特に、Zn1-xCuxO(0≦x≦1)の組成xを変えることにより、フルカラー発光を可能にしているので、フルカラーのスペクトル帯域を、Zn1-xCuxO(0≦x≦1)という同一材料からなる複数の(一群の)半導体発光素子を提供できるので、フルカラーをカバーする複数の(一群の)半導体発光素子それぞれの動作電圧の差が、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくなるようにできる。
本発明の第2の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法は、p型SiC単結晶基板11上にZn1-xCuxO薄膜をエピタキシャル成長する点を除けば、基本的に第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法と同様な方法で製造できる。Zn1-xCuxO薄膜をエピタキシャル成長は、p型SiC単結晶基板11の表面にDEZnガスを導入しZn原料を供給し、水素ラジカル照射でZnの原子層をp型SiC単結晶基板11の表面に、少なくとも一原子層、好ましくはほぼ一原子層成長する後、Zn原料、Cu原料をp型SiC単結晶基板11の表面に導入し、酸素ラジカルを照射して行えば良い。Zn原料としては、DEZnが好適であり、Cu原料としては、銅(II)2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート(2,2,6,6-tetramethyl-3,5-heptanedione copper beta-diketonate :Cu(thd)2 )又は銅(II)2,4-ペンタンジオナート (2,4-pentanedionate copper)等が使用可能である。Cu組成xは、Zn原料とCu原料の流量比を変化させることにより制御できる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る半導体発光素子は、図10に示すように、六方晶系SiC単結晶からなるクラッド層11と、ウルツ鉱構造で、禁制帯幅Eg=1.8eV以上、3.1eV未満のZnO系化合物半導体混晶からなり、クラッド層11とヘテロ接合をなす発光層22とを備える。クラッド層11は、第1及び第2の実施の形態に係る半導体発光素子と同様に、面方位(0001)面の不純物密度6×1017cm-3〜1×1019cm-3程度のp型SiC単結晶基板からなるp型クラッド層であるが、発光層22を構成するZnO系化合物半導体混晶は、不純物密度1×1016cm-3〜1×1018cm-3程度のp型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)である点が第1及び第2の実施の形態に係る半導体発光素子とは異なる。
他の特徴、即ち、発光層22の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点、オーミックコンタクト層14には、In等のカソード(カソード電極)15が設けられている点、p型SiC単結晶基板11からなるp型クラッド層の裏面には、Ni等のアノード(アノード電極)18が設けられている点や、発光層22の厚さ等各層の厚さは、第1及び第2の実施の形態に係る半導体発光素子と同様であり、重複した説明を省略する。
本発明の第3の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造を図11に示す。図11の左側には、p型クラッド層11に対応する禁制帯幅Eg=3.26eVのp型SiCのエネルギーバンド構造を、図11の中央には、発光層22に対応する禁制帯幅Eg=2.8eV(青色)のp型Zn0.92Cd0.08Oのエネルギーバンド構造を、図11の右側には、n型クラッド層13に対応する禁制帯幅Eg=3.65eVのn型Mg0.1Zn0.9Oのエネルギーバンド構造を示している。又、図11の説明では、ヘテロ接合の特性を理解し易くするため、ヘテロ接合界面に界面準位が存在しない場合の理想的な半導体ヘテロ接合のエネルギー準位について例示している。図11中、SiCの電子親和力をχSiC=4.2eV、Zn0.92Cd0.08Oの電子親和力をχZnCdO=4.12eV、Mg0.1Zn0.9Oの電子親和力をχMgZnO=3.83eVとしている。
図11に示すように、p型SiCとp型Zn0.92Cd0.08Oとの接合界面の伝導帯には、両者の電子親和力χの違いからバンド不連続量ΔEcが存在し、更に、p型SiCとp型Zn0.92Cd0.08Oとの接合界面の荷電子帯にもバンド不連続量ΔEvが存在する。更に、図11のp型Zn0.92Cd0.08Oとn型Mg0.1Zn0.9Oとの接合界面の伝導帯には、両者の電子親和力χの違いからバンド不連続量(エネルギー障壁)ΔEcが存在し、p型SiCとp型Zn0.92Cd0.08Oとの接合界面の荷電子帯にもバンド不連続量ΔEvが存在する。
本発明の第3の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、室温で、赤色(1.8eV)から紫色(3.1eV)まで更に紫外光(3.3eV)の広いスペクトル範囲での発光が可能で、熱的に安定でしかも資源的枯渇のおそれの少ない半導体発光素子を提供できる。特に、p型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)の組成xを変えることにより、フルカラー発光を可能にしているので、フルカラーのスペクトル帯域を、p型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる複数の(一群の)半導体発光素子を提供できるので、フルカラーをカバーする複数の(一群の)半導体発光素子それぞれの動作電圧の差を、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくできる。
本発明の第3の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法は、p型Zn1-xCdxO薄膜をエピタキシャル成長する点を除けば、基本的に第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法と同様である。p型Zn1-xCdxO薄膜をエピタキシャル成長は、Zn原料(DEZn)、Cd原料(DMCd)をp型SiC単結晶基板11の表面に導入し、酸素ラジカルを照射し、p型SiC単結晶基板11の表面に、発光層22となるZn1-xCdxO(0≦x≦0.7)を成長する際に、p型のドーピングガスとして、アンモニア(NH3)、フォスヒン(PH3)、アルシン(AsH3)等を用いれば良い。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る半導体発光素子は、図12に示すように、六方晶系の単結晶からなる基板32と、禁制帯幅Eg=2.8eV以上の六方晶系単結晶薄膜からなり、基板32上に配置されたクラッド層41と、ウルツ鉱構造で、禁制帯幅Eg=1.8eV以上、3.1eV未満のZnO系化合物半導体混晶からなり、クラッド層41とヘテロ接合をなす発光層12とを備える。図12では、p型クラッド層41として、不純物密度6×1017cm-3〜1×1019cm-3程度のp型SiC単結晶薄膜を用いた場合を例示するが、p型クラッド層41は、p型SiC単結晶薄膜に限定されるものではなく、図14及び図15に示すようなp型ZnO単結晶薄膜(Eg=3.3〜3.37eV)又はp型GaN単結晶薄膜(Eg=3.44〜3.5eV)でも構わない。ウルツ鉱構造のp型SiC単結晶薄膜としては、2H−SiC単結晶薄膜(Eg=3.2〜3.8eV),4H−SiC単結晶薄膜(Eg=3.2〜3.26eV),6H−SiC単結晶薄膜(Eg=2.86〜3.0eV),8H−SiC単結晶薄膜(Eg=2.8eV)が採用可能である。
基板32は、面方位(0001)面の2H−SiC,4H−SiC,6H−SiC,8H−SiC等のn型SiC単結晶基板であるが、後述するように、n型SiC単結晶基板に限定されず、面方位(0001)面のn型ZnO単結晶基板、面方位(0001)面のn型GaN単結晶基板や、面方位(0001)面、(12−20)面、(01−12)面の絶縁性のサファイア(Al2O3)基板でも構わない。
発光層12を構成するZnO系化合物半導体混晶は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子と同様に、不純物密度1×1016cm-3〜1×1018cm-3程度のn型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)である。
発光層12の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点、オーミックコンタクト層14には、In等の金属薄膜からなるカソード(カソード電極)15が設けられている点は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子と同様である。
しかし、アノード(アノード電極)18は、n型SiC単結晶基板32の裏面ではなく、オーミックコンタクト層14、n型クラッド層13及び発光層12を貫通して、p型クラッド層41の表面に到達する溝部(段差部)の底部に設けられている点が第1の実施の形態に係る半導体発光素子とは異なる。但し、アノード(アノード電極)18の材料としては、第1の実施の形態に係る半導体発光素子と同様な、Ni、Al/Ni、Al/Ti、Al/TaSi2、TiC/Al等の金属材料が採用可能である。
図12に示す第4の実施の形態に係る半導体発光素子において、基板32の厚さは、0.1mm〜1mm、好ましくは0.2mm〜0.8mm程度の値が採用可能で、具体的には市販されている基板の厚さ(例えば0.3mm〜0.6mm程度)をそのまま適用しても良い。又、p型クラッド層41の厚さは、20nm〜800nm、好ましくは200nm〜500nm程度に選べば良又、発光層12の厚さは、5nm〜400nm、好ましくは50nm〜200nm程度に選べば良く、n型クラッド層13の厚さは、20nm〜800nm、好ましくは200nm〜500nm程度に選べば良く、オーミックコンタクト層14の厚さは、10nm〜100nm、好ましくは10nm〜30nm程度に選べば良い。更に、カソード15及びアノード18の厚さは、100nm〜2μm、好ましくは0.5μm〜2μm程度に選べば良い。
本発明の第4の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造は、図2に示した第1の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造と全く同一であるので、重複した説明を省略する。
本発明の第4の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、室温で、赤色(1.8eV)から紫色(3.1eV)まで更に紫外光(3.3eV)の広いスペクトル範囲での発光が可能で、熱的に安定でしかも資源的枯渇のおそれの少ない半導体発光素子を提供できる。特に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)の組成xを変えることにより、フルカラー発光を可能にしているので、フルカラーのスペクトル帯域を、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる複数の(一群の)半導体発光素子を提供できるので、フルカラーをカバーする複数の(一群の)半導体発光素子それぞれの動作電圧の差を、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくすることができる。特に、p型クラッド層41の表面にアノード18を形成しているので、n型SiC単結晶基板32は、高比抵抗の基板でも良く、基板の選択の自由度が増大する。
更に、n型SiC単結晶基板、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板又は絶縁性のサファイア基板の上に、p型SiCクラッド層、p型ZnOクラッド層又はp型GaNクラッド層をエピタキシャル成長することにより、集積化構造が可能になる。例えば、n型SiC単結晶基板、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板又は絶縁性のサファイア基板のいずれかの上に、赤色の発光をする第1の半導体発光素子と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子と、青色の発光をする第3の半導体発光素子とをモノリシックに集積化すれば、1チップから発光する赤色、緑色、青色の混色が可能になり、1チップの白色半導体発光素子が提供できる。
更に、n型SiC単結晶基板32に、p型SiCクラッド層41をエピタキシャル成長することにより、pn接合分離した集積化構造が可能になる。例えば、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)の組成xを互いに変えて、n型SiC単結晶基板32上に、赤色の発光をする第1の半導体発光素子と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子と、青色の発光をする第3の半導体発光素子とをpn接合分離してモノリシックに集積化すれば、1チップから発光する赤色、緑色、青色の混色が可能になり、1チップの白色半導体発光素子が提供できる。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)の組成xを局所的に変えるには、それぞれ異なる組成の領域を選択的にエピタキシャル成長方法や、収束イオンビームを用いて、Cdの組成を局所的に制御しながら成長する方法を採用すれば良い。
更に、赤色の発光をする第1の半導体発光素子と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子と、青色の発光をする第3の半導体発光素子のそれぞれの発光強度を調整できるようにすれば、1チップでフルカラーのスペクトル帯域における任意の波長の光を任意の割合で混色して発光する半導体発光素子を提供することができる。この場合、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる第1〜第3の半導体発光素子をモノリシックに集積化しているので、フルカラーをカバーする第1〜第3の半導体発光素子それぞれの動作電圧の差を、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくすることができるため、第1〜第3の半導体発光素子の電源回路の設計が容易になる。又、第1〜第3の半導体発光素子の電源回路が小型化されるので、電源回路もモノリシックに集積化することが容易になる。
<第4の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法>
次に、図13を用いて、本発明の第4の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法を説明する。尚、以下に述べる半導体発光素子の製造方法は、一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。例えば、以下の説明では、p型SiCクラッド層41をn型SiC単結晶基板32上に成長する工程を減圧CVD(LPCVD)装置で行う場合で説明しているが、リモートプラズマ励起MOCVD装置でp型SiCクラッド層41をn型SiC単結晶基板32上に成長すれば、より低温で成長可能である。
(イ)先ず、n型SiC単結晶基板32をアセトン、メタノール等の有機溶媒で洗浄する。その後、超純水で超音波洗浄した後、高純度窒素等でブローし、乾燥させる。その後、融解したNaOH(500度)でn型SiC単結晶基板32の表面をエッチングし、純水で洗浄(リンス)する。そして、5%〜100%(好ましくは5〜20%)の希釈フッ酸でエッチング(酸化層をエッチング)し、純水で洗浄後、更にSiCのLPCVD装置内に設けられたSiCコートのカーボンサセプタに搭載する。n型SiC単結晶基板32をカーボンサセプタ上にセットしたのちLPCVD装置のチャンバーの内部を10-2Pa〜10-8Pa程度に真空排気し、基板温度1400℃にまで加熱する。カーボンサセプタの温度が1400℃程度になったら、プロパン(C3H8)ガスをマスフローコントローラを介してLPCVD装置のチャンバーに導入する。更に、1400℃に到達後、1分後、カーボンサセプタを成長温度、例えば1600℃にまで昇温する。成長温度に到達後、3分後に、成長圧力が20kPa、モノシラン(SiH4)ガスの供給流量が1.1×10-2Pa・m3/s(=6.67sccm)、C3H8の供給流量が5.6×10-3Pa・m3/s(=3.33sccm),ドーパント原料のトリメチルアルミニウム(TMAl)の供給流量が1.7×10-5Pa・m3/s(=0.01sccm,)キャリアガスである水素の供給流量が6.8×10Pa・m3/s(=40000sccm)で、p型SiCクラッド層41を成長する。
(ロ)次に、p型SiCクラッド層41が成長したn型SiC単結晶基板32を、図7に示すリモートプラズマ励起MOCVD装置のステンレスチャンバー66内に搬送する。即ち、LPCVD装置からn型SiC単結晶基板32を取り出し、ステンレスチャンバー66内に設けられたSiCコートのカーボンサセプタ72上に、n型SiC単結晶基板32を搬送する。この搬送はロードロック方式で真空中で行うのが好ましい。そして、n型SiC単結晶基板32をカーボンサセプタ72上にセットしたのち、ステンレスチャンバー66の内部を10-2Pa〜10-8Pa程度に真空排気し、基板温度600℃にまで加熱する。そして、基板温度600℃で、チャンバー内圧力が13Pa〜1.3Paとなるように、水素(H2)ガスを導入し、水素雰囲気中、少なくとも45分以上、好ましくは1時間程度、水素ラジカルを照射し、水素ラジカルにより、p型SiCクラッド層41の表面をクリーニングする。
(ハ)その後、基板温度を、300℃から600℃程度の最適基板温度に設定し(場合により300℃以下でも可)、p型SiCクラッド層41の表面にDEZnガスを導入しZn原料を供給し、水素ラジカル照射でZnの原子層をp型SiCクラッド層41の表面に、少なくとも一原子層、好ましくはほぼ一原子層成長する。
(ニ)その後、水素ラジカルの照射を停止し、Zn原料(DEZn)、Cd原料(DMCd)をp型SiCクラッド層41の表面に導入し、酸素ラジカルを照射し、p型SiCクラッド層41の表面に、発光層12となるZn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)を成長する。Cd組成xは、Zn原料(DEZn)とCd原料(DMCd)の流量比を変化させることにより制御できる。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)膜の成長は、Zn原料(DEZn)とCd原料(DMCd)は基板表面(化学反応領域)で同一のラインに合流させて、水素ガスの雰囲気中に酸素ラジカルと合流して化学反応させる。このとき、酸素ラジカル用酸素流量5cc/minに対して水素ガス10cc/min以上とすることが好ましい。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)膜の電気電導度(抵抗率)は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法で説明したように、基板温度又はVI族原料/II族原料比を制御することにより、所望の値に制御できる。第4の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法では、例えば、基板温度400℃で成長する。
(ホ)更に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)を成長した後、基板温度400℃で、Zn原料(DEZn)、Mg原料(EtCp2Mg)をZn1-xCdxO(0≦x≦0.7)膜の表面に導入し、酸素ラジカルを照射し、発光層12の表面に、n型クラッド層13となるMgzZn1-zO(0≦z≦1)を成長する。MgzZn1-zO(0≦z≦1)薄膜の組成zは、Zn原料(DEZn)とMg原料(EtCp2Mg)の流量比を変化させることにより制御できる。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)膜の成長と同様に、MgzZn1-zO(0≦z≦1)膜の成長でも、酸素ラジカル用酸素流量5cc/minに対して水素ガス10cc/min以上とすることが好ましい。更に、n型クラッド層13となるMgzZn1-zO(0≦z≦1)を成長した後、基板温度を600℃に上昇し、Zn原料(DEZn)、Mg原料(EtCp2Mg)をn型クラッド層13の表面に導入し、酸素ラジカルを照射し、n型クラッド層13の表面に、図13(a)に示すように、オーミックコンタクト層14となるMgzZn1-zO(0≦z≦1)を成長する。Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)膜の成長と同様に、MgzZn1-zO(0≦z≦1)膜の成長でも、電気電導度(抵抗率)は基板温度で制御可能であるので、基板温度を600℃に上昇することにより、不純物密度2×1018cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)膜が成長できる。更に、モル数でVI族原料/II族原料比を60以下として、抵抗率を減少させても良い。
(ヘ)次に、フォトレジストをオーミックコンタクト層14の表面の全面に塗布後、通常のフォトリソグラフィ技術によりこのフォトレジストをパターニングし、リフトオフ・マスクを形成する。このリフトオフ・マスクを介して、Au等の耐硫酸性の金属膜19を真空蒸着法、スパッタリング法等により堆積し、その後リフトオフ・マスクを除去すれば、U溝エッチング用マスクがパターニングされる。そして、U溝エッチング用マスク19を用いて、オーミックコンタクト層14、n型クラッド層13及び発光層12を希硫酸・希硝酸(HNO3)溶液で選択的にエッチングすれば、図13(b)に示すように、オーミックコンタクト層14、n型クラッド層13及び発光層12を貫通して、p型クラッド層41の表面に到達するU溝51が形成できる。
(ト)この後、オーミックコンタクト層14の表面が露出するまで研磨して、U溝エッチング用マスク19を除去する。その後、リフトオフ法を用いて、図13(c)に示すように、U溝51の底部に、Ni、Al/Ni、Al/Ti、Al/TaSi2、TiC/Al等の金属材料からなるアノード(アノード電極)18をパターニングする。更に、リフトオフ法を用いて、In、In/Au、Au/Ge等の金属膜をパターニングして、図12に示すようなカソード(カソード電極)15を形成する。その後、熱処理(シンタリング)して、カソード15及びアノード18のコンタクト抵抗を低減する。最後に、U溝51の部分を利用して、300μm×300μm〜1.5mm×1.5mm等の所定の大きさの矩形形状に劈開、若しくはダイアモンドブレード等で切断すれば、図12に示す半導体発光素子が完成する。
本発明の第4の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法によれば、室温で、赤色(1.8eV)から紫色(3.1eV)まで、更に紫外光(3.3eV)の広いスペクトル範囲での発光が可能で、熱的に安定でしかも資源的枯渇のおそれの少ない半導体発光素子が簡単に製造できる。特に、リモートプラズマ励起MOCVD法を用い、反応過程にラジカルを導入し表面反応を促進し、低温での非平衡度の高い結晶成長を行っているので、Zn原料(DEZn)とCd原料(DMCd)の流量比を変化させることにより、発光層12となるZn1-xCdxO薄膜中に熱力学的固溶限界を越えるCdを導入し、Cdの組成を任意に制御できる。この様に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)の組成xを制御することにより、フルカラー発光を可能にする複数の(一群の)半導体発光素子を製造できる。この結果、フルカラーのスペクトル帯域を、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる複数の(一群の)半導体発光素子で実現でき、フルカラーをカバーする複数の(一群の)半導体発光素子のそれぞれの動作電圧の差が、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくなるため、回路構成が簡単になる。
<第4の実施の形態の変形例>
第4の実施の形態の冒頭で説明したように、本発明の第4の実施の形態に係る半導体発光素子においては、p型クラッド層は、p型SiC単結晶薄膜に限定されるものではなく、p型ZnO単結晶薄膜又はp型GaN単結晶薄膜でも構わない。又、基板は、n型SiC単結晶基板に限定されず、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板や絶縁性のサファイア(Al2O3)基板でも構わない。
本発明の第4の実施の形態の第1変形例に係る半導体発光素子は、図14に示すように、面方位(0001)面のn型ZnO単結晶からなる基板33と、基板33上に配置されたp型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42と、n型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層42とヘテロ接合をなす発光層12とを備える。
発光層12の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図14の構造による効果は、図12について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。尚、n型ZnO単結晶基板33の上に、p型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42をエピタキシャル成長するには、Zn原料(DEZn)をn型ZnO単結晶基板33の表面に導入し、酸素ラジカルを照射するリモートプラズマ励起MOCVD法を用いれば良い。更に、p型クラッド層42の表面に、順にn型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなる発光層12、n型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13、n型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を連続的に堆積するのにも、リモートプラズマ励起MOCVD法を用いれば良い。
本発明の第4の実施の形態の第2変形例に係る半導体発光素子は、図15に示すように、面方位(0001)面のn型GaN単結晶からなる基板34と、基板34上に配置されたp型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43と、n型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層43とヘテロ接合をなす発光層12とを備える。
発光層12の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図15の構造による効果は、図12について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
尚、n型GaN単結晶基板34の上に、p型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43をエピタキシャル成長するには、通常のMOCVD法において、III族ガスとしてMOガスのトリメチルガリウム(TMG)と、V族ガスとしてアンモニア(NH3)ガスを使用すれば良い。或いは、Ga−HCl−NH3系の塩化物(クロライド)輸送気相成長法を用いて、n型GaN単結晶基板34上に、p型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43をエピタキシャル成長しても良い。
本発明の第4の実施の形態の第3変形例に係る半導体発光素子は、図16に示すように、面方位(0001)面、(12−20)面、又は(01−12)面の絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型SiC単結晶薄膜からなるp型クラッド層41と、n型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層41とヘテロ接合をなす発光層12とを備える。
発光層12の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図16の構造による効果は、図12について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
本発明の第4の実施の形態の第4変形例に係る半導体発光素子は、図17に示すように、面方位(0001)面、(12−20)面、又は(01−12)面の絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42と、n型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層42とヘテロ接合をなす発光層12とを備える。
発光層12の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図17の構造による効果は、図12について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
本発明の第4の実施の形態の第5変形例に係る半導体発光素子は、図18に示すように、面方位(0001)面、(12−20)面、又は(01−12)面の絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43と、n型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層43とヘテロ接合をなす発光層12とを備える。
発光層12の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図18の構造による効果は、図12について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
尚、本発明の第4の実施の形態の変形例に係る半導体発光素子は、図13〜図18に例示したp型クラッド層と基板との組み合わせに限定されるものではなく、p型SiCクラッド層、p型ZnOクラッド層又はp型GaNクラッド層を、n型SiC単結晶基板、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板又は絶縁性のサファイア基板のいずれの上にエピタキシャル成長しても構わない。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係る半導体発光素子は、図19に示すように、六方晶系の単結晶からなる基板32と、禁制帯幅Eg=2.8eV以上の六方晶系単結晶薄膜からなり、基板32上に配置されたクラッド層41と、ウルツ鉱構造で、禁制帯幅Eg=1.8eV以上、3.1eV未満のZnO系化合物半導体混晶からなり、クラッド層41とヘテロ接合をなす発光層21とを備える。図19では、p型クラッド層41として、不純物密度6×1017cm-3〜1×1019cm-3程度のp型SiC単結晶薄膜を用いた場合を例示するが、p型クラッド層41は、p型SiC単結晶薄膜に限定されるものではなく、図20及び図21に示すようなp型ZnO単結晶薄膜又はp型GaN単結晶薄膜でも構わないことは、第4の実施の形態に係る半導体発光素子と同様である。又、基板32は、2H−SiC,4H−SiC,6H−SiC,8H−SiC等のn型SiC単結晶基板であるが、第4の実施の形態に係る半導体発光素子と同様に、n型SiC単結晶基板に限定されず、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板や絶縁性のサファイア(Al2O3)基板でも構わない。
発光層21を構成するZnO系化合物半導体混晶は、第2の実施の形態に係る半導体発光素子と同様に、不純物密度1×1016cm-3〜1×1018cm-3程度のn型Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)である。
発光層21の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点、オーミックコンタクト層14には、In等の金属薄膜からなるカソード(カソード電極)15が設けられている点は、第2の実施の形態に係る半導体発光素子と同様である。
しかし、アノード(アノード電極)18は、n型SiC単結晶基板32の裏面ではなく、オーミックコンタクト層14、n型クラッド層13及び発光層21を貫通して、p型クラッド層41の表面に到達する溝部(段差部)の底部に設けられている点が第2の実施の形態に係る半導体発光素子とは異なる。但し、アノード(アノード電極)18の材料としては、第2の実施の形態に係る半導体発光素子と同様な、Ni、Al/Ni、Al/Ti、Al/TaSi2、TiC/Al等の金属材料が採用可能である。
図19に示す第5の実施の形態に係る半導体発光素子において、基板32の厚さは、0.1mm〜1mm、好ましくは0.2mm〜0.8mm程度の値が採用可能で、具体的には市販されている基板の厚さ(例えば0.3mm〜0.6mm程度)をそのまま適用しても良い。又、p型クラッド層41の厚さは、20nm〜800nm、好ましくは200nm〜500nm程度に選べば良又、発光層21の厚さは、5nm〜400nm、好ましくは50nm〜200nm程度に選べば良く、n型クラッド層13の厚さは、20nm〜800nm、好ましくは200nm〜500nm程度に選べば良く、オーミックコンタクト層14の厚さは、10nm〜100nm、好ましくは10nm〜30nm程度に選べば良い。更に、カソード15及びアノード18の厚さは、100nm〜2μm、好ましくは0.5μm〜2μm程度に選べば良い。
本発明の第5の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造は、図1に示した第1の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造と同様であるので、重複した説明を省略する。
本発明の第5の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、室温で、赤色(1.8eV)から紫色(3.1eV)まで更に紫外光(3.3eV)の広いスペクトル範囲での発光が可能で、熱的に安定でしかも資源的枯渇のおそれの少ない半導体発光素子を提供できる。特に、Zn1-xCuxO(0≦x≦1)の組成xを変えることにより、フルカラー発光を可能にしているので、フルカラーのスペクトル帯域を、Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる複数の(一群の)半導体発光素子を提供できるので、フルカラーをカバーする複数の(一群の)半導体発光素子それぞれの動作電圧の差が、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくなるようにできる。特に、p型クラッド層41の表面にアノード18を形成しているので、n型SiC単結晶基板32は、高比抵抗の基板でも良く、基板の選択の自由度が増大する。
更に、n型SiC単結晶基板32の上に、p型SiCクラッド層41をエピタキシャル成長することにより、pn接合分離した集積化構造が可能になる。例えば、n型SiC単結晶基板32の上に、Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)の組成xをそれぞれ変えて、赤色の発光をする第1の半導体発光素子と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子と、青色の発光をする第3の半導体発光素子とをpn接合分離してモノリシックに集積化すれば、1チップから発光する赤色、緑色、青色の混色が可能になり、1チップの白色半導体発光素子が提供できる。Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)の組成xを局所的に変えるには、それぞれ異なる組成の領域を選択的にエピタキシャル成長方法や、収束イオンビームを用いて、Cuの組成を局所的に制御しながら成長する方法を採用すれば良い。
更に、赤色の発光をする第1の半導体発光素子と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子と、青色の発光をする第3の半導体発光素子のそれぞれの発光強度を調整できるようにすれば、1チップでフルカラーのスペクトル帯域における任意の波長の光を任意の割合で混色して発光する半導体発光素子を提供することができる。この場合、Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる第1〜第3の半導体発光素子をpn接合分離してモノリシックに集積化しているので、フルカラーをカバーする第1〜第3の半導体発光素子それぞれの動作電圧の差が、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくできるため、第1〜第3の半導体発光素子の電源回路の設計が容易になる。又、第1〜第3の半導体発光素子の電源回路が小型化されるので、電源回路もモノリシックに集積化することが容易になる。
本発明の第2の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法で説明したように、本発明の第5の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法は、p型SiC単結晶基板11上にZn1-xCuxO薄膜をエピタキシャル成長する点を除けば、基本的に第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法と同様な方法で製造できる。Zn1-xCuxO薄膜をエピタキシャル成長は、p型SiC単結晶基板11の表面にDEZnガスを導入しZn原料を供給し、水素ラジカル照射でZnの原子層をp型SiC単結晶基板11の表面に、少なくとも一原子層、好ましくはほぼ一原子層成長する後、Zn原料(DEZn)、Cu原料(Cu(thd)2等 )をp型SiC単結晶基板11の表面に導入し、酸素ラジカルを照射して行えば良い。Cu組成xは、Zn原料(DEZn)とCu原料(Cu(thd)2等 )の流量比を変化させることにより制御できる。
<第5の実施の形態の変形例>
第5の実施の形態の冒頭で説明したように、本発明の第5の実施の形態に係る半導体発光素子においては、p型クラッド層は、p型SiC単結晶薄膜に限定されるものではなく、p型ZnO単結晶薄膜又はp型GaN単結晶薄膜でも構わない。又、基板は、n型SiC単結晶基板に限定されず、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板や絶縁性のサファイア(Al2O3)基板でも構わない。
本発明の第5の実施の形態の第1変形例に係る半導体発光素子は、図20に示すように、n型ZnO単結晶からなる基板33と、基板33上に配置されたp型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42と、n型Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層42とヘテロ接合をなす発光層21とを備える。
発光層21の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図20の構造による効果は、図19について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。尚、n型ZnO単結晶基板33の上に、p型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42をエピタキシャル成長するには、Zn原料(DEZn)をn型ZnO単結晶基板33の表面に導入し、酸素ラジカルを照射するリモートプラズマ励起MOCVD法を用いれば良い。更に、p型クラッド層42の表面に、順にn型Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなる発光層21、n型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13、n型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を連続的に堆積するのにも、リモートプラズマ励起MOCVD法を用いれば良い。
本発明の第5の実施の形態の第2変形例に係る半導体発光素子は、図21に示すように、n型GaN単結晶からなる基板34と、基板34上に配置されたp型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43と、n型Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層43とヘテロ接合をなす発光層21とを備える。
発光層21の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図21の構造による効果は、図19について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。尚、第4の実施の形態の第2変形例に係る半導体発光素子の説明で述べたように、n型GaN単結晶基板34の上に、p型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43をエピタキシャル成長するには、通常のMOCVD法において、III族ガスとしてMOガスのトリメチルガリウム(TMG)と、V族ガスとしてアンモニア(NH3)ガスを使用すれば良い。或いは、Ga−HCl−NH3系の塩化物(クロライド)輸送気相成長法を用いて、n型GaN単結晶基板34上に、p型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43をエピタキシャル成長しても良い。
本発明の第5の実施の形態の第3変形例に係る半導体発光素子は、図22に示すように、絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型SiC単結晶薄膜からなるp型クラッド層41と、n型Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層41とヘテロ接合をなす発光層21とを備える。
発光層21の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図22の構造による効果は、図19について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
本発明の第5の実施の形態の第4変形例に係る半導体発光素子は、図23に示すように、絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42と、n型Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層42とヘテロ接合をなす発光層21とを備える。
発光層21の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図23の構造による効果は、図19について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
本発明の第5の実施の形態の第5変形例に係る半導体発光素子は、図24に示すように、絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43と、n型Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層43とヘテロ接合をなす発光層21とを備える。
発光層21の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図24の構造による効果は、図19について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
尚、本発明の第5の実施の形態の変形例に係る半導体発光素子は、図19〜図24に例示したp型クラッド層と基板との組み合わせに限定されるものではなく、p型SiCクラッド層、p型ZnOクラッド層又はp型GaNクラッド層を、n型SiC単結晶基板、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板又は絶縁性のサファイア基板のいずれの上にエピタキシャル成長しても構わない。
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態に係る半導体発光素子は、図25に示すように、六方晶系の単結晶からなる基板32と、禁制帯幅Eg=2.8eV以上の六方晶系単結晶薄膜からなり、基板32上に配置されたクラッド層41と、ウルツ鉱構造で、禁制帯幅Eg=1.8eV以上、3.1eV未満のZnO系化合物半導体混晶からなり、クラッド層41とヘテロ接合をなす発光層22とを備える。図25では、p型クラッド層41として、不純物密度6×1017cm-3〜1×1019cm-3程度のp型SiC単結晶薄膜を用いた場合を例示するが、p型クラッド層41は、p型SiC単結晶薄膜に限定されるものではなく、図26及び図27に示すようなp型ZnO単結晶薄膜又はp型GaN単結晶薄膜でも構わないことは、第4及び第5の実施の形態に係る半導体発光素子と同様である。又、基板32は、2H−SiC,4H−SiC,6H−SiC,8H−SiC等のn型SiC単結晶基板であるが、第4及び第5の実施の形態に係る半導体発光素子と同様に、n型SiC単結晶基板に限定されず、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板や絶縁性のサファイア(Al2O3)基板でも構わない。
発光層22を構成するZnO系化合物半導体混晶は、第3の実施の形態に係る半導体発光素子と同様に、不純物密度1×1016cm-3〜1×1018cm-3程度のp型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)である。
発光層22の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点、オーミックコンタクト層14には、In等の金属薄膜からなるカソード(カソード電極)15が設けられている点は、第3の実施の形態に係る半導体発光素子と同様である。
しかし、アノード(アノード電極)18は、n型SiC単結晶基板32の裏面ではなく、オーミックコンタクト層14、n型クラッド層13及び発光層22を貫通して、p型クラッド層41の表面に到達する溝部(段差部)の底部に設けられている点が第3の実施の形態に係る半導体発光素子とは異なる。但し、アノード(アノード電極)18の材料としては、第3の実施の形態に係る半導体発光素子と同様な、Ni、Al/Ni、Al/Ti、Al/TaSi2、TiC/Al等の金属材料が採用可能である。
図25に示す第6の実施の形態に係る半導体発光素子において、基板32の厚さは、0.1mm〜1mm、好ましくは0.2mm〜0.8mm程度の値が採用可能で、具体的には市販されている基板の厚さ(例えば0.3mm〜0.6mm程度)をそのまま適用しても良い。又、p型クラッド層41の厚さは、20nm〜800nm、好ましくは200nm〜500nm程度に選べば良又、発光層22の厚さは、5nm〜400nm、好ましくは50nm〜200nm程度に選べば良く、n型クラッド層13の厚さは、20nm〜800nm、好ましくは200nm〜500nm程度に選べば良く、オーミックコンタクト層14の厚さは、10nm〜100nm、好ましくは10nm〜30nm程度に選べば良い。更に、カソード15及びアノード18の厚さは、100nm〜2μm、好ましくは0.5μm〜2μm程度に選べば良い。
本発明の第6の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造は、図11に示した第3の実施の形態に係る半導体発光素子の主要部のエネルギーバンド構造と同様であるので、重複した説明を省略する。
本発明の第6の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、室温で、赤色(1.8eV)から紫色(3.1eV)まで更に紫外光(3.3eV)の広いスペクトル範囲での発光が可能で、熱的に安定でしかも資源的枯渇のおそれの少ない半導体発光素子を提供できる。特に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7)の組成xを変えることにより、フルカラー発光を可能にしているので、フルカラーのスペクトル帯域を、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる複数の(一群の)半導体発光素子を提供できるので、フルカラーをカバーする複数の(一群の)半導体発光素子それぞれの動作電圧の差が、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくなるようにできる。特に、p型クラッド層41の表面にアノード18を形成しているので、n型SiC単結晶基板32は、高比抵抗の基板でも良く、基板の選択の自由度が増大する。
更に、n型SiC単結晶基板32の上に、p型SiCクラッド層41をエピタキシャル成長することにより、pn接合分離した集積化構造が可能になる。例えば、n型SiC単結晶基板32の上に、Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)の組成xをそれぞれ変えて、赤色の発光をする第1の半導体発光素子と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子と、青色の発光をする第3の半導体発光素子とをpn接合分離してモノリシックに集積化すれば、1チップから発光する赤色、緑色、青色の混色が可能になり、1チップの白色半導体発光素子が提供できる。更に、赤色の発光をする第1の半導体発光素子と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子と、青色の発光をする第3の半導体発光素子のそれぞれの発光強度を調整できるようにすれば、1チップでフルカラーのスペクトル帯域における任意の波長の光を任意の割合で混色して発光する半導体発光素子を提供することができる。この場合、Zn1-xCuxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)という同一材料からなる第1〜第3の半導体発光素子をpn接合分離してモノリシックに集積化しているので、フルカラーをカバーする第1〜第3の半導体発光素子それぞれの動作電圧の差が、全く異なる材料の半導体発光素子を組み合わせてフルカラーをカバーする場合に比して、小さくできるため、第1〜第3の半導体発光素子の電源回路の設計が容易になる。又、第1〜第3の半導体発光素子の電源回路が小型化されるので、電源回路もモノリシックに集積化することが容易になる。
本発明の第3の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法で説明したように、本発明の第6の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法は、p型Zn1-xCdxO薄膜からなる発光層22をp型クラッド層41の表面にエピタキシャル成長する点を除けば、基本的に第5の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法と同様である。p型Zn1-xCdxO薄膜のエピタキシャル成長は、p型のドーピングガスとして、アンモニア(NH3)、フォスヒン(PH3)、アルシン(AsH3)等を用いる。即ち、Zn原料(DEZn)、Cd原料(DMCd)をp型クラッド層41の表面に導入し、酸素ラジカルを照射して、発光層22となるZn1-xCdxO(0≦x≦0.7)を成長する際に、p型のドーピングガスを添加すれば良い。
<第6の実施の形態の変形例>
第6の実施の形態の冒頭で説明したように、本発明の第6の実施の形態に係る半導体発光素子においては、p型クラッド層は、p型SiC単結晶薄膜に限定されるものではなく、p型ZnO単結晶薄膜又はp型GaN単結晶薄膜でも構わない。又、基板は、n型SiC単結晶基板に限定されず、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板や絶縁性のサファイア(Al2O3)基板でも構わない。
本発明の第6の実施の形態の第1変形例に係る半導体発光素子は、図26に示すように、n型ZnO単結晶からなる基板33と、基板33上に配置されたp型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42と、p型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層42とヘテロ接合をなす発光層22とを備える。
発光層22の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図26の構造による効果は、図25について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。尚、n型ZnO単結晶基板33の上に、p型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42をエピタキシャル成長するには、Zn原料(DEZn)をn型ZnO単結晶基板33の表面に導入し、酸素ラジカルを照射するリモートプラズマ励起MOCVD法を用いれば良い。更に、p型クラッド層42の表面に、順にp型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなる発光層22、n型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13、n型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を連続的に堆積するのにも、リモートプラズマ励起MOCVD法を用いれば良い。
本発明の第6の実施の形態の第2変形例に係る半導体発光素子は、図27に示すように、n型GaN単結晶からなる基板34と、基板34上に配置されたp型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43と、p型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層43とヘテロ接合をなす発光層22とを備える。
発光層22の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図27の構造による効果は、図25について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。尚、第4及び第5の実施の形態の第2変形例に係る半導体発光素子の説明で述べたように、n型GaN単結晶基板34の上に、p型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43をエピタキシャル成長するには、通常のMOCVD法において、III族ガスとしてMOガスのトリメチルガリウム(TMG)と、V族ガスとしてアンモニア(NH3)ガスを使用すれば良い。或いは、Ga−HCl−NH3系の塩化物(クロライド)輸送気相成長法を用いて、n型GaN単結晶基板34上に、p型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43をエピタキシャル成長しても良い。
本発明の第6の実施の形態の第3変形例に係る半導体発光素子は、図28に示すように、絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型SiC単結晶薄膜からなるp型クラッド層41と、p型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層41とヘテロ接合をなす発光層22とを備える。
発光層22の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図28の構造による効果は、図25について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
本発明の第6の実施の形態の第4変形例に係る半導体発光素子は、図29に示すように、絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型ZnO単結晶薄膜からなるp型クラッド層42と、p型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層42とヘテロ接合をなす発光層22とを備える。
発光層22の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図29の構造による効果は、図25について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
本発明の第6の実施の形態の第5変形例に係る半導体発光素子は、図30に示すように、絶縁性のサファイア基板からなる基板31と、基板31上に配置されたp型GaN単結晶薄膜からなるp型クラッド層43と、p型Zn1-xCdxO(0≦x≦0.7,特に0.07<x≦0.7)からなり、クラッド層43とヘテロ接合をなす発光層22とを備える。
発光層22の上に、不純物密度1×1017cm-3〜6×1017cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるn型クラッド層13と、n型クラッド層13上の不純物密度1×1017cm-3〜5×1019cm-3程度のn型MgzZn1-zO(0≦z≦1)からなるオーミックコンタクト層14を更に備えてダブルヘテロ構造を構成している点等他の特徴や図30の構造による効果は、図25について説明した通りであるから、重複した説明を省略する。
尚、本発明の第6の実施の形態の変形例に係る半導体発光素子は、図25〜図30に例示したp型クラッド層と基板との組み合わせに限定されるものではなく、p型SiCクラッド層、p型ZnOクラッド層又はp型GaNクラッド層を、n型SiC単結晶基板、n型ZnO単結晶基板、n型GaN単結晶基板又は絶縁性のサファイア基板のいずれの上にエピタキシャル成長しても構わない。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第6の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、本発明は第4〜第6の実施の形態で、n型SiC単結晶基板32、n型ZnO単結晶基板33、n型GaN単結晶基板34又は絶縁性のサファイア基板31の上に、p型SiCクラッド層41、p型ZnOクラッド層42又はp型GaNクラッド層43をエピタキシャル成長することにより、集積化構造が可能になることを説明した。例えば、n型SiC単結晶基板32、n型ZnO単結晶基板33、n型GaN単結晶基板34又は絶縁性のサファイア基板31のいずれかの上に、赤色の発光をする第1の半導体発光素子と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子と、青色の発光をする第3の半導体発光素子とをモノリシックに集積化すれば、1チップから発光する赤色、緑色、青色の混色が可能になり、1チップの白色半導体発光素子が提供できることを説明したが、ZnO系化合物半導体混晶の組成を局所的に変えたエピタキシャル成長が必要になるので、技術的に高度な要求が伴う。
そこで、図31に示すように、赤色の発光をする第1の半導体発光素子(第1層LED)81と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子(第2層LED)82と、青色の発光をする第3の半導体発光素子(第3層LED)83とハイブリッドに集積化し、赤色、緑色、青色の混色をすれば白色の発光をする半導体発光素子実装体を提供することができる。図31において、第1の半導体発光素子(第1層LED)81は、サファイア基板611の上に積層されたp型クラッド層612、発光層613,n型クラッド層614から構成されている。サファイア基板611は、接着剤602により、支持台64に固定されている。カソード615は、n型クラッド層614の上面のほぼ全体に形成することができる。カソード615の中央部は、発光層613の発光に対して透明な電極層で構成すれば良い。カソード615の額縁状の周辺部は、ボンディング用に0.5μm乃至2μm程度の比較的厚いIn/Au薄膜等で構成されている。アノード616は特に透明である必要はないが、Al/Ni薄膜等で構成されている。カソード615の額縁状の周辺部に銅(Cu)箔からなるTABリード(ビームリード)617が接続されている。アノード616も同様に、銅箔からなるTABリード(ビームリード)618が接続されている。
第2の半導体発光素子(第2層LED)82は、サファイア基板621の上に積層されたp型クラッド層622、発光層623,n型クラッド層624から構成されている。サファイア基板621は、透明接着剤605により、第1の半導体発光素子(第1層LED)81の上に固定されている。カソード625は、n型クラッド層624の上面のほぼ全体に形成することができる。カソード625の中央部は、発光層613,623の発光に対して透明な電極層で構成すれば良い。カソード625の額縁状の周辺部は、ボンディング用に0.5μm乃至2μm程度の比較的厚いIn/Au薄膜等で構成されている。アノード626は特に透明である必要はない。カソード625の額縁状の周辺部に銅(Cu)箔からなるTABリード(ビームリード)627が接続されている。Al/Ni薄膜等で構成されたアノード626も同様に、銅箔からなるTABリード(ビームリード)628が接続されている。
同様に第3の半導体発光素子(第3層LED)83は、サファイア基板631の上に積層されたp型クラッド層632、発光層633,n型クラッド層634から構成されている。サファイア基板631は、透明接着剤606により、第2の半導体発光素子(第2層LED)82の上に固定されている。カソード635は、n型クラッド層634の上面のほぼ全体に形成することができる。カソード635の中央部は、発光層613,623,633の発光に対して透明な電極層で構成すれば良い。カソード635の額縁状の周辺部は、ボンディング用に0.5μm乃至2μm程度の比較的厚いIn/Au薄膜等で構成されている。Al/Ni薄膜等で構成されたアノード636は特に透明である必要はない。カソード635の額縁状の周辺部に銅(Cu)箔からなるTABリード(ビームリード)637が接続されている。アノード636も同様に、銅箔からなるTABリード(ビームリード)638が接続されている。
TABリード(ビームリード)617,627,637は、端子603に導電性の接着剤等により接続されている。TABリード(ビームリード)618,628,638は、端子604に導電性の接着剤等により接続されている。第1、第2及び第3の半導体発光素子81,82,83は樹脂封止体608でモールドされている。
図31に示すように、赤色の発光をする第1の半導体発光素子(第1層LED)81と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子(第2層LED)82と、青色の発光をする第3の半導体発光素子(第3層LED)83とハイブリッドに集積化し、赤色の発光をする第1の半導体発光素子(第1層LED)81と、緑色の発光をする第2の半導体発光素子(第2層LED)82と、青色の発光をする第3の半導体発光素子(第3層LED)83のそれぞれの発光強度を調整すれば、フルカラーのスペクトル帯域における任意の波長の光を発光する半導体発光素子実装体を提供することができる。
尚、本発明は第1〜第6の実施の形態ではダブルヘテロ構造LEDの構造を例示したが、発光層12、21,22の上のn型クラッド層13及びオーミックコンタクト層14を省略したシングルヘテロ構造LEDでも良い。
更に、第1及び第4の実施の形態の発光層12を、例えば、3層のZn0.3Cd0.7O層からなる量子井戸(QW)層と、5層のZn0.92Cd0.08O層からなる障壁層とを交互に積層した3周期の多重量子井戸(MQW)構造で構成しても良い。第2及び第4の実施の形態の発光層21、或いは第3及び第6の実施の形態の発光層22も同様にMQW構造としても良い。
更に、n型クラッド層13、n型オーミックコンタクト層14を反応性イオンエッチング(RIE)により選択的にエッチングして溝部を形成し、この溝部に囲まれた凸部を残留させ、リッジ構造をなすようにしてリッジ構造の半導体レーザを構成しも良い。この場合は、n型クラッド層13とn型オーミックコンタクト層14とがなすリッジ(凸部)を挟むように絶縁膜を全面に堆積し、次に、n型オーミックコンタクト層14上の絶縁膜のみを、n型オーミックコンタクト層14が露出するまでエッチングし、露出したn型オーミックコンタクト層14にカソード15を形成すれば良い。
半導体レーザを構成する場合は、p型クラッド層11,41,42,43と発光層12,21,22との間にp型ガイド層を挿入しても良く、発光層12,21,22とn型クラッド層13にn型ガイド層を挿入しても良い。更に、p型ガイド層の内部に電子のオーバーフローを防止するオーバーフロー防止層を挿入した構造でも良い。
更に、ナノドット、ナノワイヤ、或いは量子細線等の構造を、第1〜第6の実施の形態で説明したウルツ鉱構造の禁制帯幅Eg=1.8eV以上、3.1eV未満のZnO系化合物半導体混晶で構成するようにしても良い。
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。