以下、本発明の光反射板用ポリプロピレンについて、ならびに本発明の光反射板用ポリプロピレンフィルムを面光源反射部材に適用した場合について説明する。
本発明の光反射板用ポリプロピレンフィルムは、実質的に無核のボイドを有していることが必要である。実質的に無核のボイドを有することにより、薄膜であっても高反射率で高白色度のフィルムを得ることができる。これに対し、従来のように、ポリプロピレン樹脂にボイド形成剤として、非相溶性樹脂や無機又は有機の粒子を多量に添加してボイドを形成したフィルムは、延伸した際にボイド形成剤の分散性不良または凝集によって巨大な孔が形成されて光反射性が悪化する場合があり、また、ボイド形成剤が製膜工程及び二次加工工程において脱落し、フィルム破れや工程を汚す場合がある。
ここで、実質的に無核のボイドを有するとは、次のように定義される。即ち、フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて1500倍に拡大観察して撮影し、この断面写真を用いて、1000μm2当たりの全ボイド数(境界線を有する単独気泡)と、核を有するボイド数を数え、核を有するボイド数を全ボイド数で割った値が5%以下である場合を、実質的に無核のボイドを有するとする。なお、フィルム断面のボイド観察に当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計10箇所の断面写真計10枚を使用する。
また、該ポリプロピレンフィルムの空隙率は、25〜75%の範囲であることが必要である。好ましくは30〜70%である。空隙率が25%未満では波長560nmでの光反射率が80%未満と不足し、また、フィルムの長手方向と幅方向の5%伸長時の強度の和が200MPaを越え、ノートパソコンなどのバックライトに組み込む際の折れ曲げ加工性に劣る場合がある。空隙率が75%を越えるとフィルムの製膜安定性に劣り、また、光反射部材に加工する際に、引張りや擦れでフィルムが破れ(切断)やすく工程通過性に問題が起こる場合がある。
本発明のフィルムの白色度は70%以上であることが必要であり、より好ましくは75%以上である。白色度が70%未満では画像が全体的に暗くなり、また、光反射する光に色が付き(黄色、赤色)、画面の色彩に影響する場合あるので好ましくない。
白色度は、JISのZ8722やZ8730に記載されているように、Richard S.Hunterの色差式を基に設計された日本電色工業株式会社製の分光式色彩計SE−2000を用いて、反射法にて試料の色の3刺激値を示すXYZ値を測定し、下記式にて求められる。
白色度=4×0.847×Z−3×Y(%)
この時、同時に求められるフィルムの色差を示すL値が50以上で、a値が3〜−3で、b値が−0.01〜−6の範囲であることが、バックライト用の反射材として好ましい。
L値が大きい程明度が高く、すなわち明るいことを示す。aは(+)側では数値が大きい程、赤の度合いが大きく、(−)側では緑の度合いが大きいことを示す。bは(+)側では黄の度合いが大きく、(−)側では青の度合いが大きいことを示す。本発明のフィルムのL値が50未満では、バックライト用光反射材して用いたときに画面の発色性が不鮮明となり好ましくない。L値は60以上が画像がより鮮明となり好ましい。
また、a値は3〜−3の範囲であること好ましく、より好ましくは2〜−2の範囲である。a値が3を越えると画面が全体的に赤みがかって見え、−3未満では緑色が強くなるので好ましくない。b値は−0.01〜−6の範囲であることが好ましく、より好ましくは−0.2〜−5の範囲である。b値が−0.01を越えると、すなわち+側になると画面が全体的に黄色みがかって見えるので好ましくなく、−6未満では青色が強くなるので好ましくない。
本発明のフィルムの波長560nmでの光反射率は80%以上であり、90%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。光反射率が80%未満では照明光源の照明効率に劣り、液晶画面が暗くなる。
本発明のフィルム中に存在するボイドは、その平均長径を1〜7μm、平均短径(フィルム厚み方向の径)を0.1〜0.7μmの範囲とすることが好ましい。また、ボイドの数は2個/10μm2以上であることが、薄膜であっても高反射率であり、色彩を示す白色度や、L.a.bの値を本発明の範囲内にするために好ましい。
本発明の、実質的に無核のボイドを有し、空隙率が25〜75%で、白色度が70%以上で、波長560nmでの光反射率が80%以上であるポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを溶融押出して、金属ドラム上で冷却固化した後、少なくとも一軸に延伸するという製膜方法において、下記のような特定のポリプロピレンや添加剤を使用し、また、後述するように製膜条件を特定することにより製造することができる。
本発明の無核のボイドを有するポリプロピレンフィルムを得るためには、ポリプロピレンと溶媒を混合して押し出し、延伸の前若しくは後に押し出されたシート中に含まれる溶媒を抽出することにより孔を形成する方法、ポリプロピレン中に高密度、高弾性回復率の弾性構造を作り、延伸により該弾性構造を変形させて孔を形成する方法、ポリプロピレンの結晶多形を利用し、β晶からα晶への結晶転移を利用して孔を形成する方法などがあるが、経済性の観点および無核で、微細なボイドを多数生成し反射率を高めるために、β晶からα晶への結晶転移を利用する方法により孔を形成することが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンとして、β晶活性を有し、メルトフローレイト(MFR)が1〜30g/10分の範囲で、アイソタクチックインデックス(II)が92〜99.8%の範囲のポリプロピレンを使用することが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンのMFRが、上記範囲未満であると、溶融押出が不安定になったり、均一な厚みのフィルムを形成することが困難となり、またフィルム中のボイドの径も不均一となって製膜性が悪化するなどの問題点を生じる場合がある。MFRが上記範囲を超えると、溶融押出時のポリマー粘度が低くなりすぎて、キャスト工程においてスリット状口金から吐出された溶融ポリマーを金属ドラムに巻き付けてシート状に成形せしめる際に、溶融ポリマーの金属ドラム上での着地点が大きく変動するため、未延伸シート中の均一なβ晶の生成が困難になったり、シートに波うちなどの欠点が生じるため、得られるフィルムの厚みムラが大きくなったり、ボイドの形成ムラが大きくなる場合がある。MFRは、より好ましくは1〜20g/10分である。
また、ポリプロピレンのIIが上記範囲未満であると、フィルムの5%伸長時の強度が低下し、また、熱収縮率が大きくなるなどの問題点が生じる場合がある。IIが高くなるほど剛性、寸法安定性などが向上する傾向にあるが、上記範囲を超えると製膜性自体が不安定になる場合がある。IIは、より好ましくは94〜99.5%である。
ここで、上記したMFR、IIなどのポリプロピレンの特性値は、製膜前の原料チップを用いて判定することが望ましいが、製膜後のフィルムについても、そのまま、もしくは該フィルムを60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、不純物・添加物を除去後、130℃で2時間以上真空乾燥したものをサンプルとして用いて測定することもできる。
また、本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンは、経済性などの観点から、本発明の特性を損なわない範囲で、本発明のポリプロピレンフィルムを製造する際に生じた屑フィルムや、他のポリプロピレンフィルムを製造する際に生じた屑フィルム、その他の樹脂をブレンド使用してもかまわない。この場合、本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンが、MFRとIIを満たし、かつβ晶活性を有することが必要である。
本発明でいうところのポリプロピレンは、いずれも主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でポリプロピレンに他の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
また、下記ポリオレフィン樹脂を1〜15重量%添加混合することが、微細なボイド形成、製膜安定性、柔軟性が良好となり、表面光沢度、白色度が向上するので好ましい。
該ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ホモのポリプロピレン、ホモプロピレンにプロピレン以外の第2成分、例えばエチレン又はα−オレフィンとして、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなどのランダムまたはブロックに共重合させたこのが好ましい。また、上記ポリオレフィン樹脂に、下記のエラストマー成分を添加することもできる。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒法による直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、メタロセン触媒法による超低密度ポリエチレン(V−LDPE)、プロピレン−ブテンラバー(PBR)、エチレン−α−オレフィンコポリマーとして、エチレン−プロピレンラバー(EPR)、エチレン−ブタジエンラバー(EBR)エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレン−エタクリレート(EEA)、エチレン−メチルメタクリレート(EMMA)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、スチレン系共重合体として、スチレン−ブタジエンラバー(SBR)、水添スチレン−ブタジエンラバー(H−SBR)、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等の少なくとも1種以上である。中でも特に、メタロセン触媒法による直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)、や超低密度ポリエチレン(V−LDPE)が、微細なボイド形成を多数形成し、製膜安定性が向上するので好ましい。
また、本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンは、上記したポリオレフィン系樹脂以外の他のポリマーから選ばれる少なくとも一種を5%以下で添加しても構わない。ポリオレフィン系樹脂以外の他のポリマーとしては、所謂ビニル系ポリマー樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。ポリオレフィン系樹脂以外の他のポリマーとしては、溶融押出工程でのポリプロピレン中の微分散性、その後の延伸工程での孔形成補助効果の観点から、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シンジオタクチックポリスチレンなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
次に、本発明のポリプロピレンフィルムを得るポリプロピレンの“β晶活性を有する”とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、JIS K 7122(1987)に準じて窒素雰囲気下で5mgの試料を10℃/分の速度で280℃まで昇温させ、その後5分間保持した後に10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、次いで再度10℃/分の速度で昇温した際に得られる熱量曲線(以下セカンドランの熱量曲線と称する場合がある)において、140〜160℃にβ晶の融解に伴う吸熱ピークが存在し、該吸熱ピークのピーク面積から算出される融解熱量が10mJ/mg以上であることをいう。また、上記温度範囲に吸熱ピークが存在するがβ晶の融解に起因するか不明確な場合などは、DSCの結果と併せて、後述する条件で溶融結晶化させたサンプルについて広角X線回折法によりβ晶に起因する2θ=16°付近に観測される(300)面の回折ピークの存在を確認し、この回折ピークの存在をもって“β晶活性を有する”と判定してもよい。
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンの(300)面の回折ピークの存在を確認し、この回折ピークのプロピレンは、β晶活性を有することにより、その製造工程において、未延伸シート中にβ晶を生成させることが可能であり、その後の延伸工程でβ晶をα晶に結晶転移させ、その結晶密度差によりボイドを形成できる。ここで、より均一かつ多数の孔を形成させるためには、本発明のポリプロピレンフィルムのβ晶分率は、30%以上であることが好ましい。
β晶分率は、上記セカンドランの熱量曲線において、140℃以上160℃未満に観測されるポリプロピレン由来のβ晶の融解に伴う吸熱ピーク(1個以上のピーク)のピーク面積から算出される融解熱量(ΔHβ)と、β晶以外のポリプロピレン由来の結晶の融解に伴う吸熱ピーク(160℃以上に観測される、β晶以外のポリプロピレン由来の結晶の融解に伴うベースラインを越えるピーク)のピーク面積とから算出される融解熱量(ΔHα)から、下記式を用いて求める。
β晶分率(%)= {ΔHβ/(ΔHβ+ΔHα)}×100 (1)
なお、140〜160℃に吸熱ピークが存在するがβ晶の融解に起因するピークか不明確な場合などは、後述する条件で溶融結晶化させたサンプルについて広角X線回折法によりβ晶に起因する2θ=16°付近に観測される(300)面の回折ピークの存在を確認し、この回折ピークの存在をもって該吸熱ピークがβ晶の融解に起因するものと判定してもよい。
本発明のポリプロピレンフィルムのβ晶分率が上記範囲未満であると、得られるフィルムの空孔率が低くなったり、光反射率に劣る場合がある。本発明のポリプロピレンフィルムのβ晶分率は、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上、最も好ましくは50%以上である。
このような高いβ晶活性を有するポリプロピレンとするためには、ポリプロピレンに所謂β晶核剤を添加することが好ましい。このようなβ晶核剤が添加されない場合、上記のような高いβ晶分率が得られない場合がある。本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンに好ましく添加できるβ晶核剤としては、例えば、1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩;N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミドなどに代表されるアミド系化合物;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二または三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;テトラオキサスピロ化合物類;イミドカルボン酸誘導体;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;キナクリドン、キナクリドンキノンなどに代表されるキナクリドン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物または塩である成分Bとからなる二成分系化合物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、1種類のみを用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
本発明においてポリプロピレンに添加するβ晶核剤としては、上記のなかでは特に下記化学式(i)や(ii)で表され、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドなどに代表されるアミド系化合物や、有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物または塩である成分Bとからなる二成分系化合物が、得られるフィルムの空孔率を高くでき、透過性を向上できるので、特に好ましい。
R2−NHCO−R1−CONH−R3 ・・・(i)
[ここで、式中のR1は、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基または炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R2、R3は同一または異なる炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。]
R5−CONH−R4−NHCO−R6 ・・・(ii)
[ここで、式中のR4は、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジアミン残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジアミン残基または炭素数6〜12の複素環式ジアミン残基または炭素数6〜28の芳香族ジアミン残基を表し、R5、R6は同一または異なる炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。]
かかる特に好ましいβ晶核剤もしくはβ晶核剤添加ポリプロピレンの具体例としては、新日本理化(株)製β晶核剤“エヌジェスター”(タイプ名:NU−100など)、SUNOCO社製β晶核剤添加ポリプロピレン“BEPOL”(タイプ名:B022−SPなど)などが挙げられる。
β晶核剤の添加量は、用いるβ晶核剤のβ晶生成能にもよるが、ポリプロピレン全量に対して0.001〜1重量%であることが好ましい。β晶核剤の添加量が上記範囲未満であると、得られるフィルムのβ晶分率が不十分となったり、空孔率が低くなったり、反射率や白色度に劣る場合がある。β晶核剤の添加量が上記範囲を超えると、それ以上添加しても得られるフィルムのβ晶分率が向上せず、経済性に劣り、核剤自体の分散性が悪化して逆にβ晶分率が低下する場合がある。β晶核剤の添加量は、より好ましくは0.005〜0.5重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
ここで、上記したβ晶核剤は、ポリプロピレン中で針状に分散していることが好ましい。核剤の分散形態は、下記の通り、加熱溶融させた原料チップまたは未延伸シートまたは延伸フィルムについて光学顕微鏡で観察し、その際確認される核剤形状の短径と長径の比の平均値が10以上であれば、針状に分散しているものと定義する。β晶核剤が針状に分散することにより、空孔率を高めたり、反射率を高めることが可能となる場合がある。
また、本発明のポリプロピレンフィルムを構成する前記ポリプロピレンに、高溶融張力ポリプロピレン(High Melt Strength-PP:以下、HMS−PPと略称する)を添加混合して溶融張力(以下MSと略称する)を高めると、延伸時の破れが少なくなり、製膜性が向上するので好ましい。さらに、例えば、二軸延伸する工程において、縦方向に低温・高倍率延伸した後に横方向延伸しても横延伸時にフィルムが破れることなく製膜できるので、製膜速度を高くし、生産性を高めることができる。また、縦方向に高倍率延伸することにより、空孔率を高くすると、5%伸長時の強力や寸法安定性も向上させることができる。これは、上記HMS−PPを含むことにより、キャストの段階からポリプロピレンの系内の微結晶を貫く非晶相のタイ分子の絡み合いが促進され、これによりその後の延伸過程で延伸応力が系全体に均一に伝達されるためと推定される。
ここで、MSとは、(株)東洋精機製メルトテンションテスターを用いて、サンプルを230℃に加熱し、溶融ポリプロピレンを押出速度20mm/分で押し出してストランドとし、このストランドを15.7m/分の速度で引き取る際に測定した張力である(単位:cN)。
上記のようなHMS−PPは、例えば、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているように長鎖分岐を導入せずに溶融張力と固有粘度、結晶化温度と融点とがそれぞれ特定の関係を満たし、かつ沸騰キシレン抽出残率が特定の範囲にある直鎖状の結晶性ポリプロピレンとする方法などにより調製することができる。
本発明のポリプロピレンフィルムに含まれるHMS−PPは、溶融押出の安定性、上記した製膜性の向上効果、それに伴う空孔率向上、透過性向上の効果が大きい傾向にあることから、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するHMS−PPであることが特に好ましい。
ここで、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するHMS−PPとは、ポリプロピレン主鎖骨格から枝分かれしたポリプロピレン鎖を有するポリプロピレンである。主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンで上記のように大きな効果が得られるのは、キャストの段階から長鎖分岐が微結晶間を疑似架橋するタイ分子として作用し、その後の延伸工程で延伸応力が系全体に均一に伝達されるためと推定される。
かかる主鎖骨格中に長鎖分岐を有するHMS−PPの具体例としては、Basell社製HMS−PP(タイプ名:PF−814、PF−633、PF−611、SD−632など)、Borealis社製HMS−PP(タイプ名:WB130HMSなど)、Dow社製HMS−PP(タイプ名:D114、D201、D206など)などが挙げられる。
ポリプロピレンの長鎖分岐の程度を示す指標値として、下記式(2)で表される分岐指数gが挙げられる。
g = [η]LB/[η]Lin ・・・(2)
ここで、[η]LBは長鎖分岐を有するポリプロピレンの固有粘度であり、[η]Linは長鎖分岐を有するポリプロピレンと実質的に同一の重量平均分子量を有する直鎖状の結晶性ポリプロピレンの固有粘度である。なお、ここで示した固有粘度はテトラリンに溶解した試料について通常の方法で135℃で測定する。また、このg値測定の際の重量平均分子量は、マッコーネル(M.L.McConnell)によって“アメリカン ラボラトリー”(American Laboratory)、May、63−75(1978)に発表されている方法、すなわち低角度レーザー光散乱光度測定法で測定する。
本発明のポリプロピレンフィルムに含まれるHMS−PPの分岐指数gは、0.95以下であることが好ましい。分岐指数gが上記範囲を超えると、HMS−PPの添加効果が低下し、製膜性が悪化したり、縦高倍率延伸して得られる微孔性フィルムの空孔率が低くなったり、透過性に劣る場合がある。HMS−PPの分岐指数gは、より好ましくは0.9以下である。
本発明のポリプロピレンフィルムに含まれるHMS−PPのMSは、3〜100cNであることが好ましい。MSが上記範囲未満であると、上記したHMS−PPの添加効果が得られず、製膜性が悪化し、特に縦高倍率延伸時の横延伸性が悪化する場合があったり、縦高倍率延伸して得られるフィルムの空孔率が低くなる場合がある。上記範囲を超えると、製膜性が悪化し、特に縦高倍率延伸時の縦延伸性が悪化する場合があったり、溶融押出時の溶融ポリマーの安定押出性やフィルムの耐衝撃性などが悪化する場合がある。上記HMS−PPのMSは、より好ましくは4〜80cN、さらに好ましくは5〜60cNである。
本発明のポリプロピレンフィルムに含まれるHMS−PPの混合量は、特に制限されないが、1〜10重量%であることが好ましく、少量添加でも効果がみられる。混合量が上記範囲未満であると、添加効果が見られず、上記範囲を超えると、製膜性が悪化し、特に縦高倍率延伸時の縦延伸性が悪化する場合があったり、溶融押出時の溶融ポリマーの安定押出性やフィルムの耐衝撃性などが悪化する場合があったり、β晶分率が必要以上に低下する場合がある。HMS−PPの混合量は、より好ましくは1〜7重量%、最も好ましくは2〜5重量%である。
また、本発明のポリプロピレンフィルムは、230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレイト(MFR)の関係が、下記式(3)を満たすことが好ましい。
log(MS)> −0.91log(MFR)+0.6 ・・・(3)
ここで、フィルムのMSが5cN未満であり、MSとMFRの関係が上記式(3)を満たすことは、本発明のフィルムを形成するポリプロピレン全体について得られるMSが5cN未満であり、かつMSとMFRが上記式(3)を満たすことを意味する。この際、ポリプロピレンに添加物などが含まれている場合には、これを抽出して測定することが好ましいが、添加剤などが存在した抽出前の状況において測定されたMSとMFRの関係が上記式(3)を満たすものであってもよい。
MSが5cN未満であり、かつMSとMFRの関係が上記式(3)を満たすことにより、延伸時の破れが少なくなり、製膜性が向上する。さらに、例えば、フイルムの空隙率を高めるために、縦方向に低温・高倍率延伸した後に横方向延伸しても横延伸時にフィルムが破れることなく製膜できるので、縦方向延伸時の延伸倍率を高めることにより製膜速度を高くでき、単位時間当たりの生産量を高められる。このように、製膜性を向上できるとともに生産量も高められることから、生産性を著しく向上できる。これは、キャストの段階から系内の微結晶を貫く非晶相のタイ分子の絡み合いが促進され、これによりその後の延伸過程で延伸応力が系全体に均一に伝達されるためと推定される。
また、上記したようにMSが5cN未満であり、MSとMFRの関係が上記式(3)を満たすポリプロピレンからなり、縦高倍率延伸する場合、延伸後の面積倍率(=長手方向の実効延伸倍率と幅方向の実効延伸倍率の積)を高くでき、ボイド形成が促進されるため、空孔率を高めることができる。
本発明のポリプロピレンフィルムのMSは、より好ましくは4cN未満であり、さらに好ましくは3cN未満であり、最も好ましくは2.5cN未満である。
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンには、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、塩素捕捉剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、粘度調整剤、銅害防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を混合しても良い。この際、特に添加した場合と添加しない場合で、得られる微孔性フィルムのβ晶分率が実質的に同等であることが好ましい。
これらのなかで、酸化防止剤や熱安定剤の種類および添加量の選定はフィルムの長期耐熱性にとって重要である。本発明の微孔性ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンに好ましく添加される酸化防止剤、熱安定剤としては種々の化合物が挙げられるが、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT);3,3′,3″,5,5′,5″−ヘキサ−tert−ブチル−a,a′,a″−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール(例えば、チバガイギー(株)製“IRGANOX”1330など);ペンタエリストリール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](例えば、チバガイギー(株)製“IRGANOX”1010など)などが挙げられ、熱安定剤としては例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト(例えば、チバガイギー(株)製“IRGAFOS”168など);3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応生成物(例えば、チバガイギー(株)製HP−136など)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これら酸化防止剤、熱安定剤は、2種類以上を併用することが好ましく、その添加量は、それぞれポリプロピレン全量に対して、0.03〜1重量部であることが好ましい。酸化防止剤、熱安定剤それぞれの添加量が上記範囲未満であると、初期の原料から微孔性フィルムを得るまでの製造工程、その後の二次加工工程において長期耐熱性に劣る場合がある。また、酸化防止剤、熱安定剤それぞれの添加量が上記範囲を超えると、それ以上添加しても得られるフィルムの長期耐熱性が向上せず、経済性に劣る場合がある。酸化防止剤、熱安定剤それぞれの添加量は、ポリプロピレン全量に対して、より好ましくは0.05〜0.9重量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部である。
また、本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンには、フィルムの帯電による静電気障害防止のため帯電防止剤を添加してもよい。本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンに添加される帯電防止剤としては、例えば、ベタイン誘導体のエチレンオキサイド付加物、第4級アミン系化合物、アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸グリセリド、もしくはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明のポリプロピレンフィルムには、滑剤を添加してもよい。これは、JIS用語で表現される熱可塑性樹脂の加熱成形時の流動性、離型性をよくするために添加されるもので、加工機械とフィルム表面、またはフィルム同士の間の摩擦力を調節するために添加される。本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンに添加される滑剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどのアミド系化合物、もしくはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリプロピレンフィルムに添加される帯電防止剤の添加量は、ポリプロピレン全量に対して、0.3重量部以上添加されていることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.5重量部である。また、帯電防止剤と滑剤の合計添加量は0.5〜2.0重量部が帯電防止性と滑り性の点でより好ましい。さらに、上記の通り、これらを添加することによりβ晶分率が低下する場合には、実質的に添加しない方が好ましく、適宜添加量を選択すればよい。
本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンには、滑り性付与、ブロッキング防止(ブロッキング防止剤)、孔形成補助などのために無機粒子および/または架橋有機粒子を添加してもよい。
本発明において無機粒子とは、金属化合物の無機粒子であり、例えば、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、珪酸アルミニウム、カオリン、カオリナイト、タルク、クレイ、珪藻土、モンモリロナイト、酸化チタンなどの粒子、もしくはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明において、架橋有機粒子は架橋剤を用いて高分子化合物を架橋した粒子であり、例えば、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッソ系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、無機粒子および架橋有機粒子の平均粒径は、これらをブロッキング防止剤としてのみ用いる場合には、0.5〜5μmであることが好ましい。平均粒径が上記範囲未満であると、得られる微孔性フィルムの滑り性に劣る場合があり、上記範囲を超えると、粒子が脱落する場合がある。また、孔形成補助を主な目的として添加する場合には、0.05〜1μmであることが好ましい。平均粒径が上記範囲未満であると、添加効果が発現しなくなる場合があり、上記範囲を越えると、粒子が脱落したり、粗大な孔が形成されてしまう場合がある。
無機粒子および/または架橋有機粒子の添加量は、これらをブロッキング防止剤としてのみ用いる場合には、0.02〜0.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2重量%であることが、ブロッキング防止性、滑り性などの観点から好ましい。
また、孔形成補助を主な目的として添加する場合には、その平均粒径に大きく依存するが、本発明の「実質的に無核のボイドを有する」の要件を阻害しない範囲内とする。例えば、0.1〜5重量%であること、特に0.5〜2重量%であることが、粒子の分散性、孔形成の観点から好ましい。さらに、上記の通り、粒子を添加することによりβ晶分率が低下する場合や粒子が脱落し、工程中を汚す傾向にある場合には、実質的に添加しない方がよい。
また、本発明のフィルムを光反射材として用いた時に、光に対する耐性を付与するために、ヒンダードアミン系の光安定剤を添加することが好ましい。添加量は、ポリプロピレン樹脂に対して、0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲であることが、フィルムのボイド形成や白色度低下への影響がなく、光に対する耐性が向上するので好ましい。
本発明の光反射用ポリプロピレンフィルムは、実質的に無核のボイドを有し、空隙率が25〜75%であるポリプロピレンフィルムをコア層(A)とし、その少なくとも片面に、空隙率が0.1以上25%未満のポリプロピレン樹脂のスキン層(B)を積層することによる積層ポリプロピレンフィルムであってもよい。この積層フィルムの場合、スキン層(B)表面における白色度が70%以上、かつ、波長560nmでの光反射率が80%以上であることが必要である。
この積層ポリプロピレンフィルムにおいて、コア層(A)の少なくとも片面に積層されたスキン層(B)の積層厚みは1〜50μmの範囲であり、コア層(A)の両面に積層されていることが、平滑性および平面性が向上し、さらに製膜工程及び反射材加工工程での走行性がよく生産収率が向上するので好ましい。
スキン層の空隙率は0.1%以上25%未満が必要であり、好ましくは0.5〜20%の範囲、より好ましくは2〜10%の範囲である。この範囲とすることにより、光沢および光反射率が高くなり、生産収率が向上する。空隙率が25%を超えると、コア層単膜との差がなくなり、スキン層積層の効果がない。
この積層ポリプロピレンフィルムの一例を示すフィルム断面写真を、図1に示す。図1(a)は主としてコア層(A)部分を示す1500倍拡大の電子顕微鏡写真であり、コア層(A)内に多くの無核のボイドが存在することが示されている。また、図1(b)は主としてスキン層(B)部分を8000倍拡大で示す電子顕微鏡写真であり、スキン層(B)内にも多少の空隙が存在することが示されている。
本発明の単層ポリプロピレンフィルムの表面や積層ポリプロピレンフィルムの表面粗さは、少なくとも片面において、平均表面粗さRaが0.02〜0.5μmの範囲であることが好ましく、また、少なくとも片面における光沢度が30〜150%の範囲であることが好ましい。平均表面粗さRaが0.02μm未満では、製膜工程及び反射材加工工程での走行性が悪く、生産収率が低下するので好ましくなく、0.5μmを越えると、表面突起の削れが起こるので好ましくない。
本発明の単層ポリプロピレンフィルムの表面や積層ポリプロピレンフィルム表面の、少なくとも片面の光沢度は30〜150%の範囲であることが好ましい。光沢度が30%未満では光反射率を80%以上とすることが難しく、一方、ポリプロピレンフィルムで光沢度を150%超とするには、低温キャストやα晶核剤などを添加して未延伸シート中にα晶を多量に生成させ、平均表面粗さRaを0.02μm未満とする必要がでてくることから、製膜工程及び反射材加工工程での走行性が悪く、生産収率が低下するので好ましくない。
本発明の単層ポリプロピレンフィルム、または、積層ポリプロピレンフィルムの比重は、0.18〜0.8の範囲であることが好ましい。より好ましくは、単層ポリプロピレンフィルムの場合は、0.20〜0.65の範囲で有り、積層ポリプロピレンフィルムの場合は、0.25〜0.70の範囲である。
比重が0.18未満では空隙率が高すぎて機械強度が低下し、製膜工程および加工工程において破れを生じやすくなるので好ましくない。一方、比重が0.8を越えると、波長560nmでの光反射率が80%未満となり好ましくなく、また、フィルムの長手方向と幅方向の5%伸長時の強度の和が200MPaを越え、折れ曲げ加工性に劣る場合がある。また、積層ポリプロピレンフィルムの比重を0.25〜0.70の範囲とするためには、上記範囲内の比重をもつポリプロピレンフィルムをコア層(A)とし、その少なくとも片面にスキン層(B)を積層する際のスキン層厚みとスキン層の空隙率とを適宜調整すればよい。
また、本発明の単層ポリプロピレンフィルム、または、積層ポリプロピレンフィルムの光学濃度(以下ODと略称する)は、0.5〜1.5の範囲であることが好ましい。ODが0.5未満では光源からの光の多くがフィルムを透過して、反射効率が低下して液晶画面が暗くなるので好ましくない。ODが1.5を超えると反射効率が平衡に達して反射効率の増加は望めない。むしろ、ODが1.5を越す場合には空隙率、比重、厚みが本発明の範囲外となり、機械的強度が低下したり、フィルム厚みが厚くなるので好ましくない。
本発明の単層ポリプロピレンフィルム、または、積層ポリプロピレンフィルムの長手方向(以下MDと略称する)と幅方向(以下TDと略称する)の5%伸長時の強度(以下F5値と略称する)の和は50〜200MPaの範囲で、MDとTDのF5値の比が、5:1〜1:5の範囲であることが好ましい。
一般に空隙率とF5値は相反する特性であり、空隙率を高くするとF5値は低下するが、本発明のフィルムでは、空隙率が高いにも関わらず、F5値が高いのが特徴の一つである。その理由は、公知のボイド含有フィルムに比べ、本発明のフィルムのボイドが非常に細かくて、数が多いことによるものと推察される。
MDとTDのF5値の和が50MPa未満ではフィルムの製膜安定性に劣り、また、光反射部材に加工する際の張力で、でフィルムが伸びて平面性が悪化したり、破れ(切断)やすく、工程通過性に問題が起こる場合があるので好ましくない。一方、MDとTDのF5値の和が200MPaを超えると、ノートパソコンなどの液晶画面のバックライト部材に組み込む際の折れ曲げ加工性に劣る場合がある。また、MDとTDのF5値の比が、5:1〜1:5の範囲を外れると、反射部材として加工後に、フィルムの反りや歪みが起こる場合があるので好ましくない。
本発明の単層ポリプロピレンや積層ポリプロピレンフィルムにおける120℃・15分加熱後の熱収縮率は、MDおよびTD方向共に5%以下であることが好ましい。MDおよびTD方向共に熱収縮率が5%を超えると、バックライトの熱によるフィルムの収縮が大きく、長時間使用時に反射率が低下する場合があるので好ましくない。
本発明の単層ポリプロピレンや積層ポリプロピレンフィルムの厚みは、20〜300μmの範囲であることが好ましい。フィルム厚みが薄すぎて20μm未満であるとフィルムの平坦性を確保することが困難となり、反射部材として用いた際に、明るさにムラを生じやすい。一方、300μmよりも厚い場合は、前述したように液晶ディスプレイ部材は薄膜化、軽量化が進んでおり、膜厚の増大は実用に供しにくい。反射材としてはより高い反射率が求められることから、フィルム厚みは50〜250μm、より好ましく100〜200μmの範囲である。
なお、厚みが100μm以上の光反射板とする場合には、反射部材の形状に合わせて、厚み20μm〜100μmの本発明のポリプロピレンフィルムを重ね合わせて用い、反射率を調整することでもよい。
本発明の積層ポリプロピレンフィルムにおいて、スキン層(B)の積層厚みは1〜50μmであることを好ましい。スキン層厚みが1μm未満では積層効果がなく、50μmを越えると反射率が低下し、折れ曲げ加工性が低下する場合があるので好ましくない。また、コア層(A)とスキン層(B)の厚み構成差はコア層(A):スキン層(B)=2:1〜50:1であることが、反射率と光沢度、走行性、機械的強度の両立が容易にできて好ましい。
本発明の積層ポリプロピレンフィルムにおいて、スキン層(B)を構成するポリプロピレン樹脂としては、ホモのポリプロピレン、又は、プロピレンにプロピレン以外の第2成分(例えばエチレンもしくはα−オレフィンとして、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなど)を1〜15重量%ランダムまたはブロックに共重合させたプロピレン共重合体がある。また、上記ポリプロピレン樹脂に、エラストマー成分を1〜5重量%添加混合してもよい。このエラストマー成分としては、メタロセン触媒法による直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)、エチレン−α−オレフィンコポリマーとして、エチレン−ブテンラバー(EBR)、エチレン−プロピレンラバー(EPR)、プロピレン−ブテンラバー(PBR)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレン−エタクリレート(EEA)、エチレン−メチルメタクリレート(EMMA)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、スチレン系共重合体として、スチレン−ブタジエンラバー(SBR)、水添スチレブタジエンラバー(H−SBR)、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。エラストマー成分の添加混合により、フィルムに柔軟性が付与され、易滑性と成型性が向上するので好ましい。添加量が1重量%未満では添加効果が見られず、5重量%を超えると、分散不良が起り、ゲル状の突起が形成されたり、耐熱性が低下する場合があるので好ましくない。
スキン層(B)を構成するポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックス(II)は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%であることが、製膜安定性、フィルムの機械強度(F5値)が高くなるので好ましい。メルトフローレート(MFR)は1〜30g/10分(230℃、2.16kg)の範囲であることが、押出成形性及びスキン層へのボイド形成の点で好ましい。
該ポリプロピレン樹脂には、公知の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑り剤、ブロッキング防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤などを製造工程やフィルム特性を低下させない程度に含有させてもよい。中でも、易滑性を付与して工程通過性向上させる点ために、少量の無機粒子および有機粒子の少なくとも1種以上を含有することが好ましい。ただし、この時の添加量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.02〜1重量%の範囲である。添加量が2重量%を越えると、製膜工程及びラミネート工程で樹脂や粒子の脱落が起こり工程を汚す場合があり、さらに、空隙率が25%を超える場合があるので好ましくない。
無機粒子としては、例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウムおよびフッ化カルシウム等を用いることができる。
有機粒子とは、高分子化合物を架橋剤を用いて架橋した粒子である。例えば、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッソ系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物を挙げることができる。
無機粒子および架橋有機粒子は球状で、その平均粒径は0.1〜2μmの範囲であることが粒子の凝集が少なく、易滑性効果が高いので好ましい。平均粒径が0.1μm未満では易滑効果が低く、2μmを越えると粒子の脱落やフィルム同士を擦った時にフィルム表面に傷がつきやすくなるので好ましくない。
また、本発明のフィルムを光反射材として用いた時に、光に対する耐性を向上させるために、スキン層(B)に光安定剤として、ヒンダードアミン系の光安定剤を添加することが好ましい。添加量としては、0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲である。
スキン層(B)に、前記したβ晶核剤を添加すると、空隙率の調整が容易になるので好ましい。この時のβ晶核剤の含有量は、0.01〜0.05%であることが、空隙率と光沢度を両立できて好ましい。
また、スキン層(B)に、β晶核剤以外に、α晶核剤、HMS−PPを添加すると、結晶化温度が高くなり、本願の製膜条件の特徴である高温キャストにおいて、キャスティングドラムへの粘着を防止し、増速が可能となるので好ましい。
スキン層(B)を構成するポリプロピレン樹脂は、融解温度が145〜175℃であることが好ましい。この融解温度が145℃未満では、反射部材として用いたときに、バックライトの熱によってフィルムが収縮してカールする場合があり好ましくなく、175℃を越えると二軸延伸時にフィルム破れが多発して製膜性が悪化し、また、光沢度および平均表面粗さが本発明の好ましい範囲から外れる場合があるので好ましくない。
本発明の積層ポリプロピレンフィルムにおけるコア層(A)とスキン層(B)のβ晶分率を区別してみるときには、まず、走査型電子顕微鏡(S−2100A形、(株)日立製作所製、以下SEMと略称する)でフィルムの断面観察を行って厚み構成を確認した後に、スキン層(B)の厚みを削り取るか、スライスしてコア層(A)のみを取り出し、その融解ピークを測定する。
本発明の積層ポリプロピレンフィルムの白色度は、単層ポリプロピレンフィルムの場合と同様に、70%以上であり、好ましくは75%以上である。白色度が70%未満では画像が全体的に暗くなり、また、光反射する光に色が付き(黄色、赤色)、画面の色彩に影響する場合あるので好ましくない。なお、この白色度はスキン層(B)表面での測定値である。
また同様に、スキン層(B)表面における波長560nmでの光反射率は80%以上であり、90%以上がより好ましい。光反射率が80%未満では照明光源の照明効率に劣り、液晶画面が暗くなって好ましくない。積層ポリプロピレンフィルムの色差を示すL値が50以上で、a値が3〜−3で、b値が−0.01〜−6の範囲であることが好ましい。
本発明の単層ポリプロピレンフィルムや積層ポリプロピレンフィルムは、空隙率が高くて低比重で、白色度が高く、さらに表面平滑性、高光沢度で高反射率の特性を有するが、このフィルムは、少なくとも一軸に延伸されていることが好ましく、より好ましくは、MDとTDのF5値と熱収縮率のバランスをとるために二軸延伸されていることがより好ましい。二軸延伸工程における縦延伸条件は100〜140℃で3〜7倍が好ましく、横延伸条件は125〜160℃で3〜12倍が好ましい。
本発明の光反射板用ポリプロピレンフィルムは、実質的に無核のボイドを有するために、従来の無機粒子や非相溶性樹脂性添加によるボイド形成フィルムに比べ、光による黄変が少なく、反射率の変化が少ないことも特徴であるが、近年の液晶テレビのような大画面で、長時間使用などの要求に応えるためには、より高い輝度と耐久性が求められ、特に直下型の光源を使用する場合においては光源から発光される光が直接当たることになり、より高度な反射板の耐久性が求められることから、フィルムの少なくとも片面に、光安定剤を含有する塗布層を設けることが好ましい。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系などの有機系の光安定剤、あるいはゾルゲルなどの無機系の光安定剤を用いることができる。好適に用いられる光安定剤の具体例を以下に示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
ヒンダードアミン系: ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、サリチル酸系: p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系: 2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェノール)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2(2’ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−アクリロイルエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール シアノアクリレート系: エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、上記以外: ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’−チオビス(4−tーオクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ・t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル・リン酸モノエチレート、ニッケル・ジブチルジチオカーバメート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ハイドロキシベンゾエート、2−エトキシ−2’−エチルオキザックアシッドビスアニリド、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、
本発明においては、上記具体例のうち、少なくともヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系のいずれかを用いることが好ましく、さらには、これらを併用して用いることが、より好ましい。
本発明においては、塗布層の形成をより容易にするために、塗布層中の光安定剤に対し、適宜他の樹脂成分を混合することが好ましい。すなわち、樹脂成分および光安定剤をそれぞれ溶解し得る有機溶媒、水、2種以上の有機溶媒の混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に樹脂成分と光安定剤を溶解もしくは分散させて塗液状態にして用いることが好ましい態様である。もちろん、樹脂成分と光安定剤を予め別々に有機溶媒、水、有機溶媒混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に溶解または分散させたものを任意に混合して使用してもよい。また、予め光安定剤成分と樹脂成分との共重合体を、そのまま塗布材料として用いることも好ましい態様である。もちろん、該共重合体を有機溶媒、水、2種以上の有機溶媒の混合液、あるいは有機溶媒/水混合液に溶解せしめたものを用いてもよい。混合または共重合する樹脂成分は特に限定されないが、その一例を挙げれば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂などである。これらの樹脂は単独で用いても、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。
上記の樹脂製分のうち、アクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂を選択して用いることが好ましく、さらにアクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂に光安定剤成分を共重合したものを塗布層に使用することが、より好ましい。共重合する場合には、光安定剤モノマー成分に対してアクリルモノマー成分あるいはメタクリルモノマー成分とを共重合することが好ましい。
光安定剤モノマー成分としては、例えばベンゾトリアゾール系反応性モノマー、ヒンダードアミン系反応性モノマー、ベンゾフェノン系反応性モノマーなどが好ましく使用できる。ベンゾトリアゾール系モノマーとしては、基体骨格にベンゾトリアゾールを有し、かつ不飽和結合を有するモノマーであればよく、特に限定されないが、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−アクリロイルエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。同様に、ヒンダードアミン系反応性モノマー、ベンゾフェノン系反応性モノマーとしては、基体骨格に各々ヒンダードアミン、ベンゾフェノンを有し、かつ不飽和結合を有するモノマーであればよい。ヒンダードアミン系反応性モノマーとしては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−5−アクリロイルオキシエチルフェニルピペリジン重縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−5−メタクリロキシエチルフェニル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−5−メタクリロキシエチルフェニルピペリジン重縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−5−アクリロイルエチルフェニル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−5−アクリロイルエチルフェニルピペリジン重縮合物などを挙げることができる。また、ベンゾフェノン系反応性モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2’−4,4’−テトラヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−メタクリロキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2’−4,4’−テトラヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−5−アクリロイルエチルフェニルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−アクリロイルエチルフェニルベンゾフェノンなどを挙げることができる。
これらの光安定剤モノマー成分と共重合されるアクリルモノマー成分あるいはメタクリルモノマー成分、またはそのオリゴマー成分としては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基など)、および架橋性官能基を有するモノマー、例えばカルボキシル基、メチロール基、酸無水物基、スルホン酸基、アミド基、メチロール化されたアミド基、アミノ基、アルキロール化されたアミノ基、水酸基、エポキシ基などを有するモノマーを例示することができる。更にはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ブチルビニルエーテル、マレイン酸、イタコン酸およびそのジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル基を有するアルコキシシラン、不飽和ポリエステルなどとの共重合体としてもよい。
これらの光安定剤モノマー成分と共重合するモノマー類との共重合比率は特に限定するものではなく、それぞれの1種または2種以上を任意の割合で共重合することができるが、好ましくは光安定剤モノマー成分の比率が10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、更には35重量%以上であることが最も好ましい。もちろん、光安定剤モノマー成分の単独重合体であってもよい。これらの重合体の分子量は特に限定されないが、通常5,000以上、好ましくは10,000以上、更には20,000以上であることが塗布層の強靱性の点で最も好ましい。これらの重合体は有機溶媒、水あるいは有機溶媒/水混合液に溶解もしくは分散した状態で使用される。これら以外にも市販のハイブリッド系光安定ポリマー、例えば、“ユーダブル”(日本触媒社製)なども使用することができる。
光安定剤を含有する塗布層の厚みは、特に限定しないが、0.5〜15μmが好ましく、より好ましくは1〜10μm、更には2〜7μmであることが最も好ましい。厚みが0.5μm未満の場合には塗布層の耐久性が不足し、逆に15μmを越える場合には輝度が低下する場合がある。
上記の光安定剤を含有する塗布層は、基材の反射板用ポリプロピレンフィルム上に直接設けてもよいが、接着性が不足する場合には、下引き処理などを設けることが好ましい。
下引き処理は、反射板用ポリプロピレンフィルム製造工程内で設ける方法(インラインコーティング法)でもよく、また、フィルムを製造後、別途塗布して設ける方法(オフラインコーティング法)でもよい。下引き処理に適用する材料は特に限定するものではなく、適宜選択すればよいが、好適なものとしては共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、および各種カップリング剤などが適用できる。
光安定剤を含有する塗布層は、任意の方法で塗布することができる。例えばグラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート、ディッピングなどの方法を用いることができる。
また、塗布後に塗布層を硬化する場合、その硬化方法は、公知の方法をとりうる。例えば熱硬化、あるいは紫外線、電子線、放射線などの活性線を用いる方法、さらにはこれらの組み合わせによる方法などが適用できる。このとき、架橋剤などの硬化剤を併用することが好ましい。また、塗布層を設ける方法としては、基材の白色フィルム製造時に塗布(インラインコーティング)してもよいし、結晶配向完了後の白色フィルム上に塗布(オフラインコーティング)してもよい。
また、光安定剤を含有する塗布層中に、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、有機および/または無機の微粒子、蛍光増白剤、架橋剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、有機の滑剤、帯電防止剤、核剤、カップリング剤などを用いることができる。
本発明の光反射板用フィルムは光安定剤を含有する塗布層を設けた面から測定した560nmの波長における平均反射率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上であることが望ましい。平均反射率が80%未満の場合には、適用する液晶ディスプレイによっては輝度が不足する場合がある。
また、本発明においては、光安定剤を含有する塗布層を設けた面から測定した白色度が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以下、さらには90%以下であることが最も好ましい。白色度が80%より低い場合には、液晶ディスプレイに適用した際に、画像が暗くなるので好ましくない。
本発明のポリプロピレンフィルムを反射部材として用いる際には、単独で用いても、他の素材と貼合わせて用いてもよい。この時、他の基材と貼り合わすためには、どちらか片側の表面に、空気中または窒素ガス、炭酸ガスの1種以上の雰囲気中でコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を35mN/m以上とすることが好ましい。
上記他の素材としては、例えば普通紙、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、ラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、グラシン紙、ラミネート紙などの紙、合成紙、不織布、あるいは他種フィルム等を用いることができる。
次に、本発明の光反射板用ポリプロピレンフィルムの製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
本発明の単層ポリプロピレンフィルムの場合は、次の方法で製造することができる。
β晶核剤をポリプロピレンに添加混合して、二軸押出機に供給して280〜300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却し、チップカッターで5mm長にカットした後、120℃で2時間乾燥する。次に、該混合チップを180〜280℃に加熱された押出機に供給して溶融して、Tダイ口金にて押出成形し溶融シートを得る。この溶融シートを、表面温度70〜130℃に保たれたドラム上に押出して密着させ、ドラムに密着していないフィルム面に、10〜120℃の風を吹き付けて、冷却固化し、未延伸シートを作製する。この時、β晶核剤を配合したポリプロピレン溶融シートを上記した高い温度のドラムで冷却することにより、未延伸シートのβ晶分率を30%以上とすることができ、延伸後のフィルムの空隙率を高めることができる。即ち、溶融押出から縦延伸の予熱オーブンに至るまでの間の未延伸シートを120℃で5秒以上保持して、β晶分率を高めた後に二軸延伸することが、フィルムの空隙率を高めるために重要である。また、風を吹き付けてフィルムをドラムに密着させることにより表面光沢度を向上させることができる。さらにまた、この未延伸シートの冷却のために10〜80℃程度の水槽に浸漬させつつ通過させる工程を追加してもよい。
引き続き該未延伸シートを100〜150℃に加熱したロール群またはオーブンに導き、フィルム温度を100〜140℃にした後、表面温度を80〜140℃に保たれたハードクロムメッキした金属ロールとゴムロールの一対のニップロール(延伸ロール)と、表面温度を30〜100℃に保たれたハードクロムメッキした金属ロールとゴムロールの一対のニップロール(冷却ロール)間に通し、延伸ロールと冷却ロールの周速差で長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に3〜7倍延伸し、30℃〜100℃のロール群で冷却する。
続いて、長手方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120〜190℃に加熱した雰囲気中(フィルム温度:125〜160℃)で長手方向に垂直な方向(横方向)に3〜12倍に延伸する。その面積倍率(=縦延伸倍率×横延伸倍率)は9倍〜84倍であることが好ましく、製膜安定性の面からは特に30倍〜50倍であることが特に好ましい。面積倍率が9倍未満であると得られるフィルムの表面光沢度が低く、また、ボイド形成が不十分となり本発明のフィルムの特性が得られない。逆に面積倍率が84倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
このようにして得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて140〜170℃で1〜30秒間の熱処理を行ない、その後均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取ることにより、本発明のフィルムを得ることができる。なお、上記熱処理工程中では、必要に応じて横方向あるいは縦方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。また、二軸延伸は逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また二軸延伸後に縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。
また、スキン層を積層させた積層ポリプロピレンフィルムの場合は、次の方法で製造することができる。
押出機(a)と押出機(b)を有する複合製膜装置において、コア層(A)を形成するため、前記した単層用の、β晶核剤をポリプロピレンに添加混合した混合樹脂(a)を、180〜280℃に加熱された押出機(a)に供給して溶融して、Tダイ複合口金内に導入する。一方、スキン層(B)を積層するためのポリプロピレンとして、ホモのポリプロピレンまたはエチレン若しくはα−オレフィンを1〜5重量%共重合させたポリプロピレンに、平均粒径0.1〜2μmの無機または有機の粒子を2重量%以下で添加した混合樹脂(b)を準備する。この混合樹脂(b)を180〜280℃に加熱された押出機(b)に供給して溶融してTダイ複合口金内に導入する。押出機(b)のポリマーが押出機(a)のポリマーの片表層(片面)あるいは両表層(両面)にくるように積層してシート状に共押出成形し、溶融積層シートを得る。この溶融積層シートを、前記した単層フィルム製造の場合と同じ製膜条件で二軸延伸し、光反射板用ポリプロピレンフィルムを製造する。
また、スキン層の積層方法としては、他に、縦延伸したフィルム上に押出ラミネートした後に横延伸をする方法をとることもできる。
このようにして製造される本発明の単層フィルムや積層フィルムの表面には、他基材と貼り合わすために、空気中または窒素ガス、炭酸ガスの1種以上の雰囲気中でコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を35mN/m以上にして巻き取ることが好ましい。
次に、光安定剤を含有する塗布層として、ビンダードアミン系の光安定剤を含有した樹脂をコロナ放電処理をした面に塗布して、100〜140℃で乾燥して巻き取る。
[特性の測定方法および評価方法]
本発明における特性値は、次の評価方法、評価基準により求められる。
(1)フィルム
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B−7509、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値をフィルム厚みとした。
(2)フィルムを構成するコア層(A)とスキン層(B)の厚み
フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて1500倍に拡大観察して撮影し、この断面写真を用いて、各層の厚み方向の長さを計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚みを求めた。尚、各層の厚みを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
(3)比重
フィルムの比重は、ミラージュ貿易(株)製高精度電子比重計(SD−120L)を用いて、30×40mmのサイズに切り出したサンプルについて、JIS K 7112(1999)A法(水中置換法)に準じて23℃、65%RHにて測定して求めた。
(4)空隙率
単層フィルムの空隙率は、ミラージュ貿易(株)製高精度電子比重計(SD−120L)を用いて、30×40mmのサイズに切り出したサンプルについて、JIS K 7112(1999)A法(水中置換法)に準じて23℃、65%RHにて測定される比重(d1)と、該サンプルを0.5mm厚みのアルミ板で挟み、280℃で熱プレスして融解・圧縮させた後、得られたシートを、アルミ板ごと30℃の水に浸漬して急冷したシートについて上記同様の方法で測定される比重(d0)から、下記式を用いて求めた(単位:%)。
空隙率(%)={1−(d1/d0)}×100
なお、積層フィルムのスキン層の空隙率を求めるには、フィルムの断面を、走査型電子顕微鏡S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて1500倍に拡大観察して撮影し、この断面写真において、気泡の断面を形成する境界線を全てマーキングし、また、気泡内部に核を有する場合には、核の断面の境界線も全てマーキングし、該マーキング部分をハイビジョン画像解析装置PIAS−IV((株)ピアス製)を用いて画像処理を行うことにより気泡面積を算出し、気泡面積を全断面積で割った値を空隙率とした。尚、気泡面積を求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、その平均値として算出した。
(5)反射率
分光光度計U−3410((株)日立製作所製)に、φ60積分球130−0632((株)日立製作所製)および10°傾斜スペーサーを取り付けた状態で560nmの反射率を測定した。なお、同じサンプルについて同様の測定を任意に場所を変えて5回行い、得られた平均値を反射率とした。また、積層フィルムにおいては、スキン層面が反射面側となることから、片面または両面にスキン層を積層したフィルムの、スキン層面の反射率を測定する。
(6)白色度(%)、L、a、b値
日本電色工業株式会社製の分光式色彩計SE−2000を用いて、反射法にて試料のL,a,bの値とXYZの値を測定する。白色度はXYの値を用いて下記式にて求めた。
白色度=4×0.847×Z−3×Y(%)
なお、同じサンプルについて同様の測定を任意に場所を変えて5回行い、得られた平均値をL,a,bの値、XYZの値とした。また、積層フィルムにおいては、スキン層面が反射面側となることから、片面または両面にスキン層を積層したフィルムの、スキン層面を測定する。
(7)表面光沢度(%)
JIS Z−8741に基づいて、スガ試験機(株)製デジタル変角光沢度計UGV−5Dを用い、入出角度60°での光沢度を求めた。
なお、同じサンプルについて同様の測定を任意に場所を変えて5回行い、得られた平均値を表面光沢度とした。また、積層フィルムにおいては、スキン層面が反射面側となることから、片面または両面にスキン層を積層したフィルムの、スキン層面を測定する。
(8)光学濃度OD
マクベス社製光学濃度計TR−927を用いて測定した。
なお、同じサンプルについて同様の測定を任意に場所を変えて5回行い、得られた平均値を光学濃度ODとした。
(9)平均表面粗さRa
JIS B0601に従って、触針式表面粗さ計(小坂研究所(株)製、高精度薄膜段差測定器、形式ET30HK)を用いて測定した。なお、この時の条件は、触針径円錐型0.5μmR、荷重16mg、カットオフ0.08mmとした。粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦方向をY軸とし、粗さ曲線をy=f(X)で表した時、次の式によって求められる値(μm)を中心線平均表面粗さRaとする。
Ra=(1/L)∫|f(X)|dx。
なお、同じサンプルについて同様の測定を任意に場所を変えて5回行い、得られた平均値を表面粗さRaとした。また、積層フィルムにおいては、スキン層面が反射面側となることから、片面または両面にスキン層を積層したフィルムの、スキン層面を測定する。
(10)長手方向(MD)および幅方向(TD)の5%伸張時の強度(F5値)
JIS K 7127(1999、試験片タイプ2)に準じて、(株)オリエンテック社製フィルム強伸度測定装置(AMF/RTA−100)を用いて、25℃、65%RHにて測定した。長手方向:15cm、幅方向:1cmのサイズに切り出したサンプルを、原長50mm、引張り速度300mm/分で伸張して、MD、TDそれぞれ5%伸張時の強度(F5値)(単位:MPa)を求めた。なお、同様の測定を5回行い、得られた平均値をF5値とした。
(11)熱収縮率
長手方向:260mm、幅方向:10mmのサイズに切り出したサンプルの長手方向に200mm(L0)の間隔の両端位置にマークを入れる。このサンプルの下端に3gの荷重をかけ、120℃の熱風循環オーブン中で15分間熱処理した後、室温中に取り出し、サンプルにつけたマークの間の長さ(L1)を測定する。この際、熱収縮率は次式により求めた(単位:%)。
熱収縮率(%) = 100×(L0−L1)/L0
なお、同様の測定を5回行い、得られた熱収縮率の平均値を熱収縮率とした。
(12)濡れ張力(mN/m)
ホルムアミドとエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合液を用いて、JIS K6768に規定された測定方法に基づいて測定した。
なお、同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られた平均値を濡れ張力とした。
(13)粒子の平均粒径
遠心沈降法(堀場製作所製CAPA500を使用)により測定した体積平均径を平均粒径(μm)とした。
(14)溶融張力(MS)
JIS K 7210(1999)に示されるメルトフローレイト測定装置に準じた装置を用い、230℃の温度下で測定した。東洋精機(株)製メルトテンションテスターを用い、5gのサンプルを230℃に加熱されたシリンダー内にセットし、5分間保持して溶融させ、該溶融ポリマーをピストンによって押出速度20mm/分でキャピラリーから吐出してストランドとし、該ストランドを15.7m/分の速度で引き取った。この引き取りの際の張力を、途中滑車を介してストレスゲージにて測定した。なお、溶融張力(MS)は、測定開始から120〜180秒の間の張力の平均値である(単位:cN)。同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたMSの平均値を用いた。
(15)β晶活性の確認
走査型差動熱量計(DSC)(Seiko Instruments社製熱分析装置RDC220型)を用いて、JIS K 7122(1987)に準じて測定した。ポリプロピレンフィルムサンプル5mgをアルミニウムパンに封入して装填し、当該装置にセットし、窒素雰囲気下で10℃/分の速度で30℃から280℃まで昇温し、昇温完了後280℃で5分間待機させ、引き続き10℃/分の速度で30℃まで冷却し、冷却完了後30℃で5分間待機させ、次いで再度10℃/分の速度で280℃まで昇温する。この昇温の際に得られる熱量曲線において、140℃以上160℃未満にβ晶の融解に伴う吸熱ピークが観測される場合、そのサンプルフィルムはβ晶活性を有するものと判定した。
なお、ここでいう吸熱ピークとは、融解熱量が10mJ/mg以上であるものをいう。また、融解熱量は、熱量曲線が昇温に伴いベースラインから吸熱側にずれ、次いでベースラインの位置に戻るまでのベースラインと熱量曲線で囲まれる面積であり、融解開始温度位置からベースライン上に熱量曲線の交点まで高温側に直線を引き、この面積をコンピュータ処理して求めた。
例えば、図2及び図3にモデル的に示す熱量曲線1の場合、ベースラインと熱量曲線で囲まれる面積のうち、160℃未満の面積部分がβ晶部分の融解熱量ΔHβ(図3の符号2)であり、また、160℃以上の面積部分がα晶部分の融解熱量ΔHα(図3の符号3)である。
なお、上記の手法で140〜160℃に融解ピークが存在するが、β晶の融解に起因するものか不明確な場合は、140〜160℃に融解ピークが存在することと、広角X線回折法による回折プロファイルでβ晶に起因する回折ピークが存在することをもってβ晶活性を有するものと判定すればよい。
下記に広角X線回折法の測定条件を示す。
・測定試料:フィルムを方向を揃えて、熱プレス調整後のサンプル厚さが1mm程度になるよう重ね合わせた後、これを0.5mm厚みのアルミ板で挟み、280℃で熱プレスして融解・圧縮させた。得られた圧縮シートを、アルミ板ごと100℃の沸騰水中に5分間浸漬して結晶化させ、その後25℃の雰囲気下で冷却した。得られるシートを幅1mmに切り出したものを測定試料とした。
・X線回折装置:理学電気(株)社製 4036A2
・X線源:CuKα線(Niフィルター使用)
・出力:40kV、20mA
・スリット系:2mmφ−1°−1°
・検出器:シンチレーションカウンター
・計数記録装置:理学電気(株)社製 RAD−C型
・測定方法:2θ/θスキャン(ステップスキャン、2θ範囲10〜55°、0.05°ステップ、積算時間2秒)
得られた回折プロファイルにおいて、2θ=16.1〜16.4°付近にβ晶の(300)面による最も強い回折ピークが観測されれば、β晶に起因する回折ピークが存在すると判断する。なお、ポリプロピレンの結晶型(α晶、β晶)の構造、得られる広角X線回折プロファイルなどは、例えば、エドワード・P・ムーア・Jr.著、“ポリプロピレンハンドブック”、工業調査会(1998)、p.135−163;田所宏行著、“高分子の構造”、化学同人(1976)、p.393;ターナージョーンズ(A.Turner−Jones)ら,“マクロモレキュラー ケミ”(Macromol. Chem.),75,p.134−158や、これらに挙げられた参考文献なども含めて多数の報告があり、それを参考にすればよい。
(16)β晶分率
DSC(Seiko Instruments社製熱分析装置RDC220型)を用いて、JIS K 7122(1987)に準じて測定した。サンプル5mgをアルミニウムパンに封入して装填し、当該装置にセットし、窒素雰囲気下で10℃/分の速度で30℃から280℃まで昇温し、昇温完了後280℃で5分間待機させ、引き続き10℃/分の速度で30℃まで冷却し、冷却完了後30℃で5分間待機させ、次いで再度10℃/分の速度で280℃まで昇温する。この昇温の際に得られる熱量曲線において、140℃以上160℃未満に観測されるβ晶の融解に伴う1本以上の吸熱ピークから算出される融解熱量(ΔHβ)と、160℃以上に観測されるβ晶以外のポリプロピレン由来の結晶の融解に伴う吸熱ピークから算出される融解熱量(ΔHα)から、下記式を用いて求めた。この際、ΔHβの融解ピークとΔHαの融解ピーク間に、微少な発熱もしくは吸熱ピークが観測される場合があるが、このピークは削除してもよい。
β晶分率(%) = {ΔHβ/(ΔHβ+ΔHα)}×100
なお、上記の手法で140〜160℃に融解ピークが存在するが、β晶の融解に起因するものか不明確な場合は、140〜160℃に融解ピークが存在することと、広角X線回折法による回折プロファイルでβ晶に起因する回折ピークが存在することをもってβ晶の融解に起因する融解ピークであるものと判定すればよい。広角X線回折法の測定条件については、上記(15)のβ晶活性の確認の場合と同じである。
また、コア層(A)とスキン層(B)の積層未延伸シートのβ晶分率は、各層別に測定することが難しいので、以下の実施例では、積層未延伸シートトータルのβ晶分率を測定した。
なお、延伸されたフィルムのコア層(A)とスキン層(B)のβ晶比率を区別して測定するときは、SEMによる断面観察を行い、厚み構成を確認した後に、スキン層(B)を削り取って各々について融解ピークを測定すればよい。この際、スキン層(B)、コア層(A)は次のようにサンプル作製することができる。フィルムの表面に片刃を入れた後、フィルム表面に粘着テープを貼った後、フィルムに沿って急速に剥離することにより、スキン層(B)部分を剥離する。次にSEM観察で得られた厚みから、該剥離したスキン層(B)部分の表面から8割までをスキン層(B)試料とする。また、同じくフィルム厚み中央部に片刃を入れ、フィルム両面に粘着テープを貼って同時に剥離するように引っ張り、フィルム中央部でフィルムを半裁させる。該半裁されたフィルムの中央部を片刃で削りとり、コア層(A)試料とする。
(17)β晶核剤の分散状態の確認
加熱装置を備えた光学顕微鏡を用い、サンプル(チップ形状の原料はそのまま、フィルム・シート形状のものは10mm角に切り出して用いる)を松浪硝子(株)社製カバーグラス(18×18mm、No.1)にのせて200℃で加熱し、溶融させた。溶融後、そのままもう一枚のカバーグラスを被せて圧縮し、厚さ0.03mmの溶融体とした。サンプルの任意の5カ所について倍率400倍で焦点深度を変えて厚み方向の全ての核剤の分散状態を観察し、観測された全ての核剤について長径と短径を測定し、その比(=長径/短径)の平均値を算出した。同じサンプルで同様の測定を5回行い、得られた長径と短径の比の平均値を長径と短径の比とした。本発明では、該長径と短径の比が10以上のものを、核剤が針状に分散しているものと定義する。
(18)アイソタクチックインデックス(II)
試料を沸騰n−ヘプタンで一定時間抽出を行い、抽出されない部分(沸騰n−ヘプタン抽出残分)の重量(%)を求めてアイソタクチックインデックスを算出する。
詳しくは、円筒濾紙を110±5℃で2時間乾燥し、恒温恒湿の室内で2時間以上放置してから、円筒濾紙中に試料(粉体またはフレーク状)10gを入れ、秤量カップ、ピンセットを用いて直示天秤にて精秤(小数点4桁まで)する。
これをヘプタン80ccの入った抽出器の上部にセットし、抽出器と冷却器を組み立てる。これをオイルバスまたは電機ヒーターで加熱し、12時間抽出する。加熱は冷却器からの滴下数が1分間130滴以上であるように調節する。抽出残分の入った円筒濾紙を取り出し、真空乾燥器にいれて80℃、100mmHg以下の真空度で5時間乾燥する。乾燥後恒温恒湿中に2時間放置した後精秤し、下記式で算出する。
アイソタクチックインデックス(II)(%)=(P/Po)×100
但し、Poは抽出前の試料重量(g),Pは抽出後の試料重量(g)である。
(19)MFR(メルトフローレート)
結晶性ポリプロピレンは、JIS K 7210の条件14に従ってMFRを測定する(230℃、2.16kg)。エチレン系樹脂は、JIS K 7210の条件4に従ってMFRを測定する(190℃、2.16kg)。
(20)製膜工程における工程通過性
フィルムを5m幅、10,000m巻き取った時のフィルムの破れ回数を求めた。また、このフィルム破れ回数や、製膜機に配置された金属ロール、特に延伸ロールへの白粉の付着状態から、以下のように工程通過性を評価した。
◎:フィルム破れ1度もなく、金属の延伸ロールに白粉の付着がなく、製膜が安定していた。
○:フィルム破れ1回以下で、金属の延伸ロールに白粉の付着がなく、製膜が安定していた。
×:フィルム破れが2回以上あり、金属製品ロールに粒子又は樹脂が付着して工程を汚した。
(21)耐光性
紫外線劣化促進試験機アイスーパーUVテスターSUV−W131(岩崎電気(株)製)を用い、下記の条件で強制紫外線照射試験を行った。
「紫外線照射条件」
照度:100mW/cm2、温度:60℃、相対湿度:50%RH、照射時間:8時間
照射後のサンプルについて上記(5)、(6)の方法に準じて反射率と白色度を測定した。紫外線照射前に比べ、反射率と白色度の低下をみて、以下のように評価した。
◎:反射率、白色度ともに低下率が10%未満。
○:反射率、白色度ともに低下率が10%以上、20%未満。
×:反射率、白色度ともに低下率が20%以上。
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリプロピレン(以下ホモPPと略称する)として、住友化学(株)製のFSX81E4(メルトフローレイト(MFR):6g/10分)を96.9重量%、溶融張力が20cNの長鎖分岐を有する高溶融張力ポリプロピレン(以下HMS−PPと略称する)として、Basell社製HMS−PP PF−814(MFR:3g/10分)を3重量%、β晶核剤として、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレン ジカルボキサミド(新日本理化(株)製NU−100、以下NU−100と略称する)を0.1重量%の比率で添加混合したポリプロピレン樹脂組成物100重量部に、酸化防止剤として、チバガイギー社製“IRGANOX”1010を0.15重量部、熱安定剤として、チバガイギー社製“IRGAFOS”168を0.1重量部添加し、これを二軸押出機に供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、120℃で2時間乾燥した。得られたβ晶核剤添加PP樹脂組成物(以下β晶PPと略称する)のβ晶分率は75%であった。
次に、β晶PPを一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、250メッシュ4枚を重ねた複層の濾過フィルターを経た後に200℃に加熱されたスリット状口金から押出し、表面温度120℃に加熱された金属ドラム(=キャスティングドラム、キャストドラム)に巻き付け、フィルムの非ドラム面側から、エアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。この時、溶融押出から縦延伸の予熱オーブンまでの未延伸シートの120℃での保持時間は15秒で、未延伸シートのβ晶分率は85%であった。
得られた未延伸シートを135℃に保たれたオーブンに通してフィルム温度を125℃とした後、120℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向(MD)に5倍延伸して100℃に冷却する。引き続きこの縦延伸フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して155℃で予熱し、145℃で横方向(幅方向、TD)に10倍延伸した後(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=50倍)、引き続き、フィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内にて162℃で横方向3%の弛緩熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却した。さらに、得られたフィルムの表面に、接着剤塗布または他基材と貼り合わすために、両面を空気中でコロナ放電処理を行い、表面の濡れ張力を37mN/mにして、厚み40μmのフィルムを巻き取った。
得られたポリプロピレンフィルムの原料組成とフィルム特性評価結果をそれぞれ表1〜3に示す。得られたフィルムは、製膜性に優れるとともに、無核の微細なボイドを多数有して空隙率が高く、高い白色度と光学濃度を有していた。また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が本発明の範囲にあり、熱収縮率も低いことから、製膜性に優れるとともに、工程通過性に優れていた。このフィルムを5枚重ね合わせ厚み200μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。
(実施例2)
実施例1において、長手方向の延伸倍率を4倍にし、横方向の延伸倍率を6倍とした以外は同様の条件で、厚さ100μmのポリプロピレンフィルムを作製した。結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、空隙率が高く、白色度、光学濃度、光反射率が高く、また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が本発明の範囲にあり、熱収縮率も低いことから、製膜性に優れるとともに、工程通過性に優れていた。本フィルムを2枚重ねて液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。
(実施例3)
実施例1において、長手方向の延伸倍率を6倍にし、横方向の延伸倍率を6倍とした以外は同様の条件で、厚さ200μmのポリプロピレンフィルムを作製した。結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、空隙率が高く、白色度、光学濃度、光反射率が高いことにより、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が本発明の範囲にあり、熱収縮率も低いことから、製膜性に優れるとともに、工程通過性に優れていた。
(実施例4)
ホモPP(三井住友化学(株)製、WF836DG3)(MFR:7g/10分、II:96%)93.8重量%と、Basell社製HMS−PP PF−814(MFR:3g/10分)3重量%、超低密度ポリエチレン(三井デュポン(株)製の“エンゲ−ジ”8411、比重0.88、以下V−LDPEと略称する)3重量%と、β晶核剤のNU−100を0.2重量%を添加混合したポリプロピレン樹脂組成物100重量部に、酸化防止剤として、チバガイギー社製“IRGANOX”1010を0.15重量部、熱安定剤として、チバガイギー社製“IRGAFOS”168を0.1重量部添加し、これを実施例1と同様にしてβ晶PPを調製した。このβ晶PPをコア層(A)の樹脂に用いた以外は、実施例1と同様にして未延伸シートを作製した。その後実施例1と同じ縦−横延伸温度で、縦5倍、横9倍の延伸倍率で延伸して厚さ50μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、製膜性に優れるとともに、無核の微細なボイドを多数有して空隙率が高く、高い白色度と光学濃度を有していた。また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が本発明の範囲にあり、熱収縮率も低いことから、製膜性に優れるとともに、工程通過性に優れていた。
また、得られたポリプロピレンフィルムの5枚を重ね合わせ厚み250μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。
(実施例5)
ホモPP(三井化学(株)製のJ3H)(メルトフローレイト(MFR):18g/10分、II:96%)50重量%に、β晶核剤含有のホモPP“BEPOL”(SUNOCO社製、タイプ:B022−SP、MFR:1.8g/10分)を50重量%添加混合した混合ホモPPを用い、実施例1と同様にして溶融押出し、表面温度110℃に加熱された金属ドラム(=キャスティングドラム、キャストドラム)に巻き付け、フィルムの非ドラム面側から、エアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながらシート状に成形した後、実施例1と同じ縦−横延伸温度で縦4.5倍、横9倍の延伸倍率で延伸した。それ以外は、実施例1と同様にして厚さ25μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、製膜性に優れるとともに、無核の微細なボイドを多数有して空隙率が高く、高い白色度と光学濃度を有していた。また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が本発明の範囲にあり、熱収縮率も低いことから、製膜性に優れるとともに、工程通過性に優れていた。得られたフィルムを8枚重ね合わせ厚み200μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。
(実施例6)
実施例4で調製したβ晶PPをコア層(A)の樹脂として用い、これを200℃に加熱された押出機(a)に供給し、溶融してTダイ複合口金内に導入した。一方、スキン層(B)の樹脂としては、三井化学(株)製のホモPP、F107BV(MFR:7g/10分、II=98%)99.8重量%に、架橋ポリメチルメタクリレート粒子(以下PMMAと略称する)を0.2重量%を添加混合して、二軸押出機に供給して260℃でガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥して得られた混合樹脂を用いた。次に、該混合樹脂を240℃に加熱された押出機(b)に供給し、同様に溶融してTダイ複合口金内に導入した。押出機(b)のポリマーが押出機(a)のポリマーの両表層にくるように積層してシート状に共押出成形した。それ以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを作製した。
得られた積層フィルムの断面をSEMにて1500倍に拡大観察したことにより、厚み構成はB層/A層/B層=3/44/3(μm)であり、スキン層(B)の内部に微細なボイドが存在し、空隙率が10%であった。
結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、製膜性に優れるとともに、無核の微細なボイドを多数有して空隙率が高く、高い白色度と光学濃度を有していた。また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が本発明の範囲にあり、熱収縮率も低いことから、製膜性に優れるとともに、工程通過性に優れていた。得られたフィルムの3枚を重ね合わせ厚み150μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。
(実施例7)
スキン層(B)の樹脂として、住友化学(株)製のホモPP、WF836DG3(MFR:7g/10分)99.8重量%に、架橋ポリスチレン粒子(以下PSと略称する)を0.2重量%添加混合し、実施例6と同様にして調製した混合樹脂を用いた。それ以外は実施例6と同様にして、厚み構成、B層/A層/B層=3/29/3(μm)の積層ポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。得られた積層フィルムは、製膜性に優れるとともに、コア層(B)には無核の微細なボイドを多数有して空隙率が高く、また、スキン層(B)の内部に微細なボイドを含し、空隙率が5%であることを確認し、高い白色度と光学濃度を有していた。また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が本発明の範囲にあり、熱収縮率も低いことから、製膜性に優れるとともに、工程通過性に優れていた。得られたフィルムの5枚を重ね合わせ厚み175μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。
(実施例8)
実施例6のスキン層(B)のコロナ放電処理面上に、光安定剤を含有した塗布層として、“ユータブル”UV714(日本触媒(株)製)100部、“スミジュール”N3200(硬化剤、住友バイエルンウレタン(株)製)5部、酢酸エチル/トルエン(重量比1/1)120部の混合溶液を乾燥後の厚みが5μmになるように、グラビアコーターにてオフラインで塗布した。乾燥は120℃、2分間の条件で熱風乾燥した。かくして得られた反射板用ポリプロピレンフィルムは、表1に示すとおり、耐光性テストにおいて黄変しにくく反射率、白色度の低下が小さいものであった。
(比較例1)
実施例1で用いたと同じホモPPの80重量%と白石カルシウム(株)製の平均粒径2μmの炭酸カルシウム(以下CaCO3と略称する)20重量%を添加混合したポリプロピレン樹脂組成物100重量部に、酸化防止剤として、チバガイギー社製“IRGANOX”1010を0.15重量部、熱安定剤として、チバガイギー社製“IRGAFOS”168を0.1重量部添加し、これを二軸押出機に供給して280℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、120℃で2時間乾燥した。
得られたポリプロピレンチップを一軸押出機に供給して280℃で溶融・混練し、200メッシュ1枚の濾過フィルターを経た後に260℃に加熱されたスリット状口金から押出し、表面温度50℃に加熱された金属ドラム(=キャスティングドラム、キャストドラム)に巻き付け、フィルムの非ドラム面側から、エアーナイフを用いて冷風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。
得られた未延伸シートを140℃に保たれたロール群に通して予熱し、135℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向(MD)に5倍延伸した後、30℃に冷却した。引き続き、この縦延伸フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して165℃で予熱し、155℃で方向(幅方向、TD)に9倍延伸した後(面積倍率:縦延伸倍率×横延伸倍率=45倍)、引き続き、フィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内にて160℃で横方向3%の弛緩熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却した。さらに、得られたフィルムの表面に、接着剤塗布または他基材と貼り合わすために、両面を空気中でコロナ放電処理を行い表面の濡れ張力を37mN/mにして、厚み40μmのフィルムを巻き取った。
得られたポリプロピレンフィルムの原料組成とフィルム特性評価結果をそれぞれ表1〜3に示す。得られたフィルムは、製膜時に縦延伸ロールにCaCO3が脱落して付着し製膜性に劣るとともに、白色度および光学濃度の低いもであった。また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が低いことから、製膜時に破れが多発し、工程通過性に劣っていた。このフィルムの5枚を重ね合わせ厚み200μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、反射率が低く、また、フィルムのLab値のa値およびb値が高く、全体的に赤色や黄色が強くなり、また、耐光性に劣り、面光源反射部材として適さないものであった。
(比較例2)
住友化学(株)製のホモPP、FS2011C(MFR:1.3g/10分)99.9重量%に、β晶核剤のNU−100を0.1重量%の比率で添加混合した樹脂組成物100重量部に、酸化防止剤として、チバガイギー社製“IRGANOX”1010を0.15重量部、熱安定剤として、チバガイギー社製“IRGAFOS”168を0.1重量部添加し、これを二軸押出機に供給して280℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで5mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
得られた原料チップ85重量%に、ボイド形成剤として出光化学(株)製シンジオタクチックポリスチレン(“ザレック”、S100、以下SPSと略称する)を15重量%を添加した樹脂組成物を一軸押出機に供給して300℃で溶融・混練し、200メッシュの単板濾過フィルターを経た後に270℃に加熱されたスリット状口金から押出し、表面温度60℃に加熱されたキャストドラムに巻き付け、フィルムの非ドラム面側からエアーナイフを用いて40℃の冷風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。
得られた未延伸シートを140℃に保たれたロール群に通して予熱し、135℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5倍延伸して直ちに室温に冷却する。引き続きこの縦延伸フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して165℃で予熱し、150℃で幅方向に9倍に延伸し、次いで幅方向に8%の弛緩を与えつつ、160℃で熱固定をした後、冷却して巻き取り、厚さ25μmのボイド含有ポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。本フィルムは、製膜中にSPSが脱落して製膜安定性に劣り、得られたフィルムは、空隙率が低く、比重が高く、白色度および光学濃度の低いものであった。また、このフィルムの8枚を重ね合わせ厚み200μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ反射率が低く、また、耐光性に劣り、面光源反射部材として適さないものであった。
(比較例3)
実施例1において、一軸押出機、口金の温度を260℃とし、キャスト温度を30℃とし、長手方向の予熱温度と延伸温度をそれぞれ142℃として5倍延伸とし、横方向の延伸倍率、予熱温度/延伸温度/熱固定温度をそれぞれ10倍、165℃/160℃/160℃とした以外は実施例1と同様の条件で厚さ40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。製膜性には優れていたが、空隙率が実質的に0であり、その値から実質的にボイドが形成されていないものと推定され、白色度、光学濃度が極めて低く、反射板として適さないものであった。
(比較例4)
実施例6において、スキン層(B)の樹脂として、三井住友化学(株)製のホモPP、WF836DG3(MFR:7g/10分、II:96%)90重量%に、融解温度が240℃のポリメチルペンテン樹脂(三井化学(株)製、“TPX”MX−004、以下PMPと略称する)10重量%を添加混合した混合樹脂を用い、この混合樹脂を290℃に加熱された押出機(b)に供給し、実施例6と同様に溶融してTダイ複合口金内に導入した。押出機(b)のポリマーが押出機(a)のポリマーの両表層にくるように積層した。それ以外は実施例6と同様にして、厚さ50μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、スキン層の空隙率が高く、白色度および光学濃度が高いものであった。また、このフィルムを4枚重ね合わせ厚み200μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、反射率が高く、面光源反射部材としては優れたものであった。しかしながら、表面粗さRaが大きくなって製膜中にPMPが脱落して工程通過性が悪化し、生産性が劣ったものであった。
(比較例5)
実施例1において、キャスト温度を125℃とし、未延伸シートを125℃で50秒保持してβ晶分率を87%とし、長手方向の予熱温度、延伸温度をそれぞれ115℃として6倍延伸し、横方向の延伸倍率、予熱温度/延伸温度/熱固定温度をそれぞれ10倍、125℃/125℃/130℃とした。それ以外は実施例1と同様の条件で厚さ25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、空隙率が85%と非常にたかく、比重が低く、白色度および光学濃度の高いものであった。また、本フィルムを8枚重ね合わせ厚み200μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いた時の反射率が高く、面光源反射部材としては優れたものであった。しかしながら、空隙率が高すぎてMDとTDのF5値の和が40MPaと低く、表面粗さRaが0.3を越えて、光沢度も低くなり、また、延伸、熱固定温度が低いために製膜安定性に劣り、熱収縮率が高くて生産性および実用性に適さないものであった。
(比較例6)
実施例6において、スキン層(B)の樹脂として用いたホモPPの99重量%に、α晶核剤(電気化学工業(株)製、NA−11)を1重量%を添加混合した混合樹脂を用い、この混合樹脂を240℃に加熱された押出機(b)に供給し、実施例6と同様に溶融してTダイ複合口金内に導入した。押出機(b)のポリマーが押出機(a)のポリマーの片側表層(非ドラム側)にくるように片面積層した。そしてシート状に共押出成形し、表面温度90℃に加熱された金属ドラム(=キャスティングドラム、キャストドラム)に巻き付け、フィルムの非ドラム面側から、エアーナイフを用いて15℃に冷却された冷風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形した。それ以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを作製した。
得られた該積層フィルムの断面をSEMにて1500倍に拡大観察したところ、厚み構成はA層/B層=47/3(μm)であった。スキン層(B)内部の空隙率は0%であった。
結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、無核の微細なボイドを多数有して空隙率が高く、高い白色度と光学濃度を有していた。また、長手方向(MD)と幅方向(TD)のF5値が本発明の範囲にあり、熱収縮率も低く寸法安定性に優れており、スキン層の表面光沢度153%と高く、このフィルム4枚を重ね合わせ厚み200μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。しかしながら、このフィルムは、スキン層の平均表面粗さRaが0.01μmと小さいために滑り性に劣り、製膜工程及び反射材加工工程での走行性が悪く、しわや破れが発生しやすく、生産収率が大幅に低下し、工業生産上好ましいものではない。
(比較例7)
実施例1における長手方向の延伸倍率を10倍とした縦一軸延伸とした以外は実施例1と同様にして、厚さ400μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、空隙率が低くて反射率が低く、フィルムが縦裂けし易くて製膜安定性に劣り、生産性および実用性に適さないものであった。また、液晶表示装置の面光源反射部材に用いた時に、反射率が低く、面光源反射部材が厚くなるので実用性に適さないものであった。
(比較例8)
実施例1における長手方向の延伸倍率を6倍にし、横方向の延伸倍率を12倍とした以外は実施例1と同様の条件で、厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
結果を表1〜3に示す。得られたフィルムは、空隙率が高く、白色度、光学濃度、光反射率が高く、このフィルム14枚を重ね合わせ厚み210μmとし、液晶表示装置の面光源反射部材に用いたところ、高い反射機能を発揮した。しかしながら、このフィルムは、空隙率が高すぎてMDとTDのF5値の和が20MPaと低く、薄すぎてフィルム破れが多発し、製膜安定性に劣り、生産性および実用性に適さないものであった。